おっさんキヴォトスに行く 作:無い頭のおっさん
本日アップの2/2
エンジニア部作業室
「・・・なるほど、大体把握できたよ。」
「新しい仲間に、より良い武器をプレゼントしたい・・・と」
「そういう事であれば、エンジニア部に来たのは素晴らしい選択だね。」
「そっちの方に、私たちがこれまで作ってきた試作品が色々とおいてある。
そこにあるものであれば、どれを持って行っても構わないよ。」
「やった!ありがとう、先輩!!」
「"相変わらず太っ腹ですね・・・"」
そこまで言ってから、
先生がほんの一瞬だけ言葉を止めた
「・・・?」
ウタハが小さく首を傾げる
「"あ、いえ。"」
「"ミレニアムのエンジニア部って、
もっと気難しいイメージだったからね?"」
「ふふっ、ロマンの為だからね。」
「やあ・・・一年のヒビキだよ。良ければ私が、何か良いものを見繕ってあげる・・・」
「・・・これはどう、アリス?」
「へえ、拳銃?」
「見た感じ、多分だけど・・・これまでにあまり戦闘経験はないはず・・・」
「その言葉は否定します。」
即答だった
「アリスはこれまでに人類を27回救い、魔王軍との46回に渡る戦闘を行い、
3桁を超えるダンジョン探索を行って来ました。経験値はそれなりに豊富です。」
「・・・アリス」
おっさんがちょっと困ったような顔になった
「武器が決まったら今度おっさんと模擬戦しような・・・」
「・・・?」
アリスが首を傾げる
「"あ・・・"」
先生が小さく声を漏らした
「"ゲームの感覚と、現実の戦闘を分ける為ですね。"」
「せや。」
おっさんが短く頷く
「ゲームで何回死んでもリセットしたら終いやが、現実はそうはいかん。」
「ましてキヴォトスやと、皆普通に銃持っとるからな。」
「変な感覚のまま戦場に出したら、下手すりゃ自分も周りも死ぬ。」
その言葉に、
アリスは少しだけ黙り込む
「・・・理解。」
小さく、そう答えた
先生はそんなアリスを見ながら、ほんの少しだけ目を細めた
「"でも。"」
「"そういう事をちゃんと教えてくれる人が居るなら、きっと大丈夫ですよ。"」
「買い被りすぎや。」
「"どうでしょうね。"」
先生は小さく笑った
「・・・と、とにかく」
ヒビキが軽く咳払いする
「銃器を使用した経験は、あまり無さそうだね」
「そういう人にはやっぱり拳銃が良いよ。」
「これはプラスチック製だから軽いし、反動も少ない。」
「そういう意味でも、色々と初心者に優しいはず・・・それに、何より。」
「この銃にはミレニアム史上、今までに存在しなかった機能が搭載されてる。」
「な、何それ?」
「何か聞く前から凄そう・・・いったいどんな機能なの?」
ミドリとモモイが食いつく
「それはね・・・Bluetooth機能だよ。」
「"あはは・・・"」
先生が苦笑いをする
((要らねぇ・・・))
ゲーム開発部、
おっさん、
そして先生の心の声が綺麗に一致した
「Bluetoothを通じて、音楽鑑賞やファイル転送まで可能な拳銃・・・」
「調べた限りそんなものは今まで存在しなかった。」
「もちろん、スモモ機能も搭載。
乗り場のICパネルにタッチして、交通機関を利用する事も出来る。」
「それにNFC機能もついてるから、コンビニペイだって使えちゃう・・・」
「なぁ・・・ヒビキ。」
おっさんが真顔で聞く
「前に『銃にそんな機能要る?』って話しになって開発止めたよな?」
「・・・何のことかわからないね・・・」
ヒビキはすっと目を逸らした
おっさんに詰められてるヒビキを見てゲーム開発部と重なり、
思わず苦笑いが出てしまうミドリ
「あはは・・・あれ、そういえばアリスちゃんはどこに・・・?」
ミドリが辺りを見回す
さっきまで隣に居たはずのアリスの姿が見当たらない
「・・・あ」
ヒビキが小さく声を漏らした
「あそこに。」
その視線の先で――
アリスは、部屋の奥に置かれていた巨大な兵器の前で立ち尽くしていた
「じー・・・・」
その目は、
先程までとは比較にならないほど輝いていた
「これは・・・?」
「ふっふっふっ・・・お客さん、お目が高いですね。」
ひょこっと作業机の下から現れたのは、
特徴的なメガネをかけた少女だった
「え、えっと・・・?」
「説明が必要なら、いつでもどこでも答えをご提供!
