おっさんキヴォトスに行く   作:無い頭のおっさん

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キーボーーード!!もう少し!もう少しだけもってくれ!!


時計仕掛けの花のパヴァーヌ編、第二章 後日談
おっさん落とし前つけに行く


そうして、皆で力を合わせる事によってエリドゥを・・・

 

ミレニアムを・・・

 

ひいては、キヴォトスの脅威になったかもしれない危機を解決する事が出来たのでした

 

めでたしめでたし・・・

 

・・・ですんだらよかったんだけどなぁ

 

私はシャーレの部室で、机に頬杖をついていた

 

あの一件から、しばらく経った

エリドゥでの騒動はひとまず収束し、あの時に危惧していたキヴォトス全体を巻き込むような事態も回避できた

 

協力してくれた生徒たちには感謝してもしきれない

もちろん、後始末はまだ残っているけれど、それでも一応は落ち着いた・・・はずだった

 

スマートフォンを耳に当てる

向こうから聞こえてくるのは、ヒマリの声だった

 

『あれからアンラさんとの連絡はついて無いんですか?』

 

「そうなんだよね・・・」

 

私は机の上に置いた資料を眺めながら答えた

 

「アビドスの生徒達にも連絡を入れたんだけど、なんかはぐらかされてて・・・」

 

ホシノにも、ユメにも連絡を入れてみた

けれど、返ってくるのは曖昧な返事ばかりで、肝心のアンラさんの所在については誰も教えてくれなかった

 

アンラさん本人に至っては、連絡を入れても返事すらない

 

もっとも、あの人のことだから、無事でいることは間違いないと思う

こちらが心配するだけ無駄という気もするけれど・・・

 

「まぁ、アンラさんの事だから絶対無事だろうし、あの光景について問い詰めるのは後にするとして・・・」

 

エリドゥの屋上で見た、あの光景が頭をよぎる

人の身体から、煙の様な姿になった上に、死体で覆い尽くされたあの光景・・・

あれらについては、聞きたいことが山ほどある

 

だけど、まずは目の前の問題からだ

 

「あの後、エリドゥの方はどうしたの?」

 

『・・・エリドゥの施設は、私が責任をもって閉鎖する事に致しました』

 

スマートフォンの向こうで、ヒマリが静かに答えた

 

「そっか、お疲れ様。ありがとうね、ヒマリ」

 

『・・・あの時の脅威はどうにか防ぐ事が出来ましたが、まだ何も解決はしていませんからね』

 

ヒマリの声音には、いつもの自信に満ちた響きの奥に、少しばかり疲労が滲んでいる

 

『特異現象捜査部の部長として、看過できない事でもありますし・・・』

 

「うん」

 

『はぁ・・・一体誰のせいでこんな事を、と思ったりもしますが』

 

「・・・あはは」

 

『まぁ、その誰かさんの為にやっている・・・としておきましょうか?』

 

一拍置いて、ヒマリはわざとらしくため息をついた

 

『超転生病弱美少女ハッカーは、いつも忙しいんですけどね・・・まったく』

 

「ごめんね。本当に助かってるよ」

 

『ふふ。分かっていただければ結構です』

 

「それで、リオはアレから見つからないの?」

 

『そうですね。あの下水女は辞任届をセミナーに送り付けてから、今も行方をくらましたままです。』

 

「ユウカが怒髪天だったよね・・・」

 

リオがセミナーに残していったものは、辞任届と、たった一言の置手紙だけだった

 

【ごめんなさい。】

 

たったそれだけ

 

「確か、一言だけ置手紙を残してあったんだっけ・・・?」

 

『ええ。あれを見た時のユウカの顔といったら・・・』

 

「はぁ・・・・・・」

 

『はぁ・・・・・・』

 

その瞬間、私のため息とヒマリのため息が重なった

 

リオのことも、エリドゥのことも

まだまだ後始末は残っている

 

そんな事をヒマリと報告会ついでに話していると、不意にシャーレの部室に置かれた固定電話が鳴り響いた

 

prrrrr・・・

 

「・・・あれ?」

 

私はスマートフォンを耳に当てたまま、机の向こうにある電話機を見た

 

「ごめんね、ヒマリ。ちょっと電話に出るね」

 

『ええ、構いませんよ』

 

私はスマートフォンをスピーカーに切り替えて机の上に置き、固定電話の受話器を取った

 

「はい、こちらシャーレの先生です。」

 

『やっと繋がった!』

 

聞き慣れた声が、受話器の向こうから飛び込んできた

 

「え?ユウカ?どうしたの?」

 

『先生!大変なんです!』

 

「どうしたの?何かあった?」

 

『ミレニアムにアンラさんが・・・・』

 

そこで、ユウカの声が一瞬止まった

何かを言い直すように、息を吸い込む気配がする

 

『いえ、アビドスが攻め込んできたんです!!』

 

『「・・・・・・はい?!」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――少し時間を遡る

 

ミレニアムサイエンススクールの駅に、一台の列車が滑り込んできた

 

停車を告げる音声が流れ、扉が開く

最初にホームへ足を下ろしたのは、砂色のローブを纏った男だった

 

腰には刀

その佇まいには、周囲を威圧するような落ち着きがあった

 

祈願屋の元社長

アビドス治安維持第一部隊隊長

 

七篠アンラ

 

続いて、もう一人の少女が降りてくる

 

片手にはデザートイーグル

もう片方の手には、鉄塊のような巨大な盾が握られていた

 

盾の重量は五百キログラム

普通の生徒なら持ち上げることすら困難な代物だが、少女はそれを何でもないように携えている

 

アビドスの祈願屋社長

 

梔子ユメ

 

そして最後に降り立ったのは、三人の中で最も小柄な少女だった

 

ローブの隙間から覗く目つきは鋭く、まるで相手を睨み殺すような迫力がある

ショットガンとハンドガンを携え、その立ち姿には一切の隙がない

 

アビドス生徒会副会長

 

小鳥遊ホシノ

 

三人とも、ローブの下には完全武装の姿を隠していた

 

そして、その三人がホームに降り立った瞬間

 

周囲の空気が変わった

 

「・・・え?」

 

「な、何あれ・・・?」

 

最初に気づいた生徒が、足を止めた

 

腰に刀を差した男

巨大な盾を持つ少女

二丁の銃を携えた小柄な少女

 

どう見ても、普通の来訪者ではない

 

その場にいた生徒の一人が、慌てて後ずさる

その動きを見た別の生徒が振り返り、三人の姿を確認すると、すぐさま駅の出口へ走り出した

 

それを皮切りに、周囲の生徒たちも次々と逃げ始めた

 

人の流れが乱れ、ざわめきが広がる

駅構内の案内表示には、警備上の注意を促す表示が点灯し始めていた

 

「・・・アンラさん」

 

ホシノが、周囲を一瞥してから声をかけてくる。

 

「なんや?」

 

「早速騒ぎになりましたね。」

 

「そらそうやろ。武装した三人組が駅に降りてきたんや。騒ぎにならん方がおかしいわ」

 

「・・・まあ確かにそうですね。」

 

ホシノは短く答えた

 

その口調には、普段の飄々とした柔らかさはない

鋭い目つきのまま、周囲の警備状況を確かめている

 

ユメもまた、周囲の監視カメラや警備用ドローンへ目を向けていた

 

「アンラさん。既に警備システムがこちらを捉えています。」

「ドローンも何機か追尾してきていますね」

 

「せやな」

 

「このままタワーへ向かって問題ないですか?」

 

「問題あったら、そもそも来とらんよ。」

 

「・・・それもそうですね。」

 

ユメは小さく頷き、歩みを進めた

 

別に、隠れる必要はない

 

今回の訪問は、アビドスとしての正式な抗議と交渉や

こそこそと裏口から入るような真似をするつもりはない

 

それに、こっちは最初から武装して来ることを選んどる

相手にこちらの戦力を見せるためでもある

 

今回の件は単なる抗議だけで終わらせるわけにはいかん

アビドス自治区への襲撃

複数地点での同時多発的なヘルメット団の攻撃

それに合わせて行われた通信妨害

 

襲撃に参加した連中を捕まえて話を聞いたところ、依頼主の名前は知らんという答えが返ってきた

どうやら、連絡を取るための端末だけを渡され、細かい指示はそこから受け取っていたらしい

 

その端末はミレニアム製

しかも、一般に流通しとる機種とは異なる仕様

 

