【カオ転三次】おっさん転生者がなんとか生き抜く話 作:Vp6121
事務局
午前中
本田さんとの打ち合わせの翌日。
午前中のうちに「シキガミ製造の振り替え」について話を通す為に事務局を訪問した。
今日も事務局は忙しそうである。
そんな中であってもちひろさんを呼び出してもらい、また事務局の談話スペースに案内された。
そうして待っていると、ちひろさんが書類片手にやってきた。今日も『蛍光グリーンの事務服』をキメていた。
「おはようございます。ちひろさん。お忙しい中呼び出してしまい申し訳ありません」
「いえいえ大丈夫ですよ夢野さん。それでどういったご用件でしょうか?」
「昨日、ここで打ち合わせ時に出たシキガミの件です」
ちひろさんは『あーはいはい初心者あるあるなシキガミについての問い合わせねー』な表情をした。
「シキガミ導入を決定ですか。どんなお悩みでしょうか?」
「単刀直入に申し上げます。『中級シキガミ1体無料製造権を製造料と解釈し、それを下級シキガミ3体製造料に振り替えます」
ちひろさんは予想外の回答に3秒程フリーズした。
「えっえっえっ…夢野さん何でまたそんな事を?下級シキガミなら吊るしのものがあるじゃないですか?」
「確かにそうですが、私の予想では吊るしの下級シキガミだと各種性能が低く、私の想定には耐えられないと結論しました。技術部の本田さんもこれに同意しています」
「夢野さん。そんなにノーマルの下級シキガミじゃダメですか?」
「悪魔の波に呑まれるのは、お好きですか?」
ちひろさんが苦い顔をした。
「そこで私の肉体を多く使う事で性能を上げ、中級シキガミに近い自律性能と各種能力を持つ、下級シキガミを極めたようなもの3体を製造しようと結論しました。これならそれなりの性能のものを素早く納品できます」
それを聞いてちひろさんが納得したような表情を見せた。
「それでですね、ちひろさん。この振り替えですが、技術部の本田さんが言うには問題無く可能との事ですが、事務局としては事務的にはどうでしょうか?」
技術部の本田さんでも聞いた事が無い案件はちひろさんも聞いた事が無かったらしく、少し考え込んだが、すぐに結論が出た。
「夢野さん。この振り替えですが、事務的には禁止している覚えはありませんね。と言うより今回が初めてのケースですね」
「でしょうね。今回のコレは何と言うか…ルールの穴とか想定外事項かと。だから実現の為に事務局に話を通しておこうと思いました」
ちひろさんはちょっと困ったような表情で少し考えた。
「夢野さん。ガイア連合は公的機関ではなく民間団体で、ギチギチにルールが決まっているわけではありません。よって今回はOKになると考えます。ショタおじに私から一言入れますので、今後は何かルールが決まるかもしれません」
「ありがとうございます。ちひろさん」
これでルール上の問題はほぼ解決と。良かった良かった。
「それにしても夢野さん、いきなりシキガミ3体製造ですか…大胆ですね」
「技術部の本田さんが言うには、『ルーキーは予算の問題もあるが、1体だけの個別性能重視に走る傾向が強い』との事なので、珍しい事は否定しません。ですがちひろさん、私は他の人とはかなり違う状況ですので、なら他の人とは違うチャートを走っても良いのでは?
