おっさんキヴォトスに行く   作:無い頭のおっさん

64 / 64
仕事の休憩時間と帰って寝る前の一時間くらいでチマチマ書いてるから遅れました

ばーにばばに。


先生と怯えるシスター

【合宿所・教室】

 

昼下がりの教室

 

窓の外から差し込む陽光が床に長い影を落とし、

補習授業部の面々はそれぞれ机を囲むように集まっていた

 

数日前まで漂っていた重苦しい空気は随分薄れている

 

問題集や参考書は相変わらず山積みだが、

少なくとも全員の表情には僅かな余裕があった

 

そんな中――

 

「あ、先生!」

 

ヒフミが真っ先にこちらへ気付き、

ぱっと顔を明るくした

 

机の上には刷りたてらしい紙束

どうやら模試の結果らしい

 

「"ごめんね、ちょっと遅くなっちゃった。"」

 

ヒフミは嬉しそうに首を振る

 

「いえいえ!」

「あ、ところで見てください!こちら、ちょうど先ほど受けた模試の結果です!」

 

「"お!もう出来たんだね。"」

 

私は受け取った紙へ目を落とした

 

四人とも前回より確実に点数は伸びている

 

補習授業部が始まった頃の悲惨な点数を思えば、

間違いなく前進していた

 

ハナコ、8点 結果――不合格

 

アズサ、58点 結果――不合格

 

コハル、49点 結果――不合格

 

ヒフミ、64点 結果――合格

 

「・・・紙一重の差だった。」

 

アズサが小さく呟く

その声音には珍しく悔しさが滲んでいた

 

「はい!今回は本当に紙一重でした!アズサちゃん、すっごく惜しかったです・・・!」

 

「み、見た!?ヒフミ、私も結構上がったよ!?」

 

コハルが勢いよく身を乗り出す

合格こそしていないが、

前回の点数を考えれば大躍進だ

 

「はい、しかと見ました!コハルちゃん、前回は15点だったのに急に49点まで・・・」

「伸びしろでは一番です、凄いです!」

 

「ふっ、ふふーん!言ったじゃない、本当の実力は隠してたんだって。」

 

胸を張るコハル

その姿にヒフミも本当に嬉しそうだ

 

「素晴らしいです・・・!」

 

「そして、えっと・・・は、ハナコちゃんは・・・」

 

そこでヒフミの勢いが少しだけ鈍る

ちらりと結果用紙を見る

 

もう一度見る

そして困ったように笑った

 

「あら?ヒフミちゃん、どうしてそんなに声量が下がってしまうのですか?」

「最初の試験が2点、次の模試が4点、今回は8点ですよ?」

 

「"うーん、あと三回くらい模試したら合格ラインかな?"」

 

「そうです♪」

 

ハナコは妙に誇らしげだった

 

「そ、そう考えたらそうかもしれませんが・・・」

 

ヒフミも否定できない

実際倍々で増えている

理論上は、だ

 

私は思わず苦笑する

 

「"まぁうん、皆頑張ったね。ちゃんと終わりも見えてきた。"」

 

そう口にすると、

全員の表情が少しだけ柔らかくなった

 

最初はどうなる事かと思ったが、

今なら本当に何とかなるかもしれない

 

そんな希望が見え始めていた

 

「はい!この調子でしたら思ったより早く目標に届くかもしれません!」

 

「必ずや任務を成功させて、あの可愛い奴を受け取ってみせる。」

「それが、私がここに居る理由であり戦う目的だ。」

 

("うーんアズサは潜入目的がそれでいいのか・・・")

 

補習授業部

 

試験勉強

 

アリウス

 

様々な問題が山積みのはずなのだが

 

どうやらアズサの中では、

モモフレンズの限定景品確保がかなり上位に食い込んでいるらしい

 

「あ、アズサちゃん!?私たちがここに居る理由は試験と勉強であって、

目的は落第を免れることですよ!?いつの間に変わって!?」

 

「・・・そんな事もあったな。ついでにそれもやっておこう。」

 

即答だった

 

("なんか今回のアズサ全体的に愉快な子になってきたなぁ・・・")

 

最初に出会った頃のアズサなら、

こんな冗談とも本気ともつかない事は言わなかった気がする

 

少なくとも補習授業部の皆と過ごす時間は、

彼女を少しずつ変えているらしい

 

「【ついで】!?ついでなんですか!?あうぅ・・・」

「も、モモフレンズファンとしては嬉しくもあるのですが・・・」

 

 

そんな話をしていると、廊下から足音が響いてきた

 

静かで、しかし妙に床を重く鳴らす足音

 

誰かが歩いているだけのはずなのに、

何故か教室の空気が少しだけ静まる。

 

そのすぐ後ろから、小刻みで、明らかに怯えているような別の足音がついてきている

 

タタッ――

 

タタッ――

 

前を歩く者に必死についていくような、

そんな慌ただしい音だった

 

「・・・?」

 

コハルが不思議そうに入口へ視線を向ける

ヒフミも首を傾げた

 

やがて重厚なドアが音もなく開かれ――現れたのは、

あの黒い司祭服を纏った長身の男、グレゴリーだった

 

胸元の金色の十字架を揺らし、

相変わらず地を這うような、不思議と耳に残る低音で朗々と告げる

 

「――お騒がせして、申し訳ない。

玄関先で酷く困惑されている高徳なシスターをお見かけした。」

 

「どうにも道に迷われていたようでね。同じ主を仰ぐ身として、案内役を買って出た次第だ」

 

("高徳なシスター・・・")

("普通の案内ならそんな言い回しになるかな・・・?")

