それでは、どうぞご覧ください。
「ようし、杯は持ったな?じゃあ、俺たちのために戦ってくれたウィルの勝利と、レイたちの奪冠優勝を祝って――――乾杯!!」
『乾杯!!』
魔導大祭が閉幕した後、ウィルたちはドワーフのジーナが経営する『雌鳥と豆の木亭』で祝勝会を行っていた。そこには、ウィルやレイはもちろん、コレットとワークナー、さらにはレイとチームを組んでいたリアーナとロゼもいたのだ。
「ありがとなウィルよ」
「あんたも頑張ったねぇ!」
「あの走りは見事だったぞレイ!」
ウィル、コレット、レイがドワーフたちにそう言われる中……
「あなたたちも凄かったわ!」
「あ、ありがとう」
「ありがとね!」
リアーナとロゼも、ドワーフの女性たちから大祭での活躍について絶賛されていた。
「いつもウィルやレイがお世話になっております」
「あぁいや、そんな!」
「何でお前だけ……」
一方でワークナーも、ドワーフたちに挨拶回りをしていた。
「先生、俺たちは何もしてないよ」
「!……今後とも、よろしくお願いします」
「あぁ!」
それから祝勝会は盛り上がり……
「それで?ウィルは塔にスカウトされたのか?」
ドナンがウィルにそう訊いてきたのだ。それに対し……
「はぁ……無理に決まってるでしょう?仲間割れした挙句、競技自体も勝てなかったんだもの……」
「それに関しては……何かごめん」
「!ううん、レイのせいじゃないわよ!これも全部シオンのせいなんだから!!」
「で、そのシオンとかいうもう一人のチームメイトは?」
ロスティがシオンは来ていないのかを訊くも……
「あー……誘ったんだけど―――――『誰が打ち上げなんか行くか!』って……」
「やっぱりか……」
「まぁ、いいじゃねぇか?レイのチームメイトの2人は来てくれたことだし、ウィルは勝負に勝って、俺たちはちゃんと謝ってもらったんだからよ!それに――――」
ドナンが目を向けた先には……
「何故だ!?何故私がドワーフの酒場で店員なんかを!?」
「言葉だけじゃなくて体で返すのがドワーフ流さ。店員が丁度足りなかったからね。ほら、いつまで洗ってんだい!ゲラール豆のソテー、上がったよ!」
「は、はいぃ!!」
ユリウスとその取り巻き2人が、この店でバイトをしていたのだ。
「無能者に負けたせいで、私にもスカウトが来なかったというのに……くそぉおおおおお!!」
「しっかりやれよ、坊主!」
「ふふっ」
「因果応報ね」
そんな様子を見て……
「やれやれ……」
ワークナーは酒を飲みながら、そんなことを口にした。
「ワークナー先生……打ち上げなんてダメでしたか?」
「開く前に止めなかった時点で今更だ。そんなことより、魔導大祭に出場し、あれだけ暴れまわって……明日からどうするつもりなのか……」
「みんなウィルの実力が分かって、見直してくれるんじゃ……?」
「それだけで済めばいいがな……私はもう知らないぞ?」
「まぁ少なくとも、これでみんなのウィルに対する意識は確実に変わったはず――――前のようなことも、少しは減るといいですけど」
「私はレイからその実力を聞いていたものの、実際に見たのは初めてだった……が、確信した。ウィルは、私たちにはないものを持っている」
「私はコレットから聞いてたけどね?」
リアーナとロゼはそう言うと、ドワーフたちと笑っているウィルの方へと目を向けるのだった。
◇
祝勝会の次の日、レイはリアーナと共に廊下を歩いていた。
「ん?あれは……」
「どうした、レイ?」
レイとリアーナが目を向けた先には……
「俺たちとダンジョンへいかないか?」
「「え?」」
「っ……お前の馬鹿力だけは、認めてやるって言ってるんだ!だから俺たちとダンジョンに付き合え!」
ウィルが総合実習のパーティーに勧誘されている光景があったのだ――――人にものを頼む態度としては、上から目線過ぎるが……。
「抜け駆けはさせないわよ?私たちだって、ラーナーに声を掛けようと思ってたんだから!」
「邪魔するなよエマ!」
