【カオ転三次】おっさん転生者がなんとか生き抜く話 作:Vp6121
「知らない、天井だ」
意識が戻ったら知らない部屋のベッドに寝かされていた。
だから思わず定番セリフを吐いてしまった。オタクあるあるである。
上半身を起こして部屋を見回すと、明るい大きな窓から日が差している。
壁紙や天井は明るい壁紙で統一されている。
ベッドを見ると、病院によくあるタイプの物で、頭側には『夢野』とネームプレートが貼り付けてあり、その横にはどう見てもナースコールなスイッチがあった。
そのベッドの横には医療ドラマに出てきそうな、患者の状況をセンサでリアルタイム確認をする機械があり、有線で私と繋がっていた。
どこからどう見ても病室です。本当にありがとうございました。
最初に担ぎ込まれた場所と違ったから、すぐには分からなかった。
状況を確認したらまたベッドに身体を預ける。そうして自分がどうなったかを思い出す。
まず技術部で、自分用にカスタマイズ…と言う名のカリカリチューンを施した下級シキガミ3体分製造の為、自分の身体の首から下を3体分提供する契約を結んだ。これは…
①首を刎ねる
↓
②首無し胴体を素材として回収
↓
③蘇生魔法リカーム等で首から下を復元しながら復活
↓
①に戻るを合計3回繰り返す
というものである。
そしておそらく実行し終わって、私はこの病室に収容されたのだろう。
はっきり言ってかなり狂気な事をやったとは思う。だがここガイア連合のシキガミ製造ではけっこうハイレベルではあるが、やるヤツがそれなりにいる『素材回収』であると聞いた。人づてと掲示板の両方で。
中にはTS女性ではあるが、自分の『脳の一部含む処女の身体』を『複数体』確保してシキガミ1体につぎ込んだツワモノ*1がいたそうだ。
なお、普通は貯めていた髪の毛や爪。肉体でも腕1本とかそれぐらいが一応一般的らしいが、人によって『一般的』『普通』『常識的』が異なるので、本当に一般的かどうかは知らん。
とりあえず自分の肉体を切断するのは度胸が要るので、戦闘で落とされた腕を持ち込んだりするらしい。ただ、それもどこぞの人魚なデビルシフターみたいにド初心者の頃からそれをやるのはレアケース*2だが。
それにしてもお気に入りの(自分の癖を満たす)シキガミの為とは言え、なかなか業が深い。いや、私は純粋にシキガミを強くしないと自分が困るから実行しただけだが。
「夢野さん。失礼します。穂村です」
そんな事を考えていたら、ノックと声かけをした上で、病室に女性看護師が入室してきた。その彼女を見て思わず吹いてしまった。
「夢野さん。本日の担当の穂村です。目を覚まされたんですね。良かった。
それにしても初めて私を見て吹くなんて、私はちょっと傷つきますよー。まー私を見た患者さんの半分はドン引きするか吹くかのどちらかなんですけどね」
そう女性看護師は言うが、知識があるヤツが見たら誰でもそうなる。誰だってそーする 。おれもそーする。
何せ彼女、外見と声が、『カエルの髪飾りと緑髪の三つ編みおさげが特徴のメガネっ娘で、CV.雨宮麻紀』だった。その彼女は、ヤンデレで超有名な看護師キャラ・穂村愛美そっくりである。ヤンデレの。
大事な事なので2度言いました。
更にネームプレートには『穂村愛美』と書いてある。
どう見てもアウトである。
「まったく、私も同じ転生者で、偶然マナマナそっくりなだけなんですけどねー。私は旦那様一筋な健気な女の子なんですよー」
いやいやその『旦那様一筋』の所の解釈によっては中身同じだろう…とは思うが表情と口には出さない。
雄弁は銀。沈黙は金である。
そう思っている間に穂村さんは私に体調を聞いたり、ナースステーションに連絡した上でセンサを外したりと、看護師の仕事をテキパキとこなしていた。
