杖と剣のウィストリア ~天剣の魔導士~   作:アキ1113

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 今回から、総合実習編に入っていきます。

 それでは、どうぞご覧ください。



第9話 パーティー結成

 

 「ようし、杯は持ったな?じゃあ、俺たちのために戦ってくれたウィルの勝利と、レイたちの奪冠優勝を祝って――――乾杯!!」

 

 『乾杯!!』

 

 魔導大祭が閉幕した後、ウィルたちはドワーフのジーナが経営する『雌鳥と豆の木亭』で祝勝会を行っていた。そこには、ウィルやレイはもちろん、コレットとワークナー、さらにはレイとチームを組んでいたリアーナとロゼもいたのだ。

 

 「ありがとなウィルよ」

 

 「あんたも頑張ったねぇ!」

 

 「あの走りは見事だったぞレイ!」

 

 ウィル、コレット、レイがドワーフたちにそう言われる中……

 

 「あなたたちも凄かったわ!」

 

 「あ、ありがとう」

 

 「ありがとね!」

 

 リアーナとロゼも、ドワーフの女性たちから大祭での活躍について絶賛されていた。

 

 「いつもウィルやレイがお世話になっております」

 

 「あぁいや、そんな!」

 

 「何でお前だけ……」

 

 一方でワークナーも、ドワーフたちに挨拶回りをしていた。

 

 「先生、俺たちは何もしてないよ」

 

 「!……今後とも、よろしくお願いします」

 

 「あぁ!」

 

 それから祝勝会は盛り上がり……

 

 「それで?ウィルは塔にスカウトされたのか?」

 

 ドナンがウィルにそう訊いてきたのだ。それに対し……

 

 「はぁ……無理に決まってるでしょう?仲間割れした挙句、競技自体も勝てなかったんだもの……」

 

 「それに関しては……何かごめん」

 

 「!ううん、レイのせいじゃないわよ!これも全部シオンのせいなんだから!!」

 

 「で、そのシオンとかいうもう一人のチームメイトは?」

 

 ロスティがシオンは来ていないのかを訊くも……

 

 「あー……誘ったんだけど―――――『誰が打ち上げなんか行くか!』って……」

 

 「やっぱりか……」

 

 「まぁ、いいじゃねぇか?レイのチームメイトの2人は来てくれたことだし、ウィルは勝負に勝って、俺たちはちゃんと謝ってもらったんだからよ!それに――――」

 

 ドナンが目を向けた先には……

 

 「何故だ!?何故私がドワーフの酒場で店員なんかを!?」

 

 「言葉だけじゃなくて体で返すのがドワーフ流さ。店員が丁度足りなかったからね。ほら、いつまで洗ってんだい!ゲラール豆のソテー、上がったよ!」

 

 「は、はいぃ!!」

 

 ユリウスとその取り巻き2人が、この店でバイトをしていたのだ。

 

 「無能者に負けたせいで、私にもスカウトが来なかったというのに……くそぉおおおおお!!」

 

 「しっかりやれよ、坊主!」

 

 「ふふっ」

 

 「因果応報ね」

 

 そんな様子を見て……

 

 「やれやれ……」

 

 ワークナーは酒を飲みながら、そんなことを口にした。

 

 「ワークナー先生……打ち上げなんてダメでしたか?」

 

 「開く前に止めなかった時点で今更だ。そんなことより、魔導大祭に出場し、あれだけ暴れまわって……明日からどうするつもりなのか……」

 

 「みんなウィルの実力が分かって、見直してくれるんじゃ……?」

 

 「それだけで済めばいいがな……私はもう知らないぞ?」

 

 「まぁ少なくとも、これでみんなのウィルに対する意識は確実に変わったはず――――前のようなことも、少しは減るといいですけど」

 

 「私はレイからその実力を聞いていたものの、実際に見たのは初めてだった……が、確信した。ウィルは、私たちにはないものを持っている」

 

 「私はコレットから聞いてたけどね?」

 

 リアーナとロゼはそう言うと、ドワーフたちと笑っているウィルの方へと目を向けるのだった。

 

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 

 祝勝会の次の日、レイはリアーナと共に廊下を歩いていた。

 

 「ん?あれは……」

 

 「どうした、レイ?」

 

 レイとリアーナが目を向けた先には……

 

 「俺たちとダンジョンへいかないか?」

 

 「「え?」」

 

 「っ……お前の馬鹿力だけは、認めてやるって言ってるんだ!だから俺たちとダンジョンに付き合え!」

 

 ウィルが総合実習のパーティーに勧誘されている光景があったのだ――――人にものを頼む態度としては、上から目線過ぎるが……。

 

