おっさんキヴォトスに行く 作:無い頭のおっさん
本日二連投稿!
1/2です!
そしてこれがエデン条約編後日談・・・
というよりも、パヴァーヌ二章前日譚終了!
【ミレニアム・ゲーム開発部部室】
ミドリに詰められてしおれていたモモイが復活し
ホワイト―ボードの前まで歩き声たかだかに宣言する
「さっきも言ったけど、」
「うちの次回作は――『まったりスローライフ系ダンジョン探索型RPG』!」
モモイがホワイトボードの前に立ち、勢いよくペンを振った
「やっぱり重要なのは、メインになるダンジョンだよね!」
「うん・・・ダンジョンをどう設計するかで、ゲームの内容も変わるし・・・」
ユズが小さく頷いた
「決められたダンジョンを攻略するのか・・・」
「それともローグライクにするのか・・・」
ミドリは腕を組み、ホワイトボードを見つめている
すると、アリスが勢いよく手を挙げた
「アリスはローグライクがいいです!」
「"アリスはローグライクが好きなんだね"」
私が声をかけると、アリスは嬉しそうに頷いた
「はい!」
「毎回ダンジョンの構造が変わるので」
「今度はどんなモンスターやレア装備に出会えるのだろうかと、ワクワクします!」
「"なるほど・・・探索するたびに新しい発見があるのが好きなんだね"」
「はい!特に、前回皆で作ったローグライクゲームは、とても楽しかったです!」
アリスが目を輝かせた
「先生の名前でユニークアイテムも作りました!」
「"えっ?"」
思わず聞き返してしまった
「"・・・なにそれ、聞いてない"」
「名付けて、先生のはなまるシールです!」
「"・・・はなまるシール?"」
「はい!シールを手に入れると、アリスはとても嬉しかったです!」
アリスは両手を握りしめ、熱弁を始めた
「しかも、使うとキャラクターが凄く強くなるのです!」
「"・・・は、はなまるシールの効果、すごいね!"」
「はい!とっても強いです!」
「・・・・・・」
いや、嬉しいよ?
ゲームの中に私をモデルにしたアイテムを作ってくれたのは嬉しい
アリスが喜んでくれるのも嬉しい
でも、できれば事前に教えてほしかったかな!
「アッ! そ、それは!」
モモイがぎくりと肩を跳ねさせた
「若干の遊び心というか!」
「ゲームの難易度的にもっとえ、エク・・・エク・・・・エクストリームしてほしいと思って!」
「そこはエキサイティングじゃないの?」
ミドリが即座に突っ込んだ
「うぇ!?」
「難易度を高くしたいなら、」
「エクストリームでもいいかもしれないけど・・・そもそも、その説明で合ってるのかな?」
「そ、それは・・・!」
モモイが目を泳がせた
私はそんなモモイを見て、苦笑いを浮かべた
「"モモイ・・・今度は英語の勉強をしようか"」
「うぇ!?だ、大丈夫だから!」
モモイが慌てて両手を振る
「この前、国語の勉強をしたばっかりだよ先生!!」*1
「"・・・大丈夫かなぁ"」
「大丈夫だってば!!」
アリスはそんな二人のやり取りを気にする様子もなく、嬉しそうに話を続けた
「今度のゲームでも、アリスははなまるシールをたくさん集めたいです!」
「"・・・そっか"」
私は思わず苦笑いを浮かべる
アリスが自分の名前のついたアイテムを喜んでくれるのは、とても嬉しい
でも、せっかくなら・・・・・・
「"できれば、今度は私もパーティーメンバーとして参加したいかな"」
「パーティーメンバー・・・?」
アリスが首を傾げた
「"うん。アリスと一緒にダンジョンを冒険したり、モンスターと戦ったりする役だね"」
「・・・・・・!」
その瞬間、アリスの目がきらきらと輝いた
「先生と一緒に冒険できるのですか!?」
「"ゲームの中ならね"」
「それは素晴らしいです!!」
「"・・・ふふっ"」
そんなに喜んでもらえるとは思わなかった
アリスの笑顔を見ていると、それだけでゲームを作る意味があるような気がしてくる
「よーし! それじゃあ、もしローグライクを作るとしたらダンジョンの形はどうしよう?」
モモイがホワイトボードへ向き直った
「地下遺跡・・・とか?」
ユズが遠慮がちに提案する
「ダンジョンでは一番基本になる形だから・・・作りやすいと思う」
「う~ん・・・・・・」
モモイは腕を組み、唸った
「普通すぎない?」
「・・・・・・えっ」
「せっかく作るなら、もっとこう、特別感があって壮大なのがいいんだけど!」
「・・・・・・」
ユズが少しだけ困った顔をする
ミドリはため息をつきながら、ホワイトボードに新しく案を書き込んだ
「じゃあ、塔の形式で登っていくのは?」
「塔?」
「うん。階段で上層へ進むたびに敵が強くなっていく形式なら」
「難易度の上昇も直感的に分かりやすいと思う」
「それだと意外性がないじゃん!」
モモイが即座に反論した
「階段なんて安直すぎるよ!!」
「文句ばっかり・・・じゃあ、そういうお姉ちゃんのアイデアは?」
「えっ・・・・・・」
モモイが固まった
「えーっと・・・地下遺跡・・・塔・・・・・・」
ホワイトボードに書かれた二つの案を、行ったり来たりしながら見つめる
「・・・だったら」
モモイがぽんっと手を叩いた
「階段じゃなくて、エレベーター! エレベーターとかどうかな!?」
「・・・エレベーター?」
ミドリが首を傾げる
「エレベーターに乗って地下遺跡を降りるの?」
「そう! エレベーターで次々と違う階層へ移動するんだよ!」
