おっさんキヴォトスに行く 作:無い頭のおっさん
「と、とにかく・・・」
「これで二番目までは終えられましたね・・・」
ヒフミが小さく息を吐く
手に持っているリストには、いくつかの項目に丸印がついていた
「"泳ぎ方を教えている写真って・・・"」
「"私がスケバンの子達を海から引っ張って行ってる写真で、本当に良かったのかな・・・"」
撮った写真を確認しながら、ヒフミが少しだけ困ったような顔をする
そこには確かに、楽しそうな写真があった
ただし一般的な海の思い出写真とは、少しだけ違う
私に両手を掴まれ海から引き上げられるスケバンが写っていた
・・・まぁうん
これはこれで、キヴォトスらしい思い出なのかもしれない
「ペースは悪くない。次のミッションを始めよう。」
アズサが真剣な表情で言う
「出来るだけ早く終わらせて、最初の目的通り普通に海を楽しむとしよう。」
「そ、そうですね・・・」
("うーん・・・既に結構楽しんでる気がするけど・・・")
少なくとも、退屈はしていない
色々な意味で
「それでヒフミ、次のミッションは?」
「えっと、良い時間ですし・・・海の家にしましょうか。」
ヒフミはリストを確認しながら答える
「普通に食事をしている所を撮れば、きっと大丈夫だと思います。」
そう言いながら、皆を先導して歩き始める
「海と言えば、やっぱり食事も楽しみの一つですよね」
「実は事前に調べておいたのですが・・・」
「この無為ヶ浜には有名なお店があるそうで」
「"流石ヒフミ。準備が良いね"」
「えへへ・・・こういう時の為に調べておきましたから!」
少しだけ嬉しそうに笑うヒフミ
こういう所は、いつものヒフミらしい
「あ、ここですね。」
ヒフミが足を止める
目の前には、海の家があった
【無為ヶ浜・海の家】
「えっと、失礼します・・・!」
「ん?・・・あれ、先生!?」
そこにいたのは
椅子に座りながら、スイカを豪快に齧っている少女だった。
「"イズミ?こんな所で会うなんて。"」
「"イズミもご飯食べに来たの?"」
「ちょっと事情があって、今はここで働いてるの!」
イズミは笑顔で答える
「店主さんがちょっと寝込んじゃって。それで今日一日、代わりにね!」
「まさかこんな所で先生に会うなんて、びっくりした―!」
「どっかで会ったような・・・先生のお知り合いの方ですか?」
ヒフミがイズミを見る
「・・・どこかで見たような・・・ゲヘナ?いや、まさか・・・」
マシロも首を傾げる
「・・・?」
("マズイ、海の家が海の家跡地になる・・・")
「"あ!この子はね!!私の知り合いで!!!"」
私は慌てて間に入る
「"ゲヘナ生なんだけどいい子なんだよ!!!!"」
「"食べる事が好きなだけの子!!!!!"」
「・・・」
一瞬の静寂
「なるほど。」
マシロが頷く
「先生のお知り合いでしたか。」
「一瞬変に気を張ってしまって、失礼しました。」
「良く分かんないけど気にしないで!」
イズミは笑う
「さあ、せっかく来てくれたんだし、」
「私の新作を味わって行ってよ!」
「"イズミの新作!!??"」
思わず声が裏返りそうになる
「"まさか、店主さんが寝込んでる原因って・・・!"」
「そっちのみんなも座って座って!」
("逃げたい・・・!!")
しかし既に全員、席へ向かっていた
「ここのメニューは何でも美味しいから、期待してていいよ!」
「ちょっとだけなら割引もしてあげる!」
イズミに促され、皆が席へ座っていく
「なるほど、じゃあありがたく。」
マシロが素直に座る
「それではお言葉に甘えて・・・」
「先輩もこちらへどうぞ。」
("マズイマズイマズイ!!")
("いや、不味い!!")
「"えっと、みんな、あ、その・・・"」
「ありがとうございます!えっと、どれにしましょう・・・!」
「"ちょっと話を聞いて欲しいんだけど・・・"」
「先生、どうかしましたか?」
「あ、メニューの名前が凄く斬新ですね。」
("名前が斬新!?")
("もしかして全部新作!?")
「牡蠣氷、チョコミント焼きそば、練乳冷やし中華、なまこジュースのチョコレートがけ・・・」
("確定。")
("全部新作!!!")
「ユニークですね、良いセンスです。」
「"いや、ユニークっていうか、"」
「"多分・・・それ全部文字通りの・・・"」
ヒフミが首を傾げる
「・・・?どういう事ですか?」
そして
「みんなそろそろ選んだー?」
「ご注文をどうぞー!」
「では私はこの牡蠣氷と言うのを」
「先輩は何にしますか?」
「・・・チョコミント焼きそば。」
「では、私はなまこジュースのチョコレートがけで!」
「練乳冷やし中華。」
「オーダー承りましたー!」
「牡蠣氷、チョコミント焼きそば、なまこジュースのチョコレートがけ」
「練乳冷やし中華を一つずつね!」
「牡蠣シロップまだあったかな・・・まぁ多分大丈夫!」
「"ちょ、ちょっと待って!"」
思わず止める
しかし
「あ、先生は何を食べるの?」
イズミが笑顔で聞いてくる
「私に作れそうなものなら、何でも作ってあげるよ?」
「どうする?何が良い?」
「"わ、私は・・・っ!!"」
その瞬間――
ダァアン!
ダダダダダダダッ!!ダダダッ!!
海の家へ、銃弾が撃ち込まれた
「ふええぇぇ・・・!?」
「お、お店が襲撃されてる!?何で、どうして!?」
「どうして・・・だと・・・!?」
「本気で言っているのか、このバイオテロリストめ!!!」
「"この声は・・・"」
さっき海の藻屑になりかけていたスケバン達だった
「許さない・・・許さないぞ!!」
「お前たちのせいで、あたしらのヘッドは今もトイレの住人だ!」
「ま、またスケバンの方々が・・・!?」
「自身満々に出して来たと思って油断した・・・くそっ、お前の料理のせいで・・・!!」
「こんなお店、ぶっ壊しちまった方がキヴォトスの為だ!いくぞ!!」
「え、えっと、状況がよくつかめないのですが・・・?」
「問答無用!!おら、やっちまえ!!!」
ダダダダダダダッ!!ダラララッ!!