エンジニア部のマイスター、コトリです!」
「・・・?」
「あなたがアリスですね。ゲーム開発部、四人目のメンバー!」
「あ、コトリちゃん久しぶり。」
ミドリが軽く手を振る
「ところで、アリスちゃんが見ているこの大きいのは何?」
「まるで大砲みたいだけど・・・」
「良い質問ですね、ミドリ。」
コトリは得意げに胸を張った
「これはエンジニア部の下半期の予算の内約70%近くと――」
「そこに居るアンラさんからの出資金まで全額つぎ込み作られた・・・」
「エンジニア部の野心作、【宇宙戦艦搭載用レールガン】です!!」
「宇宙戦艦!?!?」
「また感化されてとんでもない事を・・・いやそれより!」
「アンラさんからの出資額全額って!?何億!?」
「あー・・・」
おっさんが少し視線を逸らす
「開発費込でざっと・・・300億くらいか?」
「300億!?!?」
「"桁がおかしい・・・"」
先生ですら若干引いていた
「今エンジニア部では、宇宙戦艦の開発を目標としているのです!」
「最初は予算の関係で実現しませんでしたが!」
「出資者も見つかり、現在はちょっとずつパーツの開発を進めているのです!」
「そして、このレールガンは、その最初の一歩!」
「大気圏外での戦闘を目的として開発された実弾兵器!」
「これはミレニアム史上、明らかに類を見ない初の試みです!」
「かっこいい・・・聞いただけでワクワクしてくる!」
モモイもコトリのテンションにあてられて上がっていった
「流石、ミレニアムのエンジニア部!今回は上手く行ってるんだね!?」
「ふっふっふっ、もちろんです!」
「まぁその代わり、おっさんの財布にダイレクトにダメージが入っとるんやけどな・・・」
「流石にそのレールガン規模の出資はもう出来へんから、後は細々と頑張ってくれ。」
「そ、そんな・・・!」
コトリがショックを受ける
「あんなに乗り気だったじゃないですか!」
「いやそらそうやろ。」
「戦艦作ります言うて、砲門ひとつに300億飛ばしてたら流石にこっちも破産するわ。」
「うぅ・・・やはり技術者達の前に立ちはだかるのは予算・・・」
コトリが半泣きで肩を落とす
「このレールガンだけでこの金額なのに、
戦艦本体なんて、一体いくら・・・」
「いやいや、計画段階で予算がおかしいのに気づくじゃん!」
モモイが全力でツッコんだ
「どうしてこのレールガンだけ先に作っちゃったのさ!?」
その声に、
ウタハが静かに答えた
「愚問だね、モモイ。」
「ビーム砲は、ロマンだからだよ。」
「その通りです!」
コトリも力強く頷く
「ビーム砲の魅力が判らないなんて、全くこれだからモモイは。」
「バカだ!頭良いのにバカの集団がいる!!」
「技術者なんぞ大体こんなもんや。」
おっさんが肩を竦める
「あとレールガンやからビームではないんやけどな。」
「細かい事です!!」
「雑ゥ!!」
そんな騒がしいやり取りの中、
アリスだけは、
ずっと巨大兵器を見上げていた
「エンジニア部の情熱が注ぎ込まれた、この武器の正式名称は――」
「【光の剣:スーパーノヴァ】!!」
「また無駄に大げさな名前を・・・」
ミドリが呆れる
だが――
その瞬間、
アリスの目の輝きが一段階増した
「!!、ひ、光の剣・・・?!」
「あ、アリスの目が輝いてる・・・!?」
「わぁ、うわぁ・・・!」
「アリスちゃんがこんなに興奮してるの、初めて見たかも・・・」
「せやな・・・」
アリスはゆっくりとレールガンへ近づき、
まるで伝説の武器を見るように、
そっと見上げた
「・・・これ、欲しいです。」
「・・・え?」
「偉大なる鋼鉄の職人よ、あの竜の息吹が欲しいのだ。」
「うーん・・・」
コトリが困ったように頬を掻く
「そう言ってくれるのは嬉しいのだけど・・・」
「申し訳ないのですが、それはちょっと出来ないご相談です!」
「なんで!?」
モモイが驚く
「この部屋にある物なら何でも持って行って良いって言ったじゃん!」
「・・・それは、理由があって。」
「理由?」
アリスが首を傾げる
「もしかして、私のレベルが足りてないから・・・装着可能レベルを教えてください!」
「いや、悪いがそういった問題ではなくてだね・・・」
ウタハが苦笑する
「もっと現実的な問題なんだ。」
「お金かー・・・」
「お金ってか、それの9割9分はおっさんの金で出来とるぞ」
「そっか!じゃーアンラさんにお願いすれば!」
「・・・お金の問題でもないよ。」
「現実にお金以上の問題なんてないでしょ!」
「・・・この武器は、個人の火器として使うには大きくて重すぎる。」
「なんと、基本重量だけで180kg以上です!
