おっさんキヴォトスに行く 作:無い頭のおっさん
献給高座于天之吾師
【天干一ツ】
【ミレニアム・ゲーム開発部部室】
太陽も沈み切り、
ミレニアムの高層ビル群が夜景へ溶け込み始めた時間
だがゲーム開発部の部室だけは、
未だ昼間みたいに煌々と明かりが灯っていた
床へ転がる栄養ドリンクの空き瓶
乱雑に積まれた資料
仮眠用だったはずの毛布
そして、
六日間ほぼ不眠で走り続けた部員達の死んだ目
ミレニアムエキスポ提出期限まで、
残り数分
まさに最後の修羅場だった
「お姉ちゃん!まだ!?」
ミドリが机へ身を乗り出す
モモイの指が、
凄まじい速度でキーボードを叩いていた
「ま、待って、急かさないで!
あとこれだけ入力すれば終わりだから・・・!」
「あと2分だよ!?急かさずにはいられないって!」
「正確には96秒です。」
アリスが冷静にモニターを見つめたまま告げる
「そう言ってる間に残り92秒・・・」
「わ、わかったわかった!
もう出来たから!」
モモイが叫ぶようにエンターキーを叩いた
「こっちは簡単なテストだけやって・・・
うんっ。エラーは出てない、モモイ!」
「オッケー!」
モモイが即座にファイルをドラッグする
「ファイルをアップロード、完了まで予想時間・・・15秒!
アリス、後何秒!?」
「残り19秒です・・・!」
「お、お願い・・・!」
誰も息をしていなかった
アップロードバーが、
じりじりと伸びていく
残り10秒
7秒
5秒
「・・・転送完了・・・」
一瞬
全員が固まった
次の瞬間
【ミレニアムプライスへの参加受付が完了しました。】
「間に合ったああぁぁあ!!!」
モモイが机へ突っ伏す
「ギリギリ・・・
心臓止まるかと思った・・・」
「おっしゃ!
ようやったお前ら!!」
おっさんが大きく笑った
「ぱっと夜飯食いに行くか!」
「"アンラさん・・・
気持ちはわかりますけど・・・"」
先生が苦笑する
「"まだゲーム開発部の皆は、
1週間の拘禁が終わってないので・・・"」
「あーそういやあったな、そんなん。」
おっさんが頭を掻く
「お優しいユウカちゃんが、
部室で謹慎してるのを拘禁って言い換えとったから忘れ取ったわ。」
その瞬間、
モモイの顔から希望が消えた
「うう・・・
打ち上げ行きたかった・・・」
「まぁ、しゃーない。」
おっさんが肩を竦める
「今回のこの対応も、
ユウカの海溝くらいに深い懐のおかげやからな。」
「それはそうだけどー・・・」
「まぁ明日には終わるんやさかい、
今日はとりあえず俺と先生で、
又なんか買って来たる。」
「うー、わかったよー・・・」
「ほんで、何が食いたい?」
「うーん・・・ハンバーガー!」
「私たちもおなじのでお願いします。」
「・・・あいよー。」
おっさんと先生が立ち上がり、部室を出ていく
「"皆、本当に頑張りましたね。"」
「せやな。」
おっさんも珍しく素直に頷く
六日間、途中で誰かが倒れてもおかしくなかった
それでも、この子達は最後まで完成を諦めなかった
だからこそ
おっさんは少しだけ、眩しそうに目を細めていた
「ちょっといい歳こいたおっさんとして、子供に食べたい物って聞いた時に、
ハンバーガーしか返ってこないのに危機感を覚えるんやけど、先生はどう思うよ?」
「"あはは・・・ゲーム開発部らしいじゃないですか。"」
「いやぁ・・・こんど全員で、そこそこの店に連れて行くべきか・・・?」
「"多分皆ガチガチになっちゃうんじゃないです?"」
「むしろ慣れといた方がええやろ・・・立食会とか今後行く事もあるやろ・・・」
先生が少しだけ笑って、
ぽつりと呟く
「"・・・アンラさんって、本当にお父さんみたいですよね・・・"」
「やかましいわ。」
だが、
否定は少し遅かった
数十分後
おっさんと先生が買って来たチーズバーガーセットを囲み、
ゲーム開発部の4人はようやく一息ついていた
疲労で全員顔色は終わっているのに、空気だけはどこか浮ついていた
やり切った後の、独特の高揚感だった
「にしても結果はいつでるんやっけ?」
「えっと、ミレニアムプライス自体は3日後だね。」
「3日か。」
モモイがハンバーガーを握ったまま、
少し真面目な顔になる
「うん。3日後には・・・このままこの部屋にいられるのか、そうじゃないのかが決まる。」
部室が静かになった
