おっさんキヴォトスに行く 作:無い頭のおっさん
5.5周年の生放送きましたね
何やらガチャが燃えてます・・・
たすたす・・・
同時投稿一話目!
【アビドス自治区都市部・祈願屋事務所】
いつものように、机の上には山積みになった書類
おっさんはその一枚一枚へ判子を押しながら、盛大にため息を吐いた
「・・・終わらへん。」
「まだ終わりませんか?」
隣の机で同じく書類を片付けていたユメが苦笑する
「終わる気配あらへんなぁ。」
「ついこの前も、防衛システム暴走事件やろ?」
「被害報告に補償申請、監査用の報告書・・・。」
「誰やねん、あんなアホみたいなシステムクラックした奴。」
おっさんは頭を掻きながら天井を見上げる
「はぁ、おっさん機械は完全に門外漢やからなぁ。」
「暴力ならどうとでも出来るんやけど。」
ユメも頷いた
「データそのものを改ざんされると厄介ですね・・・。」
「うーん。」
おっさんは腕を組む
「対策が無い訳やないんよなぁ。」
「まぁ・・・一番確実なんは。」
「キヴォトス全域におっさんの魔力を拡散させて。」
「全人類を常時監視対象に置く方法やな。」
ユメの手が止まる
「・・・え?」
「魔力で全空間を満たすからな。その空間内の動きは全て拾える。」
「動きさえ分かれば口の動きや脈拍から怪しい奴見つけてピックアップできるしな。」
「まぁ、ゴリ押しな方法やけどな。」
あっけらかんと言うおっさん
しかし
ユメは妙な顔になった
「・・・もしかして。」
「二年前に、それやりました?」
おっさんは書類から顔も上げず
「あぁ~・・・」
「うん、やったな。」
「・・・・・・。」
ユメはゆっくり目を閉じ
額へ手を当てる
「だからですか・・・。」
「ホシノちゃんが、あの頃いつも以上にずっとピリピリしてたの・・・。」
「今更全部繋がりました・・・。」
「まぁ、あん時はおっさんも緊急事態やったし。」
「しゃーない、しゃーない。」
おっさんが肩を竦めた――その瞬間だった
バァンッ!!!
「・・・。」
「・・・。」
新品になったばかりの事務所の扉が見事に蹴り飛ばされ
勢いよく開いた反動でまたしても大きく凹んだ
「・・・・・・。」
おっさんはゆっくり視線を向ける
(誰や。)
(またカチコミかいな。)
そこには腕を後ろで組み
にこにこと笑う少女
「やーっと会えましたねぇ。」
「アンラさん♪」
ホシノだった
・・・笑っている
笑っているのだが目だけは全然笑っていない
「・・・。」
おっさんは状況が飲み込めず
とりあえず無難に口を開く
「お、おぉ。ホシノちゃんやないか。」
「久しぶ――」
「アンラさん。」
ホシノがにっこり笑う
「私を放っておいた罰として。」
「数日休暇に行きましょう。」
「・・・・・・。」
おっさんの思考が止まる
「・・・は?」
「休暇です。」
「お休みです。」
「旅行です。」
「・・・。」
(なんや?)
(水族館か?映画か?)
(まぁ、それくらいなら。)
おっさんは軽く頷いた
「まぁええで。」
その瞬間
ホシノの笑みが深くなる
「言いましたね?」
「契約完了です。」
「・・・・・・。」
おっさんの頭上に
大量の【?】が浮かぶ
「少し前にですねぇ。」
ホシノは楽しそうに語り始める
「みんなで水着を買いに行ったんですよ。」
「・・・。」
(水着。)
その単語が出た瞬間
おっさんの本能が全力で警鐘を鳴らした
(嫌な予感しかせんのやが。)
「その時ですね。」
「セリカちゃんが抽選でリゾート施設の招待券を当てまして。」
「人数制限なし、なので。」
「アンラさんも強制参加です。」
「・・・・・・。」
「ちなみに。」
ホシノは親指で隣を指した
「ユメ先輩も私の仲間です。」
おっさんが
ギギギ・・・と首を回す
ユメを見る
すると
ユメは満面の笑みで手を振った
「えへへ~、新しい水着買ったんですよ~。」
「楽しみですね~。」
「・・・・・・・・・。」
(アカン、ユメちゃん完全に仕事モード切って浮かれとる。)
おっさんは静かにホシノへ向き直る
「いやな?最近ちょっと問題抱えとってやな。」
「現場離れられへんのよ。」
内心では
(水着姿の女子高生の中におっさん一人とか何の罰ゲームや。)
(普通に捕まるやろ。)
(社会的に死ぬ。)
しかし
ホシノはにこにこと笑う
「ユメ先輩から聞きましたよ?」
「アンラさん。」
「電子関係は門外漢なんですよねぇ。」
「・・・・・・。」
「つまり、ここに居ても戦力外ですよね?」
「ぐっ。」
痛いところを突かれた
さらに
ホシノは畳み掛ける
「それにさっきアンラさん。」
「"ええで"って言いましたよね?」
「契約です。契約は絶対。なんですよね?」
「・・・・・・・・・。」
おっさんは口を開く
「あー・・・。」
「いやその・・・。」
「ほら、おっさんにも色々――」
言葉が出ない
口だけが
ぱくぱく動く
「・・・・・・。」
数秒後
おっさんは盛大に肩を落とした
「はぁ・・・・・・しゃーない。」
「行くわ。」
「やったぁ。」
ホシノとユメが
パンッ!!
