【カオ転三次】おっさん転生者がなんとか生き抜く話 作:Vp6121
事務局面談後
休憩スペース
休憩スペースには人がまばらだった。
個別席はポツポツうまっていて、書類を読む者、突っ伏して寝る者、マンガを読む者と思い思いの事をしながら休憩をしていた。
その中で私は、缶紅茶を片手にテーブルの上にノートを広げた。そして武装についての考察が書かれたページを開き、自分の考察を再度確認し、修正を加えていた。
まず、敵を定義する。
敵は海賊*1……ではなく悪魔だ。
その敵である悪魔は、私の自動挑発スキルで、悪魔のグループが波状攻撃を仕掛けてくる。
技術部依頼のスキル確認時、自動発動した挑発スキルが悪魔を普通の5倍は呼び寄せ、技術部護衛に守られた私の方に殺到してきた。
あの時は借りた防具と護衛の皆さんのおかげで助かった。だが次からはあの悪魔津波を最悪パターンでソロ対応しなければいけない。これを達成できる装備と戦術が必要だ。
前世の『高機動幻想な青いゲーム』*2で覚えた考えが役に立つとはなぁ。
まず敵を絞る。
敵を自分のレベル以下の、いわゆる雑魚悪魔に限定する。*3雑魚悪魔なら悪魔津波であっても、多少は生き残る可能性はある。
次に地形を選ぶ。
だだっ広い平原で、何も対策せずに雑魚悪魔津波に正対したら、5分で沈んで死ぬ。
悪魔が数的有利を生かせない場所。望ましいのは山道の隘路で、悪魔が1体しか並べないような所を選ぼう。詳しい地形は事務局に初心者用異界地図を見せてもらおう。
缶紅茶を少し飲む。うーん。お手軽だけど風味がなぁ……
次は武装を絞る。
悪魔が数的優位を生かせない所であったとしても、それでも数で押し切られる事を考え、逃げ足を確保したい。また、相手の方が数が多いので、長時間戦闘になる。よって重装備ではスタミナ切れと悪魔に追いつかれて死ぬ。よって、比較的軽装備で、機動力と防御力と重量のバランスを取ったものになる。
この時に『完全ソロ戦闘』と『シキガミとの集団戦闘』の2つのルートがあるので、それぞれの陸上ドクトリンとそれに合わせた武装が必要だ。
ノートの『武装』のところから矢印を2つ出し、それぞれに『完全ソロ戦闘』と『シキガミとの集団戦闘』と書き加えた。
『完全ソロ戦闘』の場合。
陸ドクとしては、『致命的な攻撃だけは絶対に避ける。それ以外の攻撃はできれば避けるが、被弾したら耐性で耐える。機動により敵集団に1VS1を強要し、各個撃破に強制変更する。そしてもう保たないと判断したら逃げる』というものだろうか。
その陸ドクに合ったアセンブルは、ブレオン(ブレードオンリー)な軽二脚と言うか、軽装歩兵といったところか。
右手装備のメイン武装は比較的軽めの片手武器。
左手装備のサブ武装は、シールドバッシュもできる小型盾。
頭装備は頭部致命攻撃を考えて、最低でもヘルメット。できれば警察の機動隊のような正面防備と首防備ができるもの。
身体装備は重要臓器を守る部分的プロテクターの類。軽ければモトクロス用プロテクターなんかがいい。
脚装備はしっかりした走りやすい靴。走れなくなった兵から死んでいくからな。
休憩スペースに猫が入ってきたらしく、ざわつく。でもここの猫って猫又とかケットシーな悪魔の可能性あるんだが……
さて、『シキガミとの集団戦闘』の場合。
陸ドクとしては『挑発で寄ってきた悪魔の攻撃を、装備の重装甲と物理耐性(被物理属性ダメージ半減)で耐え、機動打撃力と定義した仲間の攻撃で倒す。逃げる時は仲間の支援を受けながら下がる』というものだろうか。
その陸ドクに合ったアセンブルは、重火器が無い重二脚と言うか、重装歩兵か。
装備はさっきの軽装歩兵装備の盾を、警察の機動隊が使うような大盾に変えたものになる。ガチガチに固めるのはいいが、あまりにも足が遅いと逃げ切れなくなる。
ソロ・集団もどちらでも使える武装を設定する。
悪魔側が数の暴力を持つので、できるだけ格闘戦は減らしたい。ならば長距離兵装で敵が遠距離のうちに潰すか接近戦までに敵を削るだけ削ってから接近戦に移る遠戦志向で火力戦教徒のアセンが基本だ。有澤の社長砲は浪漫である(ガンギマリな眼で
ただしコジマキャノンは勘弁な。