「そういえば、以前アリスがやったゲームにも似たようなものがありました!」
アリスが手を挙げた
「スパイになって、マンションのエレベーターで敵を倒すゲームです!」
「ああ、レトロゲームの中でも結構人気があるやつだね」
ユズが頷いた
「・・・・・・う~ん」
ミドリは再び腕を組む
「お姉ちゃんのアイデアにしては、無難な・・・」
「そうだよね! やっぱり全然足りない!」
「・・・ん?」
「必要なのは華やかなビジュアル! そして壮大なシナリオと意外性!」
モモイがホワイトボードに大きく円を描いた
「地下遺跡を降りるんじゃなくて、塔を登るのはどうかな!」
「・・・塔?」
「そう! エレベーターに乗って上がっていくの!」
「・・・・・・」
ミドリの顔が、なんとも言えない表情になった
「そして最後に、屋上で大爆発!!」
「・・・・・・は?」
「これぞまさにスペクタクル!!」
モモイが両手を広げた
「ちょっと待って」
ミドリの声が低くなる
「じゃあ、ダンジョンはどうやって攻略するの?」
「まずは華やかなビジュアルを意識して・・・」
「お姉ちゃんはいっつもそう言うよね!!」
「うわっ!?」
ミドリがホワイトボードを指差した
「この前も同じようなことを言ってさ!」
「えっ、えっと・・・」
「『このダンジョンを表現するには、内部を細かく書く必要がある!』とか何とか言って!」
「うっ・・・!」
「結局、皆で一日中ダンジョンの設定を書き込むことになったんだよ!?」
ミドリの声が部室に響き渡った
「そ、それは・・!」
「しかも、あんなに頑張って設定を書いたのに、ゲームではほとんど使わなかったじゃん!!」
「・・・・・・」
モモイが気まずそうに目を逸らした
「"・・・・・・あー"」
私は思わず頬を掻いた
どうやら以前にも、似たようなことがあったらしい
「アリスもたくさん描きました!」
隣で、アリスが元気よく手を挙げた
「いろんなものを描けて楽しかったです!」
そして、鞄の中から一枚の紙を取り出すと、私へ差し出してきた
「見てください先生! アリスが描いたイラストです!」
「"おっ、見せてくれる?"」
「はい!」
受け取った紙には、ダンジョンの内部らしき絵が描かれていた
複雑に入り組んだ通路
巨大な柱
光を放つ魔法陣らしきもの
壁一面に並ぶ謎の文字
そして画面の中央と思われる場所には
とてつもなく巨大な人型の存在が描かれていた
「"・・・これは?"」
「アリスの自信作! ダンジョン最強の番人、先生ガーディアンです!!」
「"先生ガーディアン・・・?"」
「はい! いつもアリス達を導いてくれる先生のイメージから名前を付けました!」
アリスは満面の笑みを浮かべた
「とても強い無敵のガーディアンです!!」
「"・・・そ、そうなんだ"」
絵の中の先生ガーディアンは
何本もの腕を広げ、巨大な剣と盾を構え頭上にはいくつもの光輪を浮かべていた
その足元には、小さな冒険者たちが何人も倒れている
私、こんなに強そうな姿をしているんだ
「ちなみに、お父さんに見せたら、笑いながら凄く褒めてくれました!!」
「"・・・ははは・・・アンラさんと後で話さないといけないね。"」
ほの暗い笑みを浮かべながら、私は絵をアリスへ返した
アンラさん・・・貴方には私の事をどう見てるのか
後で問い詰める必要があるみたいですね・・・
そんなことを考えている間にも、モモイとミドリの言い合いは続いていた
「そ、その・・・華やかなビジュアルは、」
「あ、あくまで・・・必要に応じた選択というか・・・」
モモイが弱々しく弁解する
「描くこと自体が嫌って言ってるわけじゃないよ」
ミドリは少しだけ声を落とした
「でも、皆であんなに苦労して描いたのに、ゲームではほとんど使わなかったじゃん」
「・・・うん」
「だったら、無駄なことをさせないで、実現可能なレベルの話をしようよ」
「で、でも!」
モモイが顔を上げた
「それだと地平線の景色が見られないよ!」
「・・・・・・地平線?」
「限界を突破できないよ!!」
「・・・お姉ちゃん」
ミドリの表情が変わった
「だから、そういう話をしてるんじゃ・・・」
「まだ見たことのない景色を目指すからこそ、新しいゲームになるんだよ!」
「・・・・・・っ!」
次の瞬間
ミドリがモモイへ飛びかかった
「うわっ!?」
モモイは反射的にバックステップを踏み、襲いかかってきたミドリをかわす
しかし、ミドリは止まらない
「逃げるなぁ!!」
「ちょっ!?ミドリ!?」
「落ち着いて!話し合おうよ!?」
「話し合ってるでしょ!!」
「これ、話し合いじゃないよね!?」
「"二人とも落ち着いて・・・"」
私が慌てて仲裁に入ろうとした、そのときだった
モモイがミドリの両腕を掴んで動きを止めた
「そうだ!!」
そして、私の方へ勢いよく振り向く
「先生の意見はどう!?」
「"・・・えっ?"」
ミドリもモモイに掴まれた腕へ力を入れたまま、こちらへ顔を向けた
「そうですね!こういう時こそ、先生の意見が必要です!」
「"えぇ・・・最初に呼んだ理由から変わってない・・・?"」
「やっぱり派手なダンジョンの方がいいですよね!?」
「実現可能なラインで妥協することが必要ですよね!?」
モモイとミドリが、同時に詰め寄ってきた
「「ね!?先生!!」」
「"・・・・・・"」
私は二人を見比べる
どちらも目が真剣だ
いや、真剣すぎる
・・・最初に私を呼んだ理由から、何も変わっていない・・・のかな?