さらに光学照準器とバッテリーを足した上で砲撃を行うと、瞬間的な反動は300kgを超えます!」
「"重くなってる・・・アンラさん、なんか弄りましたね・・・?"」
「いや・・・ちょっとだけやでちょっとだけ。」
先生が小さくため息をついた
「"アンラさん。"」
「ん?」
「"アリスがゲームの感覚で使おうとしてるの、気付いてますよね?"」
「まぁな。」
おっさんの返事は短かった
「せやから後で模擬戦や。」
「"・・・やっぱり。"」
先生はアリスを見る
巨大なレールガンを見上げるその姿は、
まるで本当に“勇者の武器”を見つけた主人公そのものだった
「"アリス"」
「?」
「"ゲームと違って、現実の武器は簡単に人を壊せる。"」
「"だから、振るうなら・・・ちゃんと覚えないといけないよ。"」
その声は、少し硬かった
一瞬だけ
本当に一瞬だけ、先生の瞳に何か暗いものが過った気がした
けれどアリスは気付かない
「理解。」
そう言って頷いたあと、
アリスは再び光の剣へ視線を戻した
「これをカッコいいと言ってくれただけで、私たちは嬉しいよ。ありがとう。
持って行けるのならば、本当にあげたいところなのだけど・・・」
その言葉を聞いた瞬間にアリスの顔に笑みが浮かんだ
「・・・!、汝、その言葉に一点の曇りもないと誓えるか?」
「ん?この子、また喋り方が・・・」
困惑してるウタハにミドリが咄嗟に通訳を入れる
「た、多分ですが、【本当なのか】って聞いてるんだと思います。」
「もちろん嘘は言ってないが・・・
それはつまり、あれを持ち上げるつもり、と言う事かい?」
そのウタハの言葉にアリスが大きくうなずき、
スッと光の剣に手をかけた
「この武器を抜くもの・・・此の地の覇者になるであろう!」
「ふふふっ、なるほど。意気込みは素晴らしいですね!」
「ふっ・・・!」
アリスが両手に力を込める
巨大な【光の剣】が僅かに軋み、
床との接地部分がガリリと音を立てた
「無理は、しない方が良い・・・クレーンでも使わないと持ちあがらな――」
「んんんんんっっ・・・!!!!」
「・・・まさか。」
「えぇぇっ!?」
エンジニア部の目線の先には、
光の剣を水平に持ち上げるアリスの姿があった
「・・・も、持ち上がりました!」
「嘘・・・信じられない・・・」
「えっと、ボタンは・・・これがBボタンでしょうか・・・?」
「は?」
その呟きを聞いた瞬間だった
先生の表情が凍る
アンラの目も細まった
想定より重かったのだろう
光の剣は垂直には持ち上がっておらず、
その砲口は――
ゲーム開発部と先生の方角を向いていた
「アホが!?」
アンラが地面を蹴る
「アリス!!それは
「・・・っ、光よ!!!」
咄嗟にアンラがアリスの元へ踏み込み、
振り抜くように【光の剣】そのものを蹴り上げた
銃口が天井を向く
次の瞬間
【バチィィィィィッッ!!!!】
視界が、白に染まった
耳が焼けるような轟音
作業場全体を揺らす衝撃
天井を貫いた極太の光が、そのまま空へ突き抜けていく
数秒遅れて、
【ゴゴゴゴゴ・・・】
崩落音が響いた
「・・・あ。」
光が収まる
そこには――
綺麗さっぱり消し飛んだ天井があった
青空が見えている
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ああああああああっ!!!わ、私たちの部室の天井がぁっ!?」
「こんっの!馬鹿垂れがああああああ!!!!」
【ドゴォン】
おっさんの拳骨がアリスの頭頂部へ炸裂した
「いっっっっったぁぁぁぁ!!!!」
あまりの痛みに涙目になりながら、
アリスの手から【光の剣】が零れ落ちる
床へ転がったそれが、重々しい金属音を鳴らした
