マジカル☆ガヴリンク!   作:カードは慎重に選ぶ男

30 / 37

前回までの粗筋

レモン叔母さんとチヨコが殴り合って和解した!

大体の問題は妥協点を見いだせたが、ニビルとレモン叔母さんがグルだった件だけは今後の課題だ!




第30話:幕間の味 ニビル対策会議

とある休日の昼下がりの絆田家にて。

リビングに集ったのは……人間族や妖精族の四人。

チヨコとセイラの仲が修復され、セイラの体調も治ったことで、こうしてプリキュア関係者が集まることができた訳だ。

 

 

「そんじゃー、ニビルくん対策会議! はっじまっるよー☆」

 

軽々しい態度で進行役を務めているのは、瓶底眼鏡をかけた小柄な科学者の石動レモン。

それに対してとりあえず拍手をしているのが、妖精族と人間族のハーフである井上セイラ。

特に感情を表出させずに進行を待っている長身の女……の姿をしているクラゲ妖精が、ニガリ。

そんなニガリを横目に「なんでコイツまで呼ばれてるの?」と目が口ほどに物を言っているのが絆田チヨコ。

 

 

「そもそもなんだけど、そのニビル・ギャングルメってどういう妖精なの? 一応セイラちゃんのお兄さんなんだよね?」

 

チヨコとしては、ニビルが石動レモンの地下ラボを不定期に訪問していたことは知っている。

しかし声を聴いただけであり、顔すら知らない相手なのだ。

 

 

「ニビル兄さんは……ギャングルメの一族の中では比較的温厚だとは思います。

シャッカ姉さんたちに殴られたことはありますけれど、ニビル兄さんに殴られたことは無かったと思います」

 

まぁ虐待されているセイラを積極的に助けてくれた訳でもない様子だが……。

それでも暴力をふるってこない分だけ、セイラにとっては有難い存在であったのだという。

 

その話だけを聞くと穏健なようにも聞こえるが、それでもソウルフルーツの元締めとして活動している妖精なのは変わらない。

セイラは……きっと、シャッカを殺したとき以上に抵抗感があるのだろう。

ニビルのことは恨んでいない様子だが、それでも人間を守るためにはニビルを殺すことまで含めて決意してくれていると見て良いのだろうか?

チヨコとしても、心苦しいという想いはあったが……こればかりは、どうにもならない。

殺らなければ殺られる未来が待っているのだから。

 

 

「私は、初めて人間界に来る直前にも一度会っている。人間界で過ごすうえでの注意を幾つか聞かされた」

 

ニガリが言うには、人間界ではなるべくニンゲンに化けて暮らすことを初めとして、いくつかのアドバイスをされたそうだ。

化けた妖精族は腹の傷が無いので、そこを露出しないように気をつけろだとか。

あとソウルフルーツの肥料を見繕うときには目撃者がなるべくいない場所を選べだとか……諸々の活動知識を口頭で伝授された模様である。

……人間界に潜むための知識を、ニビルは多く持っているのかもしれない。

 

 

「アタシが話した感じだと、科学少年って感じかなー? 腕力が足りないところを自己改造で何とか補いたいみたいなことを言ってたよ」

 

レモン叔母さんの評は、以前チヨコが盗み聞きした内容とも一致していた。

ニビルは伝説の戦士にも目をつけており、その変身メカニズムにも興味がある様子だった。

きっと、自己強化の参考にしたいのだろう。

 

 

「あと、長男のレンジオって子より強くなりたいって言ってたね」

「……それならニビルをこちらの仲間に抱き込めないか? この4人とニビルの全員でレンジオを袋叩きにして殺すというのは現実的だろうか?」

 

コイツ、同じ妖精族であるはずのレンジオを殺すことには忌避感とか無いんだ……?

ニガリの発言に対して、チヨコは内心だけでツッコミを収めた。

かつてセイラが妖精族を殺すことに抵抗感を示していたのを見た身としては、ニガリのスタンスには思うところがあるチヨコなのであった。

まぁチヨコとしては、ソウルフルーツの元締めを殺すこと自体には異論はないが。

 

 

「ニビル兄さんとレンジオ兄さんは殺し合うほど仲が悪かったようには見えませんでした。私たちとの共闘はあまり期待しない方が良いと思います」

「でも、セイラちゃんたちがシャッカを殺しても報復には来ないぐらいにはドライだよね……?」

 

ここで、チヨコは薄々と内心で思っていた違和感を口に出してみた。

セイラたちは、赤毛の大猿ことシャッカ・ギャングルメを既に殺しているのだ。

それなのに、ニビルはセイラたちに手を出してこない。

この絆田家の場所まで知られているのだから、報復する気があるのならば好きな時にできそうなものである。

 

 

「アタシもその辺りはドライな子だって印象かなー?」

「シャッカを殺した後日に私が鉢合わせた時も、恨み言は聞かされなかったぞ」

「……ニビル兄さんなら、怒ると思っていました。なんだか意外です」

 

なんだかチヨコは……セイラから見た人物像が、ニガリやレモン叔母さんと食い違っているのが不気味に思えた。

だが、その理由もチヨコは何となく分かる気がした。

きっとセイラは、ニビルから殴られなかった原因が、身内に対するニビルの情の深さだと思っているのだろう。

だが実際には……ニビルは、セイラに関心が無かっただけなのでは?

シャッカに対しても、セイラに対しても、関心が無いから行動を起こさないという話だとすると筋が通ってしまう。

レンジオより強くなりたいというのも、いったいどこまで本音なのだろうか……?

