おっさんキヴォトスに行く   作:無い頭のおっさん

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ばにばに


アリスのミレニアム探索

【天童アリス視点】

 

【ミレニアム自治区・中央エリア】

 

午後

 

ミレニアムの街は、今日も騒がしかった

空を走る配送ドローン

道路脇の大型ホログラム広告

遠くから聞こえる爆発音

どこを見ても情報量が多い

 

そんな街の歩道を――

 

てち、てち、てち

 

そんな音が鳴りそうなほど小さな足で歩いていた

 

「・・・。」

 

天童アリス

 

ゲーム開発部所属

 

現在、探索中である

 

その姿は他のミレニアム生とは少し変わっていた

 

ミレニアムの制服の上から、砂色のローブを羽織っている

 

少し大きくダボダボしていて

袖も長くあっていなかった

 

だが、アリスは妙に気に入っていた

 

ひらひらする

あと、なんだか強そうだからである

 

「現在、アリスはフィールド探索を行っています。」

 

アリスが真面目な顔で呟く

 

「未知のイベント発生率は高いと予測されます。」

 

今日はゲーム開発部の他のメンバーが忙しかった

 

モモイとミドリは次回作会議

ユズはロッカーに籠って作業中

 

なので、アリスは一人でミレニアムを冒険していた

RPGの主人公のように

 

「・・・。」

 

アリスは立ち止まる

 

自販機

 

アリスはじっと見上げた

 

【新発売!! 妖怪MAX ハイパーチャージャー】

 

「・・・強そうです。」

 

だがアリスは知っている

 

以前、モモイが似たような物を飲んで六徹しようとした結果、

途中で机に突っ伏して死んだように寝ていた

 

つまり、これは危険アイテムだ

 

「高レベル者向け装備ですね。」

 

アリスはこくりと頷く

買わない

 

賢い判断だった

 

そのまま再び歩き出す

 

てち、てち、てち

 

――その時だった

 

【ドォンッ!!!】

 

遠くで爆発音が響いた

 

「!」

 

アリスがぴたりと止まる

 

数秒考える

 

「・・・新素材開発部です。」

 

即答だった

 

ミレニアムで爆発音

 

つまり大体あそこだった

 

実際、遠くの空にはうっすら黒煙が見えている

 

「新素材開発部は今日も元気です。」

 

アリスはこくりと頷いた

 

もはや季節の風物詩みたいな認識である

 

「行ってみますか?」

 

アリスは少し考える

 

だがその前に、まず周囲の探索を継続した

 

RPGにおいて、街中探索は重要である

隠しイベント

アイテム

NPC会話

見逃してはいけない

 

アリスは近くの路地へ入る

 

細い裏道

 

表通りより静かだった

 

壁際には古い電子基板

壊れた配送ドローン

用途不明の機械部品

 

ミレニアムでは、こういう物が普通に転がっている

 

「・・・。」

 

アリスはしゃがみ込む

 

壁際に小さなカプセルが落ちていた

 

【試作品:携帯型重力補正ユニット】

 

「・・・レアアイテムです。」

 

拾う

 

軽かった

 

だが次の瞬間

 

【ブスッ】

 

「?」

 

突然、カプセルから煙が噴き出した

 

そして

 

ふわっ

 

「・・・?」

 

アリスの身体が少し浮いた

 

「・・・。」

 

「・・・浮いています。」

 

重力補正だった

 

しかも試作品なので出力が不安定だった

 

ふわふわ浮く

 

「これは新しい移動システム・・・。」

 

そのまま数秒漂う

 

だが――

 

【バチィッ!!】

 

「わ。」

 

突然装置が爆ぜた

 

重力制御解除

 

ぽすっ

 

アリスが地面へ着地する

 

「・・・失敗アイテムでした。」

 

冷静だった

 

そして近くのゴミ箱へそっと入れる

 

学習能力も高い

 

再び歩き出す

 

