おっさんキヴォトスに行く   作:無い頭のおっさん

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先生とアンラ視点、
そしてホシノ視点以外で初めてメインの視点で別の人物書くかな!

とりあえず今日中にもう一本書けたよ!



うさぎとクローバー

【DU地区・ヴァルキューレ警察学校】

 

――同日深夜

 

静まり返った廊下を、私は慎重に進んでいた

足音は、できる限り殺している

 

暗い、けれど、見えないわけではない

 

前方、左右、背後

すべてを意識しながら、私は通信機へ口を寄せた

 

「RABBIT1。現在時刻は2330。」

「ポイントEに到着しました。」

「哨兵は無し。向かい側の廊下に、監視カメラらしき機器を多数確認。」

 

すぐに、耳元へモエの声が返ってくる

 

『こちらキャンプRABBIT。』

『その監視カメラについては、もうハッキング済みだから気にしないでOK~。』

『画面で見た感じ、近くに警備員は無し。安心してポイントSまで行っちゃって。』

 

隣を歩いていたミユが、ぽつりと呟いた

 

「モエちゃん、相変わらず早い・・・」

 

『くひひ。この程度のセキュリティ如き朝飯前よ。』

『・・・って、調子に乗ったところ悪いんだけど。』

 

少しだけ、モエの声が真面目になる

 

『ハッキングは30分しか持たなそう。』

『30分間隔で乱数コードが生成されるっぽくて、この回路はちょいとキツイかな。』

『だから、ミッションは30分以内によろしく。』

『ソースコードの特徴的に、まーたあのヴェリタスの副部長かなー・・・まったく鬱陶しい。』

 

「了解です。」

 

すると、反対側を警戒していたサキが口を開いた

 

「仮にもヴァルキューレの本館なのに、警備が居ないってのはどうなんだ?」

 

『大丈夫だっての。信じてよ!』

 

「モエに言ったんじゃない。」

 

サキは呆れたように息を吐いた

 

「ヴァルキューレの方に対してだ」

「・・・今は敵ながら呆れたもんだ」

「これだからヴァルキューレには行きたくないんだっての。」

 

『まぁ、とにかく。』

 

モエが話を戻した

 

『クローバーが保管されてるポイントSは地下3階』

『一応、通行量が少ない西側の階段を使って』

『・・・繰り返しになるけど、リミットは30分だから』

『それまでによろしく。』

 

「RABBIT1、了解です。」

 

私は短く返し、再び前方へ意識を戻した

その時ミユが少しだけ不安そうに尋ねてきた。

 

「と、ところで・・・先生と、あのローブの人は・・・?」

 

「・・・あのローブの人物は、そもそも今回は動くつもりが無いらしいです。」

 

私は小さく息を吐く

 

「先生に関しては、前回と違って侵入経路が厳しいので、先生には無理です。」

「話し合いの結果、無理矢理置いてきました。」

「それに、万が一見つかった場合は・・・銃撃戦になるかもしれませんから。」

 

『役に立たなくてごめんね。』

 

近くに待機している先生の声が通信へ入った

 

『近くには居るから、何かあったら言ってね。』

 

すると、そのすぐ後ろから、あの人の声がした

 

『おー、頑張れよ。』

 

いつもの軽い声

けれど、その言葉の中には、妙な重みがあった

 

『何事も計画通りに進む訳やない。』

『イレギュラーは必ず起きる。』

『そこだけ肝に銘じとけよ。』

 

『ま、おっさんからのアドバイスはそれだけやわ。』

 

「・・・・・・」

 

一瞬、胸の奥に引っ掛かったものがあった

 

イレギュラー

 

その言葉を、私は頭の中で繰り返した

 

「はぁ・・・まぁ、ある意味いつも通りのメンバーだ。」

 

サキが肩を竦める

ミユも困ったように笑った

 

「そ、それはどうだね・・・」

 

「・・・はい」

 

私は小さく息を吐いた

 

「私達、だけで・・・」

 

「ミヤコ」

 

サキの声が飛んでくる

 

「何だ、その表情は、問題でもあるのか?」

 

「い、いえ。」

 

私は首を振った

 

「作戦のことを考えていただけです。」

 

そして、無線を切り替える

 

「では、警戒しながらポイントSまで移動!」

 

3人で動き出した

 

私、サキ、ミユ

 

互いの視界を補いながら、無音で廊下を進み

階段を下りる

 

1階、2階

そして、地下3階へと到着する

 

前情報通り、廊下には人の気配がない

 

そのまま慎重に進んでいくと

目的の保管庫は、驚くほどあっさりと見つかった

 

「・・・ここです。」

 

目の前にあるのは、巨大な金庫扉

 

ミユが小さく呟く

 

「この部屋に、ヴァルキューレの文書が全部・・・。」

 

「頑丈な扉ですね。」

 

私は扉を見上げる

 

「犯罪に関わる証拠なども、全てあるでしょうし。当然ではありますが。」

 

サキが周囲を見回した

 

「その割には、やっぱり警備とか全然居ないけどな。」

「まぁ、楽なのは良い事だけど。」

 

それから、扉を指差す

 

「・・・って言うか。これ、何を待ってるんだ?」

「さっさと中に入らないのか?」

 

「この扉、電子式なんです。」

「今、モエが一生懸命解除してるみたいで・・・。」

 

「・・・おい。」

 

サキの顔が露骨に引きつった

 

「まさか、その時間って30分にカウントされる訳じゃないよな・・・?」

 