調達経路や資金の流れを追っていけば、ミレニアムに繋がる痕跡も見つかった

 

そして、何より、リオが関わっとる可能性が極めて高い

 

もっとも、原作通りなら、この時期はリオは既にミレニアムを離れ、行方をくらませとる

直接問い詰めることはできん

 

せやけど、リオがミレニアムの生徒会長という立場におったことは事実

セミナーの予算を使い、ミレニアム製の端末を手配し、他自治区への襲撃を手引きした

 

なら、その責任をミレニアムに問うのは当然の話や

 

「・・・アンラさん」

 

ユメがこちらを見上げた

 

「今回の交渉ですが、要求を変えるつもりはありませんか?」

 

「ないで」

 

即答した

 

「ミレニアム側から金銭補償の話が出たとしてもですか?」

 

「金はいらん」

 

「はぁ・・・・・・分かりました。」

 

ユメは、それ以上何も言わなかった

 

ホシノが前を見たまま口を開く

 

「最初からお金で済ませるなら、私たちが全員で来る必要もないですしね。」

 

「せやな」

 

今回の要求は、金銭ではない

 

アビドス自治区内への販売拠点の設置

現地への製造工場の設置

アビドス住民の優先雇用

 

この三つを軸に、技術協力や人材育成も含めた長期的な協定を結ぶ

それが、今回の目的や

 

ミレニアムの技術を手に入れることは、アビドスの今後にとって非常に大きな意味がある

販売拠点ができれば、住民が製品を手に入れやすくなるだけでなく、修理や保守を行う仕事も生まれる

 

工場ができれば、さらに雇用が増える

技術指導を受けた住民が育てば、いずれは自分たちで設備を維持し、製造を担うこともできるようになる

 

一時的な補償金とは違う

アビドスに、長く残るものが出来る

 

それに・・・おっさんの計画にも、ミレニアムの技術が必要やしな

 

今後の計画を進めるうえで、ミレニアムとの技術協力は欠かせない

ここで曖昧な約束を交わすわけにはいかん

 

必要なものは、必要なだけ確保する

そのために、今日はここへ来た

 

やがて、ミレニアムタワーが目の前に見えてきた

 

タワーの正面へ近づくにつれて、周囲の警備が目に見えて増えていく

無数のドローンが飛び交い、警備用の自動機械もこちらへ照準を向けていた

 

そして、タワーの正面には既に数人の生徒が待ち構えていた

 

C&C

 

先頭に立っているのは、美甘ネルだった

身体のあちこちに包帯が巻かれており、まだ万全の状態ではないことは傍目から見ても分かる

それでも、こちらを睨みつける目には一切の衰えがなかった

 

おっさんは、その姿を眺めながら口元を緩める

 

「おーおー、えらいぎょうさんで、お出迎えやなぁ」

 

視線を少し奥へ移す

C&Cに守られるようにして、ユウカが控えていた

 

「なぁ、ユウカ」

 

ユウカが一歩前へ出る

その顔には、怒りと警戒が混じっていた

 

「当たり前じゃないですか!!」

「そんな殺気立った状態で別の自治区の人物が三人で乗り込んで来たら、誰だってこうなります!!!」

 

「ほーん、せやけど」

 

おっさんは、肩をすくめる

 

「今回はこっちも引くわけにゃー行かねぇんよなぁ」

 

その言葉を聞いたネルが、露骨に顔をしかめる

 

包帯の巻かれた腕に力が入り、腰を落とし

いつでも飛び出せるよう、身体の重心を低くした

 

その視線は、まっすぐおっさんを捉えていた

 

・・・まあ、そうなるわな

 

先日、エリドゥで力を見せたばかりや

ネルからすれば、おっさんは警戒すべき相手でしかない

 

その横から、ホシノが前へ出た

 

「・・・ユウカちゃんだっけ?」

 

ホシノの視線が、ユウカへ向く

 

先生から、ミレニアムのセミナーにいる生徒の話を聞いたことがあったのだろう

だが、目の前の少女がその子なのか、ホシノにはまだ確信がなかったようだった

 

「違ったら悪いけど。私たちがここに来た理由を説明しておくよ。」

 

ユウカは少し驚いたように目を瞬かせた

 

「・・・理由、ですか?」

 

「少し前から、アビドスと隣接する複数の自治区から雪崩れ込んできたヘルメット団による襲撃があったんだよね。」

「偶然にしては出来すぎてる。複数の場所で同時に襲撃が起きて、通信妨害まで仕掛けられていた。」

「私たちは襲撃に参加した連中を捕まえて、そいつらから話を聞いた」

 

「・・・・・・」

 

「その結果、依頼主の名前は知らないって。ただ、連絡用に渡された端末はミレニアム製だった」

「そこから、ミレニアムが手引きした可能性が浮上したんだよね。」

 

「なっ・・・」

 

ユウカの表情が変わる

 

「それは、本当なんですか?」

 

「調べた結果だよ。少なくとも、端末の出所はそっちに関係してる。」

 

ホシノは、ユウカを睨むように見据えた

 

「だから、話を聞きに来た。」

「そっちが何を知ってるのか、何を隠してるのかをね。」

 

その時だった

 

ネルの顔つきが、苦虫を噛み潰したように歪んだ

 

「・・・・・・」

 

その変化を、ユウカは見逃さなかった

 

「ネル先輩・・・?」

 

ネルは返事をしない

 

「今の話、知ってたんですか?」

 

「・・・・・・ああ」

 

「え?」

 

ネルは舌打ちをした

 

「チッ・・・あたしは、リオから直接聞いてる」

 

その言葉に、ユウカの顔から血の気が引いた

 

「会長から・・・?」

 

「リオが先生に話していた時、あたしもその場にいた。」

「あいつがそこのローブのおっさんを足止めする為に何かしたってな」

 

「・・・・・・そんな」

 

ネルは不機嫌そうに眉を寄せた

 

「詳しい状況は、後から先生にも聞いた。」

「複数のヘルメット団から襲撃があったってな」

 

「ネル先輩・・・」

 

ユウカは言葉を失った

 

ミレニアムの生徒会長のリオ

そのリオが、他自治区を襲撃するためにヘルメット団を利用していた

しかも、セミナーの予算まで使っていたとなれば、ミレニアムにとっても重大な問題だ

 

「・・・・・・」

 

沈黙が広がる

 

その沈黙を破ったのは、おっさんだった

 

「せやから、ここは俺らアビドスからしたら既に敵地。」

「なら、きちっと武装して来るのは当たり前・・・やろ?」

 

笑いながらユウカへ言う

 

ユウカは、その言葉の意味を正確に理解していた

これは、単なる来訪ではない

アビドスは今回の一件で、ミレニアムを警戒している

だからこそ、完全武装した三人でミレニアムの中枢まで乗り込んできた

 

こちらには戦う力がある

必要ならば、いつでも実力行使に移ることができる

そう示すための、明確な武力的圧力だった

 

「ほな、しっかり落とし前のお話しよか。」

 

おっさんは、そう言って笑った

 

その笑顔には、いつもの飄々とした雰囲気が残っている

しかし、目だけは笑っていなかった

 

 

 

 

 

【ミレニアムタワー・会議室】

 

案内された部屋には、既にC&Cの面々とユウカが待機していた

 

こちらは、おっさんとユメちゃん、ホシノちゃんの三人

相手側には、セミナーの会計であるユウカと、護衛を兼ねたC&C

 

それぞれの間に、言葉にしがたい緊張が漂っていた

 

ユウカは、何度かこちらの武装へ視線を向けている

それもそうやろう

会議室での話し合いというには、あまりにも物々しい

 

もっとも、こっちも別に隠す気はない

 

おっさんは椅子に腰掛け、刀を身体の横に置いた

ユメちゃんは盾を傍らに立てかけ、ホシノは椅子に深く座らず、いつでも動けるような姿勢を取っている

 

ユウカは正面の席に座り、手元の資料を整えていた

その隣には、ミレニアム側の被害状況と会計記録をまとめた書類が積まれている

 

どうやら、ただ警備に出てきただけやないらしい

会計として、今回の件をどう処理するか、ある程度は考えてきたんやろう

 

ユウカが口を開こうとした、その時だった

 

バンッ!!