ゲーム開発部は、ずっと廃部寸前だった
今回結果を出せなければ、本当に終わる可能性がある
だからこそ、
このゲームは全員にとって特別だった
だが次の瞬間
モモイがぱっと顔を上げる
「でね、アンラさん!」
「ん?」
「さっきアンラさん達が買いに行ってくれてた時に話してたんだけど、
先にウェブ版の【テイルズサガクロニクル2】を公開しようかなって!」
「ミレニアムプライスの審査員の評価より先に、ユーザーの反応が見たくなったんだ!」
「ええと思うで?」
おっさんは即答した
「審査員は実際にゲームを遊ぶ人間ではないからなー
そういうのは実際にゲームする奴の声を聞くのが一番やろ。」
「そうだよね!」
モモイがぱっと笑う
「ってことで!アンラさんは私の味方になってくれたよ!」
「おい待てや。」
おっさんが即座にツッコむ
「話をしてたって、同意を得たじゃなくて、ほんまに話ししとっただけか?」
「うーん・・・やっぱりちょっと怖いかも・・・」
ミドリが視線を落とした
「低評価のコメントも心配だし・・・」
「もうミドリ、何言ってるのさ!」
モモイが立ち上がる
「そもそも、
ミレニアムプライスに出品するためだけに作ったゲームじゃないでしょ!」
「自信を持って、見て貰おうよ!私たちはベストを尽くしたんだから!」
「そ、それはそうだけど・・・」
その時だった
「・・・うん。」
ユズが小さく口を開く
全員の視線が向いた
「アップしよう。」
静かな声
けれど、確かな熱があった
「作品っていうのは・・・
見てくれる人、遊んでくれる人がいてこそ、完成されるものだと思うから。」
「わたしは・・・わたしたちのゲームを、きちんと完成させたい。」
「ユズちゃん・・・」
ミドリが目を丸くする
おっさんも思わず笑った
「ユズほんま成長したなぁ・・・」
「それはそうと先生、1個気になった事あったんやけど、モモイの扇動能力高くないか・・・?」
先生がぴたりと止まる
「"・・・"」
一瞬だけ、先生が視線を伏せた
その沈黙だけで、
おっさんは察してしまう
「無言って事は、それ関係の世界もあったんか・・・」
「"はい。"」
静かな肯定
「"・・・モモイが持ち前のコミュニケーション能力と銃と銛を使い、》
武力と政治力でミレニアムの生徒会長になって全権握った後、
キヴォトス全体に宣戦布告する世界もありました・・・"》
おっさんと先生の間の空気が、少しだけ冷える
「マジか・・・」
「"アリスが犠牲になった後、他学区からの攻撃でミドリも犠牲になり・・・そこから・・・"」
先生は最後まで言わなかった
だが、
それだけで十分だった
「はぁ・・・ホンマ、キヴォトス。ええかげんにせえよ・・・。」
おっさんが小さく吐き捨てる
その声音だけ、
ほんの少し重かった
大人二人がそんな不穏な会話を後ろでしてるとも知らずに
楽しそうに太陽のような笑顔を浮かべているモモイ
「よし!それじゃあ今直ぐアップロードしよう!」
「ああっ!ま、待って!心の準備が・・・!」
【ペコン】
「転送完了!」
「プレイして感想が貰えるまで少なくとも、
2,3時間はかかるだろうし、
後はハンバーガーの残りを食べながら待ってよう!」
「・・・はぁ、そうだね。」
誰もすぐには包み紙へ手を伸ばさなかった
ついさっきまで、
締め切りに追われていたはずなのに
今度は逆に、
「待つだけ」の時間が始まってしまったからだ
部室の中には、
パソコンの排熱音だけが微かに響いている
「・・・・・・」
モモイがポテトを一本摘まむ
けれど味なんて、
ほとんど分かっていなかった
ミドリも落ち着かなさそうに、
何度もスマホ画面を確認している
ユズは静かにジュースを抱えたまま、
ちらちらとパソコンの通知欄を見ていた
そしてアリスだけは――
「じー・・・」
最初からずっと、
モニターの前を動いていない
「アリスちゃん、流石にまだ来ないと思うよ?」
「はい。
ですが、もしかしたら来るかもしれません。」
「その気持ちは分かるけどさぁ・・・」
そう言いながら、
モモイ自身も通知音設定を最大にしていた
時間だけがゆっくり過ぎる
ポテトが冷める
時計の秒針だけが聞こえる
そして――
【ピロン】
全員の肩が跳ねた
「あっ初コメ。」
「何て!?何て!?」
【わお、これ前回クロゲーランキング1位を取った、あれの続編?
