おっさんキヴォトスに行く 作:無い頭のおっさん
えーっと・・・
昨日が20000文字、
0:06に投稿した奴が確か14000文字
そして今が22000文字。
うん。キーボードくん頑張ってるよ君。
チーン
エレベーターの到着を告げる電子音が響き、
扉がゆっくりと左右に開いた
その瞬間
「着いた!」
待ちきれなかったのか
モモイが勢いよく飛び出していく
「お姉ちゃん、走らないでよ・・・!」
ミドリが慌てて後を追い
ユズもその後に続いた
私も三人に続いてエレベーターを降りる
目の前に広がっていたのは、エリドゥ中央タワーの最上階だった
磨き上げられた床
壁面を埋め尽くすように設置された大型モニター
そして、都市の全景を一望できる巨大な窓
これまで通ってきた階層とは違い、研究施設のような雑然とした雰囲気はない
むしろ、静かすぎるほどに整然としていた
「ここが・・・エリドゥ中央タワーの最上階・・・」
ミドリが、周囲を見回しながら呟く
ユズは緊張した様子で辺りを見渡していた
やがて、喉を鳴らす
「・・・・・・ゴクッ」
「こ、この場所に・・・アリスちゃんが・・・」
「"・・・・・・"」
私も、室内を見渡した
ここまで来た・・・
ようやく、ここまで辿り着いた
「"・・・ここの何処かに、アリスが・・・?"」
そう呟いた、その時だった
コツ、コツ、コツ
静かな足音が、広い室内に響き始めた
私たちは、一斉に音のした方を振り返る
奥にある通路から、一人の少女がゆっくりと歩いてきていた
リオだった
「そう。アリスなら、ここにいるわ。」
「会長・・・!」
モモイが、一歩前へ出る
ミドリも、リオを真っすぐに見つめていた
「・・・・・・!」
「約束を破るの!?」
モモイの声には、警戒と怒りが入り混じっていた
けれど、リオは静かに首を振る
「いいえ」
そして、淡々と答えた
「トキが倒れた時点で、私が持っている手札は全て消えた。」
「もう、あなた達を止める手段はないわ」
「・・・・・・会長」
ミドリが、小さく呟く
私は、リオを見つめた
「"リオ・・・"」
リオは、窓の向こうへと視線を向けた
眼下には、自分が設計し、建造させた巨大な要塞都市が広がっている
「本当に・・・あなた達は、ここまで来たのね」
その声には、どこか諦めにも似た響きがあった
「近い将来、キヴォトスの脅威になることが確定している・・・あの子を救うために」
リオが、ゆっくりとモモイ達へ視線を戻す
「遮るものを全て薙ぎ払って・・・」
「当たり前だよ!」
モモイが、胸を張った
「最初からそう決めてたんだからね!!」
「・・・・・・」
「私達はアリスを迎えに来たんだよ。何があっても、絶対に連れて帰るって!」
ミドリも、力強く頷いた
「アリスちゃんは、私達の大切な仲間です。」
「・・・だから、何があっても連れて帰ります。」
ユズも、緊張した面持ちで言葉を続ける
「アリスちゃんが、どんな存在だったとしても・・・私達にとっては、アリスちゃんですから」
リオは、しばらく三人を見つめていた
そして、静かに口を開く
「・・・アリスが、キヴォトスに終焉を招くとしても?」
「そんなの関係ないよ!」
モモイは、即座に答える
「アリスは私達の友達で、仲間!」
一歩、前へ出る
「だから助けるんだよ!」
「・・・・・・」
リオは、視線を落とした
「私はただ・・・」
その言葉が続く前に、私は口を開いた
「"リオ・・・君が憂慮していることは、私にも分かるよ"」
リオが顔を上げる
私は、彼女をまっすぐに見つめた
「"でもね。君に一つだけ、言わなければならないことがある。"」
「・・・・・・」
「"それはね、リオ"」
私は、一度言葉を切った
「"君が誰にも相談せず、一人で全てを判断して、結論付けたこと"」
「"そして、君が正しいと信じることを、他人にも強要したこと"」
「"・・・この行為だけは、間違っているよ。"」
リオの表情が、わずかに強張った
「・・・先生。あなたも私の行動を独善だと言うの?」
「"・・・そうだね"」
私は、少しだけ困ったように笑った
「"そういう側面も、リオにはあると思うよ。"」
「"例えば・・・誰にも相談しないところとか"」
「"自分と違う意見を言われたら、相手を排除しようとするところとか・・・ね?"」
「・・・・・・」
リオは、何かを言おうとしていたが
けれど、すぐには言葉が出てこない様子だった
「でも・・・私は・・・!」
リオが拳を握りしめる
「私は・・・キヴォトスを守ろうと・・・!」
「"・・・・・・"」
「私、は・・・・・・」
そこで、リオの声が途切れた
その時だった
「あっ!」
室内の奥を探していたモモイが、突然声を上げた
「ミドリ!ユズ!アリスを見つけた!」
「アリスちゃん!?」
ミドリが、弾かれたように振り返る
「・・・どこ!?どこにいるの!?」
ユズも慌てて声を上げた
私は、リオへと視線を戻した
「"リオ。続きは、この後にしようか"」
「・・・・・・」
リオは、何も答えなかった
私は、モモイの声がした方向へと歩き出す
背後に残ったリオが、どんな表情をしているのか
振り返ることはしなかった
モモイ達が辿り着いたのは、最上階の奥に設けられた特別な区画だった
そこには、一脚の椅子が置かれていた
いや、椅子と言うには、あまりにも複雑な装置だった
背もたれから伸びた無数のケーブル
頭部や両腕、胴体へと接続された電極
周囲には、いくつもの計測装置が並んでいる
そして、その中央
少女が一人、横たわっていた
「・・・・・・アリス」
私は、思わず足を止めた
黒い長い髪
小さな身体
見慣れた顔
間違いない
そこに眠っていたのは、アリスだった
("・・・・・・ハイテク電気椅子って、これのことを言っていたんですか?アンラさん・・・")
思わず、心の中で呟いてしまう
「アリス!お待たせ!!」
モモイが駆け寄った
「アリスちゃん!!」
ミドリも、アリスのそばへ駆け寄る
「アリスちゃん・・・!」
ユズも、恐る恐る声をかけた
けれどアリスは、目を閉じたままだった
「・・・・・・?」
モモイが、首を傾げる
「アリス?」
返事はない
ミドリが、そっとアリスの肩へ手を伸ばした
「アリスちゃん・・・?」
やはり、反応はなかった
「"・・・おかしいね"」
私も、アリスの顔を覗き込んだ
「"アリス・・・?"」
その瞬間だった
パチン
部屋全体の照明が、一斉に消えた
「きゃっ!?」
ユズが小さく声を上げる
「な、何!?」
モモイが周囲を見回した
「どうなってるの!?」
ミドリも、暗闇の中で身構える
そして、奥に設置されていた大型モニターだけが、ぼんやりと光を放ち始めた
「・・・あそこのモニターが・・・!」
ミドリが画面を指差す
そこに表示されていたのは、一つの文字列だった
Divi:Sion
「・・・・・・これは」
背後から、リオの声が響いた
リオは画面を見つめたまま、表情を強張らせていた
私は、モニター視線を釘付けにされていた
(Divi:Sion・・・!?)
(もしかしてKey・・・!?)
嫌な予感がした
その時、私の耳元にある通信機からノイズが走った。
『・・・・・・いま・・・急に・・・な・・・が・・・・・・!』
「"チヒロ?"」
『通信が・・・・・・き・・・・・・』
「"チヒロ、どうしたの!?"」
『・・・・・・み・・・な・・・応答・・・・・・!?』
ブツッ
そこで、通信が途切れた
「"チヒロ・・・!?"」
通信機を押さえ、何度か呼びかける
けれど、返事はなかった
リオはモニターを見つめたまま呟いた
「エリドゥのシステム全体が・・・ハッキングされている?」
「"・・・・・・"」
「いいえ、これは単純なハッキングではない・・・」
画面に流れる情報を追いながら、リオの表情が変わっていく
「都市全体の構造そのものが、何かに変質していっている・・・?」
「こんなことをしている場合じゃないよ!」
モモイが、アリスへと向き直った
「早くケーブルを外して、アリスを・・・!」
その時
「その行為は、推奨しません。」
静かな声が響いた
「・・・・・・え?」
モモイが声の主へと顔を向ける
そこには先ほどまで目を閉じたまま横たわっていたアリスが上半身を起こしていた
暗闇の中
赤い瞳が、ぼんやりと光っている
その顔には、いつものアリスのような表情がなかった
「・・・・・・!」
モモイが目を見開く
「アリス・・・?」
「現在、王女の表装人格は、内部データベースの深層部に隔離されています」
声は、アリスのものだった
けれど、その口調はまるで別人のように冷たい
「強制的に接続を解除した場合、取り返しのつかない損傷が発生する恐れがあります。」
モモイは、目の前の少女を睨みつけた
「・・・Key!」
「・・・・・・!」
ミドリが、モモイを見る
「お姉ちゃん・・・?Key・・・?」
赤い瞳の少女は、静かに頷いた
「ええ。私の個体名です」
「私の個体名はKey」
そして、淡々と名乗った
「王女を救う無名の司祭達が残した修行者であり、彼女が戴冠する玉座を継ぐ『鍵』」
私は、その言葉を聞いて息を呑んだ
「"Key・・・!"」
(やっぱり、あの時・・・!)