『急かさないでっての!』

 

モエの声が返る

 

『私だって今急いでるんだから!』

 

「ちっ」

 

サキが舌打ちする

 

「普通に扉をぶち抜くんじゃダメか?」

 

『それ、1m以上の厚さがあるんだよ?』

 

モエが呆れた声を出す

 

『やれるもんなら、やってみれば?』

『それで警報とか鳴っても、責任取らないけど。』

 

『あー、分かった。これデコードしたら・・・』

 

一瞬の沈黙

 

『よし!クリア!』

 

直後

 

――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 

凄まじい駆動音と共に、厚さ1mを超える鉄の扉がゆっくりと開いていく

 

サキがぽつりと言った

 

「・・・3分か、結構かかったな。」

 

『これでも相当速いんだけど!?』

『この難しさ、分かってて言ってる!?』

 

「今は喧嘩をしている場合ではありません。」

 

私は2人へ釘を刺した

 

「もうあまり時間もありません。」

「急いで、クローバーを探しましょう。」

 

「じゃあ、私は右の本棚から。」

 

サキが中へ入っていく

 

私も反対側へ回る

 

ミユはその後をついてきた

 

「うぅ・・・暗い・・・」

 

巨大な保管庫の内部には、無数の棚が並んでいる

 

書類、記録媒体、保存ケース

 

まるで、ヴァルキューレという組織そのものを詰め込んだような場所だった

その中を、私達は急いで探していく

 

「えーっと・・・公安局、公安局・・・」

 

サキの声が響く

 

「オクトパス建設・・・」

 

「記録は一週間前・・・」

 

そして

 

「あった!」

 

サキが、茶色のフォルダーを引き抜いた

 

「ナイスです、サキ」

 

私は駆け寄る

 

「見せてもらえますか?」

 

フォルダーを受け取り

中に収められていた書類へ、素早く目を通していく

 

「・・・・・・なるほど」

 

やはり、間違いない

 

「こちらRABBIT1。」

 

私は通信機へ話しかける

 

「キャンプRABBIT。クローバーを確保しました。」

 

『どう?』

 

「先生が言っていた通りです。」

 

私は書類を確認しながら続ける

 

「やはり、再開発の件が間に挟まっていたようです。」

 

『そっか。やっぱり・・・』

 

先生の声が返る

 

『とりあえず、皆お疲れ様。』

 

「この資料さえあれば。」

 

私はフォルダーを胸元へ抱える

 

「公安局の動きを、止められそうです。」

 

サキが、にやりと笑った

 

「これで、あいつらに一泡吹かせられるな。」

 

――その時だった

 

ガチャン

 

「・・・?」

 

振り返る

 

大きな音

 

そして目の前に立っていたのは、ミユだった

 

「ん?」

 

サキが首を傾げる

 

「何してるんだ、ミユ?」

 

「と、扉・・・。」

 

ミユの顔が、見る見る青ざめていく

 

「閉めちゃって・・・」

 

「・・・・・・」

 

サキが固まった

 

「・・・閉めたなら、開ければいいだろ。」

 

「で、でも・・・」

 

ミユが扉を指差す

 

「この扉・・・ドアノブとか無いタイプで・・・」

 

「開けられない、かも・・・」

 

「・・・・・・」

 

数秒

 

「はぁぁっ!?!?」

 

サキが絶叫した

 

次の瞬間には、もう扉へ駆け寄っている

 

「くっ・・・!ぐぅぅっ・・・!!」

 

突起部分を掴み、力任せに押し開けようとする

 

けれどビクともしない

 

「・・・ダメだ」

 

サキが歯を食いしばる

 

「開く気がしない。」

 

その時、通信機からモエの声が入った。

 

『で、証拠も確保したのに何やってる訳?』

『もう時間ないけど、さっさと出たら?』

 

「聞こえてなかったのか?」

 

サキが叫ぶ

 

「扉が開かないんだよ!」

 

『・・・は?』

 

モエの声が止まった

 

『そもそも、どうして閉めたのさ?』

『金庫の扉なんか、普通オートロックに決まってるじゃん!』

 

「だ、だって・・・」

 

ミユの声が震える

 

「開けておいたら・・・誰かに見つかっちゃうかなって・・・」

 

『私がその辺はちゃんと見てるってのに・・・。』

『なーんで、そこで不安がるかなぁ?』

 

「ご、ごめんなさい・・・」

 

サキが頭を抱える

 

「せめて、ドアストッパー的なものでも挟んでおけばよかったものを・・・」

 

「うぅ・・・」

 

ミユの目に涙が滲む

 

「ううう・・・・・・」

 

そして

 

「やっぱり私なんかが、SRTに入るべきじゃなかったんだ・・・」

 

「怖がってばかりで、皆の足を引っ張って・・・」

 

「私なんか・・・生まれて来なければ・・・」

 

「ミユ」

 

私は強く名前を呼んだ

 

「そんな事を言わないでください。」

「狙撃手が屋内行動に慣れていないのは仕方ありません。」

 

私は自分へ言い聞かせるように続ける

 

「むしろ、それを考慮できていなかった私の落ち度です。」

 

サキが、じっとミユを見る

 

「・・・・・・本当にそうか?」

「誤魔化すなよ。」

「ミユのミスには違いないだろ。」

 

「サキ・・・」

 

『誰のせいとか言ってる場合じゃないでしょ。』

 

モエの声が飛ぶ

 

『リミットも近いんだよ?』

 

「っていうか、さっきみたいにハッキングすれば良い話じゃ?」

 

『電子ロックを外しただけじゃ意味ないでしょ。』

 

『物理的に扉が開かないんだから。』

 

ミユの声が震える

 

「うぅ・・・」

「死にたい・・・逃げたい・・・」

 

「み、みんな」

 

私は咄嗟に声を上げた。

 

「まずは、落ち着いて・・・」

 

『ミヤコ。』

 

モエの声

 

『何かいい方法ないの?』

『もう5分も残ってないよ?』

 

「・・・・・・」

 

サキが私を見る

 

「仮にも小隊長なんだろ。」

 

ミユも

 

「ミヤコちゃん・・・」

 

「私は・・・」

 

言葉が出ない

頭の中が真っ白になっていく

 

何をすればいい?