ドカアァァァン!!!
「あああっ!!私の・・・じゃないけど、お店が!!」
「待って待って!ここ私のお店じゃないから余計にダメだって!うわああん!!」
「・・・良く分からないけど、応戦した方が良い?」
「食べ物を粗末にするなどと言う、とんでもない悪の行い・・・見過ごすわけにはいきません!」
「さあ、正義の鉄槌を!」
「え、ちょっ、これ何度目ですか!?」
「"あはは・・・もうスケバンの子達と顔なじみになってきたね。"」
~戦闘省略~
「ぐああぁっ!?な、なぜおまえたちまでここに・・・!?」
「くそっ、この海の家とグルだったのか・・・!?」
何度目かになるスケバンとの戦闘
気が付けば、全員が慣れた手つきでぶん殴っていた
「せっかく作って貰った料理に敬意を払わないなど、言語道断!」
「反省してください!」
「あ、あの料理に敬意だと・・・!?」
「あんたら正気か!?」
「ぐっ、覚えとけよ!次こそ、次こそは・・・!」
捨て台詞を残し、スケバン達は逃げ去っていった
「よ、良かったー・・・」
スケバン達の姿が完全に見えなくなったのを確認して、イズミが大きく息を吐いた
「皆本当にありがとう!おかげで助かったよ!」
「危うく、大変なことになる所だった・・・!」
「"いや、もう十分大変なことにはなってる気がするけど・・・"」
思わず小さく呟く
銃撃で穴の空いた壁
吹き飛んだ椅子
散らばった食器
ただ、イズミ本人は気にしているのかいないのか、料理の心配ばかりしている
「いえ、これくらいは正義実現委員会として当然の事。」
マシロが静かに答える
「お店が無事でよかったです。」
「うん、それでもありがとね!」
イズミは笑顔で頷く
「お礼にっていうのもなんだけど・・・」
「とりあえずこれ、みんなに!」
そう言って、イズミはマシロに何かを手渡した
「あ、これはタダだから!感謝の気持ち!さあ、グイっと飲んじゃって!」
「見返りを求めていたわけではないのですが、ありがたく頂戴しますね。」
「ところで、このジュース・・・かなり珍しい色をしていますね。」
マシロは受け取った灰色の液体が入った容器をまじまじと見ていた
「良いから良いから、遠慮しないで!」
イズミはそう言いながら、次々と灰色の液体を配っていく
「さっ、あなたも、そっちのあなたも!」
「あ、ありがとうございます。」
「・・・」
私も受け取った容器を見る
見た目だけなら、なんというか・・・
「"うん。"」
("見た目だけなら、普通の飲み物に見えなくもない・・・かな?")
ただ、色が問題だった
どう考えても普通ではない
「では、お店の無事を祝して!」
イズミが容器を掲げる
「カンパ~イ!!」
「「「「乾杯!!」」」
皆が一斉に声を合わせる
("・・・短い人生だった・・・")
私は覚悟を決める
これはきっと、先生としての責任だ
生徒達が飲むなら、私だけ逃げるわけにはいかない
「"・・・"」
灰色の液体を口元へ運ぶ
そして――
一口
「・・・」
ごくん
静かな嚥下音が響く
その瞬間
ぶほぉっっっっっっっ!!!?!?!?!?
「「「「!?」」」」
全員が一斉に液体を吐き出した
私の視界がぐらりと揺れる
「"こ、これは・・・"」
舌に広がる未知の味
甘い、苦い、生臭い
そして何かが決定的に間違っている
「"・・・"」
("だめだ、これは・・・")
意識が遠のく
「せ、先生!?」
誰かの声が聞こえた気がした
そして、そのまま私は意識を手放した
後から聞いた話だが私達が飲んだもの
それはなまこジュースのチョコレートがけだったらしい
「・・・」
「"イズミ、どうしてこれを作ろうと思ったの?"」
目を覚ました後、私は本人に聞いた
「え?」
「だって、チョコレートとなまこって相性良さそうじゃない?」
「"・・・"」
("その発想に至った理由を聞きたかったんだけど・・・")
「・・・先生。」
アズサが真剣な顔で言う
「これは、敵の攻撃より危険。」
「"うん・・・否定できないかな・・・"」
そんなやり取りをしながら、全員が水を飲んで口の中をリセットする。
そして
「き、気を取り直して」
ヒフミがパン、と手を叩いた
「次はスイカ割りです!」
「実はスイカをうっかり忘れてしまったんですが・・・」
「海の家の店主さんが、すごく安いお値段でたくさん売ってくださいました!」
「・・・普通のスイカ?」
アズサが確認する
「何かの暗号じゃなく?」
("さっきの飲み物のせいで、完全に警戒されてる・・・")
「えっと、普通のスイカ割りです・・・」
ヒフミが苦笑する
「そうか、それならそれで問題ない。」
アズサは頷いた
「何せ、スイカ割りなら私もよく知ってる。」
「海での遊びにおける定番ですね。」
マシロも続く
「ところで、棒はどちらに?」
("ん・・・?なにか嫌な予感がして来た。")
「・・・?」
「スイカ割りと言えば、バットや木刀のような物が必要だと思うのですが。」
「あ、そういえば、それも一緒に忘れて来てしまいました・・・」
その瞬間
アズサがゆっくりと笑った
「・・・」
嫌な予感が、確信に変わる
そしてアズサは自身の銃を構えた
「"アズサちゃん?"」
「問題ない。」
「スイカを割ればいい。」
パアァァン!!!