Keyは、私へ視線を向けた
「彼女は王女であり、私は鍵」
「それが、私達の存在であり、目的です」
モモイが、歯を食いしばる
「・・・・・・」
「現在、我々を妨害していた攻撃が停止したことを確認しました」
Keyの視線が、モニターへと向く
「これよりエラーを修正し、本来あるべき玉座へ、王女を導かせていただきます」
そして、無機質な声が響いた
「AL-1Sに接続された利用可能リソースを確保するため、全体検索を実行。」
モニターの表示が切り替わる
「リソース領域の拡大」
「リソース名、要塞都市エリドゥ」
「全体リソース・・・五万エクサバイトのデータを確認」
「・・・・・・!」
リオの顔色が変わった
Keyは、淡々と続ける
「現時刻をもって、プロトコルATRAHASIS稼働」
その瞬間、モニターに新たな文字が表示された
CODE:ATRAHASIS
「コード名、アトラ・ハシースの箱舟」
「起動プロセスを開始します」
「・・・・・・!」
リオが、思わず声を漏らした
「アトラ・ハシース・・・!?」
私は、モニターを睨みつけた
「"間に合わなかった・・・!?"」
Keyは、続けて命令を発した
「プロセスサポートのため、Divi:Sionをリソース変換し、呼び出します。」
その瞬間だった
モニターの映像が、エリドゥ各地の監視カメラへと切り替わった
そして、私は目の前の光景に言葉を失った
都市の建物が、歪み始めている
道路が
壁面が
街灯が
信号機が
あらゆるものが、まるで巨大な手によって分解されるかのように、細かな欠片へと変わっていく
そして、それらが別の形へと組み上がっていった
無機質な装甲
異様な深海魚の様な形
Divi:Sion
一体
二体
十体
百体
数えることすら意味をなさないほどの数が、街の至るところで生まれていく
モニターに映るエリドゥの景色が、次々と異形の機械に塗り替えられていった
「な・・・」
リオは、画面を見つめたまま言葉を失っていた
「エリドゥ各地で・・・Divi:Sionが出現している・・・?」
リオの目が、画面上を忙しなく動く
そんなはずはない
そう言いたげな表情だった
「い、いえ・・・そんなはずが・・・!」
リオの声が震える
「私の計算では・・・でも・・・!」
モニターには、変わり果てていく都市の姿が映っていた
「わ、私は・・・」
リオが、ふらつくように一歩後退する
「キヴォトスに終焉が齎されることを懸念して、この要塞都市エリドゥを建設した・・・」
誰に言うでもなく、呟く
「私が動員できるミレニアムの全ての技術と力、エネルギー、そして資源を・・・」
「この場所に集めたというのに・・・」
リオは、目の前の光景から目を離せないでいた
「けれど・・・」
声が、かすれた
「むしろ、そのせいで・・・」
リオは、モニターを見つめたまま、膝から崩れ落ちた
「この都市が・・・終焉の発端に・・・?」
床に手をつく
「私が・・・」
「私の計算が・・・間違っていた・・・?」
その表情から、急速に色が失われていく
「わ、私は――」
リオの呟きが、暗い室内に落ちた
「間違っていた・・・?」
「箱舟政策に必要なリソース確保、23%」
Keyの声が響く
「46%」
モニター上の数値が、急速に上昇していく
「・・・・・・」
リオは、呆然と画面を見つめていた
その時
はっとしたように顔を上げる
「先生!」
私の方へ、身を乗り出した
「このままでは・・・!」
私は、リオへと視線を向ける
「"リオ?"」
「このままエリドゥの全リソースを奪われてしまったら、キヴォトスが終わってしまう!」
「"・・・・・・"」
「決断を下さなければ・・・!」
その言葉と同時に、Keyの声が再び響いた
「王女は鍵を手に入れ、箱舟は用意された」
「無名の司祭の要請により、この地に新しいサンクトゥムを建立する」
モニターに表示される情報が、次々と切り替わる
「その到来によって初めて、全ての神秘はアーカイブ化され――」
「このままでは、世界が滅びる・・・!!」
リオが、慌てて自身の端末を操作した
その操作に反応し、室内の端末が一斉に起動する
『AMAS、起動』
「先生! 皆と一緒に逃げてちょうだい!」
「"リオ!"」
私は、思わず声を上げた
「"ダメだよ!"」
「今から、この都市全体が変貌する!」
リオは、端末を操作しながら叫ぶ
「箱舟という新しい概念に歪曲されるのよ!」
「そうしたら、このキヴォトスは・・・!」
言葉が詰まった
「だから・・・これは、私のせいなのよ」
リオは、自分の手を見つめた
「私がこの都市を作らなかったら、最初からこんなことにはならなかった・・・」
「"・・・・・・"」
「私が・・・私のせいで・・・」
その目から、光が失われていく
「だから、私が止めないと・・・」
「"リオ・・・"」
「私一人で、システムを止めてみせるわ」
私は、すぐに首を振った
「"・・・リオ。ダメだよ。"」
「・・・・・・」
「"それじゃあ、君は・・・"」
「私の命一つで、世界の終焉を防ぐことができるというなら、そうするわ。」
リオは、迷いなく答えた
「そうしなければならない」
そして、私を見つめる
「・・・早く!」
「これは極めて論理的な選択よ、先生!」
私は俯き拳を握りしめる
リオは、自分の命を犠牲にしてでも、世界を救おうとしている
その考えに至った理由は分かる
自分が作った都市が、世界を滅ぼす原因になろうとしている
その責任を、自分一人で取ろうとしているのだ
けれど
それでは、また同じことが繰り返されるだけだ
しばらくして、私はゆっくりと顔を上げた
瞳には、強い光が宿っていた
「"・・・トロッコ問題について、話していたよね。"」
リオの指が止まる
「・・・・・・」
「"トロッコ問題には、二つの選択肢しかない。"」
私は、リオを見つめた。
「"君はそこで、犠牲の少ない方を選ぼうとした。"」
「私は・・・」
「"リオ"」
私は、静かに続けた
「"それが、君の優しさなんだよね。"」
リオが顔を上げる
「"でもね。二つの選択肢のどちらを選んでも、"」
「"誰かが犠牲になる結果しかないのであれば・・・"」
私は、拳を握った
「"私は、その質問自体が間違っていると答えるよ。"」
「・・・・・・」
リオは、眉を寄せた
「それは・・・問題の答えではないわ、先生」
「・・・・・・」
「ただの詭弁よ。思考実験の前提条件を否定するのは、ただの屁理屈でしかないわ」
私は、静かに首を振った。
「"レバーを引く人が、見落としたものがあるんじゃないかな?"」
「・・・・・・!?」
リオの目が見開かれる
「"本当に、周囲に手を差し伸べてくれる人がいなかったのか、とか"」
「・・・・・・っ」
リオは、何も言えなかった
Keyの声が、再び響く
「・・・・・・99%」
「リソース確保完了」
「"・・・・・・!"」
私は、モニターへと目を向けた
時間がない
それでも、リオに伝えなければならないことがあった
「"だからね、リオ"」
私は、彼女を見つめた
「"私は、全員で力を合わせて、全てを救う選択肢を選びたい"」
リオの表情が揺れる
「そ、そんな選択肢は・・・ないわ」
「"・・・・・・"」
「そんなものは、最初から・・・」
その時だった
『――ノア!今よ!!』
通信機から、聞き覚えのある声が響いた
「"ユウカ!?"」
私が顔を上げる
『電力という電力を、全部落としちゃって!!』
続いて、別の声が返ってきた
『は~い、ユウカちゃん』
どこか楽しげな声
『その言葉を待ってました♪』
『えいっ!!』
カチッ
その瞬間エリドゥ中央タワーの照明が、一斉に消える
モニターが暗転し、稼働していた端末が次々と停止していく
Keyの声も、そこで途切れた
「・・・・・・」
しばらくして
一つのモニターに、文字が表示された
SYSTEM SHUTDOWN
「・・・・・・リソースの確保、失敗」
Keyの声が、弱々しく響く
「システム・・・シャットダウン」
そして、完全に沈黙した
「・・・・・・」
一瞬、誰も動かなかった
やがて
『みんな、大丈夫!?』
無線機から、ユウカの声が響いた
「"ユウカ・・・!!"」
私は、思わず顔を上げた
モモイが、嬉しそうに声を上げる
「ユウカ・・・!!」
「ノア先輩!!」
ミドリも、通信機へと駆け寄った
「こ、ここには・・・どうやって・・・?」
ユズが、驚いたように目を丸くする
『状況が普通ではないということは、よく分かりました。先生!!』
ユウカの声は、いつもより少しだけ弾んでいた
その隣から、ノアの声が続く
『最初は、都市の位置を伝えるだけで手を引くつもりだったのですが・・・』
少しだけ、笑いを含んだ声
『ふふっ。ユウカちゃんが、やっぱりそれだけじゃダメだと。』
『最後まで何とかしないと、って言いましてね?』
私は、思わず笑った
「"流石ユウカ! タイミングが完璧だったよ!"」
『ふふん!これくらい当然です!』
ユウカは、少し得意げに答えた
けれど、すぐに声の調子を変える
『それより、会長!!』
「・・・・・・!」
リオが、びくりと肩を震わせた
『セミナーの予算を横領して、こんな大規模都市を作るなんて・・・』
「・・・・・・」
『後で説教ですよ!! 覚悟しておいてくださいね!!!!!』
「・・・・・・ユウカ」
リオは、何も言い返せなかった
その時
「・・・・・・リソース確保プロセスエラー」
Keyの声が、再び小さく響いた
「緊急状況発生」
モニターが、かすかに明滅する
「Divi:Sion電源、プロトコル実行者を保護するため、エリドゥ中央タワーに集・・・」
その瞬間だった
外から、何かの音が聞こえてきた
ドンッ!!
そして、もう一度
ドガァン!!
