おっさんキヴォトスに行く 作:無い頭のおっさん
【合宿所・廊下】
私が朝起きて教室に向かう途中
廊下の角を曲がったところで、補習授業部の皆と合流した
「先生、おはようございます!」
「お、おはよう・・・」
「ふふっ♡おはようございます。」
いつも通りの朝
ただ、何となく皆の足取りが軽い
それもそのはずだ
第二次特別学力試験まで残り二日
今の私達には、積み重ねてきた努力がある
最初の頃のような重苦しい空気はもう無かった
そんな事を考えながら教室の扉を開く
すると
「遅い!おはよう!」
既にアズサが席に着いて待っていた
しかも妙に元気だった
「あ、アズサちゃん。早いですね?」
「日が昇る前には、すでにここで予習と復習をしてた。」
("あー・・・昨日はぐっすり眠れてたみたいだしね。")
("その分元気になってるのかな?")
「ふふっ、やる気満々ですねアズサちゃん。」
「当然だ、何せ今日も模擬試験がある。だよね、ヒフミ?」
「はい、そうですね。」
ヒフミも微笑みながら頷く
「アズサちゃんはその様子ですと、もう模試への準備は万全という感じですね?」
「うん。」
アズサは短く答える
その顔には妙な自信があった
「第二次特別学力試験まであと二日しか残ってない。」
「いつまでも皆に心配をかける訳にはいかない。」
そして
アズサの目が僅かに鋭くなる
「そして、今回こそ・・・!」
その言葉に込められた気迫に、思わず私は苦笑した
「"あはは・・・"」
「す、凄い気合入ってるじゃん・・・」
コハルがアズサの気迫に少し引いて反応をしていた
「試験範囲の予想問題も、もう何周もしてある。準備は完璧だ。」
「わ、私も負けないんだから!」
コハルも負けじと拳を握る
「正義実現委員会のエリートの力、見せてあげる!」
「では、私も精一杯頑張るとしましょうか♡」
ハナコも楽しそうだ
「"ふふ、皆良い感じに張り切ってるね。"」
「はい・・・!ではせっかくの勢いですし、
このまま模擬試験を始めましょうか?」
「"そうだね、じゃ、皆にまた模試の用紙を配っていくから、席について待っててね。"」
私がそう言うと、皆それぞれの席へ向かう
椅子を引く音
筆記用具を整える音
そんな小さな音が教室の中に響いていた
少し前までなら
模試の話を聞いただけで沈んだ顔をする子もいた
問題用紙を見る前から不安そうにしている子もいた
だけど今は違う
誰も下を向いていない
皆、自分なりの覚悟を持って席についていた
("うん・・・。本当に変わったね。")
私は一人一人の机の上に、模擬試験の問題用紙を裏向けて置いていく
全員に配り終えた所で教卓の前に立った
「"よし、皆準備は大丈夫?"」
四人が無言で頷く
緊張している
だけど、その緊張は最初の頃の不安とは違った
頑張ってきたからこその緊張
結果を出したいという気持ちから来る緊張だった
「"じゃあ、模擬試験スタート!"」
私の合図と同時に、四人が一斉に問題用紙を捲る
教室の中に紙をめくる音が重なった
そしてすぐにカリカリ、とペン先が紙の上を走り始める
「・・・」
アズサは一切迷う事なく問題を読み進めていた
問題文を見る
考える、答えを書く、すぐ次へ
その繰り返し
以前のように問題文の前で長く立ち止まる事は無い
「ふふっ♡」
ハナコも楽しそうに問題を解いている
相変わらず余裕がある
だが、今日は途中で手を止める様子も無かった
まるで最初から最後まで駆け抜けると決めているかのようだった
「こ、これ、知ってるはず・・・!えっと、んと、んんん・・・?」
コハルは時折小さく唸る
だが、それでもペンは止まらない
問題と向き合い続けている
以前なら
一問分からないだけで思考が止まっていた
けれど今は違う
考えて、思い出して、次へ進む
その流れが出来ていた
「・・・」
ヒフミも静かに問題を解いている
焦りは無い
周囲を気にする余裕も無い
ただ真っ直ぐ答案へ向き合っていた
私はそんな四人の様子を眺めながら、静かに微笑む
("うん。皆、本当に頑張ったんだね。")
教える事は出来る
手助けも出来る
だけど、努力そのものは本人にしか出来ない
毎日積み重ねてきたのは間違いなく彼女達自身だった
だからこそ
今、こうして問題へ向き合う姿が少し誇らしかった
やがて、試験終了の時間が訪れる
「"はい!そこまで!"」
私が声を掛ける
「"ペンを置いてね。今から回収していくから。"」
四人が素直にペンを置いた
私は答案を一枚ずつ回収していく
アズサ
ハナコ
コハル
ヒフミ
回収する途中、自然と視界に入る回答欄
空欄が少ない
どの答案も、しっかり最後まで埋められていた
("これは・・・。")
思わず期待してしまう
だが、まだ分からない
埋まっている事と正解している事は別問題だ
私は答案を教卓へ持って行き、そのまま採点を始めた
教室の中が静かになる
皆も結果が気になるのだろう
誰も余計な事は喋らない
採点を続けながら、私は内心驚いていた
("え・・・?")