と嬉しそうにハイタッチする
その光景を見ながら
おっさんは全てを悟った
(・・・セイアが今日便利屋んとこ遊び行っとるのも。)
(全部仕組まれとったんか。)
ホシノはさらに笑顔で追撃する
「ちなみにアビドス地区の治安維持業務は。」
「便利屋ちゃん達に依頼済みです。」
「なので安心してください。」
「・・・・・・。」
(根回しまで終わっとる。)
(逃げ道ゼロやな・・・。)
おっさんは机へ突っ伏した
「・・・いつ出発なん?」
「3日後を予定してます。」
おっさんは少し考え
積み上がる書類を見る
「うーん・・・まぁ。」
「期限近い仕事だけ片付けるわ。」
「終わったら追いかけるさかい、先に現地おっといてくれるか?」
ホシノは少しだけ頬を膨らませる
「むぅ・・・。」
しかし
ユメが苦笑した
「ホシノちゃん。」
「流石にこれだけは終わらせないと駄目って書類があってね。」
「期限が迫ってる案件だから。」
「・・・うへぇ。分かりましたよぉ。」
3日後
【祈願屋事務所】
応接用ソファでは
アルがロールケーキを頬張っていた
「ん~!」
「やっぱここのロールケーキは違うわね!」
「ほんっと美味しい!」
「社長、クリーム付いてる。」
「え?」
「取れた。」
「ありがと、カヨコ課長。」
ハルカは感動しながら泣いていた
「こんな美味しいロールケーキ食べていいんでしょうかぁ・・・。」
ムツキは四つ目へ手を伸ばす
「まだあるー?」
「あるわよ。」
その隣ではセイアが静かに紅茶を飲んでいた
(助かった。)
(本当に助かった。)
本来
あのロールケーキは
自分が食べさせられる予定だった
それを全部
便利屋へ押し付ける事に成功したのである
「あぁ・・・平和だ。」
セイアは心底そう思った
そして
おっさんへ視線を向ける
「君は。」
「そろそろ行かなくてもいいのかい?」
おっさんは最後の書類へ判子を押し
伸びをした
「ん~、まぁ。」
「期限近いんは大体終わったさかい。」
「そろそろ行くかねぇ。」
「そうか。」
セイアはふと思い出したように尋ねる
「そういえば。」
「君は水着を持っているのかい?」
「あー。」
おっさんは頭を掻く
そのまま
何もない空間へ腕を突っ込み
ごそごそと探り始めた
数秒後
引っ張り出したのは
たまに履いているのを見る物とほとんど変わらない、ミリタリーショーツだった
「まぁこれでええやろ。」
「・・・・・・。」
セイアは固まる
「君は・・・。」
「服で海へ入るつもりなのかい・・・?」
「別にええやろ。」
おっさんは実に適当だった
「濡れても透けへんし、比較的すぐ乾く。」
「それで十分や。」
「それに自前の魔術で乾かしたら終わりやしな。」
「・・・・・・。」
セイアは深く
深くため息を吐いた
(この男。)
(本当に色気という概念が存在しない。)
おっさんは荷物を肩へ担ぐ
「ほな。数日頼むわ。」
扉を開く
アルが勢いよく立ち上がる
「任せなさい!」
「この便利屋68が完璧にやってあげるわ!」
セイアも静かに微笑んだ
「ゆっくり楽しんでくるといい。」
「こちらは任せておいてくれ。」
おっさんは苦笑しながら手を振る
「ほな。」
そう言って
祈願屋の扉を閉めた
【???・リゾート島周辺】
海風を切り裂き
空を蹴り
音速で飛ぶ
雲を追い越し、青空を一直線に駆け抜けながら
おっさんは懐から取り出したメモを見る
