おっさんキヴォトスに行く   作:無い頭のおっさん

70 / 71
同時投稿二本中の一本目!

Kyrie Eleison


先生と本当の裏切者

【トリニティ自治区・某所屋根裏部屋】

 

普段、生徒達が足を踏み入れることもない、ティーパーティーが極秘に保有するセーフハウス

その屋根裏部屋だけは、外の喧騒とは切り離されたように静まり返っていた

 

窓から差し込む朝日が、机の上へ斜めに伸びる

その光に照らされているのは、山積みになった書類と、何度も淹れ直された紅茶のカップ

どれも半分ほど残ったまま冷めきっていた

 

「・・・・・・」

 

書類へ目を落としていたナギサは、小さく目を閉じる

 

視界がぼやける

眠気ではない

 

ここ数日、まともに眠った記憶がほとんど無かった

 

セイア襲撃

 

補習授業部

 

そして、学園内に潜む裏切者

 

考えなければならないことが、あまりにも多すぎる

 

正義実現委員会も今はほとんど持ち場を離れ、学園中の警備に追われている

もし今、この隠れ家の存在まで知られていたなら──

 

そこまで考えたところで、ナギサはゆっくりと首を振った

 

「・・・弱気になっていますね。」

 

誰に言うでもなく、小さく呟く

ティーカップへ手を伸ばし、冷めかけた紅茶を一口

本来なら香り高いはずの紅茶も、今はほとんど味を感じなかった

 

「・・・ふぅ。」

 

深く息を吐く

 

その吐息だけが、静かな屋根裏部屋へ溶けていく

 

──その時だった

 

【コン、コン】

 

控えめなノック

静寂を乱さないよう配慮された、小さな音

 

ナギサは視線だけを扉へ向ける

 

(・・・追加の紅茶でしょうか。)

 

今日は何度断っただろう

 

お付きの生徒達も、彼女が休めていないことくらい理解している

だからこそ、少しでも力になろうとしてくれているのだろう

 

申し訳ないと思いながらも、ナギサは静かに口を開いた

 

「紅茶はもう結構です。」

 

一拍置いて、続ける

 

「今は少し一人にしておいてください。」

 

返事はない

再び静寂だけが部屋を包む

 

(・・・?)

 

僅かな違和感

 

普段なら「失礼しました」と返ってくるはずだった

だが、扉の向こうは何も答えない

 

沈黙

 

ほんの数秒

 

それだけなのに、妙に長く感じられた

 

「・・・?」

 

ナギサが眉を寄せた、その瞬間だった

 

【ガチャッ】

 

躊躇なく扉が開かれる

 

「──!」

 

ナギサが勢いよく振り返る

そこへ立っていたのは、お付きの生徒ではなかった

 

柔らかな笑みを浮かべ、ゆっくりと部屋へ足を踏み入れる一人の少女

月光を背に受けながら、その唇が静かに開く

 

「・・・可哀想に」

 

どこまでも優しい声

だが、その響きだけが、ひどく冷たかった

 

「眠れないのですね。」

 

ナギサの瞳が大きく見開かれる

 

「・・・っ。」

 

一瞬、言葉を失う

 

なぜ

 

どうして

 

ここにいるのか

 

その疑問が形になるよりも早く、少女は扉を静かに閉めた

 

【カチャリ】

 

鍵の掛かる音だけが、屋根裏部屋へ静かに響いた

 

「それもそうですよね。」

 

まるで世間話でもするように、少女は微笑む

 

「正義実現委員会が殆ど傍に居ない状態・・・」

 

一歩

 

また一歩

 

ゆっくりとナギサとの距離を縮めていく

 

「不安にもなりますよね、ナギサさん?」

 

その笑顔は、いつもの浦和ハナコだった

 

だからこそ

 

ナギサの背筋を、言いようのない悪寒が駆け抜けた

 

「う、浦和ハナコさん・・・!?」

 

掠れた声で、その名を呼ぶ

 

「あなたがどうして、ここに・・・!?」

 

驚愕

 

それだけではない

 

この場所は、ごく限られた人間しか知らない秘密の隠れ家

ティーパーティー内部ですら、存在を知る者は一握りしかいない

 

それなのに――

 

「それはこのセーフハウスをどうやって知ったのか、という意味ですか?」

 

ハナコは首を小さく傾げる

 

「それはもちろん、全て把握しているからですよ。」

 

「・・・っ!」

 

ナギサの表情が強張る

ハナコはその反応を楽しむように微笑み

指を一本立てながら数えるように続けた

 

「合計八十七箇所。」

 

「ティーパーティー所有のセーフハウス。」

 

「その所在地。」

 

「使用頻度。」

 

「避難時の優先順位。」

 

「それから――」

 

少しだけ口元を緩める

 

「ローテーションまで、全部です♡」

 

「っ!?」

 

ナギサは息を呑む

 

そんな馬鹿な

 

それはティーパーティーでも最高機密

 

漏れるはずがない情報だった

 

「もちろん。」

「変則的な運用についても、ある程度予測しています。」

 

ハナコは静かに部屋の中央まで歩いてくる

 

一歩

 

また一歩

 

足音だけが静かな屋根裏部屋へ響いた

 

「例えば。」

 

ハナコはナギサの紅茶へ視線を落とす

 

既に冷め始めた紅茶

 

飲みかけのまま置かれたティーカップ

 

積み重なった書類

 

そして、隠しきれない疲労

 

「心から不安な時。」

 

「誰にも見られたくない時。」

 

「一人になりたい時。」

 

ハナコは優しく笑う

 

「ナギサさんは、ここへ来ます。」

 

その笑顔は変わらない

 

優しい

 

柔らかい

 

けれどナギサには、それが何より恐ろしく見えた

 

「なっ・・・!」

 

その瞬間

 

【カチャッ】

 

背後で金属音が鳴る

ナギサの背後から銃を構える音がした

 

「動くな。」

 

低く、感情のない声

ナギサの身体が止まる

 

ゆっくりと視線だけを後ろへ向けると

そこにはライフルを構えた白洲アズサが立っていた

 

「・・・!」

 

「安心してください。」

 

ハナコは穏やかに微笑む

 

「ここへ来るまでに、警備の方々には全員眠っていただきました。」

 

「ですから。」

 

「こうして堂々とお邪魔出来た、という訳です。」

 

その言葉を聞いた瞬間

ナギサの胸に、一つの最悪の結論が浮かぶ

 

「白洲アズサさん・・・。」

 

「浦和ハナコさん・・・。」

 

震える声で呟く

 

「まさか・・・。」

 

「裏切り者は、一人ではなく・・・。」

 

「二人・・・?」

 

ハナコは思わず吹き出すように笑った

 

「ふふっ♡」

「単純な思考回路ですねぇ。」

 

「私も。アズサちゃんもただの駒ですよ。」

 

その笑みが、ゆっくりと深くなる

 

「指揮官は別にいます。」

 

「それは誰、ですか・・・!」

 

ナギサの問いは鋭かった

だが、その声には焦りが滲んでいる

この場を支配しているのは自分ではない

それを理解してしまったからだ

 

ハナコはすぐには答えなかった

ふっと視線を窓へ向ける

朝日が差し込む屋根裏部屋

穏やかな光景とは裏腹に、この部屋だけが張り詰めた空気に包まれていた

 

「そのお話の前に」

 

ゆっくりとナギサへ向き直る

 

「ナギサさん・・・ここまでやる必要、ありましたか?」

 

「・・・」

 

「補習授業部の事です。」

 

その言葉に、ナギサの肩が僅かに震える

 

「ナギサさんの心労は、よく分かります。」

 

「セイアさんが襲われ。」

 

「ミカさんも、いつ暴走するか分からない。」

 

「ティーパーティーを守らなければならない責任もある。」

 

「だから、焦ってしまった。」

 

ハナコは淡々と続ける

 

責めるような口調ではない

 

まるで、本当に相手を理解しようとしているような声音だった

 

「ですがこうしてシャーレまで動員して、

ここまでやる必要はなかったのではありませんか?」

 

部屋が静まり返る

 

「・・・」

 

ナギサは答えない

いや、答えられなかった

胸の奥を突かれたような感覚

誰にも口にしなかった迷いを、そのまま言い当てられた

 

「特に。」

 

ハナコは少しだけ目を細める

 

「ヒフミちゃんはナギサさんと、仲が良かったじゃないですか。」

 

その言葉が深く突き刺さる

脳裏に浮かぶのは、笑い合っていた日々

 

アフタヌーンティー

ぬいぐるみの話題で盛り上がった時間

 

あの穏やかな空気

それら全てを、自分の手で壊した

 

「どうしてこんな事をしてしまったのですか?」

「ヒフミちゃんがどれだけ傷ついてしまうか、考えなかったのですか?」

 

静かな問い

だからこそ重い

 

ナギサは静かに目を閉じる

 

数秒の沈黙

 

やがて、小さく息を吐いた

 

「・・・そう、ですね。」

 

その声には疲労が滲んでいた

 

「ヒフミさんには悪い事をしたかもしれません。」

 

唇を噛む

 

それでも

 

その瞳だけは揺らがない

 

「ですが、後悔はしていません。」

 

ゆっくりと顔を上げる

 

ティーパーティーの一員として

 

トリニティを守る者として

 

その覚悟だけは失っていなかった

 

「全ては大義の為。確かに彼女との間柄だけは、守れればと思っていましたが・・・私は・・・」

 

言葉が途切れる

 

その続きを、自分でも上手く言葉に出来なかった

 

沈黙

 

部屋に流れるのは、時計の針だけ

 

カチ、カチ、カチ

 

その音を聞きながら、ハナコは小さく笑った

 

「・・・ふふっ♡」

 

その笑みは、どこか寂しげだった

 

「では改めて私達の指揮官からナギサさんへ、メッセージをお伝えしますね。」

 

