おっさんキヴォトスに行く 作:無い頭のおっさん
姫ちゃんメイン会です!
【アビドス都市部・祈願屋事務所】
おじさんから連絡があったのは朝のことだった
アビドスのセーフハウスで過ごしていた私達三人に対して、
祈願屋の事務所まで来てほしいという話だった
何か新しい用件でもあるのだろうか
そんなことを考えながら事務所を訪れた私達を出迎えたのは、社長の山梔ウツツ*1さんだった
「いらっしゃい! 三人ともよく来たねぇ」
「お、お邪魔します・・・・・・」
「・・・・・・お邪魔します」
「うん。いらっしゃい」
ウツツさんはいつもの柔らかい笑顔で私達を迎えてくれた
事務所の中には書類の山がいくつも積み上がっていたけれど、今はそれらを片付ける時間ではないらしい
部屋の一角には大きな姿見が置かれ、その前の机には化粧品やブラシ、いくつもの服が並べられている
・・・・・・?
これはいったい何だろう
「今日はねぇ、三人にちょっとしたお勉強をしてもらおうと思って!」
「・・・・・・勉強?」
ミサキが机の上を見つめながら首を傾げた
「うん!メイクと変装のお勉強!」
「へ、変装ですか・・・・・・?」
ヒヨリが少しだけ身構えた
「そうそう!今の三人って、世間では指名手配されてるんだよね?」
「・・・・・・うん。」
私は頷いた
トリニティやアリウスでの騒動の末に、私達はヴァルキューレに指名手配されている
確かにこれから先の生活を考えれば、身元を知られずに外を歩く方法を覚えておくのは大切なことだろう
「だからねぇ、メイクや服装を変えるだけでも、人の印象ってかなり変わるんだよ」
ウツツさんは机の上から化粧用のブラシを一本取り上げた
「髪型や服装だけじゃなくて、姿勢とか歩き方とか、目線の動かし方も大事なんだよねぇ。」
「同じ人でも、そういうところを少し変えるだけで全然違って見えるんだ」
「・・・・・・そんなに違うもの?」
ミサキが尋ねた
「違うよぉ。」
「特に普段から顔を知ってる相手じゃなければ、」
「服装と髪型が変わるだけでも別人みたいに見えることがあるからね」
ウツツさんは私達三人を順番に見た
「それにねぇ。」
「たとえ死んだことになってる人でも、見た目を変えて堂々としてれば、結構普通に街を歩けるものなんだよ」
「・・・・・・堂々としていることも大事なんですね」
「そういうこと!」
「もちろん顔をよく知ってる人に会ったり、身元を詳しく調べられたりしたら別だけどね。」
「だから、変装してるから絶対に大丈夫ってわけじゃないよ」
ウツツさんは人差し指を立てて念を押した
「でも、最初からずっと人目を避けてこそこそしてると、逆に目立っちゃうこともあるんだよねぇ。」
「普通に街を歩いてる人は、そこまで周りの人の顔を細かく見てないから」
「・・・・・・なるほど」
私は頷いた
確かに、街を歩く人を一人ひとり詳しく観察している人は少ないだろう
見た目が変わっていればなおさらだ
「というわけで!」
ユメさんがぱんっと手を叩いた
「まずは三人とも座ってねぇ。」
「最初にメイクの基本を教えていくよ!」
こうして
私達の変装講座が始まった
「まずはお肌を整えて、顔の印象を少し変えていくよ」
ウツツさんは手際よく化粧品を並べていった
「顔の形そのものを変える必要はないんだよねぇ。」
「眉の形や色を変えたり、目元の印象を調整したり、」
「肌の色味を変えたりするだけでも結構違うから」
「・・・・・・思ったより細かい」
ミサキが鏡を覗き込みながら呟いた
「うん。細かいところが大事なんだよ」
「そ、そうなんですね・・・・・・」
ヒヨリは真剣な顔で説明を聞いている
私はウツツさんが手を動かす様子を眺めていた
普段から化粧をする習慣があまりなかった私達にとって
これはなかなか新鮮な体験だった
「それから、服装も大切だよ。」
「顔だけ変えても、いつもと同じ格好で同じ歩き方をしてたら、」
「知ってる人には気付かれやすいからねぇ」
ウツツさんは用意してあった服を手に取った
「だから今日は、せっかくだし三人とも思い切って印象を変えてみようと思います!」
「・・・・・・思い切って?」
「そう!普段の自分とは違う格好をしてみよう!」
「・・・・・・」
ミサキがわずかに眉を動かした
嫌な予感でもしたのだろうか
そして、その予感はたぶん正しかった
「まずはアツコちゃんからねぇ!」
「私から?」
「うん!大丈夫!任せて!」
ウツツさんはにっこりと笑った
・・・・・・その笑顔には不思議と逆らえないものがあった