 

相変わらず一言一句が重たい

 

ただ挨拶をしているだけなのに、

何故か説教を聞かされているような気分になる

 

グレゴリーが完璧な所作で一歩退くと、

 

その巨大な影に隠れるようにして、

涙目でガタガタと震えているマリーが恐る恐る姿を現した

 

「あら、マリーちゃんじゃないですか?」

 

「は、ハナコさん・・・! いえ、その・・・こちらの司祭様が、

とても【親切に】道を教えてくださったのですが・・・っ」

 

マリーの声が微妙に震えている

というか

 

震えているどころではない

視線がグレゴリーへ向くたびに肩が跳ねている

 

「"・・・?"」

 

私が首を傾げると、

グレゴリーは何事もなかったかのように微笑んでいた

 

その笑みは穏やかで、

聖職者としては満点なのだろう

 

だがマリーの反応を見る限り、

移動中に何かあったのは間違いない

 

マリーはグレゴリーと一瞬視線が合うたびに、

ビクッと肩を跳ね上がらせてハナコの背後に隠れようとする

 

道中、男の言葉は確かに丁寧で親切そのものだった

しかし同行している間中、マリーに

 

「迷い込んだ哀れな迷子」

 

「己の罪を清める学び舎」

 

などと重苦しい声で囁き続けていたのだ

 

うら若き聖職者であるマリーにとって、

それはおよそ親切とはかけ離れた精神的軟禁でしかなかった

 

("絶対案内の仕方間違ってるよね・・・?")

 

そんなマリーを庇うように、

ハナコがいつも通りの笑みを浮かべてグレゴリーに応じた

 

「ふふ、グレゴリーさんは相変わらず刺激的ですね、

マリーちゃんが縮んで消えてしまいそうですよ?」

 

「おっと、これは失礼した。

高徳なシスターの前で、つい私の個人的な感傷が過ぎてしまったようだ。」

 

「感傷・・・?」

 

思わずコハルが呟く

どう聞いても感傷というより呪詛の類に聞こえるのだが

 

グレゴリーはマリーの恐慌など気にする風もなく、

穏やかに、しかし一切の感情を読ませない笑みを浮かべたまま、完璧な所作で恭しく一礼した

 

そして、おもむろに窓の外へと視線を向ける

 

その瞳は穏やかでありながら、

やはりどこか戦場に立つ兵士のように鋭い

 

「さて――無事に迷子を送り届けるという聖職者の務めも果たした。

私はこれにて失礼させて貰おう。まだ外の庭園の手入れが残っていてね。」

 

男はゆっくりと歩を進め、

ドアのノブに手をかける

 

地を這うような、不思議と耳に残る低音の声音が、

静まり返った教室に再び響いた

 

「咲き誇る花々から、無駄な雑草を【剪定】する作業が、私には残されている。

・・・お騒がせしたな、可憐な少女達よ。どうぞ、短い合宿の時間を有意義に使うといい。」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

何故だろう

 

ただの挨拶のはずなのに、

誰も返事をしない

 

というより出来ない

 

ヒフミは曖昧な笑みを浮かべ、

コハルは何か言いたそうな顔で固まり、

アズサは警戒するように男を見ていた

 

グレゴリーは唇の端をわずかに吊り上げると、

 

流れるような動作で踵を返し、音もなく廊下の向こうへと去っていった

 

司祭服の裾が揺れ、その背中が完全に消えるまで――

教室内には、立っているだけで魂を持っていかれそうな、奇妙な沈黙が支配していた

 

・・・

 

「・・・行った?」

 

最初に口を開いたのはコハルだった

 

「行ったな。」

 

アズサも頷く

 

「なんというか・・・相変わらず凄い人でしたね・・・」

 

ヒフミが曖昧な感想を漏らす

 

("うん。")

("凄いのは間違いない。方向性がちょっとアレなだけで。")

 

そして視線は自然とマリーへ向いた

 

当の本人はというと――

 

まだハナコの後ろに半分隠れたまま、

青い顔で小さく震えていた

 

 

グレゴリーが去った後、

怯えていたマリーを椅子に座らせ落ち着かせていた

 

教室の空気も少しずつ元に戻っていく

 

とはいえ当のマリー本人は、

まだ完全には落ち着いていないようだった

 

両手を膝の上でぎゅっと握りしめ、

何度も小さく深呼吸を繰り返している

 

「はい、お水。」

 

コハルがまだ少し震えているマリーに水を持ってきていた

 

「あ、ありがとうございます。」

 

そう言いながら、マリーはコップの水を飲み干す

 

余程喉が渇いていたのか、

ほとんど一息だった

 

空になったコップを胸元で抱え込むように持ちながら、

ようやく少しだけ表情が緩む

 

「ふぅ・・・びっくりしました、まさか、ここにグレゴリー司祭様が居られるなんて・・・」

 

「"グレゴリーさんと知り合いなの?"」

 

私が尋ねると、

マリーは少し困ったような笑みを浮かべた

 

「いえ・・・知り合いと言うほどではないのですが、

時々シスターフッドの教会に説教をしに来て下さるのです。」

 

「"そうなんだね。"」

 

「はい。毎回、主の教えの本質を突いた、

本当に、本当に為になる素晴らしいお話をしてくださるのですが・・・」

 

そこまで言って、

マリーの表情が曇った

 

何かを思い出したらしい

 

「"・・・?"」

 

「その・・・何と言いますか、例え話や言い回しが、

いつも少しだけ・・・いえ、かなり物騒と言いますか、不穏なのです・・・」

 

「"物騒・・・? 説教なのに?"」

 

不思議そうに首を傾げる

 

説教と言えばもっとこう、

愛とか慈悲とか希望とか

 

そういう話ではないのだろうか

 

マリーは思い出すだけでも背筋が寒くなるのか、

肩を震わせながら言葉を続けた

 

「ええ・・・どれほど信仰を深めようとも、

最後に待ち受けるのは絶望という名の救済のみとおっしゃったり。」

 

「主の慈愛を説明する際にも裏切りや破滅を経験してこそ、

初めて真の光を理解できると、熱烈に説かれるのです。」

 

「先ほども、道に迷った私に迷宮の奥で溺れる苦痛もまた、

主が与え給うた最高の愉悦だと耳元で囁かれて・・・」

 

教室が静かになった

 

「・・・何それ、めちゃくちゃ不吉じゃない」

 

コハルが顔をしかめる

ヒフミも引きつった笑みを浮かべていた

 

「そ、それはちょっと怖いですね・・・」

 

「・・・」

 

アズサは何も言わない

だが僅かに眉を顰めている

 

つまりアズサ基準でもアウトらしい

 

("なるほど。")

("マリーがあんなに怯えてた理由が分かった。むしろよく最後まで付いて来たね・・・?")

