おっさんキヴォトスに行く 作:無い頭のおっさん
ミレニアムサイエンススクール・野外演習場
【ガコン――ガコン――】
演習用ドローンが遠くで稼働している
無機質な駆動音と、時折聞こえる銃声
そんなミレニアムの日常風景の中、
広い演習場の中央だけが妙に静まり返っていた
「・・・」
アリスは【光の剣:スーパーノヴァ】を抱えたまま、
じっとアンラを見上げていた
対するアンラは、
いつもの砂色のローブ姿のまま
腰には拳銃こそ提げているものの、
それ以外は特に武装もないように見える
「ほな、始めよか。」
軽い調子で言うアンラ
だが――
「否定。」
アリスが即答した
「ん?」
「アリスは、この戦闘を推奨しません。」
「おぉ、珍しくハッキリ言うやん。」
アンラが少し眉を上げる
アリスは【光の剣】をぎゅっと抱え直した
「アンラには、先生のようにヘイローが存在しません。」
「つまり、防御能力が低いです。」
「さっきアリスは、誤って先生達へ砲口を向けました。」
その声は、
どこかしょんぼりしていた
「もし同じ事をすれば――」
アリスはそこで言葉を止める
最後まで言わなくても、
何を言いたいのかは全員に伝わっていた
少し離れた場所では、
モモイ達と先生がその様子を見守っている
「アリスちゃん・・・」
ミドリが少し心配そうに呟いた
「まぁ流石に気にしちゃってるよねぇ・・・」
モモイも珍しく神妙な顔だった
先生は静かにアリスを見つめている
そんな空気の中――
アンラだけが、
いつもの調子で頭を掻いた
「あー・・・なるほどな。」
そして次の瞬間
「で?」
「・・・?」
「アリス、まさか本気で。」
アンラの口元が、
にやりと吊り上がる
「その程度で、おっさんに当てられると思っとるんか?」
「――!」
アリスの目が見開かれた
「いやいやアンラさん!?」
モモイが思わず声を上げる
「その煽り方は絶対ダメなやつ!!」
「"はぁ・・・"」
先生が遠い目をした
アンラは気にした様子もなく続ける
「さっきの試験もそうや。」
「お前さん、結局【止まっとる相手】にしか撃っとらん。」
「・・・」
「本気でヤル気で来る相手はな。」
アンラが、自分の胸を親指で軽く叩く
「避けるし、動くし、騙す。」
「それでも当てなアカンのが実戦や。」
アリスの瞳が僅かに揺れる
「でも――」
「それにな。」
アンラが遮った
「おっさんは、先生ほど柔らかくないで?」
「"柔らかいって何ですか・・・"」
先生が若干不服そうな顔をする
「先生の腹やない?」
「"は?"」
アリスは気付いていた
アンラの足運びが、
いつの間にか変わっている
さっきまでの気の抜けた立ち姿じゃない
重心が低い
隙が無い
まるで、
臨戦態勢の獣みたいだった
「・・・解析。」
アリスの目が細まる
・・・理解してしまう
――危険
目の前の人は、
見た目ほど弱くない
むしろ
「ほれ。」
アンラが手招きした
「来い、勇者様。」
「・・・っ。」
「魔王に、その光の剣がどこまで通じるか試してみ。」
演習場に、
風が吹き抜けた
アリスが【光の剣】を構える
今度は、
しっかりとアンラだけへ砲口を向けながら
「――模擬戦闘を開始します。」
その瞬間
アンラの口元が、
獰猛に笑った
開始と同時に
アリスは光の剣を構えた
「光よっ!」
「それは悪手やろ。」
「っ!!!」
アリスの視界から、アンラの姿が消える
次の瞬間には、
もう目の前に居た
「デカい武器っちゅうんはな。」
アンラが【光の剣】の砲身を軽く小突く
「近寄られた時点で、取り回しが死ぬ。」
「くっ――!」
アリスが慌てて砲身を振る
だが遅い
アンラは既に半歩外へズレている
「しかもお前さん。」
【コツン】
額を指で軽く突かれた
「視線が素直すぎる。」
「――!」
「撃つ前に、【ここ狙います】って顔に書いてあるで。」
アリスが息を呑む
ゲームでは、
敵は攻撃前に予備動作をする