しばらく進むと、今度はゲームセンターが見えた

 

大型モニター

 

爆音

 

対戦台

 

ミレニアム生達が真剣な顔でゲームをしている

 

アリスは少しだけ近付く

 

画面を見る

 

【超電脳武装対戦GIGANT STRIKE X8】

 

「・・・。」

 

「コンボ火力が高いです。」

 

観戦し始めた

 

数秒後

 

【K.O.】

 

敗北した生徒が崩れ落ちる

 

「ナーフしろぉぉぉ!!!」

 

「読み負けただけだろ!!」

 

「回避不能だろあれぇ!!!」

 

阿鼻叫喚だった

 

「対人エリアは危険です。」

 

アリスは静かに離脱した

 

そのまま歩いていると、今度は上空を巨大な輸送ドローンが横切った

 

ゴォォォ・・・

 

かなり大きい

 

アリスは思わず見上げる

 

すると

 

【ガコンッ】

 

「あ。」

 

輸送コンテナが一つ落下した

 

「うわぁぁぁぁぁ!?」

 

周囲が騒ぐ

 

【ズドォンッ!!!】

 

コンテナが地面に着弾し、砂煙が舞う

 

「・・・。」

 

アリスは少しだけ近寄る

 

中身

 

大量のカップ焼きそばだった

 

「食料イベントです。」

 

「いや事故や事故。」

 

聞き慣れた声がした

 

「!」

 

アリスが振り向く

 

そこに居たのは、砂色のローブを羽織ったおっさん――

七篠アンラだった

 

「お父さん。」

 

「ん?」

 

未だに反応が少し遅れる

 

アリスは気にしていない

 

「お父さんも探索中ですか?」

 

「おっさんはただの買い出しや。」

 

「買い出しイベントですね。」

 

「まぁそんなもんや。」

 

アリスはこくりと頷いた

 

「また着とるんかそのローブ。」

 

「はい!アリスの必須装備です!」

 

「必須。」

 

アリスはローブの裾を持つ

 

「お父さんのローブは、防御力と安心感が高いです!」

 

「そこらへんの服に比べたら実際防御力は高いわな・・・」

 

「あと、ちょっとあったかいです。」

 

「まぁローブやしな。」

 

アリスは満足げに頷いた

 

実際、このローブを着ていると落ち着く

初めて起動した時に自分に掛けられていたからかもしれない

 

なんとなく安心する

 

「んで、何しとったん。」

 

「探索です。」

 

「探索。」

 

「ミレニアム周辺にはイベントが多いです。」

 

「まぁ否定は出来へんな・・・。」

 

ちょうどその時も、遠くでまた爆発した

 

【ボンッ!!!】

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

「冷却材逆流したーーーっ!!!」

 

「だから言ったじゃないですかぁ!!!」

 

「今日も元気やなぁ・・・。」

 

「新素材開発部です。」

 

二人同時に振り返りもしない

慣れていた

 

「・・・お父さん。」

 

「なんや。」

 

「アリス、現在レベルアップ中です。」

 

「ほーん。」

 

「冒険で経験値を獲得しています!」

 

「どんな経験値や。」

 

「例えば。」

 

アリスが指を折る

 

「新素材開発部周辺では急に爆発が起きる事。」

 

「せやな。」

 

「便利屋68を見つけた時は財布を確認する事。」

 

「ん?・・・あいつらきとったんか・・・?」

 

「あと、ユウカが怒ってる時は逃げる事。」

 

「生存本能が育っとる。」

 

アリスは少し誇らしげだった

 

おっさんは思わず笑う

 

「まぁ、ええ事ちゃうか。」

 

「はい。」

 

アリスはこくりと頷いた

 

それから少しだけ考え込む

 

「・・・お父さん。」

 

「ん?」

 

「RPGでは、街を探索すると仲間イベントが発生します。」

 

「ほーん。」

 

「つまり今、アリスは仲間イベント中です。」

 

「そんな雑に始まるんか。」

 