ハナコは一拍置く

まるで、相手に心の準備をさせるように

そして静かに、その言葉を口にした

 

「【あはは……えっと、それなりに楽しかったですよ。】」

「【ナギサ様との、お友達ごっこ。】」

 

「――との事です♡」

 

「っ!?」

 

その瞬間ナギサの瞳が大きく見開かれる

 

呼吸が止まる

 

今の言葉

 

その話し方

 

その笑い方

 

聞き間違えるはずがない

 

「ま、まさか・・・!」

 

震える声が漏れる

 

「ということは・・・!」

 

脳裏で、一人の少女の姿が浮かぶ

 

全てが一本の線で繋がる

信じたくなかった答えへ辿り着いてしまう

 

だが、その答えを口にするよりも早く――

 

背後でアズサの指が静かに引き金へ掛かった

 

アズサの瞳に迷いは無い

 

今この瞬間も、一秒でも長くここで時間を使えば、それだけ計画全体の危険が増す

 

ナギサをここで確保しなければならない

その為には、一切の躊躇は許されない

 

「・・・」

 

小さく息を吐く

 

照準は既に定まっていた

 

急所を避けるように

致命傷にはならない位置

 

だが確実に意識を奪えるように

 

トリガーへ掛けた指へ、静かに力を込める

 

その一方で

 

「・・・っ」

 

ナギサは呆然と立ち尽くしていた

 

耳の奥で、今の言葉だけが何度も反響する

 

『ナギサ様との、お友達ごっこ。』

 

あの無邪気な笑い声

 

あの柔らかな話し方

 

補習授業部へ送り込んだ少女

 

いつも人懐っこく笑っていた、あの少女

 

(そんな・・・。)

(まさか、本当に・・・。)

 

信じたくない

 

信じられるはずがない

 

もし今の言葉が本当なら

 

補習授業部は

 

ヒフミは

 

最初から――

 

「――っ!」

 

言葉にならない

 

胸の奥が締め付けられる

 

後悔とも

 

怒りとも

 

絶望とも違う

 

ただ、何かが音を立てて崩れていく感覚だけがあった

 

その刹那

 

アズサは静かに引き金を引いた

 

【タタタタタッ!!】

 

乾いた連続音が屋根裏部屋へ響き渡る

 

「――っ!」

 

銃弾は一直線にナギサの脇腹へ吸い込まれていく

 

衝撃で身体が大きく跳ねた

 

「かっ・・・!」

 

苦痛に息が詰まる

 

足から力が抜ける

 

ティーカップが手を離れ

 

【カシャンッ】

 

床へ落ちて砕け散った

 

紅茶が木の床へゆっくりと広がっていく

 

ナギサの身体も、そのまま力無く崩れ落ちた

 

「う・・・。」

 

視界が揺れる

 

天井がぼやける

 

薄れていく意識の中で

 

最後に見えたのは

 

こちらを見下ろすハナコの穏やかな笑顔だった

 

「おやすみなさい、ナギサさん♡」

 

その声だけが、不思議なほど優しく耳へ残る

 

やがて

 

ナギサの意識は完全に闇へ沈んだ

 

部屋に静寂が戻る

 

硝煙だけが、ゆっくりと漂っていた

 

アズサは倒れたナギサを一瞥すると、

すぐにライフルの安全装置を掛けた

 

「目標を確保。」

 

淡々と状況を確認する

 

「至近距離から5.56ミリ弾を一マガジン。」

「ヘイローがある以上、命に別状はない。」

「一時間ほどは、このまま意識を失っているはず。」

 

ハナコは満足そうに頷いた

 

「ふふっ♡」

「ではアズサちゃん、ここからは敵の誘導をお願いできますか?」

 

「了解。」

 

アズサは短く返事をすると、すぐに窓際へ歩く

 

「ナギサは私が合宿所まで運ぶ。」

 

「途中で痕跡も残す。」

「追跡している側から見れば、【慌てて逃げた】ように見えるはず。」

 

「はい♡」

 

ハナコは嬉しそうに微笑く

 

「それで十分です。」

 

「相手は情報が少ないほど、想像で補完しますから。」

 

「逃げていると思えば、必ず追ってきます。」

 

「そうすれば――」

 

「こちらの土俵に引き込める。」

 

アズサが言葉を継ぐ

 

「その通りです♡」

 

ハナコは満足そうに頷いた

 

「もし私の仮説が正しければ・・・。」

 

「【本当のトリニティの裏切者】は、この情報を必ず掴みます。」

 

「そして、その人物へ情報が伝われば。」

 

「アリウス側も時間を置かず動く。」

 

「ええ、ナギサさんを奪還する為に、襲撃を急ぐはずです。」

 

「まだはっきりとした証拠はありませんが」

「ですが、私個人としては【本当の裏切者】についてはほぼ確信しています。」

 

部屋に短い沈黙が落ちる

 

互いに、その名前だけは口にしなかった

まだ断定する段階ではない

 

だからこそ

最後の一手で、相手に自ら動いてもらう必要がある

 

「・・・ところで。」

 

不意にアズサが口を開く

 

「さっきの最後の台詞。」

 

「必要だった?」

 

「・・・あれですか?」

 

ハナコは少しだけ首を傾げる

そして悪戯っぽく笑った

 

「ええ♡」

 

「ヒフミちゃんを泣かせた分。」

「私達を試験会場ごと爆破した分。」

「ナギサさんにも、私達の100分の1でも心臓が止まりそうになって頂こうかな、と。」

 

「・・・。」

 

アズサは数秒だけ無言になる

 

「私情。」

 

「少しだけ♡」

 

ハナコは人差し指を立てる

 

「ほんの少しです。」

 

「全部終われば、誤解はすぐ解けますから。」

 

「・・・そうか。」

 

納得したような、していないような返事

 

だが、それ以上は何も言わない

 

ハナコもそれ以上は茶化さず、ふっと笑みを消した

 

「では。」

「そろそろ参りましょう。」

「ここから先は時間との勝負です。」

 

「了解。」

 

アズサは気絶したナギサを静かに抱え上げる

 

見た目以上に軽い

その身体を支え直すと、窓枠へ片足を掛けた

 

「合流地点で。」

 

「はい♡」

 

ハナコは小さく手を振る

 

「また後ほど。」

 

次の瞬間

アズサの姿は窓の外へ消えた

 

風だけが静かに部屋へ吹き込み

取り残されたティーカップの中で

冷めかけた紅茶が小さく揺れた

 

 

 

 

【合宿所・2階廊下】

 

廊下の窓際に立ち、私は静かに外を見下ろしていた

 

風に揺れる木々。

 

鳥の鳴き声。

 

それだけ見れば、まるで何事も起きていないような穏やかな朝だった。

 

「"・・・"」

 

だが、その静けさが長く続かない事を私は知っている

 

この数日間、何度も頭の中で繰り返してきた

敵ならどう動くか

私ならどう攻めるか

アズサなら、どこへ罠を仕掛けるか

 

何度も、何度も

その答え合わせが、もうすぐ始まる

 

ふと視線を下ろす

 

校舎の裏手

林の影から、一つの人影が飛び出した

 

「"・・・来た。"」

 

アズサだ

 

肩に気を失ったナギサさんを担ぎ、迷いなく合宿所へ駆け込んでくる

 

その足取りに乱れはない

 

予定通り

ここまでは、全て計画通りだった

 

「先生!」

 

窓を開けるより早く、アズサがこちらへ短く視線を向ける

 

私は小さく頷いた

 

「"・・・うん。順調だよ。"」

 

言葉は、それだけで十分だった

 

アズサも何も返さない

そのまま合宿所の中へ姿を消す

 

「"・・・"」

 

私は静かに腕時計へ目を落とす

予定時刻との差は、数十秒程度

 

誤差と言っていい

ここから先は、敵がどれだけ早く食いつくか

 

それだけだ

ヒフミ達には既に体育館で待機してもらっている

 

ナギサも安全な場所(掃除道具のロッカーの中)

 

私達の準備は終わった

 

あとは――

敵が来るのを待つだけ

 

「"・・・"」

 

胸の奥が少しだけ重い

 

今回の作戦は、防衛戦だ

 

勝つ事ではない

 

時間を稼ぐ事

 

その間に正義実現委員会が動けば、それでいい

 

理屈では理解している

 

それでも

 

("・・・どうしても、嫌な予感が消えない。")

 

経験則

 

それとも勘

 

三百を超える繰り返しの中で、何度も命を救ってきた曖昧な感覚

 

今回は、それが妙に騒いでいた

 

("・・・何かが、違う。")

 

監視用のタブレットへ目を落とす

 

校舎周辺、森、道路

 

映像に異常はない

敵影も確認出来ない

 

それでも

 

("・・・静か過ぎる。")

 

普通なら、もう少し索敵に時間を掛ける

周囲を包囲し、逃げ道を塞ぎ、それから突入

 

アリウスならそうする

焦る理由は無いはずだ

 

なのに

 

――嫌な予感だけが、胸の奥で膨らんでいく

 

その時だった

 

【ドォォォォン!!》{/vib}

 

凄まじい爆音

 

校舎全体が大きく揺れた

窓ガラスが震え、天井から細かな埃が舞い落ちる

 

「"・・・!"」

 

反射的にタブレットへ視線を落とす

 

正面玄関

 

 

爆炎

 

そして

 

白い制服の集団

 

「"・・・来た。"」

 

アリウス

 

想定より早い

だが、慌てるほどではない

私は踵を返し、体育館へ向かって走り出した

 

その直後

 

《vib:1》【ドガァァン!!】

 

【バンッ!!】

 

【ガラガラガラッ!!】

 

立て続けに爆発音が響く

 

罠だ

 

アズサが、この数日間かけて仕掛け続けた迎撃陣地

 

ワイヤー

 