 

どうすれば、この状況を覆せる?

 

――思えば、SRTを離れて以来

私が指揮をした作戦は、全部失敗している

公園の時も、キャンプが浸水した時も

今回だって

 

「・・・・・・」

 

私は奥歯を噛み締めた

 

私には先生のような戦略眼もない、統率力もない

あのローブの大人のような、突出した力もない

 

この絶体絶命の状況で

私に、一体何が――

 

『ミヤコ。』

 

「・・・先生」

 

『落ち着いて。まだ終わってないよ。』

 

「この状況・・・」

 

私は声を絞り出した

 

「私には、どうにも出来ません。」

「先生がここに居たら・・・どうにか出来たかもしれませんが・・・」

「私は、先生とは・・・違います」

 

「そんな力はありません・・・」

 

胸が苦しい

 

「例えあったとしても、今はもう何も分からないんです・・・!!!」

「私だけじゃ、何も出来ません!!」

「私は・・・私自身を、信じられない・・・!!!」

 

通信の向こうから

先生の声が返ってくる

 

『全部を一人で背負わなくても大丈夫。』

『皆の事を信じてあげて。』

 

「・・・?」

 

私は顔を上げ、そして周囲を見る

 

サキ、ミユ

 

通信の向こうにいるモエ

 

「・・・・・・」

 

サキが口を開く

 

「お前がやるんだろ。」

「教範にこんなシチュエーション、載ってないんだから。」

「私には無理だ。」

 

ミユも続ける

 

「任務はいつも、怖い事ばかりだけど・・・」

「でも、ミヤコちゃんがいるから・・・」

 

そして、モエ

 

「っていうか、私にはもう何も出来ないし」

「オペレーションだけで手一杯。」

 

三人が、声を揃える

 

「「「だから・・・」」」

 

そして

 

『よろしく、ミヤコ。』

 

「・・・・・・」

 

先生に、良いところを取られたと言うような

2人とも驚いた顔になる

 

その直後

先生のすぐ後ろから、あの人の声が聞こえてきた

 

『うっわ、先生。それはないわ・・・』

 

思わず、少しだけ笑いそうになった

 

『まぁ、ミヤコ。』

『行きしなに言ったやろ。』

『計画ってのは、基本その通りには行かん。』

『せやから、イレギュラーなんぞ起こって当たり前なんや。』

『つまり、イレギュラーをその場でどれだけうまく乗り越えるか、や。』

『まぁ、頑張れや。』

 

「・・・・・・」

 

不思議だった

さっきまで胸を押し潰していた重さが

ふっと、消えた気がした

私は、静かに息を吐いた

 

そして、自分でも分かるくらい、柔らかく笑った

 

「・・・・・・はい。」

「了解です。」

 

私は通信機へ向き直る

 

「改めて、作戦を開始します。」

「この先、指示に気になる点も出てくるかもしれません。」

「ですが、どうか迷わず従ってください。」

 

私はフォルダーを抱き直した

 

「状況は良くありません。」

「この先、いくつもの困難があるでしょう。」

 

それでも

 

「それでも・・・」

 

私は2人を見る

 

「どうにか、このクローバーを持って」

「私達の居場所に戻りましょう。」

 

「良いですね?」

 

「「『了解!』」」

 

 

 

 

――それから、五分後

 

保管庫の外から

けたたましい警報が響き始めた

ヴァルキューレ全体が騒がしくなっていく

 

やがて

 

保管庫の警報を聞きつけた生徒が、扉を開いた

 

「猫ちゃーん、出ておいでー・・・」

「ネズミはちょっとあれだけど~・・・」

 

扉を開いたヴァルキューレ生は

その横で待機していたサキを見た

 

「・・・え?」

 

次の瞬間

 

ゴッ

 

サキの拳がヴァルキューレ生を打ち抜き、そのまま昏倒させる

 

「異変が生じた時は、最悪の場合を想定するのが基本。」

 

サキが冷たく呟く

 

「そんな心構えだから、キヴォトスにトラブルが絶えないんだ。」

 

扉の外から別の声が飛んだ

 

「し、侵入者だ!!!」

 

銃口がこちらへ向く

 

その瞬間

 

――ダァンッ!!