 

「ですが、聖職者としての所作や知識は完璧で、

お話自体はぐうの音も出ないほど正論なのです・・・。」

 

マリーがぽつりと付け加える

そこが余計に厄介なのだろう

 

話が支離滅裂なら聞き流せる

だが内容そのものは正しい

正しいから否定もできない

 

なのに精神だけが削られていく

 

「だからこそ、否定もできなくて・・・

私、あの司祭様の前だと、どうしても生きた心地がしなくて・・・うぅ」

 

マリーは再び肩を縮めた

まるで天敵を思い出した小動物みたいだった

 

「あはは・・・マリーちゃん、本当にお疲れ様でした。」

 

ハナコが苦笑しながら肩を撫でる

 

「グレゴリーさんは、言葉のナイフで人の心を解体するのがお上手そうですものね♪」

 

「言葉のナイフ・・・」

 

ヒフミが思わず復唱する

妙にしっくりくる表現だった

 

実際グレゴリーは怒鳴ったわけでも、

脅したわけでもない

 

ただ話していただけだ

 

それなのに聞いている側だけが消耗する

 

まるで優しく研がれた刃物みたいに

 

("なるほど・・・。")

("内容は完璧な正論なのに、")

 

("本質がドス黒いから聞いてる側は精神をゴリゴリ削られるわけかぁ")

 

 

「ところで、シスターフッドの方がどうしてこんな所に・・・?」

 

ヒフミがずっと気になっていたのだろう

 

先ほどから何度か口を開きかけては遠慮していたが、

ようやくタイミングを見つけて尋ねた

 

マリーも少し落ち着きを取り戻したのか、

表情を整えて頷く

 

「あ、それはその・・・」

「こちらに補習授業部の方々がいらっしゃると聞きまして・・・」

 

「ハナコさんやグレゴリー司祭様がここにいらっしゃるとは存じておりませんでしたが・・・」

 

そう言いながら、マリーはどこか気まずそうに視線を逸らした

 

「・・・私も、成績が良くないので。」

 

ハナコはほんの少し沈黙してから

けれど次の瞬間には、いつもの柔らかな笑顔を浮かべていた

 

「そう・・・でしたか。はい・・・」

 

 

「そういえば、最初から知ってるようだったけど、ハナコ知り合いなの?」

 

グレゴリーから庇ったり、

最初から知り合いだったような動きをしていた為、

コハルが疑問に思ったのか聞いてきた

 

「あはは・・・少しだけご縁があって、と言いますか。」

 

ハナコは曖昧に微笑む

 

「マリーちゃんは、私を訪ねて・・・という訳でもなさそうですね。」

「補習授業部にどういった用事で?」

 

「あ、はい。」

 

マリーは改めて姿勢を正した

 

「本日は、補習授業部の白洲アズサさんを訪ねて此方に参りました。

伺った所ここにいらっしゃると聞きまして。」

 

「私?」

 

アズサが僅かに首を傾げる

本気で心当たりがないらしい

 

「はい。実は、先日アズサさんが助けてくださった生徒の方から、

感謝をお伝えしたいとの事でして。諸事情がありまして、こうして代わりに。」

 

「・・・?」

 

「感謝・・・?」

 

ヒフミとアズサが同時に頭を傾ける

 

その反応を見て、

マリーも少し困ったように笑った

 

「クラスメイトの方々から、いじめを受けてしまっていた方がいらっしゃいまして・・・」

「その日もどうやら突然、建物の裏手に呼び出されてしまったのだと聞きました。」

 

「そ、そんなことが・・・!?」

 

ヒフミの表情が曇る

 

「いじめ・・・っ!?」

 

コハルも眉を寄せた

 

「・・・まぁ、聞かない話ではありませんね。」

 

ハナコが淡々と呟く

 

「皆さん狡猾に、それでいて陰湿な形で行うので、あまり表には出てきにくいですが。」

 

その言葉に、教室の空気が少しだけ重くなる

誰も否定できなかった

 

「私達も、その方から相談を受けてようやく知ったのですが・・・」

 

「そうして呼び出されてしまった日・・・

そこを偶然通り過ぎたアズサさんが、彼女を助けてくださったとの事で。」

 

「そ、そうなんだ?」

 

コハルがアズサを見る

アズサはしばらく考え込んでいたが、

 

「・・・そういえば、そんな事もあったな。」

「ただ、数に物を言わせて弱い対象を虐げる行為が目障りだっただけだ。」

 

("アズサらしいなぁ・・・")

 

助けた事実は認識している

けれど本人の中では善行という感覚は薄い

 

単純に気に入らなかったから止めただけ

そんな認識なのだろう

 

「そしてその後アズサさんに怒られた方が、正義実現委員会と連絡を取られて・・・」

「何処でその情報が歪曲されたのか分かりませんが、」

「何やら正義実現委員会とアズサさんの間で

それなりの規模の戦闘に発展してしまったとか・・・。」

 

「!?」

 

ここに居る全員その事件に心当たりがあった

ヒフミが目を逸らし、

コハルが額を押さえ、

私は思わず遠い目になる

アズサだけは平然としていた

 

「そうしてアズサさんが催涙弾の倉庫を占拠し、

正義実現委員会達を相手にトラップを駆使して、三時間以上戦い続けたと・・・」

 

「それってあの時の!?」

 

コハルが叫ぶ

ヒフミも「ああ・・・」と何とも言えない顔になった

 

一方でアズサはムスっとしている

 

「何がどうあれ、売られた喧嘩は買う。」

「あの時も弾薬さえ切れて無ければもっと長く戦えたし、あれ以上に道連れも増やせたのに。」

 

「あ、あうぅ・・・」

 

ヒフミが頭を抱える

 

("反省はしてないんだね・・・")

 

「それで、その方が報告も兼ねて私たちの元を訪れてくださり、

アズサさんに感謝したいと・・・」

「ただ、学園では見つけられずに、ここに辿り着いたという次第です。」

 

「・・・そうか。」

 

アズサは少しだけ視線を落とした

 

「別に、特別感謝されるような事じゃない。」

「結局私も最終的に捕まったわけだし。」

 

「後半は特に関係無いと思いますが・・・」

 

ヒフミが小さくツッコむ

 

「それにあの事態は気の毒だけど、いつまでも虐げられてるだけじゃダメ。」

 

アズサは静かに続ける

 

「それが例え虚しい事であっても、抵抗し続ける事を止めるべきじゃない。」

 