けれど現実では違う
予備動作を見せた側から死ぬ
「さーて。」
アンラが笑う
獲物を追い詰める獣みたいな目だった
「クロスレンジで、長物持ち。」
「アリスならどない捌く?」
「っ――!」
アリスが咄嗟に後退しようとする
だが
「遅い。」
アンラの足が、
【光の剣】の砲身を軽く踏みつけた
【ガゴン】
重量級兵器特有の鈍い金属音
「っ・・・!?」
持ち上がらない
否、違う
持ち上げる為の【間】を潰されている
「重い武器っちゅうんはな。」
アンラが笑う
「強い代わりに、【動き出し】が遅い。」
アリスが即座に判断を切り替える
「なら――!」
【光の剣】から片手を離し、
空いた手でアンラを押し退けようと踏み込む
だがその瞬間
アンラの姿が、
また視界から消えた
「っ!?」
「正解。」
声は、真横
「デカい武器に拘りすぎんのはアカン。」
【トン】
肩を軽く押される
それだけで、
アリスの体勢が大きく崩れた
「わっ――」
「武器っちゅうんは道具や。」
アンラは既に後ろへ回っている
「状況次第で捨てる。切り替える。距離を変える。」
「それが出来んと――」
アリスが振り返る
その目の前に、
拳銃の銃口があった
「実戦やと、ここで終わりや。」
「・・・っ。」
動きが止まる
演習場に風が吹いた
少し離れた場所で、
モモイがぽかんと口を開けている
「えっなんか・・・」
「アンラさん強くない?」
「"あはは・・・"」
先生が苦笑した
「"むしろあれでも、かなり手加減してる方だと思うよ。"」
「えぇ・・・」
ミドリが若干引いた顔になる
その横で、
アリスはじっとアンラを見つめていた
「・・・理解不能。」
「ん?」
「アンラは、ヘイローを持っていません。」
「せやな。」
「ですが。」
アリスの目が細まる
「アリスには、アンラへ攻撃を命中させられる未来予測が出来ません。」
「未来予測て。」
アンラが吹き出した
「ゲームやり過ぎや。」
「しかし事実です。」
アリスは真剣だった
「アンラは、回避行動が異常です。」
「褒め言葉として受け取っとくわ。」
そう言いながら、
アンラは拳銃をくるりと回してホルスターへ戻す
「ほな、次。」
「・・・次?」
「今のお前さん、【撃つ事】しか考えとらんかったやろ。」
「!」
図星だった
アンラはアリスの反応を見て笑う
「そらゲームやと、まず火力叩き込むんが正解やしな。」
「けど現実はちゃう。」
そう言って、
演習場の地面を軽く叩いた
「地形。」
次に自分を指差す
「相手。」
そして、
アリスと【光の剣】を見る
「武器。」
「自分の身体。」
「全部まとめて使うんや。」
「・・・全部。」
「せや。」
アンラがまた手招きする
「次は、おっさんになんでもええ、一発当てるつもりで来い。」
「・・・」
アリスが【光の剣】を握り直す
さっきとは違う
今度は、すぐには撃たない
アンラがそれを見て、少しだけ目を細めた
「お。」
「ちったぁ戦い方考え始めたか。」
その瞬間
アリスが動いた
今度は真正面へ突っ込まない
【ブォンッ!!】
【光の剣】の横薙ぎが、演習場を薙ぎ払う
超重量兵装特有の低い駆動音と共に、 周囲の空気そのものが押し潰された
【ギィィンッ!!】
少し離れた場所に設置されていた演習用バリケードが、 余波だけで大きく歪む
「ほー。」
アンラが笑う
「ええやん。」
だが
「・・・っ、居ない!?」
「後ろやで、」
「っ?!」
急いで振り返りつつ、 光の剣で背後を殴りつける
「そうや、銃は撃つだけやない。」
「特にそう言ったデカい武器はな。」
アリスが振り返る動きに合わせ、 アンラも同じ方向へ滑るように回り込む
まるで影だった
「っ・・・!」
【光の剣】の一撃は空を薙ぐ
だがその重量は凄まじい
振るうだけで風圧が発生し、 演習場の砂が爆ぜるように吹き飛んだ
跳ね上がった砂煙が、 演習場の自動観測カメラを覆い隠す
「おぉ、怖。」
