健康な体を願ったら不健康な存在にされた 作:匿名希望の読み専
1話あたりの文字数ってこれくらいでいいのか悩みます。
私は病弱な体をしていた。
少しランニングをしただけで咳き込み、すぐに風邪をひき高熱を出す不健康な体をしていたせいか、体も細枝のような体で貧弱だった。
あまりの貧弱ぶりに体を動かす仕事に就けなかったが、なんとか一般企業に就職できたのは幸運だった。
しかし、私の幸運はそこまでで、流行りの感染症になって簡単に生死を彷徨うことになった。
私は今、病院のベッドの上で血の混じった咳をしながら死にかけている。
感染症だけでなく、いくつかの合併症まで発症したのか嘔吐や血尿だけでなく、意識も朦朧としてきている。
感覚で分かる、私はもう死ぬ。
自身の死を目前として、私が思ったのは恐怖と羨望であった。
死を目の当たりにして背筋に言いようのない悪寒を感じ、病気に関係なく息が上がりそうになる。
同時に何で私がこんなめに遭わないといけないといけないんだと思った。
もし、自分が健康な体だったら、こんなめに遭わずに済んだのに外を思いっきり走り回ることも出来たのにと羨望を抱いた。
「あぁ、もし来世ってものがあるなら健康な体で生まれたいなぁ」
そんないくつもの感情が混ざった言葉を吐いて、私の意識は暗い底へと沈んでいった。
──────あぁ、寒い、冷たい、痛い、暗い、こわ
──────の目が覚める前特有の気怠さを感じた。
次に感じたのは、体に重い───否、冷たい水の中にいる感覚。
恐る恐る目を開けてみると薄い緑色の水とガラスを通して、白い床に壁、そして目の前に立つ白衣を着た研究員が数人目に入った。
一体何が起こったのだと疑問に思うと同時に急激な眠気に襲われて、意識がまた落ちていった。
次に目が覚めた時は、先ほどとは違う光景が広がっていた。
前と変わらず薄緑色の液体の中ではあるが、その外側の景色が明らかに異なっていた。
床や壁は同じ白一色なのだが───明らかに広い空間になっていた。
前に見た部屋の広さが学校の教室や職場のオフィス位だとすると、今目の前に広がっているのは体育館位の広さだと思う。
そして、今目の前にいるのは白衣を着た研究員ではなく、黄色の防護服を着た人と───ガスマスクに黒いヘルメットやプロテクターを着けたいかにも特殊部隊ですといった風貌の男が5人ほど、私の目の前に立っていた。
特殊部隊の後ろに控えていた黄色の防護服の人が手に持っていたタブレットで何か操作をすると、私を覆っていた水が足元へ吸い込まれていき、完全に排出されると同時にガラスが開き外へと投げ出された。
外へと解放された私は肺にまで入っていた水を吐き出すと同時に、周りにいる者たちへと目を向けた。
黄色の防護服の人はこちらの様子を窺っているようだが、特殊部隊の方は手に持ったサブマシンガン? をこちらに向けて少し殺気立っているように見えた。
死んだかと思ったらこんな訳の変わらない状況に置かれている私の方が殺気立ちたい気持ちなのだが、と思うと同時に
と私自分でも訳の分からない思考をしていると不意に視界に金色の糸が映った。
それはよく見れば私の髪の毛だった。
生粋の日本人であった私の髪の毛は一般的な日本人同様黒色であったし、こんな海外の女優みたいなギラついた金髪ではなかった。おまけに背中に掛かるくらい長い。
そこまでして、あることに気がついた。
無いのだ
およそ二十余年、片時も離れたことのなかった自身の半身とも呼ぶべき男の象徴が。
膝立ちの状態で右手を股間の位置に持ってきて顔面蒼白になっていた私は、先ほどまで病院のベッドの上で瀕死の重病人であったことが嘘のように体調が良くなっていることも気が付かないくらいにはショックを受けていた。
そんな半身を失ったショックで茫然自失としていると──────