 「抜け駆けはさせないわよ?私たちだって、ラーナーに声を掛けようと思ってたんだから!」

 

 「邪魔するなよエマ!」

 

 「魔導大祭の立ち回り見たぜ!うちのパーティーに入らないか?」

 

 「待てよ!勝手に話を進めるな!なぁ、俺たちのところに来てくれよ」

 

 「えっ?あ、いや……ちょ……」

 

 ウィルのもとには、次々とパーティーを組みたいという生徒たちが集まっており、今までにない出来事にウィルは戸惑いながら後ずさっていた。

 

 「魔導大祭でウィルの実力を知って、みんなの目の色が変わってる……ワークナー先生が言ってた通りになったわけか……」

 

 「あの暴れようだったからな……こうなるのも必然、か」

 

 すると……

 

 「ま……待ちなさい!これまでウィルのことを散々馬鹿にしてきたくせに、虫が良すぎるわ!」

 

 『あ……』

 

 「ほら、ウィルだって怒ってるじゃ――――」

 

 「コレット……凄いよ!僕が誘われるなんて!こ、これが友達ってやつかな?」

 

 「あ、ダメだこれ」

 

 ウィルは怒っているのではとコレットは思っていたが、当の本人は目を輝かせながら、嬉しそうにそう言っていた。

 

 「……」

 

 (ダメだなあれは……ウィルに万年友達不足の反動が来てる……)

 

 レイはウィルのそんな様子を見て、内心でそんなことを思っていた。すると…… 

 

 「邪魔しないでよコレット!そもそも、貴女が彼を独り占めしていたんじゃないの?」

 

 「なっ!?」

 

 「みんなでダンジョンに行くの……もちろん、欲しいモンスターは譲り合うわ!」

 

 ウィルをパーティーに誘いに来た1人であるエマ・クレバーが、ウィルにそんな条件を提示したのだ……が、

 

 「だから私たちと一緒に――――」

 

 「だめぇ!!」

 

 「!?」

 

 「ウィルは明日、私と用事があるの!ふ、二人で買い物に行くんだから!!」

 

 「……んん??」

 

 コレットは勢い余って、ウィルとデートの約束をしているともとれることを口にしたのだ。そんな光景を見て……

 

 「コレット……あれ完全にデートのつもりで――――」

 

 「レイ、明日は……空いているか?」

 

 「ん?明日は空いてるけど……?」

 

 「そ、そうか……なら、私たちも行くか」

 

 「?行くって……どこに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「で、デートに……だ」

 

 「………はい?」

 

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 

 その翌日、レイはセントビオラ広場の近くでリアーナと待ち合わせをしていた。そこに……

 

 「そろそろ時間だけど――――」

 

 「ま、待たせたな」

 

 いつもの学院の制服姿とは違い、白の長袖のドレスシャツに紫のブローチ、そして黒いミニスカートにガーターベルトを着た姿をしたリアーナが現れたのだ。リアーナは少し顔を赤らめながら……

 

 「そ、その……どうだ?似合っているか?」

 

 レイにそう訊いたのだ。

 

 「うん、もちろん似合ってるよ」

 

 そんなリアーナに対し、レイは素直に感想を言ってみせた。

 

 「!そ、そうか……良かった……

 

 「リアーナ?」

 

 「!な、何でもない……さぁ、行こうか」

 

 リアーナは嬉しそうにしながらも、レイの手を引き街へと繰り出していった。まず最初に2人は、少し遅めの朝食を食べるために近くにある喫茶店を訪れていた。

 

 「ご注文はお決まりでしょうか?」

 

 「じゃあ、これと……あとこれも。リアーナは?」

 

 「私は……これとこれと……これも頼む」

 

 「かしこまりました」

 

 2人の注文を聞いた店員は、そう言ってカウンターの方へと歩いていった。

 

 「それにしても、こんな店があったなんてね」

 

 「!あ、あぁ……」

 

 (本当は昨日、急いで調べたのだが……)

 

 そんなやり取りをしていると……

 

 「お待たせいたしました」

 

 2人が注文したものが届いたのだ。ちなみにレイはサンドイッチとコーヒーを、リアーナはレイとは別の種類のサンドイッチと甘めのコーヒー、そしてデザートのスイーツを注文していた……ちなみにサンドイッチの量としては、リアーナは多めのものを注文している。

 

 「「いただきます」」

 

 「……ど、どうだ?」

 

 「!うん、美味しいよ」

 

 「そ、そうか……!」

 

