おっさんキヴォトスに行く 作:無い頭のおっさん
本日投稿分1/2
「――ただいまー・・・っと。」
深夜のゲーム開発部
扉を開けた瞬間、まず耳に入ってきたのはゲーム機の電子音だった
『ピコーン!!』
『MISSION COMPLETE』
「・・・おぉ。」
思わず感心した声が漏れる
部室の電気は半分ほど落とされていて、室内は薄暗い
ソファではモモイとミドリが完全に寝落ちしていた
モモイはコントローラーを抱えたまま口を開けて寝ているし、
ミドリはその肩にもたれかかって小さく寝息を立てている
ロッカーの扉は少しだけ開いていて、中からユズの髪が見えていた
「全滅しとるやないか・・・」
苦笑しながら視線を奥へ向ける
モニターの青白い光に照らされながら、アリスだけが起きていた
「・・・帰還を確認。」
「おー、ただいまアリス。
っていうか、まだやっとったんか。」
「肯定。」
画面から目を離さないまま、アリスはコントローラーを操作する
『YOU DIED』
「今やっとるんはライク系の奴か・・・
そのゲーム、ムズイやろ。」
「肯定。本ゲームは理不尽です。
しかし、攻略不能ではありません。」
「おぉ・・・。」
なんというか、既にゲーマーの思考になっとんな
おっさんは近くの座椅子を引っ張ってきて、アリスの横へ座った
「で、皆寝たんはいつ頃や?」
「約二時間前。」
「アリスは眠くないんかい。」
「不明。しかし、現在――」
アリスの指が止まる
モニターを見つめたまま、小さく呟いた
「とても、楽しいです。」
「・・・さよか。」
その言葉は昼間よりずっと自然だった
「アリス」
「肯定」
「流石にぶっ通しでやり過ぎちゃうか?」
アリスは画面を見つめたまま、少しだけ首を傾げた
「不明。しかし、終了という選択が出来ません。」
『YOU DIED』
そう言いながら、アリスは迷いなくリスタートを押す
「普通、そろそろ嫌になって投げる頃やと思うんやけどなぁ。」
「否定。」
即答だった
「何故なら、まだ旅の途中です。」
「・・・旅?」
「肯定。この世界には、未到達の場所が存在します。」
「未確認の敵、未回収のアイテム、未確認の景色があります。」
「であれば、進行を停止する理由がありません。」
アリスの視線はずっと画面へ向けられている
「それに――」
小さく続ける
「主人公は、ここで諦めないと推定します。」
「ほー・・・」
「アリスは現在、主人公を担当中です。
であれば、最後まで進まなければなりません。」
その言葉に、
おっさんは少しだけ目を細めた
昼間までは、
ただゲームを【遊んでる】だけやと思っとった
けどちゃうんやな
この子にとってゲームは、別の世界へ行く為の扉なんやな・・・
「・・・なるほどなぁ。」
「はい。」
アリスがこくりと頷く
「現在アリスは、ここではない場所を冒険しています。」
「知らない街を発見して、知らない人と会話して、知らない物語を経験しています。」
「それは、とても――」
一瞬だけ言葉を探すように止まり、
「わくわく、します。」
「はは・・・」
思わず笑いが漏れた
「ほんならまぁ、アリスが満足するまでつきおうたるわ~。
一人だけやと寂しいやろ?」
「・・・不明・・・」
「ですが、アンラが戻ってきてから。」
「部室が、昼間に近い状態へ戻りました。」
「昼間に近い状態?」
「肯定。なので現在の方が、落ち着きます。」
「まぁアリスが落ち着くなら、ここでゲームしてるの見ておくわ。」
「肯定。」
『デーン!デーン!デデデデー!』
「・・・クリア。」
気付けば暗かった部室に外から光が入り込み、明るくなっていた
「うーん・・・えっ、もう朝!?しまった、準備しなきゃ・・・!」
外の明るさで自然に目が覚めたのかミドリが起きてきた
「ようやく気が付いたか・・・
無事に目を覚ましたようで何よりだ、君は運がいいな。」
「え!?」