「うわぁ・・・あれスッゴイ痛いんだよね・・・」
モモイが青い顔で呟く
どうやら経験者らしい
「"皆!怪我は!?"」
先生が即座に周囲を確認する
モモイとミドリを庇うように前へ出ながら、
崩れかけた天井材へ視線を走らせた
「だ、大丈夫です・・・!」
「ウタハ!ヒビキ!」
「こっちは大丈夫だよ。」
「耳がキーンってしてるけど・・・問題ない・・・」
「"・・・はぁ。"」
全員無事なのを確認し、
先生が小さく息を吐いた
その横でおっさんがアリスを見下ろす
「さて、アリス。」
「うぅ・・・」
「なんで殴られたかわかるか?」
アリスは涙目のまま首を横に振った
おっさんはため息を吐き、光の剣が向いていた方向を指差す
「お前さん、今これをどこに向けとった?」
「・・・あ。」
そこで初めてアリスは理解した
さっきまで自分が構えていた先
そこに、モモイ達と先生が居たことを
「ゲームならリセットで済む。」
おっさんの声は低かった
「せやけど現実はちゃう。」
「引き金一つで、先生は死ぬ。」
「お前がもっとるそれは、玩具やない。破壊兵器や。」
「・・・」
「強い武器ほど、【間違えた時】が取り返しつかへん。」
静まり返った作業場
その中で先生が、静かに言葉を継いだ
「"・・・だから、覚えないといけない。"」
アリスが顔を上げる
先生は怒ってはいなかった
けれどその目だけは、少しだけ苦しそうだった
「"武器を持つっていうのはね、誰かを守れる代わりに――"」
「"誰かを壊せるって事でもあるから。"」
その言葉は、
まるで自分自身に言い聞かせているようだった
おっさんがちらりと先生を見る
だが何も言わない
「・・・わ、私は・・・」
アリスの声が震える
「悪い事をした時は、なんて言うんやった?」
「・・・ごめんなさい、です・・・」
「なら、皆に言ってこい。」
「・・・はい。」
アリスはぎこちなく立ち上がると、
ゲーム開発部とエンジニア部、そして先生へ向かって頭を下げた
「ごめんなさい・・・」
その姿を見て、
モモイが慌てて手を振る
「いや!?まぁ私達も無事だったし!?」
「そ、そうだよアリスちゃん!」
「私も気にしてない・・・」
「むしろ持ち上げた事に驚いてるよ。」
少しだけ空気が緩む
その様子を見て、
先生もようやく小さく笑った
「・・・よかった。」
本当に、小さな声だった
けれどおっさんには聞こえていた
「ん?」
「"いえ。"」
先生は誤魔化すように首を振る
その横で、
アリスはまだ半泣きのまま【光の剣】を見つめていた
まるで、叱られた子供が宝物を抱えてるみたいに。
「・・・皆怪我はあらへんか?」
おっさんが改めて周囲を見回す
「あ、あぁ・・私たちは大丈夫だとも。」
ウタハが崩れた天井を見上げながら答えた
空が見えている
エンジニア部作業室とは思えない開放感だった
「ウタハ悪いな、部室の修理費は後で入れておくわ。」
「・・・いや、まぁ。」
「半分くらいはこっちにも責任あるからね。」
「まぁ、あんな破壊兵器を安全装置もつけずに置いてるのはな・・・」
「・・・ここはフィフティフィフティという事で。」
「言い方かえとるだけやないかい」
おっさんが呆れたように額を押さえる
そんな二人の会話を聞きながら、
アリスはしょんぼりと【光の剣】を抱えていた
「・・・」
「アリスちゃん?」
ミドリが顔を覗き込む
アリスは少しだけ視線を下げた
「アリスは、失敗しました。」
「いやまぁ、失敗っていうか……」
「大惨事一歩手前?」
「"モモイ"」
「はいごめんなさい。」
先生の一言に、
モモイが即座に背筋を伸ばした
そのやり取りを見て、
アリスが小さく瞬きをする
「正直、驚いたよ。」
ぽつりと、
