【カオ転三次】おっさん転生者がなんとか生き抜く話   作:Vp6121

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第8話:戦闘訓練

修行用用異界内初心者向け地域

30分後

 

「こいつで、終わり!」

 

 思わずそう叫んで、悪魔ゴブリンの頭にメイスを叩き込むと、ゴブリンは倒れてMAGに帰った。

 それを確認した私は、ゆっくりと深呼吸をした。

 

 修行用異界内初心者向け地域。

 それも入口近くにある平原の、林との境界近くで私はずっと戦い続け、30分程度が経っていた。

 

 予想以上の連戦で私は息が切れていた。

 石はとっくの昔に投げ尽くした。

 メイスと盾は少し歪んでいて、激しい戦闘を物語っていた。

 

 その私の横に、さっきまで戦闘を見守っていた坂上ニキが立った。

 

「お疲れ様です夢野さん。通常、ここらへんの初心者向け地域での悪魔エンカウント率はだいたい1体/5minになるよう調節しています。ですが、夢野さんの所に殺到する悪魔はだいたい1体/1min前後。これが30分程度継続ですから既に30体と戦闘して撃破と。

 この異常な状態を現出したのが夢野さんの常時挑発スキルですか…」

「その通りです、坂上ニキ。こうなるので軽歩兵アセンな陸ドクにしたんですよ。重装備なら最初の10分で体力切れで潰れてますね」

「1体ずつのみとは言え、悪魔の波状攻撃が30分は続いているので初心者にはこれはキツいですね。今のうちに水分を摂って塩飴でも舐めておいて下さい。」

 

 坂上ニキはこちらを気遣ってか、熱中症対策じみた事を促した。確かに水分と塩分が汗として流れた上に、激しい戦闘機動で体温が上がっているので必要な事だ。

 その指示に従って、素早く水を飲み、塩飴を口に入れて噛み砕いた。

 それから息を整え、次の会敵まで待っていると、坂上ニキが話しかけてきた。

 

「夢野さんとしては、早くシキガミを複数体入れて、優勢火力ドクトリンな諸兵科連合で対応したい所ですか」

「ええ。数的劣勢が運命づけられている以上、生き残るにはこっちも多少の数を揃えて、その上で火力を持たせないと悪魔の海に呑まれます」

 

 坂上ニキがうんうんと頷いた。

 

「夢野さん。火力密度と防御力向上の為、固定陣地に籠るのもありですよ」

「はい。坂上ニキ。基本は事務局からもらったマップを参考に、緊要地形に籠って火力投射を行いたいです。

 開けた場所で平手で勝負するのは怖いので、そういった所では本当にやむを得ない時にしかやりませんし、さっさと機動して移動したいです。

 平原でヤーボ(戦闘爆撃機)に捕まって殲滅されたくないですし」

 

 坂上ニキがそれを聞いて軽く笑った。

 

「第2次世界大戦ドイツ陸軍の苦い経験もご存じならば安心ですね……と林から次の悪魔が来ましたよ……ん?ずっと1体ばかりだったのに、今回は悪魔ガキ3体のパーティーとは珍しい。介入しますか?」

「坂上ニキ。自分の限界を確認したいんで、このままで」

「危険と見たら介入しますからね」

 

 坂上ニキの声を聞きながら、私は悪魔ガキ3体に向かった。

 

 ガキ3体は仲良く横並び状態で突入してきた。そのど真ん中に馬鹿正直に突入する義理は無い。

 1番近い向かって右のガキに向かって回り込むように動き、横並びが縦並びになる所に移動した。

 

 基本的にアホな悪魔ガキがこっちの動きに戸惑っているので、1番手前の悪魔ガキの頭部に向かって横殴りの、遠心力を込めた右からのメイスの一撃を叩き込んだ。

 

 1番手前の悪魔ガキがメイスの一撃で吹き飛ぶ。そうすると真ん中2番目の悪魔ガキまでのルートが空いたので走り、その勢いのまま『刺せる刃があるメイス』を2番目の悪魔ガキに突き刺した。

 

 2番目の悪魔ガキにメイス先の刃を深く刺したまま悪魔ガキごと突撃し、3体目の悪魔ガキにぶつかり3体目悪魔ガキの体勢を崩す。そのスキにメイスを引き抜き、2体目の悪魔ガキを蹴り飛ばし、3体目の悪魔ガキに上から振りかぶったメイスを叩き込んだ。

 

 この間10秒程度。

 

 これにより悪魔ガキ3体は各1撃で倒されて、死体はMAGに溶けて消え、ドロップだけを残した。

 戦闘は一旦終了したが、追撃が無いか周りを見てからドロップを回収し、大きく息をついて深呼吸。

 

