レクリエーションを含めた昼休みが終われば、いよいよ最終種目。
先の騎馬戦の上位4チーム、そのメンバー達からなるトーナメント形式の真剣勝負が幕を開ける。ルールは相手を行動不能にするか、フィールドの外に出せば勝ち。怪我上等の本気のバトルだった。
そうは言っても、常闇君のチームは騎馬が緑谷君と飯田君だったので3人しかいない。つまりは四チーム合わせても16人いないのだ。そのため、騎馬戦の一位からランダムで選ばれた飯田君が二戦目からのシード扱いになったようだ。
それ以外は単純に各選手が引いたくじの結果だ。
対戦の組み合わせが大きなスクリーンに表示される。
記念すべきガチバトルの初戦が私だったのである。そして相手はなんと我が幼馴染トガちゃんだ。日頃から練習を重ね、互いに能力も技術もよく知る相手だった。
「高い身体能力でここまで平然と突破してきたぞ! 1-A渡我被身子! そして相対するは、同じく1-A八木イト! 奇策ばかりを弄してきたが、その実力はいかに」
試合場に上がった私達に、マイク先生の実況が降り注ぐ。
そして舞台上では互いの視線が交差していた。
トガちゃんの細められた目が帯びる真剣みは、いつもの飄々とした彼女とはわけが違う。
「イトちゃん、今日は私本気です。燈矢君も応援に来てくれているので、全力で勝ちにいきますよ」
「私も負けるつもりはないわ」
……そういえば轟君が家族総出で来てるって言ってたな。
どうやらトガちゃんは彼氏に活躍を約束したようだ。でも私とて、負けるつもりはない。表彰台のてっぺんで高らかにヴィラン宣言する予定に変更はないのである。
響く開始の合図。
それと同時に、トガちゃんが褐色のガラス瓶の蓋を外す。そして、中の錠剤を口に流し込んで、バリバリとかみ砕いていくのである。
彼女はニヤリと笑って、空になった瓶を投げ捨てた。
彼女が飲み込んだのは固めた誰かの血だろう。
つまりは姿を変じ、時には個性までコピーしてくるのかも知れないのである。やっぱりいつもの卓越した身体能力だけで隙を突いてくるスタイルとは、戦術からして違うようだ。
私はそれを警戒しながらも、先手を取りにいったのだった。
――――――――トガヒミコside――――――――
虚空を流れる銀糸の閃きを前に、私は個性を発動させる。
私の個性は『変身』、摂取した血に応じてその主の姿に変身できるのだ。そして、基準は曖昧だがその人との関係値によっては、個性すらも真似られるようになる。
じゃあ、ここで疑問が湧いくる。
複数人の血を同時に摂取し、いっぺんに変身してみたらどうなるのか?
……こんなことが出来るのだ!
ドロリと白く溶けた体表がそれぞれの形に結ばれる。
『硬化』した左脚で糸を切り払い、素早いステップ間合いを詰めようとする私。
それを阻むように、イトちゃんも硬い糸を巡らせる。いつもの私なら、その密度にサイドから回り込むようにして応じるところ。
でも右手の『爆破』が生んだ爆風が、私の体を急加速させてその間隙を穿った。
大きく踏み込んだ私の眼前には、目を驚愕に見開いた小柄な幼馴染の姿。
目を瞠っているイトちゃんの視線に、私は微笑みで応える。
いつもならここでタッチして終わり、つまり急所を一突きしてダウンを狙える間合いに私は踏み込めていた。
私の掌底が彼女へと走る。
さあ、チェックメイトだ。
――――ガンッ!
だが、私の手は突如割り込んで来た壁に受け止められた。
硬い糸で瞬時に織り上げられた布、それを叩いた音が響くと同時に私は個性を切り替える。
盾代わりになった布に『蒼炎』が伝い、一気に燃え広がりながら灰燼へと変えていく。
揺らぐ炎の向こうでは、イトちゃんが距離を取ろうと後方へ既に飛び退っていた。
その動きを私は『糸』で、咄嗟に阻害しようとしたのである。
硬い銀色の糸同士が空中で激しく縺れ合い、キンキンと硬質な音を響かせながら無数の火花を散らした。
流石は本家、やっぱり防がれちゃうか。
ここまでが一呼吸の間に起きた攻防。
そして、再度私たちは距離とって向き合っていた。
――――――――トガヒミコsideここまで――――――――