乾いた銃声
5.56mmNATO弾が一直線にスイカへ向かい――
スイカは真ん中から綺麗に弾け飛んだ
「スイカが粉々にっ!?」
ヒフミが叫ぶ
「何を驚いてるの?」
アズサは不思議そうに首を傾げる
「きちんとスイカは割った、それもど真ん中。」
「"スイカ・・・割り?"」
私も思わず呟く
「違います!」
ヒフミが慌てて叫ぶ
「違わないんですが違うんですアズサちゃん!」
「撃たないでください!」
「それにスイカ割りは目隠しをしてするものですよ。」
「今までアズサちゃんは、いつも目隠しをしたままスイカを打ち抜いてたんですか?」
「なるほど」
アズサは納得したように頷く
「そういうローカルルールか。それならそれで行こう。」
「"待って、ヒフミ。"」
私は小声で言う
「"多分、もう何を言っても修正できないと思う。"」
「そ、そんな・・・」
そして
アズサは目を閉じ、再び銃を構えた
パアァァン!!!
目を閉じているとは思えない精度で
またスイカの中心を撃ち抜いた
「す、スイカが・・・!」
ヒフミが呆然とする
「また粉々に飛び散って・・・」
「"・・・"」
私は空を見上げる
("もうこれでも良い気がしてきた・・・・")
「流石、やりますねアズサさん。」
マシロが静かに頷く
「ですが、私もスナイパーの端くれ。」
「"・・・え?"」
嫌な予感がした
アズサと同じく、マシロが目を閉じる
そして
ゆっくりと構えたもの
「"・・・"」
("いや、待って。")
("それ、さっきの銃より明らかに大きいよね・・・?")
そう、対物ライフルだった
「マシロさん、それって・・・」
ヒフミが恐る恐る確認する
「はい。」
「アンチマテリアルライフルです。」
「ですよね・・・!?」
ドッパアァァン!!!
凄まじい轟音
一瞬、海辺の空気が震えた
そして
遠くに置かれていたスイカは――
着弾と同時に、跡形もなく消し飛んだ
「・・・なるほど。」
アズサが感心したように呟く
「アンチマテリアルライフルなのに、かなり精密な照準だ。」
「"目をつぶっていて照準も何もあるのかな・・・"」
思わず口から漏れる
「この距離だと競い合ってもらちが明かないな、何か制約を・・・」
アズサが言う
「良いでしょう。どんな挑戦でも受けて立ちますよ、アズサさん。」
マシロが答える
「お互いに対抗心が燃え上がってます・・・!?」
ヒフミが慌てる
「大丈夫でしょうか?本当にこのままで大丈夫なんでしょうか、先生?!」
「"うーん・・・"」
私は二人を見る
真剣な表情
けれど
「"まあ・・・本人達は楽しそうだし・・・"」
「え、えぇぇ・・・」
ヒフミが困った顔をする
「その判断で良いんでしょうか・・・?」
("多分・・・良くはない気がする。")
("でも、止めても多分止まらないかな・・・")
その後
何故かスイカはどんどん遠くへ運ばれていった
最終的には
「500mくらいありますけど、本当に大丈夫ですか?」
ヒフミが不安そうに聞く
「もう私の目だと、ただの点にしか見えませんが・・・」
「"多分大丈夫じゃないかなぁ・・・"」
「"夜間で1km弱離れていてもハンドガンで狙撃した人もいるし・・・"」*1
「全く問題ない。これくらいの距離、数え切れないほど成功させてきた。」
「"ほらね。"」
「えぇ・・・?」
ヒフミが固まる
「狙撃手ですから、これくらいのハンデはなんて事ありません。」
「狙撃手が目隠しって、普通はハンデ所の問題じゃない気がするのですが・・・」
「正義を追い求めるスナイパーとして、常に挑戦し続ける気持ちを忘れるわけにはいきません。」
「あうぅ・・・もう何を言っているのか私には全然・・・」
「え、えっと、ではとにかく始めましょうか・・・?」
「・・・?あ、あれ?」
その時
ヒフミが首を傾げた
「"ん?ヒフミどうしたの?"」
「えっと・・・」
ヒフミが遠くを見る
「見間違いでなければ、」
「あそこに置いたはずのスイカが無くなっているような・・・?」
「元々ほとんど見えていなかったので、多分ですが・・・」
「もしかしてもう打ち抜いて・・・は、いないですよね。」
「音もしてませんでしたし・・・」
「えっと、マシロさん、アズサちゃん、見えますか?」
「あれ、誰かがこっちに・・・?」
「え、もしかして海の家の・・・!?」
遠くから走ってくる影
それは――
「一体ぜんたい何をしてるのさ!?」
怒り心頭といったイズミだった
「食べ物で遊んじゃダメでしょー!?食材は大切に扱って!!」
「正論・・・!」
ヒフミが言葉に詰まる
「い、いえ、貴女がそれを言いますか?!」
「"・・・"」
私は思わず苦笑する
("確かに、そこは突っ込みたいところだね・・・")
「・・・価値観の違い、か。」
「立ちふさがるなら、容赦はしない。」
そういってアズサが銃を構える
「ど、どうしてまたこんな展開に・・・」
そしてヒフミ、アズサ、マシロによる激しい戦闘が始まった
スイカを守るイズミとの戦いである
「"えっと・・・"」
私は少し遠くから眺める
「"これ、何の勝負なんだろう・・・"」
結果
アズサがいつの間にか砂浜へ仕掛けていた地雷
マシロの狙撃
ヒフミの援護
それらによって
イズミはついに倒れた
「うぅ、悔しい・・・」
「た、例え私が負けたとしても・・・」
「食べ物で遊ぶことは許されない・・・」
「覚えておいて・・・いつか岐路に立った時、貴女達は・・・」
そう言い残し
気絶した
「・・・」
「・・・」
静寂
「はぁ・・・はぁ・・・」
ヒフミが息を整える
「な、なんで私達・・・」
「こんなに全力で戦っているのでしょうか・・・」
マシロも複雑そうな顔をする
「間違いなく勝ったはずなのに、勝った感じがしませんね・・・」
「この方の食べ物に対する気持ちだけは、私達よりもずっと強かったと思います。」
「いえ、そういうお話ではなく・・・」
("うん・・・そこじゃないんだよね・・・")
私は苦笑するしかなかった
その後