 

奥に隠れていたミユが撃ち抜く

金庫の前に居たヴァルキューレ生も昏倒する

 

「今です!」

 

私は叫び、金庫から飛び出し、

サキとミユも続く

 

「わざと警報器を鳴らすとか・・・」

 

サキが走りながら笑う

 

「教範には無い、ミヤコらしい戦略だな。」

「向こうに扉を開けさせるわけか」

 

そして

 

少しだけ遠い目をしながら呟いた

 

「にしても、一緒にキヴォトスの治安を担う部隊が、この練度とか・・・」

「幸いなような、落ち込むような・・・」

 

ミユが不安そうに周囲を見る

 

「こ、これ・・・本当に大丈夫・・・?」

「警報、ずっと鳴ってるけど・・・」

 

「はい。」

 

私は前を見る

 

「他の生徒達も次々と集まってくるでしょう。」

「視界が開けた所では遭遇しないように」

「基本的に接敵する際はこちら側から」

「意表を突く形で。」

 

私は周囲を確認する

 

「その為にも、遮蔽物の多い東側の廊下を使いましょう。」

「待ち伏せに注意しつつ、ORPまで移動します!」

 

「「了解!」」

 

3人で走る

 

東側の廊下を

物陰、柱、壁等の遮蔽物を使いながら進んでいく

 

次々と現れるヴァルキューレ生を

正面から撃ち合わず、

意表を突き、奇襲する形で後ろから口を押え首を絞め、

1人ずつ確実に処理していく

 

「T3、ダウン!」

 

サキが叫ぶ

 

「確認しました。」

 

私は即座に指示を飛ばす

 

「RABBIT2は次の遮蔽物まで前進を!」

 

「了解!!」

 

「RABBIT4は5秒間、現在地で!」

 

ミユが頷く

 

「・・・・・・」

 

私は時計を見る

 

「3・・・」

 

「2・・・」

 

「1・・・」

 

「サキ、今です!」

「フォックストロット投下!!」

 

「了解!」

 

サキが閃光弾を放り込む

 

「閃光弾、いくぞっ!!」

 

――閃光

 

廊下に出て来たばかりのヴァルキュール生が

唐突に足元に転がってきた閃光を直視する

 

ヴァルキュール生が怯んだ隙を逃さず

 

ダダダダダダダッッ!!

 

私とサキで制圧する

 

「RABBIT4、5時の方向にスナイパーです!」

 

「か、了解・・・!」

 

「ごめん、その前にリロードする・・・!」

 

「了解です」

 

私は即答した

 

「サキ、援護射撃を!」

 

「任せろ!!」

 

それから

 

私達は数の不利を物ともせず

遮蔽物と奇襲を駆使しながら、ひたすら前へ進んだ

 

 

 

 

 

 

【七篠アンラ視点】

 

【DU地区・ヴァルキューレ警察学校付近のビル】

 

おっさんは、近くのビルの屋上からヴァルキューレ警察学校を眺めていた

 

「おーおー・・・」

 

遠くからでも分かるくらい派手にやっとるな

 

「外からでも爆発音と銃声が聞こえるわ。」

 

隣では、先生が黙って学校を見ていた

 

「"・・・アンラさん"」

 

「おん?」

 

先生がこちらを見る

 

「"これも、アンラさんの知識通りの流れなんですか?"」

 

「・・・・・・せやから」

 

言いかけたところで、先生が首を振った

 

「"いえ、分かってます。"」

「"私が自分でたどり着かないといけない、という事は。"」

 

「"でも。"」

 

先生は、もう一度学校を見る

 

「"アンラさんは、わざわざイレギュラーが起こるかもしれないって言ってましたよね?"」

 

「・・・・・・」

 

「"最初はミヤコ達に当たりが強かったのに。"」

 

そこで、先生が小さく笑った

 

「"やっぱり優しいですよね・・・"」

 

「・・・・・・」

 

おっさんは、先生から視線を逸らし

 

「先生の気のせいやろ・・・」

 

「"・・・ふふ"」

「"そうですね"」

 

2人で、もう一度学校を見る

 

爆発音、銃声、警報と騒がしい

 

それでも、少しずつ

RABBITは前へ進んどる

 

そして

 

「"あ。"」

 

学校の屋上

その扉が開いた

 

「出てきおったな。」

 

ミヤコ達が、屋上へ飛び出してくる

おっさんは、静かに息を吐いた

 

――ここから先

 

ようやく、本番や

 

 

 

 

 

【ミヤコ視点】

 

【DU地区・ヴァルキューレ警察学校・屋上】

 

「こちらRABBIT1」

 

私は通信機へ声を入れた

 

「現在時刻0100」

「たった今ORPに到着しました。」

「キャンプRABBIT、航空支援はまだですか?」

 

『ごめん!』

 

モエの声が返る

 

『ポイントが変わって色々遅くなった!』

『その代わり、先生が足を用意してくれるらしい!』

 

「先生が?」

 

その時

別の声が通信へ割り込んできた

 

『先生ってか、おっさんやけどな。』

 

「・・・」

 

またこの人か

 

『まぁ、迎えは任せろ。』

『すぐ向かうさかい。ちょっとだけ待っとけ。』

 

「・・・了解です。」

 

私は周囲を見回す

 

「RABBIT2、バリケードの設置をお願いします。」

「屋上への通路を封鎖しておきましょう。」

 

「もうやっておいた。」

 

サキが答える

 

「念のため、階段の所に地雷も撒いておいたけど・・・」

 

その言葉が終わるより先に

 

――ドォンッ!!

