おっさんキヴォトスに行く   作:無い頭のおっさん

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やっと書き終わった・・・!
とりあえず、ここからちょいちょい投稿していきますね!


先生とヒナ委員長の夏休み 前編

【シャーレ・執務室】

 

書類の山を一枚ずつ片付けていく

今日中に処理しなければならないものだけでも、まだかなりの量が残っていた

 

「・・・・・・」

 

静かだ・・・こういう日も嫌いじゃない

何か事件が起きることもなく、ただ淡々と仕事を終わらせていく

 

そんな平和な一日――

 

だったはずなのだけど・・・

 

私のスマートフォンが突然鳴り響いた

 

「"・・・・・・?"」

 

画面を見る

着信相手は――アコ

 

「"・・・・・・"」

 

嫌な予感がする

 

こういう時のアコからの連絡は、大抵ろくなことにならない

それでも無視するわけにもいかず、私は通話ボタンを押した

 

「"もしもし?アコ?"」

 

『先生!!』

 

開口一番、ものすごい勢いだった

 

「"ど、どうしたの?"」

 

『ヒナ委員長が大変なんです!』

 

「"・・・・・・"」

 

その言葉を聞いた瞬間

椅子から立ち上がった

 

「"何があったの!?"」

 

『風紀委員会の部室まで来てください!』

 

「"分かった、すぐ行く!"」

 

電話を切り、私は机の上にあった書類をまとめて端へ寄せる

そして、そのまま全力で部室を飛び出しゲヘナへ向かう

正直、何が起きたのか全く分からない

 

ただ、【ヒナが大変】

その一言だけで、嫌な想像はいくらでも出来てしまう

 

エデン条約の一件でヒナが背負っていたもの

あれだけのことがあった直後なのだ

また何か無理をしているのだとしたら――

 

「"・・・・・・"」

 

急がないと

 

 

 

【ゲヘナ学園・風紀委員会部室】

 

息を切らしながら部室へ駆け込み、扉を開ける

 

「"アコ!"」

 

そこにはアコ、イオリ、チナツの三人が揃っていた

 

「先生!」

 

アコがこちらへ振り向く

 

「来てくださったんですね!」

 

「"うん。それで、ヒナに何があったの?"」

 

私が尋ねると3人の顔が微妙に曇った

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「"・・・・・・?"」

 

嫌な予感しかしない

 

アコが重々しく口を開く

 

「実は――委員長が」

「私の飲みかけのコーヒーを飲んだんです。」

 

「"・・・・・・"」

 

私は固まった

 

「"・・・え?"」

 

「それだけじゃありません。」

 

アコが真剣な顔で続ける

 

「その後、私が淹れたコーヒーを飲んで」

「『美味しい』と。」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

私はアコを見る

 

イオリを見る

 

チナツを見る

 

そして、もう一度アコを見る

 

「"アコ。"」

 

「はい。」

 

「"ちょっと休んだ方がいいよ。"」

 

「・・・・・・はい?」

 

「"最近かなり忙しかったんじゃない?"」

 

「・・・・・・」

 

「"もしかして、疲れすぎて幻聴が聞こえてるんじゃないかな。"」

 

「違いますよ!!?」

 

アコが即座に叫んだ

 

「「「"・・・・・・"」」」

 

「イオリとチナツと同じ事言わないでください!!」

 

「「・・・・・・」」

 

「ちゃんとこの耳で、しっかり聞いた事です!!」

「幻聴ではありません!!」

 

「"・・・本当に?"」

 

「本当です!!」

 

アコは必死だった

 

その顔を見る限り、どうやら本当らしい

 

私は改めて考える

ヒナがアコのコーヒーを美味しいと言った

 

「"・・・・・・"」

 

それは・・・かなり深刻なのでは?

 

アコのコーヒーは――

 

いや、本人の前では言わないでおこう

 

でも以前、一度だけ飲んだことがある

あれはコーヒーではなかった

カフェインを摂取するという一点だけに全てを特化した、黒い液体

もはやカフェイン水和物と呼んだ方が近い

 

それをヒナが【美味しい】と

 

私は思わず遠い目になる

 

「"ヒナ・・・・・・"」

 

エデン条約の一件から

きっと、まだ心の傷は完全には癒えていないのだろう

 

いや、そもそも

今までずっと風紀委員長として無理をし続けてきたのだ

 

先生の反応を見てアコは少しだけしょげている

 

「先生まで・・・」

 

「"あ・・・ごめん、アコ。"」

 

「私のコーヒー、やっぱりそんなに不味いんですか・・・?」

 

「"・・・・・・"」

 

答えに困る

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「"まぁ・・・・・・うん。"」

 

「やっぱり!!」

 

そう言うと同時にアコが机に突っ伏した

 

「"・・・・・・"」

 

ごめん、でも事実なんだ

私は心の中でそっと謝った

 

 

 

 

少ししてアコは何とか持ち直し

 

「・・・それで、本題です。」

 

「"うん。"」

 

「今回の夏季訓練についてなんですが。」

 

アコが資料を広げる

 

「毎年、風紀委員会では夏季の合宿訓練を行う予定になっています。」

「恐らく、委員長ですから、以前使ったヒノム火山になると思います。」

「ですが。」

 

アコが地図を指差す

 

「今回は訓練地を変更したいと考えています。」

 