スイカの匂いに釣られて起きてきたイズミと一緒に海の家へ戻り
粉々になったスイカも、可能な限り回収した
「捨てるのは勿体ないからね!」
というイズミの言葉で
最終的にはジュースなどに加工され、美味しくいただくことになった
("・・・うん。")
("これができるなら、最初からもう少し料理の方向性を・・・")
そんなことを思ったのは、きっと私だけではないと思う
「"ふぅ・・・いろいろあったけど、"」
私は撮った写真を確認しながら呟く
「"リストに残ってるのはあと二つだね、"」
そういうと、ヒフミがテンションを上げて大声を上げた
「では、ビーチバレーを始めましょう!!」
「今回はボールもちゃんとここにあります!」
「正確には先生が買ってくれたボールが、ですね。」
「うぅ・・・」
ヒフミが申し訳なさそうに俯く
「忘れ物ばっかりでごめんなさい・・・先生も、ありがとうございます。」
「"ボールくらい大丈夫だよー"」
ヒフミが周囲を見る
「少し人も減ってきて、スケバンの方々も見当たりませんし・・・」
「今度こそ何も起きなさそうですね。」
マシロが補足する
「"ヒフミ、大丈夫?"」
「だ、大丈夫です・・・!」
「ただその、これで良いのかなって思ってしまって・・・」
「本当なら、こんなはずでは無かったのですが・・・」
「最初はただ、アズサちゃんに海を見せてあげたくて・・・」
「出来れば皆で楽しい時間を過ごしたいなって・・・」
「"ハナコはシスターフッドでお手伝いで、コハルは風邪だっけ・・・"」
「はい・・・」
ヒフミは頷く
「私は楽しいけど?」
アズサが淡々と言う
「いえ、えっと、それは嬉しいのですが。」
ヒフミは少し困ったように笑う
「何と言いますか、夏休みと言うのは・・・」
「恐る恐る何かをするようなものでもなく、」
「何度もスケバンの方々から襲撃される物でもないはずで・・・」
「それにああやって、何かをする度に【見つけたぞ!】って邪魔が入ってくると――」
("あ。")
私は思う
("これ、綺麗にフラグを建築してるなぁ・・・")
そして次の瞬間
「見つけたぞ!!ここに居たのか!」
「手間をかけさせやがって、こんな所に隠れてたのか!!」
「「「「"・・・・・・"」」」」
沈黙
ヒフミがゆっくりと目を閉じる
「・・・」
「やっぱり来ましたね・・・」
「応戦します!」
マシロが即応する
「うぅ・・・」
ヒフミが諦めたように頷く
「はい・・・」
「せっかくビーチバレーをしようと思ったのですが・・・」
「仕方ありませんね・・・」
「"まあ、これはこれでキヴォトスらしいと言えばらしいけど・・・"」
私がそう呟いた瞬間
「きひっ」
「・・・え?」
小さな笑い声
振り返る
そこには
「きひひひひひひひひっ!!」
「きゃはははははははっ!!」
ツルギがいた
次の瞬間
ツルギは砂浜を駆け出した
「え?」
「ツ、ツルギさん!?」
「待ってください!?」
スケバン達が反応するより早く
「え?」
ツルギの手が、一人のスケバンの頭を掴む
「え、ちょ――」
「それっ!!」
ぶんっ!!
「ぎゃああああ!?」
スケバンが空高く舞い上がる
「た、高い!?」
「え、えぇ・・・」
そしてツルギはその場で大きく跳躍し
「きひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
奇声と共にスケバンの頭部を叩きつけた
ズドォォォン!!
砂浜に大きな砂煙が上がる
静寂
「・・・・・・」
私はゆっくりとカメラを構える
カシャ
カシャ
「"・・・一応、撮っておこう。"」
もう一枚
カシャ
砂浜には、綺麗なフォームで突き刺さったスケバン
その横には、満足そうに立つツルギ
「"・・・うーん。"」
「"一応これも・・・ビーチバレーなのかな?"」
「先生!?」
ヒフミが慌てて振り返る
「違います!!」
「絶対に違います!!」
私も苦笑する
「"だよねぇ・・・"」
「ですが・・・」
マシロが写真を見る
「構図だけを見るなら・・・」
「確かに、砂浜で球技をしているようにも・・・」
「なりませんよ!?」
ヒフミが全力でツッコむ
「"ただ・・・"」
私は写真を見る
「"これはハスミに見せる時、少し説明が必要かなって。"」
「・・・」
ツルギがこちらに帰って来て私が撮った写真を見る
「・・・きひっ」
「楽しかったです・・・」
小さく呟いた
「"うん・・・"」
「"それなら良かった。"」
その後、スケバン達は砂浜に突き刺さった仲間を回収して怯えながら逃げいった
流石に人間をボールにした写真だけではどうかと思うので、
普通にビーチボールをし、写真に収める事にも成功した
ビーチボール(?)の写真を撮り終え、
気が付けば辺りは少し暗くなり、時刻も夕方に差しかかっていた
最後に残った花火をする為に、ヒフミとアズサが買い出しに向かっている
二人が戻ってくるまでの間
私はマシロとツルギと一緒に、静かになり始めた浜辺で夕日を眺めていた
「もうこんな時間・・・」
マシロが海を眺めながら呟く
「それに、ヒフミさんとアズサさん、遅いですね・・・」
マシロがスマホを確認しながら呟く
「"花火を買いに、遠くまで行っちゃったのかな?"」
「もしかしたら、そうかもしれません。」
マシロはそう答えて、少しだけ海を見る
「・・・きひっ!きひひっ!!げへへへ!!!」
隣から聞こえる笑い声
振り返ると、ツルギが一人で小さく笑っていた
「・・・先輩も楽しみですか?」
「買いに行ってもらったのは申し訳ないのですが・・・」
マシロは少し微笑みながら続ける
「こうして少しゆっくり休めましたので、お二人には感謝しないとですね。」
「全部終わったら、帰ってハスミ先輩に報告して、写真をお見せして・・・」
「問題なく終わりそうですね、先生のおかげです。」
「"マシロは楽しかった?"」
私が聞くと、マシロは少し驚いたように目を瞬かせた
「え、えっと、本来私はおまけと言いますか、」
「ハスミ先輩に言われてついてきただけで・・・」