あと、戦争は数だよ兄貴!」
「誰が兄貴ですか誰が。あとリアルで走者やらないで下さい」
「まぁそこら辺はフレーバーで。あとちひろさん、下級シキガミの数を揃えてそこそこの性能に上げるので、借りてる資金のうち10%は確実に投入します」
私の大胆な資金の使い道に、ちひろさんが息を飲んだ。
「全資金の10%を、ですか」
「必要なら半分を突っ込む事になるでしょう」*1
「夢野さん夢野さん。ここはどこの熊本城攻防戦前ですか。それはともかくやっぱり夢野さんは大胆です。私、千川ちひろとしてはその判断を尊重しますので、思うままに資金を突っ込んで下さい。でも、生活費ぐらいは残しておいて下さいね。一文無しになったら、『色々と愉快な』目に遭いますからね。死ぬ事はありませんが、お勧めしたくない事に」
「肝に銘じておきます」
これで予算面の問題も解決。
「あと、事務から夢野さんに連絡があります。戦闘講習ですが、本日の午後の枠にキャンセルが出たのでそこに入りますか?」
「行きます行きます!絶対行きます!」
私のものすごい勢いの承諾に、ちひろさんは苦笑した。
「それでは本日13時に指定の場所で合流してくださいね」
「はい。それではすぐ準備に入ります。ちひろさん、ありがとうございました」
そう言って事務局を後にして装備レンタルスペースに向かった。
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修行用異界前
昼過ぎ
レンタルで借りた武装を装備して、修行用異界前に約束の5分前に到着。考えてみると、50歳のおっさんが他の若者と同じような装備なので浮いているんじゃないかと思う。
まぁそんな事を言ってる余裕は無いが。
さて、異界前には武装したサングラスにパンチパーマ姿のガタイが良い中年男性と、人間サイズのロボットが立っていた。
そのロボットは肩や腿部分等の各種装甲が曲線的で、かつ腰が極端に細いフォルムを持ち、背中が大きく突き出た厳密には人型とは言い難い、グレーに塗られた機体だった。
どう見ても人間サイズの「高機動幻想ガンパレード・マーチの士魂号複座型突撃仕様(士魂号(M)I型<双>)こと騎魂号」です。ありがとうございました。
そしてガタイのいいサングラスにパンチパーマの男性は、同じガンパレの坂上先生にしか見えなかった。
どう見ても戦闘講習の担当にしか見えないので、話しかける。
「お疲れ様です。戦闘講習の教官の方でしょうか」
「はい。本日の教官役の坂上です。講習のキャンセル繰上げ対象の夢野さんですね。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
お互いに頭を下げて挨拶した。アイサツは大事。古事記にもそう書かれている。
「坂上教官。お隣にいるどう見てもガンパレの騎魂号*2は?」
「専業教官ではないので坂上ニキでけっこうですよ。夢野さんの方が年上ですし。
隣にいるのは私のメカ系シキガミの騎魂号です。悪魔との戦闘で危険と判断したら、私とコイツで広範囲殲滅を行ってから夢野さんを連れて撤退するのでご了承下さい」
「わかりました」
「それでは異界突入前に装備点検と戦術確認ですが…軽装ですね」
坂上ニキが私を見て心配そうに言った。
「軽装と言っても、頭部はヘルメット。コアはネックガードと軽い部分的プロテクター。脚部と腕部もプロテクターで防御。武装は「刺せる刃が付いたメイス」「小型メイス」をメインとサブに。後は警察用ポリカーボネート製盾な軽歩兵装備ですよ」
坂上ニキは私の話を聞きながら、私の装備をじっくり観察した。
「戦闘経験が少ない人間でも何とか戦えるアセンのようですね。
我々は機動兵器でもあります。
『機動せずしてどうするか!』*3
『人類発生以来、戦闘種族としての人類が磨き上げてきた戦術は、結局機動、マニューバのことを指す』*4
という金言に反して慣れてないのに重装備で、少し機動するだけで息を切らして動けなくなるのが初心者によくありますが、それを回避していますね」
そして坂上ニキが私の腰に下げたメイス2本を指差した。
「刀剣で斬るのは初心者には難しいので、振るだけで打撃ができるメイスを選択した事は私としては評価したいです。
ところで夢野さん。腰のウェストポーチに追加で着けている袋には何が?」
「投石用の石とスタッフスリングです。弓矢や銃は高価で難しいので、おたまを改造強化したスタッフスリングと石なら弾代が無料なお手軽射撃武装ですから」
「接近戦の前に射撃戦を入れるのは悪くありません。武装全般は良いようですね」
「ありがとうございます」
私の武装については合格点が出たようだ。
「次に夢野さんの戦術を聞かせてください」
「はい。基本的に悪魔からの攻撃は回避して、被弾した時は耐性で耐えながら動き、数的優勢な悪魔に1対1を強要し続けます」
「事務から受け取った情報からこちらが予想したものと同一ですね。と言うより、その方法が最善。
追加で考えるならば、機動する事でイニシアチブを取り続け、相手のOODAループを切断し、相手の優位を発揮させないという事も含まれますね」
そして坂上ニキは一拍置いた。
「理想は常に1VS1で、『します・させます・させません』*5を強要し続ける事でしょうか?」
さすが教官。元ネタの坂上教官と遜色無いんじゃないか?
「その通りです。今の所はソロで動くしか無く、相手が多数である事が決まっているのでこうなりました」
「そうですか。それでは夢野さんはすぐ異界に入っても問題無いと判断したので、異界に入りましょう」
そう言って坂上ニキは異界突入を促し、ついに初めての異界突入を開始した