「"変更?"」

 

「はい、アラバ海岸です。」

 

「"・・・・・・海?"」

 

「そうです。リゾート地として知られている場所ですね。」

 

アコが頷く

 

「シャーレが協力してくだされば、」

「多少万魔殿から横槍が入ったとしても、今回の訓練地を変更することは可能です。」

 

「"なるほど。"」

 

そこまでは理解できる

けれど一つ問題がある

 

「"協力するのはいいんだけど。"」

 

「はい。」

 

「"ヒナが反対するんじゃない?"」

 

「・・・・・・」

 

アコの顔が曇った

 

「そこが一番悩ましいところです。」

 

「"・・・・・・"」

 

「ですが。」

 

アコは拳を握る

 

「やるしかないのです!」

 

「"・・・・・・"」

 

なんだろう凄い気迫だなぁ・・・

 

「"つまり、これからヒナに許可を取りに行くんだね?"」

 

「はい!」

 

「"分かった。"」

 

こうして、私たちは風紀委員会の執務室へ向かうことになった

 

 

 

 

【風紀委員会・執務室】

 

ヒナはいつものように机へ向かっていた

アコが一歩前へ出る

 

「委員長。」

 

「ん?」

 

「今年の夏季訓練についてなのですが。」

 

「うん。」

 

「合宿訓練を行いたいと思っています。」

 

「うん、分かった。」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

アコが固まった

 

「えっ!?」

 

ヒナが顔を上げる

 

「どうしたの?」

 

「い、委員長・・・・・・?」

 

「うん。」

 

「本当に大丈夫ですか・・・・・・?」

 

「何が?」

 

「行ってくださるんですか・・・・・・?」

 

ヒナは不思議そうな顔をした

 

「大丈夫も何も夏季の合宿訓練は恒例行事でしょう?」

「何も断る理由はない。」

 

アコが目を瞬かせる

 

「そっ、そうですね!」

「そうでしたね・・・・・・!」

 

明らかに焦っている

私はそれを横で見ながら思った

 

("・・・アコ、顔に出すぎじゃないかな。")

 

その時イオリが私たちへ小声で話しかけてきた

 

「はぁ・・・アコちゃん、委員長相手だと何を企んでるのか顔でバレバレなんだよな・・・」

 

「"あはは・・・"」

 

チナツも苦笑している

 

「まぁ・・・そうですね。」

 

もちろん

ヒナには聞こえていない・・・・・・たぶん

 

するとヒナが思い出したように口を開いた

 

「そういえば、今年の下見はもう済んでる。」

「ゲヘナのヒノム火山、94-13地区。」

「麓にある、あの山荘。」

 

「・・・・・・」

 

嫌な予感がした

 

「そこなら万魔殿も文句は言わないはず。」

「環境も良い感じに過酷だし、やるからには徹底的に。」

 

「またあの火山!!?」

 

イオリが思わず叫ぶ

 

「万魔殿に強制された訳でもないのに!!?」

 

ヒナの視線がゆっくりイオリへ向く

 

「"・・・・・・"」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・何か問題が?」

 

「い、いえ。」

 

イオリが即座に目を逸らした

アコが恐る恐る口を開く

 

「え、えっと・・・・・・委員長?」

「【下見】ということは、もしかして既に計画を立てられて・・・?」

 

「うん。」

 

ヒナはあっさり頷く

 

「そろそろ万魔殿が言い出す頃かと思って。」

 

「・・・・・・」

 

アコの目が泳いだ

 

たぶん、このままでは全てが水泡に帰す

そう考えているのだろう

 

「"・・・・・・"」

 

私はアコを見る

そして助け舟を出すことにした

 

「"合宿と言ったら海そして水着でしょ!!"」

 

自分でも驚くくらい声が大きくなった

ヒナがぽかんとする

 

「・・・海?水着?・・・どうしたの、先生?」

「急に何を・・・・・・」

 

そして少し首を傾げる

 

「それに、そういえばどうしてここに?」

 

「"あ。"」

 

しまった

完全に勢いで誤魔化してしまった

 

「"え、えっと・・・"」

 

私はアコを見る

アコも一瞬固まった

けれどすぐに察してくれた

 

「そ、そうです!委員長!」

「先生も、私が新しい場所で行う訓練計画を練っているので、」

「そのお手伝いで来てくださったんです!」

 

「・・・・・・」

 

「委員長は普段から多忙ですし!」

「いつまでも全ての負担をかけっぱなしにする訳にはいきませんから!」

 

「なので!」

 

アコが一気に畳みかける

 

「少しでも委員長の負担を減らせればと思うので・・・」

「委員長が建てられた計画を参考にさせていただきつつ、」

「今回は試しに私に計画を任せて頂けませんか?」

 

「・・・・・・」

 

ヒナは少し考えた

 

「それは良いけど、」

「今まで海での合宿なんて・・・」

 

アコが私を見る

 

「・・・・・・」

 

そしてキラーパスが飛んできた

 

「せ、先生が海に詳しいとの事でして!」

「きっと新しい、効率的な訓練が出来る筈です!」

 

「"うぇ!?"」

 

今度は私が固まった

 

("海に詳しいって何!?")