「えーっと・・・。」
「この辺やったよな。」
ホシノから渡された座標
そこへ向かって飛び続けると、やがて小さな島が見えてきた
「お、あったあった。」
速度を落とし、そのまま砂浜へ着地する
ザザッ・・・
白い砂浜
透き通る海
潮風
「・・・ええ場所やな。」
おっさんは周囲を見回した
「リゾート施設がある言うとったけど・・・。」
「どこや?」
首を傾げながら歩き始める
しばらく歩いていると
少し先
海を眺めながら立っている人影が見えた
背中しか見えない
「お、誰かおるやん。」
後ろ姿だけでは誰か分からない
復興対策委員会の誰かだろう
そう思い、おっさんは気軽に声を掛けた
「おーい。」
「ちょっと聞きたいんやけど――」
その人物が
ゆっくり振り返る
「・・・あ。」
そこにいたのは
先生だった
白を基調としたバンドゥビキニ
肩紐のないすっきりとしたデザインが
先生の細身で均整の取れた体つきをより綺麗に見せている
華奢すぎず、それでいて余計な肉付きは一切ない
長い手足と、女性として少し高めの身長
派手な水着ではない
それなのに、不思議と目を引く
上品で、落ち着いた雰囲気
「おぉ。似合っとるやん。」
おっさんは素直にそう思った
その時だった
先生も、目の前の人物を認識する
「"・・・。"」
時間が止まる
「"・・・アンラ、さん?"」
「おぉ、先生も呼ばれとったんやな。」
何事もないように歩み寄るおっさん
先生は固まったまま
顔だけが
じわじわと赤く染まっていく
「"・・・・・・。"」
(え。)
(えっ。)
(ええええええええ!?)
頭の中が真っ白になる
(なんで!?)
(聞いてない!!)
(アンラさん来るなんて聞いてない!!)
思考が完全に停止する
そして
数秒後
暴走した
「アロナぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
先生の絶叫が浜辺へ響いた
シッテムの箱の中で
アロナが飛び上がる
『は、はいっ!?!』
「両腕にシールドーーーー!!」
『えっ!?は、はい!!』
キィィィン――!!
青白い光が走り
先生の両腕へシールドが展開される
「おん?先生?」
「どないし――」
先生が踏み込んだ
ドンッ!!
「え。」
右ストレート
迷いも躊躇もなく
おっさんの左頬へ突き刺さる
ドゴォッ!!
「グブヘェッ!!」
(は?!魔力障壁は!?)
そのまま一メートルほど吹き飛び
砂浜へ転がる
先生はそのまま飛び掛かり
おっさんの腰に跨った
「忘れてくださいぃぃぃ!!」
「待っ」
「今見たもの全部忘れてくださいぃぃぃ!!」
ゴッ!!
ゴッ!!
ゴッ!!
左右交互に拳が飛ぶ
「せ・・・」
ゴッ!!
「先生、おち――」
ゴッ!!
「ぐぇっ!!」
「落ち着いけぇぇぇ!!」
ドゴッ!!
「え、ぐへっ!」
「アロナ!もっとシールド強く!!」
『は、はいぃぃぃ!!』
ゴッ!!
ゴッ!!
ゴッ!!
「せ――ぐふっ!」
「お、おち――げほっ!」
完全にサンドバッグだった
その頃
先生の悲鳴を聞いたホシノ達は
「先生!?」
「何かありました!」
「先生!」
「急ぎます!」
全員が武器を構え
一斉に砂浜へ駆け込んできた
そして
目の前の光景を見る
「・・・・・・。」
先生
おっさんの腰へ馬乗り
顔面を全力で殴打中
「忘れてくださぁぁぁい!!」
ゴッ!!
