おっさんキヴォトスに行く   作:無い頭のおっさん

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同時投稿二本中の二本目!



今見よ、わたしこそは彼である。
わたしのほかに神はない。
わたしは殺し、また生かし、
傷つけ、またいやす。
わたしの手から救い出しうるものはない。


先生と司祭とゴリラ

ミカはゆっくりと銃口を下ろした

 

体育館には静寂だけが残る

 

床には倒れ伏すシスターフッド

 

補習授業部も、それぞれ傷を負い、満足に立つことすら難しい

 

私も息を切らしながら周囲を見渡していた

 

「・・・終わりかな。」

 

ミカが小さく笑う

 

「先生、本当にすごかったよ。」

 

「ここまで私を追い詰めた人なんて久しぶり。」

「でも――」

 

淡い桜色の神秘が、再びミカのヘイローを照らす

 

銃口も同じ色の輝きを帯びた

 

「これ以上は無理。」

「もう戦える人はいないよね?」

 

体育館を見渡す

 

「補習授業部。」

 

「シスターフッド。」

 

「先生。」

 

「ここで降参して?」

「これ以上続けても、誰かが傷付くだけ。」

「私はナギちゃんだけ渡してくれればいい。」

「他のみんなは見逃してあげる。」

 

誰も返事をしない

 

ハナコが歯を食いしばる

 

「・・・まだ。」

 

サクラコも壁に身体を預けながら立ち上がろうとする。

 

「まだ・・・終わっては・・・」

 

「駄目だよ。」

 

ミカは静かに首を振る

 

「立たないで。」

「次は本当に加減できない。」

 

桜色の神秘がさらに濃くなる

 

「お願いだから。」

「降参して?」

 

その時だった

 

――コツ

 

誰かの靴音

 

静かな

 

あまりにも静かな足音

 

体育館中の視線が、一斉に入口へ向く

 

――コツ

 

――コツ

 

――コツ

 

誰もいない

 

そう思った次の瞬間

 

体育館の入り口に、黒い影が立つ

崩落した瓦礫の山、そして充満する土埃

それら全てを背景に、黒い司祭服の男グレゴリーは、

まるで晩餐にでも招かれたかのような優雅さで足を踏み入れた

 

コツ、コツ

 

その足音は、戦場においてはあまりに場違いなほど静かだ

だが、不思議と体育館の空気を支配していた

 

「・・・ほう。」

 

グレゴリーが立ち止まる

瓦礫の山となった体育館を見渡し、

次いで、銃口を向けたまま動かないミカへと視線を巡らせた

 

「これはまた・・・実に芳醇な破滅の香りがするな。」

 

男は唇の端をわずかに吊り上げ、穏やかに、しかし一切の感情を読ませない笑みを浮かべる

 

「私がティーパーティーより預かり、管理を任されていた別荘だ」

「清掃と修繕には、並々ならぬ時間を費やしたのだが・・・」

 

彼は床に散らばった石片を、愛おしげに一瞥した

 

「わずか数分の出来事か。・・・実に痛快だ」

「破壊とはかくも容易く、そして人という生き物の内面を、これほどまでに残酷に暴き立てる。」

 

「・・・貴方がグレゴリー?」

 

ミカが警戒を露わにする

だが、グレゴリーはその敵意を心地よい風でも受けるように受け流した

 

「ふん、そうだとも。」

「私はグレゴリー。主の教えに身を捧げる、ただのしがない管理人だ。」

 

グレゴリーは一歩、また一歩と距離を詰める

その動作には寸分の淀みもなく、銃口という死の線を前にしても、彼の歩調は一切乱れない

 

「それよりも、迷える仔羊よ。君に伝えるべきことがある。」

 

「・・・何?」

 

「建物の外に控えていた【アリウスの残党】たちだが・・・安心するといい。」

 

グレゴリーは穏やかに、しかし地の底から響くような低音で言った

 

「私が先ほど、全員【処理】しておいた」

「君が散々遊んだ後の残骸を放置しておくのは、管理上の瑕疵になるからな。」

「皆、今は実に静かに・・・休息の底に沈んでいるよ。」

 

「・・・ッ!?」

 

ミカの瞳が見開かれる

体育館の外に展開させていたはずの兵力が、音もなく消えた

その事実に、ミカのヘイローが微かに明滅した

 

「怒る必要はない。」

「彼らもまた、戦うという業から解放されたのだ。幸福なことではないか。」

 

グレゴリーはそこで立ち止まり、

まるで手品師が種明かしをするかのような手つきで、ミカを見据えた

 

「さて・・・君は、ナギサという少女を欲しているそうだな。」

 

その瞳には、底知れぬ興味と、深い【問い】が宿っていた

 

「自分の内なる衝動に身を任せ、全てを破壊し尽くす。」

「・・・素晴らしい。君の中に渦巻くその淀み、その力への渇望。」

「それは、誰かに押し付けられた正義よりも、よほど【人間】らしい。」

 

グレゴリーは、聖職者とは思えぬほどに愉悦に満ちた笑みを深める

 

「だが、聖園ミカ。君は気づいていない。」

 