「夢野さんは3日間意識がありませんでした。けどそれはシキガミ素材採取で『激しい採取』事を行った方ならよくある事なので気にしなくていいですよ」
「よくある事なんですか?」
「はい。考えてもみて下さい。手足を落とした程度ならともかく、身体のかなりを提供する人は、身体を切って、復活させて、また切ってを繰り返します。そんな事をすると身体と精神の両方に負担がかかるのは当たり前じゃないですか」
そう言われるとそうだ。
「いくらリカームで復活しても、ディア系で傷を治しても、パトラ系で状況異常を解消しても、疲れとか負荷ってある程度しか抜けないじゃないですか。ディア系上位なら話は別らしいですけど。だから身体が疲れを癒す為に意識を落としていたんですよ…と先生が言ってました」
納得である。
「それでは先生に連絡が行っているので、後ほど診察が入ります。ですので安静にしていて下さいね。ここでもそうですが、前にいた病院でも偶に『自分は目が覚めた。もう大丈夫だ!』って素人判断して退院しようとして騒ぎを起こして、入院が延びたケースがあって困りましたので。それでは失礼いたします」
そう言って看護師の穂村さんは病室から退出した。
言う通り大人しくしようと思い、眼を閉じて再び眠りに入…ろうとしたが眠れず、寝返りを打ちまくっているうちに1時間が経った。
またノックが響いた
「はい。どうぞ」
そう応えたら…病室にどこからどう見てもマンガゴッド・手塚治虫の「ブラックジャック」ご本人様にしか見えない、医師用白衣を着た男性がマナマナこと看護師の穂村さんを連れて入室してきた。
「はじめまして、夢野さん。ガイア連合医療部医師のBJだ。BJニキと呼んでくれるとありがたい」
「あ、はい。わかりました。よろしくお願いします」
「ああ、ウチには同じようなブラックジャック先生のそっくりさんが数人いるから、慣れないうちは見間違いするから気をつけてくれ」
他にもいるんだ…
そう言いながらBJニキは診察道具を取り出した。
「夢野さん。あなたは昏睡状態から覚醒したので、医療面と霊能面の両方から診察する。現状確認だ。よろしいか」
「お願いします」
そう私が答えると、BJニキは触診・打診・聴診を一通り行い、更に手を軽く光らせてこちらに翳すとカルテに何か書き込んで終了した。
「先生…私は外の石が集まって岩になる頃には死んでしまうのですね…」
「『最後の一葉』及び『君が代』乙。それ以前に死亡フラグのフリして実は超長命フラグ立てるな」
「さーどーなんでしょー」
「そんだけジョーク飛ばせるなら、精神的にも大丈夫そうだな。肉体的、霊的にも問題無いので、明後日あたりには退院できそうだ」
まぁ、無事退院できるのはありがたい。
「まぁ、俺たちは一般人と比べて頑丈な方だし、覚醒すると更に丈夫さが上がる。肉体的にも精神的にも、だ。だからと言って無茶な事はするなよ。修羅勢希望なら止めないが。というよりアレは修羅に『なる』であって希望してなれるモンじゃないが」
「偶に聞く修羅勢って何ですか?先生」
「平たく言えば戦闘狂」
すごいワードが飛び出してきた。
「修羅勢になると毎日異界の下層の奥に『住んでいる』レベルで毎日潜って戦い続けて修行してる。夢野さん、お前さんも一般俺たちでもあんまりやらない週3回ペースで1回8時間ぐらい潜っているって?」
「初心者なヌルい所ですけどね」
「それでも夢野さんは行き過ぎだ。医者としては休息を長めに取るなど安全マージンを大きく取って欲しい。無理して大怪我や死体で医療部に担ぎ込まれる事は、私たち医療部の人間は喜ばない。そこら辺を覚えておいて欲しい」
「はい。わかりました。先生」
そうして診察は終了した。
翌日、精密診察を再度行い、健康体と太鼓判を押されたので、後日医療部から退院した。