おっさんキヴォトスに行く   作:無い頭のおっさん

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これが作者の出せる最速かつ全力の執筆速度・・・!

死にそう。


おっさんお稲荷さんを食う

 

【祈願屋・事務所】

 

あの大雨の日から

 

数日が経った

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

カリカリ

 

静かな事務所の中

 

今日もおっさんとユメちゃんは、向かい合って書類を処理していた

 

ペラッ

 

紙を一枚めくる

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

まぁ

 

大雨の後始末としては、こんなもんやろ

 

「そういえば。」

 

ユメちゃんが、書類から顔を上げて言う

 

「おん?」

 

「この前の、子うさぎ公園の件ですけど。」

 

「あぁ。」

 

「RABBIT小隊の皆さんは、大丈夫だったんですか?」

 

「テントは直した。」

 

「排水もどうにかなった。」

 

「まぁ、通信機器は壊れたままやけどな。」

 

「そうですか。」

 

ユメちゃんは、少しだけ安心したように頷く

 

「それなら良かったです。」

 

「まぁ、元々かなり酷い状況やったしな。」

 

「アンラさんが行っていなかったら、もっと大変だったでしょうね。」

 

「いや。おっさん、ほんまに見に行っただけやで。」

 

「その結果、排水溝掃除するついでで、泥からタープを作って、」

 

「テントを直した人が言っても説得力がありませんよ。」

 

「・・・そうか?」

 

「そうです。」

 

「さよか・・・」

 

まぁ否定は出来かもな・・・

 

「それよりな。」

 

「はい。」

 

「先生。」

 

「ええ。」

 

「結局、あの後ほんまに風邪ひいたらしいで。」

 

ユメちゃんの手が止まった

 

「あー・・・やっぱりですか。」

 

「次の日に熱まで出したらしい。」

 

「・・・・・・」

 

ユメちゃんは、呆れたように息を吐く

 

「合羽も着ずにあの土砂降りの中作業してたんですよね?」

 

「せやな。」

 

「そりゃ、引きますよ・・・」

 

「せやなぁ。」

 

「それにしても、アンラさん。」

 

「ん?」

 

「先生を引っ張って帰ったのに。」

 

「おう?」

 

「結局、風邪をひかせたんですね。」

 

「いやいやいや、おっさんのせいやないやろ。」

「流石に難癖が過ぎるやろ!?」

 

「でも。先生、アンラさんと一緒に雨の中を歩いて帰ったんですよね?」

 

「・・・・・・」

 

「責任の一端くらいは」

 

「あらへんあらへん。」

 

「ふふっ。」

 

ユメちゃんが楽しそうに笑う

 

「でも、もう治ったんですか?」

 

「どうやろな。ちょっと前に連絡あって本人曰く」

 

「たぶん、もう大丈夫とか言っとったけど」

 

「そうですか。」

 

「まぁ風邪ひいたんは、自業自得としてもちょっと可哀想やったけどな。」

 

「・・・・・・。」

 

ユメちゃんが、じっとこちらを見る。

 

「何や?」

 

「いえ。」

 

「随分、先生のことを気にしているなぁ、と思いまして。」

 

「・・・いや。」

 

「目の前で風邪ひかれて倒れられたら面倒やっただけや。」

 

「そうですか。」

 

「せやで・・・?」

 

「ふふっ。」

 

「なんやねん。」

 

「何でもありません。」

 

「・・・・・・」

 

そんな会話をしながら

 

一枚、また一枚と書類を処理していく

 

そんな時だった

 

prrrrr・・・・・・

 

机の上のスマホが鳴った

 

「・・・ん?」

 

画面を見と

 

「・・・先生や。」

 

ユメちゃんもスマホへ視線を向ける

 

「噂をすれば、ですね。」

 

「ほんまやな。」

 

おっさんはスマホを手に取り、通話を繋ぐ

 

「はいはい。どしたん?」

 

『"アンラさん!"』

 

「おう。」

 

『"お久しぶりです!"』

 

「先生。」

 

『"はい!"』

 

「風邪、治ったんか?」

 

すると電話の向こうから

 

『"はい!完治しました!!"』

 

妙に元気な声が返ってきた

 

「・・・声デカいな。」

 

『"す、すみません!"』

 

「いや。元気そうで何よりや。」

 

『"ありがとうございます!"』

 

「で。何か用事あるんやろ?」

 

『"あっはい。"』

 

『"実はですね。"』

 

少しだけ間が空き続きを話し出す

 