「・・・」

 

「君は、その力で何を救おうとしている?」

「ただの破壊か、それとも――その先にある、君自身も認めたくない【何か】か。」

 

グレゴリーは銃口の先にあるミカの顔を、慈しむように見つめた

 

「どうだ、聖園ミカ。」

「その銃を私に向けてみるがいい。」

「君の答えが、破壊と希望のどちらにあるのか・・・それを試す、良い機会だ。」

 

男は一切の武器を持たず、ただ黒い衣を揺らしながら、

絶対的な死の気配を纏ってそこに立っていた

まるで、最初から世界そのものを嘲笑うかのような、愉悦に満ちた管理者として

 

「貴方も邪魔をするの?」

 

ミカは静かに問い掛ける

 

銃口は既にグレゴリーへ向いていた

 

だが男は微動だにしない

 

「邪魔・・・か。」

 

グレゴリーは喉の奥で、

 

クツ・・・

 

クツクツ・・・

 

と小さく笑った

 

「無論、私にも立場というものがあってね。」

「これでも一応、ティーパーティーより言い渡されている仕事がある。」

 

「預かった者を守り、別荘を管理する。」

「それが私に課された責務だ。」

 

「・・・なら、その命令は今この場で撤回するよ。」

 

ミカは迷いなく言い放つ

 

「私もティーパーティーだから。」

「管理人さん、もう仕事は終わり。」

「そこを退いて?」

 

一瞬の沈黙

 

そして

 

「それは出来ない。」

 

グレゴリーは即答した

 

「依頼とは実に神聖なものだ。」

 

「依頼主以外が契約を覆すなど・・・」

「実に興醒めだ。」

 

「君もティーパーティーではある。」

「だが。」

 

男はわずかに笑みを深める

 

「私へ依頼を下したのは、君ではない。」

「故に。契約は今も有効だ。」

 

「・・・そう。」

 

ミカは肩を竦める

 

「なら仕方ないかな。」

 

ゆっくりとサブマシンガンを下ろした

 

「先生みたいにヘイローも無いみたいだし。」

「撃つのはやめとく」

「私は人殺しじゃないから。」

 

そう言うと、

ミカは一歩踏み込んだ

 

床が砕ける

 

【ドンッ!!】

 

爆発的な加速

 

誰も視認出来ない

 

一瞬でグレゴリーの懐へ入り込む

 

「大人しく寝てて。」

 

拳が振り抜かれる

 

その瞬間だった

 

「遅いな。」

 

「――!」

 

グレゴリーの身体が僅かに流れる

 

紙一重

 

いや、

 

拳が当たるより先に、

男は既にそこには居なかった

 

「なっ――」

 

ミカの腕へ、3本の指が触れる

 

それだけだった

 

竜爪(ロンザオ)

 

【ゴギィッ】

 

「っ!!」

 

肩が外れる

 

腕全体が絡め取られ

 

身体の重心が完全に奪われた

 

「え――」

 

景色が反転する

 

【ドガァァン!!】

 

体育館の床へ、ミカの身体が豪快に叩き付けられた

 

コンクリートが蜘蛛の巣状に砕け散る

 

誰も息を呑む

 

「・・・」

 

グレゴリーは何事も無かったように一歩踏み出し

そして、右足をゆっくり持ち上げた

 

「終いだ。」

 

その一歩は静かだった

 

だが、

 

先生だけは理解していた

 

("まずい・・・!!")

 

あれは踏み付けではない

 

震脚

 

全身の力を一点へ叩き込む技

 

【ッ!!】

 

直感だけでミカが転がる

 

次の瞬間

 

【ズガァァァァンッ!!!】

 

床が爆ぜた

 

体育館全体が揺れる

コンクリートが数メートルに渡って陥没し、

瓦礫が雨のように降り注ぐ

 

「・・・」

 

ミカは数メートル先で静かに立ち上がった

 

肩を回す

 

外れた腕は既に自力で戻している

しかし、その顔から笑みは消えていた

 

「・・・・・・」

 

じっと、グレゴリーを見つめる

 

「・・・ねぇ。」

 

「貴方。」

 

男は答えない

 

「もしかして・・・前にセイアちゃんと一緒に居た人・・・?」

 

体育館が静まり返る

 

「フード被ってたから分からなかったけど。」

「素顔ってそんな感じなんだ。」

 

グレゴリーは僅かに肩を竦めるだけだった

 

ミカは苦笑する

 

「ふふっ。あの時も十分胡散臭かったけどさ。」

「何?年月が経って、その胡散臭さに磨きでも掛けたの?」

 

その言葉と同時に、ミカのヘイローが淡い桜色に眩く輝いた

キラキラと星屑のような粒子が舞い始める

 

そしてミカの瞳が細められる

桜色の神秘がヘイローから溢れ出し

 

【キィィィン――】

 

Quis ut Deusが眩く輝く

 

「――ッ!!」

 

引き金を引こうとした

 

その瞬間だった

 

「まだまだ遅い。」

 

【ッ!!】

 

グレゴリーの姿が消える

 

「――!」

 

先生だけが辛うじて視認した

 

("活歩・・・!")

