おっさんキヴォトスに行く   作:無い頭のおっさん

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うぉぉぉぉ!仕事が!いそが!っしいいい!!
ミレニアムプライス前のゲーム開発部みたいになってます!
ちょっと更新頻度が落ちるかもしれないです!
すいません!

ばにばにばにばに!!

本日更新分1/2前半です!
お気をつけて!


先生とヒフミと模擬試験

掃除を終えたプールに水が溜まる頃には、既に陽は完全に沈み切っていた

 

昼間は賑やかだった別荘の周囲も静まり返り、

聞こえてくるのは夜風が木々を揺らす音と、プールへ注がれる水のかすかな音だけ

 

満天の星空が水面に映り込み、まるでもう一つの夜空がそこに広がっているようだった

 

「・・・」

 

誰からともなく言葉が途切れる

今日一日、山を登り、掃除をして、慌ただしく過ごしてきた

だからこそ、この静かな時間が妙に心地良かった

 

「結局、実際にプールに入って遊ぶことは出来ませんでしたね・・・」

 

ヒフミが少し残念そうに笑う

その視線の先では、ようやく半分ほどまで溜まった水が月明かりを反射して揺れていた

 

「そういえば、水を入れるのは結構時間がかかるものでしたね・・・

ごめんなさい、失念していました。」

 

「いや、謝る事は無い。十分楽しかった。」

 

即答だった

思わずアズサを見る

 

そこには今日一日で見た中でも、一番自然な笑顔があった

 

「"・・・楽しかった?"」

 

「うん。」

 

私が聞き返すと、アズサは小さく頷く

 

「皆で掃除をするのも悪くなかった。」

 

そう言って再び水面へ視線を向けた

以前のアズサなら、こんな感想は中々口にしなかっただろう

 

("少しずつだけど、変わってきてるね。")

 

そんな事を思っていると

 

「・・・綺麗。」

 

コハルがぽつりと呟いた

見れば、プールに映る星空を見つめたまま目を輝かせている

 

「そうですね。真夜中のプールなんて、中々見られない光景で・・・」

 

ヒフミも隣に立ち、水面を覗き込む

二人の顔が水面に映り、その向こうに星空が広がる

何とも不思議な景色だった

 

ただ――

 

「ふわぁ・・・」

 

コハルが大きな欠伸をした

身体が左右にふらつく

 

「あら、コハルちゃんおねむですか?」

 

「そ、そんなことないもん・・・」

 

言った直後

 

ぐらり

 

「"危なっ。"」

 

思わず私が肩を支える

 

「でも、ちょっとつかれた・・・」

 

「確かに、今日は朝から山登りに大掃除とバタバタでしたもんね。」

 

ヒフミが苦笑した

 

実際、皆かなり疲れているはずだ

アズサでさえ、普段より少し動きが鈍い

 

「では、そろそろお部屋に戻って休むとしましょうか?」

 

「明日から本格的に勉強合宿が始まってしまいますし・・・」

「そろそろ寝ないと明日に支障が出てしまうかもしれません。」

 

「うん・・・」

 

コハルの返事もどこか眠そうだった

 

「そうですね、では今日はこれくらいで。」

 

 

そう言うと皆でグレゴリーさんから案内された大部屋に戻ってきた

 

昼間は賑やかだった部屋も、夜になるとどこか静かで落ち着いた雰囲気を纏っている

窓の外では虫の鳴き声が聞こえ、遠くで波のように木々が揺れる音が響いていた

 

一日中動き回っていた疲れもあってか、皆の表情にも少し眠気が見え始めている

 

「それでは、皆さんお疲れ様でした。」

 

ヒフミがそう言って微笑む

 

「お疲れ様」

 

アズサも短く返した

 

「はい、ではまた明日。」

 

ハナコも柔らかく返す

その直後

 

「Zzz・・・」

 

既にコハルが座ったまま船を漕いでいた

小さく上下する肩と、今にも倒れそうな頭

 

("コハル寝ちゃってる・・・")

 

流石に今日は無理もない

朝から移動して、山を登って、プール掃除までしたのだ

むしろ今まで起きていた方が凄いかもしれない

 

アズサもそれに気付いたのか、少しだけ首を傾げる

 

「完全に寝ているな。」

 

「ですねぇ。」

 

ハナコがくすりと笑った

 

「"私は、小部屋の方に居るから、何かあったらいつでも呼んでね。"」

 

「はい、ちゃんと覚えておきますね♡」

 

ハナコが何か企んだような顔をしながら頷く

また、何か企んでそう・・・部屋の鍵閉めとこうかな・・・

 

そんな事を考えていると

 

「エッチなの・・・ダメェ・・・しけぇ・・・Zzz

 

部屋の空気が一瞬止まった

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

 

「"独特な寝言だね・・・"」

 

思わず苦笑する

 

コハルらしいと言えばらしい

というか、夢の中でもハナコに揶揄われてるのだろうか

 

「流石ですね。」

 

「何が流石なんですか・・・?」

 

ヒフミが困ったように笑う

 

「コハルちゃんも寝ちゃいましたし、今日の所は寝ましょうか。」

 

「では、おやすみなさい。」

 

「"うん、おやすみなさい。"」

 

皆に手を振りながら部屋を後にする

 

扉を閉める直前

ヒフミ達が寝具を広げ始める様子が見えた

 

