おっさんキヴォトスに行く 作:無い頭のおっさん
本日同時投稿1/2
お気をつけてー!
【リゾート管理施設】
その巨大な建造物が、砂浜の先に静かに佇んでいる
海風が吹き抜ける中
先生、シロコ、そしておっさんの三人は、
その施設の入口まで辿り着いていた
「"・・・ここですね。"」
先生が建物を見上げながら呟く
「あぁ。」
おっさんも短く頷く
「ここにある制御室動かしたら、このリゾートも大体元通りになるやろ。」
「ん。」
シロコも静かに周囲を見回す
誰も居ない
波の音だけが聞こえていた
その時だった
――ブゥゥゥン。
施設の周囲に立ち並んでいた警備ロボットの光学センサーが、一斉に赤く点灯する
「・・・。」
「・・・。」
先生が足を止めた
「"動いた・・・。"」
おっさんも警備ロボットへ視線を向ける
「ホシノ達やな。」
「電源復旧したんやろ。」
停止していたロボット達が、次々と起動していく
ガコン・・・ガコン・・・
腕部が展開される
脚部が駆動する
施設全体へ機械音が響いた
「これで――」
そう言い掛けた、その瞬間
ガシャッ!!
十数体の警備ロボットが、一斉にこちらへ向き直る
銃口が
三人へ向けられた
「・・・。」
先生の表情が固まる
嫌な予感しかしない
「"アンラさん。"」
「ん?」
「"これって・・・。"」
おっさんもその光景を見て、小さく眉をひそめる
「・・・先生。」
「"はい。"」
「とりあえず、隠れよか。」
「"私もそう思います!!"」
三人は同時に駆け出した
ダッ!!
岩陰へ飛び込んだ瞬間――
ダダダダダダダダダッ!!!!
無数の銃弾が先程まで立っていた場所を蜂の巣にする
砂煙が舞い上がる
先生が思わず叫んだ
「"撃ってきました!!"」
「見た分かるわ!!」
おっさんも思わずツッコむ
「なんでこっち撃って来とんねん!!」
先生も負けじと返す
「"そんなの私も知りませんよ!!"」
ダダダダダダダダッ!!
容赦ない掃射
岩肌へ弾丸が当たり、火花が散る
その横で
シロコだけは妙に冷静だった
「ん。」
ライフルを構える
「全部壊せばいい。」
その一言と同時に
パンッ!!
一体の警備ロボットの頭部が撃ち抜かれた
バチバチッ!!
火花を散らしながら、そのまま倒れる
先生の目が変わる
さっきまでの困惑は消え先生としての表情になる
「"シロコ!"」
「"左二体!"」
「ん!了解!」
シロコが遮蔽物から飛び出し、低い姿勢のまま砂浜を滑るように移動する
その背後へ回ろうとした警備ロボットが二体
おっさんはそれを横目で捉えた
「先生、前だけ見といたらええ、後ろは任せ。」
ローブの隙間から右手が自然に腰へ伸びる
僅かに覗く黒いグリップ
スッ。
S&W M327 M&P R8
抜いた瞬間にはもう狙いが付いていた
ドパンッ!!
赤い閃光が走る
一体
頭部センサーを撃ち抜く
ドパンッ!!
もう一体
駆動部を正確に撃ち抜く
二体同時に崩れ落ちた
「"・・・。"」
先生は指揮を飛ばしながらも、その正確過ぎる射撃へ一瞬だけ目を向ける
("相変わらず本当に外さない・・・。")
おっさんは既に次の標的へ照準を移していた
先生へ近付こうとする個体だけを優先して撃ち抜いていく
決して前へ出ない
決して先生から離れない
護衛に徹している
「"右!"」
先生が叫ぶ
「"もう一体来ます!"」
「見えとる。」
パンッ!!
一発
それだけでロボットは活動を停止した
その直後銃声が止む
「・・・?」
シロコが動きを止める
警備ロボット達は何事も無かったかのように踵を返し
ウィィン・・・
巡回ルートへ戻っていく
先程までの激しい銃撃戦が嘘のようだった
「"・・・終わった?"」
先生が周囲を見回す
シロコもライフルを下ろした
「ん。敵対反応、消えた。」
おっさんはゆっくりとリボルバーをホルスターへ戻す
「ホシノ達やな。」
「中で何かやったんやろ。」
先生も小さく頷く
「"たぶん制御室ですね。"」
「"電源だけじゃなく、防衛システムにも触れたのかもしれません。"」
「・・・。」
おっさんは何とも言えない表情になる
(・・・ごっつ嫌な予感しかしーへんな。)
(ユメちゃんなんか要らん事したんちゃうか。)
そんな事を考えていると――
管理施設の大型扉がゆっくり開いた
ゴゴゴゴゴ・・・
中から見慣れた五人の姿が現れる
先頭を歩くのはユメ
その後ろにホシノ
ノノミ
アヤネ
セリカ
「あ。」
ホシノがこちらへ気付く
「先生ー!」
ダッ!
