おっさんキヴォトスに行く   作:無い頭のおっさん

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ばにばにたすたす


おっさんアリスを見守る

アメに夢中だったアリスをなんとかゲーム開発部に迎え入れたモモイ

 

「うーん、やっぱり心配・・・

この子をうちの部員に偽装するなんて・・・本当に大丈夫?」

 

新品同然の筐体や、積み上がったゲームソフトに囲まれた部室の中

その問いに、銀髪の少女――アリスは抑揚の薄い声で返答する

 

「【大丈夫】の意味を確認・・・【状況が悪くなく問題が発生していない状況】の事と推定、」

「肯定します。」

 

「いやいやいや!肯定出来ないって!この口調じゃ絶対疑われるよ!」

「ね!やっぱりやめておこう?!これは無理だって!」

 

ミドリが半ば涙目でそう言うと、モモイはぐっと拳を握った

 

「今やめるって選択肢の方が無理だよ。何としても、私たちのゲーム開発部を守らなきゃ。」

「そうしないと、ユズの居場所が・・・寮に戻るわけにはいかないし・・・」

 

「・・・そう、だったね。」

 

さっきまでの騒がしさが一瞬だけ静まり返る

部室の空気が少しだけ沈んだ、その時だった

 

ガチャリ、と扉が開く

 

「先生とおっさんがコレ買うの犯罪臭するから

次からはモモイかミドリが買ってきてくれよ頼むから・・・」

 

制服の入った紙袋を抱えながら、おっさんが部室に入った

後ろでは先生が困ったように苦笑している

 

「あ、先生とアンラさん!お帰り!ありがとね!制服!」

 

「おー、流石に売店で怪しまれたから、

モモイがドロに顔面から突っ込んだから替えの奴買いに来たって言っておいたぞ」

 

「何てこと言ってくれてるの?!」

 

「売店の店員の子は【あー】って顔しとったぞ?」

 

「もしかして私のイメージって・・・」

 

項垂れるモモイを横目に、おっさんは紙袋から制服を取り出してアリスへ差し出した

 

「さて、とりあえずアリス、そのミドリのお古からこっちのさらっぴんのに着替えよか、」

 

「肯定。」

 

そう返事をした瞬間だった

アリスが何の躊躇いもなく服へ手をかけ始める

 

「待て待て待て!!ストップストップ!男が居る所で着替えるのは宜しくない事なんや。

だから、おっさんが外に出てから、モモイかミドリに聞きながら着替えてくれ。」

「わかったかい?」

 

アリスは一瞬だけこちらを見つめ

 

「・・・肯定、男性、アンラ。同室存在時、本機のアセット脱着は禁止事項。」

 

と、律儀に頷いた

 

「そう、それでええんやでー

ほな、モモイかミドリ、アリスの着替え頼むわ。」

「部室の外におるから、終わったら声かけてくれ」

 

そう言って部室を出る

扉が閉まる寸前、先生の小さな笑い声が聞こえた

 

しばらくして再び部室へ戻ると、アリスは新品の制服へ着替え終わっていた

 

サイズも問題無い

ただ――

 

「よし、服装もある程度整ったし、あとは武器と、

学生登録して、学生証を手に入れないとだね。」

 

「学生証については、私の方で何とかするから。

ミドリ達はアリスに【話し方】を教えてあげて。」

 

「は、話し方?」

 

「今のままだとミドリが言った通り、疑われちゃうかもしれないから。」

 

そう言いながらモモイとミドリはアリスの方に視線を向けた

 

 

 

「なーアリス・・・そのローブ、脱がない?室内でローブは熱いやろ・・・?」

 

制服の上から、アンラの砂色のローブをしっかり羽織っていた

 

「否定、このアセットは、本機アリスの必須アセットです。」

 

「・・・こんどもっと可愛いの買ってあげるからさ・・・

ほら、ストールとか、可愛いの一杯あるんよ?」

 

「拒否」

 

「"なんか、アンラさんお父さんみたいですね・・・"」

 

先生がぼそりと呟く

 

「やかましいわ。」

 

 

 

「・・・・・・うん、あのままだともしもユウカが部室に来た時に

全部台無しになりかねないし・・・」

 