補習授業部

問題だらけで、不安だらけで

 

それでも少しずつ前に進んでいる

そんな気がした

 

 

 

 

【合宿所・先生の部屋】

 

小部屋へ戻ると、先程までの賑やかさが嘘のようだった

 

机と椅子

簡素なベッド

 

最低限の明かり

静かな空間

 

私は椅子に腰掛け、大きく息を吐く

 

「"さて・・・"」

 

窓の外では月明かりが揺れていた

だが心はあまり落ち着かない

 

("あの様子だと・・・ナギサは止まらない・・・")

 

数日前の会話を思い出す

あれは疑念の段階ではない

 

既に確信に近い

だからこそ危うい

 

("なら、第二次試験の時の準備は今からしておかないと、最悪・・・")

 

頭の中でいくつもの可能性を並べる

最悪の未来

 

避けなければならない未来

知っている未来

 

そして

知っているはずなのに変わり始めている未来

 

「"はぁ・・・【守ってくれる】んじゃなかったんですか・・・?"」

 

思わず小さく零れる

誰に向けた言葉なのか、自分でも分かっている

 

頼るつもりなんてなかった

そう思っていたはずなのに

気付けば期待している

 

本当に困ったものだ

そんな事を考えていると

 

【コン、コン、コン】

 

扉が静かに叩かれた

 

("ヒフミかな・・・?")

 

何となく分かった

このタイミングで来そうなのは彼女くらいだ

 

「"入っても大丈夫だよー"」

そう声を掛けると

 

「あ、えと、失礼します・・・」

 

予想通りの声が返ってきた

扉が開き、ヒフミがそっと顔を覗かせる

 

少し申し訳なさそうな表情

どこか落ち着かない様子

 

眠れない子供そのものだった

 

「その、夜中にすみません・・・」

 

「"ヒフミ。どうしたの?"」

 

ヒフミは部屋へ入りながら視線を泳がせる

言葉を選んでいる

 

そんな様子だった

 

「その、何だか眠れないと言いますか・・・」

「あれこれ考えていたら、その・・・あうぅ・・・」

 

最後は情けない声になった

 

「"ふふ、私も丁度色々考えていたからね丁度良かったよ。"」

 

そう言うと、ヒフミは少しだけ安心したようだった

椅子に腰掛けながら、小さく息を吐く

 

それでも表情は晴れない

きっと本題は別にある

 

「その・・・先生、明日から本格的な合宿なのですが・・・」

「私達、このままで大丈夫なのでしょうか・・・?」

 

その声は震えていた

不安を隠し切れていない

 

無理もない

今の補習授業部は崖っぷちだ

 

「もし一週間後の二次試験に落ちてしまったら、三次試験・・・」

「万が一、それに落ちてしまったら・・・」

 

私は少しだけ目を伏せた

 

そして

 

「"全員退学。"」

 

静かに答える

ヒフミも目を伏せた

 

「・・・やっぱり、先生も知っていたんですね。」

 

部屋に沈黙が落ちる

聞きたくない言葉だったのだろう

 

それでも

知らないままでいられる段階は、もう過ぎている

 

「まだ誰にも言っていませんが、そもそも言って良い事なのかどうかも分からなくて・・・」

 

ヒフミは膝の上で指を絡める

ぎゅっと握り締めた手に力が入っているのが分かった

 

「学力試験なのに、どうしてこういう【全員一斉に】みたいな

評価システムなのかも良く分かっていませんし、」

「私達の試験の為だけにこんな別荘まで提供してもらえるなんて・・・」

 

そこで言葉が止まる

ヒフミらしくない

 

普段ならもっと上手く説明できるはずだ

それだけ、この話題をどう扱えば良いのか分からないのだろう

 

「それに・・・うぅ・・・」

 

視線が落ちる

机の木目を見つめるように俯いた

 

「"ナギサから、何か他にも言われたの?"」

 

「いえ、そ、その・・・な、ナギサ様からは・・・その・・・」

 

言い淀む

何度も口を開きかけては閉じる

 

まるで秘密を破る事そのものに罪悪感を抱いているようだった

 

「・・・・・・はい。」

 

意を決したように顔を上げる

 

「ナギサ様から、【誰にも言わない様に】と言われていたのですが・・・」

「私の手に負えるようなお話ではなくって・・・」

 

「その、何と言えば良いのか・・・」

 

ヒフミは困ったように眉を下げる

助けを求めるような目だった

 

だから私は先回りする

 

「"もしかして、それは【トリニティの裏切者】を見つけて欲しいっていうの?"」

 

「!?」

 

ヒフミの肩が跳ねた

 

驚いた顔でこちらを見る

 

「・・・先生もそう言われたって事、ですよね・・・」

 

「・・・はい、ナギサ様とお話していた時に・・・」

 

そしてヒフミは、ぽつりぽつりと語り始めた

 

【ヒフミさんは裏切者を探す。それしか選択肢は残されていません。】

【失敗した場合は、ヒフミさんも他の方々と同じように処理する事になります。】

 

部屋の空気が少しだけ重くなる

ヒフミはその言葉を思い出したのか、顔を曇らせた

 

私は黙って聞く

 

("・・・この言い方・・・")

("ナギサはいつも以上に追い詰められてる・・・")

 

脅迫

 

そう受け取られても仕方ない言い方だった

本来のナギサなら、こんな伝え方はしない

 