二人とも、私に意見を聞きたかった・・・んだし・・・
でも、いつの間にか姉妹喧嘩の審判を任されている気がする
("・・・双子だなぁ")
("にしても、これは初めてのパターンだなぁ・・・")
("どっちを選んでもバッドエンドのフラグが見えるよ・・・")
「ちょ、ちょっと!みんなストップ!」
ユズが慌てて二人の間に割って入った
「せ、先生が困ってる・・・!」
「・・・・・・あ」
「ご、ごめん・・・・・・」
モモイとミドリが同時に手を放した
ユズはほっと息を吐くと、少しだけ考えるように視線を落とした
「このまま論争を続けても、先生に迷惑をかけるだけだよ」
「う・・・・・・」
「だから・・・ここは、ゲーム開発部で代々受け継がれてる、アレで決めた方がいいと思う」
「なるほど! アレですね、ユズ!」
アリスがぽんっと手を叩いた
「"・・・アレ?"」
私は首を傾げた
代々受け継がれているアレとは、一体何なのだろうか
「はい。その・・・たまに・・・結構・・・よく、意見が平行線になることがあって」
ユズが申し訳なさそうに説明する
「"・・・よくあるんだね"」
「は、はい・・・」
ユズは小さく頷いた
「そんな時に、アンラさんが・・・」
「"アンラさんが?"」
「『お互いの意見に納得できへんのやったら、勝負で決着をつけたらええねん』って・・・」
「"・・・アンラさんが言いそうなことだね・・・・・・"」
思わず、ため息が漏れた
あの人は本当に・・・
話し合いで解決できないなら勝負で決着をつければいい
ある意味では分かりやすいけれど
ゲーム開発部の問題解決方法として定着させてしまうのはどうなのだろう
「いいよ・・・ユズがそう言うなら」
モモイがミドリを見る
「その勝負、受けて立つ!!」
ミドリも強く頷く
「お姉ちゃん!泣いても手加減しないからね!!」
「こっちのセリフだよ!!」
二人とも、今度はお互いに譲らないらしい
「"ち、ちなみに・・・勝負って、一体何をするの?"」
私が恐る恐る尋ねると、モモイとミドリはぴったり同時に答えた
「「ぷ〇ぷ〇で勝負だよ!!!」」
「"・・・ゲームで勝負するんだね・・・"」
「はい・・・ゲーム開発部ですから。」
ユズが頷いた
・・・なるほど、理屈は分かった
分かったけれど、ゲームの企画についての話し合いが
どうして別のゲームの勝負に発展するのだろう
いや、もう今さらか・・・
「さあ、もう後には引けないからね!ミドリ!」
「ふん!お姉ちゃんこそ!」
こうして、モモイとミドリは対戦画面の前に並んで座った
画面に映し出されたパズルゲームの対戦準備が、着々と進んでいく
・・・二人とも、さっきまで取っ組み合いをしていたとは思えないほど真剣な顔だ
私は思わず苦笑した
「"・・・二人とも、仲がいいんだか悪いんだか"」
「仲はいいですよ」
ユズが穏やかに答えた
「ただ、ゲームのことになると・・・二人とも、どうしても譲れないところがあるんです」
「"・・・そっか"」
モモイもミドリも、ゲームが大好きなのだ
だからこそ、こだわりたいことも違うのだろう
それは悪いことではない
ただ・・・・・・
「"できれば、話し合いでも解決できるようになってほしいかな・・・"」
「・・・・・・は、はい・・・」
ユズは困ったように微笑んだ
そして、私たちが対戦画面を見守っていると
ユズがふと思い出したようにアリスへ向き直った
「・・・アリスちゃん」
「はい!」
「二人が勝負をしている間、新しいアイデアがないか探しに行ってもらえるかな?」
「アイデア探し・・・ですか?」
「うん。先生と一緒だったら、何か特別なインスピレーションを得られるかもしれないから」
「なるほど・・・!」
アリスが目を輝かせた
「面白いゲームを作るためのクエストですね!」
「ふふっ。そういうことかな」
「"・・・おぉ"」
私は思わず感心した
「ユズから、ゲーム開発部部長の貫禄を感じる・・・!」
「えっ!? あ、そ、そ、そんなことはないと思いますが・・・!」
ユズの顔がみるみる赤くなった
「・・・えへへ」
私は小さく笑った
「"でも、いい考えだと思うよ。"」
「"アリス、二人の分まで新しいアイデアを見つけてこようか"」
「はい!!」
アリスが元気よく頷いた
「アリス、クエストを受注しました!」
その瞬間、アリスが両手を高く掲げた
「パンパカパーン!」
「"・・・ふふっ"」
「さぁ先生! アリスと一緒に冒険に出ましょう!」
「"うん。じゃあ、行こうか"」
私はアリスと一緒に、ゲーム開発部の部室を後にした
【ミレニアム・キャンパス】
「パンパカパーン!」
部室を出て廊下を歩きながら、アリスが元気よく声を上げた
「アリスと先生は、村の外に出ることになりました!」
