それでは、どうぞご覧ください。
「ワークナー先生、失礼します」
「おぉ、来たか」
リアーナとの勝負の後、レイはワークナーのところに訪れていた。
「それで、要件というのは……」
「あぁ……あれから、左眼の調子はどうだ?」
ワークナーはレイにそんなことを聞いてきたのだ。何故、レイの左眼の調子を訊いているのかというと……
「はい、魔眼――――
そう……レイはこの世界で唯一の魔眼持ちという特異体質であり、以前にそれが原因で体調不良になったことがあるため、こうしてワークナーの部屋に定期的に通っているのだ。ちなみに真理眼というのは、見た相手の魔法を解析し、それを情報として見ることができたり、周りの魔力の流れを見ることができるといったものだ。
「真理眼……まだまだ謎は多いな……」
「そもそも、魔眼に関する文献を見つけるのにも一苦労ですしね……」
レイと同じ魔眼そのものは昔に存在したらしいが、レイの言う通り残っている文献がとても少なく、今となっては魔眼の存在自体を知らない人や、知っていても絶滅したと思っている人が大半となってしまっていた……。
「じゃあ、僕はこれで――――」
そうして少し話をした後、レイは寮の自身の部屋に戻ろうとしたが……
「ワークナー!!」
「エドワルド先生?」
突然、エドワルドが焦った様子でワークナーの部屋へ入ってきたのだ。
「どうしたんです?」
「!レイもいたか……いやそれよりも、シオンらが無断にダンジョンに行ったらしい」
「なんですって!?」
「っ……」
「貴族の倅め……ダンジョンは広い、そこの使い魔に居場所を探らせろ」
どうやらシオンたちが無許可でダンジョンに行ってしまったらしく、その行方を探すように言ってきたのだ……実は、シオンはウィルとワークナーの会話を聞いていたらしく、ウィルよりも先にモンスターを倒して単位を取らせないようにしたいようだ。
「彼らが向かったフロアは?」
「……6層だ」
それを聞いたワークナーは、鳥の使い魔の入った籠を下ろすと……
「でしたら、必要ありません」
「何……?」
「……あぁ、そういうことですね」
「どういう意味だ、レイ?」
「……そこにはウィルがいます」
ワークナーは魔力を机の上の水晶玉に流し込むと、その中にはウィルが6層にいるはずのない単位数10のモンスター、イヴィル・センチネルと戦っている様子が映し出されていた。
「は、馬鹿な……!?」
その光景は、エドワルドに対し……
「……ウィルは正しく異端児です」
「どういうことだ?」
「魔導士にあるまじき怪力、ドワーフの如き強健性、そして一度見た敵の動きを掌握する洞察能力……確かに、ウィルは一切の魔法が使えない。しかし彼は、この魔法世界の中で……唯一の戦士!」
「……決まりだ」
そう呟くレイの目線の先には、センチネルの右腕を斬り飛ばし、先ほどまでセンチネルが持っていた大剣を取りに歩くウィルの姿があった。そして……
「その斬撃は、雷をも凌ぐ!」
ウィルが大剣でセンチネルを両断し、撃破することに成功したのだった。それを見たエドワルドは……
「巫山戯るな!!こんなこと、あってはならない!魔法を使えぬ身で、魔法を上回る存在など……!」
「あっ、エドワルド先生!」
「……」
(まぁ、エドワルド先生はこういう反応するよね……ウィルに何も無いといいけど……)
そう言いながら、部屋を出ていってしまうのだった……。
◇
シオンたちを助けた翌日、ウィルはワークナーの補習を受けていた……その内容は、連続模擬試験などのハードなものだったらしい。補習を終えたウィルは、コレットと共に廊下を歩いていた。ちなみにレイはここにはおらず、今は修練場で鍛錬をしているところだ。すると……
「本当だって!シオンがイヴィル・センチネルを倒したんだ!」
廊下でシオンの取り巻き2人が、周りの生徒たちにそんな説明をしている声が聞こえてきた……どうやらその2人にはシオンがセンチネルを倒したように見えたらしく、ウィルがモンスターを倒したことをシオンは言っていなかったのだ……言ったとしても、信じられてはいなかっただろうが。
「……」