少なくともヒフミ相手には

けれど今のナギサは違う

 

焦っている

 

余裕が無い

 

誰も信じられなくなっている

 

だから

こんな言葉が出てしまう

 

「わ、私はその、裏切者だなんて、そんな話・・・」

 

ヒフミがぽつりと呟く

 

「だって・・・皆、同じ学校の生徒じゃないですか・・・」

 

声が震えている

 

「今日だって、皆でお掃除して、一緒にご飯を食べて・・・」

 

私の脳裏にも昼間の光景が浮かぶ

 

汗だくになって掃除をしていた皆

笑いながら食事をしていた皆

プールを見てはしゃいでいた皆

 

どれも普通の学生だった

 

「これで、誰が裏切者なのかを探れだなんて、そんな、そんな事・・・」

 

ヒフミは首を振る

 

「そんな事、私には・・・」

 

そして言葉が途切れた

 

俯いたまま動かない

 

肩が小さく震えている

 

泣くのを堪えているのだろう

 

("ヒフミらしいな・・・")

 

もしここにコハルが居れば怒るだろう

 

アズサなら静かに考えるだろう

 

ハナコなら笑顔の裏で色々と報復計画を企むだろう

 

でもヒフミは違う

 

最初に考えるのは犯人じゃない

傷付く人の方だ

 

だから苦しい

だから抱え込む

 

「"うん、ヒフミは優しいね。」

 

ヒフミが顔を上げる

少しだけ目が赤かった

 

「その件は、ヒフミは気にしなくて大丈夫だよ。"」

 

「せ、先生・・・?」

 

「"私に任せて、私が、どうにか解決するから。"」

 

そう言うとヒフミは驚いたような顔になる

 

当然だ

簡単な問題じゃない

 

誰か一人が背負って解決できるような話でもない

だけど

 

("少なくとも生徒に背負わせる問題じゃない。")

 

それだけは確信できた

 

「"だから、ヒフミは、ヒフミに出来る事を頑張って欲しい。"」

 

「私に、出来る事・・・」

 

ヒフミが小さく呟く

その目が少しずつ考える色に変わっていく

 

不安だけだった表情に

ほんの少しだけ前を向く力が戻っていく

 

「・・・・・・はい!」

 

勢いよく顔を上げた

 

「分かりました!」

 

その笑顔はまだ少しぎこちない

それでも先程よりずっと良かった

 

「先生、ありがとうございます・・・!」

 

「何だか心が軽くなりました・・・!」

 

("本当に強い子だな・・・")

 

普通なら簡単には切り替えられない

それでも前を向こうとする

だからヒフミは凄い

 

「・・・あ、それでなんですが・・・」

 

ヒフミが少しだけ照れたように笑う

 

「先生、少し手伝ってもらっても良いですか・・・?」

 

("・・・ん?")

 

私は首を傾げる

さっきまでの重い空気から急に話が飛んだ

 

「"うん?全然大丈夫だよ?何をしたらいいのかな・・・?"」

 

するとヒフミは持ってきていたノートを胸の前に抱えた

 

どこか気まずそうに

でも少しだけ嬉しそうに

 

「その・・・皆の勉強計画を立てたいんです。」

 

「出来れば、明日の朝までに・・・!」

 

("あぁ・・・そう来たか。")

 

思わず苦笑する

 

確かにそれは

今のヒフミに出来る事だった

 

「その・・・皆の勉強計画を立てたいんです。」

 

「出来れば、明日の朝までに・・・!」

 

そう言いながらヒフミは抱えていたノートを机の上に置く

その厚みを見て思わず目を瞬いた

 

何冊あるんだろう

教科ごとの参考書

 

過去問

 

メモ帳

 

ノート

 

気付けば小さな山が出来上がっていた

 

「"・・・準備良いね?"」

 

「えへへ・・・」

 

少し照れ臭そうに笑う

 

「その・・・部屋に戻ってから色々考えていたんです。」

「皆が苦手な所を把握して、効率良く勉強できれば・・・って。」

 

("・・・なるほど。")

 

さっきまで裏切者の話で悩んでいたはずなのに

気付けばもう次の問題を解決しようとしている

 

やっぱりヒフミは凄い

 

普通の子なら不安に押し潰される

 

誰かを疑うかもしれない

自分の事だけで精一杯になるかもしれない

 

でも

 

ヒフミは違う

 

("この子は不安になると、誰かを疑うんじゃなくて。")

("皆を助ける方法を探し始める。")

 

「まずは模擬試験でしょうか・・・?」

 

「今の実力を把握できれば、その後の勉強内容も決めやすいと思うんです。」

 

「"うん、それは良い考えだと思う。"」

 

「本当ですか!?」

 

ぱっと顔が明るくなる

まるで褒められた子供みたいだ

 

少しだけ肩の力も抜けたように見えた

 

「じゃあ・・・えっと・・・」

 

そう言ってノートを開く

びっしりと書き込まれたメモ

 

今日の授業中に見ていたのだろう

 

アズサ

 

コハル

 

ハナコ

 

それぞれの苦手分野らしき内容が整理されている

 

("観察も出来てる。")

("ちゃんと皆を見てるんだね。")

 

先生として少し嬉しくなる

 

「コハルちゃんは計算ミスが多いです。」

 

「アズサちゃんは知識問題より応用問題ですね。」

 

