The Passenger: Rubicon High   作:クロームの灰

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不定期投稿です。
ごめんなさい。


First Contact

「……ハッ、ログイン成功だ。ようこそ、クソみたいな新生活へ」

 

ジョニーが、実体のない指で中指を立てて笑う。

俺の視界――ACの全周囲モニターに、赤いアラートが走った。

 

WARNING: MULTIPLE CONTACTS DETECTED

TYPE: ARQUEBUS RECON SQUAD (MT UNITS)

 

「客だ、V。NCPD(ナイトシティの警察)よりはマシな面構えだといいんだがな」

 

吹雪の向こうから、無骨な人型兵器――MTが4機、雪を蹴立てて近づいてくる。

彼らは、先ほどまで沈黙していたこの機体が立ち上がったことに、明らかに動揺していた。

 

『……おい、あの機体、動いてるぞ! 誰か乗っているのか?』

『生体反応はないはずだ……緊急停止コードを送れ!』

 

外部スピーカーが拾う、敵パイロットの焦燥。

だが、俺の耳には、そんなものは届かない。

今、俺が感じているのは、機体各部のサーボモーターが駆動する振動と、全身を駆け巡るコーラルの熱。

それはかつて、サンデヴィスタンを起動した瞬間の、あの「世界が止まる」感覚に似ていた。

 

「……ジョニー。こいつ、思ったより言うことを聞くぜ」

「ああ、お前の脳ミソが、この鉄屑のOSと混ざり合ってやがる。……いいか、V。踊り方を忘れたとは言わせねえぞ」

 

俺は操縦桿を握り込み、機体の出力を一気に跳ね上げた。

通常、ACの挙動には物理的な「慣性」が伴う。だが、Vの意志は、その法則をハックするように機体を加速させる。

 

「サンデヴィスタン……!」

 

俺が呟いた瞬間、機体のバックパックから赤いコーラルの火花が噴き出した。

できると思った。だから呟いた。結果として、できた。想定外の形で。

雪原を滑るような超高速機動。

敵のMTが放った弾丸が、スローモーションのように背後へと流れていく。

 

『なっ……速すぎる! 何だあの動きは!?』

 

絶叫が響く前に、俺は一機目の懐に飛び込んでいた。

右腕のパルスブレードを抜刀する。

ナイトシティでモノワイヤーを振るった時と同じ、流れるような一閃。

 

青白い光が雪原を裂き、MTの装甲を紙のように切り裂いた。

爆炎。

ジョニーがコックピットで、リズムを刻むように足を踏み鳴らす。

 

「最高だ、V! やっぱ戦場には爆発(ビート)が必要だよな!」

 

残るは3機。

俺は赤い残像を引きずりながら、次の獲物へと視線を向けた。

 

「……ははっ! 見ろよV、あのアホ面。お前が幽霊だって気づいてもいねえぞ」

 

ジョニーは計器盤の上に座り込み、実体のないタバコをふかしながら、迫り来るMTの群れを眺めていた。弾道予測の赤い線がコックピットを埋め尽くしても、彼は眉一つ動かさない。

 

「おい、ジョニー! 指示を出す気がないなら、せめて視界を塞ぐな!」

「あ? 指示だと? 冗談抜かせ。お前はナイトシティの死神だろ。あんなブリキ缶の狙い、目を瞑ってたってかわせるはずだぜ」

 

俺は毒づきながら、機体のスラスターを強引に吹かした。

飛来するミサイルの雨。本来ならACの機動力を超えるはずの猛攻だが、Vの感覚はサイバーウェアが肉体だった頃の「加速」を覚えている。

 

「……ッ、サンデヴィスタン!」

 

赤い粒子が機体から噴き出し、弾道が止まって見える。

MTの懐に滑り込み、パルスブレードで一機を両断した。その爆風を背に受けて着地した瞬間、ジョニーが拍手するように手を叩いた。

 

「いいじゃねえか。今の無慈悲な突っ込み……あの全身クロームのクソ野郎、スマッシャーが見てたら嫉妬で回路を焼き切ってただろうぜ」

「……あんな化け物と一緒にするな。集中させてくれ」

「集中? ケツに火がついてる時に言うセリフかよ。ほら、後ろからもう一匹来てるぜ。……踊れよ、V。観客()を退屈させるな」

 

ジョニーは警告を出す代わりに、わざと機体のスピーカーを最大出力でジャックした。

流れ出したのは、耳を劈くような激しいギターのリフ。SAMURAIの爆音だ。

 

「これならリズムも取りやすいだろ? さあ、ルビコンの連中に『ナイトシティの流儀』を叩き込んでやれ!」

 

ジョニーを思考の隅に追いやり、全神経を「鋼鉄の肉体」に集中させる。

最後の一機。敵のパイロットは、仲間が次々と鉄屑に変わる光景に理性を失い、手当たり次第にバズーカを乱射していた。

 

「……終わりだ」

 

あえて回避せず、正面から突っ込む。

弾頭が直撃する寸前、パルスブレードの光刃を振るい、物理法則を無視したタイミングで弾道を「弾き飛ばす」。

驚愕で凍りついた敵のコックピットに、零距離でブレードを突き立てた。

 

熱エネルギーが内部から敵機を融解させ、真っ赤に焼けた鉄塊が雪原に沈む。

 

「……フゥ。……なぁ、ジョニー。次からはせめて、静かに戦わせてくれ」

「断るね。ロックがねえ戦場なんて、ただの作業(ワーク)だ。俺たちがやってるのは……『革命』だろ?」

 

ジョニーは満足げに笑い、ホログラムの姿をノイズの中に消した。

 

『……戦闘データを確認。あなたの『異質な』戦闘能力を高く評価し、ライセンスを発行します。傭兵名を入力してください。』

 

傭兵名...?そんなの

 

「Vだ。」

 

『独立傭兵:V。認証を確認しました。これより、貴方を独立傭兵として識別します。

 

オールマインドは、全ての傭兵のためにあります。

貴方が戦場で積み上げる記録は、我々の共有知となり、より良き闘争の糧となるでしょう。

 

おめでとうございます。

貴方の歩む道が、オールマインドの目的と合致することを願っています。

 

それでは、ミッションの受諾をお待ちしています。

良き闘争を、V』

 

「よし、これで『市民権』獲得だ。……さあ、V。ナイトシティ流の挨拶をかましてやれよ。」

 

雪原に、重厚な金属音が響き渡る。

それは、ルビコンのどの勢力にも属さない、新たな「伝説」の産声だった。

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