それでは、どうぞご覧ください。
ウィルが魔導大祭に出場が決まった翌日……
「お願いレイ!私たちのチームで奪冠に出て欲しいの!」
「……何かあったの?」
「え?う、うん……実は――――」
コレットはウィルから聞いた事の顛末をレイに話した。
「へぇ……ユリウスが……」
『!?』
それを聞いたレイは、静かに怒りを露わにしていた……それを感じ取ったのか、2人は思わず肩を震わせる。レイもドワーフたちには世話になっており、よくドワーフたちの作った剣を見せてもらい、それを新たな魔法の創出の参考にしているほどだ。そのため、レイもドワーフたちが侮辱されたことに、ウィルと同じくらい頭にきているのだ。だが……
「それで出場の件だけど……先約があるんだ」
「先約……?」
「誰かともう組んでるの?」
「うん、リアーナに誘われてね……だからごめん、今からその誘いを断ることはできない」
先にリアーナに誘われたこともあり、ウィルとコレットのチームに入るのを断った。
「レイが謝る必要はないよ。それにこれは、僕がやるって決めたことだから」
「そっか……なら僕からは何も言うことはな――――あっ」
「どうかしたの?」
すると、レイは真剣な表情をし……
「これだけは言っておく……もちろん、僕たちは優勝を狙いに行く」
「「!」」
「けど、ウィルの勝負の邪魔はしない」
「えっ?」
「邪魔しないって――――」
「その代わり……必ず勝ってよ」
「!……うん、もちろん!」
2人はそう言い、拳と拳を合わせた。
「コレットも、ウィルのこと頼んだよ」
「えぇ、任せておいて!」
◇
「『磨き、競い、極めよ――――その果てに空を支え、邪を退け礎とならんことを』……始祖メルセデスの御言葉のもとに、魔導大祭の開催を宣言します」
観客たちが大祭の開幕に盛り上がる一方で……
「各競技目を離すな、しっかり分析しろ!どこに金の卵が転がっているか分からないからな!」
『はい!』
塔からスカウトのために降りてきた上位魔導士たちは、競技に出場している生徒たちに目を光らせていた。
「観客に紛れて早速、スカウトたちが目を光らせていますね……塔も手が早い」
「塔だけではなく、他の魔導士も押し寄せる祭典ですから……有望な学院の生徒を狙って引き抜き出す競争は、もう始まっています」
発掘機関であるアイリスもこの場に来ており、今行われているスカイレースを観戦していた。そのスカイレースでは……
『完璧才女の牙城崩れず!今回のタイムは……レコード達成!スカイレース2連覇を達成し、歴代トップに君臨だ!!』
見事にリアーナが優勝し、2連覇と新記録を達成していたのだ。それを見たアイリスは……
「では、失礼いたします」
「あら?もう行ってしまうの?」
「えぇ、私も仕事をしないといけないので……それに――――応援したい先輩がいるんです!」
声色を変えてそう言うと、アイリスはコルドロンのいる部屋を後にした。その一方で……
「奪冠、頑張ってシオン!」
「俺たちは出られないけど、応援してるから!」
「まぁ、レディーの頼みは断れないからね?」
シオンは奪冠に出るということで、取り巻きの2人から激励されていた。何故、シオンが奪冠に出ることになったのかというと……
『あのねシオン……あなたに頼むのは嫌なんだけど……シオンしかいないの!私たちのチームに、入ってくれない?』
コレットにそう頼まれたからだ。
(コレットのやつ、ようやく誰と行動するべきなのか分かったか!)
シオンは張り切りながら、選手の控室に向かうが……
(落ちこぼれと僕なら、当然僕を――――)
「ん?」
「って、何で落ちこぼれがいるんだ!?」
ウィルがいることが想定外だったのか、そう大声を上げた。
「あらシオン、『私たち』のチームって、ちゃんと伝えたじゃない?」
「っ……」
「奪冠の出場条件は、3人の合計単位数が21000以上……ウィルが出るためには、あなたを誘うしかなくて……」
複雑そうな表情をするシオンに対し、ウィルは……
「ごめん、巻き込んで」
「冗談じゃない!何で無能者なんかと一緒に!そもそも、何で高等競技に出ようとしているんだ!?おい落ちこぼれ!何とか言え!」
そう怒りを露わにしたが、後ろを通るユリウスにウィルが視線を向けているのを見て……
「……」
(僕を見ていない……?)