『"ちょっと相談したいことがありまして。"』

 

「相談?」

 

『"はい。"』

 

『"それと・・・・・・"』

 

先生の声が、少し弾んだ

 

『"また子うさぎ公園に行くんですけど。"』

 

『"一緒に行きませんか?"』

 

「・・・・・・」

 

おっさんはちらりとユメちゃんを見る

 

ユメちゃんは

 

「・・・・・・」

 

すました顔で、黙々と書類を処理している。

 

「・・・・・・」

 

まぁ行けるやろ・・・多分\

 

「ほな。」

 

『"はい?"』

 

「ええで。」

 

『"本当ですか!?"』

 

「おう。」

 

『"ありがとうございます!"』

 

「いつ行くん?」

 

『"今からでも大丈夫です!"』

 

「・・・今から?」

 

『"すみません!"』

 

「いや。」

 

「別にええけど。」

 

「ほな、今から向かうわ・」

 

『はい!シャーレに居るのでそこでお願いします!』

 

そういうと先生の電話が切れる

 

おっさんはユメちゃんへ視線を向ける

 

「ユメちゃん。」

 

「はい?」

 

「ちょい子うさぎ公園まで行ってくるわ。」

 

「・・・そうですか。」

 

「先生の相談にも乗らなあかんみたいやし。」

 

「ええ。」

 

ユメちゃんは書類を一枚めくる

 

そして

 

「気を付けて行ってきてくださいね。」

 

「あいよ。」

 

「・・・・・・」

 

そのまま何も言わない

 

「・・・・・・」

 

逆に怖い

 

「ただ。」

 

やっぱり来た

 

「ん?」

 

「前回は。」

 

「はい。」

 

「何日も先生のお手伝いをされていましたよね。」

 

「・・・・・・」

 

「今度は。」

 

「・・・・・・」

 

ユメちゃんがこちらを見る。

 

「ちゃんと帰ってきてくださいね。」

 

「・・・・・・」

 

「早めに。」

 

「・・・・・・はい。」

 

「ふふっ」

 

「絶対嫌味やろ。」

 

「何のことですか?」

 

「はぁ・・・・・・」

 

おっさんは肩を竦める

 

「ま、ほな行ってくるわ。」

 

「いってらっしゃい。」

 

おっさんはローブを羽織り

 

そのまま事務所を出た

 

 

 

【DU地区・シャーレビル前】

 

「・・・・・・」

 

シャーレビルの前まで来ると

 

「"アンラさん!"」

 

先生が、既にそこに立っていた

 

「おう。」

 

「"お待たせしました!"」

 

「いや。先生の方が早いやろ。」

 

「"えへへ。"」

 

「ほな、行こか。」

 

「"はい!"」

 

2人で歩き出す

 

向かう先は子うさぎ公園がある一帯、子うさぎタウン

 

街中を歩きながら先生がぽつりと口を開いた

 

「"・・・そういえば。"」

 

「ん?」

 

「"RABBIT小隊の皆のことなんですけど"」

 

「おう。」

 

「"この前の件を受けて。"」

「"連邦生徒会へ、支援を働きかけてみたんです。"」

 

「ほう。」

 

「"公園で生活するにしても。"」

「"最低限の物資や設備くらいは、支援できないかと思って。"」

 

「まぁ。出来るんなら、その方がええやろな。」

 

「"はい。"」

 

先生は、少し困ったように笑い

 

「"でも。リンちゃんからはかなり難しいと言われました。"」

 

「まぁ・・・そうやろなぁ。」

 

「"SRT自体が、今の連邦生徒会から危険視されていますから。"」

「"連邦生徒会として直接支援を出すのは、難しいみたいです。"」

 

「なるほどな。」

 

「"それでカヤにも相談したんです"」

 

「・・・・・・」

 

カヤ、その名前を聞いた瞬間

おっさんは僅かに眉を寄せる

 

「"カヤはSRTが既に閉鎖された学園だから"」

「"そこへ直接支援をすると"」

「"存在しない学園の生徒達に対して、"」

「"連邦生徒会が直接介入する形になってしまうから難しいだろうって。"」

 

「・・・・・・」

 

「"それっぽい理由を色々言われました。"」

 

おっさんは前を向いたまま

ぽつりと口をついて出る

 

「カヤは相変わらず上っ面の口だけは上手いようやなぁ・・・」

 

「"・・・・・・"」

 

隣から視線が刺さる

 

「・・・・・・」

 

じーっ

 