「ぐべぇっ!」
左右交互に拳を叩き込み続けている
「・・・・・・。」
シロコが一度だけ瞬きをした
「・・・先生、すごく慌ててる。」
セリカも口を半開きにする
「いやいやいやいや!」
「何してんの先生!?」
アヤネも慌てて眼鏡を押し上げた
「止めないと!」
「先生が錯乱してます!」
一方
ホシノだけは数秒ほど固まり
ぽりぽりと頬を掻いた
「うへぇ~・・・先生も大変だねぇ・・・。」
妙に達観したような声だった
「・・・ってのんびり見てる場合じゃないかぁ。」
その横ではユメも目を丸くしていた
「せ、先生!?」
「何があったんですか!?」
事情など分からない
分かるのは
先生が全力でおっさんを殴打しているという事実だけだった
「ホシノちゃん止めるよ!」
「はい。」
ホシノは肩を竦めながら歩き出す
「先生~その辺にしとこうよぉ~」
「今ならまだ事故で済むかもしれないし~」
「事故じゃありません!!」
ゴッ!!
「忘れてください!!」
「ぐへっ!!」
なお殴る
「うへぇ・・・全然聞こえてないや。」
ホシノは困ったように笑うと
後ろから先生の両腕をひょいっと抱え込んだ
「はいはい~」
「ストップストップ~」
「もう終わり終わり。」
「はっ――!」
ようやく先生が我に返る
「・・・え。」
目の前には
さっき自分がボコボコに殴っていたおっさんの顔
そして
自分は
その腰へ跨っている
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
完全停止
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
先生は悲鳴を上げながら飛び退いた
顔は耳まで真っ赤
「わ、私・・・!な、何を・・・!」
「うへへ~。」
ホシノは苦笑しながら頭を掻く
「先生、すっごくテンパってたねぇ。」
「びっくりしたよ~。」
「うっ・・・。」
先生は両手で顔を覆った
穴があれば入りたい
まさにそんな表情だった
その様子を見ていたノノミだけは
「あらあら~♪」
いつの間にかスマホを構えていた
「ちゃんと撮れましたよ~。」
「・・・・・・。」
一同の視線が
ノノミへ集まる
「ノノミ先輩。」
アヤネが静かに言う
「動画ですか?」
「はい♪先生の思い出になるかなぁって。」
「"直ぐ消して!?"」
先生の悲鳴が再び響いた
「うへへ。」
ホシノが肩を震わせる。
「先生、今日は災難だねぇ。」
「先生やなくて、おっさんやろ災難なんは・・・」
砂浜へ転がったままだったおっさんが、むくりと起き上がり
頬をさすりながら苦笑する
「先生。おっさん何か恨まれる事したっけ・・・?」
「・・・・・・。」
先生は何も言えない
言える訳がない
水着姿を見られて
恥ずかしさのあまり
反射的に殴り飛ばしたなど
絶対に口が裂けても言えなかった
そんな何とも言えない空気の中
ホシノが、ぱんっと一度手を叩く
「はいはい~。」
「立ち話も何だし、とりあえず施設の方へ行こっか~。」
「・・・うへぇ、実はちょっと問題もあるしねぇ。」
「おん?問題?」
おっさんが首を傾げる
ホシノは苦笑しながら親指で島の奥を指した。
「まぁ見た方が早いよ~。」
「たぶん、アンラさんもびっくりするから。」
そうして一行は
先生だけが最後尾で顔を真っ赤にしたまま俯き
ノノミに【大丈夫ですよ~】と頭を撫でられながら
リゾート施設へ向かって歩き始めた
ホシノの案内で
一行は島の奥へ歩いていく
砂浜を抜け
少しずつ背の高いヤシの木が増え
その先に――
建物が見えてきた
「・・・おん?」
おっさんは目を細める
遠目にも違和感があった
壁は黒ずみ
屋根は崩れ
窓ガラスはほとんど割れ落ちている
近付けば近付くほど
その違和感は確信へ変わった
「・・・。」
「・・・・・・。」
そして
目的地へ到着する
【リゾート施設】
「・・・・・・・・・。」
おっさんは建物を見上げ
数秒黙り込んだ
「・・・お、おぅ。」
「これ廃墟だよな?」
率直すぎる感想だった
先生も苦笑する
「実は・・・。」