「ふむ、凶暴性はそこまで高くないようだな」
不意に壁に付いていたスピーカーから男の声が聞こえてきた。
・・・・・・凶暴性? 一体全体何を言っているのだろうか。こちとら生まれてこの方殴り合いの喧嘩もしたとこがない生粋の貧弱モヤシなのだが。
目が覚めてから初めて聞いた人の声で少し冷静になった思考でそんなことを考えていると、今度は防護服がスピーカーへ向かって話しかけ始めた。
「バーキン博士、プランBへ移行し所定のテストを開始します」
この半身を失った貧弱モヤシに何をさせるつもりなんだと思うと同時に、防護服が呼んだ名前に強烈な既視感を感じた。
「・・・・・・ばーきんはかせ・・・・・・バーキン博士?」
思わずオウム返しに呟くと、防護服や特殊部隊がギョッとしたようにこちらを見つめてきた。
何をそんなに驚いているのだろうと疑問に思いながら、他に何かこの状況を理解する手掛かりがないかと辺りを見渡すと、こちらに向けて銃口を向けている特殊部隊───無視しててごめんね───が再び目に入った。
厳密には特殊部隊の肩についていた──────赤と白でできた傘のロゴが。
そこまで来てようやく、点と点が繋がった気がする。
薄緑色の液体入りの容器から出た私、バーキン博士、赤と白の傘のロゴマーク。
あっ・・・(察し)、ふーん
結論から言うと私はバイオハザードの世界にB.O.W.として転生したようだ。
なんでだよぉぉおおおおおおおお
なんでよりによってバイオハザードとかいうただでさえ難易度ハードな世界でさらにB.O.W.なんていう生存難易度ベリーハードな存在として生まれ変わらないといけないんだ(涙)
バイオハザードという作品を軽く解説すると、日本人なら聞いたことはあるくらい有名なホラーゲームとなる。
T-ウイルスという感染した生物をゾンビ化させる恐ろしい生物兵器───4以降ではウイルスから寄生体や特異菌とかに変わる───により、ゾンビやクリーチャーが蔓延る場所で、少ない銃弾をやりくりしながら謎解きをして生還したり、事件を解決したりするといった内容になる。
かくいう私も生前はそれなりのバイオハザードシリーズのファンであり、ナンバリングタイトルは勿論、メジャーどころの作品は大体はプレイしている。
話を戻すが、私が転生したB.O.W.だが正式名称はBio Organic Weaponの意訳であり、有機生命体兵器という意味である。
バイオハザードというゲームでは敵クリーチャーのカテゴリーのひとつになる。
B.O.W.とは人為的にウイルス等を用いて作られた生物兵器であり、有名どころだと、T-ウイルスを用いて人間をベースに他の生物の遺伝子を掛け合わせて作られたハンターや成人男性をベースにウイルス投与や肉体改造を施して作られたB.O.W.の完成形であるタイラントあたりだろうか。
さて、今度は私の話をしよう。
先程、B.O.W.に転生したと語ったが、私の見た目は10代半ばの少女の見た目───それも金髪赤目の超美少女───をしている。
普通B.O.W.の見た目は一目で化け物と判断できるくらいには化け物している。
人間に擬態できるよう作られたタイラントですら、灰色の肌をした2メートル越えの大男である。
それだけでなく、防護服の指示で身体測定みたいなものをやった時は、軽く跳躍しただけ天井まで飛び上がったし、握力計は握り潰してしまった。
特殊部隊の装備を付けたカカシを殴ってみろと言われ軽く殴ってみると10メートルくらい吹き飛んで壁にぶつかった時は思わず乾いた笑みが出てしまった。
しかし、一体どういう経緯で私を作ったのだろうか。バーキンがこの場に居たということは彼が主導して私を作ったということだが・・・・・・もしかしてバーキンはロリコンだった?