「・・・・・・」

 

おっさんは前を見て知らないフリを続ける

 

「・・・・・・」

 

「"アンラさん。"」

 

「ん?」

 

「"カヤのことも。"」

「"やっぱり知ってるんですね?"」

 

「・・・・・・」

 

ここで下手に嘘付く方が危ないか・・・

 

「直接は会うたことないで。」

 

「"・・・・・・"」

 

「ただ、知識では知っとる。」

 

「"・・・・・・"」

 

じーっ

 

「"・・・・・・"」

 

先生がこちらを凝視してくる

けど、おっさんは見ない

ただ真っ直ぐ前を見る

 

「"・・・・・・"」

 

「・・・・・・」

 

「"・・・・・・"」

 

先生が少しだけ横へ移動する

おっさんはひたすら前を見る

 

「"・・・・・・"」

 

先生が反対側へ移動する

前を見る

 

「"・・・・・・"」

 

無心、無心や、変なこと考えんな

表情も変えるな

 

「"・・・・・・"」

 

「・・・・・・」

 

「"・・・・・・"」

 

しばらくして先生が小さくため息を吐いた

 

「"・・・駄目だ。"」

 

「何がや。」

 

「"アンラさんから今回は何も読み取れません。"」

 

「そらよかった。」

 

「"何を考えているのかも。"」

「"何を知っているのかも。"」

「"今回は全然分からなかったです・・・"」

 

「そういうこともある。」

 

「"絶対、意図的ですよね?"」

 

「知らん知らん。」

 

「"・・・・・・"」

 

先生は諦めたように前を向いた

そんな話をしながら

子うさぎタウンの道を歩いていると

前方に1人の少女が見えてきた

 

ピンク色髪とその頭には狐耳が生えている

頭には【FoxEats】と書かれたサンバイザー

同じ店名の入ったエプロン

そして首から下げた立ち売り箱

おっさんの目が、一瞬だけそこへ向く

 

「・・・・・・」

 

ニコやんけ

そうか、このタイミングで先生の人物調査しとったんか

 

「"どうしました?"」

 

「いや、何でもない。」

 

そのまま2人で近づいていく

 

すると

 

「美味しい美味しいお稲荷さんはいかがですか~?」

「そこのお客様!」

「もしお食事がまだでしたら、こちらはいかがです?」

「今日は何と言っても、会心の出来でして!」

「それに今なら出来たてです!」

「今が一番美味しいですよー!」

 

ニコが笑顔で売り込みをしてくる

先生が少しだけ笑い

 

「"じゃあ。"」

「"せっかくだし、一個貰おうかなー"」

 

先生は、お稲荷さんが五個入った一パックを手に取る

おっさんも同じように一パック手に取った

 

「これ、いくらや?」

 

「1パック300円です!」

 

「ほな、これ。」

 

「"私も。"」

 

2人とも300円を払い

 

「毎度ありです!」

 

ニコがお金を受け取って笑う

 

そして

 

「いやー、今日は全然お客さんが来なくて、落ち込んでたんですよー」

「もしかして、一つも売れないんじゃないかと思って」

「胃が痛かったです。」

「せっかく作ったのに、それじゃもったいないですし。」

 

先生が周囲を見る

確かに人がおらんし、開いている店も少ない

 

「"そういえばここ。"」

「"人も居ないし全然お店も開いてないね。"」

 

ニコは周囲を見ながら

 

「実はこの辺、もうすぐ再開発が始まるんですよ。」

「多分、そのせいだと思います。」

 

「"・・・再開発・・・?"」

 

先生が呟く

 

「・・・・・・」

 

おっさんの顔が、僅かに曇る

嫌な単語や

 

ニコは先生の反応を見て

 

「あれ?もしかして、ご存じなかった感じですか?」

「どうやら噂によると。」

「この辺に新しい地下鉄を開通させる予定だそうで。」

「この辺の商店街やら何やらを更地にしたうえで、地下鉄工事をして。」

「そこに新しいショッピングタウンを建てるんだとか。」

 

「確か・・・・」

 

ニコが首を傾げる

 

「なんでしたっけ・・・」

「オクトパス建設、そんな名前だったと思います。」

 

「・・・・・・」

 

先生が、その名前を聞いた瞬間

 

「カイザー系列・・・?」

 

「・・・・・・」

 

おっさんはバッと顔だけ先生に向け先生の表情を見る

 

・・・なるほど

 