もうゲーム作りはやめたと思ってたけど、懲りないねぇ】
「・・・」
空気が一瞬だけ止まる
モモイの笑顔が引き攣った
「え、えーっと・・・初手から中々辛辣・・・」
「だ、大丈夫だよお姉ちゃん!まだ一件目だし・・・!」
「・・・」
だが、その直後だった
【ガタッ】
「ん?」
音のした方を見る
そこには
無言で立ち上がる砂色のローブのおっさんが居た
「おぅ、先生放せや。」
「"何処行くつもりですか!?"」
「ちょっとゴミ掃除。」
「"行かせるわけないでしょ?!"」
先生が即座に背後から羽交い締めにする
だがアンラは普通に玄関へ歩き始めていた
「大丈夫や。アビドスに埋まるだけや!」
「"それキヴォトス人でも死ぬんです!"」
「埋まって反省するならセーフやろ!」
「アウトなんですって!!」
ずるずると先生を引き摺りながら歩いていくアンラ
その様子を見ていたアリスが、すっと立ち上がる
「・・・アリスも同行します。」
「えっ」
「ゲームをプレイする前に低評価を書く悪性ユーザーは、
存在そのものが不誠実です。」
「いや言い方ァ!?」
アリスの瞳がうっすら赤く光る
「・・・マキに連絡。該当IPアドレスの方角に対して、
最大出力のビーム砲を食らわせてきます。」
「そ、それはダメ!!」
ミドリが慌ててアリスへ抱き着く
「アリスちゃん落ち着いて!?レビュー一件だから!まだ一件だから!!」
「ですがミドリ、これは明確な敵対行為です。」
「違う違う違う!!ネットってこういうのあるの!!」
「インターネット、怖いです。」
「怖いのは今のアリスだよぉ!!」
一方その頃
玄関前では未だ攻防が続いていた
「離せ先生。」
「"離しません!!"」
「大丈夫やって。
ちょっとアビドス砂漠で逆さに埋めるだけや。」
「"大丈夫の定義どうなってるんですか!?"」
「安心せえ。
ちゃんと治安維持部隊の仕事として処理する。」
「犯行の完成度を上げないでください!!」
モモイが頭を抱えた
「ねぇ!?なんでレビュー一件でここまで治安悪化するの!?」
「・・・師弟だから。」
ユズがぼそっと呟く
「似なくていい所だけ似ちゃった・・・」
「ユズは冷静だね!?」
【ピロン】
新しい通知音
全員の視線がモニターへ向く
【前回の[TSC]は確かに、手放しで称賛できる作品ではなかったかもしれません。
ですが新鮮味があり、少なくともありふれた作品ではありませんでした。
今回の2ではどんな目新しさを見せてくれるのか、楽しみです】
「おっ。」
アンラが止まる
「・・・ちゃんとゲームの事喋っとる。」
「"だから言ったじゃないですか!"」
先生がアンラのローブを掴んだまま叫ぶ
「良いコメントも来るんですよ!」
「・・・まぁ、せやな。」
アンラが渋々戻ってくる
アリスも赤い光を消した
「ビーム砲、キャンセルします。」
「よかったぁ・・・!」
ミドリがその場でへたり込む
【ピロン】
さらに新しいレビュー
【さて、鬼が出るか蛇が出るか・・・せっかくなら中庸なんかじゃなくて、
例えどっち側だったとしても、振り切った体験を期待したいね】
【ピロン】
またさらに新しいレビュー
【前作はやったけど、いい思い出としては残ってない。
それどころか苦い記憶がいくつも鮮明に思い出せるくらい。
でも、どうしてかな・・・続編だって知ってるのに、ついダウンロードしちゃった】
モモイがどんどん増えていくコメントにテンションが上がっていく
「す、すごい!なんか私たちのゲーム、めちゃくちゃ期待されてない!?」
「全体的になんか、【時限爆弾を楽しそうに解除しようとしてる】感じっていうか・・・」
「怖い物見たさ、みたいな・・・」
ミドリとユズの二人はコメントの内容がどこかゲームとはかけ離れていて、少し引き気味になる
【ピロン】【ピロン】
【2時間後補修テストがあるんだけど・・・そんなことより今はこのゲームがやりたい気分】
【テストなんてこれから先、いくらでもあるじゃん。
これを遊ぶ最高のタイミングは、アップされたばっかりの今だけなんだよ!】
現実逃避しているコメントにユズが反応し
「えっと、それは出来れば・・・テストを受けに行って欲しいかも・・・」
「だ、ダウンロード数がもう2000を超えてる!?流石におかしくない!?」
モモイはそのダウンロード数の加速具合に驚いていた
「あ・・・有名なポータルサイトに、私たちのゲームが発表されたって記事が載ったみたい。」
「うわあぁぁ・・・!無関心じゃなければ良いな、くらいに思ってたのに!