アンラは軽口を叩きながらも、視線だけは鋭い
「今のは悪ない。」
「・・・!」
「撃てへんなら、殴ればええ。」
アンラが【光の剣】の砲身を指で軽く叩く
「その重さや。
下手なハンマーより余程殺傷力ある。」
「・・・理解。」
アリスの瞳が細まる
次の瞬間
【ドンッ!!】
アリスが地面を蹴った
今度は違う
砲撃体勢じゃない
【光の剣】を横抱えにしながら、そのまま体当たりのように突っ込んでくる
「ほー。」
アンラが笑う
「ちゃんと切り替えて来たやん。」
【ブォンッ!!】
超重量の一撃が振り抜かれる
アンラは半歩だけ下がる
だが
「っ――!」
アリスの脚が動いた
砲身を振る勢い、そのまま
回転しながら、鋭い後ろ回し蹴りが飛ぶ
「お。」
アンラの目が少しだけ細まった
【バシィッ!!】
蹴りを腕で受け流す
衝撃でローブが揺れた
「ええやん。」
アンラの口角が上がる
「今の、【武器しか見えてへん相手】には刺さるで。」
「・・・!」
アリスが着地する
呼吸は乱れていない
けれど、
最初より明らかに動きが変わっていた
「長物使いっちゅうんはな。」
アンラが指を一本立てる
「大体、【武器の軌道】ばっか見られる。」
次に、アリスの脚を見る
「せやから本命は、手より足の方が通る。」
「本命・・・。」
「撃つ。殴る。蹴る。」
アンラが肩を竦めた
「全部同時に考えろ。」
その瞬間
アンラの姿が掻き消える
「――っ!!」
アリスが即座に【光の剣】を盾のように構えた
直後
【ドゴォッ!!】
凄まじい衝撃
アンラの蹴りが砲身へ叩き込まれる
「くぅっ・・・!」
重量級の【光の剣】と、アリスの体が数メートル滑った
「重い武器は、防具にもなる。」
アンラが言う
「ただし。」
次の瞬間には、また懐へ居た
「守りに入った瞬間、足が止まる。」
「っ!!」
アリスが咄嗟に砲身を振り上げる
だが、アンラはそれを待っていた
「――隙や。」
【トン】
足払い
それだけ
だが重心が崩れていたアリスは、そのまま大きく体勢を崩した
「わっ――」
倒れかける
その瞬間
アリスの目が見開かれた
「・・・!」
咄嗟に【光の剣】の砲身を地面へ突き立て、
無理やり転倒を止める
砂煙が舞った
アンラが少し驚いた顔をする
「おぉ。」
「今のは上手いやん。」
「学習、しました。」
アリスが【光の剣】を支えに立ち上がる
その青い瞳は、最初よりずっと真剣だった
「アリスは現在、戦闘スタイルを更新中です。」
「ははっ。」
アンラが楽しそうに笑う
「そういうのは、嫌いやないで。」
その瞬間
【ドンッ!!】
アリスが再び踏み込んだ
今度は真正面じゃない
左右へ細かく軸を揺らしながら距離を詰めてくる
「お。」
アンラの眉が少し動く
「考え始めたな。」
「学習は重要です。」
【光の剣】が振り上げられる
だが、撃たない
アンラが半歩回避した瞬間――
【ブォンッ!!】
横薙ぎ
超重量の砲身が、空気を裂きながら迫る
「せやせや。」
アンラが身体を沈めて避ける
「そうやって、【避け先】を潰すんや。」
「・・・っ!」
アリスが即座に追撃
今度は砲身を地面へ叩きつけ、跳ね上がった砂で視界を潰しに来る
「ほー。」
アンラが笑う
「小細工まで覚え始めたか。」
「小細工ではありません。」
砂煙の向こうから、
アリスの声が響く
「戦術です!」
次の瞬間
【バチィッ!!】
砂煙の中から、
極小出力の閃光が走る
「っ。」
アンラが首を傾ける
頬を熱が掠めた
「・・・今の、牽制に使ったんか。」
「はい!」
アリスが飛び出してくる
さっきまでより、
明らかに感情が乗っていた
「光の剣は、撃つだけの武器ではありません!」
「おっ。」
「殴れます!」
【ブォンッ!!】
「蹴れます!!」
回転蹴り
「そして、撃てます!!!」
零距離砲撃
【バチィィッ!!】
閃光が演習場を白く染め上げる
アンラが身体を捻る
閃光がローブを掠め、
