おっさんキヴォトスに行く   作:無い頭のおっさん

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ばにたすばにたす


時計仕掛けの花のパヴァーヌ編、第一章 後日談
おっさんモモイに強請られる


【ミレニアム・練習場】

 

放課後

 

人気の少ない練習場

 

【ダダダダダッ!!】

 

乾いた銃声が響く

 

少し離れた位置では、

モモイがシューティングレンジに向かって連射していた

 

「ふっ、ふっ、ふっ・・・!」

 

最後の一発を撃ち切り、

モモイが大きく息を吐く

 

【カチッ】

 

弾切れ

 

ターゲットを見る

 

命中率は悪くない

 

だが―――

 

「・・・んー。」

 

モモイは微妙そうな顔をした

 

「やっぱなんか違うんだよなぁ・・・」

 

「そら的当てしとるだけやからな。」

 

背後から声

 

「うわっ!?」

 

振り返ると、

そこには缶コーヒーを片手にしたおっさんが居た

 

「アンラさん!?」

 

「呼び出したんはモモイやろ。」

 

「あ、そうだった。」

 

モモイはてへっと笑う

 

おっさんは呆れたようにため息を吐いた

 

「ほんで?」

 

「戦闘教えて欲しいって?」

 

「急にどうしたんや。」

 

「うっ。」

 

モモイが一瞬だけ詰まる

 

そして視線を逸らした

 

「・・・この前のC&Cの時。」

 

空気が少し変わる

 

「アリスが居なかったら私もミドリも捕まってた・・・」

 

「ユズも自分に出来る事を全部頑張ってた・・・」

 

「アンラさんも、先生も。」

 

「でも私は、全然ダメだった。」

 

おっさんは黙って聞いている。

 

モモイは続けた

 

「撃っててもアスナ先輩には当たらなかったし・・・。

それなのに、ネル先輩みたいに素早く近づかれたら終わりだし。」

 

「だから―――」

 

モモイが顔を上げる

 

「戦い方を・・・近接戦闘を教えてください!」

 

数秒の沈黙

 

おっさんは缶コーヒーを飲みながら言った

 

「嫌。」

 

「なんでぇ!?」

 

「じゃまくさい」

 

「ひどっ!?」

 

「あとモモイ、多分ノリで来とるやろ。」

 

「うっ・・・」

 

図星だった

 

「いやでもさ!

新しい武器とか持ったら絶対強くなれそうじゃん!?」

 

「ゲーム感覚をやめろ。」

 

「えぇー」

 

モモイが露骨に不満そうな顔をする

 

おっさんは額を押さえた

 

「モモイ、お前なぁ・・・」

 

「接近戦ってのは、カッコいい必殺技撃って終わりやないんやぞ。」

 

「泥臭いし、痛いし、怖い」

 

「真正面から相手と殺し合うんや」

 

モモイが少しだけ黙る

 

だが

 

「・・・それでも」

 

その目は逸れなかった

 

「ミドリを守りたいし・・・」

 

おっさんの目が、ほんの少しだけ細くなる。

 

「・・・はぁ。」

 

深いため息

 

「先生と同じタイプ増やすなや・・・」

 

「?」

 

「なんでもない。」

 

 

「はぁ・・・出来れば見せたなかったんやけどなぁ。」

 

おっさんは深いため息を吐く

 

それから、何も無い空間へ手を伸ばした

 

「・・・?」

 

モモイが目を瞬かせる

 

次の瞬間

 

【ズ・・・ッ】

 

何も無い空間へ、

おっさんが腕を突っ込む

 

「うわっ!?!?」

 

モモイが素っ頓狂な声を上げた

 

「な、なにそれ!?」

 

「虚空。」

 

おっさんは平然と答える

 

「倉庫みたいなもんや。」

 

「いや意味わかんないんだけど!?」

 

そのまま、

おっさんは虚空から武器を取り出していく

 

ナイフ

 

警棒

 

短剣

 

ワイヤー

 

小型斧

 

折り畳み警棒

 

【ガシャン、ガシャン】

 

次々と床へ並べられていく武器群

 

モモイの目が輝いた

 

「うわぁっ!!」

 

「なんかゲームの武器屋みたい!!」

 

「お前ほんまそういう反応をやな・・・」

 

