おっさんキヴォトスに行く 作:無い頭のおっさん
【先生視点】
外の明かりも少なくなり、
人の気配が無くなった
現在時刻は夜の12時を回った所――
私はミレニアムに来ていた
【ミレニアムタワー・ロビー】
「あっ、先生。」
「来てくれてありがとう。」
「"ううん、大丈夫だよエイミ。"」
「"それで、用事があるから誰にも見つからない様に"」
「"深夜に来てほしいって言ってたけど用事って?"」
「急にごめん、大事なことだから誰にも気づかれるわけにはいかなくて・・・」
「先生の事を待ってる人がいるの。」
「こっち。」
そういってエイミが案内してくれる
その場所はミレニアムタワーの地下、
それも複数の階段とエレベーターを駆使しなければ辿り着けない特殊な場所だった
【ミレニアムタワー地下・特異現象捜査部部室】
エイミに案内されて、通された部屋は、
様々な機器とモニターが並ぶ、差し詰め指令室の様な場所だった
「部長、先生が来てくれたよ。」
「ありがとう、エイミ。」
「そして・・・初めまして、先生。」
「私の名前はヒマリ。」
「このミレニアムサイエンススクールにおける、天才ハッカーです。」
「"あはは・・・自分で言うんだね・・・"」
("それにしても、エイミの時点で分かってはいたけど・・・")
("これは特異現象捜査部・・・つまり、デカグラマトンについてか。")
「事実ですから。」
「それに私そこそこ有名人なので、」
「一度くらいは噂など聞いたことがあるのではないでしょうか?」
「正体不明なヴェリタスの超美人部長ですとか、」
「病弱美少女のお手本のような存在ですとか・・・」
「ミレニアムに咲く一輪の花ですとか・・・ひとつくらい聞いたことありません?」
「"うーん・・・モモイが凄い人って言ってはいたね・・・"」
「ふふふ・・・モモイがですか・・・ふふっふふふ・・・」
「ふふふふふっふっふふふ・・・」
「部長が調子に乗った・・・先生、責任取って元に戻して。」
「あら、その言い方は心外ですね。エイミ。」
「調子に乗ったのではなく、事実確認を通じて全てが順調であることを検証しただけです。」
「・・・とにかく、私は先日【特異現象捜査部】の部長に任命されました。」
「それにより、本来所属していたヴェリタスの事は一旦、チーちゃんに全て任せています。」
「"特異現象捜査部か・・・"」
「はい、この特異現象捜査部は」
「ミレニアムの生徒会長であるリオが作った特務組織なのですが、うーん・・・」
「エイミ、説明してもらえますか?」
「化学的に解明しがたいとされる現象を追跡・研究する事を目的とした、」
「セミナーの傘下にある部活。」
「リオ先輩の命令で作られたんだけど、」
「今まではずっと構成メンバーは私だけだった。」
「明確な活動内容も特になかったし。」
「まさかリオが作ったそんな怪しい部活に、突然私が部長として任命されるなんて・・・」
「しかも部員は一人。」
「今はヒマリ部長も入れて二人だよ。」
「ええ、そうですね。」
「健康的な路線のエイミと病弱系美少女の私、素敵なコンビになりそうです。」
「・・・ところでここ、ちょっと暑くない?」
「いえ、私にとっては今もむしろ悪寒がするほどですので、」
「そのエアコンのリモコンは置いてください、エイミ。」
ヒマリがそう言うとしかたないと言いたそうに、
エイミが自分の服を脱ごうとしだす
「あの、代わりに服を脱ぐのもやめてください。」
「はい?ファスナー・・・?何を言って・・・」
「いえ、理解してしまいました・・・絶対にやめてください。」
「"ははは・・・"」
「"それで私は何を手伝えばいいのかな?"」
「あぁ、そうですね。」
「そろそろその本題に入りましょうか。」
「ご存じかもしれませんが・・・」
「私はミレニアムの生徒会長であるリオと、長い間対立してきました。」
「全てを統制しようとするビックシスターな彼女と、」
「全ての統制に反対するコピーレフト信者の私は、そもそも水と油と言いますか。」
「同じ水で例えるとすると、リオ下水道に流れる水だとするならば、」
「私は澄み切った純正のミネラルウォーター」
「それとも、浄化槽に浮かぶ腐った水と言った方がよろしいでしょうか。」
「私は万年雪の結晶、といったあたりで。」
("相変わらず、ボロクソだなぁ・・・")
「いえ、汚水、どぶ水・・・」
「何かほかにもっと、適切な表現が・・・」
「部長、本題。」
「あら、そうでしたね。」
「まぁとにかく、リオの頼みとならば【何でも】【絶対に】断るつもりでいたのですが・・・」
「少々込み入った事情で、断れないようなお願いをされてしまいまして・・・」
「それで、この特異現象捜査部の部長を引き受ける事になったのです。」
「そしてそのお願の内容を果たす為には、シャーレの手助けが必要不可欠でして。」
「そういった事情で今回、こうして先生にお越しいただきました。」
「"そのお願いって?"」