少し間を置いて
「ですが雰囲気にのまれて、私もだいぶ楽しんでしまいました。」
「いついかなる時も正義の心を、と思っていたのですが・・・」
「大分夢中になってしまいましたね。」
そう言って、少し困ったように笑う
「そこは反省しないとですね・・・」
「ですが、はい。楽しかったです、ありがとうございます。」
「"そっか。"」
「"それなら良かった。"」
私がそう言うと、マシロは小さく頷いた
「それにしてもヒフミさん達、少し遅いですね・・・」
「ちょっとお迎えに行って来ます。」
「"うん、わかったお願ねー"」
マシロが歩いていく
その背中を見送ったあと
気が付けば、ビーチに残っているのは私とツルギだけになっていた
「"ツルギは楽しかった?"」
「・・・!!」
ツルギの体が大きく跳ねる
「わ、私ですか!?え、えっと、私は・・・!」
言葉を探すように視線を泳がせる
「じ、実は、良く分からないんです・・・これで正しいのか・・・」
ツルギは夕日に照らされた海を見る
「お、思っていたのとは違う気もしますし・・・」
「正しいような気もしますし・・・」
「でも・・・」
少しだけ、表情が柔らかくなる
「本で見た海とは、全然違いました。」
「でも・・・皆が一緒に遊んでくれて・・・」
「その・・・す、すごく・・・」
そこで言葉が止まる
「"ツルギが楽しいって感じたのなら、それが正しい事だと思うよ。"」
私がそう言うと
ツルギは少し驚いた顔をした
「・・・楽しい。」
「それが・・・正しい・・・」
小さく呟く
「な、なるほど・・・」
「まだ、はっきりとは良く分かりませんが・・・」
「でも・・・こういう時間も・・・」
「悪くない、のかもしれません・・・」
そこまで言った瞬間
「ただいま戻りましたー!」
ヒフミの声が響いた
「・・・っ!?」
ツルギがびくりと振り返る
「すみません、お待たせしました!」
「ようやくお店が見つかりまして、とりあえず買える分だけ買って来ました・・・!」
アズサが袋を持ちながら説明する
「範囲や火力は微々たるものだけど、文字通りの爆発物だ。」
「私としては、火力が弱い割りに値段が高くてどうかとも思うのだけど・・・」
「アズサちゃん、花火に火力は要らないんですよ・・・」
ヒフミが困ったように返す
「念の為、花火以外にも幾つか使えそうな爆弾を手に入れてきた。」
「万が一の時はこれを使おう。」
「その万が一は、出来れば起きて欲しくないのですが・・・」
「・・・えっと?」
ヒフミがツルギを見る
「ツルギさんどうかしましたか?」
「あ、もしかしてお話の途中に割り込んでしまいましたか・・・!?」
「・・・え、や、その・・・」
ツルギの顔が真っ赤になり
「・・・きっ、ききっ!!くききききっ・・・!!」
ツルギが恥ずかしさに耐えかねて奇声を上げ始めた
「ううっ、すみません、なんだか分かりませんがごめんなさいいぃぃぃ・・・」
「"・・・ふふっ"」
私は思わず笑ってしまった
("あぁ・・・こんな夏を過ごせるなんて、思ってなかったな・・・")
少しして
完全に夕日が沈み、浜辺は暗闇に包まれていた
海の家も閉店作業に入り、人の気配はほとんどない
聞こえるのは、波の音だけ
「静かですね・・・」
ヒフミが辺りを見渡す
「もう誰も見当たりませんし、私達以外皆さん帰られてしまったんでしょうか?」
「いや。」
アズサが答える
「あっちの方にまだスケバン達が残ってる。」
「今何をしてるかは知らないけど。」
「そうでしたか。」
マシロは少し考える
「距離はそれなりにありますが・・・」
「念のために先制攻撃しておきますか?」
「"マシロ、念のための意味が少し変わってない?"」
「え?」
「な、なにが念のためなのか良く分かりませんが、」
「喧嘩は売らなくてもいいのではないかと・・・!」
ヒフミが慌てて止める
「まだ何も起こっていませんし・・・!」
「確かにそうですが、」
マシロは真剣な顔で言う
「これまで何度もあちらから仕掛けてきました。」
「また次もやってくると思いませんか?」
「"もしかしたらあっちでも、花火をしてるんじゃないかな?"」
「花火・・・ですか?」
「一概に否定できる話でもない。」
アズサが淡々と、いつもの調子で続ける
「さっき花火を買いに、爆発物を取り扱ってるお店に入った時、そこにスケバン達も居た。」
「えっ、あの時ですか?」
「そう。」
アズサはスケバン達がいる方向を見る
「あの状況からして、他の変数を加味しても花火を買っていた可能性は高い。」
「もちろん、それでも万が一と言う事はある。」
「出来る限りのリスクを洗い出して備えるという意味では、私は賛成だけど・・・」
「そ、そこまでやらなくても良いと思います・・・」
ヒフミが困ったように笑う
「・・・ヒフミならそう言うと思った。」
アズサは少しだけ目を細める
「とりあえず、警戒だけはしておく。」
「分かりました。」
マシロも頷く
「でしたら私も、これ以上は何も言わないでおきますね。」
「"二人とも、本当に考え方が真面目だねぇ・・・"」
私は苦笑しながら二人を見る
「"まあ、何も起きないのが一番だけどね。"」
そう言った瞬間――
《shake:1》【ぴゅ~~~】《/fade》
という音が夜空へ響いた
《shake:1》【パン】《/fade》
っと乾いた音が響いた
暗かった夜空に、一輪の光が咲く
「花火・・・」
ツルギが小さく呟いた
「ですね。」
マシロも空を見上げる
「スケバン達が居た方角・・・本当に花火だったんだ。」
アズサが驚いたように目を丸くする
「・・・すごい。」
ツルギは夜空を見上げたまま、小さく呟く
「キラキラ、してる・・・」
普段の戦闘中とは全く違う表情
どこか子供みたいに、純粋に花火を眺めていた
("こういう顔もするんだなぁ・・・")
そんなことを思っていると――
ぴゅ~~~
ぴゅ~~~
ぴゅ~~~
今度は近くから複数初の打ち上げ花火が上がった
パン、パ、パァン!!