後方に並んでいた演習標的が、 数体まとめて蒸発した
爆音
熱風
だが
アンラは笑っていた
「ええやん、アリス!」
「最初より余程戦っとんで!」
その言葉
それを聞いた瞬間
アリスの目が、少しだけ大きくなる
「・・・!」
褒められた
認められた
その感覚に、
胸の奥が熱くなる
理由はわからない
でも――
「まだ、終わりません!」
アリスが地面を蹴る
【光の剣】を軸に低く回転し、足払いと砲身打撃を同時に放つ
「おっと。」
アンラが後ろへ飛ぶ
その着地地点へ、アリスは既に砲口を向けていた
「捉えました!」
「――!」
【バチィィィィッ!!】
光が走る
だが
直撃寸前
アンラが、笑った
「それ、【撃たされとる】で。」
「えっ――」
次の瞬間
空中に居たはずのアンラの姿が消える
「しま――」
「実戦やと。」
声が近い
真横
「【当てたい】って気持ちは、読まれる。」
【トン】
軽く額を指ではじかれる
「いたっ!?」
アリスが思わず声を上げた
その反応を見て、アンラが吹き出す
「ははっ!」
「今のは良い声やったな!」
「わ、笑わないでください!」
「いやだってお前さん。」
アンラが腹を抱えて笑う
「最初よりずっと年相応になっとるで?」
「・・・っ。」
アリスが言葉に詰まる
「最初はなんや。」
アンラがわざとらしく真似をする
「『肯定』『理解』『不明』~とかばっかやったのに。」
「うぅ・・・。」
「今なんて普通に『いたっ』って言うたやん。」
「・・・。」
アリスが口を閉じる
けれど
少しして
「・・・だって。」
ぽつりと漏れた
「アンラとの戦闘、思ったより楽しいですから。」
その瞬間
少し離れた場所で見ていたモモイ達が、目を丸くした
「・・・あ。」
ミドリが小さく呟く
先生も、静かに目を細めている
アリスは気付いていない
今の喋り方が、もうほとんど【普通の女の子】だった事に
アンラも気付いていた
だから、少しだけ優しく笑う
「そらよかった。」
そして
また手招きした
「ほな、第二ラウンドや。」
「・・・はい!」
今度の返事には、
もう“機械っぽさ”はほとんど残っていなかった
アリスが【光の剣】を構える
呼吸は乱れていない
けれど、その瞳には最初とは違う熱が宿っていた
ゲームみたいだからじゃない
強い武器を持てたからでもない
――勝ちたい
今はただ、それだけだった
【ドンッ!!】
地面を砕きながらアリスが踏み込む
「おぉ。」
アンラが目を細める
「ええ目になってきたやん。」
【光の剣】が唸る
横薙ぎ
足払い
フェイント
そこへ混ぜるように、
短いチャージ砲撃
【バチィッ!!】
「せやせや!」
アンラが笑いながら躱す
「武器だけ振るんやない!」
「身体ごと使え!」
「はい!!」
アリスが応える
踏み込みが深くなる
攻撃が繋がる
もう最初みたいに、【撃って終わり】じゃない
「――っ!!」
アリスが【光の剣】を地面へ突き立てる
【ギュイイイイイイン・・・】
高出力チャージ音
周囲の空気が震え始めた
「お?」
モモイが目を丸くする
「ちょ、アリス!?」
アリスはアンラを見据える
逃がさない
今度こそ当てる
そういう目だった
「アンラ!」
アリスが叫ぶ
「アリスは、もっと知りたいです!」
「この武器の使い方も!」
「戦い方も!」
「この世界のことも!」
【光の剣】が眩く輝く
「だから――」
その瞬間
アンラの笑みが、
変わった
獰猛さが消える
代わりに浮かんだのは、どこか楽しそうな笑みだった
「・・・なら。」
アンラが、ゆっくりと腰へ手を伸ばす
それと同時にどこからか黒い液体が腰へと集まる
無音で腰から抜かれる
ローブの下から現れたのは、
一本の刀だった
「・・・っ。」
先生の目が僅かに細まる
モモイ達も息を呑む
それまでずっと、アンラは遊ぶみたいに戦っていた
けれど
刀を抜いた
その瞬間空気が変わる
【スゥ・・・】
刃が姿を現す
鈍く、黒い刀身