この反応、この時点で先生は

カルバノグ第一章の、この原作ルートを進んだことがない

つまり、ここで初めて知ったんか

 

ニコが続ける

 

「そうですそうです!」

「そのグループの末端の下請け会社に、オクトパス建築という会社があるんだそうです。」

 

「それはもう。」

「カイザーグループ自体が社運を賭けるレベルの大きな再開発をする予定なんだとか。」

「でも。そこまで力を入れてるのに。」

「本社の系列グループでやらないのは、なんでなんでしょう?」

 

「・・・さぁなぁ。」

 

おっさんは肩を竦める

 

「まぁ。どっかの契約で、本社系列を大々的に動かせへん理由でもあるんやないか。」

 

「そうなんですね・・・?」

 

ニコは小さく微笑みながら首を傾げた

 

「まぁ、この再開発を受けて。」

「ここのお店は閉店を余儀なくされ。」

「住民の方の追い出しなんかも進んでいるようなのですが・・・」

「私みたいにアルバイト生活の生徒には、もう雲の上のお話ですね。」

 

「ふふっ・・・」

 

そして少し間を置いてから続ける

 

「せっかくたくさん買ってくれたことですし。」

「もう一つ、良い情報を教えちゃいます。」

「先ほどの再開発のお話なのですが・・・」

「どうやら、取り消されるという話もあるようです。」

 

先生が首を傾げる

 

「"それまた、どうして?"」

 

「実はこの辺には、浮浪者さんの集団がいまして。」

「結構な重武装をしているらしいのですが」

「再開発の方々が来るたびに騒ぎを起こしていて。」

「工期がどんどん遅延しているんだとか。」

「さらに近くの公園でも。」

「武装した何処かの生徒達が、公園を占拠したとかで。」

「ヴァルキューレも色々と手を焼いているようですし。」

 

「こんな状況では。」

「オクトパス建設も困ってしまっている・・・という感じでしょうか?」

 

先生が苦笑いを浮かべる

 

「"公園の生徒たちって・・・"」

 

おっさんは心の中で

何処かってお前もしっとるやろがいとツッコむ

 

ニコが先生を見ながら

 

「あら。もしかして、お知り合いですか?」

 

「"あはは・・・"」

 

先生は苦笑いが漏れている

 

「そろそろお分かりかもしれませんが。」

 

ニコが楽しそうに続ける

 

「私、おしゃべりが大好きなんですよ。」

 

そう言いながら先生へ近づく

 

「もう一つおいなりさんを差し上げますので。」

「もし何かご存じでしたら、教えて頂けません?」

 

先生は少しだけ申し訳なさそうに笑う

 

「"ごめんね。"」

「"私もあまりよく知らなくて。"」

「"特に教えられるようなことはないんだよ。"」

 

「・・・そうですか」

 

ニコは少し残念そうに呟く

 

そして一瞬だけおっさんへ視線を向ける

 

「・・・・・・」

 

おっさんは、その視線を受け

 

「おっさんも特に知っとることはあらへんわー」

「なんなら先生よりも関係浅いしな。」

 

ニコが

 

「ふぅ・・・」

 

と小さくため息を吐き

 

「実はこれも噂なんですが・・・」

「その公園の生徒達は」

「どうやら、何処かのエリート学校の生徒なんだとか。」

「それが本当なら相当な武力の火器を持っているでしょうし」

「ヴァルキューレが手を焼くのも当然かもしれませんね。」

 

「とはいえ。何故そんなエリートの生徒達が、公園を占拠して生活しているのか・・・」

「これは推測でしかありませんが、」

「何かを偽装しようとしているのかもしれませんし。」

「取返しのつかない失敗で、そうせざるを得ないのかもしれません。」

 

「あるいは・・・・・・」

 

ニコが少しだけ目を細める

 

「夢を見ているのかもしれませんね。」

「温室育ちの花が見る様な・・・・・・淡くて優しい、叶わない夢を。」

「そんな夢に浸った生徒達を導く立場に居る方はそれはもう大変でしょうね。」

 

先生は静かに答える

 

「"そんな事はないと思うよ。"」

 

「なるほど・・・?」

「それはどうして?」

 

先生は少しだけ笑い続きを言う

 

「"生徒達の夢を応援するのは、導く側の義務だから。"」

 

「・・・・・・」

 

横で聞いていたおっさんは

 

「ヒュー、言うねぇ。」

 

その瞬間

 

ドスッ

 

「ウッ」

 

先生の肘が脇腹に入った

 

「なにすんねん」

 

