おっさんキヴォトスに行く 作:無い頭のおっさん
≪小鳥遊ホシノ視点≫
私が皆に迷惑をかけてから少し経った頃
アビドス高校の屋上、いつもの場所で
私は先生を呼び出していた
「先生」
「"大変だったね、ホシノ"」
「うへぇ、先生には一杯迷惑かけたねぇ~」
少しだけ、間を置いてから口を開く
「ねぇ、先生・・・祈願屋の場所、わかった?」
一瞬だけ、先生の視線が揺れた
「"・・・うん。特定はできたよ"」
やっぱり、と思う
「教えて」
先生は少しだけ迷ったあと、静かに住所を口にした
それは、思っていたよりもずっと近い場所で
思わず小さく笑いそうになる
「そっか・・・そんな近くに居たんだ・・・」
喉の奥が、少しだけ乾く
「じゃあさ、先生」
顔を上げる
「祈願屋の社長って、誰か知ってる?」
「"・・・そこまでは、まだ調べきれてないかな"」
少しだけ、息を吐く
「・・・そっか」
ほんの一瞬だけ、目を閉じた
「・・・・・・アンラさんだよ」
空気が、止まる
先生の表情が、わずかに固まった
「祈願屋の社長」
「アンラさん」
その名前を、もう一度だけ、はっきりと口にする
先生が、何かを言おうとした
「"・・・そ、それは・・・"」
言葉が、途中で止まる
口は動いているのに、音が出ない
まるで、喉を掴まれているみたいに
「"・・・っ"」
もう一度、言おうとする
でも、出ない
声にならない
その様子を見て
私は、すぐに理解した
(あぁ・・・)
「・・・いいよ、先生」
静かに、そう言った
「無理に言わなくていい」
先生が、少しだけ目を見開く
「・・・言えないんでしょ?」
ほんの少しだけ、間が空く
でも、先生は何も言えない
肯定も、否定も
それで、十分だった
「・・・そっか」
小さく、息を吐く
「契約、かぁ」
苦笑が、漏れた
「ほんと・・・あの人らしいや」
少しだけ視線を落とす
廊下の床が、やけに遠く感じた
「・・・私さ」
ぽつりと、言葉が零れる
「ずっと、思ってたんだよね」
「アンラさん、私のこと恨んでるんだって」
あの時の光景が、頭をよぎる
アンラさんの腕
血に染まったローブ
「・・・あの人の腕、無くした原因は、私だしさ」
「そりゃあ、恨まれても仕方ないよねって」
少しだけ、笑う
うまく笑えているかは、わからない
「だからさ」
「今回のことも、全部」
「私への仕返しなんだって、思ってた」
祈願屋、土地、カイザー
全部繋がって
全部、自分に向いていると思っていた
「でもさ」
ゆっくりと、顔を上げる
先生を見る
「・・・それならさ」
「先生が、生きてるのおかしくない?」
ほんの少しだけ、間を置く
「だってあの人」
「やるって決めたら、絶対やると思うんだ。」
「なのに、先生は無事で」
「対策委員会も、今こうして普通に動けてる」
胸の奥で、何かが軋む
「・・・変だよね」
沈黙が落ちる
「・・・まぁ」
小さく、息を吐く
「全部、私の勘違いだったのかもね」
完全に否定はしない
でも
もう、この前までみたいに【確信】はできなかった
「・・・ごめんね、先生」
ふっと、いつもの調子に戻る
「変なこと言っちゃったね~」
「うへへ~忘れて忘れて」
そう言って、手をひらひらと振る
でも
(・・・ちゃんと、確かめないと)
胸の奥に残った違和感は
もう、無視できるものじゃなかった
(アンラさんが、何を考えてるのか)
(私が、何を勘違いしてるのか)
「・・・ねぇ、先生」
もう一度だけ、振り返る
「ちょっとだけ、付き合ってよ」
「私、まだちゃんと」
「わかってないみたいだからさ」
胸の奥で
何かが、少しだけほどけた気がした
私はサイザーの件で砂漠に向かった時の様に、完全武装をしていた
ボディーアーマーに
そして
その状態で先生と二人、アビドスの校舎を出ようとしたところで、背中に声が刺さった
「・・・また、一人で行くつもりじゃないですよね?」
振り返らなくても分かる
アヤネちゃんだ
「うへぇ~何の事かな~?」
「とぼけないでください」
間髪入れずに返ってくる
「先輩がまた一人で動こうとしてるの、もう分かってますから」
「今回は絶対に、止めます。」
・・・あー、これ無理なやつだねぇ
そんな事を思っているとグラウンドで潜んでいたのか皆が出てきた
「ん、ホシノ先輩、一人で突っ走るのは禁止」
「そうよ!また勝手にいなくなるとか絶対ダメなんだからね!」
「ふふっ、今回はみんなで行きましょうね☆」
完全包囲
逃げ道、なし
「・・・うへぇ、包囲網えぐいね~」