周囲の空気が、ひやりと冷えた気がした
アリスの背筋に、ぞくりとしたものが走る
本能が警鐘を鳴らしていた
――危険
今までとは違う、と
だが
それでもアリスは、【光の剣】を構えた
アンラが小さく頷く
「来い。」
「・・・はい!!」
「この光に意志を込めて・・・貫け!バランス崩壊!」
【ギュオオオオオオッ!!!!】
極大出力
【光の剣:スーパーノヴァ】が、
真正面から光を解き放つ
眩い閃光が演習場を呑み込む
熱
衝撃
轟音
さっきまでの砲撃とは比べ物にならない
「うわぁぁっ!?」
モモイ達が思わず腕で顔を庇う
だが
その光の真正面で
アンラだけが、
一歩も退かなかった
「・・・」
静かに刀を構える
そして
「――遅い」
一閃
それだけだった
次の瞬間
【バチンッ――】
極太の光が、 真っ二つに裂けた
斬られた閃光が左右へ逸れ、 演習場後方の隔壁へ直撃する
【ドゴォォォンッ!!】
「――え。」
アリスの目が見開かれる
斬られた光が左右へ逸れ、
演習場の遥か後方へ突き抜けていく
轟音
爆風
揺れる大地
けれど
アンラの前だけは、まるで何も無かったみたいに静かだった
「う、そ・・・」
ミドリが呆然と呟く
「砲撃を・・・斬った?」
先生は黙っていた
ただ、その目だけが僅かに細められている
アンラは刀を肩へ担ぎながら、ぽかんとしてるアリスを見る
「まぁ、今のは悪くなかったで。」
「・・・っ。」
アリスが息を呑む
「ちゃんと、【当てる為】に考えとった。」
アンラが笑う
「せやから、おっさんもすこーしだけ本気を出した。」
その言葉に
アリスの胸が、どくん、と高鳴った
悔しい
でも
それ以上に――
「・・・すごい。」
ぽつりと漏れた
アンラが眉を上げる
「ん?」
アリスは、目を輝かせながらアンラを見つめていた
「今の、まるでゲームの勇者みたいでした!」
「ははっ!おっさんが勇者かいな。どっちか言うと魔王やで。」
アンラが吹き出す
「魔王・・・。」
アリスが目を輝かせる
「確かに今の雰囲気はラスボスでした!」
「褒めとる?」
「はい!」
「さいでっか。」
アンラが苦笑しながらも
【カチン】
鞘鳴りと共に納刀する
その瞬間だった
張り詰めていた空気が、ふっと霧散する
「――はぁぁぁぁ・・・」
モモイがその場にへたり込んだ
「なんか今、ラスボス戦見せられてた気分なんだけど・・・」
「わ、わかる・・・」
ミドリも胸を押さえながら頷く
さっきまでとは違う
おっさんが刀を抜いた瞬間、空気そのものが変わった
銃を持っていた時とも
素手で戦っていた時とも違う
あれが一番自然だった
まるで、
最初からそこに居た剣士みたいに
「"・・・アンラさん。"」
先生が静かに口を開く
「んー?」
「"その刀、いつから持ってたんですか?"」
「いつからも何も、ずっともっとるで?」
「いやいやいや!!」
モモイが勢いよく立ち上がった
「そんなの初耳なんだけど!?」
「それにアンラさん、ちょっと前まで武器なんも持ってなかったじゃん!」
「最近になって銃買ってきたばっかりでしたよね!?」
「なのに何でそんな達人みたいな動き出来るんですか!?」
「しかも砲撃斬ったし!!」
「アレ斬れるものなんですか!?」
モモイとミドリに詰め寄られ、おっさんが少しだけ視線を逸らす
「いやぁ・・・なんや、昔ちょろっとな」
「ちょろっとで砲撃斬れる訳ないでしょ!!」
「ほんまほんま」
モモイが半眼になる
ミドリも刀を見つめながら呟いた
「・・・でも。」
「刀を抜いた瞬間、空気変わりました。」
「うん。」
モモイも珍しく真面目な顔になる。
「なんか、【あっちが本命なんだ】って感じした。」
「銃使ってた時と全然違ったし・・・。」
先生は黙ったままおっさんを見ていた
あの一瞬
刀を抜いた瞬間だけ、
おっさんの雰囲気が完全に別物へ変わった
遊び半分だった空気が消え
まるで、
今までずっと利き手を隠していたみたいに