 

でも、ここで止まるわけにはいかない

 

「"そ、そうだよ!ヒナ!"」

「"私、海に詳しいから!"」

「"任せて!"」

 

「・・・・・・」

 

ヒナが私を見る

 

「・・・そう、分かった。」

「アコと先生がそこまで言うなら。」

 

「いいよ。」

 

アコの目が見開かれる

 

「っ!い、良いんですか?」

 

「うん。」

 

ヒナは静かに頷いた

 

「任せる。」

「こういう時の為の行政官だし。」

「アコがせっかくこう言ってくれたわけだし。」

 

「さっき言われた通り。」

「全部を私が抱えたままっていうのも、効率的ではないだろうから。」

 

「じゃあ。取り敢えず今回はお願い。」

「しっかりね。」

 

その瞬間

 

私は

 

「"海だーーーーーー!!!"」

「"ヒナの水着だーーーーー!!"」

 

叫んでいた

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

アコとヒナの視線がものすごく冷たかった

 

「"・・・・・・"」

 

私は静かに謝った

 

「"・・・はい。すいません。"」

 

 

 

 

 

 

そして数日後

 

【アラバ海岸】

 

青い空、広い海、白い砂浜

ここは楽しいリゾート地・・・そのはずだった

 

「ほら、ぼーっとするな!」

「企画部と情報部はそこの器材を5階で作ってる最中のオペレーションルームの所に!」

「テキパキ働け!もたもたしてると訓練が始まるぞ!」

 

「「「はい!!」」」

 

イオリの指示が飛び交っている

 

その横では

 

「兵站部はそちらの物資から優先的に」

「医療部は先に訓練用のリストを整理して――どうしました?」

「あぁ、それは直ぐに使うものなのであちらへ。」

 

チナツも的確に指示を飛ばしていた

 

「「「承知しました!!」」」

 

「"・・・・・・"」

 

私はその光景を眺める

風紀委員会の生徒たちは、手際よく荷物を運び、設備を整えていく

 

「"皆、慣れてる感じだね"」

 

私がそう言うとイオリが当然のように答えた

 

「そりゃあもちろん。」

「これでも全員ゲヘナの風紀委員だから、」

「これくらいは当然のように出来てもらわないと、ゲヘナの風紀は守れない。」

 

チナツも続く

 

「毎月とは言いませんが、訓練は定期的にしていますし」

「まぁ・・・今回の訓練は特殊な形になりそうですが。」

 

「"・・・・・・"」

 

なるほど、流石風紀委員会だ

そう思っていると

 

「先生!」

 

アコがこちらへ歩いてきた

 

「あぁ、ここにいらっしゃいましたか」

「臨時のオペレーションルームの設置が終わったそうなので、そちらに移動しましょう。」

 

「"うん、分かった"」

 

私はイオリ、チナツと一緒にアコの後を追った

 

 

 

 

【アラバリゾート・5階】

 

ホテルの客室を丸々一室

そこが臨時のオペレーションルームになっていた

 

机には大量の資料

壁には地図

通信設備

監視用のモニター

 

普通のホテルの客室とは思えない

完全に軍事作戦の指揮所になっていた

 

アコが部屋へ入り、確認する

 

「準備の方はいかがですか?」

 

イオリが答える

 

「問題ない。」

「もう準備が終わった所には、とりあえず休憩してもらってる。」

 

「"・・・・・・"」

 

私は窓の外を見る

砂浜では準備を終えた風紀委員たちが水着姿で海ではしゃいでいた

 

("・・・休憩に入った子達、普通に遊んでるなぁ・・・")

 

まぁそれも夏季合宿の醍醐味なのかもしれない

 

チナツも報告する

 

「こちらも、医療部の運び込みはおよそ完了しています。」

 

「では大丈夫そうですね。」

 

アコが頷く

 

「良かったです。」

 

そして

 

「それでは始めるとしましょうか」

 

私は窓の外を見ながら言う

 

「"そういえば"」

「"来る途中にも少し見えたけど、良い感じの場所だねー"」

 

「はい。」

 

アコが答える

 

「何と言ってもここ、【アラバ海岸】は」

「ゲヘナの中でもかなり閑静な場所として知られていまして」

「この1年で発生した事故の数も100件以下。」

 

「最近起きた事と言っても」

「海の家での無銭飲食や、」

「爆音ライブ、「海辺に無許可で建造物を建設・・・」

「それくらいでしょうか。」

 

私は思わず呟く

 

「"・・・それって閑静とは言わないんじゃ・・・"」

 

イオリが当然のように答えた

 

「ゲヘナだったら、それくらい子供の悪戯みたいなものだよ。」

 

「"・・・・・・"」

 

("流石ゲヘナ・・・")

 

アコは気を取り直す

 

「まぁ、とにかく静かな所が良かったので」

「何せ、表面的には夏季の合宿訓練ではありますが」

「私達の真の目的を忘れてはいけません。」

 

「つまり・・・」

 

アコが力強く拳を握る

 

「静かな場所であればあるほど」

「ヒナ委員長もゆっくり休める筈です!」

 

「体裁としての風紀委員の訓練も」

「何も起きなければ私達だけで充分ですし。」

 

「まぁ・・・そうですね。」

 

チナツが同意する

 

ただその顔には何か嫌な予感がする

そんな表情が浮かんでいた

 

一方イオリは

 

「しょうがない。」

 

そう言いながら

どう見ても嬉しそうだった

 