おっさんが呆れるが

 

モモイは気にせず武器を見回した

 

「んー・・・」

 

ナイフを持つ

 

「これはなんか違う。」

 

警棒を見る

 

「これも違う。」

 

ワイヤー

 

「うわ難しそう。」

 

小型斧

 

「絶対筋力いるじゃん。」

 

「注文多いなぁ。」

 

「だってなんかこう・・・もっと強キャラっぽいの無い?」

 

「ゲーム脳やめろ。」

 

モモイはそのまま視線を滑らせる

 

そして

 

槍の所で止まった

 

「・・・あ。」

 

数本並んだ槍

 

長さも形状も様々

 

モモイは一本持ち上げる

 

軽く振る

 

「おー・・・。」

 

だが

 

すぐ首を傾げた

 

「・・・んー。」

 

「なんや。」

 

「なんか違う。」

 

おっさんの眉が僅かに動く

 

モモイは槍を見ながら、

言葉を探す

 

「もっとこう・・・

刃先の形状というか。」

 

「形状?」

 

「なんかトゲトゲしてて、強そうな感じの!」

 

「なんやその雑な説明。」

 

「いやでも絶対あるって!」

 

おっさんの顔から、

すっと表情が消えた

 

モモイは気づかない

 

「こう、槍なんだけど・・・もっと違う感じの―――」

 

「無い」

 

即答だった

 

「えー。」

 

「無いもんは無い。」

 

おっさんは露骨に話を切ろうとする

 

だがモモイは食い下がった

 

「えー絶対なんか隠してる!」

 

「隠しとらん。」

 

「いや今ちょっと間あったじゃん!」

 

「気のせいや。」

 

「怪しい!!」

 

モモイがじーっと見上げる

 

おっさんは数秒黙った

 

そして

 

もの凄く嫌そうな顔をする

 

「・・・」

 

深いため息

 

それから、

ゆっくりと虚空へ手を伸ばした

 

動きが、

今までより明らかに重い

 

モモイが首を傾げる

 

「?」

 

虚空の奥を探る

 

金属音

 

ジャラ、と何かが擦れる音

 

そして

 

【スッ・・・】

 

引き抜かれたのは、

折り畳まれた一本の武器だった

 

槍、ではない

 

だが似ている

 

刃は鋭く、

返しの付いた異質な形状

 

まるで獣の牙

 

「・・・銛?」

 

モモイが呟く

 

おっさんは答えない

 

表情だけが、

妙に硬かった

 

「元々は水中用や。」

 

低い声

 

「投げても良し、突いても良し、引っ掛けても良し。」

 

【ガキンッ】

 

軽く振る

 

折り畳まれていた柄が繋がり展開され、

武器が長く伸びる

 

モモイの目が一気に輝いた

 

「うわっ、なにこれ。」

「めっちゃカッコいい!」

 

モモイが目を輝かせながら銛を受け取る

 

【ジャラ・・・】

 

柄の末端――石突側には細い鎖が繋がっていた

 

「へぇー・・・。

これ伸びるだけじゃなくて鎖も付いてるんだ。」

 

「水中で手放した時用や。」

 

おっさんが短く答える。

 

「まぁ・・・本来は魚逃がさん為のもんやな。」

 

モモイは銛を軽く振る

 

空気を裂く音

 

「おー・・・。」

 

妙に、手に馴染む

 

初めて触ったはずなのに、

重さの位置がわかる

 

どこを持てば振りやすいかも、

なんとなく理解できた

 

「・・・?」

 

モモイが少しだけ首を傾げる

 

おっさんはそれを見ていた

 

(馴染みすぎやろ・・・)

 

嫌な汗が背中を伝う

 

だが、顔には出さない

 

「ほら。」

 

おっさんが練習用の木製の的を虚空から取り出す

 

「まず基本や。」

 

おっさんはモモイへ視線を向ける

 

「槍と同じやと思え。」

 

「おっけー!」

 

モモイが銛を構える

 

だが構え方は完全に自己流だった

 

「脇締めろ。」

 

「へい。」

 

「前に出し過ぎや

突かれた時、腕ごと持ってかれる。」

 

「うわ怖。」

 

おっさんはモモイの持ち方を軽く修正する

 

