【カオ転三次】おっさん転生者がなんとか生き抜く話 作:Vp6121
シキガミ引き渡し儀式終了後
個室談話室
個室談話室にある長椅子に、私とシキガミ3体が並んで座っている。その向かいに、みかん箱サイズの機械を持った本田さんが座った。
「夢野さん、まずはシキガミ3体との契約完了おめでとうございます」
「ありがとうございます。ただ、謎な事が」
「謎?」
本田さんが首を傾げた。
「シキガミ全員が初回起動時に『無印Fateのアルトリア・セイバー初召喚時セリフ』を同タイミングで言ったので、ツッコミを我慢しましたよ。このネタ知識は誰が積んだんですか?」
「ああ、それたぶん夢野さん経由ですよ」
え、何それ私何もしてないぞ。
「夢野さんは1体ごとにご自分の首から下の身体を1体につき1体分提供しましたよね」
「はい」
「だからですよ。夢野さん」
本田さんの顔がマッド寄りの真面目な顔になり、1本目の指を立てた。
「ひとつ。臓器移植を受けた人間が、ドナーの趣味嗜好の一部の影響を受けたという話は前世で稀に聞いた話です。
今回のシキガミ体の構成物質の相当数が夢野さん由来です。その構成物質は臓器1個レベルではなく身体全体に濃密に広がっています。なら臓器1個よりも濃密なのですから、夢野さんの記憶を部分的に継承していてもおかしくない」
本田さんが2本目の指を立てた。
「ふたつ。双子のシンクロニティというものがあります。一卵性双生児で稀にあり、片方への影響がもう片方に出るという双子でリンクが成立しているものです。
シキガミは夢野さん由来素材を大量に使用している為、夢野さんとは双子に近い状態です。ならば微弱でもリンクが成立して記憶の流入があったとしても驚きません」
本田さんが3本目の指を立てた。
「みっつ。前世の有名吸血鬼マンガ*1で主人公の吸血鬼が『血は魂の通貨』と言っていたものがありました。マンガでは血を吸う事で相手の魂を吸収し、記憶も手にしました。
こちらの世界では、実際にオカルト技能を血で継承するケースがあり、血に記憶などが入っているのではないかと考えられます。
さて、夢野さんは身体1つ分の血液もシキガミ素材にしています。ならば記憶を継承していてもおかしくない」
本田さんは3本の指を立てた手をひっくり返し、3本の指をテーブル上に立てた。
「何かを地面に立てる時、1本だけでは倒れる。2本では多少マシですが倒れやすい。ですが3本目が加わるとバランスが取れるようになって倒れにくい。
それと同じ様に3つもルートができているのですから、記憶の1つや2つ、流入しても驚きませんよ。
あと、非メシア教な一神教において3という数字は、神の完全性や調和を意味する『三位一体』のように重要な数字です。オカルトが強いこの女神転生世界、3つ揃えばそっちの強化とか影響もありそうですしね」
それを聞いて私は頭を抱えた。
だがそんな私を本田さんは不思議そうに見た。
「夢野さんはスキルの事情によりレベル差が出る為、人間と長期パーティーを組みにくいので、シキガミたちと組むわけですよね?」
「はい。それしかありませんし、私はハム子ネキみたいな人生別ゲーやってそうな一騎当千どころか万夫不当*2ではないので、ずっとソロは続けられませんし」
「そのパーティーで重要な事の1つに『連携』があります」
確かに連携は重要だ。強い相手を倒すのに集団で連携を取って戦うのは、人間以外でも行う。また、集団を崩す手には相手の連携を崩すのがあり、その手法には人間関係を乱すものから、戦闘時に電子戦で通信やデータリンクの切断やウソ情報混入など色々な手がある位は盛んである。
本田さんは続けた。
「連携を取るには相手の事をある程度知っているとやりやすい。動きなり価値観なりがある程度分かるなら、自分の動きを合わせるなどのすり合わせがやりやすい。
さて、夢野さんの場合は、シキガミにある程度の記憶が継承されているようです。記憶は人格や価値観のベースになります。よってシキガミは夢野さんの価値観をいくらか分かった状態になっていると考えられます。よってこの後の連携がやりやすくなるでしょう。
それに、同じ記憶ベースですから、極端な事が無い限りは契約によるもの以上にシキガミと仲良くなれるので、悪くないですよ」
「という事は、本田さん。今の所は悪影響は無く、それどころか利点があるという認識で良い?」
「Exactly(そのとおりでございます)」