「"茶化さないでください。"」

 

「いや、ええこと言うたなぁと思って。」

 

「"もう・・・"」

 

ニコは

 

「・・・・・・」

 

ハトが豆鉄砲を食らったような顔をしていた

そして、ものすごく小さな声で

 

「・・・変な人ですね。」

 

そんな蚊の鳴くような声を拾ったおっさんは

まぁこの時点のお前らならそらそうなるやろなと思いながらニコを見つめる

 

ニコは再び笑顔を作ると

 

「まぁ、そういうお考えもあるかもしれません。」

「さて、今日はそろそろ店じまいとしましょうか。」

「お買い上げ、有り難うございました!」

 

そう言いながら

立ち売り箱に入っていた別のお稲荷さんのパックを、先生へ差し出す

 

「"・・・・・・?"」

 

先生が受け取る

 

「"これは?"」

 

「売れ残りです。」

「私だけでは食べきれませんし・・・」

「オマケということで、差し上げます。」

 

そして今までで一番優しい笑顔を浮かべ

 

「もしよろしければ・・・お腹が空いてる子にでも、あげてください。」

 

先生は少し驚いたように、お稲荷さんを見る。

 

「"・・・ありがとう。"」

 

「それでは。」

 

ニコが微笑む

 

「今日はお会いできて嬉しかったです。」

 

そのまま立ち去ろうとした所で

 

「ちょい待ち。」

 

おっさんが呼び止める

 

「?」

 

「折角もらっただけやと、あれやし。」

「おっさんから丁度ええもんあるんよ。」

 

ローブの下でニコから見えない様に虚空から

コーヒー豆の入った缶を2缶取り出す

 

「ほい、これ。お礼っちゅうことでもらってくれや。」

 

()()()()()()にでもやって。」

「残った分は、()()とでも一緒に飲んでくれ。」

 

ニコは友人と言われたところで笑みが消えるも

すぐさま取り繕い笑顔を張り付けてから口を開く

 

「わー!」

「ありがとうございますね!」

 

そう言いながら張り付けた笑顔でおっさんから缶を受け取る

 

「それでは。」

「また機会があれば会いましょうね。」

 

そして

 

「先生。」

「元社長さん。」

 

「・・・・・・」

 

ニコは軽く手を振りながら、そのまま走り去っていった

おっさんは、その後ろ姿を見送り

 

「・・・・・・おっさんの素性も割れとるんか。」

 

先生がこちらを見る

 

「"もしかして"」

「"あの子も何か先に関係が・・・?"」

 

おっさんは先生を見る

 

「それ、それあったとして、おっさんが言うと思うか?」

 

「"・・・・・・"」

 

先生が少しだけ考えてから口を開く

 

「"まぁ・・・・・・そうですよね。"」

 

「せやろ。」

 

2人はそのまま

 

子うさぎ公園へ向かって歩き出した

 

 

 

【子うさぎ公園】

 

公園へ入り

RABBIT小隊のキャンプ地へ向かって歩く

 

すると

 

「と、と、止まってください!」

「変な動きをしたら。」

「う、撃ちますよ・・・・・・!」

 

ミユが、目を瞑りながらこちらへ銃を構えてきた

 

「・・・・・・」

 

おっさんはぼそりと呟き

 

「もっぺん首しめて落としたろか?」

 

「ひぅ!?」

 

その呟きを聞いたミユがその場で竦み上がる

 

「・・・・・・ミユ」

 

モエがテントの中から出てくると

 

「警戒する時は、まず相手を見てからにしな?」

「ほら。先生達だよ。」

 

「・・・・・・」

 

ミユがゆっくり目を開き

そして

 

「・・・・・・す、すみません!」

 

先生へ頭を下げる

おっさんは自分を指差し尋ねる

 

「おっさんは?」

 

モエが即答する

 

「アンタはどうせ撃っても何とも無さそうだし、良いでしょ。」

 

「・・・おっさん、雑に扱われてへん?」

 

そこへテントの中からサキも出てくる

 

「外が騒がしいと思ったけど。」

「なんだ、先生か。」

 

「どうして、ここに?」

「呼んだ覚えはないけど。」

 

そこまで言ったところで

サキが少しだけ鼻を動かす

 

「・・・ん?」

「この匂いは・・・・」

 

先生が持っているビニール袋から

ふわりと甘い香りが漂う

 

先生が袋から、お稲荷さんを取り出し

 

「"はい。"」

 

サキへ渡す

 