「夢野さん。まだ行けそうですか?」

「まだいけます!」

「『まだ行けるはもう行けない』です。見た感じ夢野さんはそろそろ限界のように見えます。引き際を誤るのは危険ですので、教官役として撤退を勧告します」

「…わかりました。撤退します」

 

 そうして修行用異界を出た。

 

□□□□□□□□□□

 

修行用用異界外入り口

 

 私と坂上ニキが隣り合って地べたに座って休んでいる。

「夢野さん。計算上ですが、今の30分で30体の悪魔を討伐しました。ここまではいいですね?」

「はい」

「一般人が同じここで同じく30分戦闘した場合、仮値で計算上6体討伐で一般人は経験値6を獲得します。ですが、夢野さんは取得経験値減少スキルにより、仮値計算上30体討伐で経験値9を取得する事になります」

 

 一般人の5倍苦労して、取得経験値は一般人の3割増程度。やる気がゴリゴリと削られそうな話だ。

 

「時間あたりの経験値は夢野さんの方が多いのですが、それを獲得する為に夢野さんは5倍は悪魔討伐が必要であり、非常に効率が悪いです。また、各種負荷が夢野さん以外にも装備品にもかかる事による破損も考える必要があります」

「坂上ニキ。1日の稼働時間を6時間とすると、私はこの初心者異界でなら単純計算上360体討伐する事になりますね」

「そうなります。稼働時間を短くする事で数を減らせますが」

 

 私、今は前世みたいなリーマンじゃなくて、自営業ですから、時間の調節が効く。

 

「ただ、夢野さん。稼働時間を減らしても、時間あたりの戦闘数は変わらず激戦が続く事に変わりはありません。となると、普通ならば整備や補修で装備の寿命を延ばせますが、それが難しくなります。

 また、異界によっては『ボス討伐や条件を満たさないと帰れないギミックあり』や、『単純に広い』等により長時間拘束がかかるので、装備の破損率が上がります」

「坂上ニキ。そんな勢いで戦闘を続けていたら、武器防具が1日で破損したりしそうですね。実際、盾がちょっとボロくなってますし」

 

 坂上ニキに色々へこんだポリカーボネート製盾を見せた。

 

「その通りです。現状では武装がレンタルなので、壊した場合の補償金が必要になるので不味いです。かと言ってありものの新品を買っても数日で駄目にして買い替えが必要になるかもしれません。かと言って高品質で壊れにくいものは高価。どれも予算がかかるのが問題です」

 

 うわぁ…どうしよう……

 

「八方塞がりじゃないですか。坂上ニキ」

「はい。ですが問題ないと考えます」

「へ?」

 

 予想外の返しに、思わず変な返しをしてしまった。

 

「夢野さん。あなたは30分で何体の悪魔を討伐しましたか?」

「え、坂上ニキ…30体です」

「一般人は同じ時間でどれぐらい討伐できますか?」

「ええと、ここの異界の初心者向け地域なら6体です」

「ここからが重要ですが、夢野さんのマイナススキルにドロップに関わるものはありますか?」

「…ありません」

「一般人と同じ時間討伐したら、夢野さんは一般人の5倍はマッカやフォルマ等をドロップしますし、実際にしました。なら夢野さんは同じ時間で一般人の5倍稼げます。武装が壊れたら買い直せばいい。供給は技術部を筆頭に技術系生産系俺たちが熟練度上げの為、それなりの数を造っています。よってある程度安く数も出ています。なら半ば使い捨てのような運用でも問題ありません」

 

 考えてみると当たり前である。

 これで『ドロップ率70%OFF』が経験値と同じく来ていたら詰みだったが、幸いな事にそれは無い。

 

「前世ではゲームでしたが今世は現実です。夢野さんは稼げるのですから、防具はなるべく予算の範囲内で、調達しやすい、いい物を買って下さい。武器はよほどの特別なモノでない限り、無くしたり壊したりする事を前提として、汎用品を買ったり、予備を持ってください。それらがあなたを救うでしょう…

 そろそろ休憩時間終了ですので、また異界に突入しましょう。今日はこれを何度も繰り返します」

「坂上ニキ。いきなりハード過ぎやしませんかね?」

「訓練で流した汗の分、戦闘で流す血が少なくなります。安全に戦えるうちに積める経験は積んでおくべきです。また、自分の限界確認や、限界状態での判断ミスがどうなるかなど、確認すべき事はたくさんあります。それでは行きましょう」

 

 そう言って坂上ニキは私を連れて異界に再突入した。

 

 なお、戦闘訓練はこの後8時間続いた。

 

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