「魔導大祭の立ち回り見たぜ!うちのパーティーに入らないか?」
「待てよ!勝手に話を進めるな!なぁ、俺たちのところに来てくれよ」
「えっ?あ、いや……ちょ……」
ウィルのもとには、次々とパーティーを組みたいという生徒たちが集まっており、今までにない出来事にウィルは戸惑いながら後ずさっていた。
「魔導大祭でウィルの実力を知って、みんなの目の色が変わってる……ワークナー先生が言ってた通りになったわけか……」
「あの暴れようだったからな……こうなるのも必然、か」
すると……
「ま……待ちなさい!これまでウィルのことを散々馬鹿にしてきたくせに、虫が良すぎるわ!」
『あ……』
「ほら、ウィルだって怒ってるじゃ――――」
「コレット……凄いよ!僕が誘われるなんて!こ、これが友達ってやつかな?」
「あ、ダメだこれ」
ウィルは怒っているのではとコレットは思っていたが、当の本人は目を輝かせながら、嬉しそうにそう言っていた。
「……」
(ダメだなあれは……ウィルに万年友達不足の反動が来てる……)
レイはウィルのそんな様子を見て、内心でそんなことを思っていた。すると……
「邪魔しないでよコレット!そもそも、貴女が彼を独り占めしていたんじゃないの?」
「なっ!?」
「みんなでダンジョンに行くの……もちろん、欲しいモンスターは譲り合うわ!」
ウィルをパーティーに誘いに来た1人であるエマ・クレバーが、ウィルにそんな条件を提示したのだ……が、
「だから私たちと一緒に――――」
「だめぇ!!」
「!?」
「ウィルは明日、私と用事があるの!ふ、二人で買い物に行くんだから!!」
「……んん??」
コレットは勢い余って、ウィルとデートの約束をしているともとれることを口にしたのだ。そんな光景を見て……
「コレット……あれ完全にデートのつもりで――――」
「レイ、明日は……空いているか?」
「ん?明日は空いてるけど……?」
「そ、そうか……なら、私たちも行くか」
「?行くって……どこに?」
「で、デートに……だ」
「………はい?」
◇
その翌日、レイはセントビオラ広場の近くでリアーナと待ち合わせをしていた。そこに……
「そろそろ時間だけど――――」
「ま、待たせたな」
いつもの学院の制服姿とは違い、白の長袖のドレスシャツに紫のブローチ、そして黒いミニスカートにガーターベルトを着た姿をしたリアーナが現れたのだ。リアーナは少し顔を赤らめながら……
「そ、その……どうだ?似合っているか?」
レイにそう訊いたのだ。
「うん、もちろん似合ってるよ」
そんなリアーナに対し、レイは素直に感想を言ってみせた。
「!そ、そうか……良かった……」
「リアーナ?」
「!な、何でもない……さぁ、行こうか」
リアーナは嬉しそうにしながらも、レイの手を引き街へと繰り出していった。まず最初に2人は、少し遅めの朝食を食べるために近くにある喫茶店を訪れていた。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「じゃあ、これと……あとこれも。リアーナは?」
「私は……これとこれと……これも頼む」
「かしこまりました」
2人の注文を聞いた店員は、そう言ってカウンターの方へと歩いていった。
「それにしても、こんな店があったなんてね」
「!あ、あぁ……」
(本当は昨日、急いで調べたのだが……)
そんなやり取りをしていると……
「お待たせいたしました」
2人が注文したものが届いたのだ。ちなみにレイはサンドイッチとコーヒーを、リアーナはレイとは別の種類のサンドイッチと甘めのコーヒー、そしてデザートのスイーツを注文していた……ちなみにサンドイッチの量としては、リアーナは多めのものを注文している。
「「いただきます」」
「……ど、どうだ?」
「!うん、美味しいよ」
「そ、そうか……!」
リアーナは自身が連れて来た店の料理の味が、レイの口にあったことに安堵していた。それから2人は、自身が注文したものを食べ終えた。すると……
