カードで運命を切り開け!バトル・ディスティニー・チェンジャー! 作:葉分
「風呂あがったわよー。ジャグジーが気持ちよかったわ。」
「見た感じ、もう大丈夫そうだな。飯食ったら家まで送るからちゃちゃっと食えよ。」
「えーお泊りしたい。」
「客室は満室だ。」
カレーをよそいながら丁重にお断りし、席に着かせる。フィリオの分と自分の分のカレーもよそってダイニングテーブルに並べ、それぞれのコップにキンキンに冷えた麦茶を入れる。
「「いただきます」」
「い、いただきます」
「相変わらず遊牙の作るカレーは美味いわー!」
「確かにすごく美味しい。この幾層にも重なった香りと味、それをこのハクマイというものと共に食べるとまた美味しい。異世界はこんなにも食文化が進んでいるなんて、故郷にも持って帰りたい味だよ。」
「異世界人にもカレーは人気メニューになりそうだな。とはいえ、異世界にあるスパイスで再現できるかわからんけど。」
「ところで状況を色々整理したいんだけどいいかしら?フィリオのこととか、魔凰のこととか。」
フィリオ説明中
「なるほどねー。つまり、フィリオは魔凰を倒すためにこの世界に来たんだ。でも、フィリオの世界でBDCの実力者なら、こっちの世界でも、相当な実力者ってことよね。勝ち星を上げまくってるルーキーを洗い出せば、魔凰の可能性は高いってことね。」
「その通りだ。そのためにも、僕はこの世界に残り続けたいと考えている。僕の世界では魔凰の残党が騒ぎ立ててはいるものの、平和と呼べるような時間が続いている。勇者である僕が世界から離れても問題はないはずだ。」
「でも、止まる場所が必要よね。通貨だってこっちとは違う訳だからホテルとかにも泊まれないだろうし……そうだ!遊牙の家に泊まったらいいんじゃない?」
「俺ん家にか?」
「無駄に広いでしょ遊牙の家って、それにお金自体困っていないようなもんだし。」
「そりゃ、そうだけど。まあ、賑やかになる分は別にいいか。」
「いいのかい?僕なんかが泊まっても……」
「別に構わねえよ。魔凰をぶっ飛ばすまでの間だったら、いくらでも泊めてやる。その代わり、学校行ってる間に家事とかしてもらえると助かるな。洗濯とか。」
「そんなので良ければ、いくらでもやらせてくれ。修業時代に先代様に家事は叩き込まれている。」
「どんな修行だよ。」
「お前が寿司を握るのは5年早い。みたいなノリじゃないの?」
「あーあ、なるほど。」
そんな談笑をして食事を終え、詩杏を家へと送り届けてようやく一息ついた。俺は湯船に浸かりながら今後のことについて色々と考えてみることにした。
小学校に上がってから、両親は海外に働きに行った。本当だったら俺も一緒に海外に行きたかった。だが、両親は仕事の邪魔になると俺を置いて家を出て行った。義務も果たさず無責任、そう子供ながらに思った。だがそんな両親でも、会えないという寂しさを紛らわすように性格や言動は捻くれていった。
詩杏の両親から一緒に暮らさないかと何度か提案を受けたが、俺はそれを断り続けた。俺の親がそうだったように、もしかしたら詩杏の両親も俺のことを一度面倒を見ては捨てるんじゃないか?それが怖くて何度も断っているうちに一人で生活できる年齢まで育ってしまった。
そんな俺が唯一心を許せる相手が、詩杏だけだった。詩杏は捻くれていった俺の性格を否定するでもなく、肯定するでもなく、ただ無視して、両親がいた時の俺の性格に合わせるように接してくれた。詩杏のおかげで俺は少しづつだが、親や大人といった存在を信じれるようになっていった。
あいつがいてくれたから、俺は凸凹でありながらも大きく道を踏み外すことなくここまで生きてこれた。だから、詩杏を危険に晒した魔凰を必ずぶっ潰すそのためにも、俺は強くならないといけねえ。勇者だろうがなんだろうが全部俺の成長の糧にしてでも俺は……!
そう拳を握りしめ、決意を固めた次の瞬間、浴室の扉が開く音がした。
「僕も一緒に入っていいかな?」
その声の主はフィリオだった。異世界だと一緒に風呂とか入る習慣とかあるんだろうか。まあ、入れなくはない広さはしてるから別にいいか。と思いながら扉の方を向くとそこには
「んなっ!?」
胸だ
「はあ!?!??」
男にあるべき部分にそれが無い
「ちょちょっと待て!」
俺は急いで体の向きを逸らしてフィリオから目を離す。あれフィリオって男じゃなかっけ!?いや、待てそう言えばあいつが自ら女だとか男だとかそう言ったこと言ってなかった。一人称が僕ってだけで男と俺が早とちりしたんだ。
だが待て待て。フィリオ視点から見て俺って明らかに異性だよな!?男だよな!?ナンデ!?えっナンデ!?それこそ本当に異世界では男女間の混浴が日常なのか!?
そっとフィリオの方を見る。
やっぱり、女だ。胸のデカさは詩杏に比べ……ぺったんこだな。うん。いや、そうじゃない!だからか!勇者服の見た目って結構ダボッとしてると言うか男が着ても女が着てもいいようなデザインしてた。だから胸がぺったんで短髪のフィリオが着ると男っぽく見えるんだ!だから違う!邪なこと考えるな俺!今すぐ風呂から出なくては!
「どうしたんだいユウガ君?」
ち、近い!いつの間に湯船に!?
「僕の世界では旅の仲間や、友人とか親しい人と風呂に入る行為は信頼の証としての行為なんだ。君の世界でこれがどういうふうに受け取られているかはわからないけど、少なくとも僕が君のことを信頼してるという証明にはなるはずだ。」
「そ、そうか……なら、詩杏とは入らなかったのは信頼していないってことか...…?」
「今度会った時に一緒に入るつもりだよ。彼女は先に入ってしまったし、タイミングが合わなかった。」
「あ、そう、そうか。」
「この広さだったら、三人でも入れそうだね。」
「さ、三人!?!?」
詩杏の裸……エロいんだろうな……ダメダメダメダメ!!!!!!!
「じゃ、じゃあもうこれでお互いに信頼してるってことにはなったよな!俺のぼせちゃったから先上がるわ!!!」
いろんな意味で赤くなった体を湯船から乗り上げて急いで浴室から脱出して服を着て自室へと駆け込んだ。