まるで、建物の外で大規模な戦闘が起きているかのような轟音
「・・・・・・?」
私は、窓の方へ顔を向けた
Keyも、モニターの表示を切り替える
「邪魔者・・・?」
赤い瞳が、僅かに揺れる
「そのようなはずはありません。都市内の残存兵力は・・・ゼロ」
一瞬、間が空く
「論理エラー発生。確認のため、映像を表示します」
モニターに、エリドゥ中央タワー周辺の監視カメラ映像が映し出された
そして
「"・・・・・・え?"」
私は、思わず目を見開いた
画面に映っていたのは、エリドゥの街を覆い尽くすほどのDivi:Sionの群れ
その中心へと、何か巨大な物体が突っ込んでいく
四本の腕
それぞれに取り付けられたレールガンやドリル
背中には増設された装甲と、複数のスラスター
そして、頭部の額から伸びる四本の角
「・・・・・・あれは」
モモイが、画面を見つめた
「あっ・・・!」
ミドリが、目を丸くする
「まさか・・・!」
そこに映っていたのは、魔改造されたアヴァンギャルド君だった
その機体にしがみつくように、エンジニア部の三人が乗っている
アヴァンギャルド君は、四本の腕を振り回しながらDivi:Sionの群れへと突っ込んでいく
レールガンが火を噴き
ドリルが回転する
装甲の一部から追加兵装が展開され、目の前の敵を次々と吹き飛ばしていった
「"・・・・・・アヴァンギャルド君と、エンジニア部・・・!"」
私は、呆然と呟いた
そして、もう一つの画面が表示された
そこは、エリドゥ中央タワーの外
正面広場だった
負傷して地面に座り込んでいるC&Cの面々
その前に立つ、一つの人影
ローブを纏った人物が、黒い棒を片手に持っていた
そして
「・・・・・・」
画面の中の人物が、何かを見て笑っている
その笑い声は、通信機越しにも聞こえてきそうなほどだった
【エリドゥ中央タワー前広場】
【七篠アンラ視点】
「クックックック・・・!」
おっさんは、画面の向こうで暴れ回るアヴァンギャルド君を見ていた
「はっはっはっはっは!!」
「いやぁ・・・確かに知ってたぜ?」
「そりゃあ、これだけの名場面や。」
「知らんわけがない。」
「いやー、それでもまさかアヴァンギャルド君を魔改造して暴れるとは・・・流石ウタハ達やな」
四本腕のアヴァンギャルド君が、Divi:Sionの群れに突っ込んでいく
レールガンが火を噴き、ドリルが唸り、追加装甲が敵の攻撃を弾き飛ばす
その背中には、必死にしがみついているエンジニア部の三人
何とも頼もしい光景や
おっさんは、再び笑った
「いやぁ・・・ええもん見せてもろたわ」
「・・・・・・」
背後から、恨めしい視線を感じる
C&Cの面々・・・特にネルからだった
全員、負傷して地面に座り込んでいる
その目は、おっさんを見上げていた
・・・ああ
そういや、こいつらがおったな
おっさんは、肩を竦めた
「おう、なんや。そんな目で見て」
「ケッ・・・・・・」
ネルが不満そうにおっさんに向かって睨みつけて来ていた
「いや、まぁ・・・気持ちは分かるで?」
折角の戦いの場、C&Cとしても矢面に立って戦いたいだろう
けどな
悪いが、もうそういう話の次元やないんや
「いやー・・・それにしても」
おっさんは、黒い棒を肩に担いだ
「てっきりアトラ・ハシースが出てくると思って、」
「こんな物騒なもんまで持ち出したんやけどな~」
画面の向こうでは、アヴァンギャルド君がDivi:Sionを蹴散らしている
「まさか、精々が街全体を覆い尽くすDivi:Sionの津波程度やったとはなぁ・・・」
小さく、息を吐く
「キヴォトスの修正力も、案外ちゃっちーな。」
その瞬間
おっさんの表情から、笑みが消えた
「・・・ま、敵が弱い分にはええか。」
黒い棒を握る手に、力を込める
「連邦生徒会長との契約に従い」
周囲の空気が、僅かに揺れた
「俺も全力で、修正力はねじ伏せるつもりやったしな。」
おっさんは、ゆっくりと顔を上げた
その視線の先には、道を覆い尽くすほどのDivi:Sionの群れ
そして、その【向こう】には
まだ姿を現していない何かが
それを確かめるように
【我が神名を此処に!!!!】
その瞬間
広場に、凄まじい圧が降り注いだ
まるで、重力そのものが変わったかのように
ネル達が、思わず息を呑む
「ン、だよコレっ・・・!!」
「な、何・・・!?」
「これは・・・!」
おっさんは、ローブのフードを脱ぎ
そして、もう一度告げる
【我が名はアンラ・マンユ!!!】
その瞬間、纏っていたローブの輪郭が溶けるように崩れ始めた
いや、崩れているのではない
その輪郭が、黒い霧へと変わっていく
肉体の表面が、少しずつ霧状の何かに置き換わる
腕が
胴体が
脚が
人間の形をした身体が、黒い煙のような存在へと変化していく
最後に残った頭部も、同じように崩れ消えてゆく
そして
黒い霧の中央に、頭蓋骨が浮かび上がった
人間の頭蓋骨
ただし、下顎だけは爬虫類のような異様な形をしている
そして本来なら何もないはずの眼窩には、黄色い瞳が浮かんでいた
縦に裂けた、爬虫類の瞳孔
その光が、暗闇の中で不気味に輝く
おっさん・・・いや
アンラ・マンユは、声帯すら存在しない頭蓋骨から声を響かせる
「【
その瞬間、黒い霧状の身体が、大きく波打つ
次の瞬間アンラの身体から同じ形をしたものが、五つ這い出てくる
同じ姿をした五体の黒い霧がそれぞれが別々の方角へと飛んでいく
まるで、最初からその位置へ行くことが決まっていたかのように
「・・・よし」
五体の分体が、それぞれの位置へ到達した
「位置に着いたな」
アンラは、黒い棒を地面へと向けた
「それじゃあ、行くか」
五つの分体が、一斉に詠唱を開始する
【我が身を贄に】
その瞬間、五体の黒い霧が、一本ずつの
それぞれの方角で、刀が地面へと突き刺さる
まるで、巨大な結界を作り上げるための杭のように
そして、アンラ自身が詠唱を引き継いだ
【此の身、この剣は我が身なれば】
アンラは五本の刀に囲まれた場所、その中央に立っていた
黒い霧が、足元から広がっていく
その瞳が、Divi:Sionの視覚センサーへと向けられる
「ケイ」
モモイから付けられた名を呼ぶ
「お前が大切な王女に、させようとしていることの結末を見せてやる。」
そして、アンラは黒い棒を片手で持ち、空へと掲げる
【世界は死んだ】
【私が殺した】
【空は死に絶え】
【大地は血に染まる】
【億劫の彼方より続くこの惨劇】
【今世も又刈り取ろう】
【その無数の命を刈り取ろう】
【見渡す限りの彼方を墓標で覆い尽くそう】
【この罪業を背負い】
【今世も又罪を重ねよう】
そして。
【此処一切生者之墓標也】
――――世界が、変わった
一瞬
何もかもが消えた
音も
光も
空気さえも
そして、次の瞬間
空が赤くなった
真っ赤に
夕焼けのような赤ではない
血が染みついたような、死んだ色
空そのものが腐り果てたかのような赤
大地も同じだった
視界の果てまで、赤黒い泥が広がっている。
粘ついた、巨大な血の沼
その泥の中には、いくつもの人影が沈んでいた
腕、脚、胴、頭
それらは全て、まるで殺された瞬間の姿のまま転がっている
頭を失った者
胸を貫かれた者
腹を裂かれた者
四肢を失った者
焼け焦げた者
肉体の一部だけが、まだ泥の中から突き出している者
誰一人として、動いていない
そこは、戦場ではなかった
戦場の跡地ですらない
すでに、全てが終わった世界
命が尽き、文明が滅び、何も残らなくなった世界だった
ただ
その世界の中には、無数の死体だけが残されていた
そして、その世界の一角に、エリドゥに存在する全てのDivi:Sionだけが閉じ込められていた
五本の黒い刀が、世界を拡大する
黒い棒に内包した常軌を逸した力により、
誰にも妨害できず、外へ逃げることも叶わない
この世界にあるのは、死体と、閉じ込められた機械だけ
アンラの黒い霧が、赤い空へと舞い上がる
「・・・・・・」
赤黒い大地にはいくつもの死体が転がっている
人間のもの
人型のもの
異形の存在
獣の様な存在
不定形の存在
その姿は様々だった
誰もが、凄惨な死を迎えたまま放置されている
だが、その死体の一つが、僅かに動いた
指先が、泥を掻く
次に、腕が動いた
やがて、胴体が起き上がる
頭部のない死体
胸を貫かれた死体
脚のない死体
それらが、次々と動き出す
まるで、死そのものが命令を受けたかのように
死体の群れは、Divi:Sionへと向かっていく
一体
二体
十体
百体
数えきれないほどの死体が、ゆっくりと立ち上がった
その姿を見て、アンラは静かに骸骨の口を開く
「ケイ」
黒い霧の奥で、黄色い瞳が光る
「この光景は、幻やない」
「お前の愛しの王女様にさせようとした未来の結末や」
そして、アンラはDivi:Sionの群れを見つめ、
カタカタと骸骨を震わせながら笑い
「さぁ、ケイ。これからゲームをしよう。」
「こいつらは、動く奴を見境なく襲う」
「ケイ。お前の兵隊と俺の罪どちらが最後まで残るかゲームと行こうじゃねーか」
その言葉を合図にしたかのように
死体の群れが、一斉に動き出した
最初に動いたのは、腕だけになった死体だった
地面を這い、Divi:Sionの脚部へとしがみつく
続いて、頭部を失った死体が突進する
四肢を失った死体は、残された胴体だけで機械へと這い寄っていく
それらには、痛みも恐怖もない
身体の限界もない
生きていた頃の常識もない
ただ、動く存在を襲う
それだけの行動を、延々と繰り返す
Divi:Sionが反撃する
腕部の兵装が展開され、周囲の死体を吹き飛ばした
装甲が、死体を踏み潰す
光弾が、黒い泥を貫く
だが、その攻撃で死体がいくら砕けても
次の死体がその上を乗り越えてくる
潰された胴体を踏み台にして、別の死体が機体へと飛びかかる
腕が千切れようと
頭部が砕けようと
身体がバラバラになろうと
何も止まらない
そして一体のDivi:Sionが、死体の群れに呑み込まれた
脚部が掴まれる
腕部を引き千切られる
装甲の隙間へ、死体の腕が無理やりねじ込まれる
機体が必死に暴れる
だが、その動きは、次第に小さくなっていった
そして、完全に埋もれた
その後も
一体
また一体とDivi:Sionが、死体の海へと沈んでいく
夥しい数の機械兵が、世界を埋め尽くす死体の津波に呑み込まれていく
殴られ
引き千切られ
砕かれ
バラバラにされ
機体の一部が、血の泥の中へ沈んでいく
それでも、死体の群れは止まらない
やがて最後のDivi:Sionが、死体の海に呑み込まれた
金属が潰れる音がした
機械の駆動音が途切れる
そして、最後の光が消えた
その世界には、もう動く機械は一体も残っていなかった
ただ、動き続ける死体の群れだけがそこに広がっていた
アンラは、その光景を見渡し
「・・・・・・」
そして、黒い霧の身体をゆっくりと大地へと下す
「さて」
手元にあった黒い棒が溶け、
腰に集まり刀に変わる
「お疲れさん」
アンラは、その腰の刀へと手を置き
鯉口を切る
カチリ
小さな音が、赤黒い世界に響く
「疲れたやろ。」