「"・・・村?"」
「はい!」
アリスが胸を張った
「見習い勇者アリスと先生の冒険は、ここから始まるのです!!」
「"アリス、今日は見習い勇者なの?"」
「はい! 今日はアリスも先生も、レベル1の見習い勇者です!」
「"・・・私もレベル1なんだね"」
「はい!」
アリスは元気よく頷いた
「今までは、冒険の時に伝説の勇者から始めたりもしましたが・・・」
「"うん"」
「その時、モモイがこう言いました」
アリスは少しだけ真面目な顔になった
「『伝説の勇者がレベル1のスライムを倒す冒険って、少し変じゃない?』と」
「"・・・あー。確かに、ちょっと不思議だね"」
私は思わず頷いた
「なので、モモイは最初から冒険が始まる町の周辺に」
「伝説のドラゴンを配置すると言っていたのですが・・・」
「"・・・うん?"」
「ミドリとユズが、それではゲームが進まないと必死に止めていました!」
「"・・・そりゃそうだね"」
思わず苦笑した
ゲーム開始直後の町の周辺に、伝説のドラゴン
レベル1の勇者が勝てるはずもない
「そういうゲームは、とても売るのが難しく・・・?」
「"うん"」
「売っても消費者が限られたジャンルのゲームになる可能性があるのだとか!」
「"あー・・・うん。確かにね"」
どちらかといえば、攻略不可能な理不尽さを楽しむ特殊なゲームになりそうだ
少なくとも、まったりスローライフ系ダンジョン探索型RPGとは、かなり違うものになるだろう
「・・・あの時に、みんなが言っていたことを全部理解したわけではありませんが」
アリスは少しだけ声を落とした
「それでも・・・今日は、せっかく先生と一緒の冒険なので」
そして、私を見上げる
「レベル1から始めます」
「"・・・そっか"」
「少しずつモンスターを倒して、レベルアップして・・・」
「伝説の勇者を目指すとしましょう、先生!」
「"うん。頑張ろうね"」
そう答えると、アリスは花が咲いたような笑顔を浮かべた
「はい!」
その笑顔を見て、私も自然と微笑んでしまう
今日一日で、新しいゲームのアイデアが見つかるかは分からない
でも、アリスと一緒に歩く時間は、きっと無駄にはならないだろう
「・・・ですが」
アリスがふと、首を傾げた
「こうして一緒に冒険を始めるにあたって、アリスは悩んでいます」
「"悩んでいる?"」
「はい・・・ユズのクエストをクリアするには、どうすれば良いのでしょう・・・?」
「"うーん・・・"」
私は廊下の先へ目を向ける
突き当たりには、校舎の外へ続く扉があり
その向こうには、ミレニアムの広いキャンパスが広がっているはずだ
「"・・・とりあえず、前進してみる?"」
「前進・・・?」
アリスが私を見上げた
「"アリスが言っていたよね。勇者の冒険は、前進することから始まるものだって"」
「・・・・・・!」
その瞬間、アリスの表情がぱっと明るくなった
「はい!」
アリスは拳を握りしめた
「出会いも、バトルも・・・レベルアップやクエストクリアだって!」
「"・・・うん"」
「始まりは前進からです!!」
アリスが満面の笑みを浮かべた
「先生は素晴らしい知識を持っていますね!」
「"ふふっ。これも全部、アリスに教えてもらったことだよ"」
「えへへ・・・はい!」
アリスは嬉しそうに頷いた
「では、先生!」
そして、校舎の外へと駆け出した
「行きましょう!前進です!!」
私もその後を追いかけた
こうして
見習い勇者アリスと、レベル1の先生による冒険が始まった
【ミレニアム・キャンパス各所】
最初に訪れたのは、トレーニングエリアだった
そこで私たちは、ジョギング中のスミレに出会って
「アリスちゃん!今日も頑張っているんですね!」
「はい! アリスは勇者として、もっともっとレベルアップしたいです!」
「普段からコツコツと頑張るその姿勢・・・偉いですね、アリスちゃん!」
スミレから励ましの言葉をもらったアリスは、何度も頷いていた
訓練場を後にして、次に向かったキャンパスの郊外では、制服姿のアスナとカリンに遭遇し
二人としばらく話し、次の冒険は二人も一緒に行くという約束を交わしてから、
私たちは再び歩き始めた
ミレニアムタワーの周辺へ戻れば、今度はアリスに気づいた生徒たちが次々と集まってきた
「アリスちゃん! 次回作も楽しみにしてるよ!」
「ゲーム開発部の新作、絶対に遊ぶからね!」
「はい!ありがとうございます!アリス、頑張ります!」
たくさんの生徒たちにもみくちゃにされながらも、アリスは嬉しそうに笑っていた
皆が自分たちのゲームを楽しみにしている
そのことが、アリスには何より嬉しかったようだ
そして、次に訪れた場所ではウタハ達と遭遇し
ウタハたちが新しいパーツを求めて買い物をしていたり、