「何だか一悶着あったらしくて、ユリウスが出場する奪冠にどうしても出たいってウィルが……」
「……」
(無視だと……僕にあんな屈辱を与えておいて、眼中に――――)
「っ……」
◇
「さぁ、これより魔導大祭午後の部を開催いたします!」
多くの花火が打ち上がる中、実況である生徒から午後の部開始の宣言がされた。
「実況は引き続きこの私、マイク・マイウス!そして解説は、嫌われている教師ナンバー1!陰湿かつ陰険、生徒の妄想の中で何度ケツに杖を叩き込まれたか分からない暗蛇!俺の単位を返せ!エドワルド・セルフェンス先生――――って、誰だ!この人選したやつ!?蛇の隣で実況とかざけんなゴラァ!!」
「マイウス、次の授業で棺を用意しておけ」
「ひぃ!?すみません殺さないでぇ……!」
マイクはエドワルドの言葉に怯えていたが……
「き、気を取り直して、次は本日のメインイベント!奪冠です!妖聖の派閥の皆様、よろしくお願いしまーす!」
すぐに実況へと戻り、妖聖の派閥のエルフたちに何かを頼んでいた。それを合図に……
「遥か遥かよ、無想の彼方」
「幻想をここに、故郷を我らに」
「血が囁き、耳が知り、瞼が描く、我らが尊き楽園よ」
「……接続開始」
「フェアリーオーダー」
「バルニカ」
「アシニア」
「オーシス」
「クァンシア」
「ウィーシェ」
「領域設定、花開け――――」
『
妖聖の派閥の魔導士たちがそう唱えると、スタジアムの周りに多種多様な自然領域が現れたのだ。
「火山地帯、湖沼地帯、岩石砂漠地帯、草原地帯、樹海地帯……何でもござれなエルフ様々の大術式がフィールドとなります!」
これこそがエルフだけに許された幻想を具現化する魔法であり、奪冠はこの魔法によって作られたフィールドが舞台となる。
「他競技とは異なる3人1組でのチーム戦!選手はフィールドの外暗部からスタートし、中央に位置するこのスタジアムへと進行!皆さんの目に見えますアリーナの中央、あの王冠を手にしたチームが勝者です!無論、行く手を阻むのは大自然だけではありません!我が校が誇る教師陣謹製のトラップが、山程配置されています!スタジアムまで最短距離をぶち抜くのもよし!他のチームを妨害するもよし!魔導大祭の中でも、殊更ヤバくて白熱するまさにバトルロイヤルとなりまぁああああす!」
「3人1組の運用、異分子への対処、ダンジョン攻略をより意識した実戦的な競技だ。スカウトの注目度も高く、出場する選手も優秀な者の傾向が――――」
「その通ぉおおおおおり!!この競技には優秀な生徒が集う、まさにハイレベルな戦いが繰り広げられます!大きな声では言えませんが、非公認の裏賭博ではイグノール・リンドール選手率いる第12小隊、ユリウス・レインバーグ選手率いる第9小隊、そして、『天剣の杖』レイ・セルフォルト選手と『完璧才女』リアーナ・オーウェンザウス選手のいる第7小隊が1番人気!因みに私は、イグノール選手に全財産ぶち込んでいます!!」
「何だと!?」
「そして!」
「おい!」
非公認の裏賭博があることを知って驚くエドワルドの声を余所に、マイクは選手の紹介を続けていく。
「別の意味での注目株、最低人気の第6小隊!優勝候補のシオン選手と並んで、あの無能者がいます!」
その言葉に、ほとんどの観客たちは揃って笑い声を上げるのだった。
◇
「岩石砂漠地帯の小隊も配置につくように!」
『はい!』
ワークナーがそう指示を飛ばすと、岩石砂漠地帯の小隊の選手たちはスタート地点へと向かっていく。そこには……
「なっ――――ウィル!?」
もちろんウィルの姿もあり、奪冠に出場することを聞かされていなかったワークナーは、ウィルの両肩を掴んだ。
「まさか競技に出るつもりか!?魔導大祭には関わるなとあれほど――――」
「ごめんなさい。みんなに笑われても、この勝負だけは勝ちたいんです」