「失礼いたします。こちら、当店からのサービスとなります」
「「!」」
何と店の方からパフェをサービスされたのだ。
「さ、サービスって……?」
「このパフェはカップル様限定のものとなっております――――と言っても、まだ始めてはいませんが……今回はその試食という形でお願いいたします。では、ごゆっくり」
「あ、ちょ……まぁ、そう見えるのも仕方ないか……」
レイはそれを聞いて、自分たちがカップルに見えているという状況に納得したが、今更言い出せる状況でもないため、とりあえずパフェをいただくことにしたが……
「カップル……私とレイが――――」
リアーナはその言葉がよっぽど嬉しかったのか、自身の世界へと入ってしまっていた。
「リアーナ?……リアーナ?」
「!な、何だレイ」
「大丈夫?」
「あ、あぁ、大丈夫だ……そ、それよりも早く食べようか」
自身の世界から戻ってきたリアーナは、そう言ってスプーンを持つと……
「そうだね――――って、ん?」
「あーん」
「り、リアーナ?」
「あーん、だレイ」
「……」
リアーナはパフェをすくったスプーンをレイの口元に向けて差し出してきた。レイはリアーナの行動に戸惑いながらも……
「……分かった」
意を決して、スプーンの上に乗ったパフェを口に入れた。
「どうだ?」
「う、うん、甘くて美味しいけど――――」
「さぁ、次はレイの番だ」
「え?」
リアーナはレイにスプーンを差し出し、次はレイにあーんをするように要求してきたのだ。
「じーーっ」
「り、リアーナ?」
「じーーーっ」
「わ、分かった、分かったから……はい」
レイは渋っていたがリアーナから見つめられ続け、遂には折れてスプーンでパフェをすくい、リアーナの口元に近づけた。
「あむ……うむ、やはり普通に食べるよりも数段美味だ。おかわり」
「はいはい」
「あむ……おかわり」
「はい」
「あむ……おかわり」
「相変わらずだね……はい」
そんな風なことをしているうちに、あっという間にリアーナはレイの分のパフェまで完食してしまったのだ。
「はっ!す、すまない、つい……」
「大丈夫だよ。食べ終わったなら、そろそろ行こうか?」
「あ、あぁ……!」
会計を終えて喫茶店を後にした2人は、その後も様々な店を回ったり買い物をしたりして過ごした。それから時間も経ち……
「そろそろか……レイ、実は今日の用事はデートだけではないんだ」
「デートだけじゃない……!もしかして……」
「察しが早くて助かる。総合実習についての話だ……ナイトという喫茶店で話すのだが、行く前にウィル・セルフォルトを探す」
「なるほど……ウィルも誘うんだ」
「あぁ」
そんなやり取りをしながら路地裏の道を進んでいき……
「あれ?リアーナにレイも……何でここに?」
キキと一緒に歩いていたウィルを見つけることができた。
「もしかして2人とも、僕に何か用?」
「僕……というよりは、リアーナがね」
「?」
「少しだけでいい、私に時間をくれないか?ついて来てほしい」
「わ、分かったよ」
「感謝する」
それから3人は、魔導の央都にある喫茶店『ナイト』の一室に辿り着いた。そして、リアーナがその扉を開けると……
『!?』
すでにイグノール、ユリウス、シオンの3人がいたのだ。
「学院の最終学年……この後期から、総合実習が始まる――――この6人で、パーティーを組みたい。ダンジョンアタックだ」
リアーナがそう言った直後……
「落ちこぼれ!どうしてお前がここにいるんだ!!」
「リアーナ、どういうことだ?こいつを氷漬けにしろと言っているのか?」
シオンとユリウスが、早速そんなことを口にした。
「……!」
(い、今現在好感度最悪な2人……何でこんなところに連れて来たのリアーナ!!)
ウィルはリアーナの方に目を向きながら、内心は帰りたい気持ちでいっぱいになっていた……が、
「?ダメだったか?」
「!?」
(て、天然……!?こんな娘だったっけ!?)