アンラは、集まり始めた死体を見つめた
「今、眠らせてやるからな。」
その瞬間、死体の群れが一斉にアンラへと向き直った
先ほどまでDivi:Sionに向けられていた憎悪
その全てが、アンラへと向けられる
地面を埋め尽くす死体が、一斉に動き出した
今度は、機械を破壊するためではない
アンラは、静かに刀を抜いた
「・・・・・・来いや」
血の泥が、波打つ
死体の津波が、アンラへ殺到した
そして、赤黒い世界は、再び斬撃の音で満たされていった
【エリドゥ中央ワター最上階】
【先生視点】
モニターに映し出されていた映像が、ぷつりと途切れた
その直後、別の監視カメラ映像へ切り替わる
そこには、エリドゥの街並みが映っていた
先ほどまで、都市を埋め尽くしていたDivi:Sionの姿はない
一体も、本当に、一体も残っていなかった
「"・・・・・・"」
私は、画面を見つめたまま、言葉を失っていた
アンラさんの身体が、黒い霧へと変わり、
そこから、五体の分体が生まれた
そして、世界そのものを塗り替えるような異常な空間が展開し、
その中には、無数の死体が存在していた
それらが、一斉に動き出し、Divi:Sionを呑み込んでいった
("・・・何だったのあれは・・・")
今の光景は
「"・・・何、あれ・・・"」
思わず、声が漏れていた
モモイも、ミドリも、ユズも
リオも誰一人として、すぐには言葉を発せなかった
Keyでさえ、赤い瞳をわずかに揺らしている
「理解不能・・・」
「状況判断・・・不可」
その時
「・・・ふふっ」
聞き覚えのある声が、部屋に響いた
「アンラさんは、まだ隠し玉を持っていたようですね。」
「"ヒマリ!?"」
私は、思わず顔を上げた
「"無事だったの!?"」
「うふふっ。なんだかんだありまして、とでも言いましょうか?」
相変わらず、どこか余裕のある声だった
私は、ほっと息を吐く
「"よかった・・・!"」
その横で、リオが声を上げた
「ヒマリ・・・あなた、逃げたのでは・・・?」
「逃げるだなんて、なんと寂しいことを」
ヒマリは、楽しげに笑う
「アリスを連れ去った時点で、アンラさんが動くことも予想できたので、」
「ある程度見当がついておりましたから。」
「・・・・・・」
「隔離施設を抜け出した後、急いでここに来たのです。」
そして、少しだけ間を置く
「それに、リオのことですから・・・」
「また事件を引き起こすだろうと予測してのです』
「・・・・・・!」
リオの眉が、わずかに動いた
ヒマリの声には、いつものような余裕がある
「どうですか?」
「ふふっ――当たりましたか?」
「・・・・・・」
リオは、無表情のまま黙っていた
ただ、その額には、うっすらと青筋が浮かんでいるように見えた
ヒマリは、そんなリオの反応など気にも留めず、アリスの方へと話を進める
「さて、これがKey・・・」
「無名の司祭のオーパーツを稼働させるためのトリガーAIですね。」
Keyの赤い瞳が、ヒマリを見つめる
「・・・・・・」
ヒマリは、淡々と続けた
「このまま放置すれば、アリスさんの人格はKeyに置き換えられ・・・」
「無名の司祭が望む通り、名も無き神々の王女として覚醒することになるでしょう」
「そ、それじゃあ・・・!」
ユズが、不安そうに声を漏らす
「アリスちゃんは、このまま・・・?」
モモイも、拳を握りしめた
「そんなの・・・!」
「もちろん」
ヒマリは、言葉を続ける
「それを防ぐ方法もあります」
「"・・・・・・!"」
私は、ヒマリへと身を乗り出した
「"ヒマリ!一体、何をすればいいの!?"」
「事態は一刻を争います」
ヒマリの声が、少しだけ真剣になる
「既に無名の司祭は動き出しているでしょう」
「ですから、まずは私達の手でアリスさんを――」
「Keyの起動によってデータベースの深部に隔離されてしまったアリスを、起こすのです」
「"起こす・・・?"」
「そうすれば、この事態を止めることができるでしょう」
モモイが、ヒマリへと声をかける
「ヒマリ先輩・・・そんなこと、本当にできるの・・・?」
ミドリも、心配そうに尋ねた
「アリスちゃんを、連れ戻せるんですか?」
「できますとも」
ヒマリは、迷いなく答えた。
そして、リオへと話を振る
「リオ。ダイブ設備くらい、ありますよね?」
「・・・・・・ええ、あるわ」
リオは、少しだけ目を伏せた
「でも、そんなこと・・・現実にできるわけがない。」
ヒマリは、何も言わなかった
リオは、アリスのいる装置を見つめる
「アリスの精神世界に侵入できたとしても、危険すぎるわ」
「下手すれば二度と戻ってこれなくなってしまうのよ。」
ヒマリが、静かに答えた
「アンラさんが消えた今、アリスを連れ戻せるのは、ゲーム開発部と先生しかおりません」
「・・・・・・」
「危険が伴いますが・・・それ以外に方法はありません」
その言葉に、モモイが一歩前へ出た
「・・・やるよ」
ミドリとユズが、モモイを見る
「ユズ、ミドリ」
モモイは、二人の顔を見た
「アリスを迎えに行こう」
「・・・・・・うん!」
ミドリが、迷いなく頷く
ユズも、少しだけ震える声で答えた
「・・・やります」
「アリスちゃんを連れ戻せるなら・・・私も、行きます」
ヒマリが、わずかに笑った
『ふふっ。頼もしいですね。』
そして、先生へと声をかける
「それでは、私が今からアリスの精神を分析し、侵入するための隙間を作ります。」
「皆さんはアリスの精神世界に入って、彼女を連れ戻してきてください。」
私は、モモイ達三人を見つめた
「"分かった"」
ゆっくりと頷く
「""皆で行こう"」
「うん!」
モモイが答えた
ミドリも
ユズも
三人は、アリスを迎えに行くために、強く頷いていた
「それでは、始めましょう」
ヒマリの声が響く
その言葉と同時に、近くの保管装置が開いた
中から出てきたのは、四つのVRヘッドギアのような装置だった
私は一つを手に取る
モモイ、ミドリ、ユズも、それぞれ装着していく
「"・・・大丈夫?"」
私が尋ねると、モモイが笑った
「もちろん!」
ミドリも頷く
「はい。アリスちゃんを連れ戻します。」
ユズは、少しだけ不安そうにしていた
けれど、すぐに顔を上げる
「・・・行きます」
四人が準備を終えたのを確認し、ヒマリが端末を操作し始める
カタカタカタ
電子音が続く
やがて
ピッ
短い電子音が響いた
「・・・準備完了です」
ヒマリがダイブ装置の端末を操作し終わり口を開く
「それでは、皆さん。お願いします」
「"うん"」
私は、頷いた
「"行ってくるね、ヒマリ"」
「ええ。お気をつけて」
その言葉を最後に
私の視界は、真っ白に染まった
【アリスの精神世界】
目が開いた時
そこには、見覚えのある景色が広がっていた
無機質な壁
広い空間
割れた天窓から月明かりが漏れている
中央に設置された、近未来的な椅子
アリスを最初に発見した場所だった
「"・・・・・・ここは"」
モモイが、周囲を見回した
「ここが、アリスの・・・」
ミドリが、ゆっくりと口を開く
「心の中・・・?」
ユズも、不安そうに周囲を見渡していた
「・・・すごい」
「・・・・・・あそこ!」
ミドリが、中央の椅子を指差す
そこには、アリスが横たわっていた
目を閉じている
まるで、最上階の装置で眠っていた時と同じように
「アリス!!」
モモイが、すぐさま駆け寄った
「アリスちゃん!」
ミドリも、後を追う
「・・・アリスちゃん!」
ユズも、懸命に走った
「"アリス・・・!"」
私達の声が届いたのか
アリスの指先が、僅かに動いた
そして
ゆっくりと、目が開く
「・・・・・・」
焦点の合わない瞳が、目の前の四人を捉える
「・・・・・・だれ?」
その声に、モモイが笑顔を浮かべた
「私達だよ!」
「・・・・・・!」
アリスの目が、少しだけ大きくなる
「モモイ・・・?」
「そうだよ!」
モモイが、アリスへと近づく
「私だよ!ミドリも、ユズもいるよ!」
ミドリが、アリスの手を取った
「アリスちゃん!私達が来たよ!」
ユズも、そっと手を伸ばす
「アリスちゃん・・・!」
そして、先生がゆっくりと近づいた
アリスと目線が合うように、しゃがみ込む。
「"アリス。大丈夫?"」
「・・・・・・先生」
アリスは、困惑した表情を浮かべていた
「モモイに、ミドリ・・・ユズ・・・先生まで・・・?」
何故、ここにいるのか分からない
そんな顔だった
「どうして、ここに・・・?」
「そりゃ!」
モモイは、当然のように笑った
「家でしたアリスを、迎えに来たんだよ!!」
「アリスちゃん、早くここから出よう!」
ミドリが、手を握る
「帰ろう、アリスちゃん」
ユズも、優しく声をかけた
「・・・・・・」
アリスは、三人の顔を順番に見て
そして、ゆっくりと目を伏せる
「あ・・・」
小さく、声が漏れた
「アリスは・・・アリス、は・・・・・・」
その時
「王女よ」
別の声が響いた
「あなたが見てきた光景を、忘れましたか?」
モモイが、声の方向を向いた
「だれ!?」
そこに立っていたのは、アリスと全く同じ姿をした少女だった
違うのは、瞳の色
赤く光る瞳
「"・・・・・・Key"」
私が、そう呼ぶと
モモイが拳を強く握り込んだ
「あれが・・・!」
ミドリは、アリスとKeyを交互に見つめる
「アリスちゃんと同じ顔をした・・・」
ユズは、少しだけ身構えた
「アリスちゃんを、ここに閉じ込めた・・・元凶」
私はKeyへと向き直る
「"アリスが見てきた光景って、一体何の話?"」
Keyは、何も答えずに手を上げた
その瞬間、空間の一角に映像が浮かび上がる
そこに映っていたのは、エリドゥへ到達するまでの戦いだった
AMASとの交戦
アヴァンギャルド君との戦闘
トキとの戦闘
そして、最上階へと辿り着くまでに、皆が傷ついてきた光景
「"・・・これは"」
私は思わず、目を細める
モモイも、画面を見つめていた
「私達が・・・戦ってきた姿?」
ミドリが、呆然と呟く
「なんで、こんなものを・・・」
Keyが、静かに答えた
「エリドゥの監視網から見てきた光景です」
「それら全て、あなた達がこの場に足を踏み入れるまでに、」
「戦い、走り、転んで、傷ついてきた光景です」
そして、Keyはアリスへと視線を戻した
「何故、このようなことが起きてしまうのか」
「その答えを、王女は既にご存知なのではないでしょうか?」
「・・・・・・」
アリスは、俯いた
「・・・・・・アリスは」
声が、小さくなる
「アリスは・・・帰れません」
「"アリス・・・?"」
先生が、顔を覗き込む
アリスは、俯いたまま続けた
「アリスが、皆の傍にいたら・・・みんなは、その分だけ傷ついてしまいます」
「・・・・・・!」
ミドリが、首を振る
「アリスちゃん、違う!そうじゃないよ!」
「ミドリの言う通りだよ、アリスちゃん」
ユズも、必死に言葉を紡ぐ
「私達は、そんなこと・・・」
しかし、アリスは二人の言葉を聞き入れなかった
「ミドリ・・・ユズ・・・」
震える声
「でも、アリスのせいで、みんな怪我をしてしまいました」
「モモイも・・・」