「・・・デカグラマトン。」
(”・・・やっぱり”)
その名前を聞いた瞬間
頭の奥に、ひとつの光景が蘇る
Keyが居たあの部屋に強襲して来たケテル
そしてケテルが最後に残した言葉
【AL-1S確認】
【優先事項更新】
("あれからずっと気になっていた。")
("デカグラマトンは、どうしてアリスを知っていたのか。")
("どうして、彼女を探していたのか。")
アリスはミレニアムの生徒だ
あの時のケテルの言葉
あれがただの偶然ではないのなら
デカグラマトンが、今もアリスを目的として動いているのなら
知らないままにしておくことは出来ない
「先生も聞き覚えがあるかと思います。」
「何せこの未曽有のAIと初めて接触したのは先生ですよね?」
「"そうだね・・・"」
「"ただ、正確には私が最初に接触したというより・・・"」
少しだけ考えてから言葉を選ぶ
「"向こうが、私達を認識したと言った方が近いかもしれない。"」
ヒマリは少しだけ目を細める
「・・・なるほど。」
「確かに、先生から提供された情報だけでは説明できない部分が多すぎます。」
「デカグラマトンが何を目的としているのか。」
「そして、なぜ神性を求めているのか。」
「その全てを確認する必要があります。」
「"・・・うん。"」
私は頷く
「"私も調べたいと思っていたんだ、デカグラマトンが何なのか。"」
「"何を目的に動いているのか。"」
「"それを知ることは、ミレニアムだけじゃなくて、私達全員に関わる問題だと思う。"」
そして――
「"それに・・・アリスの事もあるから。"」
その名前を口にすると
ヒマリの表情が僅かに変わった
「やはり、そこですか。」
「"うん。"」
「"ケテルが最後に残した言葉を、私は忘れてない。"」
「"【AL-1S確認】【優先事項更新】"」
「"あのAIがアリスをどう認識しているのか。"」
「"それを確認しないまま、放っておくことは出来ない。"」
少しの沈黙
そしてヒマリは、小さく笑った
「なるほど。」
「それならば話は早いですね。」
「先生はデカグラマトンを調べたい。」
「私はデカグラマトンを解明したい。」
「目的は少々違いますが、向かう先は同じようです。」
「"そうだね。だから協力するよ。"」
「"特異現象捜査部の活動に、私も参加させてほしい。"」
「"アリスを守るためにも。"」
「"そして、この未知の存在を知るためにも。"」
「ありがとうございます。先生。」
ヒマリはそう言うと、すぐにモニターへ向き直った
「それでは、まず情報の整理から始めましょうか。」
「デカグラマトンについて、現時点で私達が把握している情報は非常に少ないです。」
「先生から提供されたケテルとの交戦記録。」
「そして、ミレニアムのネットワークに残されたHODのメッセージ。」
「この二つが、現在確認できる主要な情報源ですね。」
「"ケテルの方は、あれから何か分かったことはあるの?"」
私が尋ねると、ヒマリは少しだけ首を横に振った
「残念ながら。」
「正確には、分かったことよりも分からないことの方が多いですね。」
「先生が交戦した場所。」
「そこについては、既にミレニアム側でも可能な限りの調査を行いました。」
「ですが――」
「戦闘によって生じた破壊痕。」
「残されたエネルギー反応。」
「それ以外に、ケテル自身へ繋がるような情報は何もありませんでした。」
「まるで、最初から存在していなかったかのように。」
「"やっぱり、そうなんだ・・・"」
あの時もそうだった
ケテルは突然現れ
そして目的を果たす前に突然消えた
まるで、必要な情報だけを収集して去ったように
「先生。」
「ひとつ確認してもよろしいですか?」
「"うん。"」
「ケテルは、戦闘中に先生やアリスについて何か言及しましたか?」
「特に――AL-1Sという名称について。」
「"・・・"」
私は一瞬黙る
「"うん。最後に一度だけ。"」
「"【AL-1S確認】【優先事項更新】って。"」
「"それ以外には、アリスの名前も、理由も何も言っていない。"」
ヒマリは静かに頷いた
「やはり、そこが最大の疑問ですね。」
「AL-1S。それがアリスを示しているのであれば。」
「デカグラマトンは、彼女の存在を以前から認識していたことになります。」
「ですが、なぜ。」
「どのように。」
「そして、何を目的として。」
「そこが未だに不明です。」
「だからこそ。」
ヒマリは画面を切り替える
「ケテルだけを追跡するのは、現状では効率が悪いと判断しました。」
「もちろん、調査を諦めるという意味ではありません。」
「ですが、デカグラマトンはケテル以外にも複数の預言者が確認されています。」
「ならば、現在活動している個体を追跡する方が、」
「より多くの情報を得られる可能性があります。」
「"つまり・・・"」
「はい。」
ヒマリは頷いた
「今回の調査対象です。」
その言葉と共に
モニターへ新しいデータが表示される