「あ、アリスちゃんか・・・調子はどう?色々と覚えられた?」
「君の言葉を肯定しよう、ルイー〇よ。」
「ル〇ージ?!流石にその呼名はやめようね、アリス!?」
「そ、それにしても何か偏ったセリフばっかり覚えてない・・・?」
ミドリとアリスが騒いでると、
ロッカーからもそもそと赤い芋虫が出てきた
「ふぁぁ・・・みんな、おはよう・・・」
ユズが起きてきたと同時に、部室の扉から音がした
ガチャッ
「おーお前さんら起きたんか、朝飯買って来たさかい食うかい?」
「あ!アンラさんおはよう!」
「アンラさんおはようございます・・・」
「エネルギー回復を所望するぞ。必滅者よ。」
「アリスはおっさんの事必滅者って呼ぶのいい加減やめような・・・?」
「まぁとりあえず、5人分のチーズバーガー買っておいたんやけど・・・」
「モモイ何処行った?」
「マリ〇なら、必滅「アンラ」・・・修正。」
「アンラが部屋を退出した直後、外部へ移動しました。」
「ほーん、昨日言ってた生徒の登録にでも行ったんかね。」
「まぁとりあえず皆で食ってれば帰ってくるやろ。冷えん内に食べよか。」
「「「いただきます。」」」
「・・・いただきます?」
机の上へ並べられたハンバーガーの包み
まだ少し温かいそれを受け取りながら、
アリスはじっと包装紙を見つめていた
「・・・質問。」
「なんや?」
「これは、回復アイテムですか?」
「まぁ、ある意味では。」
そう答えると、アリスは小さく頷く
「理解。」
「では使用します。」
ぺりぺりと包装を開き、アリスはチーズバーガーへ齧り付いた
「――!!」
目が少しだけ見開かれる
「どうや?」
「・・・高評価。」
「パン、肉、チーズ、ソース。」
「個別でも成立している食材を重ねる事で、相乗効果が発生しています。」
「なんか食レポが始まったな・・・?」
「ですが。」
アリスはもう一口齧る
「かなり、好きです。」
「おー。」
その瞬間だった
「えっ!?皆でハンバーガー食べてるの!?ずるい!私にも頂戴!!」
バンッ!と勢いよく扉が開く
息を切らせながら戻ってきたモモイだった
「おかえり、お姉ちゃん。」
「モモイ、朝っぱらから元気やなぁ・・・」
「いやだって!色々やってたら思ったより時間かかって!」
そう言いながらモモイは机へ駆け寄り、
空いている席へ滑り込む
急いで自分の分のチーズバーガーにかぶり付いた
全員が食べ終わり、食後にリラックスしていると、モモイが口を開いた
「で!どう!?アリスちゃん!」
「夜のゲーム修行の成果は!?」
「成果。」
アリスは少し考え、
「多数の知識を獲得しました。」
「現在、アリスは配管工兄弟、旅人、褪せ人、独立傭兵、終末世界の生存者、そして勇者です。」
「肩書めっちゃ増えたよな・・・」
「うんうん!一杯得られるものがあったようでよかったよ!」
モモイが満足げに頷いた、その時だった
ガチャリ、と再び部室の扉が開く
「"おはようございます。"」
「お、先生。起きれたんやなー」
「"少しだけ休むつもりだったんですけど・・・"」
先生は苦笑しながら肩を竦めた
「"起きたら何だか静かすぎて、逆に落ち着かなくて。"」
「重症やなぁ・・・」
「"否定はしません。"」
そう言いながら先生は部室を見回し、
そしてアリスを見て少し目を丸くした
「"昨日より、かなり喋り方が自然になってませんか?"」
「肯定。」
アリスがこくりと頷く
「アリスは夜間に多数の世界を冒険しました。」
「結果、語彙データと感情表現パターンを追加取得しました。」
「"ゲームで学習したんだね。"」
「肯定。ゲームは偉大です。」
「いやまぁ、間違っとらんけども・・・」
おっさんが苦笑する横で、
モモイが「でしょ!?」とドヤ顔を決めていた
「それでね!アリスに渡したい物があるんだ!」
「アリスこれ。」
そういってモモイは書類をひとつアリスに手渡した
「・・・?