アヤネが申し訳なさそうに説明を始めた
「私達も現地へ来てから知ったんですが・・・。」
「この招待券。」
「宿泊券じゃなくて。」
「この土地一帯の利用権だったんです。」
「・・・・・・。」
「つまり。」
セリカが肩を落とす
「泊まる場所も。」
「電気も。」
「水道も。」
「全部自分達で何とかしろって話なのよ。」
「最低でしょ?」
「なるほどなぁ。」
おっさんは顎を掻いた
「リゾートいうより。」
「復興作業やん。」
「そうなんですよぉ~。」
ノノミが苦笑する
「皆で遊びに来たはずなんですけどね~。」
その後ろでは
先生が未だに顔を真っ赤にしたまま
おっさんへ背中を向けていた
「・・・。」
ノノミはそんな先生の頭を優しく撫でる
「大丈夫ですよ~。」
「時間が経てば忘れてくれますって♪」
「うぅ・・・。」
その様子を横目で見ながら
おっさんは再び廃墟へ視線を向ける
「ふーん、まぁこれくらいやったら。」
「任しとき。」
全員がおっさんを見る
「アビドス都市部の復興で嫌っちゅうほどやっとる。」
「この程度なら一瞬や。」
「え?」
「一瞬・・・ですか?」
アヤネが目を丸くする
おっさんは軽く前へ歩き
施設全体を見渡した
「ほな。」
右手をゆっくり掲げる
静かな声で
魔術を紡ぐ
「魔術術式解凍:アナライズ:範囲指定:半径500m」
ブゥン――――
その瞬間、透明な波紋のような魔力が
おっさんを中心に島全体へ一気に広がっていく
「・・・!」
ホシノの瞳が僅かに揺れた
「うへぇ・・・これ、あの時の・・・。」
ユメも息を呑む
「もう解析を始めたんですね・・・。」
シロコも静かに辺りを見回す
「・・・何か通った。でも見えない。」
一方
セリカ達には何が起きたのか分からない
「え?」
「今何したの?」
数秒
おっさんは目を閉じたまま立ち尽くす
建物、配線、配管、鉄骨、木材、ガラス
コンクリート、砂浜の粒子、地下構造
全てが頭の中へ流れ込む
「・・・よし。」
ゆっくり目を開く
「大体把握したわ。」
そのまま
もう一つ
魔術を唱える
「魔術術式解凍:創造魔術:範囲指定:半径500m」
次の瞬間だった
ゴゴゴゴゴ・・・!!
砂浜が波打つ
「わっ!?」
「地震!?」
ビーチの一角が
まるで底の抜けたように沈み込み
巨大な穴が開く
そして
誰も見たことのない光景が始まった
崩れ落ちたコテージ
腐食した鉄骨
朽ち果てた木材
砕けたガラス
その全てが静かに粒子へと分解されていく
さらさらと、砂へ還るように
「"え・・・。"」
先生だけはその工程を見て理解してしまう
(壊してるんじゃない。)
(これは・・・もしかして。)
原子配列そのものを組み替えている
砂を、木へ、鉄へ、ガラスへ、コンクリートへ
必要な元素へ必要な分だけ
必要な場所へ再構成している
「・・・。」
先生の顔から
少しだけ血の気が引いた
(核分裂と核融合を同時に・・・?)
理解できてしまったからこそ
恐ろしかった
その間にも
建物は次々と姿を取り戻していく
新品同然の木材
透き通る窓ガラス
錆一つない鉄骨
真新しいコテージ
ヤシの木のウッドデッキ
まるで時間が巻き戻るように
島全体が蘇っていく
ザァァァァァ――――
潮風が静かに吹き抜ける
先ほどまで瓦礫だったリゾート施設は、
まるで最初からそこに存在していたかのように、美しく建ち並んでいた
白い壁
磨き上げられた窓
木の香りすら漂ってきそうな真新しいコテージ
「・・・すごい。」
ノノミが目を丸くする
「本当に新品になってる・・・。」
アヤネも感心したように辺りを見回した
「建物だけじゃありません・・・。」
「舗装も、外灯も・・・全部直ってる・・・。」
「ん。」
シロコは足元を見つめる
「砂浜との境目まで綺麗。」
「ふぁ~・・・」
ホシノが眠そうな声を漏らす
「やっぱり見るたび思うけどぉ・・・。」
「アンラさんのこれ、反則じゃなぁい?」
「ふふっ。」
ユメが苦笑する
「私も最初はホシノちゃんと同じことを思ったよ~」
「まぁもう慣れちゃったけどね?」
「そんな褒めんでも何も出ぇへんで。」
おっさんは頭を掻きながら笑った