「槍は距離の武器や

近づかれる前に止める。」

 

そう言うと、

おっさんは近くの木製の的を指差した

 

「まず突き。」

 

「せいっ!」

 

【ドスッ!!】

 

銛の穂先が木製の的へ突き刺さる

 

「お、入った!」

 

「まぁ悪くない。」

 

「やった!」

 

「ただ深く刺し過ぎや。」

 

「へ?」

 

「引き抜けんくなる。」

 

モモイが慌てて引っ張る

 

【グググ・・・ッ】

 

「あ、ほんとだ抜けない!?」

 

「せやから【当てる】感覚で使え。」

 

おっさんは片手で銛を軽く引き抜いた

 

【ズボッ】

 

「次、薙ぎ。」

 

横へ払う動き

 

長柄武器特有の遠心力

 

【ブォンッ!!】

 

空気が鳴る

 

「うわっ、かっこいい。」

 

「見た目で判断すんな。」

 

その後も、

石突での打撃、

柄を使った受け流し、

距離の取り方を一通り教えていく

 

そして

 

「あと折り畳み。」

 

おっさんが手を差し出した

 

「一回貸せ。」

 

「ん。」

 

モモイから銛を受け取る

 

【ガコン】

 

銛を短く折り畳む

 

途端にシルエットが変わった

 

まるで大型ナイフ

 

「狭い場所用。

接近された時の最終手段。」

 

おっさんはそのまま数歩踏み込む

 

【シュッ】

 

最小動作の刺突

 

続けて逆手へ持ち替え、

喉元へ添えるような動き

 

速い

 

モモイの目が丸くなる

 

「うわ・・・。」

 

「長物は近づかれたら終わりや。」

 

そう言って、

おっさんは銛をモモイへ投げ渡した

 

「だからこうやって切り替える。」

 

「なるほど・・・。」

 

モモイは折り畳み状態の銛を握る

 

数秒

 

何故か、

そのまま自然に動いた

 

【ガシュッ!!】

 

銛が木製の的へ突き刺さる

 

同時

 

モモイの左手が、

石突側についていた鎖を掴んでいた

 

「・・・あれ?」

 

おっさんの眉が動く

 

モモイ自身も困惑した顔をする

 

だが手は止まらない

 

【ジャラッ!!】

 

鎖を巻き取り、

的との距離を固定

 

逃がさないように引き寄せる

 

そして

 

右手で銃を一瞬の内に抜き放った

 

【ダダダダダッ!!】

 

至近距離連射

 

頭部

 

胸部

 

急所だけを正確に撃ち抜く

 

沈黙

 

「・・・え?」

 

最初に声を漏らしたのはモモイだった

 

自分の手を見る

 

「な、なんで今こんな動き・・・」

 

おっさんは答えない

 

表情だけが消えていた

 

モモイは困惑したまま続ける

 

「いやなんか・・・

ここ刺したら逃げられないなーって・・・」

 

無意識だった

 

さらに

 

モモイの足が動く

 

鎖を木製の的に絡める

 

引く

 

的の体勢を崩す

 

そこへ

 

【ドスッ!!】

 

銛の追撃

 

「―――っ。」

 

おっさんが完全に黙る

 

モモイもそこでようやく我に返った

 

「えっ・・・。」

 

自分のやった事を理解し、

顔色が変わる

 

「・・・なにこれ。」

 

その使い方は、

訓練じゃない

 

完全に

 

【逃がさず殺す】為の動きだった

 

静かな沈黙

 

やがておっさんが低く口を開く

 

「・・・その使い方。」

 

「確かに強い。」

 

「銃と合わせれば滅茶苦茶厄介や。」

 

モモイは何も言えない

 

「でもな。」

 

おっさんの声が少し重くなる

 

「それは【確実に仕留める】為の使い方や。」

 

「逃がさん為の武器運用や。」

 

モモイの顔が青ざめる

 

自分でも、

なんとなくわかってしまった

 

あの動きは

 

誰かを制圧する動きじゃない

 

殺す為の動きだ

 

「・・・私。」

 

「なんでこんなの・・・。」

 

おっさんは少しだけ目を伏せた

 

 

そして

 

「モモイが絶対守りたい。」

 

「そう思った時以外は―――」

 