ウタハが口を開いた
「え?」
「まさか本当に持ち上げるとは思わなかった。」
ヒビキも小さく頷く
「普通なら、そもそも保持できない・・・」
「なのにアリスは、砲身を支えたまま姿勢制御までしてた。」
「まぁ誤射ったけどな。」
「うっ・・・」
再びしょんぼりするアリス
「それだけの適性があるって事さ。」
ウタハは笑った
技術者が、
完成した兵器を見つめる時の顔だった
「その【光の剣】はね、本来なら固定砲台運用を前提にしてたんだ。」
「人が持つなんて想定してない。」
「けど――」
ウタハがアリスを見る
「君は持った。」
「……」
「なら、その武器は君を選んだのかもしれないね。」
その言葉に、
アリスの目が少しだけ揺れた
「ほ、本当に……?」
「ああ。」
ウタハが頷く
「だから改めて言おう。」
一歩前へ出る
「エンジニア部の野心作――」
「【光の剣:スーパーノヴァ】は、今日から君の物だ。」
「!!」
ぱっと、
アリスの顔が明るくなる
「あ、ありがとうございます!」
「ただし。」
「うっ。」
おっさんが口を開いた瞬間、
アリスの肩が跳ねた
「今後、砲口管理と安全確認は徹底や。」
「はい・・・!」
「トリガー触る前に周囲確認。」
「はい!」
「人がおる方向には絶対向けへん。」
「はい!!」
「ゲーム感覚でボタン押さん。」
「はいぃ・・・」
最後だけ露骨に声が小さくなった
モモイが吹き出す
「ぷっ・・・」
「笑うなモモイ。」
「お前も昔トリガーに指かけたままコッチに銃口向けて来たやろ。」
「なんで覚えてるの!?」
「そら阿鼻叫喚やったからな。」
「"うわぁ・・・"」
先生が遠い目をした
「"ミレニアムって、思ってた以上に事故率高いですね・・・"」
「先生、今更だよ?」
「"いや、本当に今更なんだけどね・・・"」
苦笑する先生
けれどその目は、
少しだけ柔らかかった
アリスが無事だった
誰も死ななかった
それだけで、
胸の奥に張り付いていた何かが少し軽くなる
――また守れた
そんな感情を、
先生は表に出さないまま飲み込んだ
「それじゃあヒビキ。」
ウタハが振り返る
「アリス用に調整をお願いできるかな。」
「了解・・・」
「取っ手と肩掛け、それから簡易安全装置も追加する・・・」
「安全装置?」
「誤射防止。」
「最低限、認証なしで撃てないようにする・・・」
「おぉ・・・」
「流石に学習したんやな。」
「今回の件で、かなり・・・」
ヒビキが崩壊した天井を見上げる
青空がやたら綺麗だった
「・・・エンジニア部、ちょっと安全意識を見直すべきかもしれない・・・」
「今更そこなんやな。」
おっさんが乾いた笑いを漏らす
「まぁでも。」
ウタハが腕を組みながら、【光の剣】を抱えるアリスを見る
「結果的に、これ以上ない適任者が見つかったのは事実だ。」
「えへへ・・・」
アリスが少しだけ嬉しそうに【光の剣】を抱きしめる
その様子を見て、
ウタハはふっと笑った
「――だからこそ、だ。」
「?」
「この武器は、本来なら宇宙戦艦搭載用。」
「出力、重量、反動。
どれを取っても個人携行火器の範疇を完全に超えている。」
「そんな物を、【実戦で本当に運用できるのか】。」
ウタハの目が細まる
「技術者としては、確認したくなる。」
「・・・あ。」
モモイが嫌な顔をした
「その顔、絶対ロクでもない流れだ。」
「ふふふ。」
ウタハの口元が吊り上がる
「水を差して悪いのだが――」
「エンジニア部としては、まだ性能試験が終わってなくてね。」
「さて、ヒビキ。」
「・・・うん。」
「以前、処分要請を受けたドローンとロボット。」
「全機、出してくれるかい?」
【ガコン】【ガコン】
作業室奥から重い駆動音が響き始める