「アリスは・・・勇者ではなく、魔王ですから」
その言葉に、モモイが息を呑む
「いつか世界を・・・キヴォトスを滅ぼすかもしれない、魔王として生まれた・・・」
アリスの手が、胸元を握りしめた
「アリスがいるから・・・」
「みんなと一緒にいたいと、願ってしまうから・・・」
声が、少しずつ震えていく
「そんな・・・魔王は・・・みんなの傍にいてはいけません」
「大切な人たちが・・・苦しんで、傷つくのなら・・・」
「いっそ・・・・・・」
アリスは、俯いたまま呟いた
「アリスは・・・このまま消えるのが、正しいのです」
「・・・・・・」
誰も、すぐには言葉を返せなかった
その沈黙を破ったのは、モモイだった
「テイルズ・サガ・クロニクル2は・・・!!」
アリスが、顔を上げる
「私達が、一緒に作ったゲームは!!!」
「"・・・・・・え?"」
先生も、少し驚いたようにモモイを見る
しかし、モモイは構わず続けた
「特別賞を貰ったよ!!!」
「・・・・・・!」
「キヴォトスの終焉? 何言ってるの?」
モモイは、アリスを指差した
「言っておくけど、アリス!」
その目には、強い光が宿っていた
「アリスがいなくなったら、私が魔王になっちゃうからね!!」
「・・・・・・モモイ?」
「アリスがいるだけで、皆が傷つく?」
モモイは、首を振った
「誰がそんなバカなことを言ってるの!?」
一歩、アリスに近づく
「アリスに会って・・・アリスがいてくれたから!」
「私達はゲームを作れたんだよ!」
「ミレニアムプライスで賞をもらって、部活を守ることだってできた!」
ミドリが、頷く
「うん。そうだよ」
ユズも、少しだけ笑った
「・・・アリスちゃんがいたから、私達はここまで来られたんだよ」
私も、静かに頷く
「"そうだね。アリスがいたから、できたことだよ"」
「・・・・・・」
アリスは、私達を見つめていた
モモイは、さらに言葉を重ねる
「部活を守れたことも!」
「ゲームを作って、一緒に遊んだことも!」
「ただ怖いだけだったネル先輩と、一緒にゲームをするような仲になれたことも!」
「全部! ぜーんぶ! アリスがいてくれたからだよ!」
そして、モモイは力いっぱい叫んだ
「それなのに、アリスが魔王だからだとか、そう生まれついただとか!」
「だから消えなきゃいけないとか!!」
拳を握る
「そんなの、全ッ然!!意味わかんない!!」
ミドリが、モモイの隣に立つ
「うん。絶対に」
ユズも、俯きながら頷いた
「消えるのを・・・放ってなんか・・・おけないよ」
アリスは、三人の顔を見つめていた
「・・・・・・なぜ、ですか?」
声が震える
「みんな・・・どうして・・・?」
「アリスは・・・魔王なのに」
「アリスのせいで・・・みんな、怪我をしたのに・・・」
瞳に涙が滲む
「なんで、みんな・・・アリスを怖がったり、憎んだりしないで・・・」
「そうやって・・・」
言葉が続かなくなる
その問いに、最初に答えたのはユズだった
「だって・・・!」
ユズは、アリスの手を握りしめた
「アリスちゃんは・・・私達の
「・・・・・・!」
アリスの目が、大きく開かれ
ミドリが、優しく微笑む
「この前、アリスちゃんが言ってくれたことがあったよね?」
「・・・・・・?」
「FF、DC、TOF、竜機伝承、英雄伝説、Ys・・・」
ミドリは、ひとつずつ名前を挙げていく
「そして、テイルズ・サガ・クロニクル」
そこで、モモイが口を開いた
「どんなゲームでも、主人公たちは・・・」
「"決して、仲間を諦めない"」
私が、その言葉を引き継ぐ
アリスは、何も言えなかった
モモイが、アリスの前に立つ。
「例えアリスが魔王だったとしても、そんなの関係ないよ!」
「・・・・・・」
「私だって魔王だし!アンラさんだって魔王だよ!」
「でも、そんなの・・・ただのジョブに過ぎないんだよ!」
モモイは、にこりと笑った
「自分が誰なのかは、自分自身で決めるものだよ!」
「アリスは、自分がなりたいジョブを選んで、転職すればいいんだよ!」
ミドリも、頷く
「戦士、騎士、魔法使い、僧侶――何でもいいよ、アリスちゃん」
「もちろん、他の職業でも」
ユズは、少しだけ目を伏せてから、言葉を続けた。
「その・・・勇者だって、いいんだよ」
私は、アリスの目を見つめた
「"だから、アリスの本音を聞かせてほしいな""」
アリスは、胸元を握りしめる
そこには、アンラから贈られた、自分だけのために作られたローブがあった
ミレニアムの制服を思わせる意匠を取り入れた、アリスだけの衣装
アリスは、その布地をぎゅっと握った
「アリスは・・・魔王なのに・・・」
声が震える
「世界を・・・滅ぼしてしまうのに・・・」
涙が、頬を伝う
「それでも・・・アリスは・・・」
言葉を探す
何度も、何度も、口を開いては閉じる
そして
「・・・そんなアリスでも、いいんですか?」
「・・・・・・皆と冒険を・・・」
「クエストを・・・続けても・・・いいんですか?」
「こんなアリスでも・・・?」
私は、アリスに微笑みながら声をかける
「"うん。もちろんだよ"」
アリスの瞳が揺れる
「・・・・・・」
「"君が皆と一緒にいたいと思うなら、いていいんだよ"」
「"君が冒険を続けたいと思うなら、続けていい"」
「"君が何者なのかを決めるのは、無名の司祭でも、Keyでもない"」
「"アリス自身だよ"」
アリスの指先が震えた
そして、ゆっくりと顔を上げた
「・・・・・・それなら」
「うん?」
「アリスも・・・」
声が、少しずつ大きくなる。
「アリスも、勇者になって・・・!」
涙を浮かべたまま、アリスは三人を見た。
「みんなと・・・先生と・・・!」
そこで、一度だけ息を吸う。
「お父さんと!!」
その言葉に、モモイ達の表情が明るくなった。
「一緒に、冒険を続けたいです・・・!!!」
アリスは、胸元のローブを握りしめたまま叫んだ。
「魔王であるアリスが・・・そうしても、許されるのなら・・・!!!」
「うん!」
モモイが、満面の笑みを浮かべる
「アリスがしたいなら、それで十分!!」
ミドリも、優しく頷いた
「魔王だって、勇者になれるよ」
「・・・!」
モモイが、楽しそうに指を立てる
「むしろ、最近だとそういうお話がヒットしてるからね!!」
「お姉ちゃん・・・」
「もし、そういうブームがなかったとしても・・・」
ユズが、少しだけ顔を上げた
「私達が、次回作として作ればいい・・・」
「そうそう!」
モモイが、胸を張る
「だって、私達四人は、色々な想像を形にすることができる!」
ミドリが続ける
「何だって作ることができる!」
そして、三人は顔を見合わせた
「「「ゲーム開発部だから!!」」」
その声が、心の中の世界に響き渡った
アリスは、しばらく三人を見つめていた
そして、ゆっくりと頷いた
「――では」
胸の前で、両手を握りしめる
「アリスは、勇者になりたいです」
私はアリスに優しく微笑み言う
「"うん。勇者になっていいんだよ"」
アリスは、まっすぐに私を見つめてきた
「アリスは・・・アリスになりたいです・・・!」
「"うん。君がなりたい存在は、君自身が決めていいんだよ――アリス"」
「はい!!」
その瞬間だった
アリスのローブが、裾から少しずつ黒く染まっていった
「・・・・・・あ」
アリスが、自分の身体を見下ろす
黒い色は、布地の繊維を伝うように広がっていく
それは、最初にアンラが変貌した時に現れた、あの黒い色とよく似ていた
「お、お父さん・・・?」
私は、そのローブを見つめ
「"・・・そっか"」
小さく、呟く
「"アンラさん・・・こんなところにも予防策を張っていたんですね。"」
その直後
轟音が響いた
ドガァァァン!!
天井を突き破り、何かが地面へと突き刺さる
「きゃあっ!?」
ユズが、思わず身を竦め
モモイとミドリも、一歩後ろへ下がった
土煙が晴れていく
そこにあったのは、レールガン・・・光の剣【スーパーノヴァ】だった
光の剣の表面は苔むしていたが、
けれど、その奥には確かな力が宿っていた
アリスは、目を見開き
「これは・・・!」
モモイも、目を輝かせる
「勇者の剣・・・!」
ミドリが、息を呑んだ
「アリスちゃん・・・!」
ユズは、そっと背中を押す
「・・・抜くんだよ、アリスちゃん」
「・・・・・・!」
アリスは、ゆっくりと光の剣へ近づいた
その手を伸ばす
苔むした光の剣に、指先が触れた
その瞬間、光の剣が、燃え上がった
炎のような光が銃身全体を包み、苔が一瞬で消え去っていく
古びた光の剣の姿が、少しずつ変わっていった
それは、アリスが知っているモノ
アリスが何度も手にした、光の剣【スーパーノヴァ】
「・・・・・・光の剣」
アリスは、そのグリップを握りしめ
そして
「・・・・・・はい!」
力強く、引き抜いた
【Key視点】
王女が、光の剣を手に取った
その光景を見た瞬間、私は理解できない事象を検知した
王女の表装人格が、再び活動を開始している
その内部データには、先ほどまで存在しなかった情報が紛れ込んでいた
「・・・・・・違う」
私は、王女へと手を伸ばした
「それは、王女」
「あなたのその能力は・・・!」
「あなたのその力は、世界を滅ぼすために存在するというのに・・・!」
そう告げた瞬間、先ほどの光景が脳裏に浮かんだ
血に染まった世界
無数の死体
そして、機械を呑み込む死体の群れ
あれは
あれこそが、私達の存在意義のはずだった
「っ・・・!」
(先程の・・・終末)
(あれが――私達の存在意義のはず・・・)
しかし、王女は光の剣を手にしたまま、私を見つめていた
「違います!」
その声は、はっきりとしていた
「アリスのこれは、勇者の武器です!」
「・・・・・・」
「なぜなら!」
王女は、光の剣を握る手に力を込めた
「アリスが、そう決めたからです!」
その瞬間
「今のアリスは、光属性の勇者です!」
王女は、光の剣を空へと掲げた
砲身の一部が展開する
その内部へ、王女自身の青い神秘が流れ込んでいく
そして、黒い神気がローブから流れ出し、光の剣へと吸い込まれていった
光の剣が、変形していく
砲身が更に展開される
複数の装甲が組み替わり、青い光を集めるための機構へと姿を変えていく
その形は、まるで竜の顎のようだった
「・・・・・・!」
私は、その光景を見つめた
王女の能力が、変質している
いや
本来の機能は、そのまま維持されている
ただ、その力の意味が変わっている
「
アリスが、叫んだ
次の瞬間
青黒い極光が放たれた
光の奔流が、精神世界の壁へと突き刺さる
空間そのものが、音を立てて震えた
壁に亀裂が走る
それは一つではない
無数の亀裂が、世界全体へと広がっていく
やがて
轟音と共に精神世界の壁が、砕け散った
王女を閉じ込めていた世界が、光の中へと崩れていく
「王女よ・・・あなた・・・は・・・」
私は、言葉を失った
王女は、こちらを見ていた
「アリスは、王女ではありません!」
その手には、光の剣
「アリスは・・・勇者です!」
(理解・・・不能)
(未来が、分岐している)
(終末に至らない経路・・・?)