「・・・・・・」

 

アコがじっと見る

 

「【しょうがない】なんて言ってますが・・・」

「イオリ?、どうしてイオリはもう既に水着なんですか?」

「どういう事ですか?遊ぶ気満々なんですか!?」

 

「え、いや・・・その・・・!」

 

イオリの目が泳ぐ

 

私もずっと気になっていたことをアコがつい口にした

 

「"そういえば、言いそびれてたけど、"」

「"イオリ、水着すっごく似合ってるね!"」

 

「っ!?」

 

イオリの顔が一気に赤くなる

 

「ち、違!これはあくまでその!」

「今回の訓練が海辺だからって事で!」

「それに合わせようとしただけで・・・!」

 

「その、夏の海に自然な恰好じゃないと!」

「問題児達に逆に警戒されるっていうか・・・!」

 

私は思わず笑う

 

「"イオリは可愛いから、どっちにしろ目を引くと思うけどね?"」

 

「~~~~っ!!」

 

アコが割って入った

 

「はいそこ!楽しいおしゃべりはその辺で!」

「はしゃぎたい気持ちも分かりますが!」

「今回大事なのは皆さんの夏休みではありません!」

 

「だから違うんだってアコちゃん!?」

 

イオリが叫ぶが、アコは完全に無視した

 

「とにかく!今回の目的はヒナ委員長の休息です!」

 

「皆さんは、それを成立させる為の駒だと思ってください!」

「今回の計画においては!各位の意思も言葉も必要ありません!」

「この夏はただ全力で!委員長を休ませるための歯車になってください!」

 

イオリが引きつった顔になる

 

「そ、そこまでいう事ある・・・・・・?」

 

チナツが小さく呟いた

 

「・・・・・・こうなると思っていたから」

「私は水着を持ってこなかったんですよね・・・」

 

「"・・・・・・"」

 

アコはさらに続ける

 

「委員長を煩わせる事象を限りなくゼロにするのです!」

「どんな騒音も問題も!」

「ヒナ委員長のお耳に届かせてはなりません!」

 

私はふと疑問に思った

 

「"ところで、その当人のヒナは何処にいるの?"」

 

「委員長でしたら、今はホテルの客室に」

「この後、4時間はお部屋で・・・と伝えています。」

 

「"えぇ・・・"」

 

イオリも驚く

 

「・・・4時間も?」

 

「はい。」

 

アコは平然としている

 

「後4時間後には丁度、午後の戦術訓練が終わって」

「次の歩行訓練が始まる頃合いです。」

「委員長はそのタイミングでお呼びしようかと。」

 

「ただし、この歩行訓練というのも、あくまで名目上の事。」

 

「言ってしまえば」

「これは、ゆっくり砂浜をお散歩して頂く時間です!」

 

「"・・・・・・"」

 

私は思わず小さなヒナが砂浜をてちてちと歩く姿を想像してしまう

 

("可愛い・・・")

 

イオリが聞く

 

「委員長はそれで納得したのか・・・?」

 

アコは胸を張る

 

「しっかり歩く事も訓練の一種だと!」

「それはもう、かなりの勢いで主張しておきましたから!」

 

「ですので!戦術訓練は素早く済ませて!」

「急いでビーチの掃除と整備を!」

 

「上手く行くといいけど・・・・・・」

 

イオリが不安そうに呟く

その時チナツが口を開いた

 

「ところで行政官、1つ疑問が。」

 

「はい、どうしましたか?」

 

「この辺り、何だかあまりにも静かすぎるような気がするのですが・・・」

「ここまで来る途中も訓練の準備をしている時も」

「ほとんど誰ともすれ違いませんでしたし・・・」

 

イオリが答える

 

「それは別にいい事じゃないのか?」

「ただのタイミングの問題でしょ、何か事件があったわけじゃあるまいし。」

 

「"・・・・・・"」

 

私は思わず呟いた

 

「"フラグ・・・?"」

 

チナツもジト目でイオリを見る

 

「イオリ、【口は禍の元】って知ってますか・・・?」

 

「ん?」

 

イオリは首を傾げる

 

「そりゃ、意味は知ってるけど・・・」

 

その瞬間アコのスマートフォンが鳴った

 

「・・・・・・」

 

アコが画面を見る

 

「・・・あら?」

 

そして電話に出る

 

「はい、アコです。どうされましたか?」

 

『あ、行政官。』

 

風紀委員の声だ

 

『実は合宿用の物資の調達の為に、ホテル付近を周っていたのですが。』

『お店が一つも開いておらず・・・如何しましょう?』

 

「・・・はい?」

 

アコの眉が寄る

 

「どうしてそんな――」

 

その時

 

コンコン

 

部屋の扉がノックされた

 

「失礼いたします。」

「私、当ホテルの支配人を務めている物です。」

「今、お時間よろしいでしょうか?」

 

チナツが扉へ向かう

 

「・・・はい、どうぞ。」

「どうされましたか?」

 

扉を開ける

そこに立っていたのは

 

一体のホテルロボットだった

 

「おぉ・・・!」

「フロントで聞いた時は耳を疑いましたが!」

「本当に来てくださったんですね!」

「ゲヘナ風紀委員会の皆様!!」

 

私は思わず呟く

 

「"うーん、凄く不安・・・"」

 