「えっと・・・ウタハ先輩?」
ミドリが後ずさる
「なんだか展開がおかしいような・・・?」
「これってもしかして――」
モモイが引きつった笑みを浮かべた
「実戦テストってやつ!?」
「その通り。」
ウタハが頷く
「【光の剣:スーパーノヴァ】。」
「その正式運用試験を、今から開始する。」
【ガシャコン!!】
シャッターが開き、
奥から複数の武装ドローンと試作ロボットが姿を現した
赤いセンサーが一斉に点灯する
「うわぁ!?思ったよりガチだこれ!?」
「えええっ!?処分予定って聞いてたのに普通に強そうなんだけど!?」
「処分予定だからこそ、遠慮なく使えるのさ。」
ウタハが実に楽しそうに言った
アリスは静かに【光の剣】を構える
今度はちゃんと、
誰も居ない方向へ砲口を向けながら。
「前方に戦闘型ドローン及びロボットを検知。」
「敵性反応を確認。」
青い瞳が細まる
「来ます!!」
「ああもう!!」
モモイがライフルを構え直した
「ゲーム開発部、臨時戦闘イベント開始ってわけね!?」
「ま、待ってお姉ちゃん!?
これ絶対高難易度イベントだよ!?」
ミドリも慌てて銃を構える
「"ふふふ"」
その時、
先生が小さく笑った
「"ウタハ"」
「ん?」
「"この子達の指揮、私がやってもいいかな?"」
ウタハが少しだけ目を丸くする
「先生の指揮?」
そしてすぐに頷いた
「ああ、もちろん構わないとも。」
その返答を聞いた瞬間。
先生の空気が変わる
ついさっきまで柔らかく笑っていた教師の顔が、
一瞬で【指揮官】のそれへ切り替わった
おっさんがそれを見て、
小さく肩を竦める
「あーあ・・・ウタハやってもうたな・・・」
「アンラさん?」
「先生の本気や。」
先生は一歩前へ出ると、
ドローン群を一瞥した
その視線だけで、
戦場全体を把握しているようだった
「"皆、集中。"」
静かな声だった
けれど不思議と、
その場の全員が自然と耳を傾けてしまう
「"歩兵ドローンが前進してくる。"」
「"モモイ、正面を抑えて。"」
「了解!」
「"ミドリは右側の援護。"」
「う、うん!」
そして。
先生の視線が、
最後にアリスへ向いた
「"アリス。"」
「はい。」
「"君の武器は、この場で一番強い。"」
「・・・!」
「"だからこそ、撃つ場所をちゃんと選ぶんだ。"」
その言葉に、
アリスの手が少しだけ【光の剣】を握り直す
「はい!」
今度の返事には、
迷いが無かった
【ガギン!!】
先頭の歩兵ドローンが一斉に加速する
床を擦る金属音
点滅する赤い照準レーザー
「来た来た来たぁっ!!」
モモイが叫びながら前へ飛び出した
【ダダダダダッ!!】
「私の怒りの弾丸をくらえーっ!!」
ライフルの掃射が先頭集団へ突き刺さる
ドローン数機が火花を散らしながら転倒した
「"モモイ、左に寄りすぎ!"」
「えっ――」
直後、
横合いから別ルートのドローンが飛び出す
「うわっ!?」
「"そこ。"」
【ダンッ!!】
ミドリの射撃がドローンのセンサーを正確に撃ち抜いた
「ナイス、ミドリ!」
「お、お姉ちゃんが突っ込みすぎなんだよぉ!」
その間にも、
後方の大型ドローンが砲口を展開する
【ギュイイイイン・・・】
チャージ音
「高出力反応を確認。」
アリスの目が細まる
「先生。」
「"うん、見えてる。"」
【光の剣】が唸るような駆動音を鳴らした
「"アリス!砲身そのまま左へ! コトリは伏せる!"」
「この光に意志を込めて・・・貫け!バランス崩壊!」
先生の指示が飛ぶ
その瞬間、
コトリがハッと顔を上げた
「えっ、ちょ――」
アリスが【光の剣】を振り抜く
砲口が僅かに左へ逸れ、
次の瞬間、
【バチィィィィィィッッ!!!!】