その言葉には、妙な重みがあった

アズサ自身の人生そのものが滲んでいるようで

 

誰もすぐには言葉を返せない

 

「・・・そうかもしれませんね。」

 

マリーは優しく頷いた

 

「あの方にもそう伝えておきます。」

 

しばしの沈黙

 

そしてマリーは、少しだけ微笑んだ

 

「・・・アズサさんは、暴力を信奉する氷の魔女だなんて噂がありましたが、」

 

「やはり噂は噂ですね。」

 

「ふふっ。」

 

そこでハナコが楽しそうに笑う

 

「それはそうですが、アズサちゃんには意外と【氷の魔女】らしい所もありますよ?」

「ほら、他の方からするとちょっとだけ表情も読みにくいですし。」

 

「・・・」

 

アズサの眉がぴくりと動いた

 

「ハナコさん・・・」

 

「うふふ♪」

 

ハナコは楽しそうだった

 

 

「・・・マリーちゃんが元気そうでよかったです。」

 

ハナコがふと、先程までとは違う柔らかな声音で言った

 

「はい、私は・・・ですが・・・」

 

マリーが言葉を続けかける

その表情には僅かな迷いがあった

 

ちらりとハナコを見る

何かを気遣うような視線

 

「ふふ。」

 

その瞬間だった

ハナコが柔らかく微笑む

 

まるでその先の言葉を予測していたかのように

 

「またグレゴリーさんに捕まってはあれですので、玄関まで送りますね。」

「さぁ一緒に行きましょう。」

 

「あ・・・」

 

マリーが一瞬だけ言葉を止める

そして、

 

「あ、はい・・・」

 

小さく頷いた

少しだけ名残惜しそうであった

 

「で、では皆さん、お邪魔致しました。」

 

立ち上がり、ぺこりと一礼する

 

「先生も急に訪ねて来てしまってごめんなさい。」

「それではまた。」

 

「"うん、マリーも気を付けてね。"」

 

「はい。」

 

マリーはぺこりと頭を下げる

 

「それでは失礼します。」

 

そうしてハナコとマリーは教室を後にした

扉が閉まり、二人の足音が少しずつ遠ざかっていく

 

やがてその音も聞こえなくなると、教室には静かな空気だけが残った

 

「・・・」

 

「・・・」

 

誰も口を開かない

 

先程まで賑やかだったはずなのに、不思議なほど静かだった

 

そして――

 

「・・・帰ったな。」

 

アズサがぽつりと呟く

 

「う、うん・・・」

 

ヒフミも曖昧に頷いた

何となく全員が同じことを考えていた

 

数秒の沈黙

 

そして

 

「ねぇ。」

 

コハルが真顔で口を開いた

 

「グレゴリー司祭って、本当に聖職者なの?」

 

「"今その話するの?"」

 

思わず苦笑する

 

「だって怖かったんだもん!」

 

コハルは即座に反論した

 

「なんなのよあの人!?」

 

「立ってるだけで変な威圧感あるし!」

 

「話し方もずっと怖いし!」

 

「シスターフッドのあの子も完全に怯えてたじゃない!」

 

「確かに・・・」

 

ヒフミも困ったように笑う

 

「私も少し分かります。」

 

「悪い方には見えないんですけど・・・」

「でも何と言いますか・・・」

 

ヒフミは言葉を探すように首を傾げた

 

「ずっと怖い夢のお話を聞かされているみたいで・・・」

 

「あ、それ!」

 

コハルが机を叩いた

 

「それよ!」

「内容はまともなのに聞いてると不安になるの!」

 

「説教の話聞いただけで私まで怖くなったんだけど!?」

 

正直、少しだけ想像できてしまう

 

グレゴリーのあの低い声で、延々と絶望と救済について語られたら、

確かに精神衛生には良くなさそうだ

 

「・・・?」

 

そんな二人を見ながら、

アズサだけが不思議そうな顔をしていた

 

「そうか?私は特に何も感じなかったが。」

 

「嘘でしょ!?」

 

コハルが叫ぶ

 

「どう考えても普通じゃないわよ!?」

 

「普通かどうかは知らない。」

 

アズサは腕を組んだ

 

「だが強い。」

 

「・・・え?」

 

コハルが目を瞬かせる

 

「グレゴリー司祭だ。」

 

アズサは淡々と言った

 

「何度見ても隙が無い。」

「戦う相手としては厄介だと思う。」

 

教室が静かになる

アズサはこういう評価を滅多に口にしない

 

だからこそ、その一言には妙な説得力があった

 

「そ、そうなの・・・?」

 

ヒフミが恐る恐る尋ねる

 

「少なくとも私よりは強い。」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

全員が黙り込んだ

コハルの顔が引きつる

 

「えぇ・・・」

 

「それ、全然安心できないんだけど・・・」

 

「私もです・・・」

 

ヒフミが小さく頷く

私は何となく窓の外へ視線を向けた

 

庭園の方では、黒い司祭服の姿が小さく見える

 

どうやら本当に庭の手入れをしているらしい

 

("・・・うーん・・・")

 

初めて会った時から感じていた違和感

あの男はただの司祭や管理人には見えない

 

立ち振る舞いもそうだし、視線の配り方もそうだ

 

何より、あの妙な存在感

 

("ナギサの用意した人材らしいけど・・・")

 

補習授業部の監視役

あるいは何かあった時の保険

 

("だとしたら、補習授業部に付けられた監視役としては少し物騒過ぎる気もするけど・・・”)

("それだけ、ナギサも追い詰められているって事かな・・・")

 

少なくともアリウスを知っているアズサが警戒するほどの相手だ

少し気に掛けておいた方がいいかもしれない

 

「"まぁ・・・"」

 

私は小さく肩を竦めた

 

「"今はそれより模試の結果かな。"」

 

「あ。」

 

コハルの表情が固まる

 

「そうだった・・・」

「グレゴリー司祭よりそっちの方が問題だった・・・」

 

「うぅ・・・」

 

さっきまでの勢いはどこへやら

コハルは机に突っ伏した

 

その様子を見て、ヒフミが苦笑する

 

アズサは相変わらず無表情だったが、

どこか少しだけ楽しそうにも見えた

 

補習授業部の、いつもの空気が戻っていた

 

 

「それじゃあ、休憩は終わりかな。」

 

私がそう言うと、

 