 

床を蹴ったのではない

滑るように音もなく

既にミカの懐へ入り込んでいた

 

「――裡門頂肘(リームンディンジョウ)

 

肘が静かに突き上がる

速さが異様、避けるという概念そのものを置き去りにした一撃

 

「っ!」

 

ミカは反射的に左腕を差し込む

 

【ドゴォォンッ!!!】

 

「――っ!!」

 

体育館中へ衝撃が響いた

 

受けた

 

確かに受けた

 

それでも、ミカの身体は砲弾のように吹き飛ぶ

 

【ガガガガガガッ!!】

 

床を削り

 

跳び箱を粉砕し

 

壁際まで一直線に叩き飛ばされた

 

「ミカさん・・・!?」

 

ハナコが思わず息を呑む

 

「腕で防いだ・・・のに・・・?」

 

サクラコも言葉を失う

 

受け切ったのではない

受けさせられた上で

そのまま吹き飛ばされた

 

「・・・ふぅ。」

 

ミカはゆっくり立ち上がる

痺れる左腕を軽く振る

 

「痛ぁ・・・」

 

小さく笑う

 

「なるほど。そういう戦い方なんだ。」

 

その瞳から笑みが消えた

 

「なら。」

 

桜色の神秘が今度は腕へ宿る

淡い光が指先まで流れ込む

 

【キィィィン――】

 

「だったら近付かせなければいい。」

 

ミカは隣のコンクリート柱へ手を掛けた

 

【メリメリメリ・・・】

 

鈍い音が響く

 

「・・・え。」

 

ヒフミが目を見開く

 

【バキィィィィッ!!!】

 

柱が、握り潰された

神秘を纏った五指が鉄筋ごとコンクリートを粉砕し

巨大な破片が無数に宙へ舞う

 

「行け。」

 

ミカが腕を振り抜く

 

【バァァァッ!!】

 

瓦礫が散弾のように飛ぶ

 

しかしただの瓦礫ではない

一つ一つが桜色の神秘を纏っていた

破片が軌跡を描くたび淡い光が尾を引く

 

どれかひとつでも、当たれば終わる

ミカは確信していた

 

銃は危険、撃とうとした瞬間

あの男は間合いへ入ってくる

 

ならば面で潰す

逃げ場そのものを消す

 

神秘を宿した瓦礫の豪雨が

体育館を埋め尽くした

 

逃げ場はない

 

はずだった

 

「・・・」

 

グレゴリーは歩みを止めない

いや止める必要が無かった

 

その右手が、ゆっくりと胸元まで持ち上がる

 

「――纏絲勁(チャンスージン)

 

クツリ、と男が笑う

 

次の瞬間だった

 

【シュッ】

 

最小限

 

本当に最小限の手首の返し

 

ほんの数センチ

 

それだけ

 

【パシッ】

 

一つ目の瓦礫が軌道を変える

 

【パッ】

 

二つ目

 

【パパッ】

 

三つ

 

四つ

 

五つ

 

まるで見えない糸を撫でるような動き

 

神秘を帯びた瓦礫は、男へ届く寸前で僅かに捻られ

互いの軌道を狂わせ

ぶつかり合い、砕け、

あるいは明後日の方向へ逸れていく

 

【ガガガガガガッ!!】

 

破片だけが周囲の壁を削る

 

グレゴリーの黒い法衣には

 

砂埃一つ付かなかった

 

 

「・・・な。」

 

ミカの瞳が揺れる

 

(受けてない。)

 

(逸らしてる。)

 

(違う。神秘ごと・・・流された?)

 

男は真っ直ぐ歩いてくる

 

一歩

 

また一歩

 

何百という破片の中心を

 

最短距離で

 

最小限の動きだけで

 

「・・・なるほどね。」

 

ミカが小さく呟く

 

「そういう事。」

 

黄色の瞳が細められる

 

「瓦礫が小さい。」

「質量が足りない。」

 

「その程度なら全部流せるってわけ。」

 

グレゴリーは答えない

ただ歩く

 

「だったら。」

 

ミカは今度は柱そのものへ手を掛けた

 

【ゴゴゴゴゴ・・・】

 

神秘が柱全体へ流れ込む

 

淡い桜色がコンクリート内部の鉄筋まで染め上げ

床が悲鳴を上げる

 

【バキィィィィィッ!!】

 

一本丸ごと引き抜いた

 

「これなら。」

 

ミカが肩へ担ぐ

体育館の支柱そのもの

人間が持ち上げられる質量ではない

 

「流せないよね。」

 

【ブォォォォォッ!!】

 

空気が裂ける

 

神秘を纏った巨大な柱が

投槍のような速度で一直線に飛来した

 

補習授業部も

 

シスターフッドも

 

私も

 

誰もが息を呑む

 

("あれは――受けられない。")

("避けるしか――")

 

だが

 

グレゴリーは避けなかった

 

「・・・」

 

男の足が静かに沈むと同時に姿が消えた

 

【ドンッ!!】

 

