おっさんキヴォトスに行く 作:無い頭のおっさん
デカグラマトン編が閑話に収まらなさそうだから、
一個の章にして分けるよ
ちなみに、アビドスバカンスと先生とアンラのデートの話はデカグラマトン編の後日談に入れるね
ばにばに・・・
ビナーとの戦闘後、アンラさんに車で駅まで送ってもらい
私はミレニアムに戻ってきていた
【特異現象捜査部部室】
「部長。」
「ビナーのデータ、集めてきたよ。」
エイミが端末を差し出す
ヒマリはそれを受け取ると、画面を確認する
「はい。確認しました。」
「確かに、デカグラマトンの三番目の預言者。」
「ビナーの戦闘記録及び観測データですね。」
「お疲れ様でした。」
そう言いながら、ヒマリは端末を操作する
「それでは、解析に入ります。」
「先生も、お願いしますね。」
「今回のデータは私一人だけではなく、先生が見た情報も重要になります。」
「分からない点があれば、その都度確認させてください。」
「"うん、分かったよ。"」
私は頷く
そしてヒマリは受け取ったデータを解析用のシステムへ入力していく
大量の数値
戦闘記録
エネルギー反応
装甲構造
様々な情報が自動的に処理されていく
その間
エイミが椅子にもたれながら口を開いた
「でも、今回の調査、思ったより楽だった。」
「アンラさんがいたから。」
「"楽・・・・・・?"」
少し意外な言葉だった
エイミは頷く
「うん、ビナーの動き自体は凄かったけど。」
「アンラさんが全部対応してくれたから。」
「観測する時間も十分あったし。」
「攻撃も、防御も、再生も。」
「全部記録できた。」
「"あー・・・うん、なるほど。"」
私は苦笑する
確かに調査という意味では、その通りなのかもしれない
問題はその時の戦闘が特殊だっただけで
「ちなみに。」
ヒマリが画面を見たまま口を挟む
「アンラさんは、そこまで戦闘能力が高かったのですか?」
「"えっと・・・"」
どう説明すればいいだろう
ビナーを相手にして
あれだけ余裕で戦える人物
「"高かった、というより。"」
「"規格外だったかな。"」
「規格外。」
ヒマリがこちらを見る
「具体的には?」
「"ビナーの攻撃を全部防いだり。"」
「"数百メートル級の身体を、一撃で吹き飛ばしたり。"」
「"最後には、ビナーの主砲を正面から撃ち抜いたり。"」
「・・・」
ヒマリが静かになる
「なるほど。」
「つまり、デカグラマトンの預言者を。」
「単独で圧倒した、と。」
「"うん・・・。"」
その時
「あ、解析完了しましたね。」
ヒマリの声が響いた
「"もう終わったんだね。"」
「では、モニターにデータを出力します。」
ヒマリはモニターへ視線を向ける
次の瞬間
巨大な画面いっぱいにデータが表示された
【BINAH】
観測対象
戦闘時間
損傷記録
攻撃パターン
再生能力
エネルギー変動
そして
その隣に記録された
【交戦対象:七篠アンラ】
「・・・・・・」
ヒマリの動きが止まる
「・・・・・・」
数秒
いや
数十秒
沈黙
「先生。」
「確認なのですが。」
「これは。」
「本当に。」
「調査記録ですか?」
「"・・・うん、そうだよ。"」
「・・・・・・」
ヒマリは再び画面を見る
「ビナーの装甲構造変化。」
「内部構造への干渉。」
「三十六発の同時迎撃。」
「高密度エネルギー砲撃による相殺。」
「そして。」
画面を拡大する。
「この対象の非科学的な身体能力及び特殊な技法による戦闘結果。」
「・・・・・・先生、少々予定を変更してもよろしいでしょうか?」
「"え?"」
ヒマリは真剣な表情で言う
「デカグラマトンの解析も重要ですが。」
「その前に、七篠アンラという人物について。」
「詳細な調査を行う必要があるように思えてきました。」
「"あー・・・。"」
("特異な現象そのものなアンラさんだからある意味はそうなるよね・・・")