私は大人しく椅子に座ることにした
それからしばらくして
「・・・・・・はい!完成!」
ウツツさんが満足そうに手を叩いた
私は姿見の前へと案内される
そして
鏡に映る自分の姿を見た
「あ・・・・・・」
そこにいたのは、見慣れた私ではなかった
白いワンピースに、広いツバのついたキャペリン
髪は丁寧に整えられ、顔立ちも普段より柔らかく上品に見えるよう化粧が施されている
姿勢まで少し変わったような気がした
どこかの裕福な家のお嬢様と言われても、不思議ではない姿だった
「どうかな?」
ウツツさんが鏡越しに私を見た
「ふふっ・・・素敵だと思う」
私はにっこりと笑った
「なんだか、いつもよりお淑やかになった気がするね」
「でしょー?アツコちゃんは元々雰囲気が柔らかいから、こういう格好がよく似合うんだよねぇ」
ウツツさんも嬉しそうに頷いた
「帽子を被ってるのもいい感じ!顔の印象が少し変わるし、目元に影もできるからね」
「ありがとう。気に入ったよ」
そう答えると、ウツツさんは満足そうに笑った
「よし!じゃあ次はミサキちゃん!」
「・・・・・・私?」
「うん!」
「・・・・・・分かった」
ミサキは短く答えて椅子に座った
それから再び、ウツツさんのメイク講座が始まった
「・・・・・・はい!ミサキちゃんも完成!」
「・・・・・・」
鏡を見たミサキが沈黙した
無理もない
さっきまでのミサキとは、まるで印象が違っていた
Tシャツにミニスカート
その上からパーカーを崩して羽織り、髪型も少し変えている
全体的にラフな雰囲気で、どこか近寄りがたい格好良さがあった
音楽好きの少女がライブハウスの前に立っていても違和感がない
いわゆるバンギャと呼ばれるような雰囲気だろうか
「・・・・・・どう?」
ミサキが小さく尋ねる
「似合ってるよ」
私は素直に答えた
「うんうん!すっごくいい感じ!」
ウツツさんも楽しそうに頷く
「ミサキちゃんは元々落ち着いた雰囲気があるから、」
「こういう格好にすると一気にクールな感じになると思ったんだよねぇ!」
「・・・・・・そう」
ミサキは鏡を見つめたまま、少しだけ首を傾げた
「・・・・・・自分じゃないみたい」
「変装ってそういうものだよ!」
ウツツさんは笑った
「普段の自分と違う格好をして、それが自然に見えるようになったら大成功!」
「・・・・・・なるほど」
ミサキはもう一度鏡を見た
少しだけ気に入ったらしい
表情はいつも通り淡々としていたけれど、鏡から目を離そうとしなかった
「じゃあ、最後はヒヨリちゃん!」
「えっ!?・・・わ、私ですか!?」
ヒヨリがびくっと肩を跳ねさせた
「そうだよぉ!」
「そ、そんな・・・私なんて、別に何を着ても・・・・・・」
「大丈夫大丈夫!ヒヨリちゃんも可愛くなるから!」
「か、可愛くって・・・!」
ヒヨリの顔が赤くなった
「・・・・・・観念した方がいいと思う」
ミサキが小さく呟いた
「ミ、ミサキさんまでぇ・・・・・・」
ヒヨリは困ったように俯いた
けれど、結局はウツツさんに手を引かれて椅子へと座らされた
「・・・・・・はい! 完成!」
三度目の宣言が響いた
ヒヨリが恐る恐る鏡の前に立つ
そして
「・・・・・・えっ?」
鏡に映った自分の姿を見て、ヒヨリが目を丸くした
まず、いつも結んでいる髪が下ろされていた
ただ下ろしただけではなく、丁寧に整えられていて
顔の周りに自然に流れるようにセットされている
服装も変わっていた
ワイシャツにチェックのスカート
シンプルだけれど清潔感があり、どこかで見た事がある姿だった
私は思わずウツツさんの顔を見た
この雰囲気、どこかで見たことがある
「・・・・・・ウツツさん?」
「んー?」
ウツツさんは鏡を覗き込んで、嬉しそうに笑った
「どう?昔の私みたいにしたんだよね!」
「・・・・・・あ」
ウツツさんより少し幼く見えるけれど
髪型や服装を含めて確かに今のウツツさんの名残がある姿だった
「わ、私・・・ウツツさんみたいになってるんですか・・・・・・?」
「そうそう!昔の写真を参考にしてみたんだよ!」
「そ、そうなんですね・・・」
ヒヨリは鏡を見つめたまま、頬を赤くしていた
「す、すごいです・・・なんだか、本当に別人みたいで・・・・・・」
「ふふっ!大成功だねぇ!」
ウツツさんが満足そうに頷いた
そして
「・・・・・・あははっ」
どこからか、妙な笑い声が聞こえてきた
「・・・・・・?」
私達が振り返ると
事務所の奥で、おじさんが肩を震わせていた
・・・・・・?
