――――――――オールマイトside――――――――
「だから安心して、オールマイト。オール・フォー・ワンは私が倒す!!」
決意を秘めた少女の眼光に、私は圧倒されていた。
そして何よりも彼女から漏れ出る輝きは、私の心に刻まれた傷を照らしていたのだ。
そうか……今更になって気づかされる。
誰もが助けを求めるように、No.1ヒーローでさえも救いの手を願っていたのだ。
こんな簡単なことも分からない私を、イト少女は喝破したのだ。そして人知れず伸ばしていた私の手、それを彼女は事も無げに掴んだのである。
滲みそうになる涙を必死に堪えて、私は立ち上がった。
「そうか、ありがとう。イト少女、君と話せてよかった」
〝え、それだけ?〟とぽかんとした様子の少女に、〝また来るよ〟と再来を誓う。
ヴィランになると嘯《うそぶ》く少女、だがその心根を私は間違えたりしない。
ヒーローでさえも救おうとする本物の英雄、その資質を彼女は秘めていた。
決めたよ……君に、託したいものがあるんだ……
――――――――オールマイトsideここまで――――――――
――どうしてこうなったぁぁああ!?
私の内心の叫びを無視して上昇するエレベーター、その中で私の手を引いたまま八木俊典はにっこりと笑う。
「ここはね、私の事務所。今向かっているのは、ヒーロー用の居住スペースがあるフロアなんだ。といってもヒーローなんて、私しかいないんだけどね。だから気兼ねせずに使ってもらって構わないよ」
遡ること暫《しば》し。
呆気なく帰った八木に私が首を傾げてから、数日後のことだ。
孤児院を再訪した八木が、私に手を差し伸べて白い歯を見せた。
「イト少女、これからよろしくね。私は君を里親として引き取ることに決めたよ!」
ということで、実親がいない私は八木俊典にめでたく引き取られたのである。
ヴィランとヒーローの敵対関係を企んでいた私の目論見は華麗に崩れ、いつのまにやら娘と父の家族関係へと劇的にシフト! そしてあろうことか、オールマイトに対して『俊典さん』と呼ぶことになっていたのである。まあ、それはお互いに『パパ』や『お父さん』はちょっと……となったからだ。
最強で最凶で最恐のヴィランを目指していると告げた結末、それが正義の味方しかもトップヒーローの娘である。頭を抱えたくなるような神の悪戯に、私は天を仰いでしまう。移り行く階数表示さえも、私を嘲笑っているようで腹立たしい。
そしてエレベーターの扉が開き、新天地が私を出迎えた。
だが、私の前に広がったのはごちゃついた空間、まさに多忙な男の一人暮らしって感じである。
「ちょっと散らかってるけど、ごめんね」
「……ちょっと?」
咎めるように私が見上げると、俊典さんは〝以前はもっと片付いてたんだけど〟と気まずそうに目を逸らながら言い直した。
「今は……かなりかな」
ここに来て、私のまずやらなければならないことが決定した。
それは片付けと掃除である!
だがその前にもう一つ! 私は俊典さんを思いっ切り蹴っ飛ばしたのである。