爆ぜるような踏み込み

 

次の瞬間には柱の目前

左半身が僅かに沈み込み

 

全ての力が一点へ収束する

 

猛虎硬爬山(天干隻ツ)

 

拳が柱に触れる

 

【――――バァァァァァァァンッ!!!!】

 

神秘が砕けた

柱ではない

 

まず内部へ満ちていた桜色の神秘が

音を立てるように霧散する

 

次いで

 

支えを失った巨大なコンクリート柱そのものが

中心から粉々に爆ぜた

 

鉄筋は千切れ

 

破片は一欠片も残さず砂塵へ変わり

 

巨大な質量は衝撃波となって体育館中へ吹き抜ける

 

【ゴォォォォォッ!!】

 

土煙の中

黒い司祭服だけが

何事も無かったかのように佇んでいた

 

「・・・嘘。」

 

ミカが初めて

 

息を呑んだ

 

「神秘まで・・・壊した・・・?」

 

「・・・どうした。」

 

グレゴリーは、瓦礫の粉塵の中で静かに首を傾げた

 

「もう来ないのか。」

 

「・・・」

 

ミカは銃を構えたまま動けない

 

先ほどまで燃えていた闘志が、

今は警戒へと変わっていた

 

「来ないのであれば、こちらから行く理由もない。」

 

コツ

 

一歩だけ前へ出る

 

「安心したまえ。私は争いを好まない。」

「必要であれば壊す。それだけの話だ。」

 

体育館は静まり返っていた

 

誰も動けない

 

補習授業部も

 

シスターフッドも

 

私も

 

全員が、この黒衣の男だけを見ている

 

ミカが小さく息を吐いた

 

「・・・ねぇ。」

 

「何だね。」

 

「貴方。」

 

「結局何が目的なの?」

 

「私を止めるため?」

「ナギちゃんを守るため?」

「それとも先生達の味方?」

 

グレゴリーは数秒だけ黙った

 

それから、小さく笑う

 

「ククッ・・・」

 

「・・・どれも違う。」

 

「私は依頼を遂行しているだけだ。」

 

「依頼?」

 

「そうだ。」

 

「依頼主の願いを叶える。」

「それが【私】の仕事なのでね(【俺】の仕事やからな)。」

 

ミカが眉をひそめる

 

「・・・ナギちゃん?」

 

「違う。」

 

("もしかして・・・")

 

「先生?」

 

「違う。」

 

「じゃあ誰。」

 

そこでグレゴリーは初めて

本当に愉快そうに笑った

 

「ククク・・・」

 

「君達は随分と長い間。」

死人(居もしない者)に騙され続けていたようだな。」

 

「・・・?」

 

「何を言って──」

 

「百合園セイア。」

 

その名前が出た瞬間

体育館の空気が止まった

 

「・・・やっぱり。」

 

ハナコが呟く

 

私もナギサが依頼主じゃないと聞いた瞬間

もしやとおもってはいた

 

そしてミカだけが、

信じられないという顔で立ち尽くしていた

 

「・・・今。何て?」

 

グレゴリーは当然のように答える

 

「百合園セイア。」

「現在も健在だ。私の依頼主である。」

 

沈黙

 

誰も言葉が出ない

 

「・・・嘘。」

 

ミカが呟く

 

「そんなはずない。」

「セイアちゃんは・・・ヘイローを・・・」

「破壊された。そう聞いている。」

 

「そう。」

 

グレゴリーは頷いた

 

「そう聞いている。」

「それだけだ。事実とは限らない。」

 

「・・・」

 

「君は確認したのか?百合園セイア本人(死体)を。」

 

「・・・・・・」

 

ミカは答えられない

グレゴリーは肩を竦めた

 

「君は、誰かがそう言った。」

「だから信じた。実に人間らしい。」

「だが、それらの報告の全てはセイアの偽装だ。」

 

ミカの表情から

少しずつ血の気が失われていく

 

「・・・じゃあ。」

「セイアちゃんは・・・」

 

「今、どこにいるの。」

 

グレゴリーは即答した

 

「安全な場所で療養中だ。」

 

「セイアちゃんが・・・・無事・・・?」

 

「あぁ、無事だとも。」

 

「・・・そっか・・・・生きてたんだ・・・・」

「・・・良かったぁ」

 

 

「ふぅ・・・降参。今回も私の負けだよ。」

「次会った時は貴方の顔面に一発いれるって頑張ったのになぁ・・・」

 

「ククッ」

 

「・・・」

 

ミカがグレゴリーの反応に少しイラつきながらも

私達の方に向き直した

 

「おめでとう、補習授業部・・・そして先生。」

「貴女達の勝ちって事にしておいてあげる。」

 

「はぁ・・・もう何でもいいや、私の事も好きにして。」

 

「・・・」

 

「・・・アズサちゃん。」

「自分が何をしてるのか、その結果この先どうなるのか。」

「それは分かってるんだよね?」

 

「もちろん。」

 

「・・・トリニティが貴女の事を守ってくれると思う?」

「これからずっと追われ続けるよ。」

「ずっと、何処に行っても。」

 