「多分、その使い方はせんほうがええ。」

 

モモイが黙る

 

ミドリの顔が浮かんでいた

 

おっさんは続ける

 

「けどな。」

 

「いざって時に使えませんでした、じゃ意味ない。」

 

そう言うと、

おっさんはゆっくり歩きながら距離を取る

 

自分の木製の槍も持ち出す

 

「その使い方が通じるように。」

 

「相手になったる。」

 

モモイは銛を握ったまま、固まっていた

 

自分の手

 

 

刺さったままの木製の的

 

その全部が妙に現実感を持って見える

 

だが

 

「・・・ほれ、来い。」

 

おっさんの声

 

数メートル先

 

木製槍を肩に担ぎながら、おっさんが立っている

 

「え、いや・・・模擬戦って言っても。」

 

「流石にアンラさん相手は―――」

 

「大丈夫や。」

 

おっさんは平然としていた

 

「死なん程度には手加減したる。」

 

「怖いこと言わないで!?」

 

だが次の瞬間

 

【ドンッ!!】

 

地面を蹴る音

 

「うわっ!?」

 

視界が一瞬で迫る

 

速い

 

ネル先輩とも違う

 

真っ直ぐ

 

無駄が無い

 

【ガギィンッ!!】

 

咄嗟に銛を構える

 

木槍と銛がぶつかり、火花の代わりに鈍い衝撃が走った

 

「っ、お、おもっ・・・!?」

 

腕が痺れる

 

おっさんはそのまま押し込まない

 

すぐに引く

 

距離を取る

 

「今のはギリや。」

 

「真正面から受けんな。」

 

「いや急に来るじゃん!?」

 

「敵は待ってくれへん。」

 

再び踏み込む

 

今度は横薙ぎ

 

【ブォンッ!!】

 

「っ!」

 

モモイは飛び退く

 

風圧だけで頬が痛い

 

(やばっ・・・!)

 

重い

 

長い

 

速い

 

しかもおっさんの槍は、妙に間合いが読めない

 

踏み込みと同時に急に届く

 

「距離見ろ。」

 

【ガッ!!】

 

石突

 

モモイの脇腹へ突き込まれる

 

「ぐえっ!?」

 

吹き飛び、

数メートル滑った

 

「いったぁ・・・!?」

 

「今のは殺してへん。」

 

おっさんが木槍を回す

 

「でも、本物なら内臓潰れてる。」

 

モモイは顔をしかめながら立ち上がる

 

悔しい・・・何も出来てない

 

「・・・っ。」

 

銛を握り直す

 

なら

 

【距離を取らせなければいい】

 

その瞬間だった

 

モモイの身体が自然に動いた

 

【ダッ!!】

 

自分から前へ出る

 

「お?」

 

おっさんの眉が僅かに動く

 

銛を突き出す

普通の槍の突き―――

だが途中で握りを変えた

 

【ガシュッ!!】

 

銛がおっさんの槍へ絡みつく

返し付きの穂先が木槍を噛む

 

同時

 

左手が鎖を握っていた

 

【ジャラッ!!】

 

引く

 

「―――。」

 

おっさんの槍の軌道が一瞬止まる

 

そこへ

 

【ダダダダダッ!!】

 

至近距離射撃

おっさんの目が細くなる

 

【バチバチバチッ!!】

 

槍の拘束を解き弾丸を木槍で逸らす

異常な技量

 

だが、

モモイは止まらない

銃撃しながら前へ出る

 

鎖を巻く

 

逃がさない

 

「っ・・・!」

 

アンラの表情が変わる

 

一瞬だけ

 

本当に一瞬だけ

 

既視感を見るような顔

 

その隙

 

モモイの身体がさらに沈む

 

低姿勢

 

鎖を足へ絡める

 

引く

 

体勢崩し

 

そこへ銛の追撃

 

【殺す】

 

【ドスッ!!】

 

おっさんのローブを掠めた

 

「―――っ。」

 

空気が変わる

 

次の瞬間

 

【ガキィンッ!!】

 

木槍が銛を弾き上げる

 

「うわっ!?」

 

握力が吹き飛ぶ

 

モモイの銛が宙を舞った

 

そのまま首元へ木槍の切っ先

 

停止

 

沈黙

 

「・・・はい、死んだ。」

 

