【カオ転三次】おっさん転生者がなんとか生き抜く話 作:Vp6121
あと、主人公詳細は毎日更新する事にしました。
星霊神社付属施設
1月下旬
午前中
富士山の麓に佇む星霊神社。
その広大な敷地内には神社の祭殿を筆頭とする神社の施設があり、神聖な雰囲気の中、一反木綿型シキガミが多数舞い、多数の人間が覚醒をするべく修行に励んでいる。
この星霊神社は神社であると同時にガイア連合の本部であり、神社敷地内・周辺にガイア連合の各種施設が建設されている。
それらの施設群の中にある和風の建物内の一室で、私は人を待っている。
私がいる部屋は、建物の外観の通りの和室であり、どこからどう見ても立派な書院造りである。加えて床の間に掛けられている『えらく力強そうな鶏を描いた掛け軸』あれもしかして若冲じゃなかろうか?前世の「とんでも鑑定旅団」であんなタッチの掛け軸を見た覚えがある。
そんなお宝がしれっとした顔で飾られている、品がある一室。
その部屋の下座に敷かれた座布団に座り、ここの主人役である『ガイア連合の偉い人』を待ちながら部屋を眺めている。
一般人に対しては過剰と言えるほどの待遇だ。
そのうち廊下を歩く音がして、どこからどう見ても前世シャーマンキングのハオにそっくりな、白マントを羽織った少年が1人部屋に入ってきた。
「やあ、到着が遅れてしまい、申し訳ありませんでした」
そう言って少年は、部屋の上座に用意された座布団に腰を下ろした。
「既に話は聞いておられるかと思いますが、改めて名乗らせてください。私はガイア連合の代表を務めております。オカルト的な理由で本名を秘匿していますので、気軽に“ショタおじ”と呼んでいただければ」
「初めまして。夢野龍と申します。本日はお時間をいただき、ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
書院造りの一室で、シャーマンキングのハオそっくりな少年-ガイア連合トップで優れた術者で(色々な意味で)強者と聞かされている-と座った状態で向かい合う。
「それでは、面談を始めさせていただきます」
そう言ってショタおじは話を始めた。
「夢野さん。まず最初に、深くお詫び申し上げます。
本来であれば保護すべき立場にある転生者を、事情があったとは言え、ガイア連合の関係者が誤射し、結果として命を落とさせてしまった。これは弁解の余地のない重大な不手際です。この場をもって正式に謝罪させてください」
そう言うと少年-ガイア連合代表を名乗ったショタおじは、座り直してから深々と頭を下げる謝罪。いわゆる土下座を敢行した。
「あ、どうか頭をお上げください。確かに一度命は落としましたが、自力で蘇生しておりますし、その後はガイア連合の保護の下、負傷も全て治療していただきました。現時点で個人的な不満はありません」
慌ててショタおじに頭を上げるようにお願いする。1番偉い人が土下座をしている。ここで「許さない」何て言えない。言う気も無いが。まず儀式としての謝罪をして頂いたのでまずは良し。問題はこれからだ。
「そのように受け止めていただけるのであれば、救われます。今後もガイア連合としては、転生者の保護と支援を継続していく方針です。夢野さんに対しても、相応の支援を行うことで、今回の件に対する謝罪とさせていただければと考えております」
ここで更にゴネるのもアリだが、変にゴネて向こうの心象を悪くして『支援』を絞られても困る。まずは支援の言質を取ったとしておこう。
「私のような身寄りのない中年男性に対して、そのような支援をご検討いただけるだけでも、十分に有難いお話です」
「ありがとうございます。それでは夢野さん、ここから肩の力を本当に抜いて頂き、今後の事を含めて本音でお話していこうかと。というわけでここからはタメ口でいいよー」
それまでの社会人的口調からガラリと変わった砕けた口調に。ははぁ、さてはこちらが地か。ここで口調を変えないのはケンカを売っているとも思われかねない。タメ口だが敬意は忘れずで行こう。
「それはありがたい。ちょっとこの口調はビジネス過ぎて肩が凝るのと、あんまり慣れて無いので、いつボロが出るかヒヤヒヤしていたので」