ウタハから、光の剣の調子を尋ねられたりもした
ウタハ達と別れた後も、私たちはキャンパスのあちこちを歩き回った
バス停では時刻表を眺め、移動手段そのものをゲームの仕掛けにできないかと考えたり
コンビニでは飲み物やお菓子を回復アイテムに見立てたり
「先生!このお菓子はMPを回復するアイテムです!」
「"・・・甘いお菓子だから?"」
「はい!」
「"・・・ふふっ"」
そんな何気ないやり取りをしながら、アリスは少しずつ新しい発想を膨らませていった
・・・今日の冒険は、思った以上にクエストが進んでいるのかもしれない
ただ、コンビニで休憩している時だけは、アリスの表情が少しだけ寂しそうになった
「・・・そういえば、先生」
「"うん?"」
「お父さんは、最近シャーレに来ていますか?」
「"・・・アンラさん?"」
「はい。ここ最近、お父さんはアビドスが忙しいらしいので・・・」
アリスは少しだけ俯いた
・・・・・・そっか
アンラさんが忙しいのは知っている
祈願屋の仕事に、アビドス全域の治安維持
最近はあちこちで事件が起きているらしく
なかなかこちらへ顔を出す余裕がないのだろう
それでも、アリスにとっては大切なお父さんだし
会いたいと思うのは当然のことだ
私はアリスの頭をそっと撫でた
「"また来てくれるように、私の方からも言っておくよ"」
「・・・・・・本当ですか?」
「"うん。私からも、たまにはミレニアムに顔を出してってお願いしてみる"」
「・・・・・・!」
アリスの顔に、花が咲いたような笑みが戻った
「はい!ありがとうございます、先生!」
「"どういたしまして"」
・・・きっと、アンラさんもアリスに会いたいと思っているはずだ
ただ、今のタイミングだと・・・リオの問題があるから・・・不安だなぁ・・・
「よし!HPもMPも回復しました!」
アリスが元気よく立ち上がった
「先生! 冒険を再開しましょう!」
「"ふふっ。それじゃあ、前進しようか"」
「はい! 前進です!!」
【ミレニアム・駅前】
私とアリスはキャンパスを巡りながら、駅前までやってきていた
「先生、今日はたくさんの人に会えましたね!」
「"うん。スミレにも、アスナやカリンにも会えたし、エンジニア部の皆とも話せたね"」
「はい! そして、たくさんの新しいアイデアを見つけました!」
「"そうだね。これならユズのクエストも、少しは進んだかな?"」
「はい!きっと進んでいます!」
アリスが嬉しそうに頷いた
今日一日で、いくつもの新しい発想が生まれた
ダンジョンで使う便利な道具や、移動そのものを楽しませる仕組み
冒険の途中で立ち寄れる場所や、そこで使う回復アイテム
どれも次回作を考えるうえで、きっと役に立つものだろう
「"ふふっ。それはよかった"」
このまま何事もなく部室へ戻れれば、今日はいい冒険だったと言えるだろう
そう思った、そのときだった
「・・・・・・見つけた、チビ」
背後から、聞き覚えのある声がした
私が振り返るよりも早く、アリスがびくりと肩を震わせた
そして、今にも逃げ出しそうな勢いで叫んだ
「や、野生のチビメイド先輩が現れました!!!」
「あぁん!? 誰が野生のチビだ!?」
そこに立っていたのは
ミレニアムサイエンススクール最強の一角
C&Cの部長、ネルだった
「"ネル、こんにちは"」
「あん?おう、先生か」
ネルは私を見ると、少しだけ目を細めた
「先生も一緒にいたのか。」
「まぁいいや、丁度いいし二人ともちょっと付き合ってくれ」
「え、ええっ!?アリスはまだ冒険の途中で・・・!」
「ほら、さっさと行くぞ」
ネルは満面の笑顔を浮かべながら、アリスの襟首を掴んだ
「う、うわぁぁぁああん・・・!?」
アリスの身体が、ずるずると引きずられていく
「アリス、チビメイド先輩に捕獲されてしまいました!」
「おい、誰がチビメイド先輩だ!」
「アリスの冒険はここまでなのでしょうか!?」
「せめてバッドエンドになるならスチルが欲しいです!!」
「"・・・結構アリス、余裕そうだよね"」
「何言ってんだ、こいつ・・・・・・」
ネルが呆れたように呟いた
それから、ふと思い出したようにアリスへ顔を向ける
「つーか、初対面の時も言ってたけどな!!そのチビメイドってなんだよ!」
「・・・では、アリスは何と呼べばいいのですか?」
「先輩でいいだろ、普通に。」
「ほら、ネル先輩って呼べよ」
アリスは少しだけ考え込み
「うーん・・・はい、分かりました!」
そして満面の笑みを浮かべて元気よく言い放った
「チビネル先輩!!」
「チビを外せよ!!!」
ネルの怒声が駅前に響き渡り
私は口元を押さえた
・・・まずい
今、笑ったら絶対にネルにどつかれる・・・!