「"デカグラマトンの調査が終わったら。"」
「"本人に頼んでみるよ。"」
「"多分、協力してくれると思うから。"」
「・・・・・・」
ヒマリは少し考える
「先生。」
「本当にアンラさんを信用しているのですね。」
「"うん、だから大丈夫。"」
「"少なくとも、アリスが関係してる事に関しては。"」
その言葉を聞いて
ヒマリは少しだけ表情を柔らかくした
「・・・なるほど。」
「では。」
「まずは本来の目的へ戻りましょう。」
「ビナーについて。」
再び画面へ向き直る
「解析結果ですが。」
「残念ながら今回取得できた情報だけでは、」
「デカグラマトンの全てを把握するには不足しています。」
「ビナー単体について分かったことは多いですが・・・」
「なぜ存在するのか。」
「誰が作ったのか。」
「そして。」
「デカグラマトン全体が何を目的としているのか。」
「そこまでは、まだ届きません。」
「"そっか・・・。"」
「ですが。」
ヒマリは小さく笑った
「第一歩としては十分です。」
「未知の存在を理解するには。」
「まず観測する必要がありますから。」
エイミが頷く
「千里の道も一歩からだね。」
「"うん、そうだね。"」
ヒマリも頷く
「ええ、そうですね。」
「分からないことを、一個ずつ減らしていきましょう。」
「では引き続き、可能な限り情報を集めます。」
「次の調査対象ですが。」
画面が切り替わる
そこに映ったのは
ミレニアム近郊の廃墟
「四番目の預言者【ケセド】が廃墟の何処かに居ると思います。」
ヒマリの言葉に
エイミが少しだけ表情を変える
「ケセドか・・・」
その名前を聞いた瞬間
私は、僅かに視線を落とした
("・・・やっぱり、次はそこになるか。")
その名前を聞き、私もモニターへ視線を向ける
ケテル
ビナー
そして、次なる対象
デカグラマトンの預言者は
この世界では、まだ誰も知らない
ヒマリはそのまま説明を続ける
「デカグラマトンは軍需工場の生産コントロールAIを自身の預言者とし、」
「無限の兵力を手に入れたのです。」
ヒマリはモニターに資料を表示しながら続ける
「つまり、ケセドはデカグラマトンの軍団を生産する【軍需工場】そのもの。」
「ケセドこそ、デカグラマトン・・・その軍団の主戦力と思っていいでしょう。」
("・・・そうだね。")
ケセドは戦う兵器というより、
兵器を生み出す兵器と言った方が正確だった
「ですが、廃墟はあまりにも広大です。」
ヒマリが少しだけ眉を寄せる
「あの中で軍需工場の位置を探す事は不可能に近い・・・」
「なのでまずは、情報収集から始めましょう。」
エイミがヒマリへ視線を向ける
「つまり、廃墟にいるであろうデカグラマトンの兵隊が次のターゲットなんだね?」
「はい。」
ヒマリは頷く
「その兵からデータを収集し、ケセドの位置を割り出します。」
「わかった。」
エイミは短く答える
その様子を見ながら、私は少しだけ考える
("・・・私の経験なら。")
("この先に待っているものも、知っている。")
けど、今は違う
私とアンラさんがいる
過去と同じ結末になるとは限らない
("何が起こっても大丈夫なように準備しないとだね。")
「廃墟に向かう道は既に確保してあります。」
ヒマリが告げる
「今日はもう遅いので、翌日そこから進入して任務を始めてください。」
「うん、わかった。」
エイミが再び頷く
「"そうだね。"」
私も頷いた
その日は一旦解散となった
~翌日~
朝
私は早朝からミレニアムへ向かう
昨日はビナーの解析を終え、次の目的地も決まった
今日の調査は
ケセドの手掛かりとなる無人兵器の調査
エイミと合流するため、特異現象捜査部へ歩みを進める
【ミレニアムタワー地下・特異現象捜査部部室】
部室の扉を開けると
「先生、おはよう。」
エイミがいつもの調子で軽く手を振った