「ハナコちゃんは・・・」

 

そこでヒフミの手が止まった

 

机の上に広げられたメモを見つめながら首を傾げる

 

「やっぱり分からないです・・・」

 

「"何が?"」

 

「授業中もちゃんと聞いていますし、問題だって解けてると思うんです。」

 

「なのに点数だけ見ると・・・」

 

言葉を探すように視線が泳ぐ

 

「まるで別人みたいで・・・」

 

("当然だよね・・・")

 

私も初めて知った時は驚いた

ハナコは勉強が出来ない訳じゃない

 

むしろ逆だ

出来過ぎる

 

だから隠した

 

自分自身を

 

能力を

 

価値を

 

誰かの都合の良い道具にされないために

誰かの期待に潰されないために

 

トリニティには優秀な人材を求める派閥が多い

 

生徒会

 

派閥

 

委員会

 

政治

 

権力

 

優秀であればあるほど周囲が放っておかない

 

そしてハナコは優秀過ぎた

だから彼女は選んだ

 

【無能の振りをする】事を

 

("・・・本当に皮肉な話だよ")

("賢いからこそ辿り着いた結論なんだから。")

 

ヒフミはまだ気付いていない

 

いや

 

気付けなくて当然だ

優秀だから点を取る

 

そんな当たり前の世界で生きているのだから

 

「"あ、そうだヒフミ。"」

 

「はい?」

 

「"模試を作るなら参考になりそうな物があるんだけど。"」

 

机の上に置かれた大量の答案用紙を見て、ヒフミが目を丸くする

 

「これは・・・?」

 

「"トリニティで過去に行われた試験の答案だよ。"」

 

「えっ!?」

 

ヒフミが慌てて紙束を手に取る

 

一枚

 

二枚

 

三枚

 

次々とページをめくっていく

 

「す、凄いです・・・!」

 

思わず声が漏れていた

 

「見てください先生、この解き方・・・!」

 

「"うん。"」

 

「途中式が全部残されています!」

 

興奮した様子で答案を広げる

 

「それだけじゃありません!

どうしてその答えになるのかまで書かれていて・・・」

 

「数学も理科も歴史も全部です!」

 

「"へぇ。"」

 

「しかも満点・・・!」

 

ぱらぱらと次の答案へ

 

「こっちも満点・・・」

 

さらに次

 

「これも・・・」

 

さらに次

 

「えっ・・・?」

 

ヒフミが一瞬だけ首を傾げる

 

「一年生用試験・・・満点。」

 

ぺらり

 

「二年生用試験・・・満点。」

 

ぺらり

 

「三年生用試験・・・満点。」

 

ぺらり

 

「こちらも・・・」

 

ぺらり

 

「これも・・・」

 

ぺらり

 

「全部満点です・・・!?」

 

思わず立ち上がってしまう

 

「先生っ!」

 

「"うん?"」

 

「これ凄いです!」

 

ヒフミが目を輝かせていた

 

さっきまで裏切り者の話で沈んでいた顔が、

嘘みたいに明るくなっている

 

「見てください!この答案ならどこで躓きやすいか全部分かります!」

 

「"そう?"」

 

「そうです!」

 

机に答案を広げながら熱弁する

 

「例えばこの数学!」

 

「解くだけじゃなくて、どう考えてその答えに至ったのかまで書いてあるんです!」

 

「それにこの歴史も!」

「暗記だけじゃなくて関連知識まで整理されていて・・・」

 

「模範解答なんかよりずっと参考になります!」

 

("そりゃそうだろうね。")

 

ハナコは本来なら補習授業部にいるような生徒じゃない

むしろ教える側だ

 

そんな人間が本気で解いた答案なのだから

参考にならない訳がなかった

 

「これがあれば・・・!」

 

ヒフミが答案を抱きしめる

 

「皆の勉強がもっと進みます!」

「アズサちゃんがどこで躓いているのかも分かりますし!」

「コハルちゃんの苦手分野も整理できます!」

 

「模試も作れます!」

「解説も作れます!」

「復習問題も作れます!」

 

「わぁ・・・!」

 

完全にスイッチが入っていた

 

("持ち主を見る余裕も無いみたいだね。")

 

答案の右上には名前欄がある

あるのだが

 

ヒフミはそこを一切見ていない

見ているのは解答だけ

 

勉強の材料としての価値だけ

だからこそ気付かない

 

この全てが

毎日隣で笑っている少女のものだという事に

 

「先生!」

 

「"なに?"」

 

「今日は徹夜です!」

 

「"えっ。"」

 

「今から模試を作りましょう!」

 

「時間がありません!」

 

「補習授業部の未来がかかっているんです!」

 

「"お、お手柔らかに・・・?"」

 

「頑張りましょう先生!」

 

こうして

ヒフミの熱意に押し切られる形で

私達の長い夜が始まったのだった

 

 

 

 

 

【合宿場・教室】

朝、ティーパーティーの別荘の庭園がこの教室の窓から見える

 

朝露に濡れた芝生の上を、グレゴリーさんが黙々と手入れしていた

 

昨日まで人の気配も少なかったこの場所も、

今日はどこか賑やかに感じる

 

("・・・ヒフミ、結局あまり寝てないんじゃないかな。")

 

教壇の上には昨晩二人で作った問題用紙が綺麗に積まれている

 

途中で何度か船を漕ぎかけながらも、

ヒフミは最後まで手を止めなかった

 

自分が不安なはずなのに

 

誰よりも不安なはずなのに

 

それでも皆の為に動こうとしている

 

("本当に強い子だよ。")

 

そんな事を考えていると、

教室の扉が開いた

 

「うぅ・・・全部見られた・・・もうダメ・・・」

 

真っ赤な顔を両手で隠しながら、

コハルがふらふらと入ってくる

 

("・・・?")