しかし、目の前であまりにも堂々と言い放つアリスと
顔を真っ赤にして怒るネルの組み合わせは
どうにも耐え難いものがあった
「"ご、ごめんね、ネル。"」
「"私達、冒険中でちょっと忙しくて・・・"」
何とか笑いを飲み込みながらそう告げる
「あ?何言ってんだ?」
ネルは鼻を鳴らした
「そんなんより、もっと大事なことがあるだろうがよ」
「"・・・もっと大事なこと?"」
「ああ。そりゃ――」
ネルはにやりと笑った
「格ゲーだよ」
「"・・・ソレなんだ"」
「当たり前だろ!」
ネルはアリスの襟首を掴み直すと
そのままずるずると歩き始めた
「ほら、行くぞ!」
「う、うわぁぁぁああん!!」
アリスの悲鳴が駅前に響く
「アリス、まだ冒険の途中なのにぃぃぃ!!」
【ミレニアム・ゲームセンター】
ネルに連れてこられたのは、駅からほど近いゲームセンターだった
店内には賑やかなゲーム音が響き渡り、あちこちの筐体で生徒たちが対戦を繰り広げている
ネルは迷うことなく格闘ゲームの筐体へと向かうと、どかりと椅子に座った
「ほら、チビ!座れ!」
「・・・はい」
アリスは少しだけ肩を落としながら、隣の席へ座った
そして、コントローラーを握る
・・・どうやら、これから始まるのは本当に格ゲーらしい
いや、ネルが言っていたのだから当然なのだけれど
それから二人は、何度も対戦を繰り返した
結果はというと――
「くっそ!!また負けた!!」
ネルが頭を抱えていた
「ぐああーっ!!ムカつく!!なんだよ、その技!?」
「ハメ技じゃねぇかっ!!」
「ユズは、ハメ技もゲーム要素の一つだと言っていました!」
アリスが堂々と答えた
「あぁん!?」
ネルが顔を真っ赤にして凄む
「セコい手使ってんじゃねぇよ!?」
「う、うわぁあん!?」
アリスが悲鳴を上げた
「"・・・二人は、よく対戦しているの?"」
私が苦笑いを浮かべながら尋ねると、アリスが小さく頷いた
「はい・・・ネル先輩がよく挑戦してくるので、アリスはそれに応じています」
「あん?あたしが無理に突き合わせてるみてぇじゃねぇか」
「"あれ、違うの?"」
「ちげぇよ!?」
ネルが勢いよく振り向いた
「こいつやゲーム開発部の連中が作ってるもんが、どんなもんかと思ってな!」
「調べてるうちに何回か対戦することになっただけだ!」
「・・・お父さんに会おうと思って訪ねて来くる度にネル先輩が挑戦してくるんです!」
「うるせぇよ!?たまたまだ!たまたま!!」
ネルがさらに顔を赤くした
「"・・・ネル、まだアンラさんを追ってるの?"」
「先生もちげーって言ってんだろうがよ!!」
ネルが頭を抱えた
「あーもう!!次!もう一回やんぞ!」
「は、はい・・・またですか?」
「当たり前だ!あたしが勝つまでだ!」
ネルがコントローラーを握り直した
「ほら、コンボ教えろよ!」
「・・・そんな。ネル先輩が勝つまでだなんて・・・・・・」
アリスが画面を見つめる
「アリス・・・このままゲームセンターが閉店するまで、ここにいるんですか・・・・・・?」
「お前の教え方次第だろうがよ!?」
「うぅ・・・・・・はい」
アリスは諦めたようにコントローラーを握り直した
そして、ネルの隣で格ゲーの指南を再開する
「ネル先輩、レバガチャではコンボは繋がりません・・・」
「わ、分かってるっての!!」
「一つ一つ丁寧に入力しないとダメです!」
「分かってるって言ってんだろ!」
「・・・では、今のコンボをもう一度やってみてください」
「おう!」
ネルが勢いよく操作する
バキッ! ドガッ! ズドンッ!!