「はっはっはっ。まーガイア連合は出来上がったばかりの若いところで、ガチガチな組織じゃないから。他の人もこんな感じだから覚えておいてねー」
「フランク過ぎて逆に心配になるレベル」
「口調はフランクでも、腕は確かな人が多いから、そこら辺は注意してね」
「了解。ショタおじ」
なかなか風通しが良いっぽい。面白そうな組織だ。
「さて夢野さん。この後の事を話したいけど、情報に食い違いがあると困るので、夢野さんの口から夢野さん視点で、転生前からここまで何があったか教えてくれないか?」
「いいですよ」
少し考える時間をもらい、視線を畳に落とした。
この時点では、私はまだ知らなかった。
だが後から振り返れば、前世と、ガイア連合に保護されるまでが人生の最底辺だった。
前世の私は、一度は社会に組み込まれ、そして壊された。
理由は単純で、運が悪く、選択肢が少なかったからだ。
働いた。削られた。
気づけば名前を失い、役割だけを与えられる場所にいた。
そこから先の記憶は、断片的だ。
私は実験動物として消費され、やがて死んだ。
それが、前世の終わりだ。
次は今世についてだが、自分にとっては『50年分の記録』だ。
その最初の記録は両親ではなく、孤児院だった。
幸いな事に女神転生作品で悪名が轟いているメシア教系でも、それ以外のミッション系でもなんでもない、地方都市の孤児院だった。
中学卒業と同時に孤児院を放り出され、自活を始めた。それは塗炭の苦しみの開始でもあった。
なぜか私は人から嫌われた。
同じ服を着て、同じ表情をして、同じ行動をとっても、嫌われた。
『なんとなく気に入らない』
皆、判で押したように同じ理由を語った。
やむなく相手の言う通りにどう行動しても、相手は前言を翻してやはり嫌われた。
結局、50歳になるまで、手配師が嫌がらせのように割り当てる良くない日雇い仕事で食いつないでいた。
その日雇い仕事の帰り道、いわゆるヤンキー…と言うよりギャングに無理矢理絡まれ、軽く袋叩きにされた後、彼らに車で拉致された。
その後、山中の洞窟前まで連れてこられた。車中の話をまとめると、『洞窟に死体を放置すると、数日で死体が消える便利な所』で、反社御用達の洞窟との事だった。
そしてギャングたちによく分からないが強力なドラッグを射たれた。
その瞬間、1回目の覚醒をした。
ドラッグによる体験は覚醒フラグだ。
その後、私はギャングたちの遊びリンチ用サンドバッグにされたが、やりすぎたのか、私は死んだ。
その後、私は非常に大きい河のほとりに立っていた。
そして本能的に気がついた。ここは三途の川だ。
三途の川の船着き場には様々な船が係留されていた。
大は豪華客船。
小は古式ゆかしい手漕ぎ渡し舟。
珍しいところでは古めかしい砲戦型巡洋艦まで。
大きさの大小や、時代の新旧をガン無視した、様々な船が係留されていた。
正直、三途の川というイメージとズレまくった風景だったので戸惑った。
だってスワンボートまであるんだぜ。
その船たちの中。それも手漕ぎ渡し舟の前に、東方シリーズのキャラクターである小野塚小町そっくりな船頭がいた。あのキャラ確か死神で、三途の川の渡し守やってたっけ。でっかい、いかにも死神が持っていそうな大鎌を担いでいるので丸わかりである。
その小野塚小町に「なぜあんたがここにいる。映姫様からの死者の帳簿にあんたの名前が無い。こんな所うろうろしてないでさっさと現世に戻りなさい」と言われて追い返された。
閻魔大王をやっている四季映姫様いるんかいと思った瞬間、元の洞窟の中にいる事に気がついた。
この時に2回目の覚醒をしていた。
甦りは覚醒フラグだ。
私が洞窟内にいたのは、証拠隠滅目的で放り込まれていたからだろう。いつの間にか死体が消える洞窟との事だから。
ここから抜け出したかったが、遊びリンチで体力が切れていた。だからやむなく休んで体力回復に努めていたら、洞窟の奥からやってきた悪魔ガキと遭遇した。おそらく、死体が放り込まれたら、このガキが死体を食って死体が消えたんだろう。
そう思った瞬間、3回目の覚醒を果たした。
悪魔との遭遇は覚醒フラグだ。
生きる為、悪魔ガキと戦闘に入った。