「・・・・・・おじさん?」
私が声をかけた瞬間だった
「ブッハッ!! アハハハハハハハハハ!!!!」
おじさんが腹を抱えて爆笑した
「くっそ似合うやん!! ハッハッハッハッハッ!!!」
おじさんはミサキとヒヨリを指差しながら、ついに床へと崩れ落ちた
「いやぁ!!あかん!!これはあかんわ!!ハッハッハッハッ!!」
「・・・・・・」
ミサキの目が据わった
「・・・おっさん」
「ハッハッハッハッ!!いやぁ、ほんまに似合っとる!!」
「特にヒヨリ!!昔のウツツちゃんがそこにおるやんけ!!」
「わ、笑わないでくださいぃぃぃ・・・・・・!」
ヒヨリが顔を真っ赤にした
「それにミサキ!!お前、めっちゃ格好ええやん!!」
「どこのライブハウスから出てきたんや!!ハッハッハッハッ!!!」
「・・・・・・」
ミサキは無言でおじさんを見下ろした
「・・・・・・蹴っていい?」
「・・・・・・うん」
ヒヨリが小さく頷いた
「えっ、ちょっ!?待って!?ミサキちゃん!?ヒヨリちゃん!?」
「おっさん何も悪いことしとらんやろ!?」
「・・・・・・笑いすぎ」
ミサキがアンラさんの脇腹を蹴った
「ひ、人のことをそんなに笑わないでくださいぃぃ・・・!」
ヒヨリも遠慮がちに、けれどしっかりとおじさんを蹴った
「ほんまにあかん!!ハッハッハッハッ!!!」
二人に蹴られながら一切ダメージが無いみたいにずっと笑ってる・・・
「・・・・・・まだ笑ってる」
ミサキがもう一度蹴った
「ちょっ!!ミサキちゃん!!追加攻撃は反則やろ!!」
「・・・・・・知らない」
「ひ、ひどいですぅぅ・・・!」
ヒヨリまで顔を赤くしながら、ぽかぽかとおじさんを蹴り続けている
私はその様子を眺めながら、もう一度鏡に目を向ける
鏡に映る私は、まるでどこかの良いところのお嬢様のようだった
白いワンピースにキャペリン
普段とは違う自分の姿を見つめる
「・・・・・・ふふっ」
自然と笑みが浮かぶ
とても面白い体験だと思う
「アツコちゃん!」
ウツツさんが私の隣までやってきた
「どう?気に入った?」
「うん。とても気に入ったよ」
私は鏡に映る自分を見ながら頷いた
「なんだか、自分じゃないみたい。でも、こういう格好もいいね」
「でしょー!」
ウツツさんが嬉しそうに笑った
その後ろではミサキとヒヨリが
未だに床で転がっているおじさんへ蹴りを入れていた
「・・・・・・」
私は少しだけ視線を戻し
「・・・二人とも、ほどほどにね?」
そう声をかけながらも、止めるつもりはあまりなかった
おじさんも楽しそうだったから
たぶん、きっと
「さて!」
ウツツさんが両手を叩いた
「そろそろお昼だし、みんなでご飯でも食べに行こっか!」
「・・・・・・ご飯?」
ヒヨリが顔を上げた
「うん!せっかくだから、その格好のまま出かけてみようよ!」
「変装の実践練習だねぇ!」
「・・・・・・なるほど」
ミサキが頷いた
「・・・・・・外を歩くんですね」
私は帽子の位置を整えた
「そうだね。楽しそう。」
「よーし!決まり!」
ウツツさんは事務所の奥へ向かって声をかけた
「アンラさん!」
「うへぇ~・・・なんやねん・・・」
おじさんは床に転がったまま、片手をひらひらと振っている
「アンラさんは事務所でお仕事してくださいね」
「・・・・・・えっ」
「書類がいっぱい残ってますから」
「・・・・・・」
「いいですね?」
「・・・・・・うへぇ~・・・」
おじさんは床の上でごろごろと転がった
「はいはい・・・行ってらっしゃーい・・・」