「最近、最も活発な動きを見せている預言者。」
「ビナー。その活動地点を調査します。」
その後ヒマリから一枚の画像を見せてもらった
砂漠地帯の衛星写真
「こちらが、ここ一ヶ月少しで確認された予言者の活動地点です。」
ヒマリがモニターを操作する
「複数の観測データを照合した結果、最も可能性が高い地点は――」
画面に表示された場所
「アビドス砂漠。」
その文字を見た瞬間
私は少しだけ黙った
アビドス自治区は私が何度も訪れた場所
そして――
アンラさんが今も活動している場所
「・・・先生。」
ヒマリはモニターから視線を外し、こちらを見る
「今回の調査ですが。」
「いくつか解決しなければならない問題があります。」
「まず第一に。」
「アビドス砂漠は、アビドス自治区の管轄区域です。」
「いくらデカグラマトンという未曽有の存在を調査する目的があるとはいえ、」
「他学区の領域へ無断で立ち入ることは出来ません。」
「もちろん、緊急性を考慮すればシャーレの権限を利用することで、」
「調査許可を取り付けることは可能です。」
「先生には、その権限がありますから。」
「・・・。」
ヒマリは一度言葉を区切る
「ですので。」
「先生にはアビドスに対して介入手続きをお願いします。」
私は少し考える
確かに、それが間違った方法というわけではない
デカグラマトンは未知の存在だ
一刻も早く調査する必要があるなら、シャーレの権限を使うのは合理的だ
だけど――
「"うーん、それはやめておいた方が良いと思う。"」
「・・・どうしてですか?」
ヒマリが首を傾げる
私は画面に映るアビドス砂漠を見る
「"アビドスに行くなら。"」
「"まず、アンラさんに話を通した方がいいと思う。"」
その瞬間ヒマリの表情がわずかに変化した
「・・・アンラさん。」
「なるほど、先生。」
「確認ですが、その名前は――」
「アビドス治安維持部隊の七篠アンラさんのことですよね?」
「"うん、そうだよ。"」
「・・・。」
数秒の沈黙
ヒマリは小さく息を吐く
「先生。」
「その判断をする前に。」
「一つだけ確認させてください。」
「先生は、アンラさんという人物を。」
「本当に理解した上で、そう仰っていますか?」
「"どういう事?"」
「アンラさん。」
「治安維持部隊。」
「そして、その部隊を運用している祈願屋。」
「私は当然、把握しています。」
「ミレニアムのゲーム開発部、エンジニア部への支援者。」
「アビドス自治区の殆どの土地管理。」
「そして現在、アビドスの治安維持を実質的に担っている組織。」
「情報だけを見るならば。」
「学生が治めるべき学区を、一人の大人が企業組織を使って掌握しているようにも見えます。」
「正直に申し上げますと。」
「私は、あの組織をかなり警戒しています。」
エイミも静かに頷く
「祈願屋。」
「大きな組織だよね。」
「"あー・・・うん・・・"」
私も思わず頷く
確かに、外から見ればそう見える・・・
だけど
「"でもね、ヒマリ。"」
「"アンラさんは、アビドスを支配しているわけじゃないよ。"」
「・・・。」
「"むしろ逆。"」
「"アビドス生徒会と協力関係にある。"」
「"土地の管理や治安維持を委託されているだけ。"」
「"アビドスの生徒達が、自分達だけでは維持できない部分を支えている。"」
「"それが祈願屋。"」
ヒマリは黙って私を見る
「・・・先生。」
「それは、アンラさん本人から聞いた情報ですか?」
「ううん。」
「私自身がアビドスに行って見てきたこと。」
「まぁそれに私は、アンラさんと契約しているから。」
「困った時は助けてもらう。」
「そして、アンラさんも私が助けを求めた時は必ず応えてくれる。」
「そういう関係。」
「・・・。」
ヒマリは少し目を細めた
「契約・・・なるほど。」
「先生がそこまで信用している、と。」
「"それにそれだけじゃないよ。"」
私は続ける
「"ケテルと戦った時、アンラさんもその場にいた。」
「"だからアンラさんもデカグラマトンがアリスを探していた事を知っている。"」
「"デカグラマトンについて調べていることを話せば。"」
「"きっと協力してくれると思う。"」
「ケテルの時・・・」
ヒマリが小さく呟く
「確かにその情報は、私達も確認しています。」
「先生とデカグラマトンの預言者との交戦。」
「そして。」
「最後に発された、AL-1Sという単語。」
「その場にアンラさんもいたのであれば。」
「事情を知らない第三者ではありませんね。」
「"うん。"」
「"それに・・・"」
私は少しだけ苦笑いを浮かべる
「"多分・・・今のアンラさんだと、"」
「"アリスが絡んだ事で蚊帳の外にしておくほうが危険・・・かな?"」
「・・・アリス」
ヒマリの表情が少し柔らかくなる
「確かに。」
「その一点だけでも、協力する理由としては十分でしょうね。」
「アンラさんは、アリスをかなり大切にしていますから。」
「え?」
エイミが首を傾げる