 

何があったんだろう

昨夜の間に何か事件でも起きたのだろうか

 

そんな疑問を抱いた次の瞬間

 

「コハルも私の裸を見たんだから、何も問題はないはず。」

 

アズサが真顔で言った

 

「そういう問題じゃない!!

あんな強引に脱がすなんて!無理矢理とかそういうのはダメなの!」

 

("・・・なるほど。")

 

大体理解した

 

("ハナコに何かされた訳じゃなかったんだ。疑ってゴメンハナコ。")

 

少しだけ安心する

 

そして

 

「では次は、私がコハルちゃんの身体を洗ってあげましょうか?」

 

聞き覚えのある声が聞こえた

 

("前言撤回。")

 

犯人候補が復活した

 

朝から元気だなぁ

 

そんな事を思っていると

 

「はぁっ!?だっ、ダメ!あんただけは絶対に嫌っ!」

 

バンッ!

 

勢いよく教室の扉が開いた

 

「お、お待たせしました!そろそろ始めましょうか!」

 

肩で息をしながら、

ヒフミが教室へ飛び込んでくる

 

少し髪が乱れている

 

("やっぱり寝坊したんだ。")

 

昨夜の様子を見る限り、むしろ予想通りだった

 

「"ヒフミ、この辺髪の毛ちょっと跳ねてるよ。"」

 

「あ、ありがとうございます・・・少し寝坊してしまいまして・・・」

 

言いながら慌てて髪を整える

 

そして次の瞬間

表情が引き締まった

 

「で、ではなく!」

 

教壇へ向かう

 

足取りに迷いはない

 

昨夜見せていた不安そうな顔は、

少なくとも今は隠していた

 

("頑張ってるね。")

 

ヒフミは教壇の前に立つと、

胸の前で軽く手を握った

 

「皆さん、こちらをご注目ください!」

 

「「「・・・?」」」

 

補習授業部の三人が顔を上げる

 

「今日は補習授業部の合宿、その大切な初日です!」

 

声が少しだけ震えている

 

だけど

 

昨日よりずっと前を向いていた

 

「私達は大変な状態で、ともすれば慌ててしまいがちな状況ではありますが・・・」

「難しく考える必要はありません!!」

 

一呼吸

 

「一週間後の第二次特別学力試験で合格する、それだけです!」

 

教室に静寂が落ちる

 

そして

 

「そうだね。」

 

「ですね。」

 

「・・・。」

 

三人とも、

ちゃんと話を聞いていた

 

("良かった。")

 

昨夜

 

裏切者の話を聞いた時のヒフミは、本当に押し潰されそうだった

それでも今こうして立っている

 

「そこで・・・今から模擬試験を行います!」

 

「・・・模擬試験?」

 

「なるほど・・・?」

 

「きゅ、急に試験!?なんで!?」

 

案の定コハルが慌てる

 

「闇雲に勉強しても、あまり効率がいいとは言えません。」

「着実に目標達成のためには、何が出来て何が出来ないのか、今どのくらいの立ち位置なのか。」

「まずはそれを把握する必要があります!」

 

昨日の夜

 

答案を広げながら、

ヒフミが何度も言っていた言葉だった

 

("ちゃんと自分の物にしたんだね。")

 

「という訳で、昨晩こちらを準備してきました!」

 

問題用紙を掲げるヒフミ

 

その顔は少し誇らしげだった

 

「昨年トリニティで行われた試験問題と、その模範解答です!

でもまだ中途半端と言いますか、集められたのは一部だけなのですが・・・」

 

模範解答

 

正確には

 

("模範解答というか・・・。")

 

あの答案たち

 

一年生用

 

二年生用

 

三年生用

 

全て満点

 

全て完璧

 

そして

 

("全部ハナコなんだけどね。")

 

ヒフミはまだ気付いていない

昨夜は答案の内容に夢中だったから

 

誰が書いたのかなんて、一度も確認していなかった

 

「先生も昨日遅くまで手伝ってくださって、

第二次特別学力試験を想定した、ちょっとした模擬試験の様な形に出来ました!」

 

ヒフミが嬉しそうに言う

 

「"ほとんどヒフミが作ったんだけどね。"」

 

「あ、いえいえ!先生が資料を持ってきてくださらなければ出来ませんでした!」

 

("その資料の正体に気付いたら驚くだろうなぁ・・・。")

 

そんな事を考えながら、

私は問題用紙を手に取った

 

「試験時間は60分、100点満点中60点以上で合格。つまりは本番と一緒です。」

 

ヒフミが皆を見回す

 

「さぁ、まずはコレを解いてみましょう!」

 

 

 

第一次補習授業部模試の問題用紙と答案用紙を皆の机に伏せて置いて行く

 

「"皆準備出来た?"」

 

「"じゃあ始めるよ・・・試験、開始!"」

 

「・・・」

 

アズサが変わらずもくもくと解いてるね

 

「あら、これは・・・♡」

 

