すれ違う人たちが〝雄英生じゃん、体育祭見たぞ!〟と声を掛けてくれる。
「一躍有名人になっちゃいましたね」
「ホントね」
トガちゃんと共に、私も手も振り返す。
今日、私たちはA組女子メンバーで大きなショッピングモールに訪れていた。
着いて早々集合時間だけを定め、それぞれの目的のために散り散りになった私達。協調性が無いというよりも、変な同調圧力が無いと言った方が正確だろう。
本屋で買い物を済ませた私は、トガちゃんの服選びに付き合っている。
可愛いもの好きな彼女は、お洒落にも余念がない。そして毎度のごとく我が幼馴染は自分の服を選んだら、次は私の服を見定め始めるのである。
……これが結構長いのだ。
あまり頓着しない私からすれば、服なんて着れれば良いのだ。
だがトガちゃんは、私が可愛くしていないのは許せないらしい。〝イトちゃんはセンスがないので、私が選びます!〟と、彼女が眦を吊り上げたのはもう何年も前のことだ。
確かに彼女の見立ては、こと可愛さに関しては狂いがない。だからこそ私は諦めて、人形よろしく言われるがままに着せ替えられているのであった。
ロリータファッションの店に踏み込んだトガちゃんの眼が大きく輝いた。
…………マズイ、それだけ私に着せたいものが多いということだ。これは非常に長くなる兆候だった。
繰り返されるファッションショーに辟易し始めた頃、私の前に光明が現れた。
買い物を終えたクラスメイトたちが、ぞろぞろと集まってきたのである。
「お、やってるやってる」
こちらに向かって手を上げた芦戸ちゃんに続いて、興味津々といった様子で耳郎ちゃんやお茶子ちゃんが服を見回している。
「トガちゃん、せっかくだから皆の服を選んであげたら?」
私の提案に彼女は目を光らせ、〝それはナイスアイデアです!と手を叩いた。
面白そうと破顔する芦戸ちゃんと透ちゃん。そして買い込んだお餅の袋を揺らしてお茶子ちゃんも歓声を上げる。対して耳郎ちゃんやヤオモモちゃん、梅雨ちゃんは果たして自分にロリータファッションが似合うのかしらと首を傾げている。
……ふふふ、皆の衆よ、トガちゃんの真の恐ろしさをとくと味わうがいい。
我が幼馴染の手に掛かれば、絶対に可愛くされてしまうのである。
―――――――パワーローダーside―――――――
ウキウキと一人で機械を弄っている女生徒を目にして、俺は息を吐いた。
何も休校日にまで工房に籠らずともいいだろうに。
「おい、発目。どうしてここにいるんだ?」
癖のある桃色の頭髪を翻して、少女は機嫌良さそうな笑みを返してくる。
「休日だからこそ、発明し放題じゃないですか。それに私のドッ可愛いベイビー達が、体育祭で評価されましたんですよ」
「……まあ、気持ちは分からんでもないな」
この女生徒は無類の発明好き。
だから来たいから来ているだけ、ということなのだ。
彼女の人柄を映したような癖の強いサポートアイテムたちは、使い勝手こそ改良の余地が多いものの、その性能には舌を巻くことも多い。その発明品が評価されたとあれば、より一層奮起するのも頷ける。
「でも、休むのだって仕事の内。ここぞという時にムリが効かないと、エンジニアは務まらないよ」
そう諭す俺に、彼女は半眼になって〝それをいうなら先生だって、そうでじゃないですか〟と応じる。
「先生はいいんだよ」
「ずるいですッ!」
唇を尖らせる少女に、俺はニヤリと笑みを投げかける。
「お前も先生になったら、ズルできるぞ」
「絶対嫌です! だって私みたいな変な生徒が入り浸ってくるんですよ。そんな奴の面倒なんか見切れません」
真顔で言う彼女には、どうやら自覚があったらしい。その堂々とした在り様に、俺は〝……お前なぁ〟と嘆息するしかなかった。
―――――――パワーローダーsideここまで―――――――
―――――――発目明side―――――――
「で、ずっと作ってるそれは何だ?」
「これは八木さんからの依頼品ですね」
八木さんからの依頼はフルアーマータイプのサポートアイテム。これに数々の性能を誇る装備を組み込んで欲しいということだった。
既に私は、八木さんのドールにこれでもかと装備を詰め込んでいる。まあ、体育祭の途中で使用禁止にされちゃいましたが……
その経験を生かせばよいのだ。
それに紹介してもらった研究者、轟燈矢さんは非常に優秀だった。理論上、上手くいかないところを的確にダメ出ししてくれるし、こちらに無い発想を共有してくれるのだ。まさに、この協働はエンジニア冥利につきるというものだろう。
パワーローダー先生は、仕様書を手に取り鼻を鳴らした。
「発目、試運転の前には俺に声を掛けろよ」
「はいッ」
先生は本当に優しい。
〝失敗を恐れるな、何でも自由に作れ〟と言っておきながら、本当に危険な失敗にならないようにチェックを怠らない。
八木さんのフルアーマーだって、なんなら戦争でもするのかってくらいのスペックだ。
でも先生はそれを止めることはしない。たとえ上手く行かなかったとしても、作ることから得られる経験や新たな発見を、先生は肯定してくれるのだ。
良かった、雄英サポート科の先生がパワーローダー先生で。
―――――――発目明sideここまで―――――――