「うぅ・・・現実に戻ってきた・・・」

 

コハルが重そうに身体を起こす

 

「頑張りましょう、コハルちゃん!」

 

「うぅ・・・」

 

そう言いながらもコハルは参考書を開き

アズサも何も言わず問題集へ視線を落とした

 

先程までの賑やかな空気が嘘のように、教室には再び鉛筆の走る音だけが響き始める

 

私も席へ戻り、それぞれの様子を見ながら教材へ目を通した

窓の外では、いつの間にか夕日が校舎を赤く染め始めている

 

それから数時間

 

夕食を終え

 

再び勉強会を行い

 

合間に小テストを挟みながら、一日の予定を消化していった

 

また60点が取れず落ち込むコハル

 

そんなコハルを励ましながら一緒に勉強をするヒフミ。

 

相変わらず無表情で勉強していくアズサ

 

そして――

 

「ふふふ・・・」

 

いつもと変わらないニコニコ笑顔のハナコ

 

やがて夜も更け

本日の勉強会は終了となった

 

 

 

 

【合宿所・大部屋】

 

「それでは、皆さん制服や下着や靴下など、洗う物は全部このカゴに入れておいてくださいね。」

 

「ありがとう、よろしく。」

 

「はい・・・はいっ!?し、下着もですか!?」

 

ヒフミが耳まで真っ赤にして声を上げる

 

「なんで!?下着は各自で良いでしょ!?」

 

「洗濯は纏めて一気にした方が水と洗剤の節約になる。

ハナコの言ってる事は間違ってない。」

 

「あ、あうぅ・・・で、ではお願いします・・・」

 

「えぇ・・・わ、私がおかしいの・・・?」

 

コハルだけが理解者を求めるように周囲を見回す

しかし――

 

「はい、ありがとうございます♡」

 

ハナコは満面の笑みで洗濯物を受け取った

何故か家事を任せる時だけ妙に頼もしい

 

「あ、先生は・・・?」

 

「"あー・・・このシャーレの制服は

連邦生徒会の方でクリーニングしてもらってるから、私は良いかな?"」

("それに明日雨だから・・・これ洗濯されたら芋ジャーで授業する事に・・・")

 

「あら、そうなんですね。では、洗濯機を回してきますね。」

「何も問題が無ければ、きっと明日の朝までには乾かす所まで終わるはずです♪」

 

「じゃあ、そろそろ寝る準備をしよう。今日もお疲れ様。」

 

「・・・うん」

 

そうしていると、ヒフミが私の近くに寄って来て、小声で話しかけてきた

 

「あの、先生ちょっとお話が・・・あとでお部屋に行って良いですか・・・?

その、ハナコちゃんの事で・・・」

 

ヒフミの表情は少しだけ真剣だった

 

他の皆にバレない様に小さく頷いて返事をする

 

 

 

【合宿所・小部屋】

 

その後私は、翌日の授業用の資料を再度作っていた

 

【コン、コン、コン】

 

そんな控えめなノックが扉からなった

 

("ヒフミかな・・・?")

「"入っていいよー"」

 

「・・・失礼します。」

 

ヒフミとは違う声が返ってきた

 

("あれ?")

 

扉が開かれると、そこにはハナコが居た

 

「こんばんは、先生。」

 

「"・・・こんばんは、ハナコ"」

 

「ふふっ、こんな簡単に開けちゃうなんて♡不用心ですねぇ♡」

 

("ちょっと頭痛がしてきた・・・")

 

「"ちなみに・・・ハナコ、水着で来た理由は・・・?"」

 

「あぁ、これについてはお気になさらず。パジャマなので。」

 

そう言いながら当たり前のように胸を張る

全く説明になっていない

 

「"そっかぁ・・・そっかぁ・・・・・・"」

 

「うふふっ、それより先生、ちょっと相談したい事がありまして・・・」

 

「実は、アズサちゃんの事なのですが。」

 

さっきまでの何処か緩かった空気が引き締まった

 

「"アズサがどうかしたの?"」

 

そう私が返した瞬間部屋の扉がまたノックされた

 

【コン、コン、コン】

 

「し、失礼します・・・先生、いらっしゃいますか・・・?」

「昨日より遅い時間になってしまってごめんなさい、実は・・・」

 

そう扉を開け、部屋の中を確認する事無く言いながらヒフミが入ってきた

そして、言い切った所で、初めて部屋に私以外にハナコが居る事に気づいた

 

「・・・え。」

 

ヒフミの思考が停止していた

 

「・・・あら。」

 

「"・・・"」

("こんなの知らない・・・教師人生終わったかな・・・")

 

「・・・」

 

「"あー・・・ヒフミ?"」

 

「本当に失礼しましたぁ!?ご、ごめんなさい!私、そんな事とは知らずに・・・!」

「全然知らなかったんです本当です!?え、一体いつから!?」

 

そう言いながら部屋の扉に手をかけ部屋を急いで出て扉を閉めようとする

 

「"待って待って待って!!!"」

 

私はヒフミが閉めようとしている扉を掴んで止める

 

「"私達同性!!私もそんな気ないから!?!?"」

「"うぐぐぐ!!ちっから強いなぁ!!!"」

 

「大丈夫です!!?分かってます!!!!分かってますから!!!!」

 

「"なにも分かってないね?!!"」

 

「ヒフミちゃん、今【昨日より遅い時間】って言いましたね!?」

「つまり昨晩も来たと言う事ですよね!?そうなんですよね!?」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!?」

「また後で、はダメですよね!?どうすれば良いですか、今晩はやめた方が良いですか!?」

「知らなくてごめんなさい間に入ってごめんなさい空気壊してごめんなさいっ・・・!?」

 

「"うぎぎぎ!!ハナコ!このままだと私の教師人生が終わっちゃう!!"」

「"後ろからヒフミを詰問するんじゃなくてヒフミを捕まえて!?"」

 

「待ってくださいヒフミちゃん!詳しく教えてください!」

「昨晩はお二人で何をしていたんですか、今晩は何をする予定だったのですか?!」

「是非説明を、いえ、いっそ今から私の前で実際に再現を・・・!!」

 

「"誰も私の話を聞いてくれない!!!"」

 

 