一枚
また一枚
丸が増えていく
予想していた以上だった
そして、全員分の採点を終える
私は答案を揃えて顔を上げた
「では先生・・・!」
ヒフミが身を乗り出す
「発表をお願いします!」
「"うん。"」
私も自然と笑顔になる
「"じゃあ皆、結果発表するよ。"」
教室の空気が一気に張り詰めた
誰も言葉を発しない
皆、固唾を呑んで待っている
私は一枚目を見た
「ハナコ。」
「はい♡」
「69点。合格。」
「うふふ♡」
ハナコの笑みが深くなっていた
続けて
「アズサ。」
「・・・」
「73点。合格。」
一瞬、教室が静まり返る
アズサは自分の答案と私の顔を見比べた
そして
僅かに胸を張る
「・・・うん!」
短い返事
だけど、その表情はどこか誇らしげだった
「コハル。」
「は、はい!」
「61点。合格。」
「ほ、本当っ!?」
コハルが立ち上がりそうになる
「最後にヒフミ。」
「はい。」
「75点。合格。」
「・・・!」
ヒフミの顔がぱっと明るくなった
私は四人を見渡し、そして改めて告げた
「"全員合格だよ。"」
その瞬間、張り詰めていた空気が一気に弾けた
「や、やりました・・・!!」
真っ先に声を上げたのはヒフミだった
両手を胸の前でぎゅっと握りしめながら、心の底から嬉しそうな顔をしている
「ほ、本当っ!?嘘ついてない!?」
コハルが慌てて答案を確認する
何度も点数を見返し
そして
「ご、合格してる・・・」
呆然と呟いた
「・・・!」
アズサも自分の答案を見ていた
73点
その数字を確認してから、小さく頷く
そして僅かに口元が緩んだ
本人は隠しているつもりなのだろう
だけど、付き合い始めた頃のアズサなら絶対に見せなかった表情だった
「凄いです!」
ヒフミがアズサの手を取る
「アズサちゃん、60点どころか70点を超えてしまいました!」
「本当に凄いです!」
「頑張りましたね・・・!」
「・・・うん!」
アズサが力強く頷く
その返事は短かった
だけど、どこか誇らしげだった
("うん。嬉しそうだね。")
私も思わず笑みが零れる
「コハルちゃんも!」
ヒフミは今度はコハルの方へ向いた
「ギリギリでしたが、これは紛うことなき合格です!」
「凄いです!」
「やりましたね!」
「ゆ、夢とかじゃないよね・・・?」
コハルが自分の頬をつねる
「いひゃっ、痛い・・・」
「じゃ、じゃあ本当なんだ・・・!」
そして次の瞬間、勢いよく立ち上がった
「あはっ・・・!こ、これが私の実力よ!」
「見たか!!」
「はい!」
ヒフミも満面の笑みで頷く
「これぞ正義実現委員会のエリートです!」
「流石です!」
「ふ、ふふん!」
コハルが胸を張る
だが耳は真っ赤だった
きっと照れているのだろう
そんな様子にハナコがくすりと笑う
「可愛いですねぇ♡」
「う、うるさい!」
「それに、ハナコちゃんも・・・!」
ヒフミがハナコを見る
その瞬間、少しだけ声が震えた
「・・・運が良かったですね。」
ハナコはそう言って微笑む
「良い感じの数字でした♡」
けれど
ヒフミは首を横に振った
「違います。」
「え?」
「運じゃありません。」
ヒフミは真っ直ぐハナコを見る
「ハナコちゃんも頑張りました。」
「ちゃんと頑張った結果です。」
「・・・」
ハナコが少しだけ目を見開く
「良かったです・・・」
ヒフミの声が小さくなる
「本当に・・・」
その目には薄っすら涙が浮かんでいた
("そうだよね・・・")
私は静かに二人を見つめる
私に任せてとは言ったが、
ヒフミはずっと背負っていた
ハナコの事を、退学の危機にある補習授業部の事を
同じ生徒であるはずなのに
ずっと一人で
「ハナコちゃんに以前何があったのか。」
「何を抱えているのか。」
「私はまだ分かりません。」
ヒフミはそう言った
「でも・・・良かったです・・・」
「本当に。」
「ヒフミちゃん・・・」
ハナコの表情から
いつもの余裕が少しだけ消える
「ありがとうございます。」
「前の実力をすぐに取り戻せるよう、私もお手伝いしますね。」
「本当に、本当に良かったです・・・」
「・・・はい。」
ハナコが小さく頷く
「ごめんなさい。」
「ご心配をお掛けしてしまって。」
その言葉にヒフミは首を横に振った
「謝らなくて良いんですよ。」
「私達、仲間なんですから。」
「・・・」
ハナコは少しだけ目を伏せる
そして
「そうですね。」
柔らかく微笑んだ
その笑顔はいつもの作ったような笑顔ではなく
ほんの少しだけ本音が見えた気がした
教室の中に穏やかな空気が流れる
誰もが安心していた
誰もが喜んでいた
一週間
短い時間だった
けれど
皆で積み重ねてきた努力は確かに形になった