それに名前もまあ酷いもので、防護服から「G-001」なんて呼ばれた時は思わず防護服を二度見してしまった。
身体測定? 後は、防護服に連れられ一面真っ白な子供部屋みたいな場所へ行くとこになった。
そこで今度は知育玩具みたいなものをやらされた。
始めは形を合わせる積み木みたいなものから始まり、パズル、ルービックキューブといった感じに段々とレベルが上がっていき、最終的にはIQテストみたいなものへ変わっていった。
驚くべきことに私はルービックキューブ全面を1分少々で全面揃え、IQテストみたいなものも特に躓くことなくスラスラと解けた。
自慢げに私の前でルービックキューブを揃えた防護服に更に短い時間で揃えた時の唖然とした───顔は見えなかったが───反応は少し面白かった。
その後は防護服にここで休んでいるように言われ、仮称子供部屋で一夜?───時計や日の光が無いので分からなかった───を過ごした。
G-001なんていうB.O.W.に転生してしまった私だが、取り敢えずの目的を立てておこうと思う。
第一目的としては“生き残ること”だ。
生前の最期に感じた死ぬ時の“恐怖”と“苦痛”───もう二度とあんなものを味わうのはごめんである。
第二目的としては“自由の身になること”としようと思う。
B.O.W.として転生してしまった私だが見た目が人間と変わりないので外に出ても化け物として撃たれることはないし普通に人間として生活することもできると思う。
それにこちらの目的の方は、なんとかなる算段が少しついている。
防護服が言っていたバーキン博士という名前だが、バイオハザードシリーズに登場する研究者であり、この人物はアークレイ研究所とNESTに所属していた。
その研究所は2つとも後にバイオハザード───生物災害の意───が発生して壊滅している。
その時の混乱のドサクサに紛れれば脱出するチャンスがある筈だ。
現状、彼らの言う通りにしていれば処分(ガチ)されることは無いだろうし、これから様々な実験に従っていればこの研究所の構造にも詳しくなり、来るべき脱出の時に役に立つはずだ。
さて、一晩? 明け私が今何をしているかというと─────
「う“ぅ”あ“あ”ぁ“ぁ”───」
「あ“ぁ“ぁ”う“ぅ”ぅ“───」
ゾンビの群れ───それもパッと見2~30体位いる───に放り込まれていた。
先日、バーキンのことをロリコンではと疑ったが、訂正しよう、奴はロリコンのリョナ厨に違いない。
しかし、こんなバイオ主人公でも絶体絶命な状況であるが、私はそこまで焦ってはいなかった。
先日の身体測定の時の結果からしてゾンビに負けるスペックでは無いという自負だけでなく、目覚めた直後に特殊部隊に感じたものと同じものをゾンビの群れに感じていたからだ。
我ながら気味が悪い感覚だが、これも私のB.O.W.としての能力の一つなのだろうか?
そんなことを考えているとすぐ目の前にまでゾンビが迫ってきていた。
ヤバっ!? と思う間もなく咄嗟に両手で突き飛ばすと、ゾンビは紙屑のように吹き飛んで他のゾンビ4、5体を巻き込んで倒れ込んだ。
私が突き飛ばしたゾンビは首や手足が曲がってはいけない方へ曲がっていて起き上がることはなかったが、周囲のゾンビがゆっくり近づいてくる。
私の周りをゾンビが囲い込むように迫ってくるが、ゾンビのことなど全く眼中には無かった。それ以上の衝撃が私の心中に渦巻いていたからだ。
生前の私は生き物を殺したことが無かった。
そんな私がゾンビになっているとはいえ、たった今人を殺したのだ。
罪悪感で立つことすら覚束なくなり吐き気に襲われる、それが普通の感覚だと思っていた・・・・・・だが、今は罪悪感どころか何も感じなかった。
まるで、道端に転がる石ころでも蹴飛ばしたような感覚。
もう一度、私が突き飛ばしたゾンビを見た。帽子にアウトドアジャケットとロングパンツ、大きめの靴を履いていた。元は登山者だったのだろうか。
そんな一般人だったであろう人を殺したのに、相変わらず何も感じなかった。
その事実が私に大きな衝撃を与えていた。
まるで心まで
私がそんな感傷に浸っている間もゾンビ達はゆっくりとこちらに近づいてきている。いくら謎感覚で大したことないと分かっていても無抵抗のままなら、こちらが食い殺されることになるだろう。
分かっている。あの研究者達は私がゾンビの群れを殲滅しない限り私をここから出すことはないだろう。
「・・・・・・恨むなら、私じゃなくアンブレラの連中を恨んでくれ」
ゾンビとなった彼らには理解できるはずもないのに、まるで懺悔するように言い訳をするように、小さく呟いて拳を振り上げた。
オリ主誕生の時系列はバーキンがGを開発し始めて少し経ったくらいの時期になります。
誕生経緯や詳細は次の話で入れたいと思ってます。