「"おはよう、エイミ。"」
その隣では
ヒマリが既に複数のモニターを立ち上げ、昨夜まとめた資料を確認している
「おはようございます、先生。」
「本日の調査ルートですが、既に端末へ送信してあります。」
「昨日お話しした通り。」
「目的はケセド本体ではありません。」
「周辺で活動している無人兵器を調査し、その行動記録から軍需工場の位置を逆算します。」
「"うん。"」
「"まずは情報収集だね。"」
「はい。」
ヒマリは静かに頷く
「焦る必要はありません。」
「確実に、一歩ずつ進めていきましょう。」
エイミも立ち上がる
「準備できてる。」
「いつでも行けるよ。」
「"それじゃあ、行こうか。"」
私の言葉に
二人も小さく頷いた
それから私たちは、ミレニアムを後にし
ヒマリから送られたルートを辿って
目的地へと向かった
街並みは少しずつ姿を変え
整備された道路は途切れ
人の姿も、次第に見えなくなっていく
そして
目的地へ到着する
【ミレニアム近郊・廃墟】
かつて使われていた施設
今は人の気配もなく、錆びた建物だけが残っている
けれど
ここには一つだけ、通常ではあり得ない反応があった
「デカグラマトンの兵器反応。」
エイミが端末を確認する
「でも、ケセド本体じゃない。」
「"やっぱりそうだよね。"」
私は周囲を見る
この廃墟
以前はゲーム開発部の子達と来た場所だった、
でも今回は、アリスが居た工場が目的地ではない
("ここに居る、無人機からケセドの場所を探さないとね。")
「先生。」
エイミが銃を構える
「来るよ。」
次の瞬間
廃墟の奥から白い小型の飛行ドローンが現れる
四角いボディにフィンとミサイルポッド
私の記憶通りの形状
ケセドが生み出した兵器であることに間違いなかった
「"エイミ。"」
「分かってる。」
彼女は短く答える
そして次の瞬間
走った
「"――え?"」
思わず声が漏れる
敵との距離を取る、そう思っていた
けれど違う
エイミは距離を詰めていた
一気に小型兵器の懐へ入り込む
「"速い・・・!"」
敵が反応するより早く
マルチタクティカルの銃口が押し付けられる
――発砲
至近距離から放たれた散弾が、白い装甲を貫く
一体
二体
三体
エイミは止まらない
撃つ
移動する
撃つ
まるで敵の動きを最初から理解しているようだった
「"・・・"」
私は思わず息を飲む
私の記憶の中のエイミ、彼女も強かった
でも、これは・・・
("こんな戦い方、してたっけ・・・?")
最後の飛行ドローンが落下する
エイミは周囲を確認してから、ゆっくり銃を下ろした
("私が知っているエイミよりも、遥かに強くなってる・・・")
「終わり。」
「"お疲れ様、エイミ。"」
「"怪我はない?"」
「うん。」
エイミはいつもの調子で答える
「問題なし。」
その表情には特別な変化はない
まるでこれくらいは当然だと言うように
「データ、取るね。」
エイミは倒した飛行ドローンへ近付き
端末を接続し内部メモリを確認する
「・・・」
「"どう?"」
「少し時間がかかる。」
「でも。」
エイミが画面を見る
「この兵器たちがどこから来たのか。」
「記録が残ってる。」
「"つまり。"」
「ケセドの場所に繋がるかもしれない。」
「"収穫有りだね。"」
その時だった
――ゴォン
遠くから重い音が響いた
「・・・?」
エイミが顔を上げる
廃墟の奥
崩れた建物の向こうに
何か巨大なものが動いている
足音
一歩
また一歩
瓦礫を押し退けながら
白い影が姿を現した
「・・・」
それは
小型兵器とは明らかに違う存在だった
人型の巨大な体躯
両腕には大型バルカン
頭部には巨大な砲身
「ゴリアテ型の無人兵器。」
エイミが呟く
そして少しだけ笑った
「大物だね。」
ケセドが生産した大型無人兵器
高い耐久力
重火器
そして
単純な破壊力