(違う……あれは本当は――――)
シオンの脳裏には、その実力でセンチネルを倒すウィルの姿が思い出されていた。すると……
「っ……!!」
シオンは生徒たちの後ろを通りがかろうとするウィルを見つけ……
「巫山戯るなよ……無能者のくせに……!!」
その胸ぐらを掴んでそう言い放ったのだ。そのせいで、ウィルの手元から教科書が落ちてしまう……。
「ちょっとシオン!貴方またそうやって、一体何のつもり!?」
「っ……」
ウィルが何も言わずにいると……
「……ふん……」
「お、おい?」
「シオン?」
シオンはウィルから手を離し、どこかに歩いていってしまった。
「何よあれ……ウィル、シオンと何かあったの?」
「うん……ちょっと、ね」
『シャーッ!!』
その後、ウィルとコレットは自習室で筆記の勉強をしていたが……
「実技を落とし続ける貴様を見かね、補習を開いてやる……ありがたく思え」
そこにエドワルドが補習をすると言い、ウィルを修練場に連れて行ってしまったのだ。
「エドワルド先生が補習ですか?しかも僕だけ……」
「その通りだ。それで……レイ・セルフォルト、何故ここにいる?」
「何故って……見てわかる通り修練ですけど?」
修練場ではレイが自身の魔法の鍛錬をしていたのだ。エドワルドに声を掛けられたレイは、そう言いながら魔法で剣生み出した剣を消した。
「まぁいい……これからウィル・セルフォルトの補習を行う。終わるまで下がっていろ……それと、手は出すなよ?」
「……分かりました」
レイはエドワルドの指示に従い、修練場の上に上がる階段へ向かおうとしたが……
「……ウィル、気を付けて」
「えっ?」
「いやな予感がする」
すれ違う瞬間、エドワルドに聞こえない声量でウィルにそう言い、今度こそ階段を登っていった。そして……
「さて、ウィル・セルフォルト……私は一方的に貴様を見極める」
「見極める……?」
「課題内容は、私に一撃を到達させること。貴様に拒否権はない……達成できれば、実技の単位5を与えてやろう。だが、達成できなければ……
この学院から去ってもらう」
「た、退学!?」
「っ……」
(案の定こうなったか……)
「無能者など、至高の五杖を見上げることさえ許されない……戦う動機は与えた、始めるぞ」
エドワルドはウィル目掛け、次々と得意の闇魔法を放っていく……エドワルドはかつて、至高の五杖に最も近かったと言われており、敗れたとはいえ塔に登り詰めるまでの実力を持った魔導士なのだ。
「
「っ!」
(闇魔法の下位呪文……それなのにこの威力……!)
ウィルはスピードを活かしてエドワルドの背後に回り込み、蹴りを放とうとしたが……
「
「くっ……!」
(防御魔法……!)
エドワルドはドーム状の闇の障壁を展開し、その攻撃を防いだのだ。
「障壁に蹴りを放つなど……全くもって度し難い」
「うわっ!?」
ウィルは障壁を破れず吹き飛ばされ、さらに攻撃魔法で床に撃ち落とされてしまった。
「2つだ、ウィル・セルフォルト……私が使うのはお前を焼く炎と、見苦しい蹴りを防ぐ障壁のみ……魔導の教理、第27項『千の魔法に及ばぬのなら、一を極めよ。それは千の矢と同義になる』」
「!?」
(単一魔法の
ウィルはその魔法の一斉射撃を避けようと走るも、エドワルドの高い技術によって命中させられ、さらには床へと叩きつけられてしまった。
「言うまでもなく、至高の五杖とはあらゆる魔導士の極致……私如き越えられないようでは、辿り着けるはずもない」
エドワルドはゆっくりとウィルに近づきながら……
「『ガーザロンザの戦い』について出題しよう……愚かなドワーフは、一万の軍勢を持って反乱を起こした。では、これを鎮圧した魔導士の数は?」
突然、そんな問題を出題したのだ。ウィルは必死に立ち上がろうとするが……
「一人だ!一振りの杖により、一万もの戦士は壊滅した!それがこの世界の理……剣では杖に到れん!決して!!」
「ぐっ……!?」
「愚かな願望など捨てろ……」
頭を踏みつけられながら、そう言われてしまう。だが……
「それでも……それでも僕は……至高の五杖に辿り着きたい!!」