「・・・・・・」

 

サキが受け取る

それを見てモエが横から覗き込むと

 

「うおっ、いなり寿司じゃん!」

「美味そう!」

 

サキは、手にした稲荷寿司を眺めながら

 

しみじみと呟く

 

「・・・食べるの、久しぶりだな。」

「SRTの頃を思い出す・・・」

 

ミユが恐る恐る尋ねる

 

「も、もしかして。」

「私達のために・・・?」

 

先生が頷く

 

「"うん。"」

「"途中で売っててね"」

「"オマケでいっぱい貰ったから良かったら食べて。"」

 

「・・・・・・」

 

モエが先生をじっと見つめてから

 

「うーん・・・サキ、取り敢えず食べてみて。」

「何か入ってるかもだし。」

 

「"だ、大丈夫!"」

 

先生が慌てて言う

 

「私もさっき食べたから!」

 

そこで、おっさんが一言

 

「食べ物に先生が細工しとったら、おっさんが後ろから頭陥没させるから安心したらええで」

 

「"陥没って死にますよ!?"」

 

「例えや。」

 

「"例えにしても怖いですよ!"」

 

その騒ぎを聞きつけたのか

テントの中から、さらにミヤコが出てくる

 

「あれ、この匂いは・・・?」

 

ミヤコがテーブルに置かれた稲荷寿司を見る

 

「懐かしいですね・・・・・・」

 

ミヤコの表情が少しだけ柔らかくなる

 

「SRTに先輩がいたんです。」

 

「お稲荷さんが凄く好きな先輩たちが」

 

そしてほんの小さな声で

 

「・・・先輩たち、今頃何処に・・・」

 

ミヤコは稲荷寿司の入ったパックを1つ手に取り

 

「とりあえず。」

「頂きましょうか。」

 

こうして

おっさんもRABBIT小隊のキャンプへ入ることになった

 

稲荷寿司を食べながら

先生が、ここまでの経緯を話していく

連邦生徒会に支援を申し込んだこと

けれどSRTそのものが危険視されている為直接的な支援は難しいこと

そして、ここへ来る途中立ち売りの少女(ニコ)から聞いた再開発の話

この地域の商店や住民に、企業からの圧力がかかっていること

 

一通り聞き終えたミヤコは

 

「・・・・・・なるほど。」

「連邦生徒会からの支援は期待できず。」

「更には、再開発による企業からのプレッシャーも予想されると。」

「連邦生徒会に関しては最初から当てにしていませんでしたが。」

「思ったより状況が悪いですね。」

 

「前回の大雨で。」

「装備周りも心もとないですし・・・」

 

「せやな。」

 

おっさんは頷く

 

「無線周りの器材の入手先の当てはあるんか?」

 

すると

 

「・・・くひひひ。」

 

モエが笑った

 

「私に良い考えがあるよ」

「補給や、装備についての事なら、私に任せておきなって!」

 

・・・めちゃくちゃ嫌な予感がする

 

「・・・ほんで。」

「どないするつもりなんや?」

 

先生も同じような顔をしている

 

「"・・・もしかして銀行を・・・"」

 

そう言った先生の言葉を聞いておっさんがツッコミを入れる

 

「いや、それはあそこの奴ら(アビドス)がおかしいだけや。」

 

モエもむっとする

 

「そんな頭おかしい発想しないって。」

 

「私の案はね。」

「ズバリ!物々交換!」

「私達が持ってる貴重な物を渡して。」

「その対価として、装備やら設備やらを貰うって訳!」

 

ミヤコが少し考える

 

「私達が持ってる貴重な物と言えば・・・」

 

ミユが恐る恐る口を開く

 

「・・・焼き肉弁当?」

「賞味期限切れてるけど・・・」

 

「そんなの誰も買わないでしょ」

 

モエが呆れる

 

「強いて言えば、あの【所確幸】くらいで。」

「そうじゃなくて!あの大量の錆びたミサイルやら。」

「しけた爆弾やらだよ!」

「水に浸かってダメになったとはいえ。」

「それだけで価値がゼロになった訳じゃない。」

「断腸の思いではあるけど、もっと良い持ち主の所に行った方が良いだろうし。」

 

先生も頷く

 

「"なるほど・・・"」

 

おっさんは腰に差している、元SRTの装備である

8発装填のリボルバーを見る

 

「なんつうか。」

「こうやって正規装備が横流しになるんやろうな。」

 

ミヤコが尋ねる

 