この後、扉から手が滑った私が吹っ飛び壁に後頭部を強打して、

二人共我に返り、ようやく現場が落ち着いた

後頭部がかなり痛かったが、それから互いの誤解を解いた

 

そして、ついでにハナコはヒフミに怒られ水着からちゃんと着替えさせられていた

 

なお、私の後頭部には立派なたんこぶが完成していた

 

 

「・・・なるほど。先生と一緒に、これからについてのご相談を・・・」

 

「ハナコちゃんも先生に相談したい事があって・・・」

「で、ですがどうして水着で来るんですか!?パジャマが水着ってどういう事ですか・・・!?」

 

「心が落ち着くんですよね。ですので私は、礼拝堂での授業にも水着で参加しましたよ?」

「一度もっと、色々と柔らかく考え見ましょう♪」

 

("多分それ、溜まったストレスが解消されただけでは・・・")

 

「あうぅ・・・」

 

「"あー・・・ハナコ、さっきの話の続きは今じゃない方が良いかな?"」

 

「アズサちゃんの件、ですよね。」

 

「・・・」

 

「いえ、大丈夫です。ヒフミちゃんも一緒に聞いていただければと思います。」

 

「実はアズサちゃん・・・毎晩のように、

何処かへ出かけては夜明けまで戻ってこない事が続いていて。」

 

「そう、だったんですか・・・」

 

「最初は慣れない場所で寝れないのかと思ったのですが、そうでは無いようです。」

「・・・私はアズサちゃんが夜に眠っている所を殆ど見た事がありません。」

 

「確かに私も・・・アズサちゃんがいつも先に起きてますし、

私より早く寝てる事も無かったような・・・」

 

「・・・アズサちゃんが一体何をしているのかは分かりません。

ですがそろそろ、多少無理矢理にでも寝かせてあげないといけないのでは、と。」

 

「何だかアズサちゃん・・・何処か、凄く不安そうで。」

 

ハナコの声音はいつもの軽さを失っていた

 

からかいも冗談もない

純粋な心配だった

 

("・・・アリウス絡みだろうな・・・")

 

「どんな事情なのかは分かりませんが、

どうにかその不安を少しでも軽減してあげたくって・・・」

 

「このままですと、いつかは倒れてしまいます。」

 

そう言い切ったハナコは今度は私とヒフミを睨みつけてきた

 

「・・・それは先生とヒフミちゃんも、ですよ?しっかり寝ないとダメです。」

 

「確かに試験も大切ですが、ただ落第と言うだけです。

身体の健康と比べられるような物ではないと思いませんか?」

 

「"・・・ヒフミ、私はハナコには伝えても良いと思う。"」

 

「・・・そう・・・ですね。」

 

「先生?ヒフミちゃん・・・?」

 

「ハナコちゃん、確かに普通だったら、そうかもしれません。」

 

「ただ、【落第】で済む話ではないんです・・・

あと二回、全ての試験も不合格だったら・・・」

 

「退学なんです。私達はトリニティを去らないといけないんです・・・」

 

部屋の空気が凍り付いた

 

そう言われたハナコが珍しく目を見開き唖然といった表情になった

本当に予想していなかったのだろう

 

「・・・退学?ヒフミちゃん、それはどういう・・・?」

「そ、そんな事校則的に成り立ちません。

退学は色々な手続きと理由が必要で、そんな簡単には・・・」

 

「"・・・"」

 

「・・・先生?」

 

ハナコは私の表情から、先ほどヒフミから聞かされたことが嘘や冗談ではなく、

本当の事だと確信したようだった

 

「・・・まさか本当に・・・?」

 

「・・・」

 

「詳しく、聞かせてください。」

 

私はこの補習授業部の裏の事情を全てをハナコに伝えた

 

 

 

 

「・・・なるほど、そうだったのですね。

全て不合格であれば、全員退学・・・」

「この仕組み自体そもそもおかしいのですが・・・

それをシャーレの超法規的権限を悪用して・・・ですか。」

 

「ハナコちゃん・・・」

「あ、そ、そういえばハナコちゃん、本当は成績良いんですよね?

1年生の時に三年生までの難しい試験まで全部満点でしたよね・・・!?」

 

「・・・」

 

「あの・・・ごめんなさい、

模試の為に先生が見つけてくれたテストが偶々ハナコちゃんのだったようで・・・」

 

「ど、どうして今は、あんな点数を・・・?わざと、ですよね・・・?」

 

「・・・ごめんなさい、知らなかったんです。

失敗したら、まさか【全員退学】だなんて・・・」

「いえ、知らなかったからと言って、許されるものではありませんね・・・

 

「先生にも、ヒフミちゃんにも・・・アズサちゃんやコハルちゃんにも、

申し訳ない事をしました。」

 

「ごめんなさい、先生。。」

 

「ヒフミちゃんも、ごめんなさい。」

 

「い、いえ、その・・・」

 

「"大丈夫だよ、ハナコ。何かしらの事情があるのはなんとなくだけど判るから。"」

 

 

「・・・ヒフミちゃんの言った通り、私のあの点数はわざとです。」

 

「や、やっぱり・・・!?ハナコちゃん、どうしてそんな事を?」

 

「・・・ごめんなさい、言えません。」

「私の、凄く個人的な理由なので・・・ですが、

それで皆さんが被害を受けてしまうのは望む所ではありません。」

 

「なので、安心してください。

最低限皆さんが退学にはならないよう、今後の試験は頑張りますので。」

 

「"・・・ありがとう、ハナコ。"」

 

「い、いえ!?先生にそこまで、感謝して頂くような事では・・・」

「むしろ私が謝罪するべき事です、裸で手をつくだけで足りますでしょうか・・・?」

 

「"なんで時々私の事を懲戒免職にしようとするのかな?・・・なんかハナコ私の事恨んでる?"」

 

「いえ!それはやめて頂けますと・・・!?