「・・・貴女が安心して寝れる日は来るのかな?」

「・・・それに、サオリから逃げ切れると思う?」

 

「うん、分かってる。」

「それでも私は最後まで足掻いてみせる、最後のその時まで。」

 

「・・・ふふ。うん、そっか。」

「・・・頑張ってね。」

 

 

 

 

 

 

その後、現場に駆けつけてきた正義実現員会にミカは連行されていった

 

「"ミカ・・・"」

 

「今はちょっと、先生からは何も聞きたくないなぁ・・・」

「思い返すと、やっぱりシャーレを巻き込んだのが、私の最大のミスだったと思うの。」

「あのグレゴリーも障害だったけど、先生が居なければきっとあの人は出て来なかった。」

 

「・・・はぁ、でも・・・」

 

【"もちろん、ミカの味方でもあるよ。"】

 

「・・・あの言葉を聞いた時は、本当に、本当に嬉しかったんだ。」

「・・・あの時・・・もし・・・」

 

「・・・ううん、やっぱり何でもない。」

「バイバイ、先生。」

 

そういってミカと正義実現委員会の子達が歩いて去っていく

 

「"ミカ!"」

 

その背中に私は声をかけた

 

「"大丈夫、きっとやり直せるよ。私も協力する。"」

 

その言葉をかけるもそのままミカは歩いて去っていった

 

 

 

ミカを見送った後

 

 

「あ、あうぅ・・・もう色々あり過ぎて、全身ボロボロです・・・」

 

「ようやく落ち着きましたね・・・」

 

「うん・・・」

 

コハルがふらついていた

 

「コハルちゃん!?」

 

急いでヒフミがコハルを抱きとめる

 

「ご、ごめん、何だか力が抜けちゃって・・・あ、ありがと。」

 

「それもそうですよね、一晩中走り回りましたし・・・」

 

「それにここ一週間、あまり睡眠もきちんととれてないですからね。」

「これでようやく・・・」

 

「何を言っているのヒフミ、ここからがスタートだ。」

 

「・・・はい?」

 

「あー・・・」

 

「!そ、そうでした、試験が・・・」

 

「・・・忘れてた。」

 

「現在時刻は午前7時50分」

「試験会場まで一時間で着かないと、走ろう」

 

「クククッ、ここから走ってトリニティの分館まで行くつもりかね?」

「無茶が過ぎるぞ、白洲アズサ。」

 

「・・・送っていこう。私の役目だ」

 

「"グレゴリーさんここまで車か何かで来ていたんですか?"」

 

グレゴリーは小さく首を横に振った

 

「何、案ずるな。人間には素晴らしい二本の脚というものが付いている。」

 

そういって私を含めた補習授業部の面々を、左右の脇にひょいと抱え込んだ

 

「"え?え?!"」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!?」

「わ、私達をどうする気ですか!?」

 

ヒフミが慌てて声を上げる

グレゴリーは澄ました顔で首を傾げた

 

「送ると言っただろう?」

 

「いやいやいや、この運び方ですか!?なんか既視感あるんですけど!!*1

 

ヒフミが脇に抱えられたまま叫ぶ

 

「せめてお姫様抱っことかありません!?」

 

「却下だ。」

 

「即答!?」

 

「効率が悪い。」

 

「効率で女の子運ばないでください!」

 

「私は荷物を運ぶ時も同じ持ち方だ。」

 

「私達荷物扱い!?」

 

「違う。」

 

グレゴリーは真面目な顔で答えた

 

「荷物ならもっと丁重に扱う。」

 

「フォローになってませんよぉ!!」

 

ヒフミが涙目になる

 

その横でアズサだけは妙に落ち着いていた

 

「・・・揺れなければ問題ない。」

 

「いや、問題あるから!」

 

コハルが即座に突っ込む

 

私も苦笑いしか出来ない

 

("・・・嫌な予感しかしない。")

 

グレゴリーはそんな周囲など気にも留めず、ゆっくりと体育館の出口へ向き直る

 

「行くぞ。」

 

「え、今から普通に走るんですよね?」

 

ヒフミが恐る恐る尋ねる

 

「無論そうだとも。」

 

「「「・・・・・・。」」」

 

全員が同じことを思った

 

("いや、その普通が信用出来ない。")

 

グレゴリーは静かに腰を落とす

 

右足を半歩引く

 

呼吸は一切乱れない

 

「では。」

 

その瞬間

 

【ドンッ】

 

床が弾け飛んだ

 

景色が、一瞬で流れる

 

「きゃあああああああああっ!!」

 

「はやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

体育館を飛び出した黒い司祭服は、

そのまま一直線に森を突き抜け、市街地へと駆け抜けた

 

景色が高速で後ろに過ぎ去っていく

 

だが、その走りは常識から完全に逸脱していた

 

「"・・・"」

 

上半身が全く揺れない

 

腕も、肩も、頭も

 

抱えられている私達すら、上下動をほとんど感じない

 

まるで床の上を静かに歩いているかのような安定感

 

しかし

 

その下では

 

【ダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!!】

 