「何がそうまで、貴様を駆り立てる?どのような高尚な理由が、その胸にあると言うのだ!?」
ウィルはゴーグルを握りしめると……
「好きな人と一緒にいたい!」
「…………は?」
「エルフィとの約束を……レイと一緒に果たしたい!!」
それを知ったエドワルドは……
「戯けが……不純!不潔!不浄!愚かしくも浅ましき色恋で、魔法の頂を目指すなど!」
「あなたにとって下らない理由だったとしても、どんなに道が険しくても――――」
「恥を知れ!!」
「僕はエルフィーやレイと一緒に、夕日を観に行く!!」
その直後……
「!?」
「剣だと……!?」
ウィルの前に、1本の青白い刀身をした剣が突き刺さった。
「これは……!」
「ウィル、使って!」
「!……ありがとう、レイ!」
「レイ・セルフォルト、貴様――――」
「出したのは剣ですよ?先生の言葉通り、手は出していません」
「っ……!!」
その剣はレイが魔法で創り出したもので、普段ウィルが使っているものと遜色ないものとなっていた。ウィルはゴーグルをつけてレイが創り出した剣を握り、エドワルドと対峙した。すると……
「!ウィル、これを――――って、あれ?」
そこにキキからの助けに応じたコレットが、ウィルの使っている剣を持ってきたのだ。コレットはすぐさま剣を投げ渡そうとしたが、ウィルが既に剣を持っているのを見て動きを止める。
「コレット?」
「あれ?レイもいる――――ってことは、あの剣はレイの?」
「うん……エドワルド先生に『手を出すな』って言われてたけど、流石にあそこまでされていたらね……」
「!……ありがとね、レイ」
エドワルドと対峙するウィルを見て、レイは僅かに冷たい声色でそう言った……レイもウィルのことを信じて静観していながらも、あの光景を見ては我慢が出来ないかったようだ。
「潰えろ!」
エドワルドはウィルに攻撃魔法を放つも……
「っ!!」
ウィルは剣でその魔法を斬ったのだ。
(!これ、モリアの剣と同じ……流石レイだ……!)
ウィルは普段使っている剣と同じ効果があることに驚きながらも……
「終わりだ!!」
「!」
再び襲いかかる一斉射撃を避け、飛び散った瓦礫を伝いつつ、迫りくる魔弾を斬ってエドワルドへと近づいていく。それを見たレイは……
(『ガーザロンザの戦い』には続きがあるドワーフの猛将ガレスは、全ての同胞を失いながら、それでも己の一撃を与えた。魔導士は勇敢な戦士を讃え、地位を与えた……まさに今のウィルは、あの猛将ガレスのようだ……!)
そんなことを思っていた。ウィルは天井を蹴って加速し、その勢いでエドワルドの障壁を破壊する。そして……
「「っ!!」」
2人は互いに杖と剣を突きつけあった……エドワルドの頬には、一筋の切り傷があった。
「……ウィル・セルフォルトに、単位5を与える」
エドワルドは背を向けると、そう言い残して修練場を後にした。
「ウィル!」
「ウィールー!!」
『ナーッ!』
条件を達成したウィルは、その場に座り込んでしまった。レイ、コレット、キキは座り込んでいるウィルのところへと駆け出していく。
「だ、大丈夫!?」
「何とかね……レイの剣のおかげだよ。コレットも来てくれてありがとう。もちろんキキも」
『ナッ!』
ウィルはこの場の全員に感謝を伝えるのだった。すると、ウィルはレイの方を向き……
「レイ……僕はさ、君にも追いつきたいんだ」
「えっ?」
「さっきは言わなかったけどさ……至高の五杖を目指す理由、それはエルフィだけじゃなくて、君にも追いつくためなんだ。こんな僕に優しくしてくれて、魔法も剣も使えて、誰かを守れる強さを持った凄い幼馴染にね」
急にそんなことを言い出したのだ。それを聞いたレイは……
「……うん、楽しみにしてるよ」
少し嬉しそうな表情をしながら、ウィルの手を取って立ち上がらせるのだった……。
読んでくださり、ありがとうございます!
今回でアニメ第2話の範囲まで終わりました。次回の投稿まで少し間が空くかもしれませんが、楽しみにしていただけると幸いです。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。