極太の光が作業場を薙ぎ払った
床を焼き、
突撃してきた大型ドローンをまとめて飲み込みながら、
一直線に奥へ突き抜けていく
衝撃波で周囲の工具が跳ねた
「うわぁぁぁっ!?」
コトリが慌てて身を伏せる
光が、すぐ真横を通り過ぎた
数秒遅れて、
【ゴゴゴゴゴ・・・!!】
壁が吹き飛ぶ
エンジニア部の部室の一部が、
綺麗に抉れて消えていた
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「こんどは壁も無くなった・・・」
ヒビキがぼそりと呟いた
「いや今回は君らが始めた試験やろ。」
おっさんが即座に責任を切り捨てた
その横で、
コトリがぷるぷる震えながら立ち上がる
髪の先が少し焦げていた
「し、死ぬかと思いましたぁ・・・」
「"ごめんねコトリ! でもあのタイミングが一番良かった!"」
「わ、わかってますけどぉ!」
半泣きで抗議するコトリ
だがその間にも、
残存ドローンが再起動を始める
【ガコン】【ガコン】
「まだ来るよ!」
モモイが叫ぶ
「"ミドリ、後方の支援機を狙撃! モモイは前衛維持!"」
「了解!」
「任せて!」
先生の声に、
ゲーム開発部の動きが即座に変わる
連携が噛み合い始めていた
それを見ながら、
ウタハが小さく目を細める
「・・・なるほど。」
「ん?」
「アンラさんが言った意味がわかったよ。」
「先生の指揮、あれは劇物だね。」
「これでは光の剣の動作テストではなく、
先生の指揮力テストになってしまってるよ。」
おっさんがニヤリと笑った
「せやろ?」
「あの先生は全才能を指揮能力に全ブッパしたような人やからな。」
「・・・認めざるを得ないね。」
その時だった
「ターゲット確認!出力臨界点突破!――光よ!!」
アリスが再び【光の剣】を構える
今度は違った
砲口は敵だけを正確に捉えている
引き金に指を掛ける前に、
周囲確認までしていた
おっさんがそれを見て、
小さく口角を上げる
「・・・ちゃんと学習しとるやん」
【バチィィィィィッ!!!!】
放たれた光が、
最後の大型ロボットを真正面から貫いた
爆発
沈黙
そして――
【ガコン】
最後の機体が崩れ落ちる
静寂が訪れた
「・・・終わった?」
モモイが呟く
ヒビキが端末を確認する
「全機能停止を確認・・・」
「実戦テスト終了、だね。」
ウタハがそう告げた瞬間、
「やったぁぁぁぁ!!」
モモイが飛び跳ねた
「勝ったー!!」
「アリスちゃん凄かったよ!」
「は、はい・・・!」
ミドリに抱き着かれ、
アリスが少し照れたように笑う
その胸には、
大事そうに【光の剣】が抱えられていた
コトリもふらふらしながら歩いてくる
「くっ・・・悔しいですが、これが結果ですね・・・!」
「アリス!」
「は、はい!」
「その【光の剣】――改めて、あなたの物です!」
「・・・!」
一瞬、
アリスが目を見開く
それから、
「わぁ・・・わぁっ・・・!」
本当に嬉しそうに、
【光の剣】を抱きしめた
その姿を見て、
先生がほっと息を吐く
「"ふふっ・・・よかったね。"」
「それを使いこなせるなんて、本当にすごいね・・・」
ヒビキが近づく
「あとで取っ手部分、もう少し補強する・・・肩掛けも改良したい・・・」
「はい!お願いします!」
少し離れた場所で、
モモイ達が【光の剣】を囲んで騒いでいた
「うわっ、この部分まだ熱持ってる!」
「放熱機構が完全じゃない・・・
次は冷却ラインを追加した方がいいかも・・・」
「肩掛けはこうした方が勇者っぽいでしょうか!?」
「でも大事だよ!?」
「アリスはカッコいい方が嬉しいです!」
「ならエフェクト機能とか・・・」