両脚だけが異常な速度で地面を叩き続けていた

 

残像すら追いつかない

 

足だけが別の生き物のように高速で動き

 

舗装道路を紙のように蹴り抜きながら

 

街を一直線に駆け抜けていく

 

「ひゃああああああ!!」

 

「か、風ぇぇぇぇぇぇ!!」

 

問題は振動ではなかった

 

風である

 

猛烈な走行風が真正面から叩き付ける

 

ヒフミの髪は完全に後方へ流れ

コハルは涙目になり

 

制服は容赦なくバタバタとはためく

 

「め、目が開けられませぇぇぇん!!」

 

「く、口開けたら舌噛むぅぅぅぅ!!」

 

「・・・」

 

アズサだけは風に目を細めながら冷静に呟いた

 

「・・・確かに揺れない。」

 

「そこ感心するとこじゃないからぁぁぁぁ!!」

 

コハルが叫ぶ

 

先生も風圧に顔をしかめながら周囲を見る

 

("速い・・・。")

("信号を無視しているわけじゃない。")

 

("というより、交差点を飛び越えてる・・・")

 

高速移動の最中、交差点を走り幅跳びし、

それでもなお着地の衝撃すら殺している

 

「案ずることはない。予定通りだ。」

 

「何が予定通りなんですかぁぁぁぁぁ!!」

 

ヒフミの悲鳴だけが

朝のトリニティにいつまでも響き渡っていた

 

 

 

 

【トリニティ総合各園・第19分館】

 

現地に到着したグレゴリーは、

私達を地面に置くと、そのまま何処かに走り去っていった

 

("・・・本当に間に合った・・・")

("あ、セイアの居場所を聞くの忘れてた・・・")

 

「はぁっ、はぁっ、はぁはぁ・・・もう、無理・・・」

 

「う、うぅ・・・や、やっと到着しましたね・・・」

 

強風に煽られ二人は満身創痍だった

 

その時、校舎の前で待機していた正義実現委員会の生徒が一人近づいてきた

 

「お待ちしておりました、補習授業部の皆さん。」

「ハスミ副委員長からの伝言です。」

 

「頑張ってください・・・と」

 

「あらあら。」

 

「は、ハスミ先輩・・・!」

 

「それから・・・力に慣れなくてごめんなさい。この分はいつか必ず・・・とも。」

 

「・・・そうか」

 

「"よし、じゃあ入ろっか。"」

 

 

 

【第19分館・第32教室】

 

私は一人一人の机の上に、試験用紙を裏向けて置いていく

全員に配り終えた所で教卓の前に立った

 

補習授業部の誰も欠ける事なく全員が席に座っていた

 

「"これが、最後の試験だね。"」

 

「・・・うん。どんな結果であれ、この試験で全てが決まる。」

 

「そうですね。」

 

「あうぅ・・・」

 

「・・・っ」

 

「・・・ここまで色々ありましたね。」

 

「・・・気持ちは分かる、けど感傷に浸るのは試験が終わってからにしよう。」

 

「はい、そうですね・・・」

「とにかく、私達の努力の成果をしっかり発揮しましょう。」

 

「うん、最後まで諦めない。」

 

「はい、私もです。」

「せっかくアズサちゃんに、教えてもらいましたから。」

 

「わ、私今度こそ満点取るから!取っちゃうからね!」

 

「"うん、皆やる気十分だね。"」

「"では!第三次特別学力試験・・・開始!!!"」

 

("今まで、色々あったよね。")

("最初は皆勉強が分からなくて、60点に届かなかった。")

 

("届いたと思ったら、ボーダーを引き上げられた上で第二次特別学力試験で爆破され、")

("そして、この一週間ほとんど寝ずに追い上げた。")

 

 

("この光景を、何度夢見ただろう。")

 

("誰一人欠けることなく。ただ静かに机へ向かう。")

 

("それだけの未来が。私には遠かった。")

("でも、やっと・・・皆に試験を受けて貰えたよ・・・")

 

過去、皆ボロボロになり、アズサが居なくなった時もあった

全員揃ってはいたが、ミカのクーデターにより、

試験そのものが中止になり受ける事が出来ない時もあった

 

でも今度は私の目の前で、補習授業部の皆が机に向かい、ペンを走らせていく

ただ、真剣に黙々と試験を受けている

 

("・・・良かった。")

 

 

 

 

 

第三次特別学力試験、結果

 

ハナコ 100点 (合格)

 

アズサ 97点 (合格)

 

コハル 91点 (合格)

 

ヒフミ 94点 (合格)

 

 

補習授業部、全員合格

 

 

 

 

*1
以前ブラックマーケットでアンラに抱えられて空を飛んだ事がある




前もってここに書きます。
今回の今日のセイアはメインストーリーにがっつり関係があるので、
出来れば読んでください。
という事で一番最初に書いておきます。

~今日のセイア~

そこは、前に見た
美しいトリニティのテラスではなかった

私も見た事がある・・・いや馴染のある店(柴関)だった
その店のカウンター席に一人の狐耳の少女が腰かけて此方を見ていた

("なんで柴関・・・?")

