私、ヴィランを目指します!   作:Sano / セイノ

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敗者たちの行方2

―――――――飯田天哉 side――――――――

 

「兄さん、せっかく応援に来てくれたのにすみません」

開口一番、俺は謝罪とともに深く頭を下げた。

爆豪君との対戦に敗れた俺は、自責の念に駆られていたのである。

 

 

これまで、中学校では負けたことが無かったのだ。勉学も個性も。

だから高校でも、当たり前のように勝ち、当たり前のように兄に活躍を報告できると根拠なく確信していたのだ。

だが、全国から雄英に集ったクラスメイト達は、予想を遥かに超えていた。そして、一対一で正面から戦って敗れたからこそ、俺は自身の一層の未熟さを突き付けられていた。

 

 

兄は俺の肩には手を置いて、優しく笑う。

「どうして謝るんだ? おまえは頑張っていたじゃないか」

「ですが、勝てませんでした。俺の不甲斐なさのせいで、インゲニウムの名前に傷がついたら――」

俺がヒーローの家系であることは、見る者が見たら分かることだ。

だからこそ、尊敬する兄の足を引っ張ってしまうことはだけは耐えられなかった。

 

 

歪めた顔の深刻さを、兄さんがあっけらかんと笑い飛ばす。

「はっはっはっは。天哉、そんなことはどうでもいい!」

「は、はぁ」

呆気にとられた俺の肩を、兄さんはばんばんと叩いた。

 

 

「いいか、天哉。今回の戦いでお前が得たものはなんだい?」

兄の優しい瞳が俺を見据える。

「爆豪君の汗滴を飛ばす攻撃を前に、思うようにスピードが発揮できませんでした……それは俺の動きが読まれやすかったというのと、そもそも俺のエンジン駆動の初動がそれだけ隙がある、ということだと思いました……」

 

 

「分かってるじゃないか、なら十分さ。俺が率いるチームには、俺を含め何でも出来るヤツなんかいないんだ。互いの強みを生かして、苦手を埋め合う総合力。それがチームIDATENだ。だから大事なのは、自分ができないことを良く知ること。その苦手は自力で克服可能な課題なのか、それとも仲間に任せた方がいいことなのか。それが見えてきたってことだろう? なら謝る必要なんかない。胸を張れ、天哉!」

「……はいッ!」

 

―――――――飯田天哉 sideここまで――――――――

 

 

 

―――――――轟炎司 side――――――――

 

焦凍を下した八木イト、彼女はオールマイトの娘だ。

オールマイトを未だ超えられない俺、そしてその娘に敗れた焦凍。両者の関係はまるで親子そろって鏡合わせのようである。

 

 

「……ゴメン、負けたよ」

応援に来ていた家族に向かって簡潔に告げて、焦凍は気落ちしたように座った。

それを慮るように、冬美と夏雄がつとめて明るく声を掛ける。

「負けちゃったけど、いい戦いだったよ」

「ああ、焦凍もすごかったぞ」

 

 

勝負の内容自体は悪くない、むしろプロ顔負けのハイレベルな戦いと言って良いだろう。息子だからと贔屓目に見ているわけではない。

万全を期して本気で立ち向かい、それでも敗れた。

だからこそ――――

 

 

焦凍は組んだ手に額を当てて、一人瞑目するように顔を落とす。

まるで貝殻の中にでも閉じこもっているかのように、いかにも意気消沈したように見える弟。それを慰めようとする二人を冷が諫めた。

「冬美、夏雄、ほっておいてあげなさい」

「「でも……」」

 

 

すると、焦凍のぶつぶつ小さな声で漏れ聞こえてくるのだ。

それは泣き言ではなかった。

息子は落ち込んでいるのではない。考え込んでいるのである、次に勝つために。

 

 

「ふふ、炎司さんにそっくりね」

そう言って、冷が俺に微笑んだ。

俺はオールマイトの遠い背中を見せつけられたとき、ライバルをいかに超えるか、胡坐をで腕組みをしながら一人でずっと考え込むのである。こんなところでも、焦凍は俺に似ているらしい。

その事実が俺の口元を綻ばせる。

「そうだな。それでこそ不屈のヒーロー、エンデヴァーの子だ」

 

―――――――轟炎司 sideここまで――――――――

 

 

 

―――――――通形ミリオside――――――――

 

インターン先のヒーローが体育祭を見に来ているのに気づき、僕は足を向ける。

「サーそれに先輩たち、見に来てくれたんですか?」

「やっほー、みりおくん」

露店の焼きそばを突きながら、にこやかな笑みを向けてきたのは、サイドキックのバブルガールだ。

対して、サーは一年の競技に怜悧な間差しを向けている。

 

 

今年の職場体験やインターンで、もしかしたらサーが事務所に呼びたいと思える一年生がいるのかも知れない。確かに、例年に増して今年は粒ぞろいだと囁かれているし、戦闘の様子も十分様になっている。

「今年の一年は元気ですね」

僕の言葉に、サーは眼鏡を光らせて〝ふむ〟と頷いた。

 

 

「ミリオも頑張りなさい」

そう言われて、視線を会場の時計に向けると三年生の集合時刻が迫っていることに気づく。慌ててこの場を辞す僕に、バブルガールが手を振った。

 

 

その時、〝あれがオールマイトの…………〟というサーの呟きが聞こえたのだった。

 

―――――――通形ミリオsideここまで――――――――

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