おっさんキヴォトスに行く   作:無い頭のおっさん

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ばにたすばにたす


元の鞘小鳥遊ホシノ

≪ホシノ視点≫

 

「"ホシノ、助け出してすぐで悪いんだけど――戦えそう?"」

 

先生の声が、いつもより少しだけ急いているように聞こえた

 

「・・・え?」

 

状況が、まだ上手く飲み込めない

涙も、呼吸も、気持ちも――全部ぐちゃぐちゃのままなのに

 

でも、その一言で

 

「あ!」

 

セリカちゃんが声を上げた

 

「そ、そうよ!地上にまだ!」

 

「ん、残ってる」

 

シロコちゃんが短く頷く

 

「早く戻らないと」

 

「え、ちょっと待って、え?地上・・・?」

 

置いていかれるみたいに、話がどんどん進んでいく

 

 

「ホシノ先輩には、地上に向かいながら説明します☆」

 

「"とりあえず走るよ!"」

 

「うへぇ~・・・スパルタだねぇ」

 

苦笑しながらも、足は自然と動いていた

 

地下通路を駆ける

足音と、荒い呼吸と、まだ残る鼓動の速さ

 

その中で、断片的に言葉が入ってくる

 

「地上には、増援が来てるんです!」

 

「治安維持部隊の・・・フルフェイスの人と、便利屋68!」

 

「フルフェイスの人がめちゃくちゃ強くて、」

 

「盾と、ハンドガンで戦う」

 

「……それで、【アビドスの悪夢】って呼ばれてたみたいで」

 

「――え?」

 

思わず、足が一瞬だけ止まりかける

 

盾と、ハンドガン

頭の中で、何かが引っかかる

 

(・・・ユメ先輩?)

 

(・・・違う)

(ユメ先輩のなわけない)

 

あの人は確かに死んで・・・

 

それに、そんな戦い方――

 

少なくとも、【私の前では】しなかった

 

いつも、盾を構えて敵の攻撃に耐えて、

プルプル震えてるだけだった・・・

 

そんな、力任せで、壊すことだけに特化したような――

 

(……なのに)

 

どうしてか

頭から、離れない

 

(なんで、浮かぶのかな……)

 

 

 

 

「出口、見えた!」

 

視界が開ける

 

眩しい光と――

 

 

 

 

「・・・え」

 

言葉が、止まった

 

そこにあったのは――戦場の【跡】だった

 

カイザーPMCのロボット兵は、

原型を留めていないスクラップになって地面に散らばっている

 

装甲は歪み、千切れ、焼け焦げ、

まるで巨大な何かに無造作に踏み潰されたみたいに

 

そして――

 

 

「な、なに、あれ・・・?」

 

視線の先

巨大な兵器が、転がっていた

 

四肢はすべて引き千切られ

 

胴体は――

 

無理やり、ねじ切られている

 

 

 

 

「・・・うわぁ」

 

先生が、思わず漏らす

 

「え、なにこれ……」

 

「ん・・・ひどい」

 

その横で

 

「・・・あ」

 

便利屋68の面々が、立っていた

アルも、カヨコも、ハルカも、ムツキも

 

全員――

 

「うわぁ・・・」

 

唖然、とした顔で

 

 

 

「ちょ、ちょっと!何があったのこれ!?」

 

セリカちゃんが駆け寄る

 

「その・・・フルフェイスの人は!?」

 

「・・・帰ったわよ」

 

アルが、ぽつりと答えた

 

「え?」

 

「ほとんど、一人で全部片付けて」

 

「・・・は?」

 

「アナタたちが地下に行った瞬間ね」

 

カヨコが静かに続ける

 

「まるで・・・【手加減する理由がなくなった】みたいに」

 

ぞくり、と

背筋に何かが走る

 

「一気に潰したわ」

 

「・・・で、終わりかと思ったら」

 

ムツキが、妙に楽しそうな顔で口を挟む

 

「カイザーの偉い人がさー、このデカいのに乗って出てきて」

 

「ゴリアテ・・・」

 

「そう、それそれ」

 

「そしたらさー」

 

一拍

 

「空気、変わったのよね」

 

アルの声が、少しだけ低くなる

 

「・・・あの人普段ニコニコとしてて凄く優しそうなのに、

怖かったわよ、正直。」

 

「次の瞬間には、このデカブツの前にいて」

 

「気づいたら、足掴んでてさ」

 

ハルカが震える声で言う

 

「そのまま――」

「振り回して、叩きつけて、一本ずつ、手足もいで」

 