「知ってたの?部長」
「ええ。」
ヒマリは当然のように答える
「ミレニアムの支援者ですから。」
「その程度の情報は把握しています。」
「むしろ。」
「知らない方がおかしいでしょう。」
「・・・。」
少し間が空く
「では。」
ヒマリは椅子に座り直した
「確認しましょう。」
「先生は、シャーレの権限による強制介入ではなく。」
「アンラさんを通じて、アビドス側と協議する。」
「そういう方針ですね?」
「"うん。その方が、誰にとっても良いと思う。"」
「"調査する側も、調査される側も。"」
「"そして、アビドスのみんなも。"」
「・・・。」
ヒマリは少しだけ笑った
「分かりました。」
「先生がそこまで信頼している相手ならば。」
「私も、その可能性を検討しましょう。」
「ただし。」
「私はまだ完全には信用していません。」
「アンラさんも。」
「祈願屋も。」
「ふふっ天才美少女ハッカーとして、そこは譲れませんので。」
「でも、先生がそう判断する理由については、理解しました。」
「では。」
「連絡をお願いできますか?」
「アビドス砂漠調査の協力要請。」
「そして。」
「デカグラマトンについての情報共有。」
「お願いします。」
「"うん。"」
私はスマートフォンを取り出した
【七篠アンラ視点】
【アビドス自治区・祈願屋事務所】
最近出来たデパートのおかげか
アビドス自治区に入ってくる商業施設が増えてきた
それ自体はええことや
昔は砂と借金しか無かったこの場所に、人が戻ってきて
店が出来て
街が動き始めている
ほんまなら、喜ぶべきことなんやけど
「あぁぁぁーー・・・」
机の上に積まれた書類の山を見る
「一年ぐらい前の都市部大改修の時並に紙増えてんちゃうんこれ・・・」
一束目
店舗誘致に関する申請書
二束目
空きテナントの契約更新
三束目
新規商業施設の管理許可
その横には
アビドス都市部の電力網
上下水道
通信設備
その他諸々のライフライン維持に関する報告書
「いやまぁ・・・」
「自治区が復活してきてる証拠や言うたら、それまでなんやけどなぁ・・・」
昔のアビドスなら
こんな書類、そもそも存在せんかったし
砂漠の中にある廃校寸前の学区
人もおらん
店もほぼない
維持するもん自体が少なかった
けど今は違う
少しずつ
ほんの少しずつやけど
ここは、ちゃんと街になってきている
「あはは・・・残念だけど、アンラさん。」
横から声が飛ぶ
「今アンラさんが戦っている相手は、敵じゃないですよ。」
顔を上げる
そこには、いつもの穏やかな笑みを浮かべたユメがいた
「・・・ユメちゃん。」
「これはアビドスが平和になった証拠です。」
「いや、それは分かっとるんやけどな?」
「はい。」
ユメは笑顔のまま
「なので。」
「文句を言う前に、その書類を終わらせてください。」
「はい。」
反論出来へん
ほんま、この子昔からこういう所あるわ
その時
「ふふっ。」
別の方向から笑い声が聞こえた
「何笑とんねん、セイア。」
ソファに座りながら紅茶を飲んでいた少女
百合園セイア
「いや。」
「少し懐かしいと思ってね。」
「昔の君なら。」
「こんな量の書類を見た瞬間、全部誰かに押し付けて砂漠へ逃げていたかもしれない。」
「いやいや。」
「おっさんそこまで酷ないで?」
「そうかい?」
セイアは首を傾げる
「では聞こう。」
「君がトリニティで動いていた間。」
「私達が何をしていたと思う?」
「・・・」
嫌な予感
「えーっと・・・」
「この書類を。」
セイアは机の上を見る
「ずっと。処理していたよ。」
「・・・」
「私と。」
「ユメで。」
「毎日。」
「朝から晩まで。」
「この山と戦っていた。」
「君が初日に言った通り、労基なんてものは無かったね。」
「いや、そもそもトリニティに行くのはお前の依頼やろ・・・」
「もちろん理解しているよ。」
セイアの声が少し柔らかくなる
「君が私の依頼でトリニティに出向いていた事くらい。」
「だが、もっと帰ってこれたのではないかね?」
「君、本気を出せば空間跳躍も出来るのだろう?」
「・・・」
セイアに言われ、思わず顔を逸らす
「いや、その・・・」
「おっさんにも色々事情がやな?」
「事情。」
セイアが復唱する
「聞こうじゃないか。」
「・・・」
「アンラ。」
「君がその言葉を使う時は、大抵の場合。」
「自分一人で全部抱え込んでいる時だからね。」
「うっ。」
図星
「いやまぁ・・・」
「ほら。先生もおったしな?」
「先生が困っとったら助けるんが、契約やし。」
「それは理解しているよ。」
セイアは紅茶を置く
「君が大変、先生を大切にしていることも。」
「先生が君を信頼していることも。」
「そして。」
「君が誰かの為なら、自分の身を削ることも。」
「全部ね。」
「・・・」
「だからこそ言っているんだよ。」
セイアは少しだけ笑う
「君は、自分が壊れることに関して。」
「少しばかり無頓着すぎる。」
「昔からそうだ。」
