【カオ転三次】おっさん転生者がなんとか生き抜く話 作:Vp6121
星霊神社付属施設
シャーマンキングのハオにそっくりなショタおじと、50歳おっさんな私。その2人が引き続き立派な書院造りな部屋で面談を続けている。
「さて、それでは次に、夢野さんの能力等についての説明だが…」
ショタおじが思わせぶりに会話を一旦切る。
「夢野さん。いいニュースと悪いニュースがある。どっちから聞きたい?」
「定番で草。ショタおじ、悪いニュースから聞かせて」
「なかなか悪いニュースから聞きたがる人は少ないんだよねー。なんで?」
「私は美味しいものは最後まで取っておくクチなので」
ショタおじがそれを聞いてクスリと笑った。
「まー悪いニュースと良いニュースを一緒に説明するんだけどね」
「ならショタおじ、なんで聞いたんです?」
「様★式★美」
「草」
「さて、それじゃ説明に入るね」
そう言うとショタおじは、自分の懐からA3サイズ書類入り封筒を取り出した。
「ショタおじちょっと待って。どう見てもそのA3サイズ封筒、取り出した懐よりデカいんですけど」
「気にしない気にしない。それより夢野さんこれを読んで」
そう言うとショタおじは封筒から書類を取り出してこちらによこした。
「何ですこの書類?」
「夢野さんのカルテ」
驚いてカルテ内容を見た。
「あの…その…ショタおじ…」
「どーしたの?」
「この外傷のオンパレードが治っているのはまぁ、治癒魔法があるのでわかります。右腕食われたのが治ってますし」
「そうだね。医療部で治癒魔法の経験を積みたい人たちがかけまくったそうだからね」
「はい。そこら辺は感謝です。それでですね、肝臓・膵臓・胃が末期ガンかつ他に転移済ってこれだけでもヤバいのに、それらのガンが3日で全部治ってるのがもっとおかしくないですか?」
それを聞いてショタおじがニヤリと笑った。
「そこはそれ…ジオン驚異のメカニズム…じゃなくて…ガイア連合驚異の技術力でね、私の知識・転生者の才能・みんなの努力・魔法で、医療的には『現在の医学の斜め上を第3宇宙速度ですっ飛ぶ』程度の状況だからねー」
「軽く言いますけどショタおじ。これ外にバレたらヤバいですよ」
「そこら辺はいわゆる『政治家俺たち』『富豪俺たち』が外との交渉で慎重にやってるから。まぁそれ以前にものによっては一般人には効能が強すぎて使えないのがあるからねー」
「ヤバい度合いが上がって草。ところで私のガンどうやって治したんです?」
「カレー」
意外な言葉が出てきて、何秒か固まったのはしょうがないと思う。
「カレー…ですか…」
「そうそう。ウチで出してるガイアカレー。食べたでしょ。美味しいヤツ」
「確かに今までで1番美味しいカレーでしたけど…」
「夢野さん。カレーの有名な話に、カレーの香辛料って漢方薬とかなり被ってるって話を聞いた事ない?」
「あー、ターメリックが漢方薬のウコンであるとかですよね」
「そうそう。それでね、ウチのガイアカレーってその香辛料をガチ霊薬に差し替えたりしているから、実際は『治療霊薬カレー』なんだよねー。だから普通のガン程度なら1日2日食べてると治る」
「なにその医療業界と製薬業界と食品業界が大混乱しそうな激ヤバ食品」
「夢野さん。実はもっとヤバいよ」
「まだあるんか」
「霊能系病気やら悪魔系寄生虫やメシア教洗脳もカレー食えば治る」
「もっとヤバかった…そんな病気とか雛見沢症候群とか洗脳あるんか!」
「だって夢野さん。この世界、終末が約束された女神転生系世界よ。これぐらいは一般教養だから」
「絶望した!この世界の激ヤバ一般教養に絶望した!」
「まぁその為の私たちガイア連合だからねー」