「・・・。」
先生の視線に気付いたおっさんが、へらっと笑う
「なんや先生まで怖い顔して。」
「"いや"」
先生が静かに答える
「"アンラさん、【銃使い】じゃなかったんだなって。"」
「おっさんはおっさんやで?」
「"誤魔化せてないです。"」
即答だった
「ははっ。」
おっさんが肩を竦める
すると
今まで黙っていたアリスが、
ずいっと前へ出た
視線は完全に刀へ固定されている
「アンラ。」
「ん?」
「その武器は、いわゆる【サムライ専用武器】ですか?」
「なんやそのカテゴリ。」
「RPGでは刀を扱うキャラクターは、高火力・高機動・紙装甲が定番です!」
「紙装甲ちゃうわ。」
「あと必殺技名を叫びます!」
「叫ばんでも斬れるからなぁ。」
アリスがさらに目を輝かせる
「やはりファンタジーです!」
「アンラは実在した剣豪系隠しボスだったんですね!」
「なんやねん隠しボスって。」
「一定条件を満たさないと戦えないタイプです!」
「嫌な分類されとるなぁ。」
モモイが吹き出した
「確かにそんな感じする!」
「普段ふらふらしてるのに、戦ったらクソ強いタイプ!」
「しかもイベント戦だこれ!」
「負けイベント感ありました!」
ミドリまで乗っかる
「いやぁ、酷い言われようや。」
「アンラ。」
「ん?」
「また戦ってください。」
真っ直ぐな声だった
「次は、もっと強くなってから。」
アンラが少しだけ目を細める
それから
ぽん、とアリスの頭へ手を置いた
「おう。」
「次はもうちょい、本気で相手したる。」
「・・・はい!」
「“――で。”」
先生が、静かに周囲を見渡した
ミレニアムサイエンススクール・野外演習場
・・・だった場所
地面は至る所が抉れ、大小無数のクレーターが出来上がっている
【光の剣】を叩き付けた場所は、爆発でも起きたみたいに陥没
牽制射撃で吹き飛ばされた標的は、煙を上げながら転がっていた
そして演習場の中央付近
おっさんが最後に放った斬撃の跡が、地面へ鋭い亀裂として刻まれている
そこまで大規模ではない
せいぜい演習場中央を数十メートル裂いた程度
だが――
「あの亀裂、普通の模擬戦で出来るやつじゃないよね?」
モモイが真顔で言った
「せやなぁ。」
おっさんが頷く
「“いや納得しないでください。”」
先生が即座にツッコんだ
風が吹き抜ける
【パラ・・・】
壊れた標的の残骸が崩れ落ちた
「・・・・・・」
全員、黙る
そして
「“アンラさん。”」
先生が静かに口を開いた
「なんや?」
「“何か言う事は?”」
「いやぁ。」
おっさんが周囲を見回す
「派手にやったなぁ」
「“主犯が他人事みたいに言わないでください”」
即答だった
モモイもぶんぶん頷く
「そうだよ!!」
「というか最後のアレ何!?」
「砲撃斬るの意味わかんないんだけど!?」
「しかも地面まで切れてるし!」
「いやぁ、つい。」
「つい!?」
ミドリも亀裂を見ながら、若干引き気味だった
「“はぁ・・・これ絶対シャーレに苦情来る・・・”」
「ドンマイ。」
おっさんが軽く手を振る
「まぁ演習場っちゅうのは壊れるもんや。」
「“違います。”」
先生が真顔で返した
その横で、アリスが少ししょんぼりしながら周囲を見回す
「・・・アリスは、出力を上げ過ぎました。」
「“いや。”」
先生はすぐ首を横へ振った
「“アリスはちゃんと加減しようとしてたよ。”」
「・・・!」
アリスが顔を上げる
そして先生は、すぅ、とおっさんを見る
「“煽って本気を引き出したの、アンラさんですよね?”」
「えっ。」
「“つまり責任者です。”」
「横暴やろ。」
「“事実です。”」
先生が一切ブレない
その時
【ウィィィィン・・・】
演習場の端で、修復用ドローンが起動した
【損害確認中】
【修復プラン構築開始】
【請求先照合中】
嫌な予感しかしない機械音声
そして
【請求先:七篠アンラ】
「やっぱりか・・・」
おっさんが頭を抱えた