「いや、それはそうだけど・・・」

「はぁ・・・仕方ないやれるだけやってみるよ。」

 

「よし!じゃあ任せた!」

 

そう言うや否やモモイは部室から飛び出して行った

 

残されたのは、

ローブ防衛戦を続けるアリスとおっさん

それを眺める先生

そして教育係を押し付けられたミドリ

 

「え、えっと・・・アリスちゃん?」

 

「肯定。本機の名称、アリスです。」

 

「うん、じゃあアリスちゃんって呼ぶね。それにしても話し方かぁ・・・

よく考えると、どうやって習得するんだろ。」

「普段は動画を見たり、周りの言葉を真似していくうちに自然にって感じだと思うけど。」

 

「うーん、子供用の教育プログラムってインターネットに落ちてるかな・・・」

 

悩み始めたミドリを見ながら、

おっさんは棚に積まれていたゲームソフトを一つ抜き取った

 

「アリス、アリス。コレどうや。」

 

「!!、正体不明の物を発見、確認を行います。」

 

「ん?・・・あっそ、それは!」

 

「えっと・・・ちょっと恥ずかしいけど、実はそれ私たちが作ったゲームなの。

まぁ、凄い酷評されちゃった奴なんだけどね。」

「あ、そうだ。クソゲーオ〇ザイヤーで1位になっちゃったし、アリスちゃんがどう思うかはわからないけど・・・やってみる?」

 

「【会話】をしながら進められるから、ゲームをやってみるのも勉強になるかも。」

 

「??、ここまでの言動の意図、完璧には把握しかねます。しかし・・・

肯定、アリスはゲームをします。」

 

「ほ、本当に?!ちょっと待ってて、すぐにセッティングするから!」

 

ミドリが慌てて機材を起動する

 

その様子を見ながら、おっさんは先生とアリスにエールを送った

 

「あー・・・ついにか、頑張れよアリス・・・心を強くもつんやぞ・・・」

「"先生も横についてるからね・・・"」

 

大人二人がまるで

我が子を死地に送るようなテンションだった

 

 

 

 

 

 

 

「よし、準備完了!」

 

ミドリがそう言うと同時、

モニターへタイトル画面が映し出される

 

アリスはじっとそれを見つめた後、

ゆっくりとコントローラーを握った

 

「・・・アリス、ゲームを開始します。・・・」

 

「タイトルからわかるかもしれないけど、

このゲームは童話テイストで、色彩豊かな王道ファンタジーRPGなの。」

「王道っていう言葉の意味辞書でひいた方が良いんちゃうかミドリ・・・」

 

「もう、アンラさんは黙ってて。」

 

おっさんは軽く睨まれた

 

 

『コスモス世紀2354年、人類は劫火の炎に包まれた・・・』

 

「うーん、頭痛が痛いみたいな国語力。」

 

「・・・?」

「えっと、王道とはいっても、色々な要素を混ぜてたりするんだけどね。

トレンドそのままでもダメだけど、王道に拘り過ぎても古くなるからって事で。」

 

「・・・ボタンを押します・・・」

 

『チュートリアルを開始します。』

『まずはBボタンを押して、目の前の武器を装着してみてください。』

 

「Bボタン・・・」

 

「「"あっ・・・"」」

 

先生とおっさんの声が綺麗に重なった

 

『ドカーーーン!!』

 

「???」

 

<GAME OVER>

 

「!?!?」

 

部室に沈黙が落ちる

 

そして――

 

「あははははっ!」

 

いつの間に戻って来ていたのか、

モモイが腹を抱えて爆笑していた

 

「予想できる展開ほどつまらないものはないよね!

本当はここで指示通りじゃなくて、Aボタンを押さなきゃいけないの!」

 

「お姉ちゃん・・・?学生証を作りに行くって言ってなかった?」

 

「行ってきたんだけど、遅い時間だったからか誰も居なかったの。また明日行く。」

 

「それはさておき、改めて見てもこの部分はちょっと酷いと思う。」

 

ミドリが呆れた顔で言う

 

「・・・も、もう一度始めます・・・」

「再開・・・テキストでは説明不可能な感情が発生しています。」

 

「あっ私それわかるかも!きっと【興味】とか【期待】とか、そういう感情だと思う!」

 

「いや、ちゃうやろ。高確率で【後悔】と【怒り】やろ多分」

 

先生が吹き出しそうになっていた

 

『武器を装備しました。』

 

「装備完了・・・」

 

「お、良い感じ。そのまま進めば、RPGの花である戦闘が・・・」

 

エンカウントが発生しました!