アンラがぼそっと言う

 

モモイは息を切らしていた

 

「はぁ・・・っ、はぁ・・・っ。」

 

心臓がうるさい

 

なのに

 

不思議と怖くなかった

 

むしろ

 

「・・・今の、ちょっと通ったよね?」

 

おっさんは答えない

 

数秒黙ってから

 

「普通初見でやる動きやない。」

 

低い声

 

モモイが少し青ざめる

 

「や、やっぱ変・・・?」

 

「変や。」

 

即答

 

「特に鎖。」

 

おっさんは落ちた銛を拾う

 

【ジャラ・・・】

 

「普通は補助や。」

 

「手放さん為のもん。」

 

「モモイみたいに拘束具みたいに使う奴は―――」

 

そこで言葉が止まる

 

モモイが不安そうに見る

 

おっさんは小さく舌打ちした

 

「・・・いや、なんでもない。」

 

誤魔化した

だが表情は重いままだった

 

先生から聞いた未来

 

 

 

逃がさず撃ち殺す戦い方

 

その断片が、今目の前で再現されている

 

まだ未熟

 

粗い

 

けれど確かに繋がっている

 

モモイはそんな事知らないまま、

銛を受け取る

 

「・・・でも。」

 

少しだけ俯いて

 

「強くは、なれそう。」

 

おっさんはその顔を見る

そこにあるのは殺意じゃない

 

ただ、守りたいという感情

だからこそ余計に、厄介だった

 

「・・・まぁ。」

 

おっさんは頭を掻く

 

「せめて制御出来るようにはしたる。」

 

「ほんと!?」

 

ぱっと顔を上げるモモイ

さっきまでの空気が嘘みたいだった

 

おっさんは苦虫を噛み潰した顔をする

 

「ただし基礎からや。」

 

「えー。」

 

「モモイ、お前さん今、感覚だけで振っとるやろ。」

 

「バレた!?」

 

「バレるわ。」

 

おっさんは木槍を肩へ担ぎ直す

 

「まず足運び。」

 

「次に間合い。」

 

「その後に―――殺し方や。」

 

「最後なんか物騒じゃない!?」

 

「武器やぞ。」

 

真顔だった

モモイは少しだけ黙る

 

おっさんは銛を肩へ担ぎながら続けた

 

「勘違いしたらアカン。」

 

「武器ってのは、人を傷付ける為の道具や。」

 

「綺麗事だけ覚えても意味無い。」

 

モモイが少し眉を下げる

 

「でも・・・殺し方なんて覚えたくないよ。」

 

その言葉に、

おっさんは少しだけ視線を細めた

 

「せやろな。」

 

静かな声

 

「けどな。」

 

おっさんは木槍を軽く回す

 

【ブォン・・・】

 

「壊し方知らん奴は。」

 

「壊さんように扱う事も出来へん。」

 

モモイがきょとんとする

 

おっさんは続けた

 

「例えばさっきのモモイ」

 

「鎖で相手固定して、至近距離で銃撃ったやろ。」

 

「うっ。」

 

「アレ、どこ撃ったら相手が死ぬか。」

 

「無意識で理解しとる動きや。」

 

モモイの顔が少し青くなる。

 

「・・・。」

 

「でも逆に言えば。」

 

おっさんはモモイを見る

 

「どこまでなら死なんかも、理解せなアカン。」

 

「急所外すんか。」

 

「動き止めるだけにするんか。」

 

「腕一本潰すだけで終わらせるんか。」

 

「加減ってのは、【壊れるライン】知っとらんと出来へん。」

 

静かな言葉だった

 

だが重い

モモイは銛を見る

 

返し付きの刃

 

 

自分の手

 

「・・・。」

 

おっさんは少しだけ頭を掻いた

 

「まぁ、モモイの場合。」

 

「守りたいから強くなりたいんやろ。」

 

「だったら尚更や。」

 

「勢いだけで振るったら、取り返しつかん事になる。」

 

モモイはゆっくり頷いた

 

「・・・うん。」

 

おっさんはそれを見て、

小さく息を吐く

 

「せやから教える。」

 

「殺す為やなく。」

 

「殺さんで止める為にもな。」

 

モモイは銛を握り直した。

 

さっきまでの軽いテンションは少し消えている

 