「"ごめんね、ホシノ。
皆に一人でまた突っ走ろうとしてるって言っておいたよ。"」
小さくため息をつく
「うへぇ、なるほど。先生か~」
でも
(・・・まぁ、いいか)
「わかったよ~一緒に行こっか」
アビドス自治区都市部
先生から聞いた住所を頼りに、私たちはアビドス都市部の外れにあるビルの前まで来ていた
「・・・ここ、だね~」
目の前にあるのは、最近建てたのか綺麗なだけのどこにでもありそうなビル
ただそこにあるだけの、何の変哲もない建物
「・・・ここに、本当に祈願屋の事務所があるの?」
セリカちゃんが訝しげに見上げる
「うへぇ~見た目は普通だよね~」
軽く肩を竦める
でも
(間違いない)
胸の奥が、妙にざわついている
「ホシノ先輩、本当に入るんですか・・・?」
アヤネちゃんの声には、はっきりと警戒が滲んでいた
「んー・・・まぁね~」
そのまま、何気なく一歩踏み出す
「ちょ、ちょっと待ってください!せめて中の様子を――」
「大丈夫だよ~」
振り返らずに言う
「もう、だいたいわかってるから」
「・・・っ」
アヤネちゃんが言葉を飲み込む
隣に立つ先生は、何も言わない
(言えない、か)
ほんの一瞬だけ、視線を向ける
先生は静かに頷いた
(・・・それでいいよ)
それ以上は、もう必要ない
扉の前に立つ
その時だった
「アンラさん飲みすぎじゃないですか~?」
「ユメちゃんが言うかそれ・・・さっきから何杯目やねん」
「えへへ~数えてないですよ~?」
「酒初心者がそんな飲んで・・・
まぁ、ええか。ほら、もう一杯いこうや~」
「やった~!今日は飲みますよ~!」
・・・沈黙
二人の声が聞こえた
そう二人、二年前に会えなくなった
【二人の】声が聞こえてきた
(・・・この声――)
(間違えるはず、ない)
そう確信した瞬間
「は?」
思わず、声が漏れた
「ん、楽しそう。宴会してる?」
シロコちゃんが目を輝かせていた
「いやいやいや、なんでよ……!」
セリカちゃんが頭を抱える
(・・・何してるの、あの人達)
(二年間も)
(人のこと騙しておいて)
(二年間も、放っておいて)
(二年間も・・・)
気づけば
口元が、勝手に歪んでいた
「・・・ホシノ先輩?」
アヤネちゃんがが怯えた様子で私に声をかけてきた
「うへぇ~」
笑う
でも
全然、笑ってない
隣で、先生が一瞬だけ息を呑んだのが分かった
「・・・行くよ」
扉に手をかける
「ま、待ってくださいホシノ先輩!少し落ち着きましょう!」
アヤネちゃんが制止してきた
「大丈夫だよ~」
ゆっくりと振り返る
満面の笑みで
「ちょっと、【お話】するだけだから。」
今度は誰も、止めなかった
いや、止められなかった
そのまま扉を、開けた
中にいた二人が、同時にこちらを見る
酒の匂い
赤い顔
笑いかけたまま止まった表情
そして次の瞬間
その血の気が、一気に引いた
静寂
私は、ゆっくりと笑う
「ここに居たんですね。まったく、探しましたよ。」
「ユメ先輩、アンラさん。」
・・・あの日と、同じ言葉だった
足が、勝手に動く
近づく
視界が、少し揺れる
(……違う)
(あの時と、違う)
あの時は
冷たくて
動かなくて
砂に埋もれていて
「・・・ホシノ、ちゃん・・・?」
声が、した
その瞬間
「っ!!」
気づいた時には
もう、抱きついていた
「なんでっ」
腕に力が入る
逃げられるのが怖いみたいに
「なんで生きてるのに・・・っ」
声が震える
「なんで・・・あの時・・・っ」
喉が詰まる
「・・・私、見たんですよ・・・っ」
指先が、震える
「砂の中で・・・っ」
「動かなくて・・・っ」
息が乱れる
「冷たくて・・・っ」
「・・・死んでるって思ったのに・・・っ」
掴む手に、さらに力が入る
「私のせいでっ」
ぽろ、と涙が落ちる
「喧嘩して・・・っ」
「一人で行かせて・・・っ」
「止められなくて・・・っ」
声が、ぐちゃぐちゃになる
「・・・死んだって・・・思ってっ」
「ずっと・・・っ」
「ずっと、そう思ってたのに・・・っ」
顔を上げる
涙でぐしゃぐしゃのまま
「なんで今さら・・・っ」
「なんで、何も言わなかったんですか・・・っ!!」
ぽん、ぽん、と叩く
力なんて入ってないのに
感情だけがぶつかる
ユメは、少しだけ目を伏せた
それから
ゆっくりと、ホシノを抱きしめ返す
「・・・ごめんね、ホシノちゃん」
その一言で
完全に、崩れた
「……っ、ぁ……っ、ぅ……っ」
声にならない声で泣きじゃくる
二年前
砂の中で
もう二度と届かないと思った温もりが