アリスは【正体不明の書類】を獲得した。」
「おっ、色々知識を得たおかげかな?また更に口調が洗練されてるね。」
「ちなみにそれは【学生証】だよ。」
「洗練っていうか・・・ゲームの会話調そのものだけどね・・・」
「学生証・・・?」
そこで先生が、少し柔らかい声で続けた
「"それはね、アリスがこの学校の生徒だって証明する物。"」
「学校・・・」
「"うん。"」
「"アリスがここに居ていいって、皆が認めた証拠でもあるかな。"」
その言葉に、
アリスは手の中の学生証をじっと見つめた
「そうそう!ちゃんと生徒名簿にもヴェリタスがハッキ・・・
いや、登録してくれたから、もうアリスも正式に私たちの仲間だよ!」
「おー、モモイその一文おっさんの目を見てもっぺんいってみ?」
「いだだだだ!!ごめんごめん!でも今回は必要な事なのー!!」
おっさんに頭を鷲掴みにされて悶えつつも訴えかけていた
「・・・今回だけやぞ?」
そう言ってモモイを解放し
解放されたモモイは頭の痛みで蹲っていた
「いったぁ・・・」
そんなやり取りをアリスは眺めながら、
先ほどモモイに言われた言葉を自分の中で反芻していた
「仲間・・・仲間、なるほど。理解しました。」
そして、
学生証を胸の前へ掲げるように持ち、
「パンパカパーン、アリスが【仲間】として合流しました!」
「おー、正式加入イベントやな」
「おめでとう、アリスちゃん・・・」
ユズがぱちぱちと拍手をする
その横で、
先生も少しだけ目を細めていた
「"・・・良かったね、アリス。"」
「はい!」
アリスは迷いなく頷いた
「うーまだ痛いよぉ・・・でも、これで服装と学生証、
それに話し方!この辺は全部解決出来たから・・・」
モモイは指を折りながら確認していく
「あとは・・・武器、だね!」
「武器・・・」
アリスがその単語を繰り返す
「キヴォトスの生徒は、みんな自分の武器を持ってるの。」
「だからアリスにも、専用の武器が必要ってわけ!」
「なるほど。」
アリスは納得したように頷き、
そして隣のおっさんを見た
「アンラも、武器を所持していますか?」
「一応な。」
そう言いながら、おっさんは懐から愛用の拳銃を取り出して軽く見せた
「あれ!?アンラさんも武器持ってたんだ・・・」
「持ってないとアホに絡まれるからなぁ、この街。」
「"否定できないのが怖いですね・・・"」
先生が遠い目をした
「先生も色々巻き込まれとるしなぁ・・・」
「"主にアンラさん関係で。"」
「風評被害やめてもろて?」
「"いや事実では?"」
「先生まで辛辣になっとる・・・」
そんな軽口を交わしながらも、
モモイは「うーん」と考え込む
「調達方法は色々あるけど・・・
やっぱりちゃんとした武器が手に入って一番早いのはエンジニア部かなぁ?」
「ちゃんとした・・・武器?」
「エンジニア、部・・・?」
「機械を作ったり、修理したりする専門家たちの事を
ミレニアムでは【マイスター】って呼んでるんだけど。」
「エンジニア部はそのマイスターがたくさん集まってる、ハードウェアに特化した部活なの。」
「機械全般に精通してるのはもちろん、武器の修理とか改造なんかも担当してる部活だから。」
「多分使ってない武器とかが色々残ってるんじゃないかなって思ってね。」
「というわけで、早速行ってみよっか!」
「了承。新規装備獲得イベントを開始します。」
「もう完全にゲーム脳になっとんな・・・」
苦笑しながら、
おっさん達も立ち上がった
おっさん、ほんとに子供に甘い。
まぁそれもあるんですけど・・・
アリスには同情している所もあるんですよね。
アリスは実質的な寿命が存在しないんですよ。
ナノマシンによる再生機能、食事によるバイオエンジン搭載疑惑。
なので本当に飯さえ食ってれば一生活動出来る可能性があるんですよね・・・
おっさんと同じで。
だからおっさんが味わった地獄をアリスも必ず味わう事になる。
それが確定しているので尚の事アリスには甘々なんですよ。
おっさんプチ情報
おっさんの二つ名の必滅者っていうのは実はブルアカとは関係ないです・・・
ブルアカをやる前からこのアンラのキャラは作ってはいたんです。
それこそアンラの人生のお話を作ってはいたのですが、余りにも重くて辛いお話で、
半生書いただけで吐きそうになったので、お蔵入りしていたキャラだったんですよね。
なので、実はアリスが原作で必滅者っていう名前を呼んだ瞬間にこのキャラをブルアカに入れたろっていう今回の企画が始まりました。
ちなみにアンラは必滅者って呼ばれるのは結構嫌います。
この二つ名の意味は必ず滅ぶ者つまり、おまえは既に破綻してる。と言われてるからですね。
おっさんからすると耳が痛い二つ名なんでしょうね