「ヒビキ、それ絶対余計な機能増えるやつ。」
わいわいと盛り上がる声が響く
その様子を少し離れた位置から眺めながら、
ウタハが静かに呟いた
「最低でも1トン以上と推定される握力、発射時にブレも無い安定した体幹バランス・・・」
視線は、
【光の剣】を軽々と支えているアリスへ向いている
「強度や出力はもちろん、
肌全体に傷すら見当たらない綺麗な肉体・・・いや、機体。」
先生が小さく視線を伏せた
ウタハは続ける
「つまり、最初から厳しい環境での活動を想定し、
ナノマシンによる【自己修復】を前提として作られた体。」
「その目的はきっと――」
「戦闘用、やな。」
おっさんが言葉を継いだ
空気が少し静まる
遠くではモモイが、
「変形とかしないのこれ!?ロマンじゃん!」
「しない・・・」
などと騒いでいた
その賑やかさとは対照的に、
こちらだけが妙に静かだった
「アンラさんは・・・知っていたのかい?」
ウタハが静かに視線を向ける
「全部を。」
「・・・あん?」
「この【光の剣】に、妙なくらい口を出してきただろう?」
「出力制御、保持バランス、放熱、神秘の変換機能・・・
それに、“人型携行”を前提にした内部フレーム設計。」
「他の開発品には、
そこまで細かく注文なんて付けた事はなかった。」
先生がおっさんをジト目で見つめる
遠くで、
アリスがモモイ達と笑っていた
「まるで最初から――」
そこでウタハは言葉を止めた
おっさんは肩を竦める
「商売人のおっさんが、
ロマン兵器に夢見ただけかもしれへんやろ?」
「・・・ふふ。」
ウタハが小さく笑う
「そういう事にしておくよ。」
なげーよ・・・
3000文字縛り何処行ったんだよ・・・
でもすっげー大切な所だからカットできねーよ・・・
あとシレっと、アンラが光の剣に設計段階から口を出していて、
尚且つ聞き捨てならない機能が搭載されていますね。
これが発揮されるのはいつになりますかね。
今回の原作改変内容は、アンラのエンジニア部への投資による、
光の剣スーパーノヴァの強化。
それに伴って重量が40Kg原作より重くなっています。
それもあって原作なら屋根に向いていた砲口が水平になり、
先生達の方に向いてしまってました。
またおっさんのガバですね。致命的な原作ブレイクは無いとは思いますが、
ここでのこの事件が今後どう影響するかこうご期待。
あと、ぶっちゃけあんな危険物を平然と密室でぶっ放して
原作だと叱られる事もなく流されていましたが、
冷静に考えてあそこは無垢であるからこそ叱るべき場所だと思うので、
子供にやさしいおっさんが諭しに行きました。拳を添えて。
あと、モモイにおっさんが拳骨したのは、
モモイがゲームに負けて続け、鬱憤が溜まった結果、部室内で銃乱射をしたのが原因です。
後で部室に遊びに来たら色々な物がハチの巣になっていて
ミドリ聞いたらモモイがやったと言うので、
既に逃走していたモモイを全力で追い掛け回し、捕まえたのち拳骨を叩き込みました。
おっさんプチ情報
おっさんは魔術や魔導がメイン火力のようになってますが、
一番得意なのは剣術です。
そして一番一撃の火力が出るのが弓術です。
このあとがきを読んでる人なら違和感を感じると思いますが、
対世界と言って破壊規模が世界滅亡クラスの魔導を差し置いて、
弓術が最大火力です。これは本当です。
まだ、魔導に関してはブルアカ世界でもギリギリ使えない事もないですが、
弓術の本当の使い方は倫理的にも世界強度的にも不可能なので100%出てきません。
ちなみに以前本気の一撃を撃った時は、世界線ごと纏めて消し飛ばしました。
むしろその目的で撃ちました。
また理由にも触れる事があるかもしれませんが今回はここまでで。