即席爆薬

 

崩落用の支柱

 

侵入経路を計算し尽くした防衛線

監視映像の中で、一人、また一人とアリウス生が吹き飛ばされる

 

爆煙の中へ倒れ込み

立ち上がれない者もいる

 

「"・・・"」

 

だが、次の瞬間には、その倒れた仲間を飛び越えるようにして、後続が前へ出る

 

速度が落ちない

 

止まらない

 

「"・・・そう来るか。"」

 

思わず小さく呟く

 

普通なら一度立ち止まり、被害状況を確認する

 

だが彼女達は違う

 

倒れた仲間より、任務を優先している

まるで最初から、自分が倒れる事まで織り込み済みであるかのように

 

("・・・死兵。")

 

その言葉が頭を過る

私が知っているアリウスよりも、さらに覚悟が決まっている

 

画面越しですら、その異様さが伝わってきた

 

「"・・・急ごう。"」

 

これ以上ここで見ている意味はない

指揮を執る場所は、体育館だ

私は監視映像を閉じると、足を速めた

 

 

 

 

【合宿所・体育館】

 

「"皆!アリウス生が来たよ!"」

「"戦闘準備!"」

 

私が体育館へ飛び込むと、皆が一斉に武器を構える

 

その直後

 

【バンッ!!】

 

扉が勢いよく開く

 

「先生!」

 

アズサとハナコが合流する

 

 

その数秒後

 

廊下の奥から武装したアリウス生徒達が姿を現した

だが、その数が想定よりもはるかに少なくなっていた

 

「・・・?」

 

アズサが小さく眉を寄せた

 

「・・・少ない。」

「私の罠だけじゃ、ここまで減るはずがない。」

 

私は監視映像を確認する

校舎へ突入した時の部隊と比べても、明らかに人数が減っている

 

罠だけでは説明がつかなかった

 

「"・・・"」

 

誰かがアリウスと戦った

それも、私達の知らない場所で

 

 

 

「・・・なるほど、逃げたのではなく待ち伏せだったと。」

 

指揮官であろうアリウス生が話しかけてきた

 

「確かにここまで数を減らされた。だが、それだけか?」

「たった4人で私たち相手に、何分耐えられると思っているのだ。」

「こんな退路も無い場所で!」

 

「その通り、もう退路は無い。」

「お前達は逃げられない。」

 

「ですね、一先ず仕上げと行きましょうか♡」

 

「"君たちを待ってたよ。"」

 

その時アリウス生は初めて私が居る事に気づいたようだった

 

「ご存じかは分かりませんが・・・補習授業部の担当であり、シャーレの先生です♡」

 

「殲滅戦を始める。先生、指示を。」

 

「"じゃあ補習授業部、行こう!!"」

 

「了解。」

 

「はい!」

 

「ふふっ♡」

 

「う、うん!」

 

【ダダダダダッ!!】

 

アリウス生達が一斉に体育館へ突入してくる

 

しかしその瞬間

 

「こっちですよー!!」

 

ヒフミが思い切り何かを放り投げた

 

ふわりと宙を舞うのは――

 

ペロロ様のぬいぐるみ

 

「・・・!」

 

「あれは――」

 

「キモ・・・え?」

 

アリウス生達の視線が、一瞬だけぬいぐるみに集まる

 

その僅かな隙

 

「今!」

 

【ダダダダダッ!!】

 

アズサが柱の陰から飛び出し、前衛へ一斉射撃

 

二人のアリウス生が遮蔽物へ飛び込む

 

「散開!」

 

敵指揮官の号令

 

だが体育館は、既に補習授業部が防衛用に作り替えていた

 

倒された机、積み上げられたマット、跳び箱、平均台

 

簡易バリケードとなった器具が至る所に配置されている

 

「"ヒフミ、左!"」

 

「はい!」

 

ヒフミは器具の陰へ滑り込みながら応戦する

 

【タタタタタッ!!】

 

「"コハル!"」

 

「分かってる!」

 

コハルも別の遮蔽物へ飛び込み、ヒフミを援護

 

「"ハナコ!"」

 

「はいはい♡」

 

ハナコは最後方から冷静に射撃を重ね

遮蔽物から顔を出した敵へ、正確な牽制射撃

 

アリウス生が一瞬動きを止める

 

その一瞬をアズサは見逃さない

 

【タンッ!】

 

【タンッ!】

 

正確な二連射

二人がその場に倒れる

 

それを見て敵の背後からアズサを狙った射撃が入る

 

【ダダダダダッ!!】

 

激しい銃撃が体育館へ響く

 

「左右へ展開!」

「補習授業部を制圧しろ!」

「ナギサの隠し場所を吐かせる!」

 

敵は一斉に遮蔽物へ飛び込む

 

「"ヒフミ!中央を抑えて!"」

 

「はい!」

 

ヒフミが机の陰から応戦する

 

【タタタタタッ!!】

 

敵はすぐに跳び箱の裏へ身を隠した

 

「"コハル!"」

 

「任せて!」

 

コハルは腰のポーチから手榴弾を一個取り出す

 

安全ピンを抜き、そのまま遮蔽物の向こうへ放り投げた

 

「逃げ――」

 

【ドォォン!!】

 

コハルの投げた手榴弾が跳び箱ごと吹き飛ばし

爆風で体勢を崩した二人へ

 

【タタタタタッ!!】

 

爆煙を切り裂くようにアズサの銃声が響いた

 

二人はそのまま床へ崩れ落ちる

 

「・・・!」

 

敵指揮官の表情が僅かに変わる

 

開始時十名が既に六名

補習授業部は未だ誰一人欠けていない

 

「隊長!」

「このままでは・・・!」

 

「・・・チッ。」

 

小さく舌打ちする

 

「腐ってもスクワッドか。」

「たった一人いるだけで、ここまで戦況が変わるとはな。」

 

指揮官は銃を構え直した

 

「こちらも遮蔽物を使え!ただし敵グレネードには気を付けろ!」

「確実に一人ずつ潰せ!」

 

【ダダダダダッ!!】

 

残る六名が一斉に散開する

 

先程までの強引な突撃とは違う

 

アズサを中心にした補習授業部を、一個の戦術単位として認識した動きだった

 

 

【ダダダダダッ!!】

 

激しい銃撃が体育館中を飛び交う

 

先程までとは違う

 

アリウス生達は不用意に姿を晒さず、互いに援護し合いながら少しずつ包囲を狭めてくる

 

「右から二人!」

 

「了解!」

 

左右から同時に銃口が覗く

 

【タタタタタッ!!】

 

「っ!」

 

ヒフミが咄嗟に机の陰へ身を伏せる

木片が弾け飛び、遮蔽物が次々と削られていく

 

「"コハル!"」

 

「分かってる!」

 

コハルが反対側から応射する

 

【ダンッ!、ダンッ!、ダンッ!】

 

しかし敵もすぐに身を引き、無駄な被弾を避ける

 

「・・・やっぱり。」

 

アズサが小さく呟く

 

「さっきまでとは動きが違う。」

「スクワッドじゃないとはいえ、訓練は積んでる。」

 

その言葉通りだった

 

人数は減っている

 

だが残った六人は互いの死角を埋め合い、一歩ずつ距離を詰めてくる

 

「このまま押し込め!」

「遮蔽物を削れ!」

 

【ダダダダダダッ!!】

 

机の角が砕ける

 

跳び箱が弾痕だらけになっていく

 

「先生!」

 

ヒフミが顔を向ける

 

「このままだと遮蔽物が持ちません!」

 

「"分かってる!"」

 

このまま撃ち合えば、こちらが不利になる

敵もそれを理解している

だからこそ焦らず、確実に距離を詰めてきている

 

「・・・」

 

その時だった

 

アズサが静かに息を吐く

 

ライフルを構え直す

 

「先生。」

 

「"うん。"」

 

それだけで十分だった

このまま撃ち合えば、こちらが押し切られる

 

だから――

 

アズサは一歩、遮蔽物の外へ踏み出す

その瞳に迷いは無い

 

「――【Vanitas vanitatum et omnia vanitas.】」

 

次の瞬間だった

 

【ダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!】

 

誰も反応できなかった

 

あまりにも短い

 

たった一瞬

 

それだけだった

 

「――なっ」

 

敵指揮官が目を見開く

 

左右へ散開していたアリウス生達の身体が、ほぼ同時に大きく揺れた

 

 

 

 

胸部

 

遮蔽物から僅かに覗いていた身体へ、寸分違わず弾丸が叩き込まれていく

 

【ガガガッ!!】

 

【ドサッ!】

 

【ドサッ!】

 

四人が次々と床へ倒れ伏す

 

「・・・馬鹿な。」

 

指揮官の喉から、思わず声が漏れた

 

「一瞬で・・・全員を・・・?」

 

残ったのは指揮官を含め、たった二人

 

十人いた部隊は、僅か数分で八人が戦闘不能となっていた

 

「隊長!!」

 

最後の一人が叫ぶ

 

「撤退を――!」

 

「駄目だ!」

 

指揮官が叫び返す

 

「ナギサの居場所を聞き出さなければ任務は失敗だ!」

 

そう叫びながら銃を構える

 

だが、その叫びとは裏腹に銃口は、僅かに震えていた

 

「"今だ! 一気に行こう!"」

 

「了解。」

 

アズサが一気に距離を詰める

 

【ダダダダダッ!!】

 

敵も応戦する

 

【ダダダダダッ!!】

 

弾丸が交差する中

 

「右をお願いします!」

 

ヒフミの声

 

「はい!」

 

ハナコがすぐさま右側へ回り込み、牽制射撃を浴びせる

 

【タンッ! タンッ!】

 

「くっ・・・!」

 

敵が咄嗟に身を伏せる

 

その一瞬の隙をアズサは見逃さなかった

 

【タンッ!】

 