リアーナは何のことか分からないといった様子で首を傾げていた。すると……
「おい、僕を無視するな!」
シオンはまた自身を無視しているウィルに掴みかかる……その時、
「
『!』
イグノールが花畑を生み出す幻想魔法『花の夢』を使ったのだ。
「いつから魔導士は、ドワーフのような蛮族に成り下がったんだい?」
「……ちっ!」
「まずはリアーナの話を聞こうじゃないか」
イグノールの言葉に、シオンはウィルの胸ぐらから手を離し、自身の椅子へと座った。
「説明は最初にした通りだ。これから総合実習が始まる。学年の中で優れた魔導士に加え、魔導大祭で異彩を放っていた彼を伴いたい。彼は私たちにはないものを持っている……そして、それはダンジョンで役に立つ。私はそう評価した」
リアーナのその言葉に対し……
「君の眼識を疑うな、リアーナ……ダンジョンで
「僕もこいつとパーティーを組むなんて、二度と御免だ」
ユリウスとシオンは真っ先に反対した。だが……
「でも実際、ユリウスとシオンはウィルに敗れている」
「レイの言う通りだ。つまらない矜持に敵愾心……要は負け犬の遠吠えだろう?敗北した相手をどうして見下すことができるのか、君たちの品性を疑うよ」
レイにイグノールは、反対する2人に正論をぶつけた。
「何だと!」
「ドワーフの如き怪力と、モンスターと同等の俊敏性……洗練さの欠片もないとはいえ、彼の剣に君たちの杖は敗れた。それが全てさ」
「君だって単位数ではリアーナに後塵を拝しているだろう、妖聖閣下?」
「そうとも。だから私は、リアーナに敬意を払っている。もちろんレイにもだ。単位数では私に後塵を拝しているとはいえ、実力でいえば私やリアーナよりも上だ。そんなリアーナが評価し、レイがその実力をずっと前から認めているというのなら、私は無能者の抜擢も尊重するよ……君たちとは違ってね」
「「ぐ……!」」
イグノールのその言葉に、ユリウスとシオンは押し黙りながらも、怒った表情でイグノールのことを見ていた。
「これは、レイには以前話したことだが……私はイグノールもレイも、そして貴方たちも利用して、学年首席で塔に登りたい。私は今以上の評価と価値……そして未来を欲している」
「魔導大祭のスカウトは?」
「雷の派閥からは声を掛けられた」
「卒業後の進路は確約されているのに、どうしてそこまで……?」
ウィルがそう訊くと……
「……今学院に残っているのは正しく売れ残りで、例外を除いて『劣る者』、だからだ」
「……?」
(劣る者……?)
その言葉に、ウィルが疑問を覚えていると……
「私の家はオーウェンザウス……総じて短命の一族。私は圧倒的な功績を上げ、一族の没落を防がなければならない。ただ塔に登るだけではダメだ。必要ならば、私は至高の五杖に至らなければならない」
「!?」
予想だにしていない言葉に、ウィルは思わず驚きの表情を見せる。
「貴方たちにも、野望の類があるのではないか?」
『……』
「そちらにも益があると判断したなら、手元にある硬貨をこの杯に入れてほしい」
リアーナはそう言い、最初に硬貨を杯に入れる。それに続き……
「賛同するとも。この顔触れ以上に、戦果を上げられるパーティーはない」
「より単位を求めるなら強制のようなものだろう、これは」
「ふん……」
イグノール、ユリウス、シオンの順で、杯に硬貨が入っていく。
「僕も異論はないよ……それに、リアーナとは違うけど、僕にも至高の五杖にならなければならない理由がある」
4人に続いて、レイも目の前にある硬貨を杯へと入れた。そして……
「……」
(僕は――――)
ウィルも硬貨を杯に入れたことで、ここに総合実習のパーティーが結成された……。
読んでくださり、ありがとうございます!
今回はレイとリアーナのデート(?)と、総合実習のパーティーが結成される話をお届けしました。次回から実習本番へと入っていきます。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いします。