 

部屋の扉が、蹴破るような勢いで開け放たれた

 

「"アンラさん!!!何してるんですか!!!"」

 

先生が、息を切らしながら会議室に駆け込んできた

 

おっさんは、先生の姿を見ると軽く手を上げた

 

「おー、先生。今日も元気そうやな」

 

「"ミレニアムに襲撃をしかけたって聞きましたよ!!!"」

 

「襲撃ぃ?」

 

おっさんは、わざとらしく首を傾げる

 

「おっさんらはただ、アビドスの首脳陣でミレニアムにお話をしに来ただけやぞ」

 

「"お話・・・?"」

 

先生の視線が、ゆっくりと会議室の中を巡る

 

完全武装したおっさん

五百キロの盾とデザートイーグルを持つユメ

そして、ショットガンとハンドガンを携えたホシノ

 

誰がどう見ても、穏やかな話し合いに来た格好ではない

 

先生は、しばらく三人を眺めてから、ぽつりと呟いた

 

「"・・・・・・ミレニアムを更地にするんじゃなくて・・・?"」

 

「・・・・・・」

 

ユウカの顔から、さらに血の気が引いた

 

冗談なのか

それとも、先生は本気で言っているのか

 

けれど、その一言で分かってしまったのだろう

先生ですら、この三人が本気になればミレニアムを更地にできると考えている

目の前の三人は、それほどの戦力を持っているのだ

 

「せ、先生・・・?」

 

ユウカが、思わず先生へ声をかけた

先生は、慌てて手を振った

 

「"あっ、ごめん。そういう意味じゃなくて・・・!"」

 

その時だった

ホシノの表情が、ふっと緩んだ

 

先ほどまで鋭く据わっていた目つきから力が抜け、肩の力も少しだけ落ちる

背筋を伸ばしていた姿勢が、いつものように少し丸くなった

 

まるで、別人のように

 

「うへぇ・・・先生。」

「そんなに慌てなくても大丈夫だよぉ」

 

先生が来た瞬間、ホシノのおじさんスイッチが入った

 

「おじさん達、今日はちゃんと話し合いに来ただけだからさぁ」

 

「ホシノ・・・?」

 

「うんうん。先生も心配性だねぇ」

 

ユウカは、目の前で起きた変化に戸惑っていた

 

先ほどまで、敵を睨みつけるような目でこちらを見ていた少女

それが今では、眠たげな目をした柔らかな雰囲気になっている

 

あまりの変わりように、同じ人物なのかと疑いたくなるほどだった

 

「先生。そこは誤解せんといてほしいわ」

 

おっさんが苦笑しながら口を挟む

 

「今日は本当に話し合いに来ただけや。」

「最初から建物を壊すつもりなら、こんな回りくどいことはせん」

 

「"それなら、どうしてそんなに武装してるんですか・・・"」

 

「こっちにも事情があるんや」

 

「"事情って・・・"」

 

「まあまあ。ほな先生も座り。」

「今から大事な話をするさかい」

 

先生はまだ納得していない様子だったが、ひとまずユウカたちの側へ移動した

ユメちゃんが、机の上へ資料を置く

 

「それでは、今回の件について、まずは事実関係を整理させていただきます。」

 

ユメちゃんの声は落ち着いていた

 

初対面のユウカに対しても、必要以上に馴れ馴れしくすることはない

あくまで祈願屋の代表として、交渉の場に臨んでいる

 

「アビドス自治区の複数地点において、ヘルメット団による襲撃が発生しました。」

「襲撃は同時多発的に行われ、現地の通信網にも妨害が確認されています」

 

ユメちゃんが資料を一枚ずつ並べていく

 

「襲撃に参加した者たちへの聞き取りでは、依頼主の名前は確認できませんでした。」

「ただし、連絡用に渡されていた端末はミレニアム製であり、一般に流通している製品とは異なる仕様でした。」

「端末の調達経路や資金の流れについても、ミレニアムに繋がる痕跡が確認されています。」

 

ユメちゃんは一度言葉を切り、ユウカを見た

 

「そして、先ほどのネルさんの証言です。」

「リオさん本人が襲撃を手引きしたと認めていたのであれば、私達がミレニアム側に説明を求める理由は十分にあると考えています。」

 

「・・・・・・」

 

ユウカは、資料に視線を落とした

 

「分かりました。」

「まずは、関係する通信記録や機器管理記録、調達記録を保全します。」

「セミナーとして関係部署に指示を出し、記録の破棄や改変が行われないようにします。」

 

「助かるわ」

 

「ただし、ミレニアム内部の記録には、研究開発上の機密情報も含まれます。」

「すべてを無条件で開示することはできません。」

 

ユウカは、そこで一度言葉を区切った

 

「もちろん、必要な調査への協力を拒むつもりはありません。」

「開示できる情報と、機密上そのまま開示できない情報を分けたうえで、代替手段を検討します。」

 

「そこは分かっとる」

 

おっさんは、あっさり頷いた

 

「必要な範囲でええ。」

「全部よこせなんて言うてへん」

 

「・・・そうですか」

 

「せやけど、機密情報やからという理由で、調査に必要な情報まで一律に隠されるんは困る。」

「第三者による確認でも、部分開示でも構わん。」

「そこは協議したらええ」

 

「その点は、こちらも同意します。」

 

ユウカは頷き、手元の資料に書き込みを加えた

 

「関係する機器の管理記録や資金の流れについては、セミナーの会計記録とも照合します。」

「会長が予算を使用したのであれば、支出の記録は残っているはずです。」

「まずはそこを確認し、調査に必要な範囲で提出できる形に整理します。」

 

「話が早くて助かるわ」

 

「当然です。会計を担当している以上、予算の流れを確認するのは私の仕事ですから」

 

ユウカは少しだけ強い口調で答えた

 

「今回の件でもセミナーの予算が不正に使用されたのであれば、それも含めて確認しなければなりません。」

 

その言葉には、リオに対する怒りも混じっているように思えた

 

「では、調査協力については、その方向で進めましょう。」

 

ユメちゃんが頷いた

 

ここまでは、まずまず順調や

問題は、ここからや

 

ユウカが手元の資料をまとめ、別の書類を取り出した

 

「次に、被害回復についてです」

 

机の上に置かれた資料には、設備の復旧や補償に関する項目が並んでいた

 

「アビドス自治区で今回の襲撃によって発生した損害について、」

「ミレニアム側で復旧費用を負担することを提案します」

 

「ほぉ」

 

「通信設備や公共設備、復興事業用の設備など、損害を受けたものを調査し、合理的な範囲で補償します。」

「必要であれば、復旧用の機材や代替設備、技術者の派遣についても検討します」

 

ユウカは資料を一枚めくった

 

「会計処理の都合上、補償対象は実際に発生した損害と、復旧に必要な費用を基準に算定したいと考えています。」

「設備の再調達費用、修理費用、作業員の人件費などを分けて見積もり、双方で確認したうえで決定する形です」

 

「つまり、金銭的な補償と設備の復旧支援だね?」

 

先生が確認する

 

「はい。まずは被害を回復することが先決ですから。」

「アビドス側で復旧作業を進める場合も、必要な機材や人員の提供を含めて対応するつもりです」

 

ユウカは慎重に言葉を選んでいた

 

ミレニアム側としても、今回の件を軽く扱うつもりはないのだろう

リオが個人で行ったことだとしても、セミナーの予算を使用し、

ミレニアム製の端末が利用されていた以上、何らかの責任を取る必要がある

 

その姿勢自体は悪くない

 

せやけど

 

「金はいらん」

 

「・・・え?」

 

ユウカの顔が固まった

 

「金銭補償は必要でしょう?」

 

「いらん。」

「少なくとも、金だけもらって終わりにするつもりはない。」

 

おっさんは、ユウカの資料へ目を落とした

 

「アビドスは今、復興の途中や。」

「都市部の整備も進んで、商業施設も増えてきた。」

「けど、建物を建てて、道路を直して、それで終わりやない。」

 

「・・・・・・」

 

「そこで暮らす人間が働ける場所を作らなあかん。」

「新しい技術を学べる環境も必要や。」

「復興を一時的なものにせず、長く続けられる仕組みにせな意味がない。」

 

おっさんはユメちゃんへ目配せし

ユメちゃんが、別の資料を机の上へ置く

 

「アビドス側の要求は三つです」

 

その声は、先ほどまでと変わらず穏やかだった

 

「第一に、アビドス自治区内にミレニアム製品の販売拠点を設置していただくこと」

 

ユメちゃんは、資料の一つ目を指で示す

 

「第二に、アビドス自治区内に製造工場を設置していただくこと」

 