「自分が傷付けば済む。」
「自分が我慢すれば済む。」
「自分が背負えば済む。」
「何でも自分一人で出来てしまうが故に、」
「そうやって周りに頼ることを忘れる。」
「・・・耳が痛いわ。」
「だろうね。」
セイアは満足そうに頷く
「まぁ。君が変わらないこと自体は、悪いことではないと思っているよ。」
「君がそういう人間だから。」
「アビドス生徒会も。」
「ユメも。」
「そして、先生も。」
「君を信用しているのだろうから。」
「・・・」
少しだけ沈黙が流れる
「せやけどなぁ。」
アンラは机の上の書類を見る
「おっさんかて好きで抱え込んどるわけやないんよ。」
「街が戻ってきたら。」
「当然、その分だけ守るもんも増える。」
「まぁ昔のアビドスなら。」
「砂と借金ぐらいしか守るもん無かったにゃけど。」
「でも今は違う。」
「店があって。住んどる人がおる。」
「働いとる人がおる。」
「その全部が。」
「祈願屋にとっては守る対象や。」
「・・・」
セイアは少しだけ目を細める
「だからこそ。」
「君には仲間がいるんじゃないのかね?」
「全部を一人で守ろうとする必要はない。」
「ユメも、ホシノも」
「そして先生も。」
「君を頼っているだけではなく。」
「君が頼ることも望んでいると思うよ。」
「・・・まぁ、いつか・・・な、」
「いつかは頼らせてもらうわ。」
その時
「アンラさん。」
ユメが静かに声をかける
「そろそろ電話に出た方がいいんじゃないですか?」
「んあ?・・・電話?」
机の端を見る
そこには
点滅する端末
表示された名前
「先生やん。」
その名前を確認した瞬間
部屋の空気が僅かに変わった
「・・・」
「・・・」
さっきまでソファで紅茶を飲んでいたセイアが、静かにカップを置く
そして
「・・・私はいないことにしておこう。」
「まぁ・・・そうですよね。」
「今はまだセイアさんの居場所は判明してませんもんね。」
ユメが同意する
「まぁそうだね、まだ先生に私の居場所を伝えるわけにはいかないからね。」
「では、私も。」
「ミネは・・・まぁ、一応、同じ扱いだからね。」
次の瞬間
二人の存在感が消える
本当にそこにいたはずなのに
まるで最初から誰もいなかったかのように
「・・・セイアは知っとったけど、」
「ミネもそのレベルの隠形できるんか・・・」
おっさんは苦笑する
「ほな、出るで。」
通話を開始する
『"アンラさん?"』
「ああ、先生か。」
『"急にごめんね。"』
『"少しお願いしたいことがあって。"』
「いんや。」
「先生から頼まれるんやったら、そら聞くけどな。」
「ほんで、どないしたん?」
『"実は――"』
『"デカグラマトンについて調べることになったの。"』
その言葉を聞いた瞬間
おっさんの表情が少し変わる
「・・・デカグラマトンか。」
『"うん。"』
『"ヒマリが特異現象捜査部で調査することになって。"』
『"それで、私も協力することになったの。"』
おっさんは少し黙る
「なるほどなぁ・・・。」
『"アンラさんも、ケテルの時にいたから分かると思うけど。"』
『"あのAIが何なのか、まだ何も分かってない。"』
「ああ、覚えとるよ。」
「突然現れて。訳の分からんこと言うて消えたからな。」
『"うん。だからちゃんと調べたいと思って。"』
『"それに、アリスのこともあるからね。"』
「・・・。」
おっさんは少しだけ考える
「まぁ。確かに気にはなるわな。」
「ただ。」
少し間を置く
「今んところ、アリスに直接何かしてきたわけやないんやろ?」
『"うん。ケテルがAL-1Sって呼んだこと。"』
『"そこが気になってるだけ。"』
『"今すぐ危険があるってわけじゃないよ。"』
「なんや。」
おっさんは小さく息を吐く
「びっくりしたわ。」
「またアリスに手ぇ出しよったんかと思ったで。」
『"ふふ。"』
『"アンラさんなら、絶対そこから確認すると思った。"』
「そらそうやろ。」
「おっさんにとっては、アリスは――」
一瞬
言葉が止まる
「・・・まぁ。大事な子やからな。」
『"うん。知ってるよ。"』
おっさんは苦笑する
「ほんで?」
「今回はそのデカグラマトンの調査っちゅうわけか。」
『"うん。それで、その調査場所が――"』
『"アビドス砂漠。"』
その名前を聞いた瞬間
おっさんの雰囲気が少し変わる
「・・・ビナーか。」
おっさんは電話越しに、その名前を聞いて少し黙った
『"やっぱり知ってるんだね。"』
「まぁな、それにビナーはアビドス砂漠に昔からおるやつや。」
『"昔から・・・?"』
「ああ。」
おっさんは椅子にもたれながら、ため息を吐く
「先生もしっとると思うけど、アビドス砂漠っちゅう場所はな。」
「見た目以上に、色々埋まっとる。」
「昔の船やら、訳分からん技術やら。キヴォトス全域が射程の超兵器やら。」
「その中の一つが、あいつや。」
『"ビナーについて、詳しいの?"』
「詳しいっちゅうほどでもないけどな。」