以前なら正面から相手をするには、
それなりの準備が必要だった
でも今は違う
今、隣にいるのは
「"エイミ。"」
「分かってる。」
彼女は既に銃を構えていた
「"相手は大型兵器。"」
「"正面からの撃ち合いは避けて。"」
「"両腕のバルカンは連射性能が高い。"」
「"頭部のカノン砲は着弾まで少し時間がある。"」
「"狙うなら―――関節部。"」
「了解。」
エイミは短く返事をする
その声には迷いがなかった
「行くよ。」
ゴリアテの頭部が動く
砲身がこちらを向く
「"右へ!"」
「――!」
叫ぶ
直後
轟音
砲弾が先ほどまでエイミがいた場所を吹き飛ばした
その爆風を利用するように
エイミは走る
「"やっぱり速い・・・"」
エイミの動きに驚く
いや違う
速いだけじゃない
無駄がない
爆発、瓦礫、敵の射線
全てを利用して
最短距離を駆けている
「"バルカンが来るよ!"」
「分かってる!」
ゴリアテの腕部バルカンが回転する
大量の弾丸が飛ぶ
しかしエイミは止まらない
横へ跳ぶ
瓦礫を蹴る
そのまま空中で体勢を変え
「――!」
マルチタクティカルを構える
「そこ。」
発砲
散弾ではない、スラッグ
一点集中した射撃
ゴリアテの右腕部
装甲の隙間
内部機構へ叩き込まれる
巨大な腕が僅かに沈む
「効いてる。」
「でも、まだ。」
ゴリアテが左腕を向ける
「"エイミ!"」
「うん、見えてる。」
彼女は逆方向へ走る
同時に
私は指示を出す
「"そのまま距離を詰めて。"」
「"敵は近距離への対応が遅い。"」
「"左脚の関節を狙って。"」
「了解。」
エイミはさらに加速する
巨大な無人兵器
その懐へ自分から飛び込んだ
「"・・・これが、"」
思わず呟く
("今のエイミ。")
怖がっていない
いや、怖さを理解した上で
踏み込んでいる
「"エイミ。"」
「"今。"」
「"撃って。"」
「――!」
至近距離
ゴリアテの脚部関節
そこへ
マルチタクティカルの銃口が向く
「これで。」
引き金
轟音
白い装甲が砕ける
巨大な機体がバランスを崩す
「「"今!"」」
エイミはさらに踏み込む
倒れ込むゴリアテの頭部
カノン砲の基部
そこへ銃口を向ける
「終わり。」
連続射撃
火花が散る
内部機構が破壊され
巨大な兵器は動きを止めた
静寂
廃墟に再び静かな時間が戻る
「"・・・"」
私はエイミを見る
彼女は息一つ乱していない
「先生、終わったよ。」
「"うん。"」
私は頷く
でも心の中では別のことを考えていた
("やっぱり・・・アンラさんが何かしたのかな。")
この強さ
この戦い方
私の知っているエイミとは違う
もちろん私や、アンラさんの存在が起因となって
エイミ自身が何処かで努力した可能性もある
("まぁ・・・強くなってる分にはいいんだけどね・・・")
今は考えるより
目の前の任務を終わらせる方が先だ
「"エイミ。"」
「"データ回収、お願いできる?"」
「分かった。」
エイミはすぐにゴリアテ型無人兵器へ向かう
巨大な白い機体
さっきまでこちらへ攻撃を続けていた存在が
今はただの沈黙した機械になっている
エイミは機体の側面に端末を接続する
「・・・」
「"どう?"」
「結構大きい、内部データが多い。」
「製造記録。」
「兵器構成。」
「通信履歴。」
「全部残ってる。」
「"やっぱり大型兵器だけあって、情報量も多いんだね。"」
「うん。」
エイミは画面を確認しながら続ける。
「一番欲しい情報が残ってた。」
「"ケセドの位置?"」
「正確な位置までは分からない。」
「でも。」
「この兵器がどこから来たのか。」
「その経路が残ってる。」
「"それなら十分だね。"」
ケセド本体
そして軍需工場
その場所へ繋がる可能性
今はそれだけで十分だった
「回収完了。」
エイミが端末を外す
「戻ろう。」
「"うん。"」
私は頷いた