イオリも露骨に警戒する

 

「・・・は?どういう事だ?」

 

チナツも同じように感じたらしい

 

「何だか嫌な予感がしますね・・・」

 

支配人が首を傾げる

 

「えっと・・・?」

「皆様は私共の救援要請を聞いて、こちらに来てくださったのですよね?」

 

「"・・・・・・"」

 

私は察した

何かが完全にすれ違っている

 

「"何かすれ違ってると思うので。"」

「"最初から説明をお願いできますか?"」

 

「はい!」

 

支配人は説明を始めた

 

「今、この辺りは大変なんです!」

「元々スラム街を占拠していたヘルメット団と!」

「最近になって急に現れたスケバンが衝突してまして・・・!」

「最初は小競り合いだったのが、どんどん激しくなって・・・」

「どちらの集団がこの辺の地区を牛耳るのか」

「約4時間後には、その決着をつけると言っているんです!」

 

「それがネット上でも騒ぎになりまして」

「色んな所から面白半分で見物客が来るだとか」

「どっちが勝つか賭けになっているだとか・・・」

「その噂を聞いたこの地域の方々は軒並みお店を閉めて、逃げ出してしまったんです!」

「これでもし本当に見物客まで巻き込んで。」

「大暴れなんて事になったら・・・!」

 

「うぅ。せっかくリニューアルして、温泉も始めた所だったのに・・・!」

 

そして支配人が両手を広げる

 

「しかし!天は私達を見捨てていませんでした・・・!」

「こうして風紀委員会の皆様が来て下さるなんて!」

「どうかお願いします!彼女たちの全面戦争を止めてください!!」

 

「「「全面戦争!!?!?!」」」

 

アコ、イオリ、チナツが同時に叫んだ

 

私は頭を押さえる

 

「"・・・フラグ回収、早かったなぁ"」

 

「ちょっと!」

 

イオリが私を見る

 

「私のせいだっていうわけ!?」

 

アコが私達を置いて支配人へ向き直る

 

「ま、待ってください!」

「そんな大規模な抗争になりそうなんですか!?」

 

「アコちゃん」

 

イオリが呆れた顔で言う

 

「さっき、ここはゲヘナの中でも指折りの静かな場所って言ってなかった・・・?」

 

「そんな事を今、私に言われましても!?」

 

「・・・・・・」

 

チナツは黙々とスマートフォンを操作している

そして顔を上げた

 

「・・・ネットで調べてみましたが今のお話は事実のようですね。」

「ゲヘナのSNSで凄く話題になっています。」

 

チナツが画面を見せてくる

 

そこには

 

【約4時間後、アラバ海岸で大規模な全面戦争が起きる】

 

という文字

 

その下には

 

『そういえば今日だっけ?』

 

『海辺でスケバンとヘルメット団が、ド派手な勢力争いするんだって!』

 

『今年の夏、一番デカそうなイベントじゃん!』

 

そして

 

EATorDIEOfficial:『何だか面白そうな匂いがしますわね?』

 

「・・・・・・」

 

チナツがスマートフォンを下ろす

 

「といった感じです。」

「確かにこれは、かなり大規模になりそうな・・・」

 

その時アコのスマートフォンが鳴った

 

「・・・・・・」

 

画面を見る

 

「っ!?い、委員長!?」

 

アコが慌てて電話に出る

 

『・・・もしもし、アコ?さっき聞きそびれたのだけど』

『よく考えてみたら、何もせずに4時間待機は長くない?』

『何か間違ってる気がするから今から私の部屋に来て。』

 

「・・・・・・」

 

通話が切れた

 

アコがスマートフォンを握りしめる

 

「くっ・・・!、やはりダメでしたか・・・!」

 

「"そりゃ4時間はね・・・誤魔化せないよ・・・"」

 

イオリも呆れたように言う

 

「いや、そりゃ訓練に来たのに。」

「いきなり【4時間はホテルの部屋で待機です♪】って言われたら怪しむでしょ・・・」

 

「・・・・・・」

 

その時

 

またアコのスマートフォンが鳴った

 

「あぁもうっ!こんな時に誰ですか!?」

 

画面を見る

 

「・・・万魔殿!?!」

 

アコが固まった

 

恐る恐る電話に出る

 

『もしもし、アコ行政官でしょうか?』

『先日ご提出いただいた決済文書につきまして』

『幾つかミスが発見されました。』

『至急こちらに来ていただけますでしょうか?』

 

「はいっ!?え、今からですか!?」

 

『今からでお願いします。』

 

プツッ

 

「・・・・・・」

 

アコはスマートフォンを机の上へ放り投げた

 

「・・・・・・・」

 

無表情

 

完全に魂が抜けている

 

私はそっと目を逸らした

 

("・・・アコ、大丈夫かな・・・")

 

その直後

 

バンッ!!

 

部屋の扉が勢いよく開いた

 

「アコ行政官!」

 

風紀委員の生徒が飛び込んでくる

 

「ご報告です!」

「現在、海辺で正体不明のスケバン及びヘルメット団の小規模集団が、」

「小競り合いを始めた模様です!至急ご対応を!」

 

「・・・・・・」

 

そしてホテルの外から

 

ダァンッ!

 

バァンッ!