 

遠くから爆発音が鳴り響く

 

「・・・早かったな。」

 

「も、もう扉のところまで・・・!?」

 

ミユが青ざめる

 

「これ、もうあまりもたないんじゃ・・・」

 

モエがくひひと笑った

 

『追い詰められた屋上』

『閉ざされた扉』

『その扉を叩く人々。』

『そして中々来ない迎え・・・』

『先週見たゾンビ映画と一緒だ、くひひ。』

 

サキが眉を顰める

 

「・・・一応聞くけど」

「それ、どんな結末だった?」

 

「ヘリにぶら下がったゾンビのせいで、墜落して全滅。」

 

「聞いた私がバカだった!!」

 

ミユが慌てて口を挟む

 

「で、でも・・・」

「ここにゾンビはいないから・・・」

 

――その時

 

屋上に私達以外の声が響いた

 

「・・・またしても貴様らか」

 

「ひっ・・・!」

 

ミユが固まる

 

「ぞ、ゾンビ!?」

 

「誰がゾンビだ。」

 

屋上の外壁

 

そこから、ひょいと人影が現れる

 

「せめて公安局長と呼べ。」

 

「・・・・・・。」

 

ヴァルキューレ警察学校公安局長

 

カンナ

 

しかも

 

その手には

 

コーヒーカップが握られていた

 

「・・・え?」

 

「扉が開いてないのに、どうやってここまで?」

 

サキが呆然と呟いた。

 

「建物の外壁をよじ登ってきた。」

 

「マジかよ。」

「10階建て超えてるぞ、ここ・・・。」

「なんつー無茶を・・・。」

 

「そんな訓練、ヴァルキューレには無いだろうに。」

「ハーネスも無しで?」

 

カンナはコーヒーを一口飲み

 

「犯罪者を捕まえるためなら、公安局は何でもする。」

「まさか、ヴァルキューレに潜入しておいて、大人しく帰れるとは思っていないだろうな?」

 

そう言って拳銃を抜き

銃口が、私達へ向いた

 

「貴様らは既に包囲されたも同然。」

「無駄な抵抗は辞めろ。」

 

「・・・」

 

私は、カンナを見つめた

 

カンナが眉間に皺を作りながら言う

 

「あんな目に遭ったばっかりで、全く懲りないとは。」

「気は確かか?」

 

「今のキヴォトスは、貴様らを必要としていない。」

「無駄な抵抗をして、迷惑をかけ続けるのは辞めろ。」

「こんな犯罪紛いの事をして、今度こそ連邦生徒会から学籍データを抹消させられても――」

 

「公安局長。」

 

私は、フォルダーを取り出した

 

「そちらの犯罪については、いかがお考えですか?」

 

カンナの目が止まる

 

私はフォルダーを開く

 

「公安局の取引記録を発見しました。」

「子うさぎタウンの再開発の為、浮浪者達を追い出す。」

「その代わりに、カイザーとの間で違法リベートが発生していた。」

 

「・・・ですよね?」

 

「・・・・・・」

 

カンナが黙る

 

「なるほど。」

「それを見つける為に忍び込んだのか。」

 

「はい。」

 

私は真っ直ぐに公安局長を見る

 

「キヴォトスの治安を担当するヴァルキューレ警察学校が、私企業との取引において犯罪行為に手を染める。」

「これは、確実に問題かと思われます。」

 

「連邦生徒会が定めた、公的な規則に従わない処理。」

「これはヴァルキューレ警察学校の理念に反する、重大な犯罪です!」

 

カンナは、しばらく黙っていた

 

そして

 

「はぁ・・・」

 

大きく息を吐く

 

「本当に言いたい放題だな、貴様たちは・・・」

「公的な規則・・・そうだな。」

「貴様の言う通り。」

「ヴァルキューレは公的な規則に従い、公正であるべきだろう。」

 

声が少しずつ強くなる

 

「・・・しかし」

「世の中は、貴様らが思う程公正ではない。」

「SRTだった貴様らには特権がある。」

「そしてその上で、正義を論じている間に。」

「私達が何をしていたか知っているか?」

 

「汚い現場で。」

「どれだけ妥協に塗れながら、公務を処理していた事か!」

 

「それが社会だ!」

 

「それが現実だ!」

 

「手を汚さずに、正義を掲げ続ける事など出来ない!」

「貴様らのようなガキに、それが分かるか!」

 

「その判断をせざるを得なかった、この気持ちが!!」

 

その時だった

 

「"カンナ。"」

 

聞き覚えのある声が響いた

 

カンナが振り返ると

そこには、先生

そして、あのローブ姿の人物

アンラが立っていた

 

「な・・・先生。」

「アンラさん、貴方も・・・」

 

先生は静かに話す

 

「"信念を貫くのは、大変かもしれない。"」

「"でもね。最終的に、自分の未来は、自分で判断し続けていくものだよ。"」

 

カンナの表情が歪む

 

「それでも・・・自分の信念だけに従っていたら、私は全てを失ってしまう・・・!」

「こんな中途半端な立ち位置で!」

「私には、何も出来ない!」

 

先生は、私達を見る

 

「"RABBIT小隊の皆は"」

「"ほぼゼロからのスタートだったよ。"」

 

カンナが黙る

 

「"大丈夫。"」

「"状況は大変だろうし、辛いだろうけど。」

「"それでも、自分の進む道は、自分で決められるよ。"」

 

「・・・・・・」

 

サキが鼻を鳴らす

 

「ふぅん、真っ当な事言うじゃん。」

 

それから

 

「でも、そうだな。」

「最後は自分で決めていくものだ。」

 

ミユも続く

 

「ずっと不安で・・・」

「怖かったけど・・・」

 

モエが肩を竦める

 

『ま、自分達で決めた事だからね。』

 

「・・・ありがとうございます、先生。」

 

「公安局長。」

 

私は公安局長の目を真っ直ぐ見つめる

 

「きっと。」

「あなたが言う正義も、間違っていないのでしょう。」

 