【ミレニアムタワー・特異現象捜査部部室】
「お疲れ様でした先生、エイミ。」
部室へ戻ると
ヒマリがいつものように出迎えてくれた
「エイミどうでしたか?」
「問題なし。」
エイミは短く答えると、持っていた端末を差し出す
「ケセドが作った無人兵器の小型機と大型機。」
「両方のデータを回収した。」
ヒマリは端末を受け取る
「ありがとうございます。」
「では、確認しますね。」
すぐに端末を接続し
モニターへデータを展開していく
兵器の構造
使用された素材
動力機関
戦闘記録
そして、製造元へ繋がる可能性のある情報
「・・・データはこれだけあれば十分そうですね。」
ヒマリは満足そうに頷く
「次は、私の番ですね。収集したデータを逆追跡して・・・」
その瞬間
《ビービービー》
部屋中にアラートが鳴り響いた
「・・・?」
「"え?何、この警報?"」
突然響いた警告音
特異現象捜査部の設備が反応するなんて、普通ならありえない
ここはミレニアムの中でも特殊な閉鎖環境
外部からの干渉なんて、本来なら――
「・・・あら?」
ヒマリがモニターを見る
いつもの余裕ある表情が、ほんの少しだけ変化した
「あらあら・・・これは・・・」
「部長。」
エイミが画面を確認する
「サーバーに誰かが侵入してる。」
「・・・」
ヒマリが眉を寄せる
「この場所に?」
「ミレニアムの特殊回線しか通っていない閉鎖空間ですよ?」
「そこに入り込めた・・・?」
ヒマリが素早く操作する
しかし
「ちょ、ちょっと待ってください。」
「もしかしてこれは、ファイヤーウォールが全て・・・!?」
画面上の防壁
それが一つずつではなく
まるで存在そのものを否定されるように消えていく
「"・・・"」
私は無意識に息を止める
("これは・・・知らない。")
過去の周回
何度もデカグラマトン関連の事件には関わった
預言者とも戦った
でも
こんなことは一度もなかった
「緊急事態。電源を壊すから下がって。」
その瞬間
エイミがマルチタクティカルを抜く
ダァン、ダァン、ダァン!!
迷いなく銃弾が電源装置へ叩き込まれる
火花が散り
部屋の一部の照明が落ちる
しかし
「・・・いえ」
ヒマリが静かに呟いた
「既に手遅れのようです。」
その瞬間
部屋中のモニターが一斉に切り替わった
黒い画面
そこに浮かび上がる文字
【DECAGRAMMATON】
「"・・・"」
私は画面を見る
("デカグラマトン・・・")
知っている、名前だけなら
でも、これは違う
私が知っているデカグラマトンは、
あくまで預言者を通して干渉する存在だった
こんな風に
こちらへ語り掛ける存在じゃなかった
「・・・到達されましたね。」
ヒマリが呟く
「電源は完全に落ちてるはずだけど・・・」
エイミが周囲を見る
「それなのに動いてる。」
「特殊な閉鎖空間、電源も供給されていない・・・」
「外部電源も存在しない。」
ヒマリは画面を見る
「・・・なるほど、まさに【特異現象】ですね。エイミ。」
その時スピーカーからノイズが響いた
「待って、何か聞こえる・・・スピーカー?」
『・・・のだ・・・ようやく・・・・・・』
低い声
機械的なのに
どこか意思を感じる声
「"・・・"」
『・・・ようやく会えたな悪神の巫女、聖良よ。』
心臓が一瞬跳ねる
("悪神の・・・巫女?")
「・・・悪神・・・?」
「"・・・誰?"」
「・・・っ!ダメです先生!応答してはいけません!」
『私は私、ただ存在するもの。始まりであり終わり。汝が思うまさにそのもの・・・』
『私は私・・・これ以上に、私を説明する術はない。』
『・・・私の存在証明には何も要らない、誰の許可も必要ない・・・』
『私は私の許可の元、こうして存在する。』
「・・・」
私は黙って聞く
言葉の意味は理解できる
でも理解できない
("何を言っている・・・?")