ここまで数は増えると急に怖くなってきた!」
「・・・ドキドキします。」
「うぅっ!期待と不安で、心臓が爆発しそう!」
モモイがそう言った瞬間に
【ドカアアァァァン!】
部室内に爆発音のようなものが鳴り響いた
「!?」
「ほ、本当に心臓、爆発しちゃったんですか?」
「ち、違う!私の心臓じゃない!」
「いったい何の・・・!?ゲーム機が爆発!?」
「え、長時間やり過ぎたかな・・・?」
「いや、これ襲撃やろ。
にしてもゲヘナじゃあるまいに・・・ミレニアムでか?珍しい事もあるもんやな。」
「"今調べたよ!カリンがこの部室に向かって迫撃砲を撃ってきてる!"」
「まーた迫撃砲かいな・・・
おっさんが居る所には降ってこないといけないルールでもあんのかよ・・・」
【ドゴオォォォン!】
「ひゃっ!?」
「遠距離攻撃を確認、部室正面に対して11時の方角!距離、約1km・・・!」
「ぜ、前回の仕返し!?」
「反撃を開始します!」
「ううん、アリス、一旦外に出よう!ここだと先生を巻き込んじゃうし、それに・・・」
「このままここで戦ったら、私たちの部室が壊れちゃう!」
「お姉ちゃん・・・」
「こ、これもしかして、・・・鏡の件の報復・・・!?」
「ちょ、ちょっとは申し訳ないと思ってたけど・・・!」
「ひぃっ、また来る!」
「"皆!再装填してるうちに、とにかく外に出よう!"」
「先生・・・はいっ!」
「アリス、私とユズが前に立つ!」
「はい!アリスは先生とみんなを守ります!」
「ほなおっさんは・・・外出たらちょーーっと一発だけぶちかましたるわ。」
「丁度・・・鬱憤溜まってたんだよなぁ・・・・・・」
「よし、行こう!!」
廊下へ飛び出す
先頭を走るのはモモイとユズ
その後ろをミドリが追い、
アリスが全員を守るように周囲へ視線を走らせる
最後尾では先生とアンラが後方を警戒していた
【ドゴォォォォンッ!!!】
少し離れた校舎へ迫撃砲弾が直撃した
窓ガラスが一斉に砕け散り、
夜のミレニアムへ火花と破片が舞う
「ひぃっ!?」
「ち、近っ・・・!?」
「いやいやいや!?ガチで撃ってきてるってこれぇ!!」
モモイが涙目で叫びながら走る
「だから言ったやろ、襲撃やって。」
「"そんな落ち着いて言う事じゃないです!!"」
先生が全員を急かす
「"止まらないで!階段まで走って!"」
「前方、安全です・・・!」
ユズが息を切らしながら前方を確認する
アリスも後方から周囲を警戒していた
【ヒュゥゥゥゥゥ――――】
嫌な風切り音
次弾
「"伏せ――!"」
【ガァァァァンッ!!!】
今度は廊下外側の壁面へ着弾
衝撃が床を揺らし、
モモイがバランスを崩しかける
「わぷっ!?」
「お姉ちゃん!」
ミドリが慌てて腕を掴んだ
「走って!」
「う、うんっ!」
天井からぱらぱらと埃が落ちてくる
白い壁面にはひびが走り、
赤い警告灯が点滅していた
【Warning Warning】
【校舎外壁への損傷を確認】
【一部区画を閉鎖します】
「うわぁ!?施設アナウンスまで鳴り始めた!」
「完全にテロなんよ。」
「"アンラさん、やり返し過ぎないでくださいね!?"」
「なんでや!?撃たれとる側やぞおっさん!?」
「"そこ否定するんですか!?"」
階段前へ到着
モモイが勢いよく扉を開け放つ
【バァンッ!】
「下まで一気に行くよ!」
「う、うん!」
全員が雪崩れ込むように階段を駆け下りていく
【ドゴォォンッ!!】
また着弾
今度はタワー外側
窓越しに火花が見えた
「カリン先輩!?どこ狙ってるのこれぇ!?」
「"逃走経路の制限かもしれない・・・!"」
先生が走りながら答える
「嫌すぎる・・・!」
「っていうかC&C私たちの事恨みすぎじゃない!?」
数フロアを一気に駆け下りる
その最中も、
遠くで爆発音が響き続けていた
【ドォン!!】
【ガシャァァン!!】
ガラスの砕ける音
警報
振動
まるで校舎全体が戦場になったようだった
「うぅっ・・・なんでゲーム公開した日にこんなことに・・・!」