そう言うとショタおじがまた懐から『2人分の茶器とお茶セット』を取り出した。もうツッコまないぞ(諦め
「まぁ夢野さん。一旦休憩という事でお茶をどうぞ」
そう言うとショタおじはお茶を手ずから淹れてくれた。
良い香りだ。
「それではショタおじ、頂きます」
そう言ってから淹れてもらった緑茶に口をつけた。
美味い。
今までで1番美味しいお茶かもしれない、心が落ち着く。こういったところが転生しても日本人なんだなぁ。
「ショタおじ。こんな美味しいお茶を淹れて頂きありがとうございます。もしかしてこれも霊薬ですか?」
「違うよー。これ静岡茶。
静岡で暮らしてる、転生前もお茶農家だったガイア連合転生者が、今世でも引き続き美味しいお茶を作る為と、終末が来ても美味しいお茶が飲めるようにお茶農家として頑張ってる。その成果物でね」
「ガイア連合の転生者って本部駐在とか、みんな悪魔と戦っていると思ってました」
「まぁみんな最低限の自衛能力を持ってもらうようにしているけど、技術開発とか製造とか後方支援やってて悪魔と殴り合ってない人も多いよ。あと、本部以外の土地にいる転生者も多いよ。やっぱり故郷を愛する人も多いし、守りたいって思うのは自然だしね」
そう言うとショタおじもお茶をゆっくりと飲んだ。
趣のある書院造りの部屋で、美味しいお茶を喫する。
古田織部(へうげものver.)であっても称賛するだろう、贅沢なひとときだ。
お茶を飲み終わるとショタおじが切り出してきた。
「それじゃ夢野さんのスキルについてだけどいい?」
「お願いします」
ショタおじはやっぱり懐からA4サイズの書類と、A3サイズホワイトボードとペンを取り出した。もうツッコまないぞ(2回目
「これが夢野さんのスキルについての書類。確認の為にも説明するからね」
「あ、はい。お願いします」
ショタおじはA3サイズホワイトボードに書き込み始めた。
●基本
・魔法系含む攻撃・防御スキルをこれ以上覚えられない。ただし運転といった汎用スキルや訓練で覚えられるのはOK。
・製造系に適性が無い
●スキル
①全門耐性(物理・万能系以外からのダメージ半減)
②物理耐性(物理ダメージ半減)
③状況異常耐性(全状況異常被弾率半減)
④取得経験値減少(70%減少)
⑤常時無差別広域挑発(半径数キロから悪魔が殺到。転生者以外の人間から離れていても嫌われる)
「ショタおじ。素人目で見てもピーキーにも程がある極端な感じがするんですけど…」
「確かにねぇ…でもコレ事情がねぇ…これらのスキル、覚醒直後レベル1ではありえないんだよ。占術で調べたら、キミは元々才能が他の人よりとても高かった。その高さで普通に成長していたら凄い能力者になれただろう」
ちょっと引っかかる物言いである。過去形…まさか…
「ショタおじ。過去形という事は…」
「生き残る為に4回も覚醒して、①②③の良いスキル3つを持ってきた。が、スキル取得の代償である支払い分が足りなくなったんだろうね」
ここでショタおじがため息をついた。
「足りなかった分を④⑤のマイナススキルによって補ったっぽい」
「TRPGとかのキャラメイキングで、マイナス特徴を取って、スキルポイントを稼ぐようなものですかね」
「そんなもんだね。それが自動的に行われたっぽい。そしてねぇ…」
ショタおじが済まなさそうな顔をした。
「強力なスキルとマイナススキルを同時取得した弊害か、どうもこれ以上スキルが生えてこない。ゲームにおける超早熟キャラが近いと言えば近い」
超早熟キャラは大抵は地雷扱いされている。まずい。
「もっとも、運転のように一般人でも訓練で覚えられる汎用スキルは、スキルが軽いので習得可能だ。あと、同時取得の弊害で生産系と相性が悪くなってるから、生産に従事するのはお勧めできない」