こちらは肉体労働で鍛えているが、仕事帰りで、空腹で、疲れている上に、リンチで大ダメージを受けていた。更に悪い事に、私には素手で格闘戦の素養が無かった。そんな状態でガキと殺し合いに突入した。
結局、かなりの重傷を負ったが、何とか勝利した。
その後、壁にもたれて「あーやべーなー食われた右腕の出血をどう止めようかー止めないと死ぬよなー」と思いながら休んでいた。
そにガイア連合員である黒札1人に率いられた、一般人覚醒者3人が洞窟に突入してきた。
その突入してきた一般人覚醒者3人が『相当な重傷を負った私』を見て、ゾンビか他の悪魔と誤認した。
黒札が止める間もなく、一般人覚醒者3人がアギ・ジオ・ザンの各ストーンを私に投げつけた。私は避けられず各ストーンは炸裂し、私は死んだ。
連携は完璧だった。誤認でなければ、だが。
気がついたら、また三途の川のほとりに立っていた。
先程と同じ船と艦と舟があったので、最初に来た所と同じ所であるとわかった。
そうしてまた歩いていたら、また小野塚小町に会った。
彼女はさっき現世に送り返したはずの私が、時間をあまり空けずに戻って来た事に最初は激怒していた。命を粗末にしたと思われていた。
だが彼女に、「遊びリンチで殺され、ここで現世に送り返されたが、すぐに遭遇した悪魔ガキとの戦闘でボロボロになり、突入してきた人たちにまた殺された」と説明したところ、その酷さに同情された。だが職務は職務として、やはり追い返されて蘇り、4回目の覚醒を果たした。
その後、三途の川から戻って来た直後から記憶が無い。だが譫言で小野塚小町と会った云々と言ったらしく、黒札が私を転生者と判断した。そして応急処置を施してから山梨の本部に担ぎ込んで治療を行い、今に至った。
私の語りが終わると、ショタおじは大きく息を吐いた。
「夢野さん。前世といい今世といい、かなり過酷な人生でしたね。今世が酷い人はウチの霊視ニキを筆頭に何人かいるけど、前世まで酷い人はちょっと見当たらないなぁ」
「話してないだけで、実はけっこういるかもしれませんよ?」
「まーねー確かに。掲示板でポロっと話す人はいるけど、積極的に話す人いないしねー」
「ところでショタおじ。その掲示板でポロリした人ってどんな前世だったんです?」
「ニート」
ニート…まぁ何人もいればいるわな。
「まぁ、そう吹聴する前世じゃないですからね…」
「確かにねー」
そうショタおじと話をしていると、廊下をドタドタと走る音が聞こえてきた。
何だと思うと同時に、部屋と廊下を分けていた明り障子がガラリと開けられ、紺色作務衣姿のショタおじが入ってきた。
「頼む。匿ってくれー」
「だが断る」
入ってきた紺色作務衣ショタおじの頼みを華麗に断る、面談相手のショタおじ。
そうしているとまた廊下を走る足音がして、スーツ姿のショタおじと、神主姿のショタおじが新しく部屋に飛び込んできた。
「あーいたー!」
「確保ー!」
そう言いながら、スーツ姿のショタおじと神主姿のショタおじが、紺色作務衣のショタおじを担いで部屋を出ていった。
同じ顔が複数揃い、風のように去っていった衝撃の光景を見てから思わず、面談相手のショタおじを『説明して頂けるんですよね』とばかりに見てしまったのはしょうがないと思うんだ。
「後で説明するつもりだったんだけどねー私とさっきの3人は全員『本体と同じである式神』だよ」
「なにその封印指定の人形師作品(青崎橙子感」
思わずそうツッコんだのはオタク的にしょうがないだろう。常識的に考えて。
「やめろーショッカー!ぶっとばすぞー」
そんなどっかで聞いたようなセリフが遠くから響いた。
何のネタかは分からないが、少なくとも緊張感は欠片もない。
そんな声なんか無かったように、最初からいたショタおじが続けた。
「人形師作品と違ってね、高級なシキガミに精神を憑依させたものだから、みんな同じ私だよ。なんと言うかねぇ…」
そう言うとショタおじは首をコテンと横に傾けた。
「攻殻機動隊のフチコマ・タチコマ?
朝、同じ記憶持った私たちがいて、昼にみんな違う仕事して、夜に戻って本体に経験渡して経験を並列化する」
「オカルトなのにSFで草ァ!」