代わりに、

目だけが真剣だった

 

おっさんはそれを見て、木槍を軽く肩へ担ぐ

 

「・・・ほな続きや。」

 

「次は?」

 

「足。」

 

「地味!!」

 

「一番大事や。」

 

即答だった

おっさんは地面を軽く叩く

 

【コン】

 

「モモイのは、今全部【上半身だけ】で戦っとる。」

 

「え、そうなの?」

 

「せや。」

 

おっさんは木槍を構える

 

「槍も銛も、腕で振る武器ちゃう。」

 

「腰と足で動かす。」

 

そう言うと、

おっさんが一歩踏み込む

 

静かだった

なのに

 

【ゴッ!!】

 

次の瞬間、木槍が爆発みたいな速度で突き出される

 

「うわっ!?」

 

モモイが慌てて避ける

頬を風圧が掠めた

 

「今の腕じゃない。」

 

おっさんは槍を戻す

 

「踏み込み。」

 

「後ろ足。」

 

「腰。」

 

「全部繋げて前へ流し込む。」

 

モモイがじっと見る

 

「・・・もう一回。」

 

「お。」

 

おっさんは少しだけ目を細めた

 

今度はゆっくり動く

 

足、腰、肩、腕、槍

 

一本の線みたいに繋がっていた

 

「武器だけ速く動かそうとするな。」

 

「身体ごと前へ出す。」

 

「へぇー・・・。」

 

モモイも真似する

 

踏み込み

 

突き

 

【ドスッ】

 

木製の的へ刺さる

 

「・・・お?」

 

さっきより深い

しかも軽かった

 

「おぉ。」

 

モモイの顔が明るくなる

 

「なんか今めっちゃ自然だった!」

 

「せやろ。」

 

おっさんは頷く

 

「力任せより、そっちの方が強い。」

 

「武術って、大体そういうもんや。」

 

モモイは何度か繰り返す

 

突き

 

薙ぎ

 

石突

 

少しずつ動きが安定していく

 

だが

 

 

 

数分後の模擬戦

 

【ダッ!!】

 

モモイが急に踏み込んだ

 

低い姿勢

 

滑るような接近

 

「―――。」

 

おっさんの目が細くなる

 

銛が真っ直ぐ来る

 

途中で軌道変更

 

【ガシュッ!!】

 

槍へ返しを引っ掛けた

 

そのまま

 

【ジャラッ!!】

 

鎖を巻く

 

引く

 

「またそれか。」

 

おっさんが呟く

 

だが次の瞬間

 

モモイの身体がさらに潜った

 

銃を抜く

 

――撃つ前

 

【ゴッ!!】

 

石突がモモイの銃口を跳ね上げた

 

「わっ!?」

 

銃弾が天井へ逸れる

 

同時

 

【ガシッ】

 

おっさんの足が鎖を踏んだ

 

「っ!?」

 

モモイが引けない

 

「鎖使うなら、自分も縛られる覚悟せぇ。」

 

「うぐぐ・・・。」

 

「便利な道具ほど、使い手も危ない。」

 

おっさんはそのまま槍を首元へ突き付ける

 

停止

 

「今ので二回死んどる。」

 

「うぇ・・・。」

 

モモイがぐったりする

 

だが

 

悔しそうだった

 

おっさんは少し黙る

 

それから、

鎖を足から退かした

 

「・・・でもまぁ。」

 

「発想は悪くない。」

 

「ほんと?」

 

「相手の間合い潰すのは正解や。」

 

「銃持ち相手やと特にな。」

 

モモイの目が少し輝く

 

おっさんは続ける

 

「せやけど、モモイはまだ突っ込み過ぎや。」

 

「殺せると思った瞬間、前に出過ぎる。」

 

その言葉に、

モモイが少し止まる

 

おっさんは木槍を肩へ担いだまま言う

 

「武器持っとる時ほど冷静になれ。」

 

「頭熱くした方が負ける。」

 

「・・・。」

 

モモイは銛を見る

 

さっきの動き

 

自分でも驚くくらい自然だった

 

逃がさない

 

仕留める

 

そんな感覚

 

おっさんはその視線を見ていた

 

「怖いか。」

 

「・・・ちょっと。」

 

正直な答え

 