("本当に・・・。")
("皆、頑張ったね。")
そう思っていた時だった
突然
ヒフミが勢いよく立ち上がる
「・・・と言う事で!」
さっきまで泣きそうだったとは思えない程元気な声だった
「約束通り!」
「モモフレンズグッズ授与式を始めますっ!」
そう言うと、自分の鞄をごそごそと漁り始めた
そして、机の上に大量のぬいぐるみやキーホルダーを並べ始める
「"お、おぉ・・・"」
思わず声が漏れる
相変わらず凄い量だ
しかも綺麗に手入れされている
間違いなく大事にしているのだろう
「・・・!!」
そしてその瞬間だった
アズサの目が輝く
本当に輝いた
さっきまで試験結果を聞いていた時よりも分かりやすく
明らかにテンションが上がっている
("あー・・・なるほど。")
("今日やたら張り切ってた理由、これか。")
思わず苦笑してしまう
「さぁ!」
ヒフミが両手を広げる
「皆さん好きな子を選んでください!」
「なるほど・・・!」
アズサが真剣な顔になる
「むむ・・・!」
何故か試験の時より真面目な顔だった
「えっと、私は謹んで遠慮しますね。」
「わ、私も・・・」
コハルとハナコは即答だった
二人とも興味が無いらしい
「そ、そうですか・・・」
ヒフミが少しだけ肩を落とす
だがすぐに私へ振り向いた
「あ!先生はどうですか!?」
「"え?私?"」
予想外の流れだった
机の上に並ぶグッズを見る
正直詳しくはない
知らないキャラクターばかりだ
「"えっと・・・そうだなぁ。"」
並んだグッズを眺めていると
一つのキーホルダーが目に入った
どこか知的そうな顔をしたキャラクターだ
以前ブラックマーケットで、ヒフミとノノミが話していた
小難しい事ばかり言うキャラクターだったはず・・・
「"じゃあ、このキーホルダー貰っても良いかな。"」
「はい!」
「どの子ですか?」
「"このMr.ニコライって子。"」
「あっ!」
ヒフミの顔が明るくなる
「ニコライさんですね!」
「"知り合いに私にだけ小難しい事ばっかり言う人が居るからさ。"」
「"その人にあげようかなって。"」
「ふふっ。」
ヒフミが嬉しそうに笑う
「それならピッタリかもしれません!」
そう言ってキーホルダーを差し出してくる
私はそれを受け取った
小さなワラビーのようなキャラクターだった
「"ありがとう、ヒフミ。"」
「いえいえ!」
ヒフミは満足そうに頷く
私はキーホルダーをポケットへしまった
その間にも
背後ではアズサが人生最大の選択を迫られていた
「ど、どうしよう・・・」
真剣な声が聞こえる
振り返ると
アズサがぬいぐるみの山の前で固まっていた
「私は・・・私は・・・!」
まるで試験問題と戦っている時みたいな顔だった
「ダメだ・・・!」
「この中から選ぶなんてそんな難しい事・・・!」
「"いや、そこまで・・・?"」
思わずツッコんでしまった
「この黒くて角が生えたのも良いし・・・」
「メガネのカバも・・・!」
「か、カバではなく・・・」
ヒフミが慌てて訂正する
「ペロロ博士は鳥なのですが・・・」
「そうだったのか。」
アズサが真面目に頷いた
「だが可愛い。」
「可愛いですね・・・」
そこはヒフミも同意だった
「どうすれば・・・」
アズサが頭を抱える
「このどちらかを選ぶなんて私には・・・」
そして真顔でヒフミを見る
「無理だ。頼むヒフミ。」
「ヒフミが私の代わりに選んでくれ。」
「ええっ!?」
ヒフミが目を丸くする
「わ、私ですか?」
「うん。」
アズサは真剣な顔で頷いた
「私はこういう時の判断が苦手だ。」
「どちらも魅力的に見える。」
「なるほど・・・」
ヒフミも腕を組んで考え始める
「えっと・・・スカルマン様とペロロ博士ですよね。」
二つのぬいぐるみを見比べる
そして
「では!」
ヒフミが片方を持ち上げた
「こちらのペロロ博士でどうでしょう!」
「・・・!」
アズサの目が向く
「実はこのペロロ博士。」
「とても物知りで勉強も出来るキャラクターなんです。」
「まさに今、お勉強を頑張っているアズサちゃんにぴったりかなって。」
「なるほど。」
アズサが感心したように頷く
「そういう設定だったのか。」
「はい!」
ヒフミも嬉しそうだ
「ちょっとだけ勉強し過ぎたせいで。」
「少しおかしくなってしまったという裏設定もありますが・・・」
「・・・」
「・・・」
皆の視線がペロロ博士へ向く
大きく見開かれた目、どことなく危険な笑顔
何だろう、凄く賢そうなのに
同時に凄く危なそうでもある
("少し・・・かなぁ・・・")
("完全に目が据わってる気がするけど・・・")
だが
当のアズサは気にならなかったらしい