「はい!」

 

真顔だった

 

「・・・ちなみに、報酬は?」

 

「信頼度上昇です。」

 

「安いようで高いなぁ。」

 

「重要アイテムです。」

 

「せやな。」

 

アリスは少しだけローブを握る

 

風が吹いた

 

砂色の布が揺れる

 

ミレニアムの高層ビルの隙間から、夕方の光が差し込んでいた

 

「・・・お父さん。」

 

「ん?」

 

「アリス、このローブ好きです。」

 

「おー。」

 

「なんだか、【お父さんとパーティーメンバー】って感じがします。」

 

「・・・。」

 

おっさんは少しだけ目を細めた

 

「まぁ、実際そんなもんかもな。」

 

「はい!」

 

アリスは嬉しそうに頷く

 

その時だった

 

おっさんが、ふとアリスのローブを見る

 

長い袖

 

余っている丈

 

歩く度に引き摺りそうになる裾

 

「・・・。」

 

「?」

 

「ちょい貸してみ。」

 

「はい。」

 

アリスは素直にローブを差し出した

 

おっさんはそれを受け取る

 

そして――

 

【魔術術式解凍:創造魔術:再々構成:即時発動】

 

【ブワッ】

 

砂色のローブが、光に包まれる

 

「!」

 

アリスの目が見開かれる

 

布が揺れる

 

形が変わる

 

余っていた袖が縮み

 

長過ぎた裾が調整され

 

サイズが、少しずつアリスに合う形へ変わっていく

 

まるで最初から、アリスの為に作られていたみたいに

 

さらに

 

砂色だった布が、ゆっくり白へ変わった

 

ミレニアムの制服と同じ色

 

袖や裾には、黒いライン

 

裏地が青に染まっていき

 

左右にポケットが出来ていく

 

左のポケットには、ミレニアムの校章

 

制服と同じ位置に、丁寧に刻まれていく

 

「・・・完成や。」

 

おっさんがローブを広げる

 

それはもう、ただのお下がりではなかった

 

アリス専用のローブだった

 

「お父さん・・・?」

 

「クエスト完了報酬や。」

 

「!」

 

アリスの目が輝く

 

「正式装備ですか!?」

 

「まぁそんな感じやな。」

 

「しかも専用装備・・・。」

 

アリスはかなり感動していた

 

おっさんは苦笑する

 

「流石にサイズ合っとらんかったしな。」

 

「あとまぁ。」

 

おっさんは少しだけ視線を逸らす

 

「娘にやるなら、ちゃんとした物の方がええやろ。」

 

「・・・!」

 

アリスの動きが止まる

 

数秒

 

それから、ぎゅっとローブを抱き締めた

 

「・・・アリス。」

 

「ん?」

 

「すごく嬉しいです。」

 

「おー。」

 

「一生大事にします。」

 

「いやまぁ、そこまで重く考えんでも・・・。」

 

「家宝です。」

 

「急に重いなぁ!?」

 

おっさんが思わずツッコむ

 

だがアリスは真剣だった

 

「専用装備は大事です。」

 

「まぁ気持ちは分からんでもないけどな。」

 

アリスはこくりと頷くと、早速その場で白いローブを羽織った

 

ふわり

 

新しいローブが風に揺れる

 

先程までの砂色とは違う

白を基調にしたデザイン

 

ミレニアムの制服に近い色合いなのに、不思議と特別感があった

 

サイズもぴったりだった

 

長過ぎた袖は綺麗に収まり

裾も歩きやすい長さになっている

 

アリスはぱたぱたと袖を動かした

 

「わぁ!」

 

「どうや。」

 

「機動性が向上しています!」

 

「そら良かった。」

 

「重量バランスも最適化されています!」

 

「ローブに対する評価が完全にゲーム装備なんよ。」

 

アリスはくるりと回る

 

白いローブがふわりと広がった

 

夕暮れの光を受けて、裾のラインが淡く光る

 