 

「!?」

 

『野生のプニプニが現れた!』

 

アリスの瞳が僅かに開かれる

 

「緊張、高揚、興味。」

 

「Aボタンを押して!今度は嘘じゃないから!」

 

「Aボタン・・・【秘剣燕返し:敵に対して二回攻撃をする】」

「行きます、プニプニに対して・・・秘剣!つばめ――」

 

『ッダーン!』

『攻撃が命中、即死しました』

 

<GAME OVER>

 

「!?!?」

 

「"アリス・・・"」

 

先生が優しい声を出していた

 

『プニプニ:どれだけ剣術を鍛えたところで、我が銃の前では無力・・・っふ』

 

「うーん、やっぱりプニプニが【ふっ】って言うのは不自然かな?」

 

「不自然というより、不条理の間違いやろ。」

 

アリスは無言だった、いや、正確には違う

処理落ちしていた

 

「思考停止、電算処理が追いつきません。」

 

「あ、アリスちゃん?大丈夫?」

 

「・・・リブート、再開します。」

 

「なんか既に若干意地になってへんか・・・?」

 

「今度は銃の射程距離把握に努めながら、接近し過ぎない様にプニプニを排除します。」

 

「そう、まさにそれ!諦めずに繰り返し挑戦して、試行錯誤の末に答えを見つける!

それがレトロチックなゲームのロマンだよ!」

 

モモイが得意げに胸を張る

 

さっきまで感情表現の乏しかったアリスが、

明らかに画面へ熱中していた

 

失敗する度に考え、

突破口を探し、

次の一手を試している

 

その姿はどこか、

生まれたての子供が初めて世界へ触れているようだった

 

 

 

 

 

(2時間後・・・)

 

 

「・・・電算処理系統、および意思表示システムに致命的なエラーが発生。」

 

ソファへぐったり沈み込みながら、

アリスが死んだ魚みたいな目で呟く

 

「頑張ってアリス、ここさえ乗り越えれば待望のクライマックスだよ!」

 

「今のはどう考えても、【草食系】って言葉が思い出せないからって、

それを【植物人間】って書いたお姉ちゃんのせいでしょ!?」

 

「【ごめんなさい。私は植物人間ですので、女性に対して気軽に声をかける事は出来ません】ってテキストを読んだ瞬間に、アリスちゃんが一瞬意識を失ってたじゃん!」

 

「先生、これ全部おわったらモモイの国語の再授業の申請お願いしてもええか・・・?」

 

「"ええ、まかせてください。"」

 

「え!?まって先生!今はちゃんとわかってるから!

授業なんてしなくても大丈夫だよ!?」

 

「おっさんが買ったった小説とかも読んでなかったろ・・・もっぺん学んで来い。」

 

モモイが「うぅ・・・」と唸る横で、

アリスは再びゲーム画面を見つめ始める

 

 

 

「・・・質問。どうして母親がヒロインで、それでいて実は前世の妻で、

更にどうしてその妻の元に、子供の頃に別れた切りの

腹違いの友人がタイムリープしてきてるのか・・・」

 

「いえ、そもそも【腹違いの友人】という表現はキヴォトスの辞書データに搭載されていな――」

 

そこまで言って、

アリスの顔が引き攣った

 

「エラー発生!エラー発生!!」

 

「が、がんばってアリスちゃん!クライマックスまでもう少しだから!」

 

「リブート・・・プロセスを回復。」

 

「・・・ふぅ。」

 

「なんか色々な物を飲み込んだ溜息やなぁ・・・」

 

 

「これが、ゲーム・・・再開します。」

 

言い切るや否や、

アリスは再びコントローラーを握り締めた

その目は、さっきまでの無機質な光ではない

 

理解不能な物へ振り回されながらも、

それでも先を知りたいと願う目

 

先生もそれに気付いたのか、

どこか柔らかい表情でアリスを見守っていた

 

おっさんはというと――

 

(TSCって毎回こうなんか・・・?)