「よし。」
ぬいぐるみを受け取る
「じゃあこの子だ。」
「はい!」
ヒフミも満足そうに頷いた
アズサはしばらくペロロ博士を眺める
前から
横から
少し持ち上げて
また正面から
そして
「・・・」
ぎゅっと、大事そうに抱きしめた
「"良かったね、アズサ。"」
私がそう声を掛けると
アズサはぬいぐるみを抱えたままこちらを見る
「うん。」
その返事は短かった
だけど
次の瞬間、ふっと表情が緩む
「気に入った。本当に可愛い。」
「好き。」
そして、少しだけ頬を擦り寄せる
「えへへ・・・」
教室が静かになり、誰も何も言わない
ただ
その笑顔を見ていた
("あぁ・・・そんな顔も出来るようになったんだね。")
少し前まで
アズサは笑う事すら慣れていなかった
友達と過ごす事も、誰かから何かを貰う事も当たり前ではなかった
だからこそ今の笑顔が何だか眩しく見えた
「ありがとう、ヒフミ。」
アズサが言う
「これは一生大切にする。」
「えっ!?」
ヒフミが慌てる
「い、いやいや!」
「そこまで言っていただけると私もちょっとびっくりしますが・・・!?」
「本当だ。」
アズサは真顔だった
「それに。」
少しだけ考え、そして静かに続けた
「友達から貰った初めてのプレゼントだから。」
「・・・」
ヒフミが言葉を失う
コハルも、ハナコも
少しだけ目を見開いた
それがアズサにとってどれほど特別な事なのか
皆理解してしまったからだ
「だから。」
アズサがペロロ博士を持ち上げる
「これからはこの子の事をヒフミだと思って大事にする。」
「ええっ!?」
ヒフミが真っ赤になる
「そ、それはちょっと恥ずかしいですね!?」
「それとペロロ博士は私ではありません!」
「あとカバでもありません!鳥です!」
「そうだった。」
アズサが真面目に頷く
「だが可愛い。」
「そこはありがとうございます・・・!」
ヒフミが頭を抱える
そのやり取りを少し離れた所から見ていたハナコがくすりと笑った
「趣味の世界は広いですねぇ♡」
「・・・うーん。」
コハルは何とも言えない顔をしていた
だが、その口元は少しだけ緩んでいる
皆笑っていた
穏やかな空気だった
つい数日前まで
退学の危機に怯えていたとは思えないほどに
教室には笑顔が溢れていた
("うん。")
("こういう時間も大切だよね。")
窓の外から吹いてきた風がカーテンを揺らす
午後の日差しは暖かく
教室には心地良い空気が流れていた
そして、その後もテストの結果が良かったからだろうか
皆の士気は高く、勉強は引き続き良い雰囲気のまま進んでいった
そうして時間は過ぎ――
【特別学力試験前日】
翌日
第二次特別学力試験を明日に控えた朝
いつもの教室には補習授業部の皆が集まっていた
一週間前この部屋には重苦しい空気が漂っていた
けれど今は違う
教室の空気は明るかった
勿論、試験前特有の緊張感はある
だが、それ以上に
やれるだけの事はやったという自信が皆の表情に見えていた
「・・・いよいよ明日ですね。」
ヒフミが静かに口を開く
「う、うん・・・」
「第二次特別学力試験。」
その言葉を聞いても
以前のような暗い表情になる者は居なかった
「ふふっ・・・」
ハナコが微笑む
「何だかあっという間でしたね。」
「はい。」
ヒフミも笑顔で頷く
「一週間と言う短い時間でしたが、私達はきちんと努力を積み上げました。」
「これは必ずや無駄にならないと信じています。」
その言葉には不思議な説得力があった
実際に努力してきたからだ
朝から晩まで、時には眠気と戦いながら
時には心が折れそうになりながら
それでも諦めなかった
「模試の結果も良かったですし・・・」
「今の私達であれば十分に、第二次特別学力試験に合格出来るはずです!」
「ですが!」
ヒフミが少しだけ声を強める
「慢心する事無く、最後まで頑張らないといけません!」
「あと一日、最善を尽くしましょう!」
「うん。」
アズサが力強く頷く
「当然だ。何なら100点を目指して頑張る。」
「わ、私も!」
コハルも続く
「あらあら。」
ハナコが楽しそうに笑う
「それなら私もそう言う事で・・・ふふっ♡」
「わ、私はちょっと100点は難しそうですが・・・」
ヒフミが慌てて両手を振る
「と、とにかく!」
「最終日も、張り切って勉強していきましょう!」
「"うん!皆頑張ろう!"」
私もそう声を掛ける
すると、ポケットのスマホが小さく震えた
「ん?」
取り出して確認する
画面には一件のメッセージ
差出人は――ナギサだった
内容は短い
時間があるなら会いたい、そう書かれていた
("ナギサ・・・?このタイミングで・・・?")