二つ目の項目へ指が移る

 

「第三に、その販売拠点及び工場において、アビドス自治区の住民を優先的に雇用していただくこと」

 

最後の項目を示して、ユメちゃんは説明を終えた

 

会議室に沈黙が落ちた

 

「・・・・・・販売拠点と工場、ですか?」

 

ユウカが、恐る恐るといった様子で尋ねる

 

「せや」

 

おっさんは頷いた

 

「まず一つ目。アビドスにミレニアム製品の販売拠点を作ってもらう。」

 

「販売拠点なら、販売代理店を設置するという形でしょうか?」

 

「それだけやない」

 

おっさんは、指を一本立てた

 

「販売だけやなく、修理、保守、部品交換、故障診断。」

「それに利用者向けの技術支援もやる。」

「アビドスの住民がミレニアムの製品を買って、故障した時にわざわざミレニアムまで来んでもええようにする。」

 

ユウカは、資料の余白に何かを書き込んだ

 

「販売だけでなく、修理や保守まで扱うとなると、一般的な販売店とは必要な設備が違いますね。」

「部品の在庫管理や、修理用の工具、診断機器も必要になります」

 

「せやな」

 

「それに、製品の種類によって必要な技術者も変わります。」

「最初から全製品を取り扱うのではなく、需要の多い製品や、現地で保守できる製品から始める形でしょうか?」

 

「そのつもりや。最初から何でもできる拠点にせえとは言うてへん」

 

「分かりました。対象製品を段階的に増やす形なら、初期費用もある程度抑えられます」

 

ユウカは一度頷き、今度は別の項目を指で示した。

 

「ただし、設備や機材、初期の運営人員をミレニアム側が用意するとなると、準備期間が必要です。」

「営業開始はいつを想定していますか?」

 

「協定締結から二カ月以内や」

 

「二カ月以内!?」

 

ユウカが思わず声を上げた

 

「販売拠点とはいえ、修理や保守まで行うとなれば、専門の設備や技術者も必要です!」

「人員の確保だって簡単ではありません!」

 

「せやろな」

 

「それに、土地や建物の整備もあります。」

「いくらアビドス側が用意するとしても、設備を搬入して運営体制を整えるまでには時間が・・・」

 

「箱はおっさんが一瞬で作る」

 

「・・・・・・はい?」

 

ユウカが目を瞬かせた

 

「建物や土地、電力や通信なんかの基盤部分はこっちで用意する。」

「必要な区画も確保する。」

「あとはそっちが設備と機材、それに必要な人間を出す」

 

「建物を・・・一瞬で?」

 

「せや」

 

「・・・建設費用については、アビドス側が負担するということですか?」

 

「そこは祈願屋が用意する。」

「ミレニアムに求めるんは、販売や修理に必要な設備と機材、運営のための人員や」

 

ユウカは、少し考え込んだ

 

「それなら、建物の建設期間を考慮する必要はありませんね・・・」

「ただ、設備の搬入と設置、職員の選定や研修は必要です。」

 

「そっちは二カ月で間に合わせてもらう」

 

「・・・できるかどうかは、対象製品と必要な設備の規模によります。」

「ですが、最初から全製品を扱わないのであれば、初期段階の営業開始を二カ月以内に設定することは検討できます。」

 

「検討やなくて、目標にしてもらうんや」

 

「分かっています。」

「協定書には、二カ月以内の営業開始を目標とすることを明記しましょう。」

「ただし、ミレニアム側の準備が必要な部分については、双方で工程を管理させてください。」

 

「ええで」

 

ユウカは小さく息を吐いた

 

「販売拠点の設置については、初期費用と運営費を分けて試算する必要がありますね。」

「現地の需要予測も祈願屋側から提出してください。」

「製品の販売見込みが分かれば、必要な在庫や人員を算定できます。」

 

「資料は用意しとる。後で渡すわ。」

 

「ありがとうございます。」

「会計としては、支出に見合う事業計画を作る必要がありますから」

 

おっさんは、二本目の指を立てた

 

「二つ目。アビドスに製造工場を設置してもらう」

 

「工場・・・!?」

 

ユウカが、今度こそ椅子から浮き上がりそうな勢いで身を乗り出した

 

「ちょ、ちょっと待ってください! 販売拠点ならまだしも、工場となると話が大きく変わります!」

 

「そらそうやろな」

 

「土地、設備、電力、物流、人員・・・一つの工場を設置するだけでも、かなりの予算と準備が必要になります!」

 

「分かっとる」

 

「それに、ミレニアムの製品は高度な技術を使っているものも多いんです。」

「製造工程を自治区外へ移すとなれば、安全性や品質管理の問題もあります!」

 

ユウカは一気にまくし立てた

 

その言い分は、もっともや

技術力の高いミレニアムでも、工場を一つ設置するとなれば簡単な話ではない

ましてや、他自治区に新たな製造拠点を作るとなれば、設備だけではなく物流や管理体制まで整える必要がある

 

けど

 

「全部の製品を作れとは言うてへん」

 

おっさんは落ち着いたまま答えた

 

「最初は部品の組立でも、部品の製造でもええ。製造工程の一部を移すだけでも構わん。」

「技術的に可能なものから始めて、少しずつ範囲を広げていけばええやろ」

 

「・・・それでも、工場を設置するということ自体が大きな投資です。」

「ミレニアム側で設備を購入し、輸送し、現地で稼働させるとなれば、相当な予算が必要になります」

 

「せやろな」

 

「また、工場を稼働させた後の維持費や人件費も発生します。」

「製品の需要が想定を下回れば、赤字になる可能性だってあります」

 

「それなら、最初は小規模な製造ラインから始めたらええ」

 

「小規模といっても、製造設備には最低限必要な規模があります。」

「品質管理の設備や安全対策も必要ですし、電力や物流の確保も欠かせません」

 

ユウカは、机の上の資料を一枚めくった

 

「それに、製造する製品によっては、部品の調達先や輸送経路まで見直さなければなりません。」

「アビドスに工場を設置することで、かえってコストが増えるようでは、継続的な運営が難しくなります。」

 

「せやから、何を作るかはそっちと一緒に決めたらええ。」

「アビドスで製造することで利点が出るもんから始めればええやろ」

 

「・・・工場の設置自体は、譲るつもりがないんですね?」

 

「当たり前やろ。」

「検討した結果、何もせんで終わりです、なんて話なら最初から工場の設置を要求せんわ。」

 

ユウカは、しばらく黙っていた

 

「分かりました。」

「ただし、工場の規模や製造対象については、技術的な調査と採算性の確認が必要です。」

「設備投資の回収見込みも含めて、双方で計画を作らせてください。」

 

「そこは当然や。最初から無理なもんを作らせるつもりはない」

 

「では、工場の設置そのものは協定に明記し、具体的な製造品目や工程は共同協議会で決める、という形ですね。」

 

「そういうことや」

 

おっさんは、三本目の指を立てた

 

「そして三つ目。現地の住民を優先して雇用することや」

 

「・・・・・・」

 

「せっかく販売拠点や工場を作っても、そこで働く人間がミレニアムの生徒ばかりやったら意味がない。」

「アビドスの人間を優先して採用する。専門資格が必要な職種は別として、可能な限り現地の人間を雇う」

 

「雇用人数については、どの程度を想定していますか?」

 

ユウカが尋ねた

 

「販売拠点も工場も、最初から全員をアビドスの住民にする必要はない。」

「ただ、最終的には現地の人間が中心になって動かせるようにしてほしい。」

 

「具体的な目標がないと、採用計画も予算も組めません。」

 

「開設から二年以内に、従業員の半数以上を現地採用にする。それでどうや?」

 

ユウカはすぐに資料へ目を落とした

 

「・・・職種によっては、専門知識を持った人材をミレニアムから派遣する必要があります。」

「特に工場の立ち上げ直後は、技術者や品質管理責任者の比率が高くなるでしょう」

 

「そこは例外でええ。専門職まで無理に現地採用にせえとは言わん。」

 

「ただ、現地採用した方々が補助的な作業だけを担当するのでは、技術が定着しません。」

「販売や整備、保守、故障診断だけでなく、工場の設備操作や品質管理についても研修が必要になると思います。」

 

「そこも頼むわ。」

 

ユメちゃんが、補足するように資料を差し出した

 

「現地の人材が実務を担えるよう、技術指導を行っていただきたいです。」

「毎年度十名以上を目安に研修枠を設けていただければと考えています。」

 