まぁ、相手の事がよくわからなくて、この後同居する人間…この場合はシキガミだが…との人間関係がギスる可能性が低いのはありがたい。まぁ初対面の相手が自分の事をよく知っているのは気味が悪いと言えばそうだが、同居するから遅かれ早かれ分かる事だからいいか…
「さて、記憶についてはこの辺にして…夢野さん。そろそろ本題に入ります」
そう言うと本田さんは自分の前に置いた、みかん箱サイズの機械を指差した。
「この機械は詳細アナライズ機能『も』持った所謂検査機器です。ポータブルサイズなので精度はそこそこですが、今回はこれで用が足ります」
「という事は、契約後のシキガミに対する変化チェックですか。契約前と契約後で何か変化があってもおかしくないので」
「その通りです、夢野さん。外観が予想とは少し異なっているので、それが内面に出ないとは限りません。ならば確認しておかなければいけません。
それでは早速アナライズを行いますが、マスターである夢野さん、よろしいでしょうか?」
「私も気になるのでお願いします…とその前に…」
私は新しく契約したシキガミ3体に方を向いた。
「シルエット、オーロラ、ロール。詳細アナライズを行いたいが問題無いか?」
「はい。兄くん。*3問題ありません」
「はい。お兄ちゃん。*4問題ありません」
「はい。お兄様。*5問題ありません」
上から、シルエット、オーロラ、ロールの順の返答である。
「シスプリかよっ!懐かしすぎるだろっ!」
本田さん、生暖かい目で『わかってるわかってる』な笑みを浮かべないでくれ。私には妹属性は無いんです。本当に。
はぁ…頭痛がしてきた…
「…だそうです、本田さん」
「そうですか。それでは開始します」
いきなりのシスプリネタで疲れ切った私からの許可を得て、本田さんは機械から外した子機を手にして、シキガミを1体ずつ上から下までスキャンするように動かした。
機械がウィンウィン唸り、最後に『チーン』と電子レンジ終了音が鳴って解析が終了した。技術部もネタ脳搭載型か。もう突っ込まないぞ。
まぁ誰でも終了したのが分かる音だから、合理的ではあるんだが。
スキャン終了後、すぐ結果がプリントアウトされたので、すぐ内容を確認した。
◯シルエット
ザン(単体衝撃魔法)
会話
食事
交渉
吸収(契約者)
テレパス(仲間限定)
状況異常無効
呪殺無効
◯オーロラ
ディア(単体回復魔法)
パトラ(単体状況異常回復魔法)
会話
食事
吸収(契約者)
テレパス(仲間限定)
状況異常無効
呪殺無効
◯ロール
ジオ(単体電撃魔法)
会話
食事
吸収(契約者)
エネミーソナー
テレパス(仲間限定)
状況異常無効
呪殺無効
出力結果を見て、同じ物を見ていた本田さんと顔を見合わせた。
「夢野さん。言わなくてもわかる。オレも多分同じ事を考えている」
「なら同時に言ってみますか。せーので」
せーの
「「何でこれが載ってるの!?」
私も、本田さんも、一緒に絶叫した。
「本田さん。カスタマイズシキガミの仕様を決めた時、シキガミのデフォルトで載ってる『状況異常無効』『呪殺無効』の他に『会話』『食事』『全員違う魔法技能』『他技能』を融資の80%を突っ込むので搭載するようお願いしましたよね」
「確かにお願いされました。そして確かに搭載を確認しました」
「それで依頼以外の『吸収(契約者)』『テレパス(仲間限定)』って何です?」
本田さんは機械から出力された2枚目の紙を渡してきたのでそれを見ると、こう書いてあった。
-スキル解説-
吸収(契約者限定):通常時の対外発散MAGも含む契約者MAGを吸収可能。
テレパス(仲間限定):仲間のシキガミ内限定のテレパス技能。シキガミ以外が送受信するにはスキルかアイテムが必要。
「本田さん…これって…」
「シキガミに肉体素材を使うと、スキルが自然発生する事があります。たぶんそれでしょうね。吸収はたぶん維持費軽減とか、自己修復用MAG調達に有用かと。テレパスは…夢野さん用のテレパス付与アイテムを探しておきます」
「お願いします」
まぁ、派手さは無いが、有用スキルではあるし。
「ところで夢野さん。このネタ搭載型シキガミなんですが、ここで一般常識を我々が教えておかないと、外でネタを連発しかねない。談話室の延長してきますから、教育しておきましょう」
「お願いします」
どうしてこうなった!と思いながらシキガミたちを見たら、『お前由来やろ』と言いそうなジト目でシキガミたちから見られていた。キミたち生まれたばかりなのに、もう別方向で高性能過ぎやしないか?
そのあと、めちゃくちゃ(まともな)教育した。