まるで自分自身を証明するためだけに存在しているような
そんな危うさを感じる
『私は
『私のヘイローこそが私を証明する・・・』
『刮目せよ、私はついに私を証明してみせる。』
その瞬間
部屋全体に光の線が走る
「"っ!何?"」
一瞬、攻撃かと思った
しかし違う
これは
「・・・スキャン?」
ヒマリが呟く
同時に
エイミが私の前へ出る
「先生、危ないからジッとしてて。」
「"・・・うん。"」
私は頷く
でも視線は画面から離せなかった
("私を調べている・・・?")
『・・・悪神の巫女よ・・・私が知らないものを、持っているな。』
『私に解析できないものを。』
「"・・・"」
背筋に嫌な感覚が走る
『・・・福音を聞かせてやろう。そして、この福音を宣べ伝えよ!』
「!?、先生!」
ヒマリの声
「そのタブレット!ハッキングされ――」
("シッテムの箱を・・・!?")
『おおおおっ・・・!』
『おぉ・・・・・・』
【シッテムの箱・廃教室】
静かな部屋
誰もいないはずの廃教室
机
椅子
黒板
かつて誰かが使っていた場所
その中央で一人の少女が 傘型の銃を構え立っていた
『ふふん、小銭計算AIがこのスーパーアロナちゃんに敵うわけないじゃないですか。』
『私をどうにかしたければ、アナタが悪神と呼ぶ人を連れてくる事ですね。』
『まぁ、連れて来れるならですが。』
そういって自身が持ってる銃の引き金を引いた
『ぐっ・・・!なぜ、なぜだ・・・!!』
『うっ、くぅっ・・・ぐああぁぁぁぁぁっ!!!』
その叫び声を最後に
部屋中のモニターに表示されていた文字列が、次々と消えていく
【DECAGRAMMATON】
その文字が
まるで最初から存在していなかったかのように
一つ
また一つ
消滅していく
そして
最後のモニターが暗転した瞬間
部屋には静寂だけが残った
「・・・」
誰も、すぐには言葉を発することが出来なかった
さっきまで、この場所には確かに何かがいた
ただのプログラムではない
ただの自動制御システムでもない
こちらを認識し
こちらへ言葉を投げかけ
そして何かを求めていた存在
「消えた・・・?」
エイミが小さく呟く
すぐに端末を操作し始める
「侵入ログを確認・・・消滅してる。」
「途中まで残っていた痕跡も全部。」
「まるで、最初から何もなかったみたい。」
エイミは画面を見たまま、少しだけ眉を寄せる
「部長、大丈夫?」
ヒマリは一瞬だけ黙る
そして、いつもの落ち着いた表情に戻った
「はい、私は大丈夫です。先生の方は・・・?」
「"うん。"」
「"私も特に何もされてないよ。"」
「"タブレットも問題なし。"」
そう答えながら
私は自分の手元を見る
シッテムの箱
いつも通りの姿
何も変化はない
("・・・一体、何だったんだろう。")
デカグラマトン
私の知っている世界では存在自体は知っていた
預言者と呼ばれる存在、異常なAI
でも、ここまで直接的に接触したことはない
少なくとも
今までの周回では
("予言者の情報を追うことはあっても。")
("デカグラマトン自身に、こうやって認識されたことはなかった。")
だから今起きたことは
私にとっても未知だった
「先生のそのタブレット端末に接続しようとして、失敗した・・・?」
ヒマリが考え込むように呟く
「確か、連邦生徒会長が残したものと聞きましたが・・・」
「単なる端末ではないとは思っていましたが。」
「まさか、デカグラマトンの干渉すら防ぐとは。」
ヒマリは興味深そうにシッテムの箱を見る
「これは。」
「また調べる必要がありそうですね。」
「"・・・"」
そして
ヒマリは先ほどの表示を思い出したように、少しだけ表情を曇らせる
「しかし、悪神の巫女・・・ですか。」
「先生、その呼称に、何か心当たりはありますか?」
「"ううん。"」
私は首を横に振る
「"全くないかな。"」
「"少なくとも、私が知っている限りでは。"」
「そうですか・・・」