「ほらほら。せっかくなんだし、中見てみよ~。」
ホシノがのんびり手を振る
「わぁっ!そうですね!」
「行きましょう皆さん!」
ノノミが真っ先に駆け出した
「ちょ、待ちなさいよ!」
セリカも追いかける
「ん。」
シロコも興味津々で歩いていく
アヤネも後を追い
ユメも楽しそうに微笑みながら歩き出した
「ユメ先輩も早くこっちこっち~。」
「はいはい。」
楽しそうな笑い声が少しずつ遠ざかり
やがて、その場にはおっさんと先生だけが残った
潮風だけが静かに二人の間を吹き抜ける
「・・・。」
先生は俯いたまま動かない
「先生?」
おっさんが首を傾げる
その声に、先生は小さく肩を震わせた
「・・・あの。」
少しだけ間を置いて
「さっきは・・・本当に、ごめんなさい。」
深々と頭を下げた
「私・・・急にアンラさんが後ろから声を掛けてくるなんて思ってなくて・・・。」
「頭が真っ白になっちゃって・・・。」
「気付いたら・・・。」
先生はそこまで言って、耳まで真っ赤になる
「殴ってました・・・。」
思い出してしまったらしい。
「あー。」
おっさんは頬をぽりぽり掻いた。
「別にええよ。」
「おっさん、あれくらいじゃ何ともあらへんし。」
「でも・・・馬乗りになって・・・。」
「顔、何回も・・・。」
先生はますます小さくなる
「ははっ忘れてくださいって叫びながら殴っとったなぁ~」
おっさんが思い出したように笑う
「うぅ・・・。」
先生は両手で顔を覆った
「もう、本当に忘れてください・・・。」
「いやぁそれは無理やな。」
「えぇっ!?」
先生が勢いよく顔を上げる
「忘れよう思って忘れられるもんでもないやろ。」
「それに。」
おっさんは先生を見て
あっさり笑った
「先生、水着よう似合っとるやん。」
「・・・・・・。」
先生の思考が止まる
「え・・・。」
「シンプルやけど先生らしい感じやし。」
「落ち着いとってええと思うで。」
あまりにも自然に
何の下心もなく
ただ感想を口にしただけだった
だからこそ
「~~~~~~っ!!」
先生の顔が一気に真っ赤になる
「な、な、な・・・。」
言葉にならない
耳まで真っ赤
視線は泳ぎっぱなし
「せ、先生?」
「な、何でもありませんっ!!」
先生は慌ててくるりと背を向けた
「い、行きましょう!」
「みんな待ってますから!」
そう言って早足でコテージへ向かっていく
「はは・・・アレぐらいの子は難しい年ごろやなぁほんま」
小さく苦笑しながら、その後を歩いていく
そして二人がコテージへ足を踏み入れた
とりあえず最初に注意!
一部分先生のセリフに""が取れてますが!
以前も言った、先生の素の部分のセリフなのでワザトですー!
まぁ前回、今回と先生テンパってる事多かったからね。
今回のてんぱり方はかなりのモンやけど。
そして何気に先生、アンラが常時張ってる魔力障壁を無視して殴りつけてます。
何故でしょうね?
あと、仕事を押し付けられる形になったセイアが何故か生き生きしていた理由ですが、
常に死が見える組手を数日だけでも休めるからですね!
これにつきます!!!うっきうっきの小躍りしたい程内心喜んでます!
そして、作中でずっと触れてこなかった、
アビドスの都市部復興をどうやったかの技法を今回初公開!
答えは簡単!アビドスの砂を使って原子構造を組み替えで物質変換しただけでした!
まぁ理論的には現実でも可能ですよ。
それをやった瞬間に地球が火の海になるだけで。
まぁつまり、アンラはアビドスで何をしてたかと言うと。
都市部に積もった砂を材料に、ビルの再建築から、
電気、上下水、ガスなどの全てのライフラインを再構成して作り直していたという事です。
自分一人でやってるので工賃とか全然かからねーじゃん!って事で、
まぁ実際やってる事は数百年後クラスの科学技術の結晶みたいな事なので、
技術費と人件費が馬鹿な事になって請求されてますね。
何が凄いって、あの都市部全域を復興してもまだ、砂が余ってて、
その砂を全部剣に再変換した事ですね。
どんだけ砂あんねん。
どっかから砂沸いてきてるんちゃうんか。