「・・・補習授業部の皆はしっかりと、自分たちの力で合格を勝ち取ったのだね。」

「コハルはこの後、晴れて正義実現委員会に戻れるはずだ。」

「ハナコは、自らをさらけ出せるような良き相手を、良き友を見つけられたようだね。」
「恐らく今は、少なくとも学校を辞めようとは思っていないだろう。」

「アズサはきっとこれからも、学びを続けられる。」

「そしてある意味では誰よりも最前線で、真摯に努力を積み上げてきたヒフミは、」
「今までの日常に戻れるだろうね。」

「・・・ミカは学園の監獄に幽閉された。」
「もしかしたらもう二度と会えないかもしれない。」

「ナギサは・・・予定通り、エデン条約を調印しに行くだろう。」

「・・・うん、ここまでは良くできたお話だ。」
「でもまだ、エンドロールには早すぎる。」

「何せ先生、君が見守るべき結末は、まだその全貌を現してはいない。」
「このお話が例えどんな風に転がっていこうと・・・」

「全ては、破局へと収束していく。」

「・・・暗雲。」
「誰の手にもおえないような、二度と太陽を拝めるとは思えなくなるような・・・」
「そんな暗雲が、今ゆっくりと押し寄せてきている。」

「まだ残っているものがある、これで終幕じゃない・・・」
「その事は君がきっと、誰よりも良く分かっているだろう?」

そう言った瞬間、セイアの目の前にラーメンが出現した

「おや、出来たか。それでは先生、頑張ってくれたまえよ。」

「"え?、待って!?何!?ここ何!?"」

私の問は声になる前に消え、夢が薄れていき
ラーメンを美味しそうに啜っているセイアも見えなくなっていった




ということで、第2章本編の最後のセイアの夢への干渉のお話でした!

ふいー!
三万文字・・・になったから二分割したぜ・・・!

今回で、初めて先生は、皆で第三次試験に受けさせる事に成功しました。
色々な事をこのエデン条約編一章二章を通して学び成長したでしょう。

ですが先生まだあんたには頑張ってもらうで!
という事で、第三章も先生一人で走ってもらうからな!!


あと、今回の後書きはこの三万文字越えの設定解説を含んでるので、
クッソ長いです。
なので普段しないのですが、
タイトルみたいに分類わけしたものを頭に目立つようにくっつけておきます。


グレゴリーの正体、伏線そしてミカとの関係

さて、それでは作中の解説いきまっせ!
まずまぁ、あそこまで書けば9割以上の方が判ると思いますが、
グレゴリーの正体はアンラです。

作者ウソイワナイヨー

ちゃんとグレゴリーの依頼者が
ティーパーティー(百合園セイア)ですし、トリニティの司祭でもあります。

あともう一つ、伏線と言えば、
今日のセイアで、グレゴリーが出現している時はアンラが登場していません。
逆にグレゴリーが居なくなった時にアンラが登場してきます。
まぁ後は、トリニティ出禁のはずのアンラが、
トリニティ限定の超人気スイーツのミラクル5000をお土産で買って来た事とかもそうですね。

あと、アンラの素顔を知っている先生がグレゴリーを見ても気づけないのは、
そもそもグレゴリーの顔とアンラの顔が全く違うからですね。
これはアンラの体質が絡んでいるのですが・・・かなりのネタバレになるので今は秘密で。


アンラがセイアを保護した際、その依頼を受け、
今後未来で補習授業部の合宿所として提供する
ティーパーティーの保養施設である別荘の管理人としてねじ込みました。

ちなみにセイアとアンラは作中でも言っていますがかなり昔からの知り合いで、
もう知り合って一年少しになります。
その時から、この展開を計画はしていた為、下準備も完璧でした。
アンラがトリニティで司祭の資格を取得したのもその計画の前準備として取得しています。

ちなみにこの当時、
セイアが急に体調が改善し、セイアの友人であった、ナギサとミカからも、疑問に思われており、
その時セイアが誰かと良く密会しているという情報を聞きつけ、ミカが尾行した事がありました。

その際、セイアがローブ姿でフードを深く被り顔も隠したの男性と密会しているのを発見します。
それで、ミカがその明らかな不審者からセイアを保護する為に襲い掛かり、
今の様に神秘を扱えたわけではなかったので、
ミカの攻撃はいとも簡単にいなされ、かわされ続けました

その際、アンラが奇襲され、その人物がミカだと認識した際、
思わず口から零れてしまったのです。
「あ?何でこないな所にトリニティピンクゴリラがおんねん。」と

さっきまではセイアの保護の為に制圧する様に戦っていたミカが、
そのセリフを聞いた瞬間怒髪天を衝きました
ですが、それでも一切の攻撃が掠りもしません。
それで見かねたセイアがこのローブの人物が自分を健康にした恩人であると教えられ、
一旦その場は鉾を収めたミカでした。尚アンラの耳元で次会ったらぶん殴ると呟いていました。