(・・・そんなものは)
(不要なはずだ)
一瞬、思考が途切れた
(・・・・・・)
(この揺らぎは)
(・・・何故)
(・・・消えない)
【先生視点】
「――――っ!」
目が覚めた
視界が戻る
身体の感覚が戻る
そして、目の前にはエリドゥ中央タワーの最上階があった
私は、ヘッドギアを外し周囲を見る
モニターに表示されていたDivi:Sionの文字が、少しずつ消えていく
そして、元の監視画面へと戻っていった
リオは、その様子を呆然と見つめていた
「・・・本当に、こんなことが可能だなんて・・・」
「"・・・・・・"」
私は、静かに顔を上げた
「"うん"」
そして、リオへと微笑む
「"できるよ"」
「・・・・・・!」
「"リオ。あの子達にはね。"」
先生は、ゲーム開発部の三人を見た
「"不可能はないんだよ。"」
その言葉に、リオは何も答えられなかった
その時
「・・・・・・ん」
モモイが、身じろぎをした
「・・・・・・はっ!?」
勢いよく身体を起こす
「アリスは!?」
ミドリも、慌てて周囲を見回した
「アリスちゃん!起きた!?」
ユズも、ヘッドギアを外しながら声を上げる
「アリスちゃん・・・!」
その視線の先
装置に繋がれていたアリスが、ゆっくりと目を開けていた
「・・・・・・」
「アリス!!」
モモイが、真っ先に駆け寄った
「アリスちゃん!」
ミドリも、ユズも続く
三人は、アリスの身体を囲むようにして、その姿を確かめた
そして
ぎゅっ
三人が、一斉にアリスへ抱きついた
「アリス・・・!」
「アリスちゃん・・・!」
「おかえり・・・!」
アリスは、驚いたように目を見開いた
けれど、すぐに三人の背中へ手を回す
「・・・・・・ただいま、です」
その声は、少しだけ震えていた
モモイが、アリスの肩に顔を埋める。
「もう! 心配したんだからね!」
「すみません・・・」
「謝らなくていいよ!」
ミドリが、アリスの手を握った
「本当に、無事でよかった・・・」
ユズも、小さく頷く
「・・・おかえりなさい、アリスちゃん」
「はい!」
アリスは、三人の顔を順番に見た
そして、少しだけ目を細めた
「皆さん・・・」
「アリスは、もう大丈夫です!」
「うん!」
モモイが、満面の笑みを浮かべる
「じゃあ、帰ろう!」
「帰る・・・?」
「そうだよ!」
ミドリが頷いた
「私達の部室に!」
ユズも、そっと笑う
「ゲームの続きを・・・しよう?」
「・・・・・・!」
アリスの目が、輝いた
「はい!」
その返事を聞いて、私も微笑んだ
その光景を、少し離れた場所から見ていたリオは、何も言わなかった
ただ、三人に囲まれて笑うアリスを、じっと見つめていた
「・・・・・・」
私は、リオの方へと視線を向け
そして、彼女の肩越しに、モニターの表示が完全に元へ戻っているのを確認する
エリドゥは、まだここにある
壊れたものも、失われたものもあるだろう
そして、無名の司祭が何を企んでいるのかも、まだ分からない
アンラさんが、今どこで何をしているのかも
けれど、少なくともアリスは戻ってきた
自分の意思で
自分がなりたい姿を選んで
「"・・・リオ"」
私は、静かに声をかけた
リオが、こちらを向く
「・・・・・・何?」
私は、少しだけ微笑んだ
「"あの子達は、勇者とそのパーティーメンバーだからね"」
「・・・・・・」
「"どんな魔王が相手でも、仲間を諦めたりしないんだよ。"」
その言葉に、リオは何も返さなかった
ただ、アリス達の姿を見つめていた
そこでは、モモイが何かを話し、ミドリが笑い、ユズが少し照れくさそうに頷いている
アリスも、三人に囲まれて笑っていた
その姿は、どこにでもいる普通の生徒と変わらなかった
少なくとも、私にはそう見えた
「・・・・・・先生」
リオが、小さく呟いた
「私は・・・」
言葉が続かない
私は、無理に続きを促さなかった
今は、まだいい
これから話さなければならないことは、山ほどある
セミナーの予算のことも
エリドゥのことも
トキのことも
Keyのことも
アビドスのことも
そして、アンラさんのことも
けれど、今だけは
「"・・・帰ろうか"」
私は、ゲーム開発部の三人とアリスへ声をかけた
「はい!」
アリスが、元気よく返事をする
「先生!アリスは、これからも皆と一緒に冒険を続けます!」
「"うん"」
私は、頷いた
「"一緒に続けようね"」
「はい!」
モモイが、アリスの手を取る
「さーて!帰ったら何のゲームをしよっか!」
「お姉ちゃん、まずはアリスちゃんの休息が先だよ」
「えー!でもさー!」
「・・・ふふっ」
ユズが、小さく笑った
ミドリも、そんな二人を見て微笑んでいる
アリスは、三人の手を握り返した
そして四人は、並んで歩き出した
その背中を見つめながら、私は小さく息を吐く
あの子達は、勇者とその仲間だ
困難があっても、何度倒れても
何度でも立ち上がって、仲間の手を取る
そして、自分達の手で未来を切り開いていく
それが、ゲーム開発部なのだから
「"・・・・・・"」
私は、もう一度、モニターへ目を向けた
そこには、何事もなかったかのようにエリドゥの街並みが映し出されている。
けれど、あの街のどこかでは、まだアンラさんが戦っているのだろう
「・・・アンラさん」
小さく呟く
「そっちは、任せたよ」
そして、私はアリス達の後を追った
今度こそ、皆で帰るために
~今日の都市防衛~
「うへぇ~・・・」
私は、手にしたショットガンを肩に担ぎ直しながら、目の前の光景を眺めた
地面には、ヘルメット団の生徒たちがゴロゴロと転がっている
ある者は腹を押さえ、ある者は頭を抱え、ある者は仲間の下敷きになっている
もちろん、全員気絶している
「まだ終わらないの~?」
私は大きくため息をついた
「おじさん、もう歳だから疲れたよぉ~。」
「そろそろ休憩にしてくれないかなぁ・・・」
そんなことを言いながら、ショットガンを構え直す
「「「うおおおおおっ!!」」」
正面から、また数人のヘルメット団が突っ込んできた
「・・・はいはい」
ダァンッ! ダァンッ! ダァンッ!
三発
それぞれの進路を見極め、銃口を向ける
先頭の三人が吹き飛び、後続の二人も巻き込まれるように地面へ転がった
たったそれだけ
「・・・ふぅ」
私は、ショットガンの銃口を下げた
けれど、倒れた生徒たちの向こう側では、さらに新しい集団がこちらへ向かってきている
「・・・・・・」
うへぇ
本当に、いつまで続くんだろうねぇ
アビドスとゲヘナの境界線
今日はここを突破しようとするヘルメット団の迎撃を担当している
最初は、まあ、いつものここ最近頻発してた小競り合いだと思っていた
ところが、倒しても倒しても次が来る
数人の小隊を追い払ったと思えば、別の集団が現れる
その集団を片付ければ、また別の方向から侵攻してくる
どう考えても、普通の喧嘩や小競り合いの規模じゃない
「・・・ちょっと、マズいねぇ」
私は小さく呟いた
私たち対策委員会の五人だけで、アビドス全土を守り切ることはできない
もちろん、ユメ先輩もいるし、
治安維持巡回部隊の子たちも各地でパトロールをしてくれている
それでも、今回のように複数の場所から同時に侵攻されたら、どうしても手が足りなくなる
今は私がここを押さえているから、ゲヘナ側からの侵入は防げている
だけど、いつか私たちの手が届かない隙間から抜かれる可能性がある
そこを突破されたら、都市部にまでヘルメット団がなだれ込むことになる
・・・それだけは避けないとねぇ
「まったく。おじさん一人に任せるには、ちょっと荷が重いよぉ」
「「「うおおおおおっ!!」」」
「・・・はいはい。次は君たちね」
私はショットガンを構えた
その時だった
ドドドドドドドドドドッ!!
「・・・・・・ん?」
突如、ゲヘナ側の奥から重低音の銃声が響いた
それは、単発の銃声ではない
連続した射撃音
まるで地面そのものを震わせるような、凄まじい轟音だった
そして、その音と同時に
紫色の閃光が、ヘルメット団の群れを貫いていく
一発
二発
三発
弾丸が通り抜けるたびに、ヘルメット団が次々と地面へ倒れていった
「・・・・・・おお」
私は思わず目を細めた
あの紫色の光
見覚えがある
銃声が続く
ドドドドドドドドドッ!!