正確な一発

 

最後の一般隊員のライフルが弾き飛ばされる

 

「しまっ――」

 

そこへ、

 

「"コハル!"」

 

「任せて!」

 

コハルが遮蔽物を飛び越え、一気に間合いを詰める

 

銃床を大きく振り抜いた

 

【ゴッ!!】

 

「がっ・・・!」

 

アリウス生はその場へ崩れ落ち、動かなくなる

 

それと同時にアズサがアリウスの指揮官を打ち抜く

 

【ダダダダダッ!!】

 

【カラン――】

 

アリウス生のライフルが床を滑り、乾いた音を立てる

 

「ぐっ、うっ・・・!」

 

その言葉を最後に、指揮官は力尽きるように床へ倒れ込んだ

 

体育館から銃声が消える

さっきまで耳を塞ぐほど響いていた発砲音も

 

怒号も

 

爆発音も

 

今はもう無い

 

残るのは火薬の匂いと、白く漂う硝煙だけだった

 

「・・・」

 

誰もすぐには口を開かなかった

 

全員が肩で息をしている

 

制服は土埃にまみれ

 

額には汗が滲み

 

握った銃にも力が入ったままだ

 

ようやく

 

本当にようやく

 

 

「か、勝った・・・?」

 

コハルが信じられないというように辺りを見回す

 

倒れているアリウス生

動く者はいない

 

その光景を確認してから、アズサが静かに周囲を見渡した

銃口をゆっくり下ろす

 

「・・・全員戦闘不能。」

 

短い報告

 

それを聞いた途端、皆の身体から一斉に張り詰めていた力が抜けた

 

「あうぅ・・・」

 

ヒフミがその場へへたり込みそうになる

 

「先生の指揮があって、本当に助かりました・・・」

 

「はぁ・・・。」

 

コハルも壁へ背中を預け、大きく息を吐く

 

「こんな人数を相手に勝てるなんて思わなかった・・・。」

 

「ふふっ♡」

 

ハナコも珍しく小さく息を吐きながら髪を払う

 

「流石に少し疲れましたねぇ。」

 

普段と変わらぬ笑顔

けれど、その肩は僅かに上下していた

彼女も決して余裕だった訳ではない

 

私は四人の姿を見回す

 

("・・・全員無事。")

 

それだけで十分だった

 

心の奥に張り詰めていた糸が、少しだけ緩む

ここまで誰一人欠けずに切り抜けられた

 

それは間違いなく、補習授業部のみんなが積み重ねてきた時間の結果だった

 

「"・・・皆、本当にお疲れ様。"」

 

そう声を掛けながらも、私は無意識に体育館の入口へ視線を向けていた

 

("・・・まだだ。")

 

まだ終わっていない

敵が送り込んできたのは、先遣隊

 

本命は、この後だ

 

「・・・はい。」

 

ハナコも私の視線の意味を察したのか、静かに頷く

 

「では、一つ難所を越えたところで・・・次のフェーズへ移りましょうか。」

 

その一言で、空気が変わる

緩みかけた緊張が、再び静かに張り詰めていく

 

「この後、アリウスの増援部隊が到着するでしょう。」

「ですが、私達は勝つ必要はありません。」

「時間を稼ぐだけで十分です。」

 

ハナコは落ち着いた声で皆を見渡す

 

「正義実現委員会がここへ到着するまで。」

「その間だけ持ち堪えられれば、私達の勝ちです。」

 

「・・・うん。」

 

アズサが静かに頷く

 

「それまでなら、何とかなる。」

 

「わ、私も頑張ります・・・!」

 

ヒフミも銃を抱き直し、小さく頷いた

 

「あっ!」

 

コハルが思い出したように顔を上げる

 

「ハスミ先輩にはもう連絡しておいた!」

「返事も来てる!すぐ向かうって!」

 

「ありがとうございます♡」

 

ハナコが柔らかく微笑む

 

「ティーパーティー直属の正義実現委員会が動けるとすれば」

「ティーパーティーそのものに異変が起きた時だけ。」

 

「ナギサさんとの定時連絡もあるでしょうし」

「今頃は何か異常が起きた事にも気付いている頃でしょう。」

 

「そこへコハルちゃんからの連絡。」

「状況確認のために動き出すまで、そう時間は掛からないはずです。」

 

体育館の中へ、ほんの少しだけ安堵が戻る

 

あと少し

 

あと少し耐えればいい

 

誰もが、そう思った

 

その――

 

次の瞬間だった

 

【ドガァァァァン!!!】

 

轟音と共に体育館の壁が内側へ吹き飛ぶ

 

コンクリート片が宙を舞い

砂煙が一気に体育館中へ流れ込んだ

 

「きゃっ・・・!」

 

ヒフミが思わず身を縮める

 

「"っ・・・!"」

 

私は咄嗟に腕で顔を庇った

 

舞い上がる粉塵

 

崩れ落ちる壁

 

視界は灰色に染まり、数メートル先すら霞んで見えない

 

【ガラガラガラ・・・】

 

瓦礫が床へ転がる音だけが静かに響く

 

「先生!」

 

アズサがすぐにライフルを構え直す

 

「まだ敵が来る。」

 

「"・・・うん。"」

 

私も頷きながら穴の向こうへ目を凝らす

 

("・・・早い。")

 

まだ正義実現委員会は来ていない

こちらが撃退した部隊が全滅したという報告が届き

 

その直後に増援が到着した

予想より明らかに早い

 

(予定より動きが速い・・・!)

 

砂煙が少しずつ晴れていく

 

その向こう側

 

黒い影が一つ

 

また一つと姿を現した

 

一人

 

二人

 

五人

 

十人

 

さらに、その後ろ

 

まだいる

 

「・・・え。」

 

コハルの声が震える

 

「うそ・・・。」

 

体育館の壁一面を埋め尽くすほどの武装した生徒たち

 

整然と銃を構え

 

まるで最初からそこに立っていたかのように静かに並んでいる

 

アズサが僅かに目を細めた

 

「・・・数が多い。」

 

その声は、どこか重かった

 

「多分・・・大隊規模。」

 

「"っ・・・!"」

 

「アリウスの半数近くが来ている。」

 

その言葉に誰も返事が出来ない

私は思わず息を呑む

 

("こんな人数・・・。")

 

体育館の入口だけではない

吹き飛ばされた壁の向こうには

まだ何列もの人影が続いていた

後方には輸送車両まで見える

 

完全武装

まるで戦争だった

 

「あ、あうぅ・・・。」

 

ヒフミの声が震える

 

「こ、これだけの人達が・・・平然とトリニティの敷地に・・・。」

 

「・・・。」

 

コハルも言葉を失っていた

 

「"まだ・・・。"」

 

私は外へ目を向ける

 

("まだ正義実現委員会は来ない。")

 

おかしい

 

ここまで派手に戦闘が起きている

壁まで吹き飛ばされた

それなのに応援が来る気配がない

 

("どうして・・・。")

 

ハナコも同じ疑問へ辿り着いたのか

静かに眉を寄せた

 

「・・・来ませんね。」

 

「え?」

 

「正義実現委員会です。」

 

ハナコは穴の向こうを見つめたまま、小さく呟く

 

「流石に、そろそろ到着していてもおかしくありません。」

 

「"・・・。"」

 

私も黙って頷く

嫌な予感がした

 

その時だった

 

「それは仕方ないよ。」

 

穏やかな声

 

まるで友達へ話しかけるような

明るく柔らかな声だった

 

全員の視線が自然と穴の向こうへ向く

 

コツ・・・

 

コツ・・・

 

コツ・・・

 

静かな足音

 

砂煙の奥からゆっくりと一人の少女が歩いてくる

周囲のアリウス生達は自然と左右へ道を開けた

 

その姿を見た瞬間、私は静かに息を呑む

 

("・・・ここで来るんだね。")

 

桃色の長い髪

気品すら感じさせる歩き方

そして、いつもと変わらない無邪気な笑顔

 

「・・・!」

 

ヒフミが目を見開く

 

「"ミカ・・・"」

 

少女は小さく手を振った

 

「やっ。」

 

まるで偶然出会ったかのような軽い調子で笑う

 

「久しぶり、先生。」

「また会えて嬉しいな。」

 

ミカはいつものように、どこか人懐っこい笑みを浮かべたままそう言った

 

戦場とは思えないほど穏やかな声

だが、その一言だけで体育館の空気が大きく変わる

 

誰も銃を下ろさない

 

誰も一歩も動かない

 

それでも、その場の主導権だけは完全にミカが握っていた

 

「それからね。」

 

ミカは後ろを振り返り、ずらりと並ぶアリウス生達へ軽く手を向ける

 

「正義実現委員会は動かないよ。」

 

「・・・!」

 

コハルが思わず息を呑む

 

「私が改めて待機命令を出したから。」

 

あまりにも自然に

まるで今日のお茶会の予定でも話すような軽い口調だった

 

「今日は学園、静かだったでしょ?」

 

そう言って小さく肩を竦める

 

「正義実現委員会だけじゃないよ。」

「邪魔になりそうな人達には、みーんな別のお仕事をお願いしておいたの。」

 

「あっちは巡回。」

 

「こっちは警備。」

 

「向こうは応援。」

 

「それっぽい理由を付けて、一日中動いてもらってた。」

 

くすり、と笑う

 

「ナギちゃんを襲う日に、邪魔されたら困っちゃうもん。」

 

「"・・・ミカ。"」

 

思わず名前を呼ぶ

 

ミカは私を見る

その瞳は、どこまでも澄んでいた

濁りなど、一つもない

 

だからこそ痛々しい

 

「まぁ、簡単に言うと。」

 

両手を軽く広げる

 

「黒幕登場☆ってところかな。」

 

悪びれる様子もなく

まるで劇の自己紹介のように笑う

 

「私が本当の――」

 