「・・・!?!?」
ツルギが驚いて振り返る
「まだです、これでは足りません!」
マシロが真剣な顔で打ち上げ花火に火を点けていた
「アズサさん、あちらの花火に負けないくらいもっと大きいの打ち上げましょう!!」
「もちろん。」
アズサも頷く
「負けるわけにはいかない。」
「ええぇぇぇぇっ!?」
ヒフミが叫ぶ
「な、何を張り合ってるんですか!?」
「どうしてまた勝負してるんですか!?」
「"あはは・・・"」
私は苦笑しながら空を見る
「"今日を通して、二人共本当に仲良くなったね・・・"」
その瞬間
ぴゅ~~~
スケバン達がいる方向から、追加の花火が上がる
パァン!!
「な、何だか向こうも対抗してきているような・・・!?」
ヒフミが慌てる
「はうぅぅ!!せ、せんせぇ~~!!」
「"ふふ、綺麗だねー"」
私は笑いながら夜空を見る
「"こういうのも、夏っぽくて良いんじゃないかな。"」
「意地の張り合いか・・・悪くない。」
アズサが真剣に頷く
「こ、これじゃ、せっかく買って来た花火があっという間に・・・!!」
ヒフミが持ってきた袋を見る
その瞬間――
ドカアァァァァン!!
今度は大きな爆発音が聞こえた
「・・・!?」
「・・・!!」
「・・・あれは、恐らく、ナパーム弾ですね。」
「ナ、ナパーム弾!?」
ヒフミの顔が引きつる
「確かに、ナパーム弾は普通の花火より遥かに強力。」
アズサは真剣に分析する
「それを花火として使うとは、考えたな・・・?」
「"いや、考え方がもう花火じゃないと思うけど・・・"」
思わず呟く
「もうあれは花火じゃないと思いますが・・・」
ヒフミも同じ感想だったらしい
「狙撃手。」
アズサがマシロを見る
「こちらにナパーム弾は?」
「ありません。」
即答だった
「そうか・・・」
アズサは少し残念そうに頷く
("残念がるところじゃないんだけどなぁ・・・")
「あっ、また何か・・・!」
ヒフミが空を見る
スケバン達の方から、何かが飛んでくる
「・・・軌道が低い、ですね・・・?」
マシロが呟く
「・・・あ。」
何かに気付いたように、アズサが小さく声を漏らす
「・・・?」
「・・・はぁ。」
小さくため息
「そういう事か。」
次の瞬間
ドカアァァァァン!!
私達の近くに、何かが着弾した
「・・・」
「・・・」
「・・・」
アズサが静かに立ち上がる
「良いだろう。」
銃を構える
「ならば戦争だ。」
「"・・・一応花火大会のはずだったんだけどなぁ・・・"」
夜空に花が咲く
ただし普通の打ち上げ花火ではない
少し低い
少し横向き
そして
少しだけ狙いが正確すぎる
「・・・」
「・・・」
「"綺麗だね・・・"」
「先生!?」
ヒフミが叫ぶ
「そこじゃないです!!」
「"いや、でも花火自体は綺麗だし・・・"」
「そういう問題じゃありません!!」
「・・・・・・」
夜空に広がる光
爆発音
煙
本来なら、少し怖く感じてもおかしくない光景
けれど
ツルギは、不思議そうにそれを見ていた
「・・・すごい。」
「・・・これが、花火・・・なんですね。」
「本で見たものとは、少し違いますけど・・・」
「でも・・・」
「・・・なんだか。」
言葉を探すように、少し黙る
「・・・楽しい、です。」
「い、いえ・・・!」
自分で言ったことに気付いたように、ツルギが慌てる
「ち、違うんです!」
「その・・・こういうのが楽しいっていうのは・・・」
「私には、まだよく分からなくて・・・!」
「で、でも・・・」
遠くで上がる光を見ながら
「・・・皆と一緒に見るなら。」
「こういうのも・・・悪くないのかなって。」
私は少し笑う
「"うん。"」
「"ツルギがそう感じたなら、それで良いんじゃないかな。"」
「・・・そ、そういうものなんですか・・・?」
「"うん。"」
「"楽しいって思えたなら、それはちゃんと楽しい時間だったってことだと思うよ。"」
「・・・」
ツルギは少しだけ俯く
「・・・なるほど。」
「まだ、よく分からないですけど・・・」
「でも・・・ありがとうございます、先生。」
その間にも
向こうから
こちらから
花火と爆発音が交互に響き続ける
そして
気が付けば――
浜辺全体が、煙に包まれていた
花火の煙
爆発物の煙
燃え尽きた火薬の匂い
先ほどまで綺麗だった砂浜は、まるで何かの戦場跡のようになっていた
「けほっ、けほっ!あうぅ・・・煙で目が・・・」
ヒフミが涙目になりながら手で煙を払う
「本当に・・・」
「本当に、どうしてこうなったんでしょう・・・」
「最初はただ花火をする予定だったはずなのに・・・」
「"・・・"」
私は周囲を見る
黒くなった砂浜
少し焦げた跡
そして
満足そうに立っている二人
「ふぅ。」
マシロが銃を下ろす
「私達の勝利ですね。」
「"・・・勝負だったんだ。"」
「はい。」
迷いなく答えるマシロ
その横でアズサも頷く
「夜の浜辺に、このナパーム弾の匂い・・・」
「なるほど、これが海。悪くない。」
「"だいぶキヴォトスらしい海になったね・・・"」
思わず呟く
「だから違うんですよアズサちゃん・・・!」
ヒフミが即座に反応する
「そもそも、どうしてこんな事になったんですか・・・!」
「花火を見に来たはずなのに・・・!」
「・・・でも、楽しかった。」
アズサが小さく呟く
「・・・」
ヒフミは少し黙ったあと
「・・・それは、そうですけど。」
小さく笑った
「確かに、楽しかったですね。」
その瞬間
「あっ!」
ヒフミが何かを思い出したように声を上げる
「そ、そういえば写真を撮っていませんでした・・・!」
「"あ、それは安心して。"」
私は撮った写真を全部取り出す
「"ちゃんと撮ってあるよ。"」
「ふぇ・・・!?」
ヒフミが目を丸くする
「せ、先生、いつの間に!?」
「"みんなが楽しそうだったから、つい。"」
「み、見せて貰っても良いですか?」