 

半分感心しながら

半分引いていた

 

 

 

 

(更に1時間後・・・)

 

そこには地面に倒れ伏している死体、

もといアリスがいた

 

「こ、ろ、し、て・・・」

 

「すごいよアリス!開発者二人が一緒とはいえ、三時間でトゥルーエンドなんて!」

 

モモイが目を輝かせながらアリスを揺する

 

「そ、それもそうだけど、もしかして、本当にゲームをやればやるほど・・・

アリスちゃんの喋り方のパターンが、どんどん多彩になってきてる!?」

 

ミドリが驚いたように声を上げた

 

すると床に突っ伏したまま、

アリスがゆっくり顔だけを上げる

 

「勇者よ、汝が同意を求めるならば、私はそれを肯定しよう。」

 

「うん、確かにそう・・・かも?」

 

「ゲームからそのまま覚えたせいで、ちょっとまだ不自然かもだけど・・・

言葉を羅列してただけの時よりは、かなり良くなったと思う!」

 

 

「と、ところでその・・・」

 

「こういうのを面と向かって聞くのは緊張するんだけど・・・」

「わ、私たちのゲーム、どうだった?面白かった!?」

 

ミドリの声には、

不安が滲んでいた

 

散々酷評され、

クソゲー扱いされ、

笑われ続けてきたゲーム

 

だからこそ、

真正面から遊んだ相手の感想が怖い

 

そんな空気が伝わってくる

アリスは少し考え込むように視線を泳がせた後、

 

「・・・説明不可。」

「・・・・・・類似表現を検索。」

「ロード中・・・」

 

「も、もしかして、悪口を探してる・・・?そんなこと無いよね?」

 

モモイの顔が引き攣る

 

その横で、

先生が苦笑していた

 

そして数秒後

 

「・・・面白さ、それは、明確に存在・・・」

 

「おおっ!」

 

モモイが勢いよく身を乗り出す

 

「プレイを進めれば進めるほど・・・まるで、別の世界を旅しているような・・・」

「夢を見ているような、そんな気分・・・もう一度・・・」

 

「もう一度・・・・・・」

 

そこで、

アリスの声が止まった

 

ぽたり、と

目尻から一筋の涙が零れ落ちる

 

「ええぇっ!?」

 

「あ、アリスちゃん!?どうして泣いてるの!?」

 

ミドリが慌てて駆け寄る

 

当のアリス本人も、

何故涙が出ているのかわからないような顔をしていた

 

頬へ触れ、

そこに残る雫を不思議そうに見つめている

 

「先生、ほんまTSCスゲーよな・・・これいつもそうやったんか?」

「"毎回、ですね。"」

 

先生が静かに頷く

 

その声は、

少しだけ懐かしそうだった

 

 

「決まってるじゃん!それぐらい、私たちのゲームが感動的だったって事でしょ!」

 

モモイが胸を張る

 

「モモイのこのセリフも毎回ならおっさんはちょっと説教せんといけんのやがな?」

「"あはは・・・"」

 

「い、いくらなんでもそれは・・・というかこのゲーム、ギャグよりのRPGのはずだし・・・」

 

ミドリが困ったようにツッコミを入れる

それでもモモイは止まらない

 

「ありがとうアリス!その辺の評論家の言葉なんかより、その涙の方が100倍嬉しいよ!」

「あー、早くユズにも教えてあげたい・・・!」

 

その瞬間だった

 

部室の隅、

ずっと閉じられていたロッカーの中から、

小さな声が聞こえた

 

「・・・ちゃ、ちゃんと、全部見てた。」

 

「え?」

 

ギィ・・、とロッカーの扉が開く

 

中から現れたのは、

赤い髪の小柄な少女

 

「おーユズ。やっと出てきたんか。」

 

「う・・・うん、アンラさん、久しぶり。」

 

相変わらず縮こまりながら、

ユズは恐る恐るアリスを見ている

 