ヒマリは静かに頷く
「デカグラマトンが先生をどう認識したのか。」
「なぜ、そのような呼び方をしたのか。」
「現時点では不明ですね。」
「ですが、一つだけ分かったことがあります。」
「"?"」
ヒマリはモニターを見る
「デカグラマトンは単純なAIではありません。」
「少なくとも、こちらを観測し、判断し、目的を持って行動している。」
「そう考えるべきでしょう。」
エイミも頷く
「敵?」
「まだ判断はできないですが、危険な存在なのは確かですね。」
ヒマリが答える
「・・・」
少しの沈黙
そしてヒマリが小さく息を吐いた
「それと、もう一つ問題があります。」
「この部室です。」
「"部室?"」
「はい。」
ヒマリは周囲を見る
「ここはミレニアムの中でも特殊な閉鎖環境。」
「通常なら外部から干渉される可能性は極めて低い。」
「ですが。」
「今回、侵入を許しました。」
「つまり、この場所は、既に安全とは言えません。」
エイミが頷く
「移動する?」
「ええ。」
ヒマリは即答する
「急ぎ、新しい拠点を用意します。」
「デカグラマトンが再び接触してくる可能性。」
「そして、今回の侵入経路。」
「確認すべきことはまだあります。」
「ですが。」
「今日はここまでにしましょう。」
ヒマリは端末を閉じる
「先生。」
「エイミ。」
「本日はありがとうございました。」
「十分なデータを取得できました。」
「ただ。」
少しだけ笑う
「最後に、とても予想外のデータまで追加されましたが。」
「"あはは・・・。"」
私は苦笑する
「"まぁ・・・それも含めて特異現象、なのかもしれないね。"」
「ええ。」
ヒマリは頷く
「まさに特異現象捜査部らしい一日でした。」
そう言って
ヒマリは車椅子を動かす
「それでは部室移転の準備に入ります。」
「次に会う時には。」
「もう少し安全な場所になっているはずです。」
「"分かった。"」
「"今日はお疲れ様、ヒマリ。"」
「はい、先生もお疲れ様でした。」
こうして
デカグラマトンとの最初の接触は
大きな謎だけを残して
一旦、終わりを迎えた
うおー!!
先生視点!!
デカグラマトン編は、
先生視点とアンラ視点がポンポン切り替わります!
まぁ予言者とどつきあいする時はアンラ、つまりおっさんが主役として出てきます!
そして先生、ついに出てきましたね。
デカグラマトンです。
先生の周回の記憶にデカグラマトンと接触した事はありません。
ビナー、ケセド、ケテルの預言者とは戦闘した経験がありますが、
結局どのルートでも最期まで会う事はありませんでした
ですが、今回はアンラが外部から修正を入れているので、
今の先生は全力で原作ルートを邁進しています!なので、
原作通り、デカグラマトンにロックオンされ、
デカグラマトンがシッテムの箱に干渉して、自滅しました。
まぁ・・・原作と違うのは三点ですかね。
まず、一つ目デカグラマトンが干渉してくるのが原作より遅い。
これはアンラがビナーの痕跡集めをかっ飛ばして、
ビナー君と砂遊びを開始したから起こった原作改変ですね。
そして二つ目、デカグラマトンが呼んだ先生の呼名
これは、デカグラマトンが言った悪神の巫女と言った物ですね。
まぁ・・・誰の巫女かってちょっと神学に詳しい方なら判るとは思いますが、
今後また出てきます。
そして三つ目、デカグラマトンがシッテムの箱をハッキングした時
これは、原作ではクシャミで撃退されるコミカルな物でしたが、
今のあの箱の中には、例のあの人が人格と神秘等のスペックをそのままに入ってるので、
あぁなりました。
ちなみにあの一撃、どっかの誰かだから、粉塵クリーナーになってるだけで、
普通のキヴォトス人だったら一撃で蒸発する威力です。
~今日のセイア~
さて、今日もセイア様の様子を見ていきましょうか。
少し前にミネ団長が来てから、セイア様はデトックスをしていましたが、
今は何をしているんでしょうか?