「ですが、買い取ってくれるのでしょうか?」

「元は高価なものとはいえ。」

「ほとんど故障状態か錆びてしまった状態ですが・・・」

 

モエは胸を張った

 

「ま、その辺については任せてよ。」

「伝手があるからさ。」

 

「例えば、そうだなぁ・・・」

「ブラックマーケットで武器を扱う【カイザーインダストリー】。」

「ここには傭兵たちからの中古武器に関する需要が絶えないし。」

「あそこなら、こういう錆びたミサイルとかでも。」

「何かしらの使い道を見出してくれる人いるでしょ。」

 

「その分の代わりとして。」

「カイザーグループのそこそこ良い品質の装備やら設備やらを貰えばいいって訳!」

 

サキがモエを見る

 

「へぇ、モエにしては、真面な発想じゃん。」

 

おっさんはぼそりと呟き

 

「いやそれ・・・業務上横領・・・」

 

先生が苦笑いする

 

「"あはは・・・"」

 

サキがモエを心配したような目で見る

 

「体調はいつも通りか?」

「もしかして、昨日のナポリタン弁当で食あたりとか?」

 

「うるさいなぁ!?」

 

モエが怒鳴る

 

「と、とにかく!」

「営業所に電話してみよう!」

 

モエは自身のスマホを取り出し、そして電話をかける

 

『はい、こちら最高品質の武器をご提供する【カイザーインダストリー】でございます。』

『どういったご用件でしょうか?』

 

そんな声がモエのスマホから漏れ聞こえてくる

 

「やぁやぁ、久しぶり!」

「私だよ、私。前にも色々買わせてもらった。」

「SRT特殊学園の補給担当。」

 

『・・・あ、あの時のVVIPの・・・!?』

『ご無沙汰しております!』

『今回も新しいミサイルがご入用でしょうか?』

『それとも、以前ご購入されたクラスター爆弾にでも、何か問題でも・・・?』

 

「・・・・・・」

 

ミヤコの目が細くなる

 

「・・・モエ。」

「いつそんな買い物をしたのですか?」

 

モエが目を泳がせる

 

「や、その・・・・・・。」

「別に学園のお金じゃないし・・・?」

「あ、あくまで私用の爆弾!」

「自費だから問題なし!」

 

先生が呟く

 

「"私用の爆弾って何・・・"」

 

「と、とにかく!」

 

モエはスマホへ話しかける

 

「今日は買う方じゃなくて、売る方で連絡したの。」

 

『売る方・・・ですか?』

『当店では基本、買い取りの方は・・・』

『とはいえ、何も聞かずに断るわけにもいきませんね。』

『まずはお話をお伺いしてもよろしいでしょうか?』

 

「それがねー」

「実はコンビニでは手に入らないような高級装備が、色々手元にあってさ。」

「誘導式対空ミサイルに。」

「威力調節可能なクラスターグレネード。」

「遠隔操作が可能なタイプの対戦車ロケット・・・」

 

『な、何と・・・それらを売ってくださるのですか?』

 

「うん。まぁ若干さびてたりするんだけど・・・」

「多分大丈夫でしょ。」

 

先生が、キャンプの横に転がったミサイルを見る

錆がそこら中に浮いていた

 

「"・・・若干・・・?"」

 

モエが先生を見て小声で言う

 

「先生、シャラップ!!」

 

『そういった特殊な物でしたら。』

『需要は幾らでもあると思いますし・・・』

『はい、喜んでお受けいたしましょう。』

 

『ちなみに代金については、以前と同じ口座に振り込みでよろしいでしょうか?』

 

「あー、実はちょっとその口座使えなくなってて・・・」

「代金の代わりに、現物でって言うのはどう?」

 

『現物・・・・・・と言いますと?』

 

「ちょっと安い奴でいいからさ。」

「通信設備と爆発物が欲しいんだよね。」

「気化爆弾とか、テルミットとか・・・はぁ、はぁ・・・!