 リアーナは自身が連れて来た店の料理の味が、レイの口にあったことに安堵していた。それから2人は、自身が注文したものを食べ終えた。すると……

 

 「失礼いたします。こちら、当店からのサービスとなります」

 

 「「!」」

 

 何と店の方からパフェをサービスされたのだ。

 

 「さ、サービスって……?」

 

 「このパフェはカップル様限定のものとなっております――――と言っても、まだ始めてはいませんが……今回はその試食という形でお願いいたします。では、ごゆっくり」

 

 「あ、ちょ……まぁ、そう見えるのも仕方ないか……」

 

 レイはそれを聞いて、自分たちがカップルに見えているという状況に納得したが、今更言い出せる状況でもないため、とりあえずパフェをいただくことにしたが……

 

 「カップル……私とレイが――――」

 

 リアーナはその言葉がよっぽど嬉しかったのか、自身の世界へと入ってしまっていた。

 

 「リアーナ?……リアーナ?」

 

 「!な、何だレイ」

 

 「大丈夫?」

 

 「あ、あぁ、大丈夫だ……そ、それよりも早く食べようか」

 

 自身の世界から戻ってきたリアーナは、そう言ってスプーンを持つと……

 

 「そうだね――――って、ん?」

 

 「あーん」

 

 「り、リアーナ?」

 

 「あーん、だレイ」

 

 「……」

 

 リアーナはパフェをすくったスプーンをレイの口元に向けて差し出してきた。レイはリアーナの行動に戸惑いながらも……

 

 「……分かった」

 

 意を決して、スプーンの上に乗ったパフェを口に入れた。

 

 「どうだ?」

 

 「う、うん、甘くて美味しいけど――――」

 

 「さぁ、次はレイの番だ」

 

 「え?」

 

 リアーナはレイにスプーンを差し出し、次はレイにあーんをするように要求してきたのだ。

 

 「じーーっ」

 

 「り、リアーナ?」

 

 「じーーーっ」

 

 「わ、分かった、分かったから……はい」

 

 レイは渋っていたがリアーナから見つめられ続け、遂には折れてスプーンでパフェをすくい、リアーナの口元に近づけた。

 

 「あむ……うむ、やはり普通に食べるよりも数段美味だ。おかわり」

 

 「はいはい」

 

 「あむ……おかわり」

 

 「はい」

 

 「あむ……おかわり」

 

 「相変わらずだね……はい」

 

 そんな風なことをしているうちに、あっという間にリアーナはレイの分のパフェまで完食してしまったのだ。

 

 「はっ!す、すまない、つい……」

 

 「大丈夫だよ。食べ終わったなら、そろそろ行こうか?」

 

 「あ、あぁ……!」

 

 会計を終えて喫茶店を後にした2人は、その後も様々な店を回ったり買い物をしたりして過ごした。それから時間も経ち……

 

 「そろそろか……レイ、実は今日の用事はデートだけではないんだ」

 

 「デートだけじゃない……!もしかして……」

 

 「察しが早くて助かる。総合実習についての話だ……ナイトという喫茶店で話すのだが、行く前にウィル・セルフォルトを探す」

 

 「なるほど……ウィルも誘うんだ」

 

 「あぁ」

 

 そんなやり取りをしながら路地裏の道を進んでいき……

 

 「あれ?リアーナにレイも……何でここに?」

 

 キキと一緒に歩いていたウィルを見つけることができた。

 

 「もしかして2人とも、僕に何か用?」

 

 「僕……というよりは、リアーナがね」

 

 「?」

 

 「少しだけでいい、私に時間をくれないか?ついて来てほしい」

 

 「わ、分かったよ」

 

 「感謝する」

 

 それから3人は、魔導の央都にある喫茶店『ナイト』の一室に辿り着いた。そして、リアーナがその扉を開けると……

 

 『!?』

 

 すでにイグノール、ユリウス、シオンの3人がいたのだ。

 

 「学院の最終学年……この後期から、総合実習が始まる――――この6人で、パーティーを組みたい。ダンジョンアタックだ」

 

 リアーナがそう言った直後……

 

 「落ちこぼれ!どうしてお前がここにいるんだ!!」

 

 「リアーナ、どういうことだ?こいつを氷漬けにしろと言っているのか?」

 

 シオンとユリウスが、早速そんなことを口にした。

 

 「……!」

 

 (い、今現在好感度最悪な2人……何でこんなところに連れて来たのリアーナ!!)

 

 ウィルはリアーナの方に目を向きながら、内心は帰りたい気持ちでいっぱいになっていた……が、

 

 「?ダメだったか?」

 

 「!?」

 

 (て、天然……!?こんな娘だったっけ!?)