「イベント盛り沢山やなぁ。」
「"盛らなくていいんです!"」
ようやく一行はタワー一階へ辿り着く
エントランスの自動扉が開き、
夜風が吹き込んだ
「外へ!」
モモイが叫ぶ
全員がそのまま夜のミレニアムへ飛び出した
夜空には爆炎の明かり
少し離れた南側――池の周辺から、
断続的に砲撃音が響いてくる
【ドゴォォォンッ!!!】
着弾
今度はタワー近くの植え込みが吹き飛び、
土砂と芝生が宙へ舞った
「おっしゃ、見えたな。」
「"ほんとに、加減してくださいよ!?"」
「任せとけ任せとけ。」
そう言うと同時に親指の皮膚を噛みきり血を流す
「っ!」
唐突な自傷にモモイ達が顔をしかめていた
「我が血を贄に。」
アンラがそう言った瞬間親指から垂れていた血が凝固し、
一本の矢に変わる
それと同時に、アンラの左手に黒い液体が集まり、黒く巨大な洋弓が現れた
その洋弓に血の矢を番え、引き絞る。
【ギギギギギギギギギギ】
弦から鳴って良い音ではなかった
「滅びよ此処に。」
【ヒュッッッッパァァン】
その言葉と共に矢が放たれる
次の瞬間
1km先で、6日前にミレニアムタワーで見た物と同じ爆発が起こった
【ドガァァァァァァンッ!!!!】
「よし。」
「"アンラさん・・・あれ生きてるんですよね・・・?"」
「そら生きてるやろ。ってか矢の風切り音聞いた瞬間に迫撃砲を置いて退避しとったぞ。」
【矢の爆心地】
池の周辺
迫撃砲を展開していたC&Cの面々は、
矢の風切り音を聞いた瞬間、その場から飛び退く
その直後、何かが着弾した
着弾したことにより、巻き上がる爆炎と衝撃波に思わず目を見開く
「なっ・・・!?」
「迫撃砲が・・・!」
「カリン!今のは・・・!」
「わー!吹き飛んじゃったね!」
1mほど窪んだ地面
吹き飛んだ芝生
そして中心点に突き刺さった一本の赤黒い矢
その光景を見たネルの口元が、
ゆっくりと吊り上がっていく
「・・・は。」
呼吸が浅くなる
心臓が妙にうるさい
二年前
まだC&Cに入ったばかりの頃
任務で偶然目撃した、
砂色のローブの賞金首狩り
目で追えない踏み込み
気づけば懐に入り込んでいる異常な機動
そして
――あの時遠距離から飛んできた、あの矢
何年も探していた
戦いたかった
追いつきたかった
その相手
「は、ははっ・・・!」
ネルが笑う
獰猛に
嬉しそうに
まるで子供みたいに
「やっぱテメェかぁぁぁぁッ!!!!」
【ドンッ!!!!】
地面が爆ぜた
ネルの姿が消える
いや
速すぎて見えなかった
「ちょっ、ネル先輩!?」
「待ってください!単独行動は――!」
アカネの声すら置き去りにして、
ネルが一直線に駆け抜ける
芝生を裂き
コンクリートを砕き
池沿いの歩道を、文字通り弾丸のような速度で突き進む
「ははっ・・・!はははははっ!!」
楽しくて仕方ない
ようやく見つけた
ずっと追っていた獲物
その速度のまま、
ネルはタワー前広場へ飛び込む
【ミレニアムタワー前広場】
【バァァンッ!!!】
着地と同時に石畳が砕け散った
「うわぁっ!?」
「ひゃっ!?」
突然目の前へ降ってきたネルに、
モモイ達が悲鳴を上げる
だが
ネルの視線は、最初から一人しか見ていなかった
砂色のローブ
黒い弓
そして
手に残る血
「・・・・・・見つけたぜ。」
獰猛な笑み
息を荒げながら、
ネルがおっさんを見る
「あの時の奴。」
「・・・ん?」
おっさんが首を傾げる
「美甘ネル?お嬢ちゃんとどっかで会ったか?」
一瞬
場が静まり返った
「・・・・・・あ?」
ネルのこめかみに青筋が浮かぶ
「いやいやいやいや!!」
モモイが思わず叫んだ
「さっきのテンションで知り合いじゃないの!?」
「いや、おっさん知らんて・・・
流石にこんな
「・・・は?」
ネルの額に青筋が浮かぶ
だが次の瞬間には、
その表情すら獰猛な笑みに塗り潰されていた
「はっ、ははっ・・・!!」
怒っている
なのに楽しそうだった
「上等だよ・・・!