一拍

 

「【トリニティの裏切り者】。」

 

体育館が静まり返る

 

誰一人、言葉を発しない

 

アリウス生ですら声を上げなかった

ただ、その宣言だけが静かに体育館へ落ちる

 

「・・・」

 

アズサはライフルを下ろさない。

 

銃口は微動だにせず、真っ直ぐミカへ向けられている

 

ヒフミもコハルも、言葉を失っていた

 

ハナコだけが、小さく目を伏せる

 

まるで、その言葉を覚悟していたかのように

 

ミカはそんな空気など気にした様子もなく、小さく首を傾げた

 

「というわけで。」

「ナギちゃんをどこに隠したのか、教えてくれる?」

 

笑顔

 

本当に、いつもの笑顔だった

 

「私も時間がなくってさ。」

「できれば穏便に終わらせたいんだけど。」

 

そう言って肩をすくめる

 

「まぁ。」

「ここにいるみんなを吹き飛ばしてから、ゆっくり探してもいいんだけど。」

「それは面倒でしょ?」

 

まるで「掃除機をかけるのが面倒」とでも言うような口調

 

そのあまりの温度差に、思わず息が詰まる

 

私は静かにミカを見る

 

("・・・やっぱり。")

("もう、ここまで来てしまっていたんだ。")

 

小さく息を吸って問い掛けた

 

「"・・・ミカ。"」

「"やっぱり、止まれないんだね?"」

 

その一言にミカの笑顔が、ほんの少しだけ柔らかくなった

 

「・・・。」

 

少しだけ目を細める

 

「やっぱり先生には、バレてたんだ。」

 

どこか困ったように笑う

 

「あの時プールで変な質問してきたのも。」

「そういうことだったんだね。」

 

ミカは小さく息を吐く

 

「先生。」

「私は止まらないよ。」

 

その声だけは

今までの軽い調子とは違っていた

 

静かで

 

強くて

 

決意だけが滲んでいた

 

「私は、本当に。」

 

「心から。」

 

「心の底から。」

 

「ゲヘナが、大嫌いなの。」

 

「・・・だから、エデン条約を取り消そうと?その為にナギサさんを・・・」

 

ハナコがそう問い掛けると

 

「ん・・・誰だっけ・・・」

 

ミカは小さく首を傾げ少し考えるような仕草し

 

「あぁ。」

 

ぽん、と手を打つ

 

「思い出した。浦和ハナコじゃん。」

「礼拝堂の授業に水着で参加して追い出されてたあの。あははっ、懐かしいねぇ。」

 

場違いなほど楽しそうに笑う

 

「・・・」

 

ハナコは笑わない

ただ静かにミカを見つめ返していた

 

「まぁ、一応答えてあげるとその通りかな。」

 

ミカは軽く肩を竦める

 

「だってナギちゃんが、エデン条約だなんて変な事をしようとするからさぁ」

「ゲヘナのあんな、角の生えた奴らなんかと平和条約だなんて、冗談にも程があると思わない?」

 

少し顔をしかめる

 

「考えるだけでゾッとしちゃうよ。」

「絶対裏切られるに決まってるじゃんね?」

「背中を見せたら直ぐ刺されるよ?」

 

「そんな事、させるわけにはいかない。」

 

一歩

 

ミカがゆっくり前へ出る

 

「ナギちゃんもほんと、優しいって言うか優し過ぎるって言うか・・・」

 

少しだけ寂しそうに笑った

 

「創作の中の明るい学園物語じゃないんだし。」

「そんな都合のいい話、現実には存在しないのに。」

 

体育館に静かな声だけが響く

 

「私達はこういう、もっとドロドロした世界の住人だって事、」

「そろそろわかってくれても良い頃なのにね?」

 

その瞳は真っ直ぐだった

 

「そういうわけだから、」

 

ミカは再び笑顔へ戻る

 

「ナギちゃんを返してくれる?」

 

「大丈夫、痛い事はしないよ。」

 

そう言って少しだけ考える

 

「まぁ、残りの学園生活は全部檻の中かもしれないけど。」

「あはは。」

 

その笑い声だけが、妙に明るく響いた

 

私は静かに息を吸う

 

そして、一つだけ確認する

 

「"ミカ、ひとつ聞いても良い?"」

 

「ん?何かな?先生。」

 

「"ミカが私に言った、アリウスと和解したいと言ったのは本当なんだよね?"」

 

その問いにミカは少しだけ驚いた

 

「・・・うん、私がアリウスと和解したかったって言うのは、本当の事だよ。」

「この子達は同じゲヘナを憎む仲間。」

 

「だから手を差し出したの。志を共にして、」

「ゲヘナと平和条約を結ぼうとする悪党たちをやっつけない?って。」

 

 

「共通の敵の為に、一時的に敵同士が互いの手を取り合う。」

「そういう事だよ。それで私はアリウスに密かに支援してたの。」

 

その言葉を聞いて、アズサが反応する

 

「・・・アリウスは最初から、トリニティのクーデターの道具だった・・・?」

 

「うん?」

 

ミカは少し考え

 

「・・・うん、確かに。」

「これはクーデターとも言えるかもね。」

「最終的にナギちゃんを失脚させて、私がティーパーティーのホストになるんだから。」

 

その瞬間だった

 

ミカの瞳から笑みだけが消え

静かな憎悪だけが宿る

 

「ありがとう、白洲アズサ。」

「貴女のおかげで私はティーパーティーのホストになれる。」

 

アズサは何も答えない

 

銃口も下げない

 

ただ静かに見返す

 

ミカはそんな彼女へ、瞳の憎悪はそのままに優しく微笑んだ

 

「だから、今から貴女には」

 

ミカは、まるで明日の予定でも告げるような穏やかな声で言った

その表情に迷いはない

 

「ナギちゃんを襲った犯人になってもらうね。」

 

「・・・!!」

 

体育館の空気が、さらに張り詰めた

 

誰もすぐには言葉を返せない

静まり返った空間の中で、その一言だけが何度も頭の中を反響していた

 

「スケープゴートって言った方が良いかな?」

 

ミカは悪びれる様子もなく、小さく肩を竦める

 

「罪を被る生贄としての存在が居てこそ、皆がぐっすり安心して眠れるの。」

 

くすり、と笑う

まるで、それが当たり前の道理だと言わんばかりに

 

「世の中って、そういうものじゃない?」

 

「・・・」

 

アズサは何も言わない

銃を握る手だけが、僅かに強くなる

 

怒っているのか

悲しんでいるのか

あるいは、その両方なのか

表情からは読み取れない

 

("以前、アズサを守って欲しいって言ったあれもきっと本心・・・")

("でもそれ以上にアズサがセイアにした事をミカは許せないんだね・・・")

 

「でもびっくりしたな。」

 

ミカは軽く笑いながら話題を変える

 

「ナギちゃんが正体不明の誰かに襲撃されたって聞いて。」

「あの時は本当に焦ったよ。」

 

「せっかく積み上げてきた計画が、誰かに壊されちゃうかもしれないって思ったから。」

 

その声音だけは、少しだけ本音が混じっていた

 

「それで急いで調べてみたら・・・」

 

そこで視線が補習授業部へ向く

 

「まさかそれが補習授業部だったなんてねー」

「これは予想外だったよ。うん。」

 

肩を竦めながら笑う

 

「"ミカ、本当に(・・・)、全てはティーパーティーのホストになる為・・・で良いの?"」

 

私の問い掛けに、

ミカはほんの少しだけ目を伏せた

 

それは一瞬だった

 

本当に、一瞬だけ

 

まるでその言葉の意味を確かめるように

 

あるいは――

私が何を知っているのかを量るように

 

やがて、小さく息を吐く

そしていつもの笑顔を浮かべた

 

「・・・うん、そうだよ。」

「あぁ、でも誤解しないでね、先生。別に権力が欲しいわけじゃないの。」

 

その笑顔は変わらない

けれど、その笑顔だけがどこか無理をしているように見えた

 

「私はゲヘナをキヴォトスから消し去りたい・・・本当にただ、それだけだから。」

 

「"・・・"」

("違う。")

 

ミカがゲヘナを嫌っていることは知っている

 

何度も聞いてきた

何度もその憎しみを見てきた

 

けれど――

 

("君は。そこまで憎める子じゃない。")

 

ゲヘナが嫌い、信用できない

それは本当だ

 

だけど

 

街ごと焼き払いたいわけじゃない

生徒達を皆殺しにしたいわけでもない

 

そんな生徒ではなかった

 

私がそんな事を思っている間にもミカは話し続ける

 

「トリニティの穏健派を追いやって、その空席をアリウスで埋める。」

 

ミカは迷いなく続ける

 

「もしかしたら新しい連合になるかもね?」

「必要なら新しい公儀会でも開いて・・・うん、それも良いじゃんね。」

 

言葉は淀みない

 

("なんで・・・")

 

私は小さく目を伏せた

 

「それで、新たな武力集団を得て再編されたトリニティが、ゲヘナに全面戦争を仕掛ける。」

「そう、これが私の計画!」

 

両手を軽く広げるミカ

 

ミカは未来を語っている

そのはずなのに

一つ一つの言葉が、どこか場当たり的になっている

 

まるで、その場で思いついた言葉で自分自身へ言い聞かせるように・・・

 

("なんで・・・君は・・・")

 

本当にやりたかったことは

本当に守りたかったものは

そんな物では無かったはずだ

 

("どうしてそこまで・・・")

 

「?、どうしたの?先生。そんな悲しそうな目をして。」

 

ミカが小さく首を傾げる

その笑顔は、どこまでもいつも通りだった

 

だからこそ

胸が締め付けられる

 

「説明も急ぎ足だったし良く伝わらなかったのかな?」

 

「"・・・"」

 

違う、伝わらなかったんじゃない

伝わってしまった

 