「最後に、胴体ねじ切ってました・・・」

 

 

「…………」

 

言葉が、出ない

 

「でさー」

 

ムツキが続ける

 

「中から出てきたその人、めっちゃ命乞いしててさ」

 

「それをチェーンでぐるぐる巻きにして」

 

「引きずってったわ」

 

アルが締める

 

「アビドスの都市部の方にね」

 

「・・・」

 

沈黙

 

 

 

「うーん・・・やり過ぎ・・・」

 

先生がぽつりと呟いた

 

「いやほんとそれ」

 

セリカちゃんも即答する

 

「ん、同意」

 

「”そういえば、アル。

普段はニコニコしてるって、あのフルフェイスの人と知り合いなの?”」

 

「ごめんなさいね。先生

取引相手の情報は洩らせないのよ。」

 

「"そっか、それは仕方ないね。"」

 

「取引相手、ねぇ・・・」

 

セリカちゃんが顔をしかめる

 

「何よそれ、余計に怪しいじゃない」

 

「うふふ、そういうお仕事だもの」

 

アルはいつもの調子で肩をすくめる

 

 

 

 

「・・・それより」

 

ノノミがそっと声をかける

 

「ホシノ先輩、本当に大丈夫ですか?」

 

「うへっおじさん?」

 

くるりと振り返る

 

「ほら見ての通り、ぴんぴんしてるよ~」

 

「さっきまで捕まってた人のセリフじゃないでしょそれ!」

 

「うへへ~まぁまぁ」

 

軽く笑ってごまかす

 

でも

 

(・・・・・・)

 

さっき聞いた話が、頭の中で繰り返される

盾、鎖、ハンドガン

 

ゴリアテを力でねじ伏せる戦い方

 

(・・・そんな戦い方)

 

(知らない・・・はずなのに)

 

さっきから、ふとした拍子によぎってしまう

 

(・・・ユメ先輩?)

 

・・・違う

ありえない

即座に、打ち消す

 

だって私は見た、この目で

 

砂に埋もれた身体を見つけて

冷たくなった手に触れて

そして――火葬場まで、ちゃんと行った

 

(・・・死んでる)

 

だから、ありえない

 

(なのに)

 

喉の奥に、何かが引っかかる

 

(アンラさん、だって・・・)

 

【あれ】だって、本来ありえない

 

砂漠で片腕を失って、あんなに出血してたのに、

生きてた・・・

 

そんなこと、普通は起きない

 

(・・・じゃあ、もし)

 

一瞬だけ、考えてしまう

 

(もし、生きてたら?)

 

心の中で喜んでしまう自分が居た

 

(・・・バカだなぁ、私)

 

小さく、心の中で笑う

 

(そんなわけ、ないでしょ)

 

(もう、終わってしまったこと・・・)

 

そう、言い聞かせる

でも

 

(・・・なんで、こんなに引っかかるのかな)

 

違和感だけが、残る

 

 

「ホシノ先輩?」

 

「ん~?何でもないよ~」

 

いつもの顔で、笑った

 

(気のせい、だよね)

 

そういうことにしておく

今は、まだ

 

 

「それよりさ」

 

パン、と手を叩く

 

「ここで立ち話してても仕方ないし、一旦戻ろっか~」

 

「賛成です!皆さんもお疲れでしょうし☆!」

 

「ん、帰る」

 

「そうね。ここに長居する理由もないわ」

 

アル達も同意する

 

「じゃあ今回はここまで、ってことで」

 

くるりと背を向ける

 

「依頼があればいつでも連絡ちょうだい。先生」

 

「”うん、その時はよろしくね”」

 

軽く手を振り合う

そのまま、便利屋68は去っていく

 

「・・・行っちゃった」

 

セリカちゃんがぽつりと呟く

 

「ほんと、嵐みたいな連中ね・・・」

 

「ん、同感」

 

「でも・・・」

 

ノノミが小さく微笑む

 

「頼もしかったですね☆」

 

「・・・まぁ、それは認める」

 

セリカちゃんが渋々頷く

 

「すっごい不本意だけど」

 

 

「”よし、それじゃあ帰ろうか”」

 

先生の一言で、全員が動き出す

 

アビドス高校へ向かって




ホシノが救われた後のお話だよー!
前回が原作準拠の終わり方をしたけど、
多分読んでる人ここで対策委員会編おわり!?ってなるだろうから
爆速で続きを投稿したよー!
一応原作準拠するとあそこで終わるんだ~
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