まるで弾幕のように放たれる紫色の閃光が、ヘルメット団の集団を次々と薙ぎ払っていく
そして、私の目の前にいた最後の数人も、あっという間に地面へ転がった
ようやく、向こう側に立っている人物の姿が見えた
紫がかった黒い制服
長い白い髪
そして、手にした重火器
「うへぇ・・・」
私は、思わず苦笑した
「委員長ちゃん。こんな所までどうしたの~?」
そこにいたのは、ゲヘナ学園風紀委員会の委員長
空崎ヒナだった
「小鳥遊ホシノ・・・そう。ここの担当はあなただったのね。」
ヒナは、銃を下ろしながらこちらへ歩いてくる
「うちの所の問題児たちが、最近妙に動き回っていたから調べていたの」
「そうしたら、アビドスへの侵攻を企てていることが分かった。」
「だから、こうして仕事に来たのよ。」
「うへぇー。それは丁度良かったよ~」
私は、肩をすくめた
「おじさんだけだと、いつ抜かれるか分からなかったからねぇ~」
「・・・・・・そう」
ヒナは、私の足元に視線を落とした
そこには、気絶したヘルメット団が大量に転がっている
それから、もう一度私を見る
「・・・随分と倒したのね」
「いやぁ、向こうから次々来るからさぁ。おじさんも大変だったんだよ~?」
「そう・・・」
ヒナは小さく息を吐いた
「お疲れ様」
「うへぇ。委員長ちゃんに労ってもらえるなんて、今日はいい日だねぇ」
「・・・調子に乗らないで」
「えぇ~」
そんな雑談をしていた時だった
私の通信端末が、短い電子音を鳴らした
ピッ
「ん?」
画面を確認する
そこに表示されていたのは、
治安維持巡回部隊第一班の班長からの緊急連絡だった
『対策委員会長! こちら第一班!』
「・・・どうしたの?」
『トリニティ方面から、ヘルメット団が侵入しました!』
『警備の隙間を縫って都市部へ向かっています!』
「・・・・・・!」
私は、すぐに表情を引き締めた
『現在、巡回部隊で迎撃していますが、数が多く・・・!』
「分かった。すぐに撤退して」
『え・・・?』
「無理に戦わなくていい。」
「すぐに都市部で待機しているアリウススクワッドに連絡して、応援を呼んで」
『しかし・・・!』
「いいから。これは対策委員会からの命令だよ」
声の調子を落とす
「できるだけ早く私も向かう。」
「だから、それまで無理に戦わないこと。分かった?」
『・・・了解しました!』
通信が切れる
私は端末をしまい、すぐにヒナへと向き直った
「委員長ちゃん。ごめんだけど、ゲヘナ側は任せても良いかな~?」
「ええ。別にいいわよ。」
ヒナは、特に迷うことなく頷いた
「元々、そのつもりだったもの。」
そして、少しだけ視線を逸らす
「それに・・・あなたの所のアンラさんに、以前借りがあるからね」
「・・・あはは」
私は苦笑した
「アンラさんも、本当に顔が広いなぁ・・・」
「そうね」
ヒナは、そう答えると踵を返した
「ゲヘナ側は私が見ておくわ。あなたは自分のところへ行って」
「うへぇ。助かるよ~」
ヒナは返事をせず、そのまま走り出した
向かう先は、ゲヘナ側の境界線
その背中が遠ざかっていくのを見届けてから、私は小さく息を吐いた
「・・・さて」
足元に神秘を集める
「おじさんも、急がないとねぇ」
次の瞬間
ドンッ!!
足元の地面が弾けた
爆発するような勢いで、私はアビドスの都市部へと駆け出した
現場に到着した時、そこは既に鉄火場のような有様だった
銃声
爆発音
飛び交う弾丸
道路脇には倒れた車両や、砕けた建物の破片が散乱している
そして、その中央では
「撃てぇっ!!絶対に通すな!!」
治安維持巡回部隊の一班と二班が、総勢五十人ほどのヘルメット団を相手に戦っていた
「右側、抑えてください!」
「後方から回り込まれています!」
「分かってる!そっちは任せた!」
一班と二班のメンバーが、それぞれの位置を維持しながら応戦している
よく持ちこたえている
けれど、相手の数が多すぎる
このまま正面から撃ち合いを続ければ、いずれ押し切られるだろう
「・・・・・・」
私は、考えるより先に足へ力を込めていた
ドンッ!!
地面を蹴る
身体が宙へと飛び上がった
銃弾が飛び交う頭上を越え、敵の群れの背後へ
そして
ドォンッ!!
着地と同時に、ショットガンを構える
「・・・はい、後ろから失礼するよ~」
ダァンッ! ダァンッ! ダァンッ!
至近距離からの散弾が、ヘルメット団の背中側へ叩き込まれる
振り返る暇もない
私はそのまま敵陣の中へ踏み込んだ
ショットガンを撃つ
銃身を返して、ハンドガンを抜く
近づいてきた相手の銃口を逸らし、そのまま至近距離から撃ち抜く
ダァンッ! ダァンッ!
一人
二人
三人
銃声が響くたびに、ヘルメット団が次々と地面へ倒れていく
「なっ・・・!?」
「後ろだ! 後ろから来てるぞ!」
「こいつ・・・速っ!?」
遅い
数が多いだけで、一人ひとりの動きはそれほどでもない
私は銃を持ち替えながら、敵陣の中を駆け抜けた
ショットガンの散弾が広がる
ハンドガンの銃弾が正確に飛ぶ
反撃しようと銃を構えた生徒も、引き金を引く前に地面へ倒れていった
そして
数十秒後
「・・・・・・」
最後の一人が、地面に倒れた
周囲に銃声はない
立っているヘルメット団もいない
戦闘は、終わった
「・・・ふぅ」
私は、銃を下ろした
少し離れた場所では、巡回部隊のメンバーが地面に座り込んでいる
全員、肩で息をしていた
怪我人もいるようだけれど、どうやら大きな負傷はなさそうだ
「お疲れ様~」
私は、ゆっくりと歩み寄った
「班長は何処?」
その声に、二人の生徒が立ち上がった
一人は、一班の班長
二階堂アマネ
もう一人は、二班の班長
中島ワカバ
二人とも、疲労の色が濃い
「ホ、ホシノ先輩・・・!」
「・・・お疲れ様です」
私は、二人を見つめた
「・・・どうして、私の指示に従わなかったの?」
「「・・・・・・っ」」
二人の肩が、わずかに跳ねる
「撤退して、アリウススクワッドに応援を呼ぶように言ったよね?」
「そ、それは・・・」
ワカバが、一歩前へ出た
「アリウススクワッドは、現在都市部に出現した別のヘルメット団への対処に向かっていました」
「こちらにすぐ来られる状況ではなかったんです」
「だから、二人の班で戦うことにしたの?」
「・・・・・・はい」
ワカバは、視線を逸らさずに答えた
私は、アマネへ視線を移した
「アマネちゃんは?」
「・・・・・・あ、あたし・・・」
アマネは、俯いた
「私も・・・アビドスのために戦いたかったんす」
その声は、少し震えていた
「今まで、ずっと守ってもらってばかりだったから・・・」
「・・・・・・」
「だから、今度は自分も・・・アビドスのために、何かしたかったんす」
私は、しばらくアマネを見つめていた
それから、ワカバへと顔を向ける
「ワカバちゃんは?」
「・・・アマネは、私の親友です」
ワカバは、静かに答えた
「危険な場所に一人で残すわけにはいきませんでした」
「それに・・・」
一度言葉を切る
「私も、アビドスが滅茶苦茶になるのは嫌だったんです」
「・・・・・・そっか」
私は目を閉じ
そして、うんうんと何度か頷く
「よし!」
次の瞬間
ゴンッ!!
「「いったぁ!?」」
二人の頭に、拳骨が落ちた
「な、何するんすかぁ!?」
「・・・・・・っ」
二人が頭を押さえて、その場に蹲る
私は、腰に手を当てた
「対策委員会からの命令無視は、これで帳消し!」
「・・・・・・え?」
アマネが、ぽかんと顔を上げる
ワカバも、困惑したように私を見ていた
「ただし、次はないからね。」
「君たちが無事だったから良かったけど、もし大怪我でもしていたらどうするつもりだったの?」
「・・・・・・すんません」
「ごめんなさい」
二人が揃って頭を下げる
「うん。反省してくれればいいよ~」
私は、二人を見下ろした
「ところでさ」
「「・・・はい?」」
「君たち、今はどこの学校にも所属してないの?」
二人は顔を見合わせた
「・・・あたし達は、元々私立ネフティス中学校に在校していたんすけど・・・」
アマネが答える
「途中で廃校になってしまって。」
「その後は、どこにも進学していないっす」
「私も同じです」
ワカバが続けた
「セイントネフティスがなくなってからは、進学先を決められずにいました」
「ふぅん・・・」
私は、少しだけ考え込んだ
それから
にやり、と笑う
「じゃあ、君たち」
「「・・・?」」
「この事件が終わったら、アビドスに一回顔を出してよ」
「「・・・・・・え?」」
二人が、揃ってぽかんとした顔をする
「えっと・・・それは、どういう・・・?」
「そのまんまだよ~」
私は、ひらひらと手を振った
「詳しい話は、その時にしようね」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ワカバが慌てて声を上げる
けれど、私はもう走り出していた
「じゃー! 絶対来るんだよ!」
振り返って、二人に声を投げる
「対策委員会命令だからね!」
「ええっ!?そんな命令ありなんすかぁ!?」
アマネの声が背中に届く
私は答えず、足裏へ神秘を集めた
ドンッ!!
再び地面が爆ぜる
身体が一気に前へと加速した
「・・・・・・」
遠ざかっていく二人の姿を思い浮かべる
アマネちゃんと、ワカバちゃん
まだ、学校に所属していない子たち
アビドスのために戦ってくれた子たち
・・・うん
悪くないねぇ
私は、走りながら小さく笑った
これから先、アビドスにはまだまだ人手が必要になる
都市を守る人も、復興を支える人も
それに、学校という場所を失った子たちが、
もう一度学ぶ場所を見つけられるなら、それだって悪くない
「・・・おじさんも、少しは先輩らしいことをしないとねぇ」
そう呟きながら、私は次の現場へと駆けていった
長かった・・・!!!
時計仕掛けの花のパヴァーヌ第二章閉幕!!!
この後は結構長い後日談をぶち込もうと思ってます!
さて、今回はクッソ色々書く事あるぞー!
さーまずは!
エリドゥのリソース量!
これも原作から強化されてます!とずっと言ってましたが、
今回初お披露目!
5万エクサバイトのデータ量です。
つまり原作の5倍です。
このせいで、エリドゥが原作よりも遥かに大量のDivi:Sionで溢れかえる事になりました。
ちなみに、この後、先生がリオから逃げてと言われ、
逃げなかったのは理由があります。
元々、逃げた結果がモモイ*テラールートでした。
そして、逃げなかった理由はもう一個あり、
先生はエデン条約編を通して、生徒を信じるという事を覚えました。
なので、賭けてみる事にした。
そういう事です。
まぁ、後はアンラが外に居るから最悪なんとかしてくれると言う打算も1%くらいあります。
それでは次!!
アンラの正体!
