【カオ転三次】おっさん転生者がなんとか生き抜く話 作:Vp6121
シキガミ製造契約締結から3日後
技術部瞑想室
シキガミ製造契約を交わしてから、私は技術部瞑想室に引きこもっていた。
瞑想室では部屋の名称そのまま、瞑想を続けていた。大変そうに見えるが、ショタおじの『厳しい方の修行』と比べると余裕である。
だって食事は技術部から提供された昆布出汁で炊いたお粥と水が出るんだぜ。
ショタおじの『厳しい方の修行』だとそんなもの出ず、完全な闇の中で体感時間1ヶ月放置とか、普通は発狂するレベルという恐ろしさが当たり前である。
その代わりショタおじが監視して、本当に危険になったら止めたりするけど。ただ、擬似的な餓死程度では止まらないが。
こちらの瞑想1日目は、どうしても雑念が入り、瞑想と言うより単なるとめどなく流れる思考といった感じだった。
瞑想2日目は、ショタおじの『厳しい方の修行』の感覚を少しずつ思い出して、思考から瞑想に徐々に移っていった。
瞑想3日目には時間間隔が消え、ほぼ完全な瞑想状態になっていた。
コンコン
瞑想室にノックの音が響き、瞑想が途切れた。
私の返事を待たず、瞑想室に本田さんと他の技術部の人が入ってきた。これは瞑想が深すぎて気が付かないケースがあるのでしょうがないとの事だ。
「夢野さん。お疲れ様です。潔斎はこれで終了です」
「ああ、本田さん。終わりですか。気分的には、もうちょっとイケる感がしていたんですが」
「まぁ、修行なら更に深く瞑想するのはアリなんですけど、今回は潔斎が目的ですからね。まずはここらへんで止めておきましょう」
そう言われたので、瞑想の為にしていた結跏趺坐を解いた。ずっと同じ姿勢だったので、身体が強張ったような感じが急に押し寄せてきた。
「夢野さん。計測機であなたをスキャンしますので、そのままでお願いします」
そう言うと本田さんは隣にいた他の技術部の人に頷くと、その人は私に何か機械を向けてスイッチを入れた。
30秒程度で終わり、技術部の人が結果を判定した。
「夢野氏の状態は安定。採取基準を満たしています」
本田さんは頷いた。
「夢野さん。聞いての通り、基準を満たしたので次のフェイズに移行します。沐浴してから処理室に移動です」
「わかりました。ただちょっと身体が強張っているので5分ぐらい待ってもらえますか?」
「いいですよ。同じ採取をした皆さんは同じ事言いますし…ストレッチャーか車椅子、要ります?」
そう聞かれたので自分の身体を軽く動かしてみる。大丈夫そうだ。
「本田さん。車椅子とかは大丈夫です」
「なら軽く身体を伸ばす所から始めて、ゆっくりと動いて下さい。いきなり立ち上がると立ち眩み起こしたりするので」
本田さんの忠告に従って、ゆっくりと身体を伸ばし、5分かけて立ち上がった。
「それじゃあ行きましょうか」
本田さんの言葉に頷いて、案内されるがままにシャワー室へ向かった。
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技術部シキガミ製造棟
処理室
その部屋は一辺が5メートル程度の、床も、壁も、天井も、リノリウムめいた白い素材で覆われ、天井四隅からの強力なライトで照らされた、白い部屋だった。
あまりにも白くて、アニメや映画でありそうな機密研究所での機密実験室に見える位だった。
その部屋には4人の人間がいた。
ひとりは、その部屋の中央に立っている、シャワー室で沐浴を済ませ、白い医療衣を着た私。
ひとりは、私の前に少し離れて立つ、いつものくたびれた青い作業着を着た本田さん。
ひとりは、私から見て本田さんの右に立つ、医療部の制服を着たショートカットの20代女性。
ひとりは、私から見て本田さんの左に立つ、何か力を感じる刀を腰から下げた、スキンヘッドの30代男性。
「それではシキガミ製造用素材回収を開始します」
進行役である本田さんがここでの作業開始を宣言した。
「ここにいるのは、進行役としての私、技術部本田。素材回収対象者である夢野龍氏。治療役兼見届け人として医療部の和田氏。そして採取実行者の伊藤氏です」
日本人らしく、お互いに頭を下げて挨拶した。
「それでは素材回収前に、契約書とその写しの内容を再確認します」
本田さんはそう言うと私に契約書を渡した。
「それでは私、技術部本田が契約書を読み上げますので、相違点の確認をお願いします」
本田さんが1行ずつ契約書の内容を読み上げる。
私が相違ないと答える。
それが繰り返され、契約書の内容が同一である事を確認した。立会人である医療部和田氏が確認の署名を行い、全ての準備が終了した。
「それでは立会人の前で、素材回収を開始します。それではお願いします」
本田さんが、刀を腰から下げた男性、伊藤氏を促した。
伊藤氏がこちらに向き直る。
左手で、刀の鯉口の後方より鍔元を握る。
鍔に左手親指をかけ、鍔を押して刀の鯉口を切る。
右手が刀の柄、鍔近くに撫でるような心持ちでかかる。
動きが一度止まり…
動いたと思ったら、私の視界は逆転していた。
逆さまになった視界の中、目にも留まらぬ速さで抜刀し終わった男が見えた。
ああ、これが前世の洞窟野郎ゲームで散々見た、「◯◯はくびをはねられた!」なのか…と思いながら私は意識を失った。