 

『じ、実は大変申し訳ないのですが・・・』

『ただいま、武器の在庫が切れておりまして・・・』

 

「・・・え?」

 

モエが固まる

 

「いつもあんだけあるのに?」

「全部?」

 

『はい・・・実は先日、匿名のお客様が』

『銃器も爆発物も、全てお買い上げされまして・・・』

 

「・・・・・・」

 

モエの顔が引き攣る

 

「なっ・・・キヴォトスで戦争でもするつもり?」

「誰がそんな大量に・・・」

 

『それは、流石にお答えできないのですが・・・』

『すみません。これは顧客の方々の秘密事項となりますので・・・』

 

「ま、まぁ。それはそうか・・・」

 

『それでは大変残念ですが。』

『今回のお取引は無かった事に・・・』

『また何かありましたら、いつでもご連絡ください!』

 

プツッという音と共に電話が切れた

 

「・・・・・・」

 

モエが片手で頭を押さえ

 

「な、なんだその意味分からない状況・・・」

「っていうか。当てが外れた・・・」

 

その瞬間

サキ、ミヤコ、そしてミユから

鋭い視線がモエへ突き刺さる

 

「・・・・・・」

 

モエがゆっくりと視線を逸らす

 

サキが腕を組む

 

「ところでモエ。」

「お前いつの間にカイザーインダストリーのVVIPになったんだ?」

 

「・・・・・・」

 

ミヤコも続ける

 

「そういえば、色々と細かい計算が合わない事がありましたが。」

「まさか・・・」

 

「・・・・・・」

 

ミユが半泣きで呟く

 

「モエちゃん・・・横領罪で逮捕・・・?」

 

「・・・・・・」

 

おっさんは、ぼそりと

 

「お前らの装備、全部横領やん・・・」

 

ゴスッ

 

「ウッ」

 

先生の肘がおっさんの横腹に入る

 

「"アンラさん!"」

 

「なんや!」

 

「"今それ言います!?"」

 

「事実やろ!」

 

「"言い方があります!"」

 

モエが焦ったように手を振る

 

「そ、それは今話す事じゃなくない!?」

「取り敢えず今は補給の方が大事で・・・・・・!」

「ま、まぁカイザーだけが伝手じゃないから!」

「中古オークションとかだって幾らでも買い手はいる筈!」

 

サキが胡乱げな眼差しを向ける

 

「こういうのを態々オークションで買う奴なんかいるのか?」

 

「いる!」

 

モエが即答する

 

「舐めるな!最近のオークションでは武器や弾薬はもちろん。」

「ハッキング機器や若返りの薬なんかの怪しいのから。」

「ちょっとした野菜まで、何だって手に入る場所なんだぞ!」

 

「・・・・・・」

 

モエは得意げに続ける

 

「きっと今すぐにでも。」

「爆弾を買わせてくださいってメッセージが――――」

 

ポンッ

 

その瞬間キャンプの中に、スマホの通知音が響いた

 

「「「・・・・・・」」」

 

全員の視線が一斉に音のした方向へ向く

モエの手の中でスマホの画面が、明るく光っている

 

「・・・・・・」

 

モエが恐る恐る画面を確認する

 

「・・・うわ、ほんとに来た・・・・・・」

 




うっつらうっつらしながら書き上げました!

とりあえず本文解説!

まず、カイザーが土地を買って、再開発をしようとしている件ですが、
アンラ、というより祈願屋と結んだ条項のせいで、
本社の主力を表立って使用出来なくなっています。
あの会社はほぼ常に後ろぐらい事をしているので、下手に動かすとそのまま条項違反で、
アビドスの設備全てを祈願屋に持って行かれるので、
現在ダミー会社をフルに使用して条項を迂回させながら細々とやっています。

そして、アンラがニコにコーヒー好きな人(カヤ)と余った分は友人たち(Fox小隊)で飲んだらええと喧嘩をふっかけた件ですが、なんでアンラがこんなに原作から外れるムーブをしているのか、と言う事ですが、
ぶっちゃけエデン条約3章の時に先生が腹を撃たれた時に観測した修正力を見てから、
かなり無茶をしても世界から結局修正されるという事が分かってしまったからですね。
修正力をねじ伏せるには、アンラでもかなり本気で取り掛からないと厳しいんですよね。
なので、ちょっとカヤに嫌がらせをという細やかなストレス発散ですね。

ちなみに作者はカヤ推しです。
最初の方でカヤを爆破しようとしていましたが、カヤ推しです。
推しだからこそ爆破させたくなるんですよね・・・フフフ

ちなみに手渡したコーヒー豆は、
現実の物で言うならトップロットの
エスメラルダ・ゲイシャ・ウォッシュドクラスの物を手渡して渡しています。
なので、Fox小隊は結構いいコーヒーくれたんだ。と言う事は分かるでしょうが、
トップロットのナンバー入りの一品なんぞ本当に好きな人にしか分からないので、
カヤに手渡されて初めて、何を渡されたのか理解する感じで仕掛けています。

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