私、ヴィランを目指します!   作:Sano / セイノ

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サイドキックは笑わない3

―――――――バブルガールside―――――――

 

「そろそろだよね? 職場体験で来る子たち、どんな子かな?」

ウキウキと声を弾ませた私に、サイドキックルームにいた二人が顔を上げた。

「緑谷と八木と言ったな」

落ち着いた調子で言ったセンチピーダ―は同僚のサイドキックだ。それに、頼れるインターン生のミリオ君が〝ですね〟と頷く。

 

 

応接室兼サーの仕事部屋では、現在顔合わせが行われていることだろう。

きっとあのサーのことだ、笑顔とユーモアが足りないと無茶ぶりをしているに違いない。

そんなことを考えていたら、ガチャリとサイドキックルームの扉が音を立てる。

 

 

「八木イトです、今日からよろしくお願いします!」

そして開かれた扉から姿を見せたのは、柔らかそうな長髪を揺らした可愛らしい女の子だった。童話の中から出て来たような少女は人形を引き連れており、まるでお人形さんがお人形を伴っていると錯覚してしまう。

 

 

「良かった。サーとの面接は大丈夫だったんだね」

笑みを浮かべたミリオ君の声が、ぽかんと少女に見惚れていた私を引き戻した。〝はい〟とふわりと笑う彼女は、どうやらサーのテストを無事突破したようである。

 

 

私たちも自己紹介すると、彼女は私を先輩と呼んで微笑んだ。

先輩……先輩! そうだ、私も先輩なのである! 

その事実に気づくと、途端に歓喜が沸き上がった。

 

 

「やった! 私も先輩風を吹かせられる!」

諸手を上げて喜ぶ私に、〝おいおい〟とセンチピーダ—が肩を竦めて息を吐く。

「僕だってバブルガールの後輩ですよ」

「ダメダメ! ミリオ君は頼りになり過ぎて、可愛らしい後輩感が全然ないんだもん!」

自身を指さしながら、ツッコんで来るミリオ君。それを私は頬を膨らましながら睨む。そんな私たちのやり取りを見て、八木さんはくすくすと笑った。

良かった……これで緊張も解れるかな?

 

 

そうして、新人に学校の事とかを聞いて雑談に花を咲かせていた私達。

だが、もう一人の緑谷君がいつまで経っても現れないのである。

「ちょっと様子を見てくるよ」

気を揉んだ私は、サーの執務室へと行くことを買って出る。

 

 

果たしてそこで、私はくすぐりマシーンに餌食になっているくせっ毛の少年を発見したのであった。

目じりに涙を浮かべながら笑い声を漏らしてる彼に、私は慌てて走り寄る。

「ちょっとちょっと、どうしたんです?」

 

 

そんな私に、サーは不機嫌そうに眉根を寄せた。

「彼は私に向かって、あろうことかオールマイトのものまねで勝負を挑んだのだ」

「……あちゃあ」

どうやらサーの地雷を踏み込んだらしい。よりによってこの重度のオールマイトオタクに、オールマイトネタで挑むとは、あまりにも怖いもの知らずが過ぎる。

 

 

サーはメガネに指を当て、〝ふむ、それ自体は悪くなかったのだ〟と薄く笑う。

……およ? 

意外にも好評で戸惑う私に、サーはなおも淡々と続ける。

「緑谷の顔真似は、確かに米国でのビネガースーサイド事件時のオールマイトの表情をよく再現している。だが、その身から溢れる活力という点では話にならない。そもそも声量が如何にも自信なさげだ……つまり、元気が足らなかったのだ!」

 

 

苦しそうに身を捩る被害者を捉えている装置、それを私は憎々し気に見つめてしまう。

私だって何度このマシーンの餌食になったか分からない。元気が足らないと判断される度に、無理やりくすぐられて笑わされるのである。

 

 

その度に私は誓ってきたのだ……もうくすぐりなんかで笑わされてなるものか、と。

その甲斐もあってか、最近はとんとこの装置の標的にはならなくなってきたのである。

 

 

だがここで突然、サーから無慈悲な宣告が突きつけられる。

「緑谷、君は大声で笑うのが下手だな……ふむ、バブルガール、手本を見せてやるといい」

「……へ⁉」

 

 

反論を口にする間もなく、くすぐりマシーンは緑谷君を開放し、代わりに私を掴まえたのである。

そして猫じゃらしの軟らかい刺激が、首筋や脇の下、足裏を撫で、全く身構えていない私に襲いかかってきたのである。

身もだえしながら、私は引き攣る声で吼えたてる。

「ちょ、ちょっと!……あひゃひゃひゃ!……ま、待って、ひひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

「うむ、お腹から声が出ていてよろしい。上出来だ」

にこやかに笑む上司を、私はキッと睨みつける。とはいっても、大笑いしながらなので全く様にならない。

 

 

くっそぉ。

もうこんなくすぐりマシーンで笑わされてたまるか、と思っていたのに……あひゃひゃひゃひゃひゃ!

かくして、サーの執務室にはしばらく私の笑い声がこだましたのである。

 

―――――――バブルガールsideここまで―――――――

 

 

 

「……なんか絶叫、いや笑い声? みたいなのが聞こえますね」

「ああ、またバブルガールが何かやらかしたのだろう」

首を傾げる私に、センチピーダ―が〝懲りないヤツだ〟と息を吐いた。

そっか、あのくすぐりマシーンって本当にあるのね。

 

 

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