ひらひら
手だけがこちらに向かって振られている
「はーい!行ってきまーす!」
ウツツさんは満面の笑みで返事をすると、私達三人を連れて事務所を出た
床に転がったままのおじさんが、最後に何かを呟いた気がした
たぶん、書類のことだろう
【アビドス都市部・柴関ラーメン】
祈願屋の事務所を出ると、すぐ目の前にラーメン屋があった
看板には大きく柴関ラーメンと書かれている
「ここだよぉ!」
ユメさんが店の暖簾をくぐった
「柴関ラーメン!私が高校生の頃から、ずっと通ってるお店なんだよねぇ」
「・・・・・・そんなに長いんですね」
「うん!ここは昔から美味しいんだよ!」
店内に入ると、厨房から威勢のいい声が飛んできた
「いらっしゃい!」
柴関の大将が顔を上げる
私達はウツツさんに続いて席についた
「えーっと、私は特選ラーメンにしようかなぁ」
ウツツさんがメニューを開いて言った
「三人はどうする?」
私はメニューを眺め
いくつか種類はあるけれど
初めてのお店なら、まずは看板の名前がついているものを食べてみるのがいいのかな?
「私は柴関ラーメンにするね。」
「・・・・・・私も」
ミサキが頷いた
「わ、私も柴関ラーメンでお願いします・・・!」
ヒヨリも小さく手を挙げる
「よーし!じゃあ私は特選ラーメンひとつと、柴関ラーメン三つで!」
ウツツさんが厨房へ注文を通した
「はいよ!」
威勢のいい返事が返ってきた
注文を済ませると、ウツツさんは私達の方へ身体を向けた
「さっきも言ったけど、ここは私が高校生の頃から食べてるお店なんだよねぇ。」
「昔は今ほど街も賑やかじゃなかったけど、ここのラーメンは変わらず美味しかったんだ」
「へぇ・・・・・・」
私は頷いた
「街が変わっても、変わらないものがあるんだね。」
「そうそう!アビドスも少しずつ変わってきたけど」
「こういうお店が残ってるのって嬉しいよねぇ」
ウツツさんは楽しそうに笑っていた
ミサキも黙って話を聞き
ヒヨリはメニューを見つめながら、そわそわと厨房の方を気にしている
そして
「お待たせしました!」
元気な声とともに、ラーメンが運ばれてきた
「特選ラーメン一つ! 柴関ラーメン三つね!」
皿を持ってきたのは、黒い髪の猫耳の店員さんだった
「ユメ先輩!今日はどうしたんですか?」
「ちょっとお客さんを連れてきたんだよぉ」
「へぇー!」
店員さんは私達三人をちらりと見た
どうやら変装は上手くいっているようだった
私達の正体には気付いていないらしい
「ごゆっくりどうぞ!」
店員さんはそう言って、別のテーブルへと向かっていった
「ユメ?」
私がそう言うと、ウツツさんが少し気まずそうな顔で頬をかく
「あー・・・私も一応訳有りでね。」
「とりあえず、秘密ってことで!」
「・・・うん。分かった。」
私は頷き、店員さんが持ってきたラーメンに目線を移す
さて初めてのラーメン
私は箸を手に取る
目の前には、湯気を立てる柴関ラーメン
香ばしい匂いが鼻をくすぐる
スープの表面には油がきらきらと浮かび
麺の上には具材が綺麗に盛り付けられている
まずはスープを一口
「・・・・・・!」
思わず目を見開いた
美味しい
とても美味しい
スープの旨味が口の中いっぱいに広がり、麺との相性も抜群だった
私はすぐに麺をすすった
熱々の麺が口の中に広がる
具材も美味しい
もう一口
もう一口
気が付けば、夢中になって食べ続けていた
隣を見ると、ミサキも無言のままラーメンを食べていた
いつも通り表情は薄いけれど、箸を動かす速度が明らかに速い