「・・・。」

 

その姿を見ながら、おっさんは少しだけ目を細めた

 

アリスは嬉しそうだった

 

本当に、心の底から

 

それを見たおっさんは、少し困ったように笑う

 

最初に会った頃のアリスは、無機質で感情なんかない状態だった

 

ただ、言われたまま、与えられた事だけをする

 

そんな存在だったが、今は違う

 

笑っている

 

ゲームの話をして

仲間の話をして

冒険みたいに毎日を楽しんでいる

 

その姿が、少しだけ眩しかった

 

「・・・お父さん。」

 

「ん?」

 

「どうですか?」

 

アリスが少しだけ胸を張る

 

新しい装備を見せるRPG主人公みたいに

 

おっさんは数秒考えて――

 

「似合っとるよ。」

 

そう言って笑った

 

「!」

 

その瞬間

 

アリスの表情がぱぁっと明るくなる

 

「・・・では。」

 

「ん?」

 

「アリスのテンションが急上昇しました!」

 

「なんやそれ。」

 

「現在、かなり嬉しいです!」

 

「そら何よりや。」

 

アリスはローブの胸元をぎゅっと握る

 

それから、小さく呟いた

 

「・・・これで、ちゃんとパーティーメンバーです!」

 

「・・・。」

 

おっさんは少しだけ困ったように笑う

 

「最初からそうやろ。」

 

「・・・!」

 

アリスが目を見開いた

 

数秒固まって――

 

「・・・・・・はい!」

 

今までで一番嬉しそうに、アリスは頷いた

 

 

 

 

 




ん-!そうだよこれだよこれ!
このかるーい感じ!これが本来のうちの小説!
最近はやれ1万2000だやれ1万8000だ、この前なんて23000超えて二分割したよ!

まぁということで閑話と言う名のSSですね。
ちなみにこのアリスのお話はアリスの絆ストーリーからちょっと拝借しています。
ほとんど内容違いますけどね。

そして、ここでおっさんが、正式に娘としてアリスを認めました。
そして娘、つまり自分の嫁さんと同じ身内として認識しました・・・
そう・・・嫁さんが死んだだけで世界全部を薪にくべて巻き戻したような男が、
アリスを身内判定に入れてしまいました・・・

頼むぜリオ・・・いや先生・・・貴女にかかってるぞリオの命とトキの命が!!!
マジ気張ってくれよ!
多分アリスになんかあった時点で、おっさんはアンラ状態に入ったまま戻ってこなくなるよ!
TSC2の一件目のコメントの奴を埋めようとした時の比じゃないキレ方するから!
最悪大人のカードを切る事も視野に入れてくれ!先生!
この小説での初の大人のカードを切る相手が仲間相手とか笑い話にもならんがな!!
でも実際の話、大人のカードは、アンチ大人の切り札として、原作でも多用されてるから、
大人であるアンラ相手にも絶大な効果を発揮してくれそうではある・・・が、アンラを抑え込むのにどれほどの対価を支払うことになるか・・・


まぁそれは置いといて・・・
そんな身内絶対依怙贔屓なアンラが、完全な身内判定をしたアリス。
そんなアリスに魔術を使って、しかも自分が一番得意な創造魔術を使って、渡したローブ・・・
さて・・・普通の頑丈なローブなのか・・・
まぁそんなわけは無く、身内絶対依怙贔屓って言った通り、身内に関してだけ、アンラは契約や制約を完全に無視して動きます。
つまり、未来を知った上でアリスの身に降りかかる危険に対して全て起こる前に叩き潰す。
そんな事をしかねない状態ではあります。

まぁメインストーリーは薄氷の上でタップダンスしながら渡るみたいなバランスで成り立ってるのが知っているので、初動潰しはしないでしょうが、最悪が起こった瞬間に発動するカウンターギミックはしかけられていますね・・・。

さて・・・パヴァーヌ第二章が楽しみですね。
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