「伸び代が無く、生産系も困難。結果として戦闘から離れる事ができない。絶望した!才能の枯渇(ガチ)に絶望した!」
思わず絶望した表情を見せてしまった。が、そこにまた真面目な表情になったショタおじが救いの言葉をかけた。
「だが夢野さん。お先真っ暗というものでもない。力や素早さといったステータス値に制限は無いし、反復訓練を行えばその分だけ成長する」
「という事はショタおじ。私は派手なスキルで華麗に俺TUEEEEはできないが、コツコツ地固めをして基礎能力で圧倒するのが向くという認識でOK?」
「おK。あと、スキルについて追加。経験値減少はどうにもならないが、常時挑発は制御ができる余地があるっぽい。レベル10あたりから制御ができ始めるから、がんばってね」
まぁ、ヤバいスキルのうち片方が何とかなるかもしれない『希望』があるだけマシか。
「ショタおじ。少なくとも現状確認と指標ができたので、腐るような事はしにくくなりました。前世も覚醒前の今世もコツコツやって何とか生きていました。またやる事は同じですよ」
さっきまで絶望していた人間が、復活してやる気を出したのが嬉しいのか、ショタおじが笑顔になった。
「前向きになってくれて嬉しいよ。同じ転生者の中には残念ながら自暴自棄になる人もいるからね」
「そりゃまぁ転生しましたーよーし転生前知識チートを使って成り上がりだハーレム創るぞーと思っていたら、悪魔に踊り食いされたり、メシア教にアイテムとして加工されたり実験動物にされたりする他、魂の安息すら保証されないという女神転生世界ですからねぇ。クトゥルフ世界とかSCP財団世界よりゃマシですが」
あれらの世界には、大は宇宙滅亡、小は自分が滅亡するような案件が実はそこらによく転がっている世界だからな。
「確かにあれらの世界よりはね…っとそうそう。クトゥルフ系を話題に出すのは極力控えて欲しいんだ。特にトリックスター的な要素がある頭文字Nは名前も出しちゃダメ。出さなきゃいけない時は『N案件』と言ってね」
そう言ったショタおじの表情は、今までで1番真面目な表情だった。
「ショタおじ、もしかして女神転生の何だったかであった噂システムですか?噂が現実化するヤツ…アレってこの世界に実装されて…る?」
あの噂システム、噂によっては世界滅亡とか、ドイツ人フリー素材化ちょび髭おじさん復活とか、危険過ぎるにも程がある。
「今の所、噂システムは未確認。
でもここは女神転生世界。オカルト系では『認識』によって現実が変化する傾向があり、認識が大きな力になるペルソナ系のタルタロスやイセカイテレビもある。あると認識してあるように振る舞えば、新しく実装される事すらあり得る」
ショタおじは真面目な顔を崩さず続けた。
「何しろ『〇〇神は美少女だ』と前世知識で認識した転生者が神と会ったら、その人は対象の神を美少女としか認識しなくなったというケースがあるから、認識は侮れない。無いだろうとタカをくくっていたら裏でこっそり動いていて頭文字N顕現…なんて事もあり得る。ならばそんなリスクは極力減らしたい」
「地雷が…核地雷が多い…!」
「終末に近づけば近づく程、そういった危険が増える事が予想されるんだよねぇ」
そう言うとショタおじがゲンナリとした表情を見せた。
「生きるという営為は、地雷原を歩くことだ*1…か。それも地雷がどんどん増えていく地雷原を。ショタおじ…救いは…転生者に救いはねぇのか!?」
それを聞いたショタおじが笑顔になった。
「その地雷原な世界を生き抜く助けをガイア連合はやってます。この山梨支部…と名乗っている本部のここには宿泊施設や各種支援設備、修行用異界。それに仲間が大勢いるから、ここで生活して強くなる事ができる」
ん?ここで生活?