ヒヨリに至っては、すでに目元が潤んでいた
「お、おいひぃですぅぅ・・・・・・!」
涙を流しながら、ヒヨリは麺をすすっている
「こんなに・・・・・・こんなに美味しい食べ物・・・・・・初めてですぅぅ・・・・・・!」
「・・・・・・分かる」
ミサキが短く頷いた
「・・・・・・これは、すごい」
私も同感だった
こんなに美味しいものを食べたのは、いつ以来だろう
アリウスで過ごしていた頃は、食べるものを選ぶ余裕すらないことも多かった
温かい料理をゆっくり味わうこと自体、贅沢だった
けれど今は、目の前に美味しいラーメンがある
それを誰かと一緒に食べられる
それだけで、なんだか胸がいっぱいになった
「そこまで美味しそうに食べてくれるとは嬉しいねぇ!」
厨房から柴関の大将が声をかけてきた
「いやぁ、作った甲斐があるってもんだ!」
「・・・・・・本当に美味しいです」
私は箸を止めて答えた
「こんなに美味しいラーメンを食べられるなんて、思わなかった。」
大将は嬉しそうに笑った
「そうかいそうかい!いやぁ、嬉しいねぇ!」
そして、ふと思い出したようにウツツさんへ目を向けた
「そういえばユメちゃん。」
「ちょっと前に来てた狐の嬢ちゃんも、えらく美味しそうに食べてくれたんだがねぇ」
「・・・・・・狐の嬢ちゃん?」
「ほら、あの子だよ。毎日来てた・・・」
「あぁ!」
ユメさんが思い出したように頷いた
「セイアちゃんのこと?」
「そうそう!あの子は今も元気かい?」
「うん!元の自治区に戻ることになったんだよぉ。」
「今はそっちで元気にしてるよ!」
「そうかいそうかい!そりゃあよかった!」
大将は満足そうに頷いた
「またいつでも来てほしいもんだねぇ」
「うん!きっと伝えておくね!」
ウツツさんはそう答えると、特選ラーメンへと箸を伸ばした
「それじゃあ、私もいただきます!」
ウツツさんも美味しそうにラーメンを食べ始めた
私達三人はその姿を眺めながら、再びラーメンへと向き直った
美味しい
本当に美味しい
こんな日が来るなんて、少し前までは思いもしなかった
私はスープを最後まで味わいながら、小さく笑った
【柴関ラーメン・店先】
ラーメンを食べ終えた私達は、店の外へ出た
「・・・はぁ。美味しかったですぅ・・・・・・」
ヒヨリはお腹をさすりながら、幸せそうに息を吐いた
「・・・また来たい」
ミサキも小さく頷いた
「うん。またみんなで来ようねぇ!」
ウツツさんが笑顔で答えた
そのときだった
「テメェら!!ええ加減にせえよ!!!!!」
「もう何回目やねん!!!!ぶち殺すぞ!!!!」
・・・・・・?
聞き覚えのある声が、頭上から響いてきた
私達は顔を上げると
目の前にある祈願屋のオフィスビル
その屋上に、おじさんの姿があった
・・・・・・えっと、何をしているんだろう
おじさんは空に向かって弓を構えていた
そして
シュパァァンンッ!!
一本目の矢が放たれた
矢は空へ向かって一直線に飛び上がり
頭上の雲を吹き飛ばしながら、そのまま遠くへ消えていく
数秒後
ドゴォォォォンッ!!
遠くから爆発音が響いた
「・・・・・・えっ」
ヒヨリが固まった
シュパァンッ!! シュパァンッ!! シュパァンッ!!
おじさんは続けざまに矢を放つ
一本
二本
三本
四本
矢が放たれるたびに雲が吹き飛び、空に穴が開いたような景色が広がっていく
そして数秒後
ドゴォォォォンッ!!
ドゴォォォォンッ!!
ドゴォォォォンッ!!
ドゴォォォォンッ!!