少し考える
だが、無視する訳にもいかない
私は皆の方を向いた
「"皆ごめん。"」
「"ちょっと呼び出しが入ったから少しだけ外してくるね。"」
「あ、分かりました!」
ヒフミが頷く
「その間は皆で自習してますね!」
「"うん、ごめんね。"」
「気にしないでください!」
「先生も忙しいでしょうし。」
「"うん"」
私は軽く手を振る
そして教室を後にした
廊下へ出る
背後からはページをめくる音
ペンを走らせる音
皆もう自然と勉強を始めていた
("本当に成長したなぁ・・・")
少しだけ嬉しくなる
以前なら、先生が居なくなった途端に集中が切れていたかもしれない
けれど今は違う
もう彼女達は自分の意思で前へ進める
そんな事を考えながら
私はナギサに指定された場所へ向かった
【トリニティ総合学園・テラス】
穏やかな風が吹いていた
トリニティの校舎を見下ろせるテラス
そこに一人の少女が座っていた
紅茶の入ったティーカップ
風に揺れるライトブラウンの髪
そして変わらぬ気品を纏った姿
ナギサだった
私の姿に気付くと
彼女はゆっくり振り返る
「・・・お待ちしておりました。ご無沙汰しております、先生。」
「"久しぶり、ナギサ。"」
「ふふっ。」
ナギサは微笑む
だが、その笑顔はどこか硬かった
「あれからお変わりはありませんか?」
「合宿の方はいかがでしょう、何か困った事等ありませんでしたか?」
「"うん、ナギサのおかげで合宿所でも快適に生活を送れてるよ。"」
「"ありがとう。"」
「それは何よりです。」
ナギサは静かに頷く
そして
紅茶を一口飲んだ
「ところで。」
彼女の声色が少し変わる
「先生。」
「本日は少々、お聞きしたい事がありまして。」
("・・・来る。")
何となく分かっていた
この呼び出しが
ただの世間話で終わるはずがない事くらい
ナギサはカップを置く
そして真っ直ぐ私を見る
「補習授業部の皆さんを見て。」
「何か分かった事はありましたか?」
「例えば――」
一拍
「トリニティの裏切り者は誰なのか、とか。」
風が吹く
テラスの手すり越しに見える空は青く
校庭からは生徒達の声も聞こえてくる
平和な昼下がり
けれど今、この場所だけは違った
私は小さく息を吐き、そしてナギサを見る
「"・・・ナギサ。"」
「"前に言った時と同じ事をもう一回言うけど。"」
「"私は私のやり方で対処するよ。"」
「・・・」
ナギサは何も言わなかった
ただ静かに目を伏せる
まるで、その返答が来る事を最初から分かっていたかのように
「・・・そうでしたね。」
やがて小さく呟く
「ただ。」
「第二次特別学力試験を目前にして、改めてそこを確認したかったのです。」
「そこで、本日こうしてお越し頂いた訳でして。」
そう言ってナギサは私を見る
その視線は穏やかだった
だが、どこか焦っているようにも見えた
("・・・不安なんだね。")
("ナギサ。君は今、自分の選択が正しいと信じたい。")
("だから確認したい。私が味方なのか。それとも敵なのか。")
そんな風に思えた
「・・・恐らく。」
ナギサが口を開く
「ミカさんも接触してきましたよね?」
「ミカさんと何をお話しになったのか・・・」
「よろしければ、教えて頂けませんか?」
私は首を横に振る
「"ナギサ。私は誰かを疑う事に時間を費やすつもりは無いよ。"」
「"私は先生だからね。生徒の頑張りが報われるように最善を尽くすだけ。"」
「・・・」
ナギサは少しだけ目を閉じた
そして、小さくため息を吐く
「ふぅ・・・。」
それは呆れでも怒りでもない
諦めに近い吐息だった
「一度改めて、説明してみましょうか。」
「どうして彼女たちなのか。」
風が吹く
ライトブラウンの髪が揺れる
「先生の方にも色々と情報網があると思いますが・・・」
「順番にお話ししましょう」
ナギサの声は落ち着いていた
まるで会議で報告をするように
感情を切り離した口調で
「まずコハルさんは、ハスミさんを統制するための存在です。」
「ハスミさんは誰よりもゲヘナの事を憎んでいます。」
「いつ何をしでかすか分からない、時限爆弾のような存在です。」
私は黙って聞く
ナギサの言葉は論理的だ
少なくとも表面上だけは
「そしてハナコさんは、本来誰よりも優秀な才能を持っていたにも関わらず、
今はわざと試験で本気を出していません。」
「何を企んでいるのか、全く理解できない状態です。」
「アズサさんは、そもそも存在自体が色々怪しい所ばかりです。」
「それに、他の生徒達と何度も暴力事件を起こしている。統制不能な存在ですし。」
一人ずつ
まるで証拠を積み上げるように
ナギサは語る
その姿は冷静だった
冷静で、理性的で、
だからこそ危うかった
("・・・違う。違うよ、ナギサ。")