 

さらに悪い想像としては、レモン叔母さんと仲が良いというのも、どの程度の信用ができる情報なのだろう。

むしろ今までが運が良かっただけで、次にレモン叔母さんと二人きりで会わせたら死人が出るというケースだって有り得るのでは?

レモン叔母さんも口八丁で何とかすると信じたいところだが、最悪の事態は想像してしまうところだ。

 

 

「まぁそれも次に会った時にでも聞いてみるよ。ソウルフルーツから手を引けるかどうかまで含めてさ」

 

チヨコとしては、ソウルフルーツの元締めであるギャングルメの一族は一分一秒でも早く殺した方が良いという想いはあった。

だが……今回ばかりは、ニビルの扱いには慎重にならざるを得ない。

絆田家の場所がバレているという都合上、下手に刺激するとプリキュアが全滅しかねないからだ。

 

4人で袋叩きにしてニビルを殺せれば良いが、それに失敗すると後がない。

次はレンジオとニビルが妖精族のツアー客を大量に引き連れて絆田家に来るかもしれないのだ。

 

 

「ニビル兄さんの強さだけで言えば、4人で戦えば勝てる可能性の方が高いと思いますが……それでも今回は慎重に動いた方が良さそうですね」

「あ~……一応言っとくとね。アタシも変身自体はできるとはいえ、あんまり戦力には勘定しないで欲しいかな~なんて」

「どういうこと? レモン叔母さん、この間は戦えてたよね?」

 

……うん?

チヨコとしては、レモン叔母さんの弱気な発言が少々意外ではあった。

先日殴り合った時は、単純な殴り合いならクロニャンよりも格上だろうと思っていたのだが……?

一応背が低くて幼く見える叔母だが、年齢的にはアラフォーではあるので身体にガタでも来ているのだろうか?

 

 

「いや、ね。今だからぶっちゃけるけど、実はアレってチヨコちゃんの高熱モードみたいなのを常時使用する前提でのスペックなんだよね。

身体の負担も半端ないし、寿命縮むからなるべくやりたくないな~、なんて」

「……レモン叔母さん、私には高熱モードを封印しろって言いながらそんなことしてたの?」

 

それは筋が通っていないのでは……??

流石に納得がいかず、レモン叔母さんへと白い眼を向けてしまったチヨコなのであった。

ごめんち、なんて舌を出しながら軽々しく謝るレモン叔母さんは……相変わらずズルい大人で。

まぁ高熱モードの負荷が重いのはその通りなので、封印するという約束を破るつもりはチヨコ側にも無い訳だが……なんだかモヤモヤっとしてしまったのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、話が大きく動いたような、そうでもないような……。

そんな調子で、作戦会議はお開きを迎えたのであった。

一足先に絆田家を後にしたニガリをよそに。

チヨコは、戦いに直接的には関係ない話をセイラへと持ちかけた。

 

 

「実は前から思ってたんだけど、セイラちゃんのお母さんって私たちの世界で生きてた人だよね。家族がいるんじゃないかな」

「……!」

 

ぱちくり、みたいな目をしながら。

セイラは思いもよらない言葉を、頭の中で噛み砕いている様子だった。

今まで、そんなことは考えたことも無かったのだろう。

 

 

「セイラちゃんには苦労をかけちゃったし、よかったら私が調べるよ?」

「気にならないと言えば、嘘になると思います。

実の親でなくとも、チヨコさんとレモンさんのような関係の相手が私にもいたら……という想いはあります」

 

でも、とセイラは続けた。

迷いに満ちた口ぶりで、何とか胸の内を言葉として吐き出そうとしているようだ。

 

 

「レンジオ兄さんたちとの決着をつける前に家族を見つけても、そちらが狙われる危険があると思うんです」

「確かに……その危険はあるよね」

 

それは、チヨコも直面している問題だった。

ニビルに住居がバレているという問題のせいで、ピンチ一歩手前なのだ。

現状だとレモン叔母さんとニビルの仲が良いので問題になっていないが、その仲が崩れたら大変である。

 

 

「ですが、レンジオ兄さんと決着をつけたあかつきには、チヨコさんの力を頼りたいです」

 

それでも……今すぐとは言わずとも。

セイラがチヨコを信じて頼ってくれるのが、嬉しく思えた。

 

 

「まかせて! 名探偵チヨコの腕の見せどころだよ!」

 

ぐぐっと拳を握りながら、チヨコは勇んでみせた。

そんなチヨコに期待を向けてくれるセイラの目が、心地よかった。

どちらからともなく、二人は自然に笑いあうことができた。

 

 

「……名探偵って、自称するものじゃないと思うゾ~?」*1

 

レモン叔母さんの呆れたようなツッコミで、二人の笑顔は苦笑いに変わったのであった……。

 

 

「…………名探偵と言われた絆田ウシオ(おとうさん)の名に懸けて!!」

 

 

きっと……大丈夫だ。たぶん。

 

 

 

 

 

 

 

*1
「江戸川コナン。探偵さ!」←探偵は自称しているが、名探偵は自称していない

「名探偵と呼ばれたジッちゃんの名に懸けて!」←祖父のことを名探偵とは言っているが、自分自身を名探偵とは言ってない

「名探偵プリキュア!!」←名探偵を自称する、おもしれー女……





一年モノの特撮とかアニメとかで総集編回って悪く言われがちですが、個人的には必要な情報の再提示というかリマインドのために便利そうだなぁなんて思っていたりします。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。