「ただ、私達とは違う正義だと言うだけで。」

 

「ですが・・・」

 

私はフォルダーを握り締める

 

「その根っこを、誰かのせいにし続けていては」

「いつか、その正義は色あせてしまうと思います。」

 

「どんな判断をし続けてきたのか。」

「それがきっと・・・私達と、あなたの違いです。」

 

「・・・・・・」

 

カンナは何も言わない

 

その時、ローブのあの人が一歩前へ出た

 

「ま、色々偉そうな事言っとるけど」

「こいつらも結局、まだまだひよっこやし。」

「おっさんからしたら、カンナ、お前さんもひよっこや。」

 

カンナが、少しだけ眉を動かした

 

「それでも。」

「あの公園の時に、おっさんに向けて言外なメッセージを残すくらいには」

「お前の中の正義は、まだ腐ってないんやろ?」

 

そして

 

「まぁ、気張れよ。」

 

その言葉の直後だった

 

「え?」

 

身体が浮いた

 

「――え?」

 

次の瞬間

 

私は、脇を抱えられていた

 

「ちょ、え?、は?!?」

 

サキ、ミユ、

そして先生まで

 

「いや待て待て待て!?」

 

「何で!?」

 

「"ちょっ・・・!"」

 

次の瞬間

 

屋上から飛び上がった

 

「うわあああああああああっ!?」

 

「きゃああああああっ!!」

 

「"ちょっ、ちょっと待ってくださいぃぃぃぃ!!"」

 

耳元を風が切り裂く

雲が一瞬で後方へ流れていく

 

「せ、先生ぇぇぇぇ!?」

 

「もう無理ぃぃぃぃ!!」

 

「"アンラさん!!後で覚えておいてくださいよ!!!!"」

 

最後に見えたのは

屋上に一人残されたカンナの姿だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【DU地区・子うさぎ公園】

 

数分後

 

モエが居る子うさぎ公園のキャンプまで戻ってきていた

 

 

「・・・・・・」

 

足元へ地面が戻ってきた

 

「・・・・・・」

 

私は、地面を確認する

 

無事、生きている

 

・・・一応

 

「何なんですか、あれは・・・」

 

先生がアンラへ噛み付いている

 

「"アンラさん!"」

「"空を単身で!"」

「"しかも、あんな速度で!"」

「"私、何度も言ってますけど!"」

「"これ私は普通に死にますからね!?"」

 

サキも続く

 

「無茶にも程があるだろ!」

「お前は、もう少し普通に移動しろ!」

 

ミユも涙目だ

 

「わ、私も・・・もう無理です・・・」

 

一通り言い終えるまで、この人は何も言わなかった

 

やがて

 

ようやく落ち着く

 

私は大きく息を吐いた

 

「はぁ・・・負傷者無し、離脱者無し。」

「クローバーも、無事確保。」

 

私は背筋を伸ばした

 

「作戦を終了します。」

「皆さん、お疲れ様でした。」

 

「"お疲れ様。"」

 

先生が微笑む

 

「"皆、無事でよかったよ。"」

 

あの人も

 

「お疲れさん」

 

「・・・・・・」

 

私は鋭い視線を向けた

 

「・・・・・・。」

 

あの人は私の視線を受けては目を逸らし口笛を吹いていた

全く反省していない

 

その横でサキがその場へ座り込んだ

 

「いや、マジで疲れた、特に最後。」

「もう、本当に倒れそう・・・」

 

「私も・・・」

 

ミユがふらふらと呟く

 

「もう・・・」

 

そのまま

 

ばたり

 

サキが倒れたミユに声をかける

 

「ミユ、いくら何でも、装備くらい外せ・・・」

「あと作戦報告書と、洗顔と。」

「歯磨きと・・・それから、えっと・・・」

「・・・・・・あーもう無理。」

 

そしてサキまで、倒れ込んだ

モエ背を伸ばし

 

「はぁー・・・疲れた・・・。」

「私も、なんか眠くなってきた。」

「とりあえず通信機器の電源だけ落として・・・。」

 

ぷつ

 

そんな音共に、通信機の電源が落ちる

そのままモエも倒れた

 

私は倒れた3人を見て

 

「・・・・・・」

 

小さく笑った

 

「みんな、頑張りましたもんね。」

 

それから先生へ向かう

 

「では、お伝えしていた通り。」

「クローバーは、先生にお渡しします。」

 

私はフォルダーを差し出した

 

「事件の黒幕は分かりませんでした。」

「ですが・・・公安局長が取り込まれた程です。」

「相当、頭の回る方が居る気がします。」

「大人の世界の事は、まだ分かりませんが。」

 

私は、眠る3人を見る

 

「まだ子供である私達に出来る事は。」

 

「一旦、ここまでです。」

「先生、後はお願いします。」

 

先生はフォルダーを受け取り

 

「うん。任せて。」

「この情報は、絶対に有効活用するから。」

 

その後、私達は、3人をテントの中へ運んだ

 

先生とあの人が眠った3人を抱えて運ぶ姿を見ながら

私は、ようやく終わったのだと実感する

 

けれど

 

まだ

 

この先には何かある

 

そんな予感だけは、消えなかった

 

 

 

 

 

 

【七篠アンラ視点】

 

【DU地区・シャーレ近辺】

 

――帰り道

 

ミヤコ達を子うさぎ公園まで送り届けて

3人をテントへ放り込んでから、先生と二人でシャーレへ向かって歩いとった

 

