私、ヴィランを目指します!   作:Sano / セイノ

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そしてハチマキもなくなった3(雄英体育祭 第二種目)

――――――――切島鋭児郎side――――――――

 

空を舞う1000万pの鉢巻を掴み損なった爆豪。

跳び上がったアイツが俺たちの騎手だ。

このまま騎手が落下すれば失格だ、だから瀬呂がその体にテープを巻き付けて強引に引き戻した。

 

 

「クソがッ! 取り損ねたッ!」

馬上に戻って開口一番に、怒髪天を衝くかのように爆豪は吠えたてる。

〝おいおい、落ち着こうぜ〟と宥める上鳴を無視して、爆豪は憤怒を滲ませながら俺の頭をポコポコ叩く。そして、〝俺は冷静だ! いいから、早く追いかけろッ!〟と前方を指さした。

アイツが睨む、その標的は変わらず1000万pだ。

 

 

俺を先頭に、左右に瀬呂と上鳴で組んだ騎馬がフィールドを駆ける。

瀬呂が走りながら、先ほど爆豪に巻いたテープを外そうとしたのをその本人が制した。

「しょうゆ顔、テープは巻いたままにしとけ」

 

 

爆豪の何気ない一言に、瀬呂と上鳴は揃って表情を緩めた。そして瀬呂は〝瀬呂な〟と自身の呼び名を訂正する。

俺と違ってアイツと絡みの少ない二人は、不安を抱いていたんだろう。一見すると無鉄砲に行動し、ただキレ散らかしているようにしか見えないのが爆豪だ。

まあ、言動が粗野なのは事実だな。

 

 

だが、アイツはその実周囲を俯瞰して、ちゃんと状況を見定めているのである。

それが二人にも分かったんだろう。それと同時に、攻撃時は騎手が飛び出すという算段が瀬呂と上鳴に共有されたんだ。だからこそテープを巻いたままにして、また引き戻してくれと暗に言ってんだ。

 

 

そんな俺たちの進路を、突然うねる茨の蔓がふさいだ。

「その鉢巻もらうぜッ!」

そう叫びながら襲い掛かって来たのは鉄哲を騎手としたB組だ、その騎馬は骨抜、泡瀬、塩崎によって組まれている。

 

 

波打つ茨の蔓は、そのまま俺たちへと迫る。

塩崎の頭から伸びるそれは彼女の個性だろう。

どっかの誰かを彷彿とさせる能力に、自然と体が動いてしまう。その蔓はいつも見ている銀色の糸より遥かに遅く、そして脆そうだった。だから俺は、硬化させた足で切断しようとしたのである。

 

 

だが、同時に反応した瀬呂と上鳴が選択したのは回避だった。

片足で蹴り上げようとしていた俺は二人に引かれて、たたらを踏んでしまう。それによって、跳躍を狙っていた爆豪もバランスを崩しちまったんだ。アイツは俺の硬化したツンツン髪を掴みながら、〝安定させろ、お前らッ!〟と焦ったように吼える。

 

 

結果として、騎手が空中で敵を攪乱しながら鉢巻を奪うという俺ら戦術は、その出掛かりを潰されたのである。

やっぱ、この騎馬戦は単純に反応速度じゃない。

個々の反応スピードが優れていても、騎馬として互いの長所が邪魔し合っているケースだってあるんだ。

 

 

その隙に、上段から力任せに爆豪に組み合ってきた鉄哲が不敵に笑う。

「お前ら、チームワークがなって無ぇな」

両手を掴まれたアイツは手で起爆を繰り返すも、鉄哲は〝効かねぇな〟と笑みを深めた。

 

 

爆豪は動けない。

だが、爆豪の手を握る鉄哲とてこの状態では動けないのだ。

騎手同士が互いを封じ合って膠着したら、後はそれ以外の要素が勝敗を決する。

 

 

つまり向こうは騎馬を組んだ状態で自在に操れる茨の蔓、それがこちらの鉢巻を一方的に奪いに来るのだ。

勿論、そんなことはさせねぇ!

 

 

俺が力任せに相手の騎馬に体当たりをかますと、先頭の骨抜がふらつき、後ろの泡瀬と塩崎も咄嗟にさがる。どうやら、騎馬自体のフィジカルは大したことが無いようだ。

俺の意図を瀬呂と上鳴も即座に察し、競争相手を大きく押し込んでいく。

 

 

すると態勢を崩した騎手の手が、ふいに爆豪から離れた。

その好機を逃さず、爆豪の手が鉄哲の顔にかざされた。そして放たれたのは、スタングレネードのような閃光だ。その眩さに目を眩ませた鉄哲から、爆豪は勝ち誇ったかのように450pの鉢巻を奪取した。

 

――――――――切島鋭児郎sideここまで――――――――

 

 

 

――――――――骨抜柔造side――――――――

 

そのまま行かせてたまるかよ。

横を通過しようとする切島たち足が、フィールドに沈み込む。

俺の『柔化』の個性で、相手の足元の地面を柔らかくしたのである。

 

 

〝瀬呂!〟と爆豪が鋭く呼び掛けた途端、瀬呂がテープを伸ばしてスタジアムの柱へと貼り付けた。それを巻き取ることで、騎馬ごと『柔化』の拘束を脱しようというのである。

地中から浮き上がる相手に気づいて、即座に泡瀬が手を、そして塩崎が蔓を伸ばした。

 

 

「切島、上鳴!」

騎手の声に呼応するように、塩崎の蔓を切島の蹴りが千切り飛ばす。

そして泡瀬の腕を逆に上鳴の手が掴んで、ニヤリとした笑みを投げ掛けてくる。

 

 

「さっきのお返しだぜぇ」

「「「うッ!?」」」

突如として体を走り抜けた電流に、呻きを上げる俺たち。

僅かな電流といえども、体を束の間硬直させるのには十分だった。

そんな俺らを置いて、走り去る敵の後姿を眺めてしまう。。

 

 

なんだよ、いいチームワークじゃねぇか。

 

――――――――骨抜柔造sideここまで――――――――

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