「・・・あああああ!! また繋がらねぇ!!」
「・・・・・・ネル先輩、今のは入力のタイミングが少し早かったです」
「くっそ・・・もう一回だ!」
ネルがすぐさま再戦を要求する
アリスも文句を言いながら、根気よく説明を続けた
「う、うわぁん!!ね、ネル先輩のコンボが繋がりません・・・!」
「チッ、くそ!もっかい最初からだ!」
「このままでは、アリスと先生の空腹ゲージがゼロになってしまいます・・・!」
「あと一回だ!」
「その『あと一回』が何回も続いています!!」
「うるせぇ!次こそ繋がるんだよ!!」
ネルは悪態をつきながらも、ゲームを止めようとはしなかった
ネルの熱意に押されるように、アリスの格ゲー指南は延々と続いていく
そして、何度目かの挑戦の末
ガンッ
鈍い音が響いく
ネルが項垂れ、その額を筐体にぶつけていた
「・・・クソッ、あとちょっとで繋がったのに」
ネルは悔しそうに画面を睨みつけていた
その隣で、アリスがおどおどしながら様子を窺っている
「・・・・・・ね、ネル先輩?」
「ぐああーー!」
ネルが頭を抱えた
「もう一回だ。いいよな?」
「は、はいっ!」
アリスは慌てて頷いた
・・・その熱意は、本当にすごいと思う
負けても諦めず、うまくいかなかったところを何度も練習するネル
そして、そんなネルに根気よく付き合い、コンボのつなぎ方を教え続けるアリス
そこには、ゲームを通じて少しずつ互いの理解を深めていく二人の姿があった
かつて敵として戦った二人が、今ではこうして隣り合って座り、同じ画面を見つめている
なんか、凄く仲が良いなぁ・・・
そんなことを考えながら、私は二人を微笑ましく眺めていた
そのときだった
コツ、コツ、コツ
背後から、一歩一歩を踏みしめるような足音が響いてきた
何気なく振り返った私は、思わず固まった
そこには、満面の笑みを浮かべたアカネが歩いてきていた
笑顔だ・・・・・・
ただし、その笑顔からは途轍もない圧が発されている
「"・・・あ"」
アカネは何も言わず、ネルの後ろでぴたりと足を止めた
そして、ただ黙ってネルを見つめている
ネルは、まったく気づいていなかった
「この!いけ!繋がれ!」
アリスも、背後にぴったりとついたアカネに気づいた
「あ、う・・・あの・・・・・・」
「おい、ゴルァ!画面から目ぇ離すな!!あたしの華麗なコンボを――」
「――どこでサボっているのかと思ったら・・・」
静かな声が、ネルの背後から響いた
「こんな所にいらっしゃったのですね、部長。」
その声を聞いた瞬間、ネルが飛び退いた
「うわっ!あ、アカネ!?いつの間に!?」
「いつの間に、ではありませんよ」
アカネは笑顔を崩さなかった
「私、言いましたよね?」
「今日は会長からの任務の通達があるから、準備しておいてください、と――」
「・・・・・・あ」
ネルの表情が凍りついた
「"ネル・・・忘れてたんだね"」
「ち、違う!これが終わったら・・・・・・!」
ネルが慌てて言い訳をしようとする
その瞬間だった
アリスの指が、コントローラーの上を走った
ドガガガガガガガガッ!!
ネルのキャラクターが、アリスの高火力コンボによって一方的に殴り倒される
【PLAYER NERU LOSE!】
「ちょっ!?」
ネルが画面を振り返る
アリスは満面の笑みを浮かべて宣言した
「アリスの完璧な勝利です!」
「今のは反則だろ!!」
ネルが怒鳴るが
しかし、アリスはまったく動じない
「勝負の世界は冷酷なもの。常に最高の状態で勝負しなければならないのです!」
「・・・・・・」
「それとも、ネル先輩は戦闘中によそ見をしていても、今のは無効だと言うのですか?」
ネルの肩が、ぴくりと震えた
「へぇ・・・言ってくれるじゃねぇか・・・・・・」
そして、ゆっくりとアリスへ顔を向ける
「上等だ!あのタワーの続き、ここで――」
その瞬間アカネがネルの真後ろへ忍び寄った
「ゲームは一日一時間」
「・・・・・・」
「約束、しましたよね?」
アカネの声は穏やかだった
穏やかすぎて、逆に怖い
そして、ネルの襟首を掴み
「さあ、任務に戻りますよ、部長。」
「これ以上は許しませんからね?」
「えっ!?ちょっ、待ってくれアカネ!」
ネルが慌てて手を伸ばした
「あ、あと少しだけ!あと少しでコンボが繋がりそうなんだって!」
「はいはい。そうですね」
アカネは笑顔のまま、ネルをずるずると引きずっていく
・・・・・・完全に宿題をさぼった子供とお母さん・・・
私は思わず、そんなことを考えてしまった
すると、アカネがふと足を止めてこちらを振り返った
「あら、先生?」
「何かありましたか?」
「"・・・・・・いいえ"」
「"何もありません・・・"」
「そうですか」
アカネはにこりと微笑んだ
「それでは、お先に失礼いたします。先生、アリスさん」
「はい!また会いましょう、アカネ先輩!」
アリスが元気よく手を振った
「くっそ、覚えてろよ!!――次こそは勝つ!」
ネルの声がゲームセンターに響き渡る
「はいはい。そうですね。早く行きますよ」
アカネはネルを引きずったまま、出入口へと向かっていった
やがて二人の姿が見えなくなると、ゲームセンターにはいつもの賑やかなゲーム音だけが残った
「"・・・・・・"」
私はその光景を眺めながら、ゆっくりと息を吐いた
すると、アリスがぽつりと呟いた
「・・・お父さんの気持ちが、ちょっと分かりました・・・・・・」
「"・・・あはは"」
私は思わず苦笑してしまった
アンラさんも、ネルに見つかると大変だからね・・・
主に回りの建造物が・・・・・・