「あ、アリスは初めてだよね。この人が私たちゲーム開発部の部長ユズだよ!」

 

「えっと、あの、その・・・あ、あ、あ・・・」

 

「あ・・・?」

 

ユズはしばらく口をぱくぱくさせた後、

ぎゅっと拳を握り締めた

 

「・・・ありがとう。」

 

小さいけれど、

はっきりした声だった

 

「ゲーム、面白いって言ってくれて・・・もう一度やりたいって言ってくれて・・・」

「泣いてくれて・・・本当に、ありがとう。」

 

そう言いながら、

ユズはアリスを抱きしめる

 

「???」

 

突然の行動に、

アリスの身体がぴたりと固まった

 

「面白いとか、もう一度とか・・・そういう言葉が、ずっと聞きたかったの。」

 

「ユズちゃん・・・」

 

モモイが嬉しそうに目を細める

 

おっさんはその光景をみて、今まで面倒見てきた子達が

報われたような気がして一人、感動していた

 

(――まぁ、それはそれとして、

このゲームのシナリオはどうかと思うけんど)

 

 

 

 

 

「とにかく、改めまして、ゲーム開発部部長のユズです。」

「この部に来てくれてありがとう、アリスちゃん。これからよろしくね。」

 

ユズはまだ少し緊張した様子のまま、

それでも頑張って笑顔を作っていた

 

「よろ、しく・・・?」

 

「おー・・・あのユズが自分から・・・感動するわ・・・」

 

思わずそんな言葉が漏れた

 

(初めて会った時なんか、

ロッカーから出てこんかったのに成長したなぁ・・・)

 

「・・・理解。」

「ユズが仲間になりました、パンパカパーン!」

「・・・あってますか?」

 

不安げにこちらを見るアリス

 

「アリス、安心しい。おーとるよ。」

 

そう返すと、

アリスはどこかほっとしたように小さく頷いた

 

「ふふっ、その様子だと、本当にわたしたちのゲームを楽しんでくれたんだね・・・

仲間が増えるのは、RPGの醍醐味の一つだもんね。」

 

ユズが嬉しそうに微笑む

その表情は、

さっきまでロッカーに隠れていた子と同一人物とは思えないくらい柔らかかった

 

「あ、もしRPGを面白いなって思ってくれたなら・・・

わたしが、他にもおすすめのゲームを教えてあげる。」

 

その瞬間

 

「ちょっとまったぁ!アリスにおすすめするのは私が先!!」

「良質なゲームをやればやるほど話し方も自然になって、

私たちの計画の成功率も上がるんだし!」

 

「絶対お姉ちゃんの趣味混ざってるでしょ・・・」

 

「さぁ、まずは【英雄神話】と【ファイナルファンタジア】と【アイズ・エターナル】と・・・」

 

「待って、お姉ちゃん。それ全部100時間超えるやつ・・・」

 

「良いゲームに時間は関係ないんだよ!」

 

「あるよ!?」

 

騒がしくなる部室

 

アリスはそんなやり取りを、

きょろきょろと目を動かしながら眺めていた

 

 

多分、

まだ全部を理解出来とるわけやない

けんども、少なくとも――さっきまでみたいな、

空っぽの機械のような目はせんようになった。

 

誰かの言葉を聞いて、

反応して、

興味を持っている

 

それだけで、

だいぶ変わった気がした。

 

先生も同じ事を思ったのか、

静かに目を細めていた

 

「そろそろ、ええ時間やし、おっさんは先生をシャーレまで送ってくるで、」

 

時計を見ると、

いつの間にか遅い時間になっていた

 

「帰っちゃうんですか?アンラさん。」

 

ミドリが少し残念そうな声を出す

 

「おっさんは先生を送り届けたらまたここに戻ってくるわ。」

 

今日はまだ色々確認せなあかん事もある。

それに――

 

ちらりと先生を見る

 

この数日、

この子ほぼ寝とらんようやしな・・・

 

本人は平気そうな顔しとるけど、

流石に無理が見え始めとる。

 

「ほな先生、そろそろ帰ろか。あんたまたどうせ書類溜めとるんやろ?」

 