「十名以上・・・それも毎年度ですか?」

 

「はい。研修の修了者には、習得した技術や技能を証明するものを発行していただきたいです。」

 

ユウカは、研修に必要な費用や人員について、手元の資料に書き加えていった

 

「研修を行うための講師も必要ですね。」

「教材や実習用の設備も準備しなければなりません。」

「ミレニアム側の技術者を派遣する場合、旅費や滞在費も発生します。」

 

「せやな」

 

「その費用については、販売拠点や工場の運営費とは分けて計上したいと思います。」

「研修の対象者や期間、到達目標も事前に決めておきたいですね。」

 

「任せるわ。こっちは候補者を出す。」

 

「分かりました。」

「採用についてはアビドス自治区の住民を優先し、」

「専門職を除いて、二年以内に過半数を現地採用とする目標を設定しましょう」

 

ユウカは、資料を見ながら続けた

 

「研修枠は年度ごとに十名以上。」

「修了者には、習得した技能を証明する書面を発行する。」

「研修によって得た一般的な技能や知識を理由に、修了者のその後の就職や技能向上を不当に制限しないことも必要ですね。」

 

「せやな。そこは大事や」

 

「ただし、製品固有の設計情報や非公開の研究内容まで、研修で扱うわけにはいきません。」

「その点は分けて考えさせてください」

 

「もちろんや」

 

ユウカは、ようやく少しだけ表情を和らげた

 

「・・・要求の意図は分かりました。」

「単にミレニアムの施設をアビドスへ移すのではなく、現地の方々が将来的に自立して運営できるようにすることが目的なんですね。」

 

「そういうことや」

 

「ですが、ミレニアム側の負担も考えてください。」

「設備投資、人件費、運営費、研修費。」

「これらをすべて負担するとなると、会計上はかなり大きな事業になります。」

 

「せやから、金銭補償はいらんと言うたんや。」

 

おっさんはユウカを見た

 

「一時的な金銭補償で終わらせるより、これから先もアビドスに利益が残る形にしてもらう。」

「こっちの方が、お互いにとって意味があるやろ?」

 

「・・・ですが、ミレニアム側の利益はどうなるんですか?」

 

「まぁ、分かって聞いとるんやと思うけど、もちろん、そっちにも利益はある。」

 

ユメちゃんが資料を指で示した

 

「アビドスは復興が進み、今後も住民の生活基盤や商業活動が拡大していきます。」

「販売拠点があれば、ミレニアム製品の新たな市場になるでしょう。」

 

「工場についても、アビドスでの需要に応じた製造や部品供給が可能になります。」

「物流面の負担を減らせる可能性もありますし、将来的には周辺地域への供給拠点にもなり得ます。」

 

ホシノが、そこで口を開いた

 

「それに、働く場所が増えれば、アビドスで暮らし続けられる子も増えるからねぇ」

 

先ほどまでのホシノと違い、先生がいる場では柔らかい声だった

それでも、言葉の中身は変わらない

 

「おじさんたちは、今回の件でお金をもらって終わりにしたいわけじゃないんだよねぇ」

 

ホシノはユウカを見つめた

 

「アビドスで暮らす子たちが、これから先も仕事を見つけて、技術を覚えて、」

「自分たちの生活を作っていけるようにしたい。」

「それが、今回の要求なんだよ。」

 

「・・・・・・」

 

「おじさんたちは、今回のことを水に流すつもりはないよ。」

「でも、これから先もミレニアムと敵対し続けたいわけじゃないからねぇ」

 

その言葉を聞いて、ユウカは少しだけ俯いた

 

「・・・それは、分かります」

 

「うんうん」

 

「ですが、ミレニアム側の負担も考えてください!」

「こちらの研究開発や設備投資にも予算が必要です!」

「いくらアビドスの復興に意義があるとしても、何でもかんでも受け入れるわけにはいきません!」

 

「せやな」

 

おっさんは、あっさり頷いた

 

「研究開発の中核まで全部出せなんて言うてへん。」

「基幹ソフトウェアのソースコードも、設計原本も、研究段階の未公開技術も、今回の協定で当然に出せとは言わん」

 

「・・・では、技術資料については?」

 

ユウカが尋ねた

 

「販売した製品を現地で修理できるだけの情報は出してもらう。」

「部品構成、故障診断方法、接続仕様、更新手順。」

「普通の保守や修理に必要な資料や」

 

「営業秘密に該当する情報も含まれますよね?」

 

「せやから、範囲は協議する。」

「第三者の権利や安全保障上の制限があるものは、別の方法を考えたらええ。」

「せやけど、営業秘密やからという理由だけで、現地の技術者が何もできへん状態にするのは認められへん」

 

ユウカは、すぐには答えず資料を確認した

 

「・・・販売した製品の保守に必要な情報と、ミレニアムの研究開発に関わる情報は分けて考える必要がありますね。」

 

「せや」

 

「技術資料の提供範囲は、製品ごとに整理しましょう。」

「提供できない情報がある場合には、代替となる診断機器や修理手順を用意できないか、技術部門とも協議します。」

 

「それでええ」

 

「また、研修で習得した一般的な技能については、ミレニアムの営業秘密とは区別する必要があります。」

「技術指導を受けた方が、後からその技能を使って働けなくなるようなことは避けたいですから。」

 

「せやな」

 

ユウカは、そこまで確認してから顔を上げた

 

「ふぅ・・・・・・分かりました。」

「技術資料については、提供範囲を明確にしたうえで協定に盛り込みます。」

「ただし、知的財産権そのものは従来の権利者に帰属すること、非公開情報の取り扱いについては別途定めることを条件にしてください。」

 

「ええで」

 

「これなら、ミレニアムとしても検討できます。」

 

ユウカは一度息を吐き、資料を整えた

その横で、先生が少し困ったように眉を寄せていた

 

「"ホシノ"」

 

「ん~? なぁに、先生?」

 

「"今の要求について、少しだけ条件を緩めることはできないかな?"」

 

ホシノは、先生の方へ顔を向けた

 

「"ミレニアム側にも事情があると思うんだ。"」

「"工場の設置や雇用は、すぐに決められることではないよね?"」

 

「そうだねぇ。確かに簡単な話じゃないと思うよ。」

 

ホシノは、資料に目を落とす

 

「でもねぇ・・・」

 

少しだけ、声が真面目になった

 

「アビドスは今回の襲撃で実際に被害を受けたんだよ。」

「人も、設備も、生活も。お金をもらって終わりにすることだってできたかもしれない。」

 

「"・・・・・・"」

 

「だけど、それじゃあ、また同じことの繰り返しになっちゃう。」

「今のアビドスには、これから先も暮らしていける場所と仕事が必要なんだよ。」

 

ホシノは先生を見た

 

「だから、この三つは譲れないかなぁ」

 

先生は、少しだけ困ったように眉を寄せた。

 

「"そっか・・・・・・アンラさんは?"」

 

「ん?」

 

先生の視線がおっさんへ向く

 

「"要求を少しだけ緩めることはできませんか?"」

 

おっさんは、少しだけ笑った

 

「・・・これが、もう最大限の譲歩やで」

 

「"・・・・・・"」

 

「本来なら、アビドスは今回の件について、」

「ミレニアムに対して武力的に報復することだってできたんや」

 

ユウカの表情が強張る

 

「実際、今回の襲撃でこっちは武力を使われとる。」

「なら、こっちも武力で返す。そういう選択肢を取ったところで、文句を言われる筋合いはない」

 

「"アンラさん・・・"」

 

「せやけど、おっさんらはそうせんかった。」

 

おっさんは、ユメちゃんとホシノを一度だけ見た

 

「アビドスに必要なのは、戦争やない。復興と、これからの生活や。」

「せやから、こうして話し合いに来とる。」

 

「"・・・・・・"」

 

「これが、最大限の譲歩や。これ以上は引けへん。」

 

先生がこちらを睨んだ

 

・・・おお、怖

あの紅ショウガに啖呵切った時と同じ目しとるやん

せやけど、ここで折れるわけにはいかん

 

ミレニアムの技術は、これからの祈願屋に不可欠や

アビドスの復興をさらに進めるためにも、今後の計画を実現するためにも、ミレニアムとの技術協力は必要になる

せやから、ここで中途半端な約束を交わすわけにはいかん

 