遠くから、放った矢と同じ数だけ爆発音が響いてきた
私は思わず口を開いた
「・・・・・・ウツツさん」
「んー?」
ウツツさんは空を見上げながら、困ったように笑いながら
「今日もアビドスは平和だねぇ・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
私達三人は顔を見合わせる
アリウス自治区の治安が良かったとは言わない
むしろ、あそこには問題しか無かった
けれど、これは・・・
「・・・・・・あの」
ヒヨリがおそるおそる口を開いた
「ア、アビドスって・・・いつも、こんな感じなんですか・・・・・・?」
「ううん!いつもじゃないよぉ!」
ユメさんは笑顔で答えた
「・・・そう、なんですね」
ヒヨリはほっとしたように胸を撫で下ろした
「最近は少し多いだけだよ~」
「・・・・・・」
ヒヨリの顔が引きつる
ミサキも遠くの空を見つめたまま、静かに呟いた
「・・・・・・これ、治安維持の仕事?」
「うん!アンラさんは祈願屋の治安維持部隊だからねぇ!」
「・・・・・・そう」
ミサキはそれ以上何も言わなかった
ただ、その目は少しだけ遠くを見つめていた
私達がいた自治区とは、また別の意味で治安が終わっている
そんな気がした
「ふふっ」
私は思わず笑ってしまった
「・・・・・・でも」
空を見上げる
雲の向こうで、また小さな光が瞬いた
数秒後に爆発音が響く
ドゴォォォォンッ!!
「賑やかな街だね」
そう呟くと、ユメさんも笑顔で頷いた
「でしょー?」
私は苦笑いを浮かべながら、もう一度空を見上げた
アビドスは今日も平和らしい
少なくとも
私達のいた自治区とは、まったく違う意味で
よし!
とりあえず、ホシノ達に話して許可をもらったアンラが、
いつまでもセーフハウスに軟禁しておくのも可哀想だって事で、
2年間死んだふりを続けていた変装のプロフェッショナルのユメちゃんに
変装の仕方を三人に教えました!
アツコ達がユメの本来の名前を知らず、
偽名しか伝えられてないのには理由がありまして、
現在、アビドス対策委員会に親しい間柄の面子にはユメの生存はバレていますが、
他の自治区にはまだバレていません。
なので、外の自治区の生徒であるアツコ達にも秘密にしています。
そもそも、アビドス自体間諜をアンラが全部叩き潰してますし、
ユメが外に出る時も必ず変装をしてますからね。
何回かヒナとも会ってますが、
その時も変装した状態であっているの現状バレていません。
そして、三人の変装の話ですが、
アツコの服装のイメージは水着アツコです!
ミサキに関しては、黒いマスクのあの姿が初見時、バンギャや・・・って思った事から、
今回バンギャルックにしました。
ヒヨリ・・・?ヒヨリはまぁ・・・アリウスユメモドキなんでユメにしました。
ちなみに、何故全員服のサイズがぴったりなのか・・・
その秘密はアンラにあります・・・
今からクッソキモイ事言いますよ!
アンラって、座標指定して次元斬を放てますよね。
つまり空間認識能力がずば抜けて高いんですよ。
しかも相手の首回りの皮一枚切るっていう芸当もしてました。
つまりは相手を見ただけで、その寸法をかなり高精度に推測できるんです・・・
その戦闘描写を日常に持ってくるとどうなるか・・・
見ただけでスリーサイズや身長が把握できます。
クソキショイですね。
ちなみにユメに皆の服買ってきてもらったんですが、
それぞれのサイズをユメに伝えたら軽蔑の眼差しで見られて、
言い訳の為に出た言葉が
「いや、しゃーないねん!見ただけでぱっと分かってまうんよ!!」でした。
ちなみに今回のお話でアンラが空に向かってぶっ放してるのは、
現在進行形でアビドスに散発的に行われてるヘルメット団の襲撃の撃滅の為に、
弓で空爆してます。
流石にケテルに使ったアレではないですよ!
精々、カイザーの重要施設に
あ、序に言うと
アンラのエネルギーとほぼ同じ量を蓄えている剣の作り方を解説しかったんですが、
解説すると今の本文ではまだ未公開のアンラの情報にがっつり関わってくる方法なので、
その情報が出るパヴァーヌ二章終盤まで待っていてください!