夜のDU地区は、昼間に比べて静かや

さっきまでヴァルキューレ警察学校であれだけドンパチやっとったのが、嘘みたいやなぁ・・・

 

まぁあれだけ派手にやったんや

明日には、それなりに話題になるやろ

先生も、そんな事を考えとるんか

しばらく無言で歩いとったけど

 

やがて

 

「"アンラさん。"」

 

先生が口を開いた

 

「おん?」

 

「""カンナを抱き込んだ人物って、調べられますか?"」

 

「そら調べられるってか」

 

おっさんは苦笑する

 

「先生、分かってて聞いとると思うけど」

「そもそも知っとるしな。」

 

「"まぁ、そうですよね。"」

 

先生も、特に驚いた様子はない

 

まぁ、そうなるわな

今さらおっさんに【調べてみないと分からんなぁ】なんて白々しい事を言う意味もあらへん

 

それに

 

「ま、そない心配せんでもええで。」

 

おっさんは前を向いたまま続ける

 

「この後、先生がやろうとしとる方法で、ミヤコ達からはひとまず手が引かれるからな。」

「安心したらええ。」

 

「それに、その黒幕にも。」

「ちょーっとだけ、おもろい嫌がらせ送っといたさかい。」

 

先生の足が

ほんの少しだけ止まった

 

「もうちょいしたら」

「薄目をかっぴらげて、冷や汗流す事になると思うで。」

 

「"・・・・・・"」

 

なんとも言えん顔をしとる

 

まぁそらそうか

先生も、おっさんがこういう時にロクでもない事をしとるのは分かっとるんやろ

 

「"・・・・・・何をしたんですか。"」

 

ほら来た

 

「いやなに。」

 

おっさんは肩を竦める

 

「ただの、ちょっとお高い贈り物」

 

「"はぁ・・・"」

 

ため息一つ

その反応だけで、だいたい察したんやろなぁ

 

まぁ、ええ

あとは向こうが勝手に気付くやろ

 

おっさんが何をしたかなんて

今の先生にわざわざ全部説明する必要もない

 

そのまま2人でシャーレまで歩く

 

道中、それ以上その話を掘り下げる事はなかった

 

やがてシャーレへ到着し、先生を建物の前まで送り届け

 

「ほな、先生。」

「またな。」

 

「"はい。"」

 

先生がこちらへ小さく手を振る

 

おっさんも軽く手を上げ返す

 

そして

 

そのまま地面を蹴った

 

――ふわり。

 

身体が宙へ浮く

 

夜空へ上がっていく

 

向かう先は

 

アビドス

 

祈願屋や

 

「はぁ・・・あの紙束の処理せんとあかんのか・・・」

「帰りたくねぇ・・・」

 

はぁ・・・明日も書類地獄やろなぁ

 

おっさんはそんな事を考えながら

 

そのまま夜空を駆けていった

 

 

 

 

 

 

 

【アビドス都市部・祈願屋事務所】

 

翌日

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

机の上

 

 

 

 

そして

 

 

「・・・・・・」

 

おっさんは、一枚処理する

 

横を見る

 

ユメも、一枚処理する

 

その隣には

 

さらに大量の書類

 

「・・・・・・。」

 

終わらん

 

「・・・・・・ユメちゃん。」

 

「はい。」

 

「これ、いつ終わるんやろな。」

 

「分かりません・・・」

 

二人とも遠い目をしながら、ひたすら書類を捌いていた

その背後のテレビから流れていたBGMが切り替わる

 

『速報です!』

 

「ん?」

 

おっさんが顔を上げる

 

画面にはヴァルキューレ警察学校が映っていた

そして、そこに立っているクロノス報道部

 

シノンがマイクを握っている

 

『私は今、再開発を担当している建設会社との癒着問題が噂になっているヴァルキューレ警察学校、その本館の前に来ています!』

『とある匿名希望の方からの情報によりますと・・・。』

『どうやら公安局の生徒達がカイザーの製品を受け取り、その為に権力を行使したのだとか!!』

 

カメラの前でマイが続ける

 

『市民を保護し、正義を守るべきヴァルキューレが、私企業と手を組んでいたというのは、かなり衝撃的な情報です!』

 

シノンが続く

 

『それに加えて昨日は、どうやら謎の集団がヴァルキューレ警察学校に侵入。』

『施設の一部を破壊したとの情報も入ってきています。』

『ヴァルキューレの権威が揺らぐ事件が、立て続けに発生しています!』

『果たして真相はどうなのでしょうか!?』

『これらの件について解明するため、私達は―――』

 

その時

 

ヴァルキューレの建物から

カンナが出てきた

 

「・・・何の騒ぎだ」

 

『あっ!カンナ公安局長です!』

『突然ですが、今回の違法リベートの件につきまして、一言頂けますでしょうか!』

 

カンナの顔が引き攣る

 

「待て。」

「それは何処からの情報だ・・・?」

 

そして

 

「と言うより、そもそもここは敷地内だ。」

「許可は得ているのか?」

 

マイがマイクを向ける

 

『おおっと!』

『やはりマスコミと権力とは衝突する定めなのか!』

『しかし私達クロノスは決して―――』

 

カンナの額に

 

青筋が浮かぶ

 

「良いから。」

「さっさと出ていけ!!!!」

 

その怒声と共に

速報は終わった

 

 

「・・・・・・」

 

おっさんは、しばらくテレビを見つめ

 

「先生。」

「マスコミに情報リークするん、早すぎへん・・・?」

 