だったら今から嫌でも覚えさせてやるッ!!」
【ドンッ!!!】
石畳が爆ぜ、ネルが一瞬で距離を詰めた
「っ――!」
モモイ達の視界から、
ネルの姿が消える
速い
余りにも速すぎた
次の瞬間にはもう、
おっさんの眼前へ蹴りが迫っている
【ブォンッ!!】
空気が裂ける音
だが
「おぉ、速っ。」
おっさんが半歩だけ身体をずらした
それだけ
ネルの足がローブの端を掠め、
後方の街灯を粉砕する
【バギィッ!!】
「なっ――」
ミドリが目を見開く
今の一撃
避けたようにすら見えなかった
まるで最初から、
そこに居なかったみたいに軌道だけ外れていた
「ははっ!!」
だがネルは止まらない
むしろ加速する
右
左
蹴り
掌打
肘
銃を抜きながらの至近射撃
C&C仕込みの近接戦闘術が、
暴風みたいな勢いで叩き込まれる
【ダダダダダダッ!!】
「うわっ!?」
「ちょ、近っ・・・!」
モモイ達にはもう何が起きているのか分からない
ただ、火花だけが散る
ネルが撃とうとする
その瞬間には、
おっさんがもう懐へ入り込んでいた
「ほい。」
「っ!?」
銃口が外へ逸らされる
発砲
【ダァンッ!!】
弾丸は遥か横へ飛んでいった
同時に、
おっさんの拳がネルの脇腹へ潜り込む
【ゴッ!!】
「ぐっ――!」
ネルが数歩滑る
だが
止まらない
むしろその目はさらに輝いていた
「ははははっ!!!」
完全に獲物を見つけた猛獣だった
「やっぱつえぇなテメェ!!」
「いやぁ、元気な子やなぁ。」
おっさんは困ったように笑っている
本当に、
軽く遊んでいるみたいだった
「・・・え。」
その時だった
ユズが小さく声を漏らす
じっと
瞬きもせず、
二人の動きを目で追っている
「ユズちゃん・・・?」
「見えてるの・・・?」
ミドリが恐る恐る尋ねる
普通ならもう、
残像しか見えない速度だった
だがユズだけは違った
「・・・うん。」
ユズが小さく頷く
「アンラさん・・・全部、先に動いてる。」
「え?」
「ネルさんが撃つ前に・・・
銃口が来る場所に、もう居ない。」
「・・・」
先生が僅かに目を細めた
ユズはさらに続ける
「あと・・・
ネルさんが踏み込む瞬間、ちょっとだけ足に力を入れるから・・・
アンラさん、それ見て動いてる。」
「そ、そんなの分かるの!?」
モモイが素っ頓狂な声を上げる
ユズは少しだけ困ったように視線を逸らした
「・・・うん、見える。」
その間にも、
戦闘は続いていた
ネルの蹴りが飛ぶ
おっさんが身体を沈める
蹴りが空を切る
そのまま懐へ潜り込む
「またっ――!?」
ネルが咄嗟に銃を向ける
だが遅い
おっさんの手が、
銃を持つ腕ごと外へ流した
【ガッ!!】
「っ!?」
次の瞬間
【ドォッ!!】
短い打撃
ほとんど振ってすらいない拳
なのにネルの身体が浮く
「かはっ――!」
数メートル吹き飛び、
石畳を滑った
「ネル先輩!?」
ようやく追いついてきたアカネ達が叫ぶ
だが
ネルは笑っていた
口元から血を流しながら、
心底楽しそうに
「っはは・・・!」
その目がギラつく
「最高じゃねぇかよ・・・!!」
石畳を蹴り砕きながら、
ネルが再び突っ込む
【ドンッ!!】
今度は更に速い
空気が悲鳴を上げる
「また消えた!?」
モモイが叫ぶ
だがユズだけは、
細く息を呑みながらその動きを追っていた
「・・・違う。」
「え?」
「速くなってるんじゃない・・・動きが、どんどん鋭くなってる。」
ネルの身体捌き
踏み込み
重心移動
戦えば戦うほど、
洗練されていく
まるで戦闘そのものを楽しみながら、
相手へ食らいつく獣
「っらァ!!」
【ダァン!!】
至近距離射撃
だが
「はいはい。」
おっさんがネルの腕の内側へ潜り込む
銃口が外へ逸れる
【バチィッ!!】
弾丸が夜空へ消えた
「ッ!!」
そこへ膝
肘
回し蹴り
ネルが止まらない
むしろ笑っていた
「どうしたどうしたァ!!
まだ余裕あんだろ!!」
「いやぁ・・・元気やなほんま。」
おっさんは相変わらず飄々としている
だが
ユズの目だけが、
僅かな変化を捉えていた
「・・・あ。」
「ユズちゃん?」
「アンラさん・・・
ちょっとだけ、足の位置変えた。」
「足?」
「・・・うん。
なんか・・・構え、みたいな。」
先生がその言葉に反応する
「"・・・っ。"」
その瞬間だった
ネルがさらに一歩踏み込む
完全なクロスレンジ
拳も肘も蹴りも、
全て叩き込める距離
だが
アンラは、さらにその内側へ入った
「――っ!?」
ネルの目が見開かれる
近すぎる
近接戦闘を得意とするネルですら、
一瞬理解が遅れるほどの距離
拳が振れない
脚が畳めない
銃口も向けられない
完全に、懐の中心へ潜り込まれていた
「な――」
その時
タワー側から慌ただしい声が響いた