ヒフミに写真を手渡す
「わぁ!」
小さく声を漏らした
「凄いです・・・!」
「こうして見ると・・・」
「普通に綺麗な花火に見えますね・・・!?」
夜空に咲く光
煙に包まれた浜辺
楽しそうに笑う皆
そして
「・・・この写真。」
ヒフミが少し笑う
「ちゃんと、夏休みって感じがします。」
ヒフミが写真を後ろへ次々と送る
スケバン達との騒動
海で遊んだ時間
ビーチバレー
花火
全部
「"ツルギも見る?"」
そう声をかける
「ぐぎっ!?うぇぇ・・・!?・・・!!!」
ツルギの肩が跳ねる
「え、えっと・・・その・・・ぜ、ぜひ・・・!」
恐る恐るヒフミから写真の束を受け取り
写真を見ていく
一枚
また一枚
そこには
普段の委員会では見られない表情のツルギが写っていた
「・・・・・・」
「・・・これ。」
ツルギが小さく呟く
「私・・・笑ってますね。」
「"うん。"」
「"楽しそうにしてたよ。"」
「・・・」
ツルギは少しだけ顔を伏せた
「・・・そうですか。」
「・・・・・・ありがとうございます。」
その後
皆で今日撮った写真を眺めた
笑ったり
驚いたり
ヒフミが何度も「これは違います!」とツッコミを入れたり
そうしているうちに
いつの間にか
夜は終わりに近付いていた
爆撃合戦で荒れてしまった浜辺を、皆で片付ける
燃え残った物
散らばったゴミ
使い終わった道具
「ここまでが、最後のお仕事ですね。」
ヒフミが笑う
「楽しかった分、ちゃんと元に戻さないとです。」
「"そうだね。"」
皆で片付けを終え
荷物をクルセイダーちゃんへ運び込む
そして空が少しずつ白み始めた
「・・・朝ですね。」
ヒフミが空を見る
長い一日だった
本当に色々ありすぎた一日だった
私は皆を見る
「"じゃあ。"」
「"帰ろっか。"」
その言葉に皆が頷いた
クルセイダーちゃんの中
エンジン音だけが静かに響く
行きとは違って
車内はとても静かだった
当然だ昨日朝から海で遊んで
戦って、走って、叫んで
最後には爆発物まで飛ばした
疲れていたのだろう、
ツルギを挟んでアズサとマシロが壁にもたれて寝ていた
そして
運転席
「・・・・・・」
ヒフミは操縦桿を握っていた
目の下には、はっきりと分かるほどのクマ
当然だった
一番動いて
一番気を使って
一番ツッコミをしていたのだから
「"ヒフミ。"」
「はい?」
「"大丈夫?"」
「・・・」
少し間
「大丈夫です!」
元気よく返事
しかしその直後
小さなあくびが出た
「・・・」
「"無理しないでね?"」
「はい・・・」
「でも。」
前を見る
朝焼けの道
皆の寝息
「・・・楽しかったですから。」
小さく笑う
「来てよかったです。」
クルセイダーちゃんはゆっくり進む
長かった夏の一日を乗せて
トリニティへ向かって
朝日の中を走っていった
翌日
【トリニティ総合学園・正義実現委員会教室】
いつも通りの校舎
いつも通りの廊下
けれど
昨日までの出来事が、まだ少し夢の中のように感じる
海、砂浜、花火
そして
あまりにもキヴォトスらしい、色々な騒動
私はそんなことを思い返しながら、目的の場所へ向かっていた
正義実現委員会
その扉の前に立つ
軽く息を整え扉へ手をかける
「"失礼するね。"」
扉を開けると
「あら、先生。お久しぶりですね。」
丁度こちらを向いたハスミが、柔らかく微笑んだ
「引率してくださったとの事で、ありがとうございました。」
「海はいかがでしたか?」
「マシロとツルギは今日も委員会の用事がありまして、今はいないのですが・・・」
「ツルギはかなり元気になったみたいでして。」
「それだけでも、本当に良かったです。」
「ありがとうございます。」
「マシロも・・・」
少し考えるように言葉を選ぶ
「何と言いますか。」
「以前より少し余裕が生まれたと言いますか・・・」
「良い意味で、力が抜けた表情をしていました。」
「お二人とも、楽しめていたのなら良いのですが・・・」
「先生から見て、いかがでしたか?」
私は少しだけ苦笑する
「"あはは・・・夏休みの宿題に追われてる感じっていうか・・・"」
「・・・?」
ハスミが少し首を傾げる
「えっと、それは・・・?」
私は鞄から一枚の紙を取り出す
そしてハスミへ渡した
「これは・・・」
受け取ったハスミが目を通す
そこには
海でやること、予定、注意事項と
事細かく書かれたリスト
「あぁ、なるほど。」
ハスミは少し目を伏せる
「余計なことかもしれないと少し迷ったのですが」
「やはり迷惑だったでしょうか・・・?」
「"ううん。」
私は首を振る
「"このリストがあったから、最後まで楽しめたと思うよ。"」
「"むしろ、助かったと思う。"」
「ふふっ。」
ハスミは安心したように笑う
「そう言って下さるとありがたいですね。」
「ある程度は意図していましたが・・・」
「あのお二人が、ツルギと打ち解けるのは難しいだろうなと思いまして。」
「もちろんマシロも含めて、余人が仲良くなってくれたら良いなとは思っていましたが・・・」
「ですが・・・」
少し苦笑する
「それは流石に、高望みでしょうから。」
「ですので、せめて」
「何をすればいいのか分からない時間だけでも無くなれば、と。」
「やることが明確なら。」
「その時間だけでも、楽しめるのではないかと思ったのです。」
私は笑う
「"流石はハスミだね。"」
「・・・」
一瞬
ハスミが目を丸くする
そして
「先生にそう言っていただけると、胸のつかえが取れた気がします。」
「よろしければ、お二人にお疲れさまでしたとお伝えください。」
「恐らく私が言うよりも、先生からの方が良いでしょうから。」
「あらためまして、ありがとうございました。先生。」
「それでは、また・・・」
「"ハスミ。"」
「・・・?」
呼び止めると
ハスミが振り返る
「えっと、どうかしましたか?」
私は笑う