ユメが苦笑し

 

「でも。」

「これでRABBIT小隊の方は、一先ず大丈夫そうですね。」

 

「まぁ、せやな。」

 

おっさんは書類へ視線を戻す

 

「これで、空が赤くなるまでは。」

「あっこは特に問題は起こらんやろ。」

 

「・・・・・・」

 

ユメが少しだけ考え込んだ

 

「そう言えば。」

「その空が赤くなるっていう所までは、教えてもらいましたけど。」

「そっから先は、私にも教えてくれませんよね?」

 

「まぁ・・・な。」

 

おっさんは、少しだけ視線を逸らす

 

「ちょい色々込み入った内容でもあるさかい。」

「そこから先は教えられんのよ。」

 

「その代わり。」

「ユメちゃんに無理に動いてもらう事も無いと思うさかい。」

「そこは安心してくれや。」

 

「・・・・・・」

 

ユメが、少し寂しそうな顔をした

 

「・・・そういう事じゃないんだけどなぁ・・・・・・」

 

「まぁ。」

 

おっさんは目の前の紙束を指差した

 

「仕事モードオフにするには、ちょい早いし。」

「ぱっぱと、この終わりの見えない紙束を始末していこうや。」

「ほんま、いつ終わるかわからんねんし・・・・・・。」

 

ユメも、自分のデスクを埋め尽くす紙のタワーを見る

 

「はぁぁ・・・」

 

深い

 

深い

 

深いため息

 

「そうですね・・・」

 

2人は再び

終わりの見えない書類仕事へ戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【不知火カヤ視点】

 

【連邦生徒会・防衛室部室】

 

机の上には、珍しく貰ったコーヒーの豆から淹れたコーヒーが置かれている

 

私は、その香りを楽しみがら

クロノスの放送を見ていた

 

「・・・・・・やはり。」

「こうなってしまいましたか。」

 

ヴァルキューレは、しばらく動けそうにありませんね

クロノスもしつこそうですし・・・

 

「相変わらず。」

 

私は、小さく笑う

 

「私は人に恵まれませんねぇ・・・」

 

「・・・それは前にも聞いた。」

 

ユキノが呆れたように返してくる

 

「ふふっ・・・」

 

私は笑いながら、もう一度テレビを見る

 

「とはいえ」

「カイザーと、こちら側についての件は。」

「見つかっていないようですし・・・。」

 

そのまま机の上に置かれたコーヒーへ手を伸ばした

 

一口

 

「・・・・・・」

 

停止

 

「・・・・・・」

 

もう一口

 

「・・・・・・」

 

何でしょう

 

この・・・

 

「・・・・・・ニコさん」

 

思わず、声に出ていた

 

「あなたから頂いた、このコーヒー豆は一体なんですか・・・?」

 

部屋の隅からニコの声が返ってくる

 

「先生の人物調査をする時に、一緒に居た祈願屋の元社長さんからの送り物、ですよ?」

「何かあったんですか?」

 

「・・・・・・」

 

私は慌てて

机の上に置かれていたコーヒー豆が入っていた缶を確認する

 

缶、ラベル、そしてロット番号・・・

 

「・・・・・・」

 

思わず手が震える

 

「ち、ち、ちなみに・・・その渡された時に」

「その先生と一緒に居たという元社長は・・・」

「何か言っていましたか・・・?」

 

「たしか・・・コーヒー好きにでも上げて欲しいと、言われましたね。」

 

「・・・・・・」

 

私は固まった

 

「そ・・・それで、私に・・・ですか。」

「このトップロットをほとんど無償で渡す・・・?」

 

背筋が、ぞくりとした

これは偶然ではない

そんな気がする

 

「これは・・・」

 

私は缶を握る

 

「私に、名指し・・・ですか・・・?」

 

頭の中で昨日の一連の出来事が繋がっていく

匿名の情報、RABBIT、ヴァルキューレ、カイザー

 

そして祈願屋の、元社長

 

「・・・・・・」

 

喉が、ひどく渇いた

 

「もしや・・・」

 

自分の声が震えているのが分かる

 

「全て見透かされた上で・・・泳がされていた・・・?」

 

鏡があったら

きっと今の私は恐ろしく顔色が悪いのだろう・・・・・・

 

机の上には未だ

 

1キロ数百万円もするコーヒー豆が入った缶が置かれていた

 




カルバノグ一章完!!!
シルバーウィーク様様!!

さて、解説・・・というほど解説項目ないな。
まぁとりあえず言える事だけ!

ミヤコ達の戦闘方法が、アンラに制圧された事もあって、
あぁいう制圧方法が自分達キヴォトス人に有効だと理解しちゃった感じですね。
なので、奇襲時は各個撃破で絞め落としてます。

そして、カヤちゃんですね。

ちょっと前にニコからお稲荷さんを貰った時に、
返礼品として渡したトップロットのナンバー入りの豆が入った缶ですね。

実際キロ数百万とかする奴があります。
今回はその数百万の物をあえて無償で、
ニコ(FOX小隊)経由でカヤに渡る様にした事で、
FOX小隊とカヤの繋がりは既に分かってんぞ。という警告をカヤにぶっ刺した感じですね。

カヤちゃん暫く震えて眠るんじゃないっすか、ハハッ。

ちなみにニコに渡されたもう一個の缶は、
そんな超ど級の最高級品だとしらずに、キリノとかが常飲して消費しています。

怖いっすね。それ一杯で店で飲んだら数万するよ。
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