ミドリが端末を覗き込みながら、恐る恐る読み上げる
「えっと・・・。」
「標的設備交換。」
「地盤修復。」
「演習場舗装補修。」
「あと斬撃痕修復・・・。」
「律儀に項目分かれとんな・・・」
おっさんが遠い目をした
「概算で・・・。」
ミドリが小さく息を呑む
「五千八百万円です。」
「うわ高っ」
おっさんの顔が引き攣った
「演習場ってそんな金かかるん?」
「“ミレニアム製ですから”」
先生が淡々と返す
「"あと多分、最後の斬撃で値段跳ね上がってます。"」
「そこ!?」
モモイが即ツッコミした
「いやでも絶対そうじゃん!」
「地面に変な亀裂入ってるし!」
「変な亀裂言うなや。」
おっさんが不服そうな顔をする
その時
「アンラ。」
アリスが前へ出た
「ん?」
「アリスも責任を負担します。」
真面目な顔だった
「今回の高出力砲撃は、アリスの判断によるものです。」
「・・・。」
おっさんは数秒、アリスを見つめた
それから
「アホ言うな。」
ぽん、と軽く頭へ手を置く
「今回は、おっさんが煽った結果や。」
「ですが――」
「ええから。」
おっさんが苦笑する
「子供が気にする話やない。」
「・・・。」
アリスが少しだけ目を瞬かせる
「それにな。」
おっさんが親指で自分を指した
「おっさん、一応大富豪なんやで?」
「こういう時に金出すんが大人の役目や。」
「アンラ・・・。」
アリスの目が、少しだけ丸くなる
その横でモモイが吹き出した
「いやでも約六千万は普通にキツくない!?」
「おっさんもそう思う。」
「じゃあ何で煽ったの!?」
「ノリ?」
「最低!!」
先生まで笑いを堪え切れず吹き出した
ミドリもくすくす笑っている
そんな中
【追加損害確認】
全員が固まった
【標的ドローン三機:修復不能】
「まだ増えるんかい!!」
おっさんのツッコミが、夕暮れの演習場へ響き渡った
原作踏襲じゃないけど戦闘描写は文字数増えるゥ!
まぁと言う事でオリジナルストーリーで、前話で言ってた通り、
おっさんがアリスと模擬戦をしたよ!
まぁ結果として・・・アリス強化一丁!!!って感じですかね!
チビメイド先輩頑張れ!
結構メッタメタにチビメイド特攻な事を延々とおっさんが教えてたけど
故意じゃないよ!実際あんなデカイ獲物を振り回す時に一番の弱点は、
チャージ時間と、接近されてからの貧弱な攻撃手段になるからね!
結果的にチビメイド先輩メタになってしまっただけだよ!
あとこの戦闘を通して、アリスの語彙力が原作付近まで近づきました!おめでとう、アリス!
この後ユウカから質問と言う名の尋問があるけど
多分原作よりすらすらになってるんじゃないかしら!
まぁユウカ視点からすると、報告書で、アンラが模擬戦で野外演習場をボロボロにしたっていう
報告が来るからアリスに質問する3割、
おっさんに詰問する7割くらいの割合になってそうですが!
現状おっさんによる、ミレニアムでの原作改変は、
光の剣:スーパーノヴァの大幅強化
アリスの戦闘技能の教導
モモイ、ミドリ、ユズに対する神秘の使い方をふわっと教えている事
ほんとこのオッサン子供に弱いな。
ちなみに閑話で更にモモイに強化が入る事が確定しています・・・
具体的に言うとおっさんの戦闘法を見て、近接武器を使ってみたいと言い、
おっさんに強請った結果、一本を譲り受ける事になります。
正直おっさんからすると、一番選んでほしくなかった一本を直感で選んでくるモモイ・・・
そういうお話が今後控えてます。
おっさんまめ情報
前におっさんの得意魔術は創造で、エミヤみたいな戦い方をすると言っていましたが、
方法は、対価を支払い、素材を用意し、魔術で鍛造を行い。物を想像する。
これを1工程で終わらせる魔術です。
そんでその武器を使って戦ったりします。
ちなみにおっさんが使ってる液体金属のアレもそうやって出来ました。
素材が人っていうのはそう言う事です。