 

 リアーナは何のことか分からないといった様子で首を傾げていた。すると……

 

 「おい、僕を無視するな!」

 

 シオンはまた自身を無視しているウィルに掴みかかる……その時、

 

 花の夢(ロリア)

 

 『!』

 

 イグノールが花畑を生み出す幻想魔法『花の夢』を使ったのだ。

 

 「いつから魔導士は、ドワーフのような蛮族に成り下がったんだい?」

 

 「……ちっ!」

 

 「まずはリアーナの話を聞こうじゃないか」

 

 イグノールの言葉に、シオンはウィルの胸ぐらから手を離し、自身の椅子へと座った。

 

 「説明は最初にした通りだ。これから総合実習が始まる。学年の中で優れた魔導士に加え、魔導大祭で異彩を放っていた彼を伴いたい。彼は私たちにはないものを持っている……そして、それはダンジョンで役に立つ。私はそう評価した」

 

 リアーナのその言葉に対し……

 

 「君の眼識を疑うな、リアーナ……ダンジョンで探知(サーチ)も使えない輩なんて、足を引っ張るだけさ。チンケな曲芸に、惑わされているんじゃないかい?」

 

 「僕もこいつとパーティーを組むなんて、二度と御免だ」

 

 ユリウスとシオンは真っ先に反対した。だが……

 

 「でも実際、ユリウスとシオンはウィルに敗れている」

 

 「レイの言う通りだ。つまらない矜持に敵愾心……要は負け犬の遠吠えだろう?敗北した相手をどうして見下すことができるのか、君たちの品性を疑うよ」

 

 レイにイグノールは、反対する2人に正論をぶつけた。

 

 「何だと!」

 

 「ドワーフの如き怪力と、モンスターと同等の俊敏性……洗練さの欠片もないとはいえ、彼の剣に君たちの杖は敗れた。それが全てさ」

 

 「君だって単位数ではリアーナに後塵を拝しているだろう、妖聖閣下?」

 

 「そうとも。だから私は、リアーナに敬意を払っている。もちろんレイにもだ。単位数では私に後塵を拝しているとはいえ、実力でいえば私やリアーナよりも上だ。そんなリアーナが評価し、レイがその実力をずっと前から認めているというのなら、私は無能者の抜擢も尊重するよ……君たちとは違ってね」

 

 「「ぐ……!」」

 

 イグノールのその言葉に、ユリウスとシオンは押し黙りながらも、怒った表情でイグノールのことを見ていた。

 

 「これは、レイには以前話したことだが……私はイグノールもレイも、そして貴方たちも利用して、学年首席で塔に登りたい。私は今以上の評価と価値……そして未来を欲している」

 

 「魔導大祭のスカウトは?」

 

 「雷の派閥からは声を掛けられた」

 

 「卒業後の進路は確約されているのに、どうしてそこまで……?」

 

 ウィルがそう訊くと……

 

 「……今学院に残っているのは正しく売れ残りで、例外を除いて『劣る者』、だからだ」

 

 「……?」

 

 (劣る者……?)

 

 その言葉に、ウィルが疑問を覚えていると……

 

 「私の家はオーウェンザウス……総じて短命の一族。私は圧倒的な功績を上げ、一族の没落を防がなければならない。ただ塔に登るだけではダメだ。必要ならば、私は至高の五杖に至らなければならない」

 

 「!?」

 

 予想だにしていない言葉に、ウィルは思わず驚きの表情を見せる。

 

 「貴方たちにも、野望の類があるのではないか?」

 

 『……』

 

 「そちらにも益があると判断したなら、手元にある硬貨をこの杯に入れてほしい」

 

 リアーナはそう言い、最初に硬貨を杯に入れる。それに続き……

 

 「賛同するとも。この顔触れ以上に、戦果を上げられるパーティーはない」

 

 「より単位を求めるなら強制のようなものだろう、これは」

 

 「ふん……」

 

 イグノール、ユリウス、シオンの順で、杯に硬貨が入っていく。

 

 「僕も異論はないよ……それに、リアーナとは違うけど、僕にも至高の五杖にならなければならない理由がある」

 

 4人に続いて、レイも目の前にある硬貨を杯へと入れた。そして…… 

 

 「……」

 

 (僕は――――)

 

 ウィルも硬貨を杯に入れたことで、ここに総合実習のパーティーが結成された……。

 

 

 

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 今回はレイとリアーナのデート(?)と、総合実習のパーティーが結成される話をお届けしました。次回から実習本番へと入っていきます。

 それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いします。
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