「"うっ・・・まだここでゆっくりしてたい・・・"」

 

先生が露骨に嫌そうな顔をする

 

「それで後で深夜に呼び出される身にもなれや・・・」

 

そう言いながら襟首を掴むと、

先生は「あぁ~」と情けない声を上げながら引きずられていった

 

後ろではモモイ達が笑っている

 

「またねー!」

 

「先生、お仕事頑張ってください・・・!」

 

「"アリスもまた明日ね!"」

 

「肯定。またの来訪を待機します。」

 

その声を背に、

おっさん達は部室を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミレニアムからDU地区へ向かう列車

 

時間も遅いせいか、車内には誰も居ない

窓の外を流れていく夜景をぼんやり眺めながら、

先生がぽつりと呟いた

 

「"・・・今日は、上手くいきましたね。"」

 

「せやな。」

 

短く返す

 

正直、

もっと酷い事になる可能性も考えてた

 

アリスが暴走するかもしれんし、

ゲーム開発部の連中が余計な事するかもしれんし、

ユウカ辺りが乱入してくる可能性もあった

 

それを考えれば、

今んとこは上々やった

 

「ほんで、先生。今の所先生が知ってるのと差異はあったかい?」

 

そう聞くと、

先生は少し考え込む

 

「"アリスがアンラさんのローブを離さない以外は今の所順調です。"」

 

「あれなぁ・・・なんで離さんのやろ・・・

こんど寝てる時にでもこっそりストールに変えといたろかな・・・」

 

「"多分泣かれますよ?それ。"」

 

「そこまでか・・・?」

 

先生がくすりと笑う

 

その笑い方が、

ここ数日じゃ珍しく少し自然だった

 

「まぁ・・・アレが変な変数にならん事祈るわ・・・」

 

 

「"それで、私をDUに返した理由はなんですか?"」

 

「・・・聖良ちゃん君、大分無理しとるやろ。」

 

「・・・」

 

「今晩はおっさんが皆の面倒みとくさかい、一回家で休んどき。」

 

列車の走行音だけが静かに響く

 

先生は少し黙った後、

困ったように笑った

 

「・・・そんなに顔に出てましたか?」

 

「まぁあの子らには気取られてへんとおもうで。

おっさんが気付いたのはまぁ・・・年の功やな」

 

「ふふ、じゃー今晩はお言葉に甘えます。久しぶりに自宅に帰れますね。」

 

そう言った先生の声は、

少しだけ安心したように聞こえた

 

「シャーレの業務改善とかもしたほうがええんかね?コレ・・・過労死せんときや?」

 

「無理そうだったらまた、助けを呼びますね♪」

 

「さよけ・・・」

 

 

誰も居ない列車の中、

二人はそんな会話を交わしながら――

 

 

夜のDU地区へ向かって列車は走っていた

 




アリスが論理回路粉砕装置で言語野をブレイクされましたね・・・
可哀想・・・というかこれが正解ルートってブルアカ世界ほんま終わってる。
そら連邦生徒会長も周回してて匙を先生に投げるよ。

にしても、ミレニアムに入ってからゲーム開発部の子達のトーク量が多いから、
文章量が爆発するよ・・・!
でもこういったちょっとした日常みたいなお話を二分割するのもあれだし、
アリスがとして人格を形成する大事なお話でもあるから、ちょっとの間は文字数多いの我慢してくだせぇ!

そして、おっさんのローブとうとうパチられました。
何度も取り返そうとしてるんですが、頑なに放しません。
まぁ今はアンラ用のローブのままなんで、また今度作り直して、ミレニアムの制服っぽい仕上がりに変えてくれるでしょう。
イメージで言うと、ミレニアムの制服を着たアリスの上着がロングコートみたいになってる感じですね。色合いもアリスの色合いに調整してくれる事でしょう。


おっさんプチ情報
前回おっさんの弟子のお話をしましたね。
おっさんは流派持ちです。
まぁ流派の名前を名乗る=相手を殺す事なので、
ブルアカの生徒相手にはまず名乗らないでしょう。
セトの時?あれは戦闘じゃなくて駆除なので、流派の名を聞かせる価値もありませんね。
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