【ミレニアム・ゲームセンター前】
アリスと二人でゲームセンターを出ると、外はもう夕方になっていた
傾いた日差しが道路を照らし、駅へ向かう生徒たちの影を長く伸ばしている
「"そういえば、アリス"」
「はい?」
「"前に戦ったこともあるけど・・・今ではネルと仲がいいんだなぁって"」
「あ、その・・・確かに、一時的にネル先輩は敵でしたが・・・今は味方です」
「"うん"」
「なので、モモイが言うには、ネル先輩は弱くなっている確率が高いと言っていました」
「"・・・・・・えっ?"」
思わず、私はアリスの顔を見つめた
「だから、アリスは弱くなったチビネル先輩はもう怖くありません!」
「"・・・モモイが、そんなことを言っていたんだね・・・・・・"」
私は苦笑いを浮かべた
「"それ、ネルには言わないようにね・・・"」
「はい!チビネル先輩も今は仲間なので言いません!!」
アリスは満面の笑みを浮かべた
「アリスや、みんなとゲームをする仲間・・・」
そして、少しだけ声を小さくした
「その・・・チビネル先輩とゲームをする間、冒険ができないのは困りますが・・・」
「"・・・・・・"」
「先生と冒険する今日だけは・・・その・・・・・・」
言葉が途切れた
けれど、アリスの顔には、今日一日を楽しんでくれたことがはっきりと表れていた
私はそっと手を伸ばし、アリスの頭を撫でた
「"私は今日の冒険、とても楽しかったよ"」
「・・・そ、そうですか?」
「"アリスは、今日の冒険どうだった?"」
「アリスは・・・」
アリスは少しだけ考え
今日出会った人たちのこと
教えてもらったこと
新しく思いついたゲームのアイデア
そして、ネルとの格ゲー対決
それらを思い返すように目を閉じてから
アリスは、花が咲いたような笑顔を浮かべ
「アリスも、今日の先生との冒険は楽しかったです!!」
「"・・・そっか"」
「その・・・ユズのクエストに役立つアイデアは、たくさん見つけられたと思います。」
「でも・・・これで本当に大丈夫なのか、まだ分かりません・・・」
アリスは少しだけ悔しそうに眉を下げ
「それでも、アリスは勇者です。勇者は諦めないものです!!」
「"うん"」
「まだ見習いですが、これからもクエストをこなし、たくさんレベルアップして・・・」
アリスは背中に背負った光の剣へ手を添えた
「いつかは、この光の剣で・・・魔王を倒します!!」
「"・・・魔王?"」
「はい!魔王、お父さんを倒します!!」
「"あはは・・・うーん・・・アンラさんをかぁ・・・・・・"」
私は思わず苦笑いを浮かべた
「"かなりレベルアップしないとだねぇ・・・"」
「はい!」
アリスが大きく頷いた
「だから・・・その時まで、アリスと一緒に冒険してくれますか、先生?」
その言葉を聞いて、私はアリスの顔を見つめた
今日一日、アリスと一緒に歩いてきた
スミレに励まされ、アスナとカリンに出会い
たくさんの生徒たちから応援され、
エンジニア部とも出会い光の剣の調子を聞かれたりもした
途中で寄り道もしたし、ネルに捕まって格ゲーに付き合わされた
それでも、アリスはその一つ一つを楽しんでいた
ゲームの中で勇者になるだけではなく
現実の世界でも、出会った人たちの言葉を聞いて、考えて、自分の足で前へ進んでいた
勇者の冒険はまだ始まったばかり、だから今度こそ終わらせてはいけない
「"うん、もちろん。いいよ!"」
私はアリスへ微笑みかけた
「"頑張ってアンラさんを倒そうね!"」
「・・・はい!!」
アリスが嬉しそうに笑った
その笑顔を見ていると、私まで嬉しくなってくる
アンラさんを倒す日が本当に来るのかは分からない
というより、あの人を相手にするなら、
こちら色々な自治区の生徒に呼びかけるなどしても相当な準備が必要だろう
でも、折角アリスが持った夢だからね
アリスの夢を例えどれだけ時間がかかったとしても、叶えてあげよう
「では、先生!」
アリスが元気よく手を挙げた
「そろそろ、ゲーム開発部の部室へ戻りましょう!」
「"うん。二人とも、ちゃんと仲直りできているといいね"」
「・・・きっと大丈夫です!」
アリスが笑顔で頷いた
「もし、まだ喧嘩をしていたら・・・アリスが参戦して二人を倒します!」
「"ふふっ。それは頼もしいね"」
こうして私とアリスは、夕暮れのミレニアムを歩き始めた
見習い勇者アリスと、レベル1の先生の長いようで短い冒険の1日が終わり迎えた
平和なミレニアム・・・
そしてアビドスは今も平和ではなく・・・!
さて!
原作を読み込んで、大体の流れを作ったので、連載再開です!!
また数日おきに投稿していきますよ!!
そして本文解説!
・・・といっても言う事はそこまで無いんですよね。
とりあえず、
モモイとミドリの姉妹喧嘩は・・・
かなりモモイが手加減してますね。
まぁ・・・実際初動の奇襲を完全に回避してますから。
伊逹にアンラの縮地からの虚月を回避してませんね。
あ、ちなみに縮地は、アンラが使う歩法術の正式な名前だったりします・・・
どうでもいいですね。はい。
さてそれでは、その続き・・・
可愛いアリスちゃんと、先生がキャッキャうふふしながら、
二人でミレニアムをお散歩するお話・・・
ここらへんは基本的には原作のお話を同じです。
まぁ違うのは・・・
ネルがゲーム開発部の部室に入り浸るようになった理由が違う事ですね・・・
アンラがひたすら、ネルからのリベンジマッチを逃げるので、
ネルが痺れを切らしてゲーム開発部の部室で待機するようになり、
その暇つぶしに格ゲーを触ったら思いのほかのめり込み・・・というお話です。