今後頑張って下さると聞けただけで、私は安心しました。」

 

「ありがとうございます。

ところで・・・この事実を知っているのは、ヒフミちゃんと先生だけですか?」

 

「そうですね、私達以外はまだ誰も・・・」

 

「なるほど・・・となると、アズサちゃんの不安は試験に起因するものではなさそうですね。

何か私がまだ知らない事がある、と・・・」

 

「"・・・"」

 

「・・・いえ、それ以上に今はこの補習授業部の存在そのものが気になりますね。」

「ミカさん・・・は無理でしょうし、まぁこんな事を企むのはナギサさんでしょうか。」

 

「"はは・・・"」

 

「ですが、どうしてエデン条約を目の前にしてこんな・・・」

「いえ、むしろ目の前だからこそ・・・?」

 

("流石・・・ハナコだね。")

 

ここまでの情報だけで、ほとんど正解へ辿り着いている

相変わらず恐ろしい頭の回転だった

 

「・・・・・・」

「なるほど。この補習授業部は、

エデン条約を邪魔しようとしている疑惑がある容疑者たちの集い、という所ですか。」

 

("いやほんと・・・流石・・・というかするど過ぎない?")

 

ハナコの推察があまりのもドンピシャすぎて思わず顔が引き攣る

 

「ナギサさんらしいと言いますか、相変わらず狡猾な猫ちゃんですねぇ・・・」

 

「"猫・・・"」

 

「どうせなら纏めて処理してしまった方が効率的、といったロジックでしょうか。

何だか私達がまるで、洗濯物みたいな扱いですね。」

 

("もっと酷いゴミ扱いしてたけどね・・・")

 

「・・・先生もナギサさんにしてやられた形でしょうか?」

「成績の振るわない生徒達を助ける」という名目で、善意を利用されてこの役割を担い、

その実シャーレの超法規的顕現が利用されている・・・」

 

「"ははは・・・そうなんだよね・・・"」

("悟られる悟られるな悟られるな・・・!!")

 

人生で類を見ないほどに表情筋を完全にコントロールし、

してやられたという困惑顔を演出した

 

「なるほど・・・ですが、

逆を言えば先生は純粋に私たちの為に頑張って下さっていたのですね・・・」

「・・・ありがとうございます、先生。先生はやはりいい人ですね、ふふっ」

 

("隠せた・・・?いや分からない。")

("ハナコは悟っていても表に出さない子だから・・・")

 

「ハナコちゃん、すごい・・・探偵みたいです。」

「【トリニティの裏切者】、ナギサ様は、それを私や先生に探して欲しいと仰っていました。」

 

「・・・ふふ、なるほど。」

「トリニティの裏切者ですか・・・ナギサさんらしい表現ですね。」

「ティーパーティーのティーホストである彼女の計画を邪魔したら該当する、

とも考えられるロジックですし。」

 

「・・・アズサちゃんは書類の時点で怪しかったので、疑われるのも無理はありませんね。」

 

「コハルちゃんは強いて言えば、正義実現委員会への人質・・・といった所ですか・・・」

 

「・・・?、そう考えると、ヒフミちゃんはどうして容疑者になっているんです?

ナギサさんと親しかったはずでは?」

 

("ファウストなのがバレかかってるからです・・・")

 

「えっ!?わ、私もやっぱり容疑者なんですか・・・!?」

「た、確かに、親しくさせて頂いていたような感じですが・・・ど、どうして私なのでしょう?」

 

思わず半目でヒフミを見てしまう

ヒフミは何故か首を傾げていた

 

いや、君は自覚した方がいい、

容疑者に上がらない子は、正義実現委員会に行くときにバレるかバレないかの話をした際

【そんなヘマはしない】なんて言わない

 

「"・・・・・・"」

 

 

「・・・とにかく、アズサちゃんとは後でもう少しお話をしてみた方が良いかもしれません。

その他についても幾つか、私の方でも確認してみます。」

 

「はい。もし何か分かりましたら、教えてもらえると嬉しいです。」

 

「分かりました。と言う事は私もこの、

深夜の密会に参加させて頂けると言う事でよろしいですか?うふふ、嬉しいです♡」

 

「深夜の密室で、三人寄り添って秘密の遊びだなんて・・・ドキドキが止まりません♡」

 

「そ、その言い方はちょっと・・・」

 

「"うん、だから私を懲戒免職にしようとしないで?"」

「"まぁ・・・もう遅いし、明日に備えてそろそろ皆寝ようか。"」

 

「はい、ではまた明日と言う事で。」

 

「そうです、ね。おやすみなさい。」

 

そうして二人は部屋を後にした

ようやく静かになった室内で、私は小さく息を吐く

 

 

 

【合宿所:廊下】

 

「ん・・・トイレ・・・」

 

そこにはトイレに起きてきたコハルが

ちょうど先生の部屋の前を通り過ぎる所だった

 

その部屋は夜遅い時間なのに今だに扉の隙間からは光が煌々と漏れていた

 

「・・・?あれ?・・・先生の、部屋?こんな時間まで・・・」

 

そんな時、丁度先生の部屋の扉が開き、

ヒフミが出てくる瞬間だった

 

「それでは先生、ありがとうございま・・・あれ?」

 

「・・・!?ひ、ヒフミ!?せ、先生の部屋でこんな時間まで一体何を・・・!?」

 

そうコハルがヒフミに問いかけると同時に

今度は先生の部屋からハナコが出てきた

 

「ふふっ。では、また夜の密会を楽しみに・・・あら?」

 

「・・・っ!!」

 

その瞬間コハルの脳内に咲き散る百合の花園

 

しかも先生まで混ざっている

 

「さ、三人・・・!?バカ、変態!!淫乱族っ!!!!!」

 

真夜中の合宿所にコハルの絶叫が響いた

 

 

 

 




ちなみに、
ハナコがちょっと先生に意地悪なのは、
自分の過去の答案用紙をあえてヒフミに渡したのを気づいてるからです。
なので、ちょっと意地悪で懲戒免職ギリギリな事をしてきています。

哀れ先生。
まぁいらん企みして、自分からハナコに尻尾掴ませに行ったからしかたないね。

グレゴリー司祭又も登場
今回の被害者はマリーさんでした。
プルプル震えて可哀想に。
ちなみに本人は本当にただ案内しただけです
言動が悪に振り切ってるのであれですが。

グレゴリー司祭はトリニティの教会を色々回って説教をしてくれているので、
シスターフッドの教会でも同じ様に説教をしてくれます。

ただその内容が作中でも書いてあるような内容なので、
如何せん教会の上層部からは煙たがられてますね。

わっぴ〜!さんからも、
もう少し説教の内容はマイルドにならないのか、と苦言を呈されています。
が、その現場を見た他の生徒が、あの極悪司祭と共謀して何かするつもりなのではと、
いつものように誤解されています。可哀想ですね。