ハナコは今回は何点を取るつもりなのかな・・・

 

「どこかで・・・見たような、見てないような・・・」

 

コハルは・・・うん・・・頑張ろう

 

ヒフミはほとんど止まることなく問題を解いて行ってるね

 

("このまま行けば第二次特別学力試験で60点の壁は超えられるね。")

 

 

テストの制限時間の60分が経過し、

答案用紙を回収して採点をしていく

 

「では、先生、結果発表をお願いします!」

 

「"うん、今回は纏めて発表するね。"」

 

ハナコ 4点 (不合格)

 

アズサ 33点 (不合格)

 

コハル 15点 (不合格)

 

ヒフミ 68点 (合格)

 

「"こんな感じの結果になったよ。"」

 

「・・・そうか。」

 

「・・・え?」

 

「あらまぁ。」

 

「・・・」

 

("うん、ハナコは本当に凄いね。")

("最低点数5点でどうやって4点を狙い撃ちに出来るの?")

 

「これが今の私達の現実です。

このままだと、私達の先に明るい未来はありません・・・」

 

「ここから後一週間、皆で60点を超える為には、

残り時間を効率的に使って行かなければならないのです!!」

 

「そこで!まず、コハルちゃんとアズサちゃんがどちらも一年生用試験ですので・・・」

 

「私とハナコちゃんが、お二人の勉強内容をお手伝いします!」

「・・・ハナコちゃん、最近何があったのかは知らないのですが、

一年生の時の試験では高得点だったんですよね?」

 

痛い所を突かれたのか、ハナコの表情が一瞬固まる

 

「あら・・・?えっと、まぁそうですね・・・」

 

「実はその、一年生の時のハナコちゃんの成績を見つけてしまいまして・・・

それでハナコちゃんの方については後程、今の状態になってしまった原因をしっかり把握したうえで、私と先生と一緒に解決策を探してみましょう!」

 

「・・・」

 

("表向きの表情は繕ってるけど、ハナコ・・・嫌そうな雰囲気だけ出てるよ。")

 

 

「また途中ですが、他にも試験を制作中ですので、

今日から定期的に模試を行って進捗具合も確認できればと思っています。」

 

「・・・これが恐らくは、今できるベストの選択・・・」

「頑張りましょう!きっと、頑張ればどうにか、皆で合格できるはずです・・・!」

 

("ヒフミは・・・強い子だね。")

 

 

 

「・・・うん、了解。指示に従う。」

 

アズサは結果表を見ながら静かに頷く

落ち込んでいる様子は無い

ただ事実を受け止めているだけ

 

「わ、分かった・・・」

 

コハルは少し青い顔をしていた

15点

流石にショックだったらしい

 

「ヒフミちゃん・・・凄いですね。昨晩だけでこんなに準備を・・・」

 

ハナコが感心したように言う

その言葉にヒフミは慌てて首を振った

 

「あ、いえいえ、先生も手伝ってくださったので・・・」

 

「なるほど、先生が。」

 

ハナコの視線がこちらへ向く

どこか探るような目

 

「"そこまで大したことはしてないよ。これは全部ヒフミの頑張りの成果。"」

("ハナコのあの目は自分の成績の出所を見つけたって所かな?")

 

実際そうだった

 

私は資料を出しただけ

 

模試を組み立てて

勉強計画を考えて

皆を引っ張ろうとしているのはヒフミだ

 

もっとも

 

その資料の正体までは、ヒフミもまだ気づいてないようけど

 

("まぁ・・・今日中には気付くんだろうけど。")

 

 

「それだけではありません、何とご褒美も用意しちゃいました!」

 

突然ヒフミが声を弾ませた

 

("ん?")

 

さっきまで真面目な空気だったのに

急にテンションが変わった

 

「えっと・・・」

 

ゴソゴソ

 

ゴソゴソ

 

ヒフミがカバンを漁る

 

そして

 

「こちらです!」

 

机の上に大量のグッズが並んだ

 

「良い成績を出せた方には、

この【モモフレンズ】のグッズをプレゼントしちゃいます!」

 

教室が静まる

 

「モモフレンズ・・・?」

 

ハナコが首を傾げる

 

「・・・えぇ・・・何これ?」

 

コハルも露骨に引いている

 

「・・・っ!!」

 

アズサの目が光った

 

「あ、あれ・・・?最近流行りの、あの【モモフレンズ】ですが・・・」

 

笑顔

 

笑顔なのに

 

何故だろう

 

背筋が少し寒い

 

("あっ")

 

もしかして、ご存知でない・・・?」

 

目の光が若干怪しくなるヒフミ

 

("・・・マズい")

 

この空気

知っている

 

("・・・ヒフミからファウストが出かかってる!!")