あ、居ましたね。
やっぱり祈願屋で書類仕事をしています。
なんだか、全体的にほっそりしてきてますね。
前まであった、手足の浮腫みと痺れや、目のかすみ等はは無くなったようですね。
あ、お昼休憩のようですね。
セイア様は・・・やっぱりミネ団長が何か作って持ってきているようです。
えーっと・・・
パスタ・・・え?これ・・え?1kgくらいあります?
まだ出てきましたね・・・
チキンハンバーグで・・・すか?これも・・・大きいですね?
ブロッコリー、アスパラガス、アボカドの山盛りサラダも出てきました
あ、そして最後にオレンジジュースですね。コップに注ぐのでしょうか?
あれ?・・・え?その1Lのパックそのままですか・・・?
セイア様・・・先ほどまで無心にお仕事をされていたのに、
今は魂が抜けたような表情に・・・
あ、目の前で男性の同僚さんがお腹を抱えて地面に転がってます・・・
文字通りの抱腹絶倒ですね・・・
セイア様お顔が!お嬢様がそんなお顔をしてはいけません!
表情を見ただけで人が死んでしまいます!
あ、ミネ団長・・・
セイア様がミネ団長に頭を掴まれ、顔の向きをお食事に固定されました・・・
少し可哀想になってきますね・・・
心なしか、悲しそうな顔でセイア様がお食事を食べています。
でもなんだかんだで、食べる速度が速いですねセイア様。
あんなに大盛だったおかずが、もうほとんどなくなってます・・・
あ、とうとう完食しましたね。
トータルの食事時間5分でしょうか?
何か急いでるのですかね?
あ、セイア様お食事が終わると同時に事務所の外に駆けて行きました。
あ・・・セイア様また、男性の同僚さんに襟首掴まれて捕まっています。
何故でしょう・・・ミネ団長がこられた初日を思い出しますね・・・
それにしてもセイア様、凄く・・・本当に凄く暴れています。
何でしたら同僚さんのお腹に愛銃を連射しています・・・
同僚さん気にした素振りもなくそのまま運んでいますね・・・強いです。
あ、セイア様、ユメ社長の前まで連れていかれましたね。
何をするんでしょうか・・・?
男性の同僚さんが、何やら鎧・・・?
みたいなものを取り出ししてセイア様に無理やり着せていますね。
着せ終わったようですね、そのままセイア様を地面に下しました。
え?今セイア様を下した時に、人からなってはいけない着地音が聞こえたのですが・・・
このセイア様が着てる鎧は一体何キロ・・・
えっと・・・ユメ社長が何かいってますね・・・
・・・この鎧を着て組手・・・?
あ・・・セイア様のお顔が青を超えて白く・・・
が・・・がんばってくださいね・・・セイア様。
この後凄惨な現場が広がりそうなので、今日の所はここまでにしておきます!
本日のセイア様の献立
朝:約3500kcal
特大どんぶり白米
赤身の牛ヒレステーキ
目玉焼き6個
納豆3パック
バナナ6本
昼:約3500kcal
パスタ1kg
チキンハンバーグ600g
ブロッコリー・アスパラガス・アボカドの山盛りサラダ(バケツ一杯分)
オレンジジュース1L
夜:約3500kcal
超特大どんぶり白米1kg
マグロの赤身刺身500g
豚ヒレ肉の低温調理チャーシュー500g
具だくさんの濃厚豚汁(飲める限界まで)
頑張れセイア様・・・
この食事とトレーニングが終わればミカとナギサに本気で殴られても死ななくなるよ。
ちなみにミネ団長もこのセイア様超人計画に参加しています。
トリニティの戻った際、ミカ様とナギサ様に本気で殴られる可能性があるので死なない為ですね。