向こうにとっても、こちらにとっても、長期的な利益が残る形にする

そのためには、要求を曖昧にせず、最初にきっちり決めておく必要がある

 

ユウカは、机の上の資料へ視線を落としたまま、しばらく黙っていた

 

やがて、顔を上げる

 

「・・・・・・分かりました」

 

「"ユウカ・・・・・・"」

 

先生が、少し驚いたように声をかける

 

「セミナーとして、今回の要求を受け入れる方向で進めます。」

 

ユウカは、まっすぐにこちらを見ていた

 

「ただし、会計として確認しておかなければならないことがあります。」

「販売拠点と工場の設置費用、設備投資、運営費、人件費、研修費。」

「それらをどちらがどこまで負担するのか、協定書に明記してください。」

 

「当然や」

 

おっさんは頷いた

 

「また、工場については設置することを前提として、」

「具体的な製造品目や工程は技術的な調査と採算性の確認を踏まえて決めたいです。」

「安全性や品質に問題があるものを無理に移すことはできません。」

 

「そこは最初から言うとるやろ。」

「技術的に可能な範囲から始めたらええ。」

 

「販売拠点についても、二カ月以内の営業開始を目標にするのであれば、初期段階で取り扱う製品を限定する必要があります。」

「準備が整った製品から順次取り扱う形にさせてください。」

 

「それでええ」

 

「現地雇用については、専門職を除いて二年以内に過半数を現地採用とする目標を設けます。」

「研修枠は毎年度十名以上。」

「修了者への技能証明も発行します」

 

「よし」

 

「それと、六カ月ごとに事業の進捗や雇用状況、研修の実施状況を確認する共同協議会を設けましょう。」

「計画が大きく遅れた場合には、原因を確認して改善計画を作成することも必要です」

 

「ええで」

 

「重大な義務違反があった場合の是正手続きも定めます。」

「約束した内容が履行されないままになるのは、ミレニアムにとってもアビドスにとっても望ましくありませんから。」

 

「そこも異論ないわ」

 

ユウカは、ようやく少しだけ肩の力を抜いた

 

「・・・これなら、会計上の計画も立てられます。」

「簡単な案件ではありませんが、最初から無理だと決めつけるより、実施可能な形に整理していく方が建設的ですからね。」

 

「そう言ってもらえると助かるわ。」

 

「ただし、正式な承認にはセミナー内での手続きが必要です。」

「今日この場では、協定の大枠について合意し、詳細は共同協議会で詰めるという形にさせてください。」

 

「それでええ。正式な締結は、必要な手続きを済ませてからや。」

 

「ありがとうございます」

 

ユメちゃんが、別の資料を机の上へ置いた

 

「こちらが、協定案です。」

 

表紙には、アビドス自治区復興及び技術協力協定(案)と記されていた

 

ユウカがゆっくりとページをめくる

 

最初の条項は、調査協力と記録の保全だった

 

通信記録、機器管理記録、調達記録

関係資料を保全し、原因究明に必要な範囲で開示すること

また、ミレニアム側の専門技術者や設備を調査に提供し、

通信妨害の経路や関係端末の特定に協力すること

 

「・・・記録の破棄や改変、調査妨害の禁止も明記されていますね」

 

ユウカが確認する

 

「当然です。今回の件を曖昧に終わらせるつもりはありませんから。」

 

ユメちゃんが答えた

 

「機密情報についても、第三者による確認や部分開示など、代替手段を協議するとあります。」

「これなら、情報を一律に伏せるような運用は避けられますね」

 

次の条項は、被害回復と復興支援

 

通信設備、公共設備、復興事業用設備の損害について、

調査結果に基づき合理的な範囲でミレニアムが復旧費用を負担する

必要に応じて、復旧用機材や代替設備、技術者も派遣する

ただし、ミレニアムの組織的関与の有無については、調査で確認された事実に基づき別途判断する

 

「この部分は、ミレニアム側の責任範囲を曖昧にしないためですね。」

 

ユウカが確認する

 

「そうです。」

「リオさん個人の責任と、ミレニアムとしての責任は切り分けて考える必要があります。」

 

ユメちゃんは、落ち着いて答えた

 

販売拠点の設置については、アビドス自治区内の祈願屋指定区域にミレニアム製品の販売・技術サービス拠点を設置すること

販売だけでなく、修理や保守、部品交換、故障診断、利用者向け技術支援までを行う

 

営業開始は協定締結後二カ月以内を目標とし、初期段階では取り扱い製品を限定する

具体的な立地や開設時期は双方で協議し、土地や建物などの基盤設備は祈願屋が用意する

 

続く現地雇用の条項には、アビドス住民を優先的な採用対象とすることが記されていた

 

専門職を除き、開設から二年以内に従業員の過半数を現地採用とすることを目標とする

販売や整備、保守、故障診断などの研修を実施し、

毎年度十名以上を目安に研修枠を設け、修了者には習得した技能を証明するものを発行する

 

「研修によって得られた一般的な知識や技能は、営業秘密そのものとは区別する・・・」

 

ユウカが一文を読み上げた

 

「これは重要ですね。」

「技術指導を受けた生徒が、その後の就業や能力向上を妨げられることがないようにするわけですか」

 

「はい。せっかく技術を学んでも、学んだことを使えなくては意味がないですから。」

 

ユメちゃんが答えた

 

現地生産の条項には、工場の設置を前提としたうえで、

取り扱い製品の一部について部品組立や部品製造、製造工程の一部移転を進めることが記されていた

 

具体的な製造対象については、技術、安全性、品質、採算性の観点から共同で選定する

実施可能と判断された対象について、必要な設備や技術指導を導入し、

設備操作や品質管理、保守管理を担う人材を育成する

 

「工場の設置は協定の義務として明記されている一方、具体的な製造品目については別途協議する形ですね。」

 

「そうです。製品ごとに必要な設備も製造工程も違いますから。」

 

ユメちゃんが頷いた

 

「最初から無理なものを作らせるつもりはありません。」

「ただ、一度始めたら、それで終わりという形にもしたくないですから」

 

「その点は理解できます。」

「製造対象や設備投資の内容については、採算性の確認を含めて定期的に見直す必要があるでしょう。」

 

ユウカは、そう言って次のページをめくった

 

続いて、技術資料の提供について

 

対象となる製品の修理や保守に必要な資料、整備手順書、診断機材、交換部品を提供すること

通常の保守に必要な範囲で、部品構成や故障診断方法、接続仕様、更新手順などを含めること

 

一方で、製品の設計原本や基幹ソフトウェアのソースコード、

研究開発段階の未公開技術については、当然に開示義務が生じるものではない

 

「ここは妥当な線引きでしょうね。」

 

ユウカは内容を確認し、頷いた

 

「ミレニアムの研究開発に必要な機密を守りつつ、販売した製品を現地で維持できるだけの情報は提供する。」

「提供できない情報についても、代替となる修理手段があるかを協議する形ですね。」

 

「せや」

 

おっさんが頷く

 

次の条項は、通信環境とサイバー防衛への協力

 

祈願屋が管理する通信設備や情報システムの安全性評価

通信妨害の検知、アクセス管理、記録保全、障害復旧に関する技術指導

重大な障害や不正アクセスが確認された場合の相互通知

 

ただし、作業対象となる設備の管理者から承認を得ること、

権限と作業範囲を事前に明確にすることも記されていた

 

「ミレニアムがアビドスの情報システムに無制限にアクセスすることはできない、と。」

 

「もちろんです。」

「今回の件があった以上、自治区の設備を守るための協力であっても、管理権限は明確にしておくべきです。」

 

ユメちゃんが答える

 

その後は、知的財産と機密情報の保護

協定の履行状況を確認するための共同協議会

少なくとも半年ごとの進捗確認

重大な遅延や不履行があった場合の改善計画と是正要求

 

最後に、有効期間は締結日から五年間

重大な義務違反があり、是正要求にも応じない場合は、

協定の一部停止または終了を申し入れることができる

 

協定書の最後まで目を通し終えた時、ユウカはゆっくりと息を吐いた

 

「・・・・・・」

 

その表情には、まだ不安が残っていた

 

無理もない

ミレニアム側にとって、相当大きな負担を伴う協定や

 

けれど、こちらも譲るつもりはない

 

ユウカが顔を上げた

 

「・・・大枠については、理解しました。」

「具体的な実施内容については、今後の共同協議会で調整する必要がありますが、この協定案を受け入れる方向で進めます。」

 

「ええんか?」

 