("君は彼女達を見ていない。")
("見ているのは情報だけだ。")
("報告書だけだ。")
("噂だけだ。")
("恐怖だけだ。")
だけど、その言葉は飲み込む
今のナギサには届かない
それを私は知っている
そして、ナギサは最後の一人の名前を口にする
「ヒフミさん、は・・・」
そこで初めて
言葉が止まった
ほんの僅か、数秒にも満たない沈黙
けれど、それまでの三人とは明らかに違った
私はその沈黙を見逃さなかった
だからこそ静かに問いかける
「"ヒフミはナギサにとって友達だよね?"」
ナギサの肩が微かに揺れた
風が吹く
沈黙が落ちる
そして彼女はゆっくりと頷いた
「・・・はい。」
「そう、ですね。」
その声は先程よりも少しだけ小さかった
「確かに私とヒフミさんは友達、と言えるでしょう。」
「私はヒフミさんの事をとても大切に思っています。」
「私は彼女の純真な所を好いている。その事は間違いありません。」
その言葉に嘘は無かった
少なくとも私にはそう見えた
ナギサは本当にヒフミを大切に思っている
だからこそ――
「ですが。」
その一言が続いてしまう
「あの子の正体が実は、恐ろしい犯罪集団のリーダーである。」
「という情報がありました。」
「"・・・・・・"」
思わずナギサから目線を逸らしてしまう
("やっぱりバレてるよ、ヒフミ・・・")
("まぁ・・・そうなるよね。")
("ホシノを助ける時にファウストって名乗っちゃったし・・・")
脳裏に穴の開いた紙袋を被ったヒフミの姿が浮かぶ
思わず変な方向へ考えそうになるが、今はそんな場面ではない
ナギサは気付いている
少なくとも疑っている
そして問題は
その情報が正しいかどうかではない
ナギサがどう受け止めたかだ
「こういったお話が、かえって一番怖いのです。」
ナギサは静かに言う
「信じていたからこそ、何かが見えなくなっている・・・」
「盲目な状態になっているのでは、と。」
「"・・・"」
私は黙って聞く
その言葉はある意味では正しかった
人は信じたいものを信じる
見たいものを見る
それは誰だって同じだ
("そうだね・・・信じているからこそ。")
("近いからこそ。見えなくなる事はある。")
("それは間違いじゃない。")
けれど。
今のナギサはその事実を他人に向けながら
自分自身には向けられていない
「どれだけ注意を払って築いた塔も、小さな亀裂から簡単に崩れてしまう物・・・」
ナギサは手すりの向こうを見る
トリニティの校舎
中庭
行き交う生徒達
その全てを守ろうとしている少女の横顔だった
「私はちゃんとヒフミさんの事を理解できているのか」
「それともはやり私が知らない真実があるのか・・・」
「私には分からないのです。」
少しだけその声が弱くなる
先程までの断定的な口調ではない
疑念、不安、迷い
そういったものが滲んでいた
「"ナギサ"」
私は静かに口を開く
「"一度、皆とよく話し合ってみたらどう?"」
「"ちゃんと話し合えば、誤解している事や"」
「"それぞれの事情もちゃんと分かるかもしれないよ。"」
ナギサは黙る
数秒
沈黙が続いた
そして
ゆっくりとこちらを見た
「・・・話し合って何になるのですか?」
その声は静かだった
だが
先程よりも冷たい
「証明が出来るのですか?」
「ヒフミさんの心を。」
「本心を。」
「本音を。」
「ヒフミさんの口から出たその言葉が真実だと。」
「どうやって証明すると言うのです?」
「そうではない。」
「誤解だ。」
「事情がある。」
「その言葉にどれだけの意味が?」
「どれだけの真実性が?」
「・・・心の中身など。」
「証明できるものではありません。」
「ヒフミさんの優しい心。」
「礼儀正しい所。」
「思いやりのある所。」
「それらを痛い程知っていても。」
「本音を知る事は出来ないのです。」
「当然です。」
そして
まるで自分自身に言い聞かせるように
静かに続ける
「どう足掻いたって。」
「私達は、所詮他人ですから。」
風が吹く
テラスに沈黙が落ちる
「"・・・・・・"」
("ナギサ・・・")
私は知っている
この言葉がどこから来るのか
何度も見てきた
何度も聞いてきた
誰かを信じたい
信じたいのに信じられない
裏切られるかもしれない
また失うかもしれない
そんな恐怖の先にある言葉だ
("今回も・・・")
("また、その結論に辿り着くんだね。")
ナギサは小さく息を吐く
そして
迷いを切り捨てるように告げた
「ですから、退学させるしかないのです。」
「エデン条約・・・その成功の為に。」
ナギサは迷いなくそう言い切った
先程まで僅かに見えていた不安も、躊躇いも
その瞬間だけは見えなくなっていた
自分を納得させるように
自分自身へ言い聞かせるように