~今日のセイア~

いつも通り早朝出社したセイア様、
そこには普段の飄々とした表情は無く、愕然とした顔で固まっています。
どうやら、上司のユメ社長から最近太ったのでは?と言われたようです。

そして、ユメ社長なにやら気を利かせて、セイア様を外に連れ出すようですね。
ですが、どうしたのでしょう。
ユメ社長に摑まれて引き摺られているセイア様が事務所の床や壁に爪痕が残る程抵抗しています。
なにやらマズイ予知夢でも見たのでしょうか。

あ、抵抗虚しく祈願屋の社用車である
オーバーランドスタイルにカスタマイズされた車に放り込まれましたね。
どうやら車内でもセイア様が暴れているようですが、
後部座席は中から開けられない様になってるようですね

何と言うか、流石祈願屋と言うべきか、色々と手慣れてます。


延々と走り続けて、アビドス砂漠までセイア様が連れてこられました。
おや、砂漠の一部分が、緑色のガラスになっていて、砂が殆ど消し飛び、
砂岩が露出している場所に到着しましたね。

どうやら、ここが目的地のようですね。
ここで一体何をするのでしょうか・・・



おっと、セイア様今度は車から降りたくないのか、全力で車に摑まっていますね
ですが、アビドス生徒会にはゴリラしか居ないので流石に勝負にもならなかったようです。

セイア様、熱い日差しとは関係の無い汗をかいていますね・・・
そしてそのセイア様の前に立つ祈願屋のユメ社長、
どうやら盾とハンドガンを持ち出してきたので、ここでセイア様と模擬戦でもするのでしょうか?

あ、ユメ社長の装備を見たセイア様が全速力で後ろに逃げていきました。
それを全力で笑いながらユメ社長が追いかけていきます。

どうやら、鬼ごっこをする為に連れてきたようです
ですが、起きてる状況が、鬼ごっこと言えるのか・・・
ユメ社長が撃ったハンドガンから赤い閃光が飛び出し
セイア様の横に着弾する度に小規模の爆発が起きています・・・

もうセイア様が半泣きというより号泣しながら全速力で走っています・・・

あ、ユメ社長が盾を投げました

セイア様それを屈んで避けるも、射線上にあった岩が砕けて消し飛ぶのを見て、
セイア様の顔がもっと青くなっていきます。

なにやらセイヤ様がユメ社長に話しかけていますね。
命乞いでしょうか・・・

あ、どうやら、ラーメンがどれだけ美味しいかについての熱弁をしているようです。
ラーメンが美味しいから太るのもしかたないと言っているようですね。

ユメ社長の笑みが更に深まりました。
それと同時にセイア様の顔が真っ青通り越して真っ白になってます。

セイア様のダイエットは続行と、言う事でしょう。
頑張ってくださいセイア様。


本日までのロールケーキ消費本数:51本
本日までの柴関来店回数:48回
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

Blue Legend〜一般男子の物語〜(作者:宗也)(原作:ブルーアーカイブ)

簡単なあらすじ▼これは何故か中途半端な特典を持ってブルーアーカイブの世界であるキヴォトスに来てしまった一般男子の青春の物語である。▼なお、一部生徒は結託して一般男子を囲い込もうとしている模様。▼詳細なあらすじ▼目が覚めると何故かブルーアーカイブの世界にやって来ていた一般男子高校生。特典みたいな物はあるが、何故か中途半端。しかも原作の9ヶ月前の世界だった。▼原…


総合評価:1082/評価:6.4/連載:55話/更新日時:2026年06月08日(月) 02:26 小説情報

(またしても)原作を知らないオリ主inキヴォトス(作者:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次))(原作:ブルーアーカイブ)

 雑にキヴォトスに放り込まれた何も知らない主人公。▼ 神様の手違いで事故死という雑な理由で転生――かと思いきや、そんな都合の良い異世界がたくさんある訳ねえでしょ(呆れ)という正論パンチで異世界転生は却下され、ただ次は死なないようにと人外めいた身体能力を貰い生き返らせてもらった。▼ ただ神様のサービスか「それじゃ能力持て余すしストレスやろね……なら一か所だけ暴…


総合評価:1618/評価:7.33/連載:26話/更新日時:2026年04月15日(水) 14:53 小説情報

銃弾が飛び交う学園都市?!んでもって銃の耐性なし?!・・・やってやろうじゃねえかこの野郎!!(作者:オーバジン)(原作:ブルーアーカイブ)

突如としてキヴォトスに来てしまった何も知らない無知無知な男子高校生!ブルーアーカイブをやったことない?!噓だろ!マジかよ!▼何とかお情け程度であった特殊能力を活かして生き残れ!銃弾一発が致命傷だゾ!▼そんな男子高校生が歩むキヴォトスでの笑いあり、涙あり、曇らせあり、恋愛あり、シリアスありの、青春物語です。良ければどうぞ見ていってください。


総合評価:1298/評価:6.79/連載:60話/更新日時:2026年06月08日(月) 23:45 小説情報

夢を見ているだけの『反転』少年(作者:歯茎king)(原作:ブルーアーカイブ)

ブルアカ世界に反転した生徒を生み出しました▼もともとヘイローを持っていなかったが、突然自身にヘイローが身についた!▼そんな少年がいろいろなトラブル・事件に巻き込まれたり、巻き込まれに行ったり…▼ちょびっと不憫な少年の物語▼そんな少年は今日も夢を見る▼P.S.▼最後まで男か女かで迷ってました


総合評価:429/評価:6.31/連載:12話/更新日時:2026年06月02日(火) 23:21 小説情報

神話使いの男子生徒(作者:ok.ko)(原作:ブルーアーカイブ)

ブルアカの世界にペルソナ3の召喚機をもった生徒を追加してみました。あ、全てのペルソナが使えて、能力もガチです。▼ペルソナとブルアカどっちもにわかです。▼違うところがあったらどんどんご指摘お願い致します。▼圧倒的駄作、文章力壊滅的、設定とんでもないことになってますが、それでも良かったらどうぞ。▼曇らせかもしれない


総合評価:218/評価:5.7/連載:17話/更新日時:2026年05月15日(金) 22:21 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>