今、ここにある
対策委員会の皆は
ただ、呆然とその光景を見ていた
「・・・なに、これ・・・」
セリカちゃんの声が、かすれる
「ホシノ先輩が・・・泣いてる・・・」
アヤネちゃんの言葉も続かない
「ユメ先輩・・・?確か・・・二年前砂漠で・・・」
ノノミちゃんが、小さく呟く
先生は、何も言えない
ただ静かに、その再会を見ながら泣いていた
少し離れた場所で
アンラが、気まずそうに頭を掻く
「あー・・・おっさんはお邪魔だなぁコレ・・・あぁ、逃げてぇ・・・」
しばらくして
ホシノの嗚咽が、少しずつ落ち着いていく
まだ肩は震えている
でも、腕の力だけは、離さないまま
「・・・落ち着いた?」
ユメ先輩が、優しく声をかけてくる
「・・・落ち着いて、ないです」
即答だった
そのまま、ゆっくりと顔を上げる
涙でぐしゃぐしゃのまま
視線が、横に滑る
「・・・アンラさん」
びくっ、と
分かりやすく肩が跳ねた
「いやぁその・・・ええとやな・・・
久しぶり・・・?やなホシノちゃん。」
珍しく歯切れが悪い
ホシノは、一歩離れる
ユメから手を離して
そのまま、アンラの方へ歩いていく
一歩
また一歩
「久しぶり・・・?
私達の事ずっと見てましたよね?」
「つまり、主犯は、アンラさんですよね?」
声は、静かだった
さっきまで泣いていたとは思えないくらいに
でも
笑っている
満面の笑みで
「いや、まぁその・・・主犯いうか・・・
段取り的にはそうなるんかもしれんけどやな・・・?」
一歩、後ずさる
「・・・どうせ理由なんて聞いても教えてくれないんでしょ?」
「いや、教えられへんだけでやな・・・?」
「ですよね」
即答
「言えるなら、こんな回りくどい事してませんもんね」
にこっ、と笑う
「・・・理解はしてますよ?」
さらに一歩、詰める
「私達を助けてくれてたのも」
「結果的に、全部うまくいってるのも」
「ちゃんと、分かってます」
アンラの額に、じわっと汗が浮かぶ
「・・・せやろ?せやろ?」
少し安心したように笑いかける
その瞬間
「・・・でも」
空気が、変わった
「
笑顔のまま
一切、温度がない
「私を騙して」
「二年間も放置して」
「最後に送ってきた言葉まで、偽装して」
一歩、踏み込む
「それで、はいそうですかって許すと思います?」
「いや思わんけども!?でも事情がやな・・・」
「却下です。」
その後の展開は
早かった
私がアンラさんを抑え込んで
ユメ先輩が何故か持っていた鎖でぐるぐる巻きにして運んだ
アビドス高校、グラウンド
「ちょ、待て待て待て!?話し合おうやホシノちゃん!な!?」
首だけ出した状態でアンラが必死に叫ぶ
既に、首から下は完全に埋まっている
「問答無用です」
ホシノは、無表情でスコップを振るう
さらさら、と砂がかかる
「ちょ、ちょい待ち!?それ顔に来とる!来とるって!?」
ばふっ
「ぶっは!?ちょ、やめぇって!?」
「ホシノ先輩容赦ないですね・・・」
「ま、まぁ・・・当然、かも・・・?」
アヤネとセリカが、引き気味に見守る
「ふふっ、元気で何よりです☆」
ノノミだけは、なぜか楽しそうだった
「いやほんまごめんて!!謝る!めっちゃ謝るから!!」
「2年遅いです」
さらさらさら
「うおっ!?待っ……砂ぁ!!口に入る!!」
「謝罪が軽いです」
「全力や!今の全力や!!」
アンラが、ぶふっ、と砂を吹き飛ばす
「ぶっふぁ!!……ごめんなさい!!ほんまにごめんなさい!!」
「もっとです」
「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
その様子を
ユメが、少し困ったように笑いながら見ていた
そして
少し離れた場所で先生もまた、あきれた様に静かにその光景を見ていた
二年間
止まっていた時間が
ようやく
少しだけ
前に進み始めていた
また、同じ場所で笑える時間に向かって
正直このお話の為にこの作品作ったまである。
でもまだまだ続くよ!
なんなら現時点でミレニアムの大雑把な流れも決めてあるから
この後何話か閑話が挟まったらミレニアムのお話するよ!
あとユメの通り名については・・・
閑話で話すかも!
そういやホシノが持ってるアンラのローブですけど、
なんで黒褐色かというと布に付着した血液って酸化すると黒褐色になるんですよ
というか思うんやけど、ホシノの本気装備
遺品にまみれすぎやない・・・?重いなホシノ
ではおっさん豆情報
おっさんが使ってる黒い液体金属
原材料は人