「"次は絶対ハスミも行こうね?"」
一瞬ハスミは驚いた顔をする
そして
「それは・・・」
「ふふっ。」
「なかなか私は、ここを離れるわけにはいきませんから。」
「ですが、お言葉だけでもありがたく受け取っておきます。」
「いつか、叶ったらいいですね。」
少し間
「えっと、先生?」
「もしかして、それ以外にも何か御用が……?」
私はリストを見る
「"このリストなんだけど。"」
「"最初はツルギのために用意したものだと思ってたんだけど・・・"」
「"これって実は。"」
「"ハスミがやりたかったことリストなんじゃない?"」
「・・・」
沈黙
そして
「・・・ふふっ。」
ハスミは小さく笑った
「よくお分かりになりましたね。」
「はい。疲れた時などに」
「いつかやってみたいことを、あれこれ想像しながらまとめていたものです。」
「そういう意味では。」
「これは確かに、私のウィッシュリストですね。」
「ですが、こうして」
「皆がその通りに遊んできてくれただけでも。」
「私は嬉しいのですよ。」
「"そっか・・・"」
「そういえば。」
ハスミが思い出したように言う
「忘れるところでした。」
「写真の方はいかがでしたか?」
「本当に仲良くなってもらうことは。」
「高望みだったのかもしれません。」
「ですが、せめて。」
「楽しそうにしている姿だけでも見られれば、と。」
私は少し笑う
「"ふふっ凄い写真がいっぱい撮れたよ。"」
そう言って
ハスミに写真の束を渡す
「ありがとうございます。」
「では、拝見して・・・」
ハスミが写真の束を見る
「えっと・・・思ったより・・・」
「だいぶ多いですね・・・?」
「"後半からね。"」
「"ハスミが本当に行きたかったんじゃないかなって思って。"」
「"少し多めに撮ったんだ。"」
ハスミは苦笑しながら
写真の束を上から一枚ずつ見ていく
砂の城塞
スケバンとの籠城戦
砂浜に埋まるスケバン達
私がスケバン達を引き上げている写真
そして
スケバン達をボール代わりにしているように見える
あまり説明しやすくない一枚
「・・・」
ハスミの表情が少し固まる
「・・・これは。」
「"うん、説明すると少し長くなるかな。"」
「・・・そうですか。」
次の写真
アズサとマシロが楽しそうにスイカ割りをしている写真
皆で花火を見ている写真
そして
最後
ツルギが
アズサとマシロに挟まれながら
クルセイダーちゃんの中で眠っている写真
「・・・」
ハスミは
しばらくその写真を見ていた
「これは・・・」
私は静かに言う
「"高望みなんかじゃなかったよ。"」
「・・・」
ハスミは写真から目を離さない
そして
「・・・ふふっ、なるほど。」
小さく笑う
「・・・これは」
「良い写真ですね。」
ちなみに、何故アリウスなんていう学校に居て、
アズサがスイカ割りを知っていたか・・・
それはどっかのローブのおっさんが夏になったら大量にスイカを送ってくるからですね。
ついでにスイカ割りなるものを伝えた結果、
クソ余ってるスイカを的にし始めたのがアリウス式スイカ割りの始まりです。
何だかんだで、ヴェアトリーチェからの監視の目を掻い潜って
皆遊んでたのがこの世界のアリウス。
逞しい。
そして、先生
今までの周回でこんな遊べる事も無かったので、
結構ウッキウッキだったりします。
ちなみに先生の水着は、
ラッシュガードに短パンです
ちなみにラッシュガードの中の水着はセパレート水着です。
これはどっちも自分の大学の頃にバーゲンセールで秋ごろに買った65%OFFの水着を使ってます。
うーん・・・
多分アビドスバカンスに拉致られる時に先生もあのロボットが暴走した、デパートで対策委員会の子達と一緒に水着選びする事になるんやろうなぁ・・・
ノノミあたりに着せ替え人形にされそう。
~今日のセイア~
セイア様、今日も祈願屋に朝早くから出社し、書類を捌いています。
ですが、今までと違い、
セイア様の近くにミネ団長が控えていますね・・・
セイア様もミネ団長が着になるのか時折チラチラとミネ団長に目線を向けています。
どうやら、3階のお部屋にミネ団長がセイア様を連れて行った時際に、
セイア様の生活があまりにも酷い事が発覚した為、
セイア様はミネ団長の完全管理下に置かれる事となったようです
あ、祈願屋の時計が鳴りましたね。
どうやらお昼休憩のようです。
いつもであれば、セイア様はここでウキウキしながら、柴関に向かうのですが・・・
あ・・・やっぱり柴関に行こうとしていますね。
ですが、ミネ団長に首根っこ掴まれて三階のお部屋に連れていかれました・・・
なにをしているのか、ちょっと見てみましょうか・・・
あ、ミネ団長が、料理をされていますね。
なにを作っているのでしょうか・・・
あ、コレお粥ですね・・・こっちのフライパンは・・・豆腐ハンバーグですか。
副菜で、ほうれん草のお浸しまでありますね!
これはかなり手の込んだ料理ですね!
これならセイア様も大満足でしょう!
あ、完成したのか、セイア様に料理を持って行きましたね
ん?セイア様なにやら凄く嫌そうなお顔をされていますね・・・
えっと・・・?なになに?
塩と油が欲しい・・・?
あ、マズいです。
ミネ団長のお顔が祈願屋に来た初日みたいな
淑女がしてはいけないお顔になっています!
セイア様もミネ団長のお顔を見たのか、渋々ご飯を食べ始めましたね・・・
それにしてもセイア様・・・もしかして、好みが結構ジャンクになられました・・・?
ま、まぁ!ミネ団長ならきっとなんとかしてくれるでしょう!
頑張ってください!
本日のセイア様お食事
朝、パン粥、フルーツ
昼、全粥、豆腐ハンバーグ、ほうれん草のお浸し
夜、麦ごはん、鶏むね肉のノンオイル蒸し、ツナとほうれん草のお浸し
カロリー
約800kcal
タンパク質
約50g
脂質
約10g
糖質
約100g