いや――

ずっと前から分かっていた

 

("ミカ・・・。")

 

君は今も、自分自身を納得させようとしている

 

進み続ける為に

立ち止まらない為に

失ってしまったものを無駄にしない為に

 

その為の理由を、

今も必死に積み重ね続けている

 

("でも・・・。")

 

その先には君が望んでいた未来なんて、どこにも無い

 

あるのは誰かを傷付け続けた先にある

取り返しのつかない結末だけだ

 

("私は・・・。")

 

先生として

一人の大人として

 

今ここで君を止めなければならない

 

「まぁでも、もっと丁寧にお話したいところだけど・・・」

 

私が何も答えないことを気にした様子もなく、ミカは小さく肩を竦める

 

「まずは色々と邪魔なのを片付けてからにしよっか??」

 

その言葉と共に

後方で控えていたアリウス生達が、一斉に前へ出た

 

【ガチャ、ガチャッ】

 

安全装置が外される乾いた金属音

二十を超える銃口が、静かにこちらへ向けられる

 

会話の時間は終わった

私はゆっくりと息を吸う

 

("・・・必ず。")

 

胸の奥で、小さく誓う

 

("君も、皆も。")

 

("ここで終わらせたりなんて、しない。")

 

「・・・気を付けて、先生。」

 

アズサが小さく一歩前へ出る

その視線は、私ではなくミカへ向けられていた

ライフルを構える腕に、迷いはない

 

「こうして見ただけで判る・・・かなり強い。」

 

その一言に、体育館の空気がさらに張り詰める

アズサは強敵を前にしても滅多に感情を表へ出さない

 

「ふふっ、そうだよ。」

「先生には前に言ったけど、私結構強いんだから。」

 

そう言って一歩だけ後ろへ下がる

その仕草には、一切の隙が無かった

 

ごく自然にアリウスの部隊がミカを守るような陣形を形作っていく

 

("・・・。")

 

私はその動きを静かに目で追う

 

中央にミカ

その前へ展開するアリウス

後方にはまだ体育館の外で待機している増援

 

人数差は圧倒的だった

 

それでも

 

("まだ戦える。")

 

体育館の構造は頭へ入っている

 

遮蔽物、侵入経路、射線、四人の位置

 

全てが頭の中で盤面となって組み上がっていく

 

その時だった

 

「はい、じゃあ補習授業部を片付けてくれる?」

 

あまりにも穏やかな声

 

まるで掃除当番にでも声を掛けるような、気軽さだった

 

その一言だけで十分だった

 

【ダッ!!】

 

先頭のアリウス生が床を蹴る

 

それを合図にしたかのように、後続も一斉に動き出した

銃口をぶらすことなく距離を詰め

左右へ展開しながら体育館へ雪崩れ込んでくる

 

統率の取れた動きで無駄がない

濁流のような圧力が、一気にこちらへ押し寄せる

 

("・・・来る。")

 

私は四人へ視線を向けた

 

誰も怯えてはいない

全員、指示を待っていた

なら――

 

「"アズサ、左の柱。"」

 

「了解。」

 

「"ヒフミは中央のバリケード。"」

 

「はい!」

 

「"コハル、右通路を封鎖。"」

 

「任せて!」

 

「"ハナコ、後方援護。"」

 

「ふふっ♡」

 

四人が同時に動く、

まるで最初から決まっていたかのように

 

敵の射撃が開始される

 

「撃て!!」

 

【ダダダダダダダッ!!】

 

凄まじい弾幕

 

しかし既にそこに補習授業部はいない

 

「何っ!?」

 

敵が視線を泳がせる

 

「"右二人、三秒後に出る。"」

 

その言葉通り

 

跳び箱の陰から二人が飛び出した

 

「――っ!」

 

【タンッ!】

 

アズサが即座に一人を撃ち抜く

 

「もう一人!」

 

【タタタタタッ!!】

 

ヒフミの援護射撃

 

敵は慌てて身を引く

 

「右側が止まった!」

 

「"そのままでいい! 中央が来るよ!"」

 

直後

 

中央突破を狙った六人が駆け出す

 

「"今!"」

 

コハルが遮蔽物から身を乗り出した

 

「えい!!」

 

コハルが手榴弾を二つ続けて投げる

 

【ドォォン!!】

 

【ドォォン!!】

 

爆炎

 

体育館中央が一瞬で火煙に包まれ突撃隊形が崩壊する

 

「しまっ――!」

 

「"今だ!"」

 

【ダダダダダッ!!】

 

四方向から一斉射撃

煙の中で次々とアリウス生が倒れていく

 

「左が空いた!」

 

「"アズサ、右へスライド。"」

 

「了解。」

 

アズサは迷わない

指示が飛ぶより早く動き始めているようにさえ見える

 

敵が動く

 

その一歩先へ

 

補習授業部が既に銃口を向けている

 

「どういうことだ・・・!」

 

アリウス生の指揮官が息を呑む

 

「何故、こちらの動きが読まれる!」

 

誰かが出ようとすれば、そこへ射線が置かれている

隠れようとすれば、その遮蔽物へ手榴弾が飛ぶ

 

援護へ回ろうとすれば、逆側からアズサが撃ち抜く

完全に掌の上だった

 

「隊長!」

 

「前へ出られません!」

 

「後退路も塞がれています!」

 

「馬鹿な・・・」

 

指揮官の額に汗が滲む

 

二十数名で包囲したはずだった

 

それなのに包囲されているのは自分達だった

 

「"ヒフミ。"」

 

「はい!」

 

ヒフミは大きく頷き

 

再びペロロ様のぬいぐるみを放り投げた

 

「ペロロ様!お願いします!」

 

その瞬間、アリウス生の視線がペロロのぬいぐるみに集中する

 

その一瞬

 

「"全員、一斉射。"」

 

【ダダダダダダダダダダダダッ!!】

 

四方向から交差する銃火

 

逃げ場は無い

 

一人

 

また一人と倒れ、

 

先発隊で立っているアリウス生は居なかった

 

 

 

 

 

 

体育館に静寂が戻り

硝煙がゆっくりと天井へ昇っていく

 

倒れたアリウス生達

 

床へ転がる薬莢

 

崩れた跳び箱

 

撃ち抜かれた机

 

つい数秒前まで銃声が響き渡っていたとは思えないほど、不自然な静けさだった

 

補習授業部の四人は肩で息をしながらも、誰一人として銃口を下ろさない

 

視線だけは、ただ一人

 

体育館に出来た大穴の前にに立つ少女へ向けられていた

 

ミカは倒れたアリウス生達を一人ずつ見回す

その表情に焦りは無い

 

驚いたように小さく目を丸くしたあと

 

ふっと笑った

 

「・・・なるほどねーそっかそっかぁ。」

 

感心したように何度か頷く

 

「そりゃ皆シャーレ、シャーレっていうわけだ。」

 

そう言って私へ視線を向ける

 

「厄介だね、先生って。」

 

その声は責めるでもなく

悔しがるでもなく

純粋な感想を口にしたような軽さだった

 

("・・・")

 

私は静かにミカを見る

 

その笑顔は崩れていない

 

いや、崩れるどころか、どこか楽しそうですらあった

 

「予想外ではあったけど・・・」

 

ミカは肩をすくめる

 

「うん、まぁ問題ないかな。」

 

一拍置いて、まるで献立でも考えるような気軽さで続けた

 

「ちょっと時間はかかりそうだけど。」

 

ミカは倒れたアリウス生達へ一瞥だけ送り、

まるで些細な予定変更でも告げるように、小さく肩を竦めた

 

「セイアちゃんもナギちゃんも居なくなるんだし、」

 

その声音はどこまでも明るい

まるで友人同士の雑談の続きをしているようだった

 

「これでようやく始められるって言うのに、変に邪魔しないで欲しいなぁ。」

 

「・・・!」

 

ハナコが小さく息を呑む

 

「さて、増援部隊もまだまだ、体育館の外に控えてるし。続けよっか?」

 

何事も無かったかのように話を切り替えるミカ

そこでハナコが、静かに一歩前へ出た

 

「ミカさん、ひとつ聞かせて下さい!」

 

その笑顔は消えていた

真っ直ぐにミカだけを見据える

 

「セイアちゃんを襲撃したのも、貴女の指示だったんですか?!」

 

体育館が静まり返る

 

誰も口を開かない

皆がミカの返答を待っていた

 

「あはっ、ハナコもそんな目をするんだね。」

 

ミカは少しだけ目を細める

 

「うん、私の指示だよ。」

 

あまりにもあっさりと

隠す様子もなく認めた

 

「セイアちゃんってば、いつも変な事ばっかり言って。」

「楽園だのなんだの、難しい事ばっかり言ってさ・・・」

 

どこか懐かしむような口調だった

在りし日の楽しかった思い出を話すように

 

「・・・でもヘイローを破壊しろとは言ってないよ。」

 

その一言だけ、少しだけ声色が変わる

 

「私は人殺しじゃない。」

 

静かに言い放った

 

「ただ卒業するまで、檻の中に閉じ込めておいた方が良いかなって思っただけ。」

「でも、自然とああなっちゃったの。」

 

「・・・」

 

アズサが黙り目を伏せる

体育館へ重い沈黙が落ちる

 

「これ以上は、当事者に聞いた方が速いんじゃないかな?」

 

そう言って

ミカの視線が、ゆっくりと一人へ向く

 

再度ミカの瞳に憎悪が宿る

 

「ねぇ、白洲アズサ。」

 

その声は先程までと変わらない

けれど、瞳だけが笑っていなかった

 

「何だか一部誤解があるみたいだし、私の代わりに説明してくれない?」

「セイアちゃんがあんな事になっちゃったのが、」

 

ミカはそこで一度だけ言葉を区切る

 

「ここまで事態が大きくなったきっかけなんだよ?」

「そこからもう色んな事がどうしようも無くなっちゃったわけだし・・・」

 

