【カオ転三次】おっさん転生者がなんとか生き抜く話 作:Vp6121
退院翌日
技術部
健康体と太鼓判は押されたが、いきなり異界突入は禁止されている。
(ただし身体能力含む各種能力が転生者基準でも可笑しいレベルで度外れている、人外戦闘狂集団な修羅勢除く)
普通の生活に縛りは無いので軽い運動として歩き、シキガミ製造状況を確認する為に技術部を訪問した。
確認相談窓口に技術部の人がいたので、忙しくないなら本田さんを呼び出してもらうようお願いしたら、ちょうど作業の合間のスキマ時間だったらしく本田さんが出てきた。表情は冴えない。何かあったのだろうか?
いつもの談話スペースに座り、本田さんと向き合って座った。
「夢野さんは無事退院できたようで良かった。ごく稀に1ヶ月位入院したり、トラウマが残る人が出る」
「でしょうね。『くびをはねられた!』はショタおじの『厳しい方の修行』の物理系カテゴリ以外ではそうそうお目にかかれない経験です。衝撃も大きい。まぁ貴重な経験を積めたという事で」
「またやりたいとは思わない方の経験値ですけどね」
「違いない」
そう話し、お互いに大笑いした。
「さて本田さん。シキガミ製造の方はどうでしょうか?ちょっと見に来ました」
「素材が素材である事。技術的に注目度が高い事。それに夢野さんが受け取った融資分の8割をシキガミ製造に突っ込んだので、最優先で作業をやりました。予想通りエドニキたちも羨ましがっていて笑えました」
「なら順調と見て良いのですね。本田さん」
「ほぼ順調です。現在、召喚したスライム(超劣化悪魔)を素体に定着させて馴染ませる為に、科学的・オカルト的な意味でのクリーンルームで静置中です」
そう言って本田さんは出されたお茶を少し飲んだ。
「ただし、ちょっと気になる現象が見られたので、ウチ(技術部)の人間が観察中です」
「本田さん。それはいったい?」
私がそう問いかけると、本田さんはポケットから小さい紙封筒を取り出し、その中から写真を3枚取り出すと、私の目の前に並べた。
「これが現在静置中のシキガミです。左から製造番号『初号機』『弐号機』『参号機』*1です」
「ここは富士山そばとは言え、山梨なので箱根にある特務機関じゃないんですが…ってこれは…」
全ての写真には、白い一反木綿型シキガミの上半身?が写っていた。
「初号機」と紹介された左の写真では、白いシキガミの肩?から始まり右から左下に向かって流れるタスキのような、2センチ位の太さの線が3本、黒白黒の順に並んでいた。
「弐号機」と紹介された中央の写真には、初号機と同じようなタスキ状の線であったが、太さ6センチ位の、色は金属光沢があるホワイトゴールドな線が1本入っていた。
「参号機」と紹介された右の写真には、初号機と同じような、白黒青のタスキ状の線があった。
思わず本田さんの方を見た。
「本田さん…何ですかこの線」
「こちらも初めて見るケースです」
「本田さん…素材の劣化」
「NON。素材のうち夢野さん由来では無いものは、下級シキガミ用素材です。下級用なので最高級ではありませんが、品質は安定しています。同一ロット素材を使用した、1つ前に製造した下級シキガミには異常は出ていません」
「本田さん…コンタミ」
「NON。今回は試験的側面があるので、製造環境は特別に高級シキガミ製造用と同一のものを使っています。環境的には物理的霊的クリーンルームです。よってコンタミの可能性は低く、作業前作業後のチェックもシロでした」
「本田さん…製造ミス」
「NON。試験的側面があるので、他のベテラン製造担当が目を皿のようにして観察していますし、製造過程を動画で撮影しています。その双方でチェックしましたが、製造ミスは見られませんでした」
「という事は…」
「そうです。夢野さん由来素材の特性がありえます」
自分由来の素材が原因…これが良い方に転んでくれれば良いのだが…
「夢野さん。現時点で各個体は表面の線だけが他と違うだけで、アナライズ含む非破壊検査では異常な外れ値は検出されていません」