後日、セイアにその密会の事をバラされたくなかったらと、
セイアからアンラに教えられた、神秘の操作技法を聞き出し、
次会った時は自身の事をゴリラといった
あのローブ男の顔面に一撃を入れてやるという意思で努力しました。

その結果が、先生達が詰んでしまう程の暴の化身となった今のミカ様でした。

まぁ・・・うん、
素のポテンシャルでキヴォトスでも最強格の人物が
アンラに一撃入れようって努力したら

こうもなりますよね・・・

まぁ今回先生達が経験したのが、予言者視点のミカ様ですね・・・
ちなみにこっから更に他の生徒からのバフが乗って威力がさらに上がりますコッワ。




作中で出てきた中国拳法と神秘の設定ついての解説


さて、
ここでグレゴリー(アンラ)が使った技紹介。
今回は全部実際に存在する技ばかりですね。
まぁ誇張表現20000%くらいぶち込んでますけど。

竜爪:中国語でロンザオ
技の元は象形拳の中の龍拳と呼ばれる武術の技です。
これの特徴は野球のボールの握りの様な手の構えから、相手の腕を取り、間接を決めたり今回の様に投げたりするのがメインの技です。

震脚:中国語でヂェンジィアオ
八極拳での大地を強く踏みしめる色んな技の基礎となっている技術です。
この震脚で生まれたエネルギーをそのまま相手にぶつけて攻撃するといった感じですね。
今回は震脚によるエネルギーそのものを攻撃に使用しています。

活歩:中国語でフオブー
これも震脚と同じ移動方法の一つではありますが、震脚よりもより上位というより難易度の高い技となっています。
重心移動による移動で、相手に技の入りを感知させずらくすると言う効果があり、また重心を移動しながら動くので、そのまま寸勁等重心移動が必須の攻撃につなげる事が出来ます。

裡門頂肘:中国語でリームンディンジョウ
こちらは頂肘いわく肘てつです。
頂肘は大きく分けて二種あり、外門と裡門があります。
外門は死角からの一撃、それこそ背後からの一撃の肘を指す言葉です。
逆に今回使用した裡門頂肘は相手の真正面から、相手の防御をすり抜け、肘を入れるそういう技法です。
この際に技の入りを把握させずらくする為に活歩での移動で相手の間合い内に滑り込んで使用する事が多いです。

纏絲勁:中国語でチャンスージ
この纏絲勁は太極拳等で有名ですが、これも八極拳に存在し、
その方法が太極拳とはだいぶ違います。
太極拳は円運動により、発勁として使用しますが、八極拳では、突き出した拳や腕の捻りから力を生み出す使い方をします。
今回はそれを化勁として瓦礫を外に流す際に使用しました。

猛虎硬爬山:中国語でムォンフーインパーシャン
これは八極拳の中でもいちにを争うレベルの破壊力と言えばと言ったら出てくる奥義とも言える技です。
その方法は凄く簡単に言うと、超速の体当たりです。
ですが、この技1つに、八極拳の様々な技が練り込まれています。
まず、移動に活歩、そして相手のガードを粉砕する貼山靠そこから慣性接続し、寸勁を相手に入れます。それら全てを一つの技として繰り出すのが、猛虎硬爬山です。

ちなみに以前、アンラの弟子が使ったと言った、
天干一ツの技の根幹がコレにあたります。
まぁ今回もグレゴリーが放ったのは天干隻ツなんですが。
基本理論はほぼ一緒なんですよね。
天干一ツは更にここから魔術的な物すらも練り込んで叩きつけてるだけなので、
派生技と言えば派生技です。

そして、今回の体育館の柱君が、ネルに撃ったような殺さない様に
真綿で包んだような一撃ではなく、殺す為、壊す為の全力での天干隻ツを放った結果。
柱君は、その破片1つすらも残すことなく粉になりました。
実際この現象は、人でも起こります。
人の場合中から弾けて血煙に変わる感じですね。

先生が生徒に撃つ事を禁止したのも納得です。

ちなみにアンラがミカの神秘による急所攻撃に触れても大丈夫だったのは、
その力(神秘)そのものを自身に影響を及ぼす前に外に逃がしているからですね。
気の掌握の一種と言えば一種ですか。

ちなみに猛虎硬爬山みたいに逃がしていないのに、ダメージが無かったのは、
単純にミカが込めた力よりも、アンラが叩出した出力の方が大きい為ですね、
基本こういった神秘や魔術、呪いと言った対象に影響を及ぼす物は引き算なんで。

ここで、おや?って思った方、勘が鋭いです。
アンラが猛虎硬爬山でミカの神秘が籠った柱を粉砕した時。
アンラの攻撃はミカの様に光ってはいませんでした。

そう、神秘の操作には光る。その先があります。





追伸
3万文字越えの小説を書いて、前編後編で別けたせいで、
この後編がアンラ無双になっちゃいました。

本来はこれは二つで一つなので、前編で先生が死力を尽くし、戦術指揮で皆を導くも、
破壊の権化に戦術事潰されて詰むが、アンラが暴れ倒して帳消しにする。

こういう一本のラインが二つにわかれちゃって、
このお話がアンラ無双になってしまった・・・
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