「少なくとも、存在自体は前から把握しとる。」
「大型の掘削機械。」
「普段は砂漠の奥深くに潜っとって、周期的に活動する。」
「昔からアビドスでは、危険対象として扱っとる存在や。」
『"そうだったんだ・・・。"』
「せやから。」
「おっさんの探知魔術には、最初から登録済みや。」
『"登録済み?"』
「そらそうや。」
「アビドスの市街地に、あんなデカいもんが向かってきたら洒落にならん。」
「土地管理しとる側が、知らんぷりするわけにもいかんやろ。」
「常時監視対象や。」
「今どこにおるかも、把握しとる。」
『"今も?"』
「ああ。」
即答だった
「今の現在位置は・・・」
「アビドス砂漠のオアシス跡らへんやな。」
「活動周期を考えると、近いうちに地表へ出る可能性が高い。」
『"そこまで分かるんだ・・・。"』
「まあな。」
「おっさん、これでも一応アビドスの治安維持側やからな。」
「街に被害が出る可能性があるもんくらい、監視しとるわ。」
『"それなら・・・"』
『"ビナーの調査に協力してもらえる?"』
「もちろんや。」
返事は迷いなく返ってきた
「むしろ。」
「先生から頼まれんでも、そろそろ確認しようと思っとったところや。」
『"活動期だから?"』
「せや。」
「いつもの周期なら、そろそろ動き出す頃やからな。」
「ただ。」
おっさんは少し声を落とす
「今回の問題は。それだけやない。」
『"・・・?"』
「デカグラマトン。」
「ケテルの件もある。」
「ただのビナーの活動やと思っとったら、話が変わってくる。」
『"うん。"』
「先生、行くんやろ?」
『"うん。"』
「なら案内するわ。」
「探し回る必要なんかない。」
「場所は分かっとる。」
「そっちの準備が整い次第すぐにでも連れて行けるで。」
「ビナー君がおる場所までな。」
『"ありがとう、アンラさん。"』
~数日後~
【アビドス自治区・アビドス外郭駅】
久しぶりに見る駅前は
昔とは比べ物にならんくらい、人の流れが出来ていた
昔は列車が止まっても
降りる人間なんて、ほとんどおらんかった
アビドスに用事がある奴なんて
借金取りか
アビドス生か
物好きな観光客か
その程度やったからな
けど今は違う
駅前には店が並び
荷物を抱えた人間が歩き
観光客らしい連中までおる
「・・・ほんま。」
「変わったもんやなぁ。」
思わず呟く
昔のアビドスを知ってる身としては
未だに少しだけ現実感がない
そんな事を考えていると
駅の出口から二人分の姿が見えた
一人は見慣れた姿
先生
そしてもう一人
「・・・あれがエイミか・・・」
俺が知ってる原作で、ミレニアムの特異現象捜査部に所属している
軽装
というか
見ているこっちが心配になるような格好をしている
(いや、神秘の副作用で体温が滅茶苦茶高いのはしっとるが・・・)
「先生ー。」
車から降りて手を振る
「"アンラさん。"」
先生もこちらに気付いて近付いてくる
「あの時の船以来やな。」
「"そうですね。"」
「ほんで。」
おっさんは横を見る
「そっちがエイミちゃんか。」
「初めまして。」
エイミは軽く頭を下げる
「特異現象捜査部所属、エイミ。」
「今日はよろしく。」
「おう、よろしくな。」
「とりま、早速向かうさかい、乗ってくれ。」
後ろを見る
そこには
祈願屋で使っている大型車両
元々は輸送用やったもんを
砂漠走破用に改造したオーバーランドスタイルの車
大型タイヤ
追加装甲
簡易キャンプ設備
そして内部には魔術刻印式の補助機構まで積んである
「相変わらず凄い車ですね・・・」
先生が少し苦笑する
「そらな、アビドスの砂漠舐めたらあかんで?」
「普通の車やったら、途中で砂に埋まるわ。」
三人が乗り込む
エンジンをかけ低い振動が響く
都市部の明かりを抜け
少しずつ砂しかない景色へ変わっていく
「アンラさん。」
エイミが窓の外を見ながら言う
「昔から、ここに住んでるの?」
「ん?あー・・・」
「ここに流れ着いたんは、二年前やから、」
「アビドスの連中からしたらおっさんは新参もええとこやで。」
「それなのに、治安維持部隊に入ってるの?」
「まぁ、アビドスに流れ着いた時に会った奴との契約でな。」
そんな世間話をしながら車はさらに砂漠の奥へ進む
街の明かりは完全に消え
代わりに月明かりだけが砂を照らしている
しばらく走ったところで
車内の空気が少し変わる
【アビドス砂漠・オアシス跡地】
おっさんが前方を見る
「・・・だいぶ近いな。」
「"ビナー?"」
「せや、もうすぐや。」
「ここから先は。」
「昔のアビドス大オアシスの跡地。」
「今はもう水なんか一滴もあらへんけどな。」
速度を落とす
砂煙が舞う
遠くに
崩れた建造物の影が見える
「先生。」
「エイミちゃん。」
車を止める
「ここから先は歩きや。」
扉を開ける
冷たい夜の砂漠の空気が入り込む
「ビナー君は。」
「この先におる。」
おっさんは砂の向こうを見る