それはともかく、グレネードや自己誘導型ミサイルやレーザーやロケットランチャーといった重火器は無い。拳銃・自動小銃・軽機関銃等の軽火器も使えない。あったとしても習熟がいるし弾薬費をかなり食うので避けたい。それ以前に銃なんてレンタルに置いてない。
弓矢は比較的手に入りやすいが、これも習熟がいる。
よって採用するのは投石になる。
投石はそう捨てたものではない。
安くて、やりやすくて、世界的な認識でバフが乗る遠距離兵器だ。
拾った石なら弾薬費0。
手で投げるなら素人でも調節が利く。
投石紐使用前提だが、ダビデが『巨人ゴリアテに投石を叩き込んで気絶させた』逸話から女神転生世界ではこれがバフになる。
まず戦闘訓練は『ソロ戦闘ドクトリン』に投石を加えた形で始めてみよう。
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装備レンタル部
装備レンタル部は技術部近くに店を構えている。
見た目は半分アパレルショップで、もう半分は◯ークマン系の質実剛健。カオスだ。
マネキンが服を着ている。ここまでは普通だ。だが着ている服が防具だ。これも海外のセキュリティ系取り扱い服屋である。
でもおかしいのは、普通の服・コート・プロテクター・ビキニアーマー・魔法少女セット一式がマネキンに着せられて当たり前のように並んでいる所だ。
おそろしい事に、普通のプロテクターよりもネタ装備の方が物理防御力・概念防御力が強いらしい。
これが、ジオン驚異のメカニズム…じゃなくて、ガイア連合驚異の技術力といったところか。斜め上だけど。
他にも美しい短剣がショーケース内に並べられているかと思えば、床に『一狩り行こうぜ!』な前世モンスター狩猟ゲーム*4に出ている巨大武器や、『剣と言うにはあまりにも大きすぎ、大きく、ぶ厚く、重く、そして、大雑把すぎた。それは正に鉄塊だった』と評されたアレのレプリカ*5が無造作に転がっている。
そんな無骨な武装とネタ装備と普通の装備が並んでいる装備レンタル部を訪れた。
まずはレンタル部内をゆっくりと回ってみる。
さすがに「ニチアサ系魔法少女(対象年齢10歳以下女児だが、マーケティング上では大きいお兄さんもターゲット)変身セット」を筆頭に並んでいるネタ装備を華麗にスルー。
人によっては羞恥を捨てて高性能女性用ネタ装備を着用している男性がいるそうだが、そこまでは……
私のお目当ては量産品のありふれたもの。壊したり無くしても買い直せる、お財布に優しいもの。それをレンタルで試す。
武器は片手用金属製メイスを選んだ。これなら殴るだけでダメージが入る。私、剣術知らん人だからこれでいい。
盾は、警察用ポリカーボネート製の小型盾があった。軽くて丈夫。
頭は良いのが無かったので工事用ヘルメットを選択。
身体防具を見ていたら、なぜか米海兵隊仕様ネックガードがあった。皮製だったらレザーネック(米海兵隊の別名称)だぜーができるがそこまで望まないから採用。首を狙われると死ぬ。
「……新人にしちゃ、珍しいな」
ネックガードを選んだら、そう店員のおっちゃんに話しかけられた。
「何がですか?」
「首を守る。そこから考えるヤツはあんまりいない」
店員はそう言って、軽く首元を指で叩いた。
「首を刎ねられたら、1発で終わりなんだがな……」
……この店員、洞窟野郎だな……*6
だが反論できる程、私は戦場を知らない。
それでも……
死んだ事は前世で一度。
今世でもう二度。
ショタおじの厳しい修行で何度も。
死の怖さを知っている。
防具選びを続ける。
身体防具は軽い部分的プロテクターにした。ここで金属製鎧を選ばないのは機動性重視だから。
足は米軍放出品のブーツがあった。防御力も軽さもそれなり。
それらを着てフィッティングテストを繰り返す。具合が悪いものだったら交換をお願いする。
熱心にフィッティングテストをしていたら2時間が経っていて、さっきのおっちゃん店員にまた話しかけられた。
「2時間もやるヤツは久しぶりに見たな」
「やりすぎですか?」
「いや。やらないで死ぬ奴の方が多い」
どうやらここまでやる人はいないらしい。だから何も考えず突撃した初心者がポンポン死ぬ。
己を知らず、装備も知らず、敵も知らず、地形も知らず、ただ突撃するのみ。私なら怖くてできないな。*7
その後、すぐ選べるようにメモを取ってから装備レンタル部を後にした。