その言葉は責めるようでいて

どこか縋るようでもあった

 

「ねぇ、その辺りどう思う?」

 

「そ、それは・・・」

 

アズサの表情が揺れる

言葉が続かない

 

その様子を見たヒフミが、不安そうにアズサを見る

 

「アズサちゃん・・・?それはいったい、なんのお話、ですか・・・?」

 

「ち、違う・・・あれは・・・」

 

アズサが何かを言おうとした、その瞬間

 

【ドカァァン!!】

 

爆発音が体育館全体を揺らした

天井から細かな埃がぱらぱらと舞い落ちる

 

「んー?」

 

ミカがゆっくりと爆発のした方へ視線を向ける

その場にいた全員も、思わずそちらを振り返った

体育館の外では土煙が立ち上り、何かがこちらへ近付いてくる気配がある

 

「トリニティの生徒が一部こちらへ向かってきてます!」

 

アリウス生の一人が慌ただしく報告する

 

「・・・?なんで?」

 

ミカが小さく首を傾げた

その表情には純粋な疑問しか浮かんでいない

 

「ティーパーティーの戒厳令に背くような人達はもう・・・」

 

そこまで言い掛けたところで

 

静かな声が、その言葉を遮った

 

「・・・居ますよ。」

 

ハナコだった

その声は穏やかだったが、どこか確信を帯びている

 

「ティーパーティーにも命令出来ない、独立的な集団が。」

 

「・・・!」

 

ミカの表情が初めて僅かに動く

 

「シスターフッド!?」

 

その名前を口にした瞬間

視線が鋭くハナコへ向けられた

 

「っ、浦和ハナコ・・・!」

 

「・・・まぁ、ちょっとした約束をしましたので。」

 

ハナコはいつもの微笑みを浮かべたまま答える

 

その笑みは崩れない

けれど、その瞳だけは真っ直ぐだった

 

「約束・・・?」

 

ミカが小さく繰り返す

 

「貴女は知らなくて良い事ですよ、ミカさん。」

 

静かな返答

 

それ以上は何も語らない

 

その瞬間だった

 

【ドカァァン!!】

 

先程よりも近く

轟音と共に体育館の壁が内側へ吹き飛び

瓦礫が弾け、白い煙が一気に体育館へ流れ込んできた

 

「"っ・・・!"」

 

思わず目を細める

 

視界が白く霞む

 

その煙の向こうから

ゆっくりと三つの人影が姿を現した

 

「けほっ、今日も平和と安寧が、皆さんと共にありますように・・・けほっ。」

 

聞き慣れた、落ち着いた声

 

「す、すみません、お邪魔します」

 

少し申し訳なさそうな声が続く

 

やがて煙が晴れていく

 

黒い修道服

静かにライフルを構える少女

その左右には、それぞれ武器を手にした二人

 

「シスターフッド、これまでの慣習に反する事ではありますが・・・」

 

歌住サクラコが静かに一歩前へ出る

その立ち姿には、一切の揺らぎが無かった

 

「ティーパーティーの内紛に介入させて頂きます。」

 

「ティーパーティーの聖園ミカさん。」

 

サクラコの視線が真っ直ぐミカを捉える

 

「他のティーパーティーメンバーへの障害教唆及び障害未遂で、貴女の身柄を拘束します。」

 

「シスターフット、歌住サクラコ・・・」

 

ミカは小さくその名を呟く

 

驚きというより

 

ようやく状況を理解したような表情だった

 

そして――

 

「・・・あはっ。」

 

小さく笑う

 

「流石にシスターフッドと戦うのは初めてだなー」

 

困ったように笑いながらも

その笑みは少しも崩れない

 

「なるほどね、これが切り札って事?」

 

その言葉を受けても、サクラコの表情は変わらない

ライフルを構えたまま、静かにミカを見据えている

 

その隣ではマリーが緊張した面持ちで銃を握り直し

 

ヒナタも小さく息を整えていた

 

体育館には再び静かな緊張が張り詰める

 

そんな中

 

ミカの視線だけがゆっくりとハナコへ向いた

 

「・・・浦和ハナコ、どうやってシスターフッドを動かしたの?」

 

その問い掛けは穏やかだった

 

責めるような口調ではない

純粋に答えを知りたい

 

そんな響きだった

 

「シスターたちと仲良かったのは知ってる。」

「でもあの子達が何の得も無く動くはずが無い・・・ねぇ、何を支払った(・・・・・・)の?」

 

その一言で、体育館の空気が僅かに変わる

 

「・・・」

 

ハナコは何も答えない

その笑みも崩さない

 

ただ静かにミカを見つめ返すだけだった

 

「・・・うん、興味深いね。」

「さて、片付けないといけない相手が一気に増えちゃったなぁ。」

 

困ったように肩を竦める

まるで予定が少し狂った、それくらいの軽さだった

 

「・・・ようやく顔色が変わりましたね、ミカさん?」

 

ハナコが静かに問い掛ける

 

するとミカは一度だけ目を瞬かせ

 

「・・・そうかな?」

 

少し考えるような間

すぐにいつもの笑顔へ戻る

 

「まぁどうせホストになったら、大聖堂も掃除しようと思ってた所だし。」

 

その言葉に迷いはない

 

「うん、一気にやれるチャンスだって考える事にしようかな。」

 

そう言って、ミカは静かに一歩前へ出る

床を踏み締める足音だけが、静まり返った体育館へ響いた

 

「・・・さて、じゃあやってみよっか?」

 

その笑顔は変わらない。

 

けれど、先程までとは違う

その場にいた誰もが、本能的に理解する

 

ここから先は言葉では終わらない

 

ミカは静かに、自身のサブマシンガンMP28(Quis ut Deus)を構えた

 

「・・・あくまでも戦うつもりですか、ミカさん。」

 

サクラコが静かに問い掛ける

その視線は決して逸れない

 

「この状況での勝算がどれくらいか、分からない貴女ではないですよね?」

 

補習授業部

 

シスターフッド

 

そして私

 

目の前には、先程アリウスの部隊を壊滅させた戦力が揃っている

 

普通ならここで退く

そう判断しても、おかしくはない

 

だが、ミカは笑った

 

「ふふっ」

 

小さく肩を揺らす

 

「むしろシスターフッドくらいで私に勝てると思ってるの?」

 

その声音には、虚勢も強がりも感じられない

ただ事実を口にしているだけだった

 

「それに、ここまで来て大人しく降参しますなんてわけにはいかないの。」

 

一瞬だけ

ミカの笑みが薄れる

 

「・・・もう私は行くところまで行くしかないの。」

 

その小さな呟きは、誰に向けたものだったのか

 

私達か

 

それとも

 

自分自身か

 

 

「・・・では。」

 

サクラコが静かに一歩前へ出る

 

ライフルを構え直す

 

その動作に迷いは無い

 

「皆様に安寧があらんことを。」

 

穏やかな祈りのような言葉

けれど、その瞳は真っ直ぐ敵だけを見据えている

 

「シスターフッド、展開。」

 

「はい。」

 

「は、はいっ・・・!」

 

マリーとヒナタも左右へ散開する

 

互いの射線を確保しながら

静かに距離を取る

 

「先生。」

 

サクラコが小さく振り返る

 

「どうか補習授業部の皆様と共に、後方からご指揮を。」

 

「私達が前衛を務めます。」

 

「"・・・分かった。皆、無理はしないで。"」

 

「承知しております。」

 

サクラコは小さく頷く

 

そして、仲間達へ視線を向けた

 

「皆様。」

 

サクラコが静かに呼び掛ける

 

「共に参りましょう。」

 

誰も返事はしない

その必要も無かった

 

全員が同じ覚悟で武器を構える

 

「これも一つの試練なのですね。」

 

その言葉が静かに体育館へ響いた

 

その瞬間だった

 

ミカが、小さく笑う

 

「あはっ。」

 

その笑みは

 

先程までとは違っていた

 

どこか楽しそうで

 

どこか嬉しそうで

 

まるで、ずっと待ち望んでいた遊び相手を見つけた子供のようだった

 

「・・・本当に来るんだ。」

 

ぽつりと呟く

 

その言葉には、驚きよりも期待が混じっている

 

「じゃあ。」

 

ミカはゆっくりと【Quis ut Deus】を持ち上げる

 

その瞬間――

 

体育館の空気が変わった

 

「少し本気出そうかな。」

 

「"――!"」

 

私は思わず息を呑む

 

ミカの頭上で、ヘイローが静かに輝き始める

 

淡い桃色

 

朝焼けにも似た

 

柔らかな光

 

それは次第に強さを増し

まるで星屑を散りばめたような神秘的な輝きを放ち始めた

 

同時に【Quis ut Deus】の銃身にも、同じ色の光がゆっくりと宿っていく

 

金属の冷たい質感が、神秘の光に包まれ

まるで武器そのものが呼吸を始めたかのようだった

 

("・・・!")

 

私は目を見開く

 

あまりにも見覚えのある現象だった

 

ヘイロー

 

神秘

 

武器

 

その三つが

 

完全に一つとなっている

 

("なんで・・・。")

 

胸の鼓動が大きく鳴る

 

("神秘を・・・完全に制御している・・・!?")

 

その光景を、私は知っていた

 

アンラ

 

ユメ

 

そして

 

ホシノ

 

キヴォトスでも指折りの実力者達だけが辿り着いていた領域

 

それを

 

 

ミカが、当たり前のようにやっている

 

("ミカも・・・!?")