眠りから目覚めようとしている大型掘削機械
「・・・さて、どんな理由でまた起きたんか。」
「確認させてもらおか。」
エイミは機材を展開しながら、周囲の観測を続けている
先生も少し離れた場所で、その様子を見守っていた
その横で
おっさんは砂の上に立ちながら、静かに目を閉じる
「・・・さて。エイミちゃん。」
「ちょっと確認ええか?」
「なに?」
「ビナー君。」
おっさんは砂漠の奥を見る
「今回は調査目的やろ?」
「せやったら、どう調理したらええか聞いとかんとな。」
「調理?」
エイミが首を傾げる
「"言い方。"」
「あぁ、すまんすまん。」
「おっさん、鉄火場やと昔からこういう言い方する癖あってな。」
「要するにどこまで壊してええかって話や。」
エイミは少し考える
そして
「欲しいデータは、全行動パターン。」
「攻撃方法、防御性能、再生能力、内部構造。」
「全部」
即答だった
「・・・なるほどな。」
おっさんは口元を歪める
「・・・全部か。」
「そらまた、ええ注文するやん。」
「じゃあ。」
おっさんは軽く首を鳴らす
「殺さん程度に。」
「全身くまなく。」
「しばきまわそか。」
「「"・・・"」」
一瞬
空気が止まる
「"アンラさん。"」
先生が少し引いた声を出す
「"それ言い方だけ聞くと完全に悪人なんですけど・・・"」
「ん?」
おっさんは振り返る
「いやいや、ちゃうちゃう。」
「ちゃんと殺さんから。」
「"そこじゃないです・・・"」
先生の言葉に、エイミも少しだけ頷く
「・・・怖い。」
「褒め言葉として受け取っとくわ。」
そんな会話をしていた
次の瞬間、砂漠が揺れた
砂が盛り上がり
何かが出てこようとしていた
「来るで。」
おっさんの声が落ちる
次の瞬間
巨大な機械の身体が砂の中から姿を現した
巨大な蛇のような胴体
幾重にも重なった装甲
アビドス砂漠に眠っていた超大型掘削機械
=====BINAH=====
《対象確認》
《侵入者排除》
機械音声が響く
「は?喋った?お前もかよ・・・」
(まぁ今はそれどころやないか・・・)
エイミが記録を開始する
そしてビナーが動くより早く
おっさんの姿が消えた
「え?」
エイミが声を漏らす
次の瞬間
轟音
ビナーの頭部が
上空へ跳ね上がった
「・・・。」
一瞬遅れて理解する
蹴った
ただ蹴っただけ
それだけで数百メートル級の巨体が揺らいだ
「まず一発目。」
おっさんは空中にいた
「頭の位置修正。」
「ほんで。」
空中で
足場など存在しない場所で
まるでそこに床があるかのように
一歩踏み込む
そして右拳を握る
「不浄の右手」
次の瞬間
拳が
ビナーの胴体へ叩き込まれる
爆発ではない
ただの衝撃
――否
それだけではなかった
拳が触れた瞬間ビナーの装甲内部へ
魔力が走る
外側から破壊するのではない
内部へ入り込み
存在する構造そのものを書き換えていく
「――。」
ビナーの機械音声が一瞬途切れる
装甲、内部フレーム、駆動部
その全てが本来あるべき形から強制的に変化していく
金属で出来た身体がまるで生き物のように軋む
「創造魔術ってのはな。」
アンラが呟く
「何かを作るだけの魔術やない。」
「その本質はそこにあるモンを別の形にする魔術や。」
次の瞬間
ビナーの内部で異常な変化が起きた
装甲板の一部が変形していく
本来なら防御のために存在する装甲が
鋭利な刃へと形状を変えていく
一本
二本
十本
百本
無数の刃が
ビナー自身の身体を突き破るように生えていく
それは武器ではない
後から刺したものでもない
ビナー自身の身体だったものが
そのまま凶器へと作り替えられていた
ビナーの巨体が
砂漠を滑る
大量の砂煙が舞い上がり、その姿を隠した
しかし
その砂煙の中から
機械の悲鳴のような音が響く
《――》
《損傷確認》
《外装構造に異常》
《自己修復システム起動》
砂の中で
ビナーが身体を震わせる
その巨体
その装甲
その全てが
無理矢理に変形させられた状態で
なお、動こうとしていた
「へぇ。」
空中から見下ろしていたアンラが
少し感心したように呟く
「やっぱ頑丈やなぁ。」
「普通なら、これで止まるんやけど。」
アンラが手を開く
すると、ビナーの身体から伸びていた無数の刃が
ゆっくりと崩れ落ちていく
「まぁ、データ欲しいんやったら。」
「この程度で終わらせるわけにもいかんか。」
その様子を見ていたエイミが
記録端末を確認する
「・・・。」
「アンラさん、今の攻撃?」
「ん?」
アンラは首を傾げる
「せやで?」
「・・・。」
エイミは無言で記録端末を見る
「部長に提出するデータ説明が難しい。」
「何が?」
「ビナーが。」
「自分自身の装甲に刺されて倒れたって書くしかないから。」
「まあ、そうなるわなぁ。」
アンラは苦笑した
その時
「"・・・。"」
先生は言葉を失っていた
今の一連の動き
ただ攻撃した、その一言では片付けられない
巨大な機械をまるで玩具のように扱っている