 

銃声が鳴り響く

 

「こ、これは・・・」

 

アコのスマートフォンが再び震えた

画面にはヒナからのモモトーク

 

『アコ、今何処?』

『それに今さっき外から銃声が聞こえたけど、訓練の予定でも変わったの?』

 

イオリがアコを見る

 

「アコちゃんどうする!?」

 

チナツも続く

 

「悪い事は重なるものですね・・・」

「行政官、どうしましょうか?」

 

「・・・・・・」

 

アコはしばらく何も言わなかった

 

やがて

 

「・・・くっ。」

 

ぎゅっと拳を握る

 

そして深呼吸を

一度、二度、三度と繰り返す

 

そして顔を上げ

 

「・・・分かりました。」

「ええ。分かりましたとも。」

 

その声は妙に平坦だった

 

("あ、マズいかも・・・・")

 

「"あ、アコ・・・その、大丈夫・・・?"」

 

アコがこちらを見る

 

そして

 

「こうなったらもう!」

「槍でも雨でもかかってきなさい!!」

 

「この私が!委員長の為に!」

「これくらいの試練すら乗り越えられないとでもお思いですか!!」

 

「まずは先生!」

「ヒナ委員長の所に行って!」

「何も大したことは起きていないと伝えてください!」

「訓練は予定通りに進んでおり!」

「何も問題はありませんと!」

 

「『まだ風紀委員長としての出番はこの後ですので、訓練の効果を最大化する為にも、まだ待機して頂きたい』と言ってください!」

「それで大丈夫なはずです!」

「その先は任せます!」

 

「何はともあれ!絶対に!」

「ぜっっっったいに!!」

「ヒナ委員長を部屋の外に出さないでください!!」

 

「分かりましたね!?」

 

「"は、はいっ!"」

 

思わず直立してしまった

 

アコはそのままイオリとチナツを見る

 

「イオリ!、チナツ!」

「おふたりは風紀委員会のメンバーを連れて!」

「海辺の小競り合いを収束させてきてください!」

 

「わ、分かった!」

 

イオリが引き気味に答える

 

「承知しました。」

 

チナツも頷く

 

二人はそのまま部屋を飛び出していった

アコはそれを確認した後、私を見る

 

「・・・仕方ないので私は一旦、ゲヘナに戻ります。」

「あの面倒な方々と早急に話を付けてきますので!」

 

「何だか状況はややこしくなってきましたが。」

「私たちのやるべきことは変わりません!」

 

アコが拳を握る

 

「全ては・・・!ヒナ委員長の安らかな休息の為に!!」

 

「"りょ、了解・・・!"」

 

私はそのまま部屋を飛び出し

ヒナの部屋へ向かう

 

 

 

【アラバリゾート・客室】

 

コンコン

 

扉をノックする

 

「うん、入って。」

 

ヒナの声が部屋の中から響く

 

私は扉を開ける

 

「"失礼しまーす。"」

 

部屋へ入った瞬間

 

「・・・あれ、先生?」

 

ヒナがこちらを見る

そして私もヒナを見る

 

「"ヒナがいつの間にか水着に!!?"」

 

「・・・・・・」

 

ヒナが少し恥ずかしそうにする

 

「そ、そんな大げさな・・・」

「その訓練とはいえ、一応海に来たわけだし・・・」

「着替えておこうかなって」

 

「"なるほど・・・"」

 

「ここで着替えてる時に何故かアコが」

「『せっかく海なので』って、新しい水着をくれたから」

「そっちを着るって手もあったのだけど・・・」

 

「結局、突き返した。」

 

「"それはまた、どうして?"」

 

「どうしてって・・・」

 

ヒナが自分の水着を見る

 

「この水着が元々あったし」

「まだ着られるのに何もわざわざ新しい物を使う必要はない。」

「持っている物を再活用した方が効率的。」

 

「"・・・・・・"」

 

胸元にはひらがなで書かれた【ひな】の文字

私は思わず凝視する

 

「"・・・それってもしかして"」

「"小学生の時・・・・・・の?"」

 

「・・・そうだけど」

 

ヒナが首を傾げる

 

「何か問題でもある?」

「別にまだ着られるし」

 

「"・・・・・・"」

 

私はヒナを見る

水着を見る

 

もう一度ヒナを見る

 

("・・・・・・")

 

ある可能性が頭に浮かんだ

 

「"・・・・・・"」

 

(もしかしてヒナって)

(小学生のころから・・・成長して・・・ない?)

 

私の顔が引きつった

ヒナが心配そうにこちらを見る

 

「・・・何か、変?」

 

「"・・・・・・"」

 

そして脳内に浮かんだ考えを

そのまま口に出してしまった

 

「"・・・という事はヒナはまだ小学生の可能性が・・・!?"」

 

「えっ!?」

 

ヒナの顔が真っ赤になる

 

「な、何を言ってるの・・・!?」

 

「もう!変な事言うなら、このお話は終わり!」

 

「"あ。"」

 

ヒナはふぅ・・・・・・と息を吐いて少し落ち着くと

 

「それより・・・もしかして、外で何か起きてる?」

「さっきから少し騒がしい気が・・・」

 

「"・・・・・・"」

 

私はヒナを見る

 

(この子もエデン条約で大変な目に遭った)

(だから今は、ゆっくりした方がいい)

 

「"大丈夫。"」

「"ちょっと訓練の準備でバタバタしてるみたい。"」

 