 

隣でヒフミが不安そうに私を見る

 

「先生・・・?」

 

その声が聞こえても、私はすぐには答えられなかった

 

目の前で起きている現象から、目が離せなかった

 

("違う・・・。")

 

これは偶然なんかじゃない

 

一時的な暴走でもない

 

("理解した上で・・・使っている。")

 

その事実だけが、冷たい衝撃となって胸へ突き刺さった

 

 

ミカは小さく微笑む

その笑顔はどこまでも穏やかで、

まるでこれからお茶会でも始めるかのような、柔らかなものだった

 

「じゃあ。始めよっか。」

 

銃口がこちらへ向く

淡い桃色の光が収束していく

 

「【Kyrie Eleison.】」

 

その詠唱は、あまりにも短い

祈りのように静かで、

囁きにも似た声だった

 

次の瞬間

 

【パァンッ!!】

 

乾いた銃声が、一発だけ体育館へ響く

 

ただ、それだけだった

 

だが

 

放たれた弾丸は、

桃色の閃光となって一直線に空間を裂いた

 

「っ!」

 

サクラコが反射的に身体を捻る

 

速い

 

常人では捉えられない速度だった

 

それでも

 

彼女は避けた

 

確かに避けた

 

銃弾は肩を掠めるだけ――

 

そのはずだった

 

【ドンッ】

 

鈍い衝撃音

 

「・・・え?」

 

誰かが、小さく声を漏らす

 

次の瞬間

 

サクラコの身体が宙へ浮いた

まるで大型車両にはね飛ばされたかのように

 

一直線に体育館の壁まで吹き飛ばされる

 

【ガァァンッ!!】

 

壁へ激突

 

コンクリートが砕け、粉塵が舞い上がる

 

「サクラコ様!?」

 

「サクラコさん!」

 

マリーとヒナタの悲鳴が重なる

 

サクラコのライフルが床へ転がり、

乾いた音を立てた

 

そのまま、彼女は動かない

 

「・・・そんな。」

 

ハナコの顔から笑みが消えた

 

「今の、一発だけで・・・?」

 

誰も答えられない

 

私も、言葉を失っていた

 

("掠めただけだ・・・")

 

確かに見えていた

 

直撃じゃない

 

肩を、ほんの僅かに掠めただけ

 

それなのに

 

("なんで・・・")

 

ミカは困ったように頬を掻く

 

「あれ?」

 

少しだけ首を傾げ、肩を竦めた

 

「外したと思ったんだけど。」

 

その言葉に悪意は無く

本当に、狙いを外したと思っているだけだった

 

「まぁいっか。」

 

そう呟くと、ミカはゆっくりと空を見上げる

 

体育館の天井

 

その、さらに向こう

 

青空へ向けて

 

「そうだ。」

 

まるで何かを思いついたように

 

「せっかくだしこれはどうかな?」

 

片手を軽く掲げる

その指先へ桃色の神秘が静かに集まり始めた

 

私はその姿を見た瞬間、背筋を冷たいものが走った

 

("・・・まずい。")

 

理由は分からない

けれど本能が警鐘を鳴らしていた

 

ミカは空を見上げたまま静かに微笑む

 

「【星の呼び声。】」

 

その詠唱が終わる

 

次の瞬間

 

【ゴォォォォォ・・・】

 

空が――鳴いた

 

体育館全体が低く震える

 

天井の梁が軋み、

窓ガラスが細かく震え始める

 

「・・・?」

 

ヒフミが空を見上げる

 

コハルも

 

アズサも

 

誰もが反射的に天井へ視線を向けた

 

その瞬間だった

 

私は理解する

 

("違う・・・!")

 

これは銃撃じゃない

 

爆発でもない

 

戦術でもない

 

「"全員、伏せて!!"」

 

叫ぶ

 

声が枯れるほどに

 

しかし

 

間に合わない

 

【ドガァァァァァァァン!!!!】

 

体育館の屋根を突き破り

 

巨大な岩塊が

 

まるで空そのものが落ちてきたかのような勢いで降り注いだ

 

【バキバキバキッ!!】

 

床が砕け、亀裂が蜘蛛の巣のように一気に広がる

 

衝撃波が爆風となって吹き荒れ、

積み上げられていた机やマットが紙切れのように宙へ舞った

 

「きゃあっ!」

 

「きゃっ・・・!」

 

ヒフミとコハルが咄嗟に身を伏せる

それでも衝撃だけで身体が吹き飛ばされ

 

床を何度も転がった

 

「くっ・・・!」

 

アズサは瓦礫を蹴って体勢を立て直す

 

だが、さっきまで構築していた防衛陣地はもう存在しない

 

跳び箱は粉々に砕け

 

平均台は折れ

 

遮蔽物として積み上げていた器具は巨大な岩の下敷きになっていた

 

わずか一撃

 

それだけで

 

私たちが数時間かけて準備した盤面が消えた

 

「まだです!」

 

マリーがハンドガンを構える

その手は恐怖で小さく震えていた

 

「が、頑張ります・・・!」

 

ヒナタもマリーに呼応するように

ミカに銃を再度向ける

 

【ダダダダダッ!!】

 

弾丸が一直線にミカへ向かう

 

正確な射撃だった

 

普段なら十分に通用する

 

だが

 

その弾丸の全てを受けたミカは

受けた上で一切の傷を負っていなかった

 

「あはっ。」

 

「え・・・。」

 

「うそ・・・。」

 

マリーとヒナタの声が震える

 

「じゃあ。」

 

ミカは何事もなかったかのように

再び空を見上げた

 

「もう一個。」

 

その声はあまりにも軽い

遊びを続ける子供のように

 

「【星の呼び声】」

 

【ゴォォォォォ・・・】

 

空が再び唸る

 

「っ・・・!」

 

嫌な予感が今度は全員へ伝わった

 

【ドガァァァァァン!!!!】

 

続いて三発目

 

四発目

 

【ドガァン!!】

 

【ドガァァン!!】

 

体育館の屋根が大きく傾き

 

鉄骨が軋む

 

壁は裂け

 

床は砕け

 

さっきまで体育館だった場所が

瓦礫の山へ変わっていく

 

「"・・・これは。"」

 

思わず言葉が漏れる

 

目の前で起きているものは

もう戦闘ではなかった

 

("戦いじゃない・・・")

 

敵味方が撃ち合い

 

位置を取り

 

射線を読み合う

 

そんな次元ではない

 

("災害だ。")

 

先生として、私は盤面を読む

 

誰を動かすか

 

どこへ配置するか

 

どの射線を通し

 

どの敵を優先するか

 

それが私の戦い方だった

 

("射線。")

 

見る

 

("位置。")

 

考える

 

("援護。")

 

組み立てる

 

("包囲。")

 

何通りもの勝ち筋を頭の中で描く

 

けれど

 

("成立しない。")

 

その全てが

目の前で崩れていく

 

("盤面そのものを消される。")

 

隕石が落ちる

 

遮蔽物が消える

 

地形が変わる

 

隊形を組む前に

 

戦場そのものが書き換えられる

 

こんな相手を、私は知らない

 

冷たい汗が頬を伝う

 

("こんなもの・・・。")

 

喉が乾く

 

拳を握る

 

それでも答えは見つからない。

 

("どう指揮すればいい・・・!")

 

三百を超える時間を繰り返してきた

 

数え切れない戦場を見てきた

 

どんな絶望的な状況でも

 

必ず盤面は存在した

 

だから戦えた

 

だから勝てた

 

でも、今、目の前にいる少女だけは違う

 

初めてだった

 

本当に初めて

 

「指揮」という私の武器が、通じない相手が目の前に立っていた。

 

 

 

 




トリニティピンクゴリラが大暴れ!

今まで味方陣営が強化されている事が多かったですが、
今回初めて、敵陣営であるミカが強化されています。

神秘を完全に操作し、
その操作により、神秘圧縮による弾丸の強化。
所謂色付きの閃光まで昇華しています。
これと同等なのは現在作中で放ったアンラ、ユメが放った赤い閃光。
そしてヒナのイシュボシェトの紫色の連射ビームがこれに該当します。

そして色付きの閃光というのは、
総じてその者のヘイロー(神秘)の色になります。
なので、ヒナやミカはそれぞれ閃光の色が違います。

アンラとユメが同じ色の閃光なのは、ユメ自身がアンラの血を浴び、
眷属になってる事によりその神秘の特性が変質してる事が大きいです。

尚、ホシノもこの次元の神秘圧縮を行えますが、
ローブを着ている時と、着て居ない時でその神秘の色が変化します。
まぁつまりノーマルホシノはピンク色っぽい閃光を放ち、
臨戦ホシノは赤い閃光を放ちます。

それと、この色付きの閃光にはもう一段階上が存在しますが・・・
恐らくそれが出るのはまだまだ先になると思います。

そして、話をミカに戻しますが。
ミカは現在神秘を十全にコントロール出来ています。
なので、総力戦演習前にユメとシロコの模擬戦の時の様に、
色付きでない攻撃が現在のミカにとってはダメージ足りえません。

さらに神秘を使い常時発動のサブスキル
【Benedictio】を作中で常時発動しています。
無傷のサクラコ様が肩に掠っただけで一撃でダウンしたのはこれによるものです。

Kyrie Eleisonの無傷の相手に対するダメージの増加効果と
Benedictioの常時クリティカルこれが一番のキモです。
これはゲームではクリティカル、現実で言うならば、急所。
つまり肩に掠っても指先にかすめても急所となり、その身体に深刻なダメージを及ぼします。

まぁゲーム内でもぶっ壊れでしたが、現実で再現されると壊れ具合が加速しますね。

まぁなので、生徒が神秘を十全に使えるようになると
ゲーム内に存在した生徒が持っているスキルを再現し使用できる。
そういう事です。

ちなみに、何故先生が、ミカにセイアの生存を言わないか、
それは実際に自分の周回経験で、ミカに伝えた結果、療養中に襲撃され死んでいた事もある上に、
生きているとミカに伝えた結果、ミカが暴走した事があったからです。


今回の今日のセイアは諸事情で次のお話に書いています!




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。