「ちょっ、ちょっと何なのよこの騒ぎはぁぁぁ!?」
ユウカだった
警報と爆発音を聞きつけ、
タワーから飛び出してきたのだ
そしてちょうどその瞬間
アンラが左手をネルの胸元へ添える
まるで軽く触れただけ
力みもない
踏み込みも小さい
だが
ユズだけが見た
アンラの全身が、
一瞬だけ静かに連動したのを
地面
腰
肩
肘
手首
全てが寸分違わず噛み合う
そして
アンラが、
凪いだ水面みたいに平坦な声で呟いた
「――
次の瞬間
【ッッッガァァァァァァァァン!!!!】
空気が爆ぜた
「――ぇ?」
ユウカの声が止まる
ネルの身体が、
消えたように見えた
違う
吹き飛んだのだ
凄まじい速度で
一直線に
ミレニアムタワーへ向かって
【バァァァァァァン!!!!】
遥か後方
タワー外壁へネルが激突する
衝撃で窓ガラスが連鎖的に砕け散った
【ガシャァァァァン!!】
「「「「・・・・・・」」」」
誰も言葉を失っていた
余りにも、異常だった
あれだけ暴れていたネルが
ただ一撃
それも、
殴ったようにすら見えない一撃で、
タワーまで吹き飛ばされたのだ
「・・・・・・は?」
ユウカが呆然と呟く
「いやいやいやいやいや!?何今の!?」
モモイが絶叫する
ミドリも完全に硬直していた
「い、今・・・触っただけじゃ・・・」
ユズだけが、
じっとアンラの左手を見ている
「・・・束ねて、ぶつけた・・・?」
小さく漏れた呟き
先生が僅かに視線を向けた
ユズは自信なさげに続ける
「でも・・・なんか、外に逃がした・・・みたいな。」
アンラが肩を回す
「ホームラン!」
「いやぁ、危ない危ない。今のちょっとでも加減間違えとったらミンチやったわ。」
【ゴッ!!】
「"何生徒にとんでもない物叩き込んでるんですか!!!"」
珍しく先生が手を上げていた
「ネル先輩ッ!!」
【ダッ!!】
おっさんの攻撃の余波でまだ空気が震えている中、
アカネ達が一斉に駆け出した
「ちょっと、待ってください!!
あんな勢いで壁に突っ込んだんですよ!?」
「あははは!!、リーダーお星さまになっちゃった!!」
「アスナ先輩は縁起でもない事言わないでください!」
「医療キットを準備します。」
「カリン!担架!担架もです!」
普段冷静なC&Cが、
珍しく完全に取り乱していた
それだけ今の一撃が異常だった
タワー側へ全力で走っていくC&Cの背中を見送りながら、
モモイがぽつりと呟く
「・・・あれ、生きてるんだよね?」
「動けないだろうけど、多分元気だと思うでー。」
アンラがけろっと答える
「ちゃんと中で炸裂させる力を全部飛距離に変えたし。」
「いや意味分かんないんだけど!?」
「"アンラさん、あの技今後生徒には禁止で。"」
先生が即座におっさんに言い渡した
その横で、
ユウカだけは青い顔でアンラを見ていた
「・・・・・・」
「ん?どしたユウカちゃん。」
「どした、じゃありません!!
説明してください!何なんですか今の!?」
「えーっとやな。」
アンラが指を折る
「まずゲーム開発部がゲーム公開して、皆でわちゃわちゃコメント見とったやろ?」
「はい。」
「そしたら急に迫撃砲飛んできた。」
「はい。」
「ほんで避難した。」
「はい。」
「そしたらC&Cのリーダーの子が急に殴りかかってきた。」
「はい。」
「だからちょっとお仕置きした。」
「全然ちょっとじゃないんですけど!?」
ユウカのツッコミが夜の広場へ響く
だが次の瞬間
「・・・待ってください。」
ユウカの表情が止まった
「迫撃砲・・・?」
「せや。」
「C&Cが・・・?」
「せやで。」
「しかもネル先輩、本人が先制攻撃を?」
「おぅ。」
「・・・・・・」
ユウカの顔色が、
すぅっと変わっていく
青い
凄く青い
先生がその変化を静かに見ていた
ミレニアムの生徒会――セミナーの人間なら、
当然知っている
最近のアビドスが、
どれだけ危険視されているか
連邦生徒会長失踪後
各自治区が荒れた中、
アビドスだけが異様なほど安定していた事
その裏に居た、
正体不明の「アビドス治安維持部隊」
少人数
各個人の異常な戦闘能力
更には、カイザーPMC壊滅事件
しかも報告に上がる特徴はいつも同じ
――砂色のローブ
――腕章
そして
目の前の男は、
つい先日の事情聴取で発覚した、アビドス生徒会側の業務提携者であり、
砂色のローブを着た男
つまり
「っ・・・・・・」
ユウカの胃が痛くなってきた
「え、えっと・・・その・・・」
声が微妙に震える
「つまりC&Cが・・・その・・・
アビドス側の関係者へ先制砲撃を行って、なおかつ・・・」
「トップが直接殴りかかったな。」
「やめてください整理しないでください頭痛くなるので!!」
ユウカが頭を抱えた