そう結論付けているように見えた
「"・・・"」
私はしばらく何も言わなかった
ただナギサを見る
彼女もまた黙っていた
風だけが静かに吹いている
("そうだね。ナギサはいつだって真面目だった。")
("誰よりも責任感が強くて。")
("誰よりもトリニティを守ろうとしていた。")
("だからこそ。誰よりも疑う事を覚えてしまった。")
静かに口を開いた
「"ナギサ。"」
「・・・はい?」
「"今の君は。"」
私は彼女を見る
真っ直ぐに逃げる事なく
「"疑心暗鬼の闇の中に居る。"」
ナギサが僅かに眉を動かした
「・・・はい?疑心暗鬼の、闇?」
その言葉は予想外だったのだろう
私は続ける
「"今のナギサは、自分が見たい、信じたい。そういった物だけしか見れてない。"」
「・・・」
ナギサの表情が少しずつ硬くなっていく
「"今は、まだ私の言葉は本当の意味でナギサには届かないかもしれない。"」
「"でも。"」
そこで私は一度言葉を区切る
青空を見上げる
遠くで鳥が飛んでいた
いつもと変わらない景色
なのにこの瞬間だけは何故か少し遠く感じた
("何度も失敗した。")
("何度も届かなかった。")
("何度も救えなかった。")
("それでも。今回は違う。")
私は再びナギサを見る
「でも、
「そして絶対に、補習授業部の皆を合格させる。」
テラスに静寂が落ちる
ナギサは何も言わない
ただ私を見ていた
長い沈黙だった
やがてふっと小さく笑う
「・・・ふふっ」
その笑みは穏やかだった
けれど、どこか冷たかった
「そうですか。」
「理解しました。」
ナギサは紅茶のカップを手に取る
そして一口飲んだ
「まぁつまりは」
「お話がシンプルになったと言う事ですね。」
「"・・・"」
私は何も答えない
ナギサも答えを求めてはいなかった
既に彼女の中では結論が出ている
「ええ、承知しました。」
カップを置く
その仕草はいつも通り美しかった
「どうか頑張ってください」
「先生。」
その言葉と共に
ナギサの瞳がこちらを見る
そこにある感情を私は知っていた
敵意
というほど単純なものではない
警戒、不信、そして失望
それらが複雑に混ざった視線だった
「私は。」
ナギサが静かに告げる
「私なりに頑張りますので。」
("・・・うん。知ってるよ。")
("君は本当に頑張ってる。")
("だから苦しいんだ。")
私は小さく息を吐く
そして最後にもう一度だけ
ナギサへ言葉を向けた
「"ナギサ"」
彼女がこちらを見る
「"最後にもう一度言うよ。"」
「"私は、生徒皆の味方。だからね。"」
風が吹く
ライトブラウンの髪が揺れる
ナギサは何も答えなかった
ただ静かにこちらを見ていた
その沈黙の意味を
今の私には理解できた
だからそれ以上は何も言わない
私は踵を返した
そして、ナギサに背を向ける
テラスの出口へ向かって歩き始めた
後ろから声は聞こえない
引き止める言葉も無い
ただ、風だけが吹いていた
テラスを出る
窓の外では生徒達が思い思いに昼休みを過ごしていた
楽しそうな笑い声
談笑する生徒達
そんな平和な光景が広がっている
「・・・」
けれど私の心は少しだけ重かった
("ナギサは止まらない。")
これは分かる
知っている、何度も見てきた
("きっと第二次特別学力試験も確実に妨害してくる。")
そうしなければならない
そう信じているから
ナギサは必ず動く
そこまでは予測できる
問題はその先だった
("いつもであれば")
廊下を歩きながら考える
("試験会場は急遽変更される。")
("補習授業部はトリニティ郊外の廃ビルへ向かう。")
("そして。")
胸の奥が少しだけざわつく
("そこで私達を纏めて吹き飛ばす。")
それが私の知っている未来
何度も繰り返した未来
何度も見てきた失敗
けれど今回は違う
足が止まる
窓の外を見る
青空が広がっている
("今回は違う。")
思い返す
見た事のない司祭
グレゴリー
深夜の外出
ハルナとの遭遇
ヒナとの接触
百回以上それだけ繰り返しても
一度も存在しなかった出来事ばかり
("グレゴリー。")
("あの人は何者なんだろう。")
ふと庭園を思い出す
いつも、大切な物の様に庭園に紛れた
たんぽぽの手入れをしていた不穏な司祭
("分からない。分からない事が増えてる。")
それが不安だった
未来を知らない
先が見えない
それは何百回も未来を見続けてきた私にとって
酷く恐ろしい事だった
知らず知らずのうちに
拳を握り締めていた
("もし。私の知らない所で。")
("取り返しのつかない何かが起きていたら。")
("もし。私が気付いていないだけで。")
("既に手遅れになっていたら。")
胸が苦しくなる
視界が少しだけ揺れる
その時だった