そんな光景だった
「"アンラさん。"」
「"本当に調査してるだけだですよね?"」
その問いに
おっさんは――答えなかった
何故ならビナーが再び動き出したからだ
砂煙の中巨大な身体がゆっくりと起き上がる
展開される装甲、開かれる無数の発射口
ミサイルポッド
「お。」
おっさんの口元が少し緩む
「偉いねぇ逃げずに向かってくるやん。」
次の瞬間、大量のミサイルが放たれる
砂漠の空が埋め尽くされる
だがアンラは動かない
空中に静止したまま右手を掲げる
「数。」
「一、二、三・・・」
飛来するミサイルを眺めながら
淡々と数える
「全部で三十六発か。」
その瞬間おっさんの周囲の空間が歪む
虚空が裂け、そこから現れたのは
三十六本の西洋剣
「ほな、こっちも同じ数でやったろけ。」
おっさんが軽く手を振る
剣がミサイルへ向かって飛んでいく
一本
また一本
正確に
寸分違わず
全てのミサイルを迎撃していく
爆炎が砂漠を染める
そしておっさんはそのまま
右手を下へ振り下ろした
「ほい。」
瞬間
先ほど投げた剣その全てが
軌道を変えビナーへ突き刺さる
装甲表面、内部機構一切関係なく
そして
「――。」
【パチン】
指を鳴らす
三十六回の連続爆発
ビナーの全身で剣が爆ぜる
巨体が沈み大量の砂が舞い上がった
「・・・。」
煙
砂
何も見えない
だがおっさんだけは見ていた
「来るな。」
砂の奥
巨大な口が開く
その口内で大量のエネルギー反応
ビナーの主砲
「先生。」
「ちょっと離れとき。」
次の瞬間
光が走った
ビーム
砂漠の砂が高温で溶けていく
ビナーの口から放射されたの巨大な一撃
その前でアンラは右手をビナーに向ける
人差し指、中指、その二本だけを伸ばす
そして
小さく呟いた
「――
黒い光
一瞬
闇のような閃光が走った
ビナーのビームを正面から飲み込み相殺し、
そしてそのまま突き抜けた黒い光はビナーの頭部を貫通した
静寂
数秒
《――》
ビナーの駆動音が途切れ
巨大な身体がゆっくりと砂に沈む
砂漠に再び静寂が戻った
「"・・・。"」
「・・・。」
エイミは記録端末を持ったまま固まっていた
先生もシッテムの箱を持ったまま同じく固まっていた
「"・・・アンラさん。"」
ようやく先生が口を開く
「"今の・・・調査?"」
「ん?」
おっさんが振り返る
「せやで?ちゃんとデータ取れたやろ?」
「"いや。"」
先生はビナーを見る
頭部に空いた巨大な穴
全身に刻まれた破壊痕
「これ・・・データ取れる状態なのかな・・・?」
「あー・・・」
おっさんが固まる
「"・・・"」
「ちょっと張り切りすぎたか?」
エイミは無言で記録端末を見る
表示されているデータ
戦闘時間、僅か数分
取得項目、全行動パターン
「・・・これは。」
「ミレニアムでも解析に時間が必要。」
「"うん。"」
先生が遠い目をする
「"アンラさん次から。"」
「"調査って言葉の意味を。"」
「"少しだけ考えてほしいかな。"」
「ははは、善処するわ。」
おっさんは苦笑した
砂漠には沈黙したビナーだけが残っていた
よし!
ビナー君GEKIHA!
まぁビナー君生きてるんですけどね。
ちゃんとこっからでも再生して一ヶ月くらいしたら再稼働します。
そして、久しぶりに先生視点と、おっさん視点のクロス。
この書き方したのアビドス編以来でこれであってたか、ちょっと不安。
ちょっと今回はあまり書く事も無いので、
アンラがやった黒い閃光と右ストレートの解説をします!
ということで!
おっさんプチ情報!
まず【魔導:不浄の右手】っていう右ストレートですね!
これ作中では大分マイルドな使い方をしています!
本来は代償魔術と創造魔術の併用が前提なのです!
まぁどうなるかと言うと、
代償魔術で相手の身体の中身を代償に、
相手の身体を素材にした創造魔術の剣に呪いなど、様々な効果を付与します!
なので、これに殴られたのが人間だった場合ですと、主要臓器が代償で持って行かれ、
筋肉や骨といったものが武器の材料に徴収されます。
そして、コレをぶん殴って吹っ飛ばす過程でやるので、人間なら吹っ飛んでワンバンドする頃にはハリセンボンになってます。
そして、この状態でフィンガースナップをすると相手の体内でこの剣が爆散します。
つまり人を散弾式呪い爆弾に変える技です。
あ、もちろん、この世界で生徒になんか打ちませんよ?!
そして、お次にビナー君に風穴開けた【魔術:レイ】ですね。
ぶっちゃけ滅茶苦茶簡単な奴です。
魔力圧縮砲です。
なんか聞き覚えありますよね?
そう、神秘圧縮のアレです。
でもアンラの閃光は赤いやんって思った方、鋭いです。
以前言った色付き閃光の先がこの黒い閃光になります。
色付き閃光は神秘や魔力を圧縮する過程で色がどんどん濃くなっていきます。
なので最初は極めて白に近いそれぞれの特色、
それが圧縮され濃度が上がるにつれ、色が濃くなり、最後に到達するのが黒く染まります。