おっさんが確認する

 

「はい。」

「ただし、セミナー内で正式な承認手続きを行い、権限を持つ代表者による署名を行う必要があります。」

「今日この場では、合意内容を議事録に残すところまでとさせてください。」

 

「それでええ。正式な締結は、必要な手続きを済ませてからや」

 

「ありがとうございます。」

 

ユメちゃんが頭を下げる

 

「こちらこそ、協議に応じていただきありがとうございます。」

 

ユウカもまた、頭を下げた

 

ようやく、ここまで来た

 

一時金を受け取って終わらせるのではなく、アビドスに技術と雇用を残す

そのための第一歩や

 

「・・・よっしゃ」

 

おっさんは小さく頷いた

ホシノも、少しだけ肩の力を抜いた

 

「うへぇ・・・これで、ようやく一歩目だねぇ」

 

「そうですね」

 

ユメちゃんも頷く

 

「もちろん、これで全てが解決したわけではありません。」

「調査も、復旧も、現地の雇用や技術研修も、これからです。」

 

「せやな」

 

おっさんは、机の上に置かれた協定書を見つめた

 

これは、始まりや

 

今回の協定は、アビドスの復興にとって大きな意味を持つ

そして、おっさん自身の計画にとっても必要なものや

 

ミレニアムの技術を得ること

その技術をアビドスに根付かせること

現地の人間が自分たちの力で設備を維持し、さらに発展させていけるようにすること

 

だが、その先にあるものはまだ誰にも話していない

 

「ほな、今日のところはこれでええやろ」

 

おっさんが立ち上がると、ユメちゃんとホシノも続いた

 

その時、先生が声をかけてきた

 

「"アンラさん"」

 

「ん?」

 

「"本当に、これでよかったんですか?"」

「"三人で武装してここまで来て・・・"」

「"ミレニアムを脅すような真似をしなくても、話し合いはできたんじゃないですか?"」

 

おっさんは、少しだけ笑った

 

「先生」

 

「"はい?"」

 

「話し合いってのはな、相手がこっちの話を聞く気になって初めて成立するもんや。」

 

「"・・・・・・"」

 

「今回は、アビドスが一方的に被害を受けた。」

「向こうが何も知らんかったとしても、こっちがそれを証明するために、何もかも差し出す必要はあらへん」

 

おっさんは、先生の目を見た

 

「武装して来たんは、こっちにも戦う力があると示すためや。」

「けど、実際に戦うつもりはなかった。」

「最初から話し合いで決着をつけるつもりやったからな。」

 

「"・・・それでも、ユウカたちは怖かったと思います。"」

 

「そら、そうやろな」

 

肩をすくめる

 

「せやけど、今回の件で怖い思いをしたんは、アビドスの子らも同じや。」

 

先生は、何も言わなかった

 

「おっさんらは、これからもミレニアムと協力していくつもりや。」

「せやからこそ、最初にきっちり線を引いとかなあかんかった。」

 

「"・・・・・・"」

 

「それだけや」

 

おっさんが扉へ向かうと、ユメちゃんとホシノも後に続いた

 

「アンラさん」

 

ユウカが、最後に声をかける

 

振り返ると、ユウカは背筋を伸ばしてこちらを見ていた

 

「今回の件について、ミレニアムとしても改めて謝罪します。」

「被害を受けたアビドスの皆さんに、私たちができることをしていきます。」

 

「せやな。頼むで」

 

おっさんは片手を上げた

 

「ほな、またな」

 

会議室を出る

 

廊下には、まだ警備の生徒たちが残っていた

こちらへ向けられる視線には、警戒と困惑が入り混じっている

 

まあ、無理もない

 

他自治区から完全武装で乗り込んできた三人組が、ミレニアムの中枢で交渉を終えたばかりなのだから

 

「・・・アンラさん」

 

隣で、ユメちゃんが声をかけてきた

 

「これで、ミレニアムとの協定については目処が立ちましたね。」

 

「せやな」

 

「販売拠点も工場も、すぐに完成するわけではありません。」

「これから調整が必要です。」

 

「分かっとる」

 

「でも、アビドスにとって大きな一歩になると思います。」

 

「ああ」

 

窓の外を眺める

 

ミレニアムの街並み

整備された道路

立ち並ぶ研究施設

行き交う生徒たち

 

この技術力を、アビドスに持ち込むことができれば

 

復興はさらに進むやろう

雇用も増える

現地の人間が技術を身につければ、

外部から人を呼ばずとも、自分たちで設備を維持できるようになる

 

それは、アビドスにとって大きな意味を持つ

 

そして・・・

 

おっさんにとっても、必要なことや

 

「・・・ま、これで一つ片付いたな」

 

「そうですね」

「帰ったら残して来た仕事をしましょうか。」

 

「・・・・・・寄り道して帰らん?」

 

「冗談言ってないで早く帰りますよ。」

 

ユメちゃんが、少しだけ呆れたように言った

 

「はぁ・・・今回の事件で、紙切れがうん十倍になっとるのに・・・」

 

後ろから、ホシノの欠伸が聞こえた

 

「うへぇ・・・そっちは大変そうですねぇ。」

 

「何言っとんねん。お前さんも対策委員会の仕事があるやろ。」

 

「えー・・・」

 

そんな話をしながら、三人はミレニアムタワーを後にし

それぞれの待つモノ(仕事)へと戻って行った

 




さて・・・
今回のお話で、リオがアビドスにかましてくれた事に対する落とし前はつきました。

リオがやった事なのになんでミレニアムが!?って思う方の為に言うと、
リオがミレニアムの生徒会長だからですね。

現実の国で考えてください。

国王が独断で国の金で傭兵を雇って他国に差し向け、それが露見した場合、
国王をしばきまわすのもそうですが、その落とし前は国が支払う事になります。



そして、今回アビドスがミレニアムに要求したのは、
クッソ簡単に言うと技術支援ですね。

ちなみに・・・
今回アビドスが要求したこの内容は、
現実の紛争や戦争などの落とし前でも使われていたりします。

一番近い物で言うと1954年に日本がビルマ連邦に行った賠償方法が、
今回のアビドスとミレニアム間の契約に最も近いですね。
興味がある人は調べてみてくださいね。
ちょっとした歴史の授業です!

まぁビルマ連邦に行った賠償と比べると、
正直アビドスがミレニアムに要求している内容は、
かなり優しいですし、ミレニアム自身にもかなりの利点があります。
それこそ、賠償と言うより、もはや相手の負い目を利用した商取引ですね。

まぁ・・・相手は子供なのにそういう負い目を利用したと言うのを先生に悟られた為に、
アンラは先生からベアトリーチェに先生がガンつけた時並の睨みをされてましたが。


そして・・・作中で出て来た契約書ですが、
実際の契約書があります。
一応作りました。

まぁ読む事なんて無いと思いますが置いておきますね。
供養です供養。
どうせ作中では触りというよりざっくりした内容しか使われないのに、
その契約書全文を作ったので・・・




アビドス自治区復興及び技術協力協定(案)

締結当事者

甲:アビドス自治区生徒会

乙:ミレニアムサイエンススクール(セミナーを代表窓口とする)

本協定は、アビドス自治区において発生した大規模襲撃及び通信妨害事案(以下「本件」という)
を受け、事実関係の解明、被害の回復、再発防止並びにアビドス自治区の経済的・技術的発展を目的として締結するものである。

甲及び乙は、相互の利益を尊重しつつ、以下の各条項に合意する。

第1条 調査協力及び記録の保全

1. 乙は、本件に関連する通信記録、機器管理記録、調達記録その他の関連資料を保全し、原因究明に必要な範囲で甲に開示する。
2. 乙は、甲による調査に対し、ミレニアムの専門技術者及び設備を提供し、通信妨害の経路並びに関係端末の特定に協力する。
3. 正当な理由なく記録を破棄し、改変し、又は調査を妨害してはならない。
4. 機密情報の開示範囲について争いが生じた場合、乙は当該情報を一律に非開示とするのではなく、第三者による確認、部分開示その他の代替手段を甲と協議する。

第2条 被害回復及び復興支援

1. 乙は、本件によって生じた通信設備、公共設備及び復興事業用設備の損害について、調査結果に基づき合理的な範囲で復旧費用を負担する。
2. 乙は、必要に応じて復旧用機材、代替設備及び技術者を派遣し、アビドス自治区の公共機能及び通信環境の回復に協力する。
3. 本条に基づく支援は、被害の回復及び事態の収拾を目的とするものであり、乙の組織的関与の有無については、調査によって確認された事実に基づき別途判断する。