「ショタおじ質問。外部に生活基盤がある人はどうするのか。また、外で暮らしたい場合は?」
「外に生活基盤がある人は、夏休み等の長期休みなどを使用して集中合宿みたいな事を行って修行してる。学生さんとかが多いね。ここで覚醒してレベルを3以上とかにしないと、寄ってくる悪魔のオヤツになっちゃうから必死だね。外で暮らすのは自由だよ。外で異界潰ししてる人もいるしね」
ふむ…実力つけないと外で生きていけない身体になってしまったか…
「ショタおじ。私の場合は、外に基盤無いのでここで修行ですね」
「そうなる。修行と言っても楽な修行・キツい修行・座学等と分かれてるから、好きなようにやってみて。でもいきなり異界突入は止めてね」
ショタおじは何か思い出したのか苦い顔。
「そこまで向こう見ずじゃないですよ」
「いやいや夢野さん。これがけっこういるんだよ。転生して覚醒して万能感の虜になって修行用異界に単騎突入して死んで、死体回収されて復活。それから戦闘系がトラウマになったりね」
何と言う無謀さ。これが若さか…
「復活できるのは強いけど、そこまでやりませんよ。私、50歳で若くないし」
「若くないと言っても夢野さん。肉体年齢が50歳なだけで、精神年齢は30代じゃないか。若い若い。それに覚醒した夢野さんには肉体に強化が入ってるから、肉体年齢と実力はかなり異なるよ。レベルが上がれば上がる程外見と実力差が激しくなるしね」
ん?と言う事は、この少年のように見えるショタおじは…
「ん、強くなったと思ったら模擬戦を挑んでもいいよ」
ショタおじが私の表情から考えを読んだのか、ニヤリとしながらそう答えた。
「やめときます。それじゃあショタおじ、座学やって、修行と戦闘訓練やってから異界突入やります」
「それが安全。いくら復活できると言っても、安全に復活できるのはここ山梨支部だけ。安易に復活慣れはしてほしくないから、がんばってね」
トラウマ発症可能性はあるけど、リアル世界でチュートリアルできて復活ポイントがあるのはチート過ぎる。だが痛いのはなぁ…
「死ぬのには慣れたくないですね。覚醒前後合わせて2回。前世も合わせると3回死んでますし」
「そんな転生者に追加支援があってね、戦闘等の支援を行うシキガミというものを1体無料で渡しているよ。中級レベルの。低級は外で見ただろう一反木綿型で、高級は人間と見分けがつかないもの。中級は首から上が人間そっくりで、それ以外は頑丈で完全防水の紙製マネキン」
「でもお高いんでしょう?」
「2体目以降の中級以上はね。それを買う為に頑張ってる人は多いよ。嫁や婿にしたり、生活全般任せたり、戦友にしたりと色々いるよ」
ほへー。思った以上にすごい所だ。色々な意味で。
「でもショタおじ、金が相当かかるのは…金だ…金は全てを解決する…」
「日本円よりも悪魔倒したりアイテム売却で手に入るマッカの方がいいよ。その金やマッカだけど、任意の転生者に低利息貸付を行っている。事務局には言っておくから、夢野さんにはそれを使って準備してね」
「だがショタおじ、銀行なら事業計画書出して見込みがあるなら融資が下りる。住宅ローンなら、払える給与収入があるならできる。でも今の私には信用も何もありません」
それを聞いてショタおじがニヤリと笑った。
「誤射のお詫びとして、ほぼ無審査で通す事になっている。また、利息も低利息からほぼ無利息まで下げていて、返済期限も通常の2倍程度にしてある。無茶な生活をしなければ、1年以上は生活できる金額だね。
あと、独身寮の手配も終わっている。こっちも事務局から資料をもらっておいてね」
「根無し草な貧乏人にはありがてぇ…ありがてぇ…」
そう感謝していると、ショタおじが何かに気がついたような表情をした。
「さて、そろそろ分身による面談も時間だからこのへんで終了ね」
「ショタおじの貴重な時間を裂いて頂きありがとうございました」
「いいさ。同胞である転生者を保護して世話を焼くのは僕の趣味であり娯楽なのでいい気晴らしさ」
「はい。ありがとうございました」