「お、おい!」
「ウィル!」
コレットはワークナーに頭を下げた後、ウィルとシオンのことを追いかけていった。
「あぁもう!どうなっても知らんぞ!」
◇
ウィルたちがスタート地点に向かっている頃、レイたちも配置についていた。レイの隣には奪冠にレイを誘ったリアーナと……
「今日はよろしくね、レイ君!」
コレットの親友であるロゼがいたのだ。レイとロゼはコレットの繋がりで知り合っており、それなりに話す仲ではあった。実はレイは最初、ロゼが面倒事を避けているのと何故か本当の実力を隠していることを知っていたため、この話を受けてくれるとは思っていなかった……が、
『え?別にいいよ』
『そっか、やっぱりダメ――――え?いいの?』
『うん!』
何と二つ返事で、奪冠に一緒に出てくれることになったのだ。その理由を訊こうとしたレイだったが、本人に内緒と言われてしまったため、それ以上追及するのを止めた。
そして、レイたちが配置についてから少しして……
『大変!長らくお待たせしました……さぁ、いよいよ奪冠――――開始!!』
マイクの合図で、選手たちは一斉に走り出した。それはレイたちも例外ではなく……
「行くよ」
「あぁ」
「りょーかい!」
レイに続いて、リアーナとロゼも駆け出していく。そんな3人の前に……
『早速、選手たちの前に立ちはだかるのは、ゴーレムの群れだ!まさに巨壁となって迫りくるゴーレム、これを突破することはできるのか!?』
教師陣が設置した罠の1つであるゴーレムの群れが立ちはだかったのだ。そんなゴーレムたちを前に……
「さっさと突破する……!」
レイたちは止まることなくスピードを上げて駆けていく。そして……
「リアーナ!ロゼ!」
「分かった!」
「任せといて!」
そのレイの声に応えるように……
「血統雷伝:騎士甲冑・雷装――――」
リアーナは得意の雷魔法で全身に雷を纏わせた。さらに……
「
そう唱えると、レイとロゼの2人にも雷を纏わせたのだ。
『な、何とリアーナ選手!自身の雷を他の2人にも纏わせたぞ!?』
この魔法はリアーナの家に伝わる魔法の一種で、習得するのが難しいと言われている魔法だ。効果としては、このように他者にも雷を纏わせることで、その機動力などを引き上げたり、纏わせた雷で敵の攻撃を防御することが可能となっている。その雷を纏ったレイは、リアーナと共に前に出ると……
「
「っ!?」
雷を纏わせた剣を無数に放ち、次々と行く手を阻むゴーレムを倒していく。これはレイの剣雨にリアーナが纏わせた雷導の雷を合わせた即興の魔法で、これにはリアーナも隣を駆けながら驚きの表情を浮かべていた……が、それを見て触発されたのか、近くに突き刺さっていたレイが出した剣を取ると……
「
その剣に雷を纏わせ、そのままゴーレムに向けて振るうことで雷の刃を飛ばしたのだ。そうして次々とゴーレムを倒していく2人の周りから、他のゴーレムたちが襲い掛かるも……
「穿て、黄泥の槍柱――――
ロゼが大量の泥の槍を地面から出現させる魔法でゴーレムを倒し、2人のことを守ったのだ。レイがロゼをチームに誘った理由として、レイ自身とリアーナが前衛のため、その守りを補うことのできる人物が必要不可欠だったからだ。そんなレイの考えや作戦は見事にはまり……
『ま、まさに電光石火!第7小隊が1番にゴーレム地帯を突破したぞ!!』
『見事な役割分担だ。作戦も緻密に練られている』
どのチームよりも1番にゴーレムを倒し切り、先へと進むのだった。
読んでくださり、ありがとうございます!
今回は、リアーナとロゼのオリジナルの魔法を登場させましたが、いかがだったでしょうか?この先も原作キャラが、オリジナルの魔法を使う機会があるかもしれません……。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。