 

布教モードだ

 

完全に

 

その瞬間

 

「・・・・・・か、可愛い・・・!!!」

 

アズサが満面の笑みでモモフレンズに夢中になっていた

 

救世主が現れた

アズサだった

 

目を輝かせながら

モモフレンズグッズを抱えている

 

「か、可愛すぎる・・・!」

「何だこれは、この丸くてフワフワした生物は・・・!!」

 

「"ナイス、アズサ!!!"」

 

先生の心の声だった

 

「この目、表情が読めない・・・何を考えているか全く分からない・・・!!」

 

「あ、アズサちゃん・・・?」

 

ハナコが珍しく引いた声を出している

 

「流石はアズサちゃん、ペロロ様の魅力に気づいてくれたんですね!!」

 

一気に距離が縮まる

 

「そうです!!そういう所が可愛いです!!!」

 

「うそぉ・・・!?」

 

コハルも引いている

とても引いている

 

しかし二人は止まらない

 

「こ、こっちは?」

 

アズサが別のぬいぐるみを持ち上げる

 

「この長いのは?イモリ・・・いや、キリン?何だか首に巻いたら温かそうな・・・!」

 

「それはウェーブキャットさんです!」

 

「いつもウェーブして踊っている猫なのですが、仰る通り最近ネックピローのグッズが・・・!」

 

「なるほど・・・!」

 

アズサが真剣に頷く

 

("何だろう・・・。")

 

昨日までこの別荘にトラップを仕掛けようとしていた少女とは思えない

 

 

 

「これは?この小さいのは?」

 

「それはMr.ニコライさんです!

いつも哲学的な事を言って不思議な目で見られてしまう方ですね!」

 

「哲学・・・」

 

アズサの目が輝く

完全に興味を持った

 

「今回ご褒美の一つとして、

そのニコライさんが書いた【善悪の彼方】という本もあるんですよ、それも初版!」

 

「すごい、すごい・・・!!」

「これを貰えるのか?ま、まさか、選んでも良いのか?」

 

「はい!」

 

ヒフミも身を乗り出す

 

「アズサちゃんが欲しいのを持って行ってください!」

 

「あらら・・・」

 

ハナコが苦笑する

 

「な、なんなの・・・」

 

コハルはついていけていない

 

そして

 

アズサがゆっくり拳を握った

 

「・・・うん」

 

真剣な顔

まるで作戦会議のような顔

 

「やむを得ない、全力を出すとしよう・・・!」

「良いモチベーション管理だ、ヒフミ!」

 

「約束しよう、必ずや任務を果たして、あの不思議でふわふわした動物を手にして見せる!!」

 

「は、はいっ!ファイトです!」

 

固い握手が交わされた

 

("・・・まぁうん。")

 

何か違う気もするけど

 

("アズサがやる気になってくれて良かったね・・・")

 

目的は達成している

 

間違いなく

 

横を見る

 

「えへ、えへへへへへへ・・・・・・」

 

ヒフミが凄く嬉しそうだった

 

「あら、何だかヒフミちゃんが楽しそうに、

と言いますかお人形さんと同じような表情に・・・」

 

("ギリギリ暴言じゃないかな・・・?")

「"モモフレ仲間が出来て喜んでるのかな?・・・多分。"」

 

「えぇ・・・。」

 

コハルはまだ納得していなかった

 

けれど

教室の空気は昨日よりもずっと明るい

 

皆が同じ方向を向いていた

 

("・・・うん。")

 

ヒフミは勉強計画を立て

アズサはモモフレンズ獲得の為に燃え上がり

コハルはそんな二人に振り回されながらも必死について行く

 

そしてハナコは

 

("まだ笑って誤魔化してるけど・・・")

("大丈夫。")

 

("今度はちゃんと、君の事も助けるから。")

 

誰にも聞こえない言葉を胸の内で呟く

 

「それでは、次はこの問題集を開いてください!」

 

「了解。」

 

「うぅ・・・もう始まるの・・・?」

 

「あらあら♡」

 

その後、ヒフミ達の勉強は夜遅くまで続いた

 

 

「コハル、質問。」

 

「うん、え?私?私に?」

 

「そう、コハルに。今同じ所を勉強している筈だ。この問題なんだけど・・・」

 

「う、うん・・・」

 

そういいながらコハルがアズサの方に近寄り教科書を見る

 

「・・・あ、これ知ってる!」

「これは確かこうやって、下の所と90度になるように、線を引いて・・・」

「そうすると、この三角形とこの三角形が一緒。分かった?」

 

「・・・なるほど、そういう事か。」

「助かった。これは確かに、正義実現委員会のエリートというのも頷ける。」

 

「・・・!?そ、そうよ!エリートだもの!!」

「・・・も、もし何か又分からなかったら、私に聞いても良いから。

アズサはその・・・特別に。」

 

「ありがとう、助かる。」

 

アズサはそう言いながら朗らかな笑みを浮かべる

 

("アズサも皆に心を開いてきたね・・・よく笑うようになった。")

 

「あらあら・・・」

「流石裸の付き合いをしただけはあると言いますか、

もう深い所まで入った仲なのですね・・・♡」

 

「ちょっ、何言ってんの!?そういうアレじゃないから!?」

 

「うん?ハナコも体を洗ってほしいのか?」

 

「あ、あの、うぅ・・・」

 

 

「あ、コハル。もう一つ聞きたい。」

 

「ん?この問題は、えっと・・・」

 

「コハルも知らない問題か?」

 

「うーんと、これ、確か参考書で見たような・・・」

「ちょ、ちょっと待って。確か持ってきてたはず。」

 

「"うんうん、良い勉強の仕方だね・・・

教えながら学ぶと覚え易いんだよね・・・"」

 

そんな事を私が言っていると、コハルが自分のカバンから

本を取り出した

 

「んしょっ」

 

出てきた本はピンク色の表紙をしており、

男女の肉体が絡んでる、明らかに未成年が持っていて良い物ではなかった

 

「?」

 

「「「"?!?"」」」

 

「この本に乗ってるのか?」

 

自身が取り出した本を確認する事無く、

コハルは満面の笑みで続ける

 

「うん、この参考――あれ?」

 

「エッチな本ですねぇ・・・」

 

「"・・・・・・コハル?"」

「"ちょっと先生、コハルと【お話】しないといけないかな・・・?"」

 

私が顔に青筋を浮かべてコハルに問いかけるとコハルも、

自身が何を取り出したのか分かり、顔面を青くしていく

 

「うわあぁぁぁっ!?な、なんでっ!?ち、ちが!」

 

「コハルちゃん、それエッチな本ですよね?