「・・・そう。」

 

ヒナは素直に頷く

 

「ならいいか。」

 

「"・・・・・・"」

 

胸が痛む、嘘をついている

でも今だけはこれでいいと思った

 

「"ところで、ヒナは今何をしてたの?"」

 

「えっと、特に何も・・・」

「スケジュール上、【午後の歩行訓練まで待機】って言われたから。」

 

「あと4時間弱もあるけど」

「とりあえず体力を温存しておかなきゃいけないみたい。」

 

「ただ、ちょっと流石に長すぎる気がして」

「さっきアコに連絡してみたのだけれど・・・」

 

「"・・・・・・"」

 

(何もしないで4時間は、まぁ長いよね・・・)

 

ヒナは続ける

 

「でも、アコが間違ってないと言うなら別に構わない。」

「今回の訓練はアコに全部任せる事にしたのだし」

「任せると言った以上は何かよっぽどの事が無い限りは見守る。」

 

ヒナの表情が少しだけ真剣になる

 

「それに・・・今までは結構・・・その」

「私が自分一人で全部決めてきちゃったから・・・」

 

「"・・・・・・"」

 

私は微笑む

 

「"うん。"」

「"ヒナは凄く頑張ってきたからね。"」

「"そんな感じに、もっと皆に頼って良いと思うよ。"」

 

ヒナも少し笑う

 

「うん。」

 

「そうね・・・」

 

少し間が空く

 

「でも・・・ここ暫くエデン条約で忙しかった事もあって」

「急に待機って言われると、」

「その・・・手持ち無沙汰というか、なんだか落ち着かない。」

 

「何もしないでじっとしてるなんて事今まであんまりなかったし・・・」

 

「"・・・・・・"」

 

やっぱりこの子は働くことが当たり前になりすぎている

 

ヒナが少しだけ視線を逸らす

 

「だから・・・えっと・・・」

「もし先生が良ければ・・・その」

「・・・話し相手になってくれる?」

 

少しだけ恥ずかしそうだった

 

「もう今の時点で」

「このまま後4時間もじっとしていられる気がしなくて」

 

「あ、もちろん先生も色々忙しいと思うし・・・」

「ただでさえこうして風紀委員の合宿に付き合ってもらってるのに」

「これ以上時間を拘束するのは申し訳ないのだけど・・・」

 

私も人の事を言えないけど

 

("ヒナもワーカーホリックになってるなぁ・・・")

 

私は笑った

 

「"大丈夫!そんな事ないよ"」

「"喜んで話し相手になるよ!"」

 

ヒナの表情が少し明るくなる

 

「・・・ありがとう。」

 

その時、私のスマートフォンが鳴った

ヒナが首を傾げる

 

「・・・ん?」

「先生のスマートフォン?」

 

「"あ。"」

 

私は慌てて画面を見る

イオリからだった

 

「"はい、もしもし?"」

 

『あ、先生!!』

 

その後ろからチナツの声

 

『くっ・・・!』

『先生、今大丈夫でしょうか!?』

 

「"え?"」

 

イオリが続ける

 

『海辺の奴らが思ったより厄介で!』

『先生、今からこっちに来られる!?』

 

チナツも叫ぶ

 

『どうか委員長にはご内密にしつつ、指揮をお願いします!』

 

プツッ

 

通話が切れた

 

「"・・・・・・"」

 

("どうしよう。")

("どう言い訳しよう・・・")

 

ヒナがこちらを見る

 

「先生、今の連絡は誰から・・・?」

 

「"・・・・・・"」

 

咄嗟に口から出たのは

 

「"ごめんヒナっ"」

「"きゅ、急にお腹が・・・!"」

 

ヒナが困惑する

 

「えっ、う、うん。」

「いってらっしゃい・・・?」

 

「"ごめん!"」

 

私はそのまま部屋を飛び出した

 

 

 

 

エレベーターへ

 

「"・・・・・・"」

 

エレベーターが1階に付いた瞬間私は全速力で走り出した

 

(ごめん、ヒナ!)

(でも、この状況で放置するわけにもいかない!)

 

ホテルを飛び出し砂浜へ

 

そこで私は

 

「"・・・・・・"」

 

足を止めた

 

「"これ・・・"」

 

目の前で約50人ほどのスケバンが

閉店した海の家を遮蔽物にしている

 

その向かい側の岩礁地帯では

同じく約50人ほどのヘルメット団が身を隠し、撃ち合っていた

 

ダァンッ!

 

ダァンッ!

 

ダダァンッ!