第3条 ミレニアム製品販売・技術サービス拠点の設置

1. 乙は、アビドス自治区内の甲が指定する区域に、ミレニアム製品の販売及び技術サービスを行う拠点を設置する。
2. 当該拠点は、単なる販売施設にとどまらず、製品の修理、保守、部品交換、故障診断及び利用者向け技術支援を行う施設として運営する。
3. 乙は、拠点の設置に必要な設備、機材及び初期運営人員を提供する。
4. 拠点の営業開始は本協定締結後二ヶ月以内を目標とし、具体的な開設時期及び立地については甲乙協議のうえ決定する。
5. 施設の設置及び運営に必要な土地、建物その他の基盤設備については、甲が可能な範囲で提供又は手配に協力する。

第4条 現地雇用及び人材の育成

1. 乙は、当該拠点における採用に際し、アビドス自治区の住民を優先的な採用対象とする。
2. 専門資格その他の合理的な事情により現地採用が困難な職種を除き、開設後二年以内に従業員の過半数をアビドス自治区の住民とすることを目標とする。
3. 乙は、現地採用者に対し、販売、整備、保守、故障診断及び関連する技術業務について研修を実施する。
4. 乙は、毎年度十名以上を目安として技術研修の受講枠を設け、甲は受講候補者を推薦することができる。
5. 研修の修了者には、習得した技術及び技能を証明する修了証明を発行する。
6. 研修によって得られた一般的な知識及び技能は、乙の営業秘密そのものと区別する。乙は、当該知識及び技能を習得した現地人材の就業や能力向上を不当に妨げてはならない。

第5条 整備技術及び技術資料の提供

1. 乙は、当該拠点で取り扱う製品について、修理、保守及び故障診断を実施するために必要な技術資料、整備手順書、診断機材並びに交換部品を提供する。
2. 前項の技術資料には、通常の保守及び修理に必要な範囲で、部品構成、故障診断方法、接続仕様、更新手順その他の実務上必要な情報を含む。
3. 乙は、販売対象製品の保守に不可欠な情報について、営業秘密であることのみを理由として一律に提供を拒否してはならない。ただし、第三者の権利、安全保障上の制限その他の正当な制約がある場合は、甲乙協議のうえ代替措置を定める。
4. 乙は、現地技術者が対象製品の保守及び修理を独立して実施できるよう、必要な範囲で技術指導を行う。
5. 製品の設計原本、基幹ソフトウェアのソースコード及び研究開発段階の未公開技術については、本条によって当然に開示義務が生じるものではない。

第6条 現地生産及び技術協力の拡大

1. 乙は、拠点開設後二年以内に、取り扱い製品の一部について、アビドス自治区内での部品組立、部品製造又は製造工程の一部移転の可能性を甲と共同で検討する。
2. 技術、安全性、品質及び採算性の面から実施が合理的と判断された対象については、甲乙協議のうえ、現地生産又は組立に必要な技術指導及び設備導入を実施する。
3. 乙は、現地生産の実施にあたり、関連設備の操作、品質検査、保守管理及び製造工程に関する人材育成を行う。
4. 本条に基づく技術協力の対象及び範囲は、年次協議により拡張又は見直しを行うことができる。

第7条 通信環境及びサイバー防衛への協力

1. 乙は、本件の再発防止を目的として、甲が管理する通信設備及び情報システムについて、必要な範囲で安全性の評価及び改善に協力する。
2. 乙は、通信妨害の検知、アクセス管理、記録保全及び障害復旧に関する技術指導を実施する。
3. 甲乙は、アビドス自治区の設備及び情報を保護するための連絡体制を整備し、重大な障害又は不正アクセスが確認された場合には、相互に速やかに通知する。
4. 本条に基づく作業の実施に際しては、対象となる設備の管理者の承認を得るものとし、必要な権限及び作業範囲を事前に明確化する。

第8条 知的財産及び機密情報の保護

1. 本協定に基づき提供される製品、技術資料及び設備に関する知的財産権は、別途合意がある場合を除き、従来の権利者に帰属する。
2. 甲及び乙は、本協定の履行に際して知り得た相手方の非公開情報について、協定の目的外に利用せず、正当な理由なく第三者に開示してはならない。
3. 前条までに定める技術協力及び研修の履行を、包括的な機密保持義務のみを理由として妨げてはならない。
4. 現地で実施する修理、保守、技術研修及び生産工程については、担当者の責任範囲、利用可能な資料及び設備の範囲をあらかじめ明確にし、必要な技術情報が実務上利用可能な状態を確保する。

第9条 運営管理及び進捗確認

1. 本協定の履行を確認するため、甲乙双方の代表者及び技術担当者からなる共同協議会を設置する。
2. 共同協議会は、販売拠点の運営状況、現地雇用、技術研修、技術資料の提供及び現地生産の進捗を、少なくとも半年ごとに確認する。
3. 甲は、本協定に定める支援の履行状況について報告を求めることができ、乙は合理的な範囲でこれに応じる。
4. 本協定の履行に重大な遅延又は不履行が生じた場合、甲乙は改善計画を作成し、履行期限を定めて是正を求めることができる。

第10条 協定の期間及び見直し

1. 本協定の有効期間は、締結日から五年間とする。
2. 期間満了の六か月前までに甲乙いずれからも書面による終了の申し出がない場合、甲乙協議のうえ更新することができる。
3. 技術環境、経済状況又は自治区の事情に重大な変化が生じた場合、甲乙は本協定の内容を見直すための協議を申し入れることができる。
4. 一方の当事者が重大な義務違反を行い、相当期間を定めた是正要求にも応じない場合、他方の当事者は協定の一部停止又は終了を申し入れることができる。

第11条 協議及び紛争の解決

1. 本協定に関して解釈上の疑義又は紛争が生じた場合、甲乙はまず共同協議会において解決を図る。
2. 協議によって解決できない場合、甲乙は連邦生徒会その他の中立的な機関による仲介を求めることができる。
3. 本協定は、相互の責任を曖昧にすることを目的とするものではない。各当事者は、確認された事実及び合意した義務に従い、誠実に協定を履行する。

以上、本協定の成立を証するため、本書を作成し、甲乙双方の権限ある代表者が署名する。

締結日:   年  月  日

甲:アビドス自治区生徒会 副会長 小鳥遊ホシノ

乙:ミレニアムサイエンススクール 権限ある代表者 早瀬ユウカ

立会人:連邦生徒会 シャーレ捜査部 先生




こんなの作ってるから、投降遅くなんだよな・・・


ちなみに、先生がアンラとアビドスの生徒達に連絡した時に
はぐらかされてたのは、
襲撃して来たヘルメット団からの証拠を集めるのと、
今回の落とし前の契約とか色々を企んでいたからですね。

ホシノ達にはぐらかすように指示をしたのはアンラなんで。
基本的にはアンラが主犯です。
またこのおっさんです。




そして、アンラが計画している物は・・・
ぶっちゃけ、終章終わったさらにその先でやっと回収されるクッソ長い伏線になります。

今回、生徒から弱みに付け込んで、技術と金を巻き上げるという
マンマ悪い大人ムーブをかましたアンラの、大規模産業計画の始まりがここですね。

ミレニアムがアビドスを襲わなかったら、
アンラは以前から、ミレニアムのエンジニア部やゲーム開発部に出資をしてたんですけど、
そのコネクションと信用を使って、共同事業として、技術支援をしてもらう計画でした。

その為にアンラは二年前からミレニアムに投資を行っていたんです。

ちなみに【おっさん柴関奢る】というお話で。
アンラが、

「いやぁ今後の展開的に関係も持っておきたいし、それにに投資先としても良いしね、」
「実際定期的に結構お金入ってたやろ?」

ここで言っているこの今後の展開というのがこのアンラの計画だったりします。



ちなみに先生に問い詰められるお話はこの後のお話に書こうと思います。
まぁ、順番的に
ゲーム開発部全員をシャーレに呼んで、
さらにアンラも呼び出され、

モモイガン詰めし終わった後、

アンラをくっそ質問詰めにする予定です。

まぁあのおっさんなんで飄々と誤魔化して適当ぶっこいて茶濁すと思います。


先生には全部バレてますし、バレてる事をアンラも分かった上でやると思いますが。
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