まぁある意味参考書かもしれませんが。」

「隠しても無駄です、【R18】ってばっちりかいてありましたよ?」

 

「ち、違う!見間違い!とにかく違うから!絶対に違う!!!」

 

「私の目は誤魔化せませんよ、確実にアレな事をする本でした。

それも結構ハードな・・・」

 

「トリニティでも、いえ、キヴォトスでも

中々見る事が出来ないレベルの内容とお見受けしました。」

 

「きっと肌と肌がこすれ合い、敏感な――」

 

「"はい、ハナコ。アズサの情操教育に良くないからそれ以上はダメだよ。"」

 

「はい、すみません先生♪、それにしてもどうしてそのような本を持ってるのですか?

確か校則でもかなり厳重に禁止されていたと思いますが・・・?」

 

「い、いや、そのっ・・・こ、これはほんとに私のじゃなくて、えっと・・・」

 

「でもそれ、コハルちゃんのカバンから出てきましたよね?

それに合宿所まで持ってくるなんて・・・お気に入りなのですか?」

「そうですか、あの真面目なコハルちゃんが、エッチな本を・・・」

 

「・・・いえ、なるほど、そうですね。考えてみたらそんなに大層な事でもありませんね?」

「予行演習もばっちり・・・つまり、合宿の為に必要な物なんですよね?コハルちゃん♡」

 

コハルがハナコにからかわれ、どんどん涙目になっていく

 

「こっ、これは違うんだってばああぁぁぁぁっ!!!」

 

「"ハナコ、楽しいのは判るけど、

とりあえずその辺で辞めとかないとコハルが本気で泣いちゃうよ。"」

 

「やり過ぎてしまったかもしれませんね、本当にごめんなさい・・・

お話が合うかと思ったのですが・・・」

 

 

「うぅ、うぅぅぅっ・・・」

 

コハルは結局すんすんと、鼻をすすりながら泣いてしまった

 

("うん・・・既に泣いてた・・・")

 

「・・・えっと、コハルちゃん。」

「その、正義実現委員会としての活動中に差し押さえた品を、

つい入れたままにしてしまった・・・とか、そういう感じなんですよね?」

 

「・・・うん。私、押収品の管理とか、してたから・・・これは、本当にその時の奴で・・・」

 

「なるほど。そういえば、トリニティの古書館の地下には何やら、

禁書が沢山積まれているという噂も聞きましたし・・・」

 

「正義実現委員会がそう言った物も含めて、

色々と差し押さえているとしても何も不思議ではありませんね。」

 

("・・・古書にエロ本が混じってるのは不思議だと思うよ・・・")

 

「うーん・・・であれば、押収品って出来るだけ早く返してしまった方が

良い気がするのですが、どうしましょう?」

 

「た、確かに・・・ずっと忘れてたけど・・・」

 

「数が合わなくて騒ぎになる前に、返しに行った方が良いかもしれませんね・・・」

 

「今のうちにこっそり行って、

バレないように正義実現委員会の所に戻して来れば大丈夫じゃないですか?」

 

「え、今?」

 

「"それならコハル、一緒に行く?"」

 

「・・・そうですね。先生が一緒であれば、

万が一ハスミさん辺りにバレたとしてもそこまで怒られないでしょうし・・・」

「所で、コハルちゃん、それはそれとしてもし他にもおすすめがあれば是非♡」

 

「う、うるさいっ、バカっ!!」

 

 

そして、コハルと一緒に正義実現委員会の部室へと向かうことになった

その道中、運悪くハスミに見つかったりもしたが、

普段ユウカに言い訳をしているこの口のおかげで特にお咎めを受けることもなく、

今日も騒がしい一日は過ぎ去り、陽も落ちて行った――

 

 

 




ちなみに先生は過去の周回で第二次特別学力試験で爆発をアロナバリアで防いだあと、
瓦礫に挟まれ圧死した過去があります。ナギサ様ぇ・・・
まぁ実際この後のその世界は、トリニティが全学区から総攻撃を受けて壊滅する世界になります。
先生も居ないので、トリニティ壊滅後、ミレニアムでケイが暴走。
世界はディビジョンのアーカイブ化に沈む。
そういうバッドエンドコースですね。

そしてヒフミちゃん頑張りました・・・
実際原作だとさらっと流されてますけど、
あんなに簡単に流して良い功績じゃないっすよ。
なんでこの小説だとその点を深堀しつつ、
先生がヒフミにハナコの事を気づけるようにサポートも入れました。

あとヒフミは原作より、ちょっと本質的に更にファウスト寄りになってます。
まぁ理由もあるんですが・・・それはまた追々ですね。
割かしこの設定はこの小説の根幹部分の一つなので。
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