脳裏に聞き慣れた声が蘇る
【未来がズレたんなら。今までの答え合わせなんて出来へん。】
思わず苦笑する
("アンラさん・・・")
【せやからな。次に何が起きるか。】
【そんなもんばっかり見とったら足元掬われる。】
あの時は少し乱暴な理屈だと思った
けれど今なら少しだけ分かる
私は未来ばかり見ていた
次に何が起きるか
何が起きる予定か
どこで失敗するか
そんな事ばかり
だから未来が変わると不安になる
【わからんのやろ?ほんなら簡単や。】
廊下の窓に映る自分を見る
少しだけ疲れた顔
少しだけ怯えた顔
そんな私へ向けるように
あの声は続く
【わからんから。最悪を想定して。】
【過剰なくらい準備するんや。】
「・・・ははっ。」
思わず笑ってしまう
本当にあの人らしい
雑で
乱暴で
でも妙に納得してしまう答えだった
("そうですね。")
小さく息を吐く
胸の奥にあった重さが少しだけ軽くなる
("未来が読めないなら。読めない前提で動けば良い。")
("それだけですよね。")
私は歩き出す
補習授業部の待つ教室へ向かって
明日の試験
その先の未来
何が起きるかは分からない
けれど、一つだけ分かる事がある
("今度こそ。絶対に皆を合格させる。")
その決意だけは
何一つ揺らいでいなかった
さて、エデン条約編二章もだいぶ山場が近づいてきましたね。
そして、周回先生遂に一皮むけました。
そう、これをしたかった。
だからこそ、アンラも先生を今回はかなり放置している。
アンラ自身、生徒の自立心を育てるために極力手は出さないようにしてますが、
それは先生も同じ事なんですよね。
なんせ先生も生徒もアンラからしたら子供なので。
あ、ちなみにある一部分、先生の発言に""が取れているのは仕様です。
そして、先生が周回していた場面が出ましたね。
先生の道のりでは、原作ルートには行っていないので、
トリニティ内で爆破されていました。
一度目の爆破をバリアで防ぐも、
そのままビルが倒壊し瓦礫で圧殺される等を何度も経験しています
一応そこの爆破を潜り抜けて、第三次の開催日までたどり着く事に成功したルートも存在します
ですが、そのルートでは、ミカのクーデターが発生した為、
そもそも第三次試験が実施されませんでした。
なので、現在原作ルートを進んでる先生はこっから先の出来事はほぼほぼ初見になります。
まぁどっかの誰かのセリフのせいで、過剰防衛クラスに準備を進めて原作を潰しに行く可能性もありますが・・・まぁなんとかなるでしょう。
~今日のセイア~
おや、今日のセイア様は何やら凄く真剣な表情をしながら、誰かに連絡をとっていますね。
日課の業務をほったらかしにして、電話をかけてるようです。
ユメ社長もセイア様の前で心配そうな顔をしているので、これは何かあったのかもしれません。
電話の内容をちょっと聞いてみましょう。
えっとなになに?
ビルの爆発が大規模な爆破に変わった?
うーん、なにやらセイア様、予知夢でマズイ未来を見たようですね・・・
そして、電話の相手はどうやら、以前怨嗟をこぼしていた同僚のようです。
あ、電話が終わりましたね。
ユメ社長と何やら相談をしているようです。
あ、ユメ社長が紅茶を淹れ始めましたティータイムにするようですね。
さっきまで切羽詰まっていた表情のセイア様が、紅茶の香りをかいで、
少しリラックスしたような表情になりましたね。
そこまで狙っていたとは流石ユメ社長ですね。
あ・・・セイア様、せっかくリラックスしていた表情が、
お茶請けとして出されたロールケーキを見た瞬間ゲンナリした顔になりました。
流石に祈願屋でアルバイトを始めてからトータルで
60本近く食べていては嫌気もさすのかもしれませんね。
ゲンナリしながらも、ちゃんとユメ社長と相談をしているようですね。
どうも、自分達も協力した方がいいのではないかという相談内容のようですね。
ですが、ユメ社長はにこやかに笑ってるだけですね。
えっとなになに・・・?
アンラさんは過保護だから、大丈夫?
うーん、凄い信頼度ですね。
セイア様も、一瞬虚を突かれたような表情をしていますね。
ですが流石セイア様ですね。直ぐに復活して熟考しています。
あ、どうやら考え終わったようですね。
どうやら、ほっておくことにしたようですね。
セイア様が朗らかな笑みで、ユメ社長と何やら話していますね。
うっ・・・何やら二人の笑顔が先程まで朗らかだったのですが、
今は仄暗い笑みになっています・・・何を話しているのか聞くのもちょっと恐ろしいです。
うーん、ちょっと怖いので今日のセイア様の観察はここまでにしておきましょう。
何やら祟り殺されそうです。
本日までのロールケーキ消費本数:58本
本日までの柴関来店回数:51回