「しかもタワー壊れてるしぃぃぃ・・・!!」
【ガシャァァン・・・】
遠くでまだ窓ガラスが落ちる音がした
ユウカの顔が死ぬ
「修繕費・・・修繕費が・・・」
「まぁまぁ。」
アンラがぽん、とユウカの肩を叩く
「落とし所ならあるやろ。」
「・・・・・・へ?」
「前のタワー破壊ん時の修繕費、俺宛に請求来とったやろ?」
「あ、はい・・・」
「今回の件でチャラにしようや。」
「・・・え?」
「今回どう考えてもそっち側からの襲撃やん?」
「そ、それは・・・はい・・・」
「しかもC&Cが迫撃砲撃ち込んで、リーダーが直接襲撃してきた。」
「うっ・・・」
「せやから今回の件と前の修繕費、対消滅って事でどうや?」
「・・・・・・」
ユウカが固まる
正直
破格だった
ミレニアム側からすれば、
今回かなり不味い
下手をすれば、
「ミレニアムがアビドス側へ武力攻撃を行った」
という形で他校に話が広がる
しかも相手は、
今キヴォトス中が警戒している極秘戦力を保有するアビドス
なのに
アンラはその件を大事にせず、
修繕費相殺だけで済ませると言っている
つまりこれは
完全に貸しだった
「・・・・・・」
ユウカが頭を抱える
「な、なんでそんな適当なんですかあなたはぁ・・・」
「いやぁ、
「迫撃砲撃ち込んでる時点で喧嘩じゃないんですよ!!」
「おっさんアビドスで、すでに一回ぶっこまれてるから同じ同じ。」
「アビドス怖い・・・」
先生が小さく吹き出した
その直後
遠くのタワー側から、
「ネル先輩ーーーッ!!!」
という悲鳴みたいな声が響き、
ユウカはさらに頭を抱えた
【ミレニアムタワー外壁】
【バラバラ・・・】
砕けた窓ガラスが落ちる
外壁には、何かが叩きつけられたようにひび割れた跡
その中心で
「ネル先輩ーーーッ!!!」
アカネ達が駆け寄る
「だ、大丈夫ですか!?」
「医療キットを準備します!」
「ネル先輩、返事を――」
「っは・・・」
ネルが笑った
「・・・え?」
口元から血を流しながら、
ネルがゆっくり顔を上げる
その目は死んでいない
むしろ
今まで以上に爛々としていた
「ははっ・・・!なんだよ今の・・・!」
壁に背中をめり込ませたまま、
ネルが肩を震わせる
「近すぎて・・・何されたか、ほとんど分かんなかったぞ・・・!」
「ネル先輩、安静にしてください!」
「っるせぇ!」
ネルが笑う
「最高じゃねぇか・・・!!」
【ミシ・・・】
背後の外壁にさらにひびが走る
それを見て、
アスナは能天気な感想を抱き
「あは、リーダーすっごく楽しそう!!」
「げ、元気すぎませんかこの人・・・!?」
カリンが若干引いた声を漏らした
「っはは・・・マジで居たんだなぁ・・・ああいう化け物・・・!」
ネルは口元を吊り上げたまま、
タワー前広場の方を睨む
獲物を見つけた獣みたいな目だった
さて!とうとう出てきましたチビメイド先輩とアンラの関係!
実際アンラはネルと会ったという認識は無いです。
ネルが任務で、賞金首の所にご奉仕と言う名の制圧に向かった際、
おっさんの賞金首狩りとブッキングして、偶々おっさんの戦闘する所を見て、
その速さ、その強さに1年でペーペーだったネルが憧れ、そして戦闘方法を真似て、
原作と似たような戦い方+より近接、クロスレンジに傾倒する感じになりました。
そして、おっさんとネルの戦闘ですが、これは根本技量差ですね。
今回はおっさんの戦闘中、気付いた方が居られるかわかりませんが、ずっとおっさんの一人称がおっさんのままでした。唯一アンラになったのは天干隻ツを放った所だけですね。
まぁネルが一番得意なレンジというより、おっさんの戦闘を見て憧れ真似た結果
一番おっさんが得意なレンジでネルが戦う事になってるんですよ。
それがこの結果になります。
おっさんプチ情報
前書きに書いてある文章。
献給高座于天之吾師
【天干一ツ】
あれは以前言っていた、弟子から送られた言葉です。
その技と一緒に受け取りました。
「天干一ツ」、誤字ではないです。
正式名所はコレです。ですが、弟子は人の身で本気のアンラに手傷をこれで負わせました。
バケモノたる自身に人の身で届いた。コレに歓喜し、この技をアンラは宝物として習得しました。
ですが、人の身で撃つ事にその意味がある「天干一ツ」を化物が撃ったら、それはもう別の物、ただの贋作に成り下がります。そういう精神性もあり、アンラは自分が放つソレを「天干隻ツ」と不完全という意味の「隻」と名付けました。
天干一ツ
「天干」とは五行の陰陽の事を言い、又「天の法則(天道)」や「神の領域」を意味します。
五行の陰陽を片腕に収束させ、天の、神の領域の者に届かせる。
そういった技です。
これを人が到達し、さらには放って見せました。