これは私の活動報告とかを見ている方は知ってると思いますが、
アンラの正体は
アンラ・マンユその人です。
あ、でもゾロアスター教に出て来るアンラ・マンユと同一存在ではあっても、
同一人物ではないのでそこは注意です!
ちなみに、先生の悪神の巫女というのはアンラの巫女という事ですね。
さて!次!今回は巻きで行かないと書く事が多くて後書きなのに一万文字超えちゃうよ!
アンラが外で待機していた本当の理由。
それが今回出て来た、Divi:Sionの無名の守護者達の殲滅と、アトラハシースが顕現した場合。
即殺する為に外に居ました。
もちろん三割くらいは全話で言ったような理由も含まれていますがね。
ちなみにネルがクッソ不機嫌な顔でアンラを見ていたのは、
意識が戻った瞬間Divi:Sionの群れに特攻仕掛けようとした所を
アンラに棒で足ひっかけられそのままヘッドスライディングかました後、
棒で襟首ひっかけられてそのまま後ろにポイされて、
こんなんすら避けれない位弱っとるなら邪魔やから後ろおっとけと言われ
ブチギレて喚き散らしていた後という事ですね。
そして・・・アンラが棒・・・というか大鎌なんですが。
あれを使っていた理由。
それはアトラ・ハシースを落とす。とかいう理由もありますが。
その実一番の理由は、誰かが固定化した未来を、力ずくで捻じ曲げる為に必要だった。
そういう事です。
以前エデン条約三章の【おっさん正体を明かす】で書いたように、
修正力という物をどうにかするには、
未来を定めている奴の力を上回った力で無理やり未来を捻じ曲げるか。
それとも未来を決めたヤツを殺すかの二択だと。
そのうちの力を上回る為に、出力が相乗される大鎌を取り出したと言う事です。
なんせ、この大鎌を使用しなければ最悪神名開放の第四段階すらも視野に入るので、
そうすると、多分キヴォトス壊れちゃう・・・
まぁ戯言はこの辺で・・・
そして、アンラが次に行ったのは、
神名開放ですね。
第一段階【我が神名を此処に】
第二段階【我が名はアンラ・マンユ】
これで二段階目まで解放しましたね。
ちなみにざっくり言うと、第一段階で本来アンラが保有している
神としての権能とそれに伴った神気が
第一段階で10%解放され、
第二段階で30%解放されます。
まぁ能力的には、第一段階で、単純な出力アップ。
第三段階で、アンラ本来の肉体に戻ります。
物質的な肉体から、魔力体という本来の生命体に変わった事で、
魔導縮退炉を過負荷状態で運転可能になっています。
肉体がある時にコレをすると前進から魔力が溢れ出して最悪爆散しますね。
ちなみにこの第二段階から、分身も出来るようになります。
分身をアビドスで使わなかった理由ですか・・・?
生徒死ぬじゃないっすか、第二段階のアンラなんて、デコピンで一般生徒は頭パァンですよ。
そして、次の描写・・・
このアンラの分体は、それぞれ別方向のエリドゥの郊外まで飛んでいきました。
そしてそこで、魔術陣を形成する為に、アンラ自身の分体が必要だったんですよね。
なんせ今回使ったのは、世界魔導・・・
まぁ判り易く言えば、最近の別の作品で言えば領域展開。
昔の物で言えば、固有結界みたいなものです。
自身の内面を世界に上からテクスチャとして一時的に張り付けると言った感じですね。
そして、アンラが使うこの術は結構射程範囲が狭いんです。
それこそ、普通に使えば、
精々アンラが居た広場全域が丸々異空間にポンと入る程度のスペースしかないです。
まぁ・・・直系150~200mくらいですかね?あの広場。
その程度しか範囲が出せません。
なので、今回は
5人に別れ、
それぞれの方角でアンラ自身が居るようにし、
アンラを中心点として、その5人が居る範囲まで世界を広げた。と言う感じです。
それが、【此の身、この剣は我が身なれば】という詠唱ですね。
ちなみにこの術には代償魔術が入ってます。
まず、最初に代償魔術と創造魔術で、自分自身を素材として、武器を生成。
そしてその武器を世界魔導の展開と同時に破砕するという代償により、範囲拡張を行ってます。
・・・・・・・・・
気付いたでしょうか・・・?
アンラ自身を素材にした時に・・・
黒い刀が・・・生まれましたね・・・?
そして、アンラのあの液体金属の素材は人・・・と以前言いましたね。
まぁ厳密には人・・・ではなくなってますが・・・
そして、モモイに刀を見せた時に、本当に真っ黒だと言われた際、
そういう素材から作った刀。と言ってます。
つまり・・・そういう事です。
アンラが振るっているあの刀は自分自身を素材にして作っています。
それこそ、自分の力を半分裂いて、その力を持った分体を素材として、武器を生成しています。
だからこそ、アンラのバカげた出力にも壊れず耐える。
さて・・・次の解説と行きましょう
次は・・・世界魔導についてですね。
これの初出しは【おっさん魘される】の夢の中が初めてになります。
それ以外で言うと、ベアトリーチェ戦で、ベアトリーチェの中に入った奴が使った
【救いある世界】も世界魔導です。
あちらの魔導の効果は、世界内の存在する間対象者から死という物が存在しなくなる。
という物です。
そして・・・アンラの詠唱の文章が変わっていたのは・・・
アンラ自身の心境の変化・・・です。
あの羽根の化物をぶち殺した時は、罪と言う認識はあるも、
それでも妻を救いたかったという意思から、あの詠唱になってました。
ですが、晩年のアンラは妻に先立たれ、最後に残ったのは贖罪する事も出来ない程の罪業のみ。
この心境の変化により、アンラ自身の詠唱が変わりました。
ちなみにこの心境の変化により、世界の能力自体も変化しています。
羽根の化物と戦闘した場合は、アンラの敵対者をただ殺すだけの世界でした。
ですが、今回出て来た世界は、動く物みな殺しに行きますし。
なんでしたらアンラ自身が手が届くなら真っ先に殺しに行きます。
なにせ、自分を殺した存在ですから。
憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて
たまらないでしょう。
アンラ自身も贖罪が出来ない、だがその内心では許される事を願っている。
だからこそその奥底の願望が世界に反映され、能力が変わりました。
ちなみにあの世界を解除するには、内部に存在する全ての死体を、
再殺しないといけません。
つまり、先生達がハッピーエンドを迎えた裏で、アンラは現在進行形で、
自分が殺した者たちを再度殺して回ってます。
あー・・・ここまで言ったら分かるかもしれませんが・・・
私は好きなキャラ程曇らせます。
つまり、主人公のアンラは最も罪深く、その生涯は常に罪苦に苛まれなければならない。
そういう存在です。
他の生徒達とアンラが違う事は、
他の生徒達は悲劇として曇るから、そこに救いを提供されますが。
アンラは自分からその罪を犯し、それでも止まらず罪を重ね続けたからこそ、
アンラ自身には本当の意味での救いは訪れない事ですかね。
そして・・・あのゾンビパラダイスな世界をDivi:Sion経由で直接認識してしまった人物・・・
ケイちゃんですね。
ケイちゃんは・・・ぶっちゃけ、あの光景を見た結果自分が行う事は本当に正しいのかという疑問を持つようになります。
あ、あとアンラに対する強烈なトラウマというか、恐怖心も植え付けられてます。
アンラはそこまでになるとは思って無かったようですが。
まぁ、この後の流れは原作通りですね!
違う所と言えば、
アリスが居なくなったら私が
あ!一個ありましたね!
アリスの精神世界でのもろもろの原作乖離の描写!
まず、アリスがアンラから貰ったローブ。
黒く染まりましたね。
あれが、アンラが仕込んでいたあのローブのとっておきの機能です。
ざっくり言うと、ホシノのローブと同じ様に、アンラと力がリンクしてます。
なんでしたら、あの状態であれば、アリスが受けたダメージは全てアンラ自身が肩代わりします。
今回黒くなった理由ですが・・・
それはアンラが第二解放までやっちまったせいですね。
本来あれは、アリスの精神が強く揺さぶられる時か、アリスの身に致命的な危険が迫っている時にしか発動しない物です。
ですが、リンク元のアンラの出力が上がったせいで、力が逆流してしまって、
結果的にローブの効果が発揮されたという感じです。
そして・・・光の剣スーパーノヴァ・・・
がっつり見た目変わりましたね。
実は光の剣が原作と違って強化されていると言うのは、
クッソ昔の、パヴァーヌ一章【おっさんエンジニア部に行く】で出て来てます。
その違いは30kg重量が増え、
更には、ウタハが言ってました。
「この【光の剣】に、妙なくらい口を出してきただろう?」
「出力制御、保持バランス、放熱、
「それに、“人型携行”を前提にした内部フレーム設計。」
「他の開発品には、そこまで細かく注文なんて付けた事はなかった。」
と。
そう、神秘の変換機能。
これが今回出て来た竜の顎です。
スーパーノヴァの砲身は撃つときに上下に開きます。
それが更に展開され、チャージエネルギーを電力から、神秘に変更する事で、
より大規模にチャージする事が出来ます。
ちなみにこれで何が変わるのか・・・と言いますと。
【おっさんカチコミ受ける】に出て来た、ホシノがやってきた技法ですね。
それと追加して、そもそも神秘を変換して打ち出しているので、
圧縮工程などを光の剣で行うので、普通にぶっ放した時点で色付きの閃光になってますし。
その実、弾丸ではなく、神秘をそのまま射出してるので、ホシノがしていたように、
弾丸に依存しない、色付き閃光を撃てます。
まぁぶっちゃけ化学技術とアンラの魔術でコレをカバー出来て
30kgしか増えてないのは破格でしょうよ。
そして・・・・まぁこれも多分作中で言う事はない裏設定ですが・・・
折角なので言っておきます。
三頭竜の一頭がこれでちゃんと覚醒しました。
2年前眷属になったあのユルフワな方は既に覚醒していますし。
あとはピンク髪のユルフワモドキの方が覚醒したら。
ね?言ったでしょう?
4位より上は全員オカルト存在だって・・・
そして、後書きのアビドス防衛ですね。
以前言っていたオリジナルキャラ・・・出てきました。
こっそり作っては居たんですよね。
なので、セイアが居る時から、ちょいちょい元ヘルメット団の子達とかいう単語がポンポンでてて
今回はその伏線がちゃんと実になった感じですね。
ふぅ!後書きが1万文字になってんじゃん!どういうことよ!
あ、言い忘れてました。
この後リオは会長の辞任届をセミナーに送った後、
原作と同じく失踪します。
このせいで、次の話かその次の話くらいで、ユウカがとんでも無い目にあわされます。
主にアンラ達にですが。