 

その二つのグループを風紀委員会が横から

防弾テーブルなどを横倒しにして、簡易的な遮蔽物を作って撃ち合っていた

 

「先生!」

 

イオリがこちらへ駆け寄ってきた

 

「来てくれたか!」

 

「"状況は?"」

 

「思ったより敵の数が多い!」

「岩礁地帯と海の家を遮蔽物にして撃ってくるから、こっちから攻撃に出られない!」

 

「"・・・・・・"」

 

なるほど、正面から突っ込めば、こちらが削られる

 

なら

 

「"まず。"」

「"スモークグレネードを風紀委員会の真正面に複数個投げて視界を遮って。"」

「"その間に偵察用の飛行ドローンを飛ばして」

「岩礁地帯にいるヘルメット団の正確な位置を把握。"」

 

「分かった!」

 

「"位置が分かったら。"」

 

私は岩礁地帯を見る

 

「"携行迫撃砲を使い岩礁地帯へ飽和砲撃。"」

「"そのまま榴弾を岩礁地帯に継続的に入れて"」

「"岩礁側は倒さなくていい。撃ち続けて、顔を上げさせないで"」

 

イオリが一瞬だけ目を見開く

 

「・・・了解!」

 

「"その間に海の家側へフラッシュバン。"」

「"敵の視界と判断を一瞬奪う。"」

「"その瞬間に、イオリが突撃。"」

 

「"前線を食い破って、そのまま後方まで突っ切って。"」

「"風紀委員会はイオリに続いて一斉に前進。"」

「"岩礁側は砲撃で押さえ続ける。"」

「"まずは海の家側を制圧しよう。"」

 

イオリが笑う

 

「分かった!やってやる!」

 

風紀委員たちが動き始める

 

「スモーク!投げろ!」

 

「「了解!」」

 

白煙が一気に広がる

 

「今!」

 

ドローンが飛び出す

 

上空から岩礁地帯を映し出す

モニターへ敵の位置が表示される

 

「座標、出ました!」

 

「先生!」

 

「"迫撃砲、撃って。"」

 

「了解!」

 

ドンッ!!

 

「"・・・・・・"」

 

一発

 

そして

 

ドンッ!!

 

ドンッ!!

 

ドドドドドッ!!

 

岩礁地帯へ榴弾が叩き込まれる

 

「うわぁぁっ!?」

 

「なんだ!?」

 

「砲撃!?」

 

その瞬間

 

「"今!"」

 

「フラッシュバン!」

 

イオリが走る

 

ピンッ

 

「いっけぇぇぇぇ!!」

 

海の家へ

 

パンッ

 

パンッ

 

パンッ

 

海の家で何度も閃光が奔る

 

「うわっ!?」

 

「目がっ!」

 

「今だ!」

 

イオリが突っ込み遮蔽物を飛び越え、

スケバン集団の前線の裏へ回り込む

 

「なっ!?」

 

「後ろ!?」

 

「遅い!」

 

イオリが次々とスケバンを制圧していく

 

その瞬間

 

「全員!突撃!!」

 

風紀委員会がスモークを突き破り一斉に前進していく

 

「押せ!」

 

「制圧するぞ!」

 

「逃がすな!」

 

海の家側が一気に崩れていく

 

岩礁地帯では

 

ドンッ!!

 

ドンッ!!

 

ドドドドドッ!!

 

今もなお迫撃砲が継続して叩き込まれている

 

「"なんとかなったかな・・・"」

 

戦況が一気に傾いた

 

数分後

 

海の家側のスケバンは制圧

岩礁地帯にいたスケバンたちも、全員榴弾の衝撃で気絶していた

 

私は息を吐く

 

「"ふぅ・・・"」

 

終わった

そう思ったその時

 

遠くから

 

キュララララ!!

 

履帯がアスファルトを削る音が響く

 

「"・・・?"」

 

道路側から何かが突っ込んでくる

 

「"・・・え?"」

 

戦車がビーチに突っ込んできた

 

「"えぇ・・・戦車も?"」

 

戦車からスケバンたちが顔を出す

 

「てめぇら!よくも横から撃ちやがったな!」

「コイツで吹っ飛ばしてやる!!」

 

「"・・・・・・"」

 

私は呆然と戦車を見る

 

次の瞬間、風切り音が空から聞こえた

 

ピューーー

 

「"・・・??"」

 

何か棒のような物体が空を飛んできた

 

「"・・・何あれ?"」

 

カンッ

 

そんな金属と金属がぶつかる音が聞こえた

その瞬間

 

ドゴォォォォォォォォンッ!!!!!

 

空から降ってきた棒のような物が戦車に当たった瞬間、戦車がスケバンごと吹き飛んだ

 

「「「"えぇ・・・・・・"」」」

 

風紀委員会と私

その場に居る全員が唖然と見ていた

 

 

砂煙が舞いしばらくして

吹き飛ばされたスケバンが

 

「う・・・くそ、撤退・・・!」

 

這うように逃げていく

 

「・・・・・・」

 

誰も追わない、追えない

あまりにも意味が分からなかった

 

私はふと岩礁地帯を見る

 

「"・・・あれ?"」

 

さっきまで気絶していたヘルメット団も

いつの間にか誰もいなくなっていた

 

「"・・・・・・"」

 

私は小さく息を吐き

 

「"流石ゲヘナ。皆逞しいなぁ・・・"」

 

私の呟きに誰も何も答えなかった・・・

 

ただ遠くの海だけが何事もなかったかのように静かに波打っていた




うごごごごご!!
書いた!

時間が足らない!!

そして多分直近なので解説しなくても分かると思いますが、
今回の舞台はイベントのヒナ委員長の夏休みです!

そして、アンラとユメが泊りに来ていたホテルと同じです。
そして、アンラがぶん投げた刺突爆雷くんが今回空から降ってきたコレですね。

さて、ヒナちゃんはゆっくり出来るのか。
あと休憩中に遊んでた風紀モブちゃん可愛くない?
ちなみに私は書きながらコレ可愛いなぁって思ってました。
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