「という事は本田さん。これは外見がちょっと違うだけの、カリカリチューンを施した性能向上型下級シキガミである可能性が高いと」
「こちらとしてはそう考えています。ですが、発注者がそう考えない場合は再製作もありえます」
「再製作の場合、これらの個体は?」
「技術部が引き取り、各種技術試験に供された後は技術部でテスト個体として扱います」
「本田さん。再作成の場合、素材採取って…」
「もう1回取り直しになりますし、予算もまた必要になります」
それは痛い(物理及び財政面)。
まぁそれ以前にこの程度で受け取り拒否はなぁ…
「本田さん…外見がちょっと違う程度なら問題ありません。と言うか、私これぐらいで拒否するような、ちょっと外見が予定と違うだけでコーディネートされた子供を拒否するような頭コズミック・イラ級*2じゃないですから」
それを聞いて本田さんはホッとした表情になった。
「ありがとうございます。作り手としては、せっかく造ったものが品質基準を満たさない以外の些細な理由で拒否されるのは悲しいですから」
「本田さん。逆に考えるんだ。今回のコレは個性と考えるんだ」
本田さんはそれを聞いて笑った。
「確かに個性ですね。下級シキガミは極少数を除いて白くて没個性的ですから」
「当初の『外観は量産型だけど、中身はラスボス討伐可能級』なロマンありありからはちょっと外れていますが、後から塗装したんだろうな程度で問題ありませんし」
ん、考えてみると、これは大きなシノギの匂いがするな……!
「本田さん。需要があるか分かりませんが、後付けでスキル以外のシキガミカスタマイズってアリですかね?」
本田さんがそれを聞き、腕を組んでちょっと考える。
「夢野さん。シキガミにスキルカードセット以外のカスタマイズは、直接ハードウェアを弄る事になるので、予算と手間がかなりかかるんですよね…だからあんまり無いですね。
極稀に中高級シキガミでやったケースがあったらしいと聞いただけで、下級シキガミでそういったのは聞いた事が無い」
フムン…という事は、この案は「誰もが考えそうで誰も提案していないッッッ」という事になる。
これは…マーケット的にはブルーオーシャンになりそう。ここでシェアを獲れると面白い事になるなっ(白竜感
「本田さん。車やバイクで塗装とか、外付けする各種装備追加ってありますよね」
「ええ…ってまさか…」
「それの下級シキガミVer.って、面白いとは思いませんか?」
その時、本田の表情が、変わった(プロジェクトX風
「技術試験機な下級シキガミを何体か確保して、塗装や『追加装備用パイロン追加Verシキガミ製造』とか、『下級シキガミに着せる追加装備キット』とか、そういったものを製造・運用テストや技術開発やるのはどうでしょうか?
技術部新人とかのレベル上げとか、将来的に民間の改造屋とかの飯の種になりそうで面白そうとは思いませんか?本田さん」
本田さんが面白い!と言わんばかりの表情になった。
「本田さん。今後、終末を迎えて一般にもシキガミを売るようになるでしょう。シキガミの数が増えるでしょう。
けど中級以上って製造の手間やお値段でどうしても数が少なくなる。だから下級シキガミが圧倒的多数になるはずです。
だから、今のうちから『美装や所属明確化や個性出しや機能追加を目的とした下級シキガミ塗装(ステルス機能もあるでよ)』や『下級シキガミに外付け可能装備』や『下級シキガミの兵装架』とかを規格化する為の研究を始めておけば、イザという時に『こんな事もあろうかと』ができますぜ(ゲス顔」
本田さんが、ニヤリと笑った。
「夢野さん。そいつは面白い。技術屋の魂がビンビン震えてやがるし、商売としてもイケそうだ。
面白いからこの後企画書作ってショタおじとかに投げてみるから、手伝ってもらえますね(笑顔だが逃さんという気迫入り」
あれ?何か私、何かしちゃいましたか?
そして技術部部員でもないのに、技術部オフィスに連れて行かれた。
なお、開放されたのは、翌日の昼頃だった。