おっさんは鼻で笑う

 

「ならまだ大丈夫や。」

 

「え?」

 

「本当に危ない奴は、自分の殺意に酔う。」

 

「モモイはまだビビっとる。」

 

「だったら制御出来る。」

 

モモイは少しだけ黙った

 

それから

 

「・・・アンラさんって。」

 

「ん?」

 

「そういうの、いっぱい見てきた感じする。」

 

数秒

 

沈黙

 

おっさんは視線を逸らした

 

「まぁな。」

 

短い返事

 

それ以上は言わない

 

空気が少しだけ重くなる

 

だが次の瞬間

 

【ポン】

 

おっさんがモモイの頭へ木槍を軽く当てた

 

「ほら、休憩終わり。」

 

「えっ!?」

 

「次は受け流し。」

 

「まだやるの!?」

 

「基礎からや言うたやろ。」

 

「鬼教官だこのおっさん!!」

 

「褒め言葉として受け取っとくわ。」

 

「受け取るんだ!?」

 

そんなやり取りをしながら

 

放課後の練習場に、

再び木槍と銛の音が響き始めた

 

 

 

 




ねだられるとゆすられるのダブルミーニング!

まぁ以前言っていた、おっさんが絶対に選んでほしくない武器をモモイが選ぶお話でした。
多分あの後書きを読んだ人は、ここまでの闇を感じるとは思ってなかったかもしれませんが・・・

そして、以前、テレビを撃ちぬいたモモイ。
ギャグ調で見過ごされていましたが、
あの【ホシノ】と同じくらいの速度でクイックドローを行っていました。
まぁあっこから片鱗があったんですよね。

その本質は別世界の記憶や経験が微かにだけど流入している。
俗にいうデジャブっていう奴ですね。

それにより、
銛で相手を拘束し、もう片手で銃をクイックドローし、射殺する。
その片鱗が前話で漏れ出ていた感じでした

そしてその全貌が今回のお話ですね。
モモイの在り得たかもしれない未来での戦闘方法が垣間見えています。
どれだけの憎しみと殺意があればあの戦い方に行きつくのか・・・

そして、ここから継続的にモモイはおっさんから戦闘方法を学ぶ事になります。
如何せんモモイの戦い方は、無意識の手癖で出るほどに身体に馴染まされている為、
現代のキヴォトスでその殺す為の戦い方は禁忌扱いなんですよ。
なので、完全に制御下に落とし込めるまで、銛の使用禁止の上に、
おっさんからの訓練がセットで入る事になりました。

ちなみに銛モモイの強さで言うと・・・
C&Cのアスナやネルが相手だとまだまだお話になりませんが・・・
それ以外面子だといい勝負が出来てしまうくらいの練度になってますね。
この咄嗟に出てしまう手癖の段階で。

だって、冷静に考えてください。
あのネルが一撃も入れられなかったおっさんに対して、
姿勢を崩してトドメの一撃一歩手前まで持って行ってる。
これがどれほど異常で異様な事か。

まぁ木製の槍で至近距離からの7.62mmNato弾をはじいたおっさんも同じ枠ですけど・・・

まぁとりあえず、現時点でのモモイの最終到達地点が、
対人特化型のアタッカーになる感じですね・・・
ジャンル的に言うとSRTとかと同じだけど、より殺戮に特化した特殊部隊というより、
暗殺部隊の方かな・・・

今のモモイなら現状のアリスといい勝負できると思いますよ。
ただ、おっさんから銛の使用禁止を言い渡されてるので、
そもそも皆の前で使う事すら出来ませんが。
あとモモイ自身も、自身が振るったその技術の全てが命を終わらせる事に特化しているのを気づいてるので、大切な友人たちには絶対言えないでしょうしね。
もしこれがただ、大雑把に強いとかならモモイなら調子に乗って私って才能あったんだよ!とか言う所ですけど、よりにもよってあった才能が人殺しの才能だったので・・・流石に・・・という

さて、先生の数多く経験したあり得たかもしれない未来の残滓をその身に抱えた生徒はモモイだけなのか・・・はたまた・・・
それは未来のわたしに全部放り投げて私はこの辺でサラダバー!

今回はモモイでヘビー過ぎるのでおっさんプチ情報はお休み!
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