残りの五人もこちらへ駆け寄ってくる
その途中
周囲へ転がる警備ロボットの残骸を見て
全員が察した
「・・・。」
「外でも戦ったんですね。」
アヤネが苦笑する
ホシノは先生の前まで来ると、すぐに全身を見回した
「先生!怪我してない?」
先生は笑顔で頷く
「"うん、大丈夫だよホシノ。"」
「"シロコもアンラさんも居たからね。"」
「そっかぁ。」
ホシノはほっと胸を撫で下ろした
「よかったぁ・・・。」
ノノミも安心したように笑う
「先生がご無事で本当によかったです~。」
「"それで。"」
先生は管理施設へ視線を向ける
「"中で何があったの?"」
その問いに
ユメが少しだけ申し訳なさそうに頭を掻いた
「えっとですね・・・。」
「制御室までは普通に入れたんです。」
「電源もすぐ復旧出来ましたし。」
「そこまでは良かったんだけどね・・・。」
そこで言葉が止まり、
ユメは気まずそうに笑った
「そのあと。」
「リゾート防衛システムっていうのを見つけまして。」
「ちょっと気になって・・・。」
おっさんが目を閉じる
(あぁ絶対押したな・・・)
「起動してみたんです!」
元気よく言った
一瞬、誰も喋らない
先生だけが静かに続きを待つ
ユメはその沈黙に耐え切れず続けた
「そしたらですね。」
「登録されてない私達全員を侵入者認定しちゃいまして・・・。」
「施設中の警備ロボットが一斉に襲ってきました。」
「今は全員分登録し直したので、もう襲われません!」
元気よく締め括る
数秒
静寂
おっさんがぽつりと呟いた
「・・・案の定や。」
「!」
ユメが反応する
「案の定って何ですかー!」
「ひどくないですか!?」
おっさんは肩を竦める
「いや・・・。」
「二年も一緒におったらな。」
「大体、何仕出かすか分かるんや。」
「・・・・・・。」
ユメの動きが止まる
これまでの二年間
数々の失敗
数々の暴走
数々の【ちょっと触ってみました!】
全部脳裏をよぎった
「・・・・・・。」
何も言い返せない
ホシノが思わず吹き出す
「ぷっ。」
「ユメ先輩、祈願屋で働いても変ってなかったんですね。」
「ホシノちゃんまで!?」
「うへへ。」
ホシノは悪びれもせず笑う
その横ではセリカが苦笑しながらため息を吐いていた
「まぁ・・・今回は結果オーライなんじゃない?」
「最終的には直った訳だし。」
「ん。」
シロコも小さく頷いた
「結果オーライ。」
すると、ホシノがシロコへ顔を向ける
「そういえばシロコちゃん。」
「釣りどうだった?大物釣れた?」
その瞬間
シロコの表情がほんの少しだけ誇らしくなる
胸を張った
「ん、大物釣った。」
「おぉ~。」
ホシノが感心したように声を漏らす
「すごいじゃん何釣ったの?」
「・・・。」
シロコは隣のおっさんを見る
おっさんは口元を押さえながら笑いを堪えていた
先生も苦笑している
ホシノは首を傾げた
「?、どうしたの?」
おっさんは笑いを堪えながら答える
「まぁ・・・食う時に見せたるわ。」
「たぶん、全員びっくりするで。」
「?」
対策委員会の面々は顔を見合わせた
ますます気になる
「"とりあえず。"」
先生が笑顔で手を叩く
「"ここで立ち話もなんですし、一度コテージへ戻りましょうか。"」
「そうやな。」
おっさんも頷く
「今日はよう動いたし。」
「一回休憩しよか。」
全員が賛成し
そのままコテージへ向かって歩き始めた
しばらく歩くと
前方から妙な音が聞こえてきた
ガシャン・・・ガシャン・・・
「"・・・?"」
先生が首を傾げる
そのまま角を曲がると
全員が足を止めた
「・・・・・・。」
そこには
ジャブジャブヘルメット団がいた
いや
正確には
警備ロボットに引きずられていた
「うぅぅ・・・。」
「いたたたた・・・。」
「もう無理ぃ・・・。」
全員ぼろ雑巾のようになっている
服は破れ
ヘルメットはへこみ
砂まみれ
海藻まで引っ掛かっていた
さらに両脇を警備ロボットに抱えられ
そのまま敷地の外へ運ばれていく
ガシャン・・・ガシャン・・・
完全にゴミ出しだった
「・・・・・・・・・。」
一同沈黙
その中で
ノノミがぽつりと呟く
「ヘルメット団さん達・・・。」
「ここにも居たんですねぇ・・・。」
「うへぇ・・・。」
ホシノが若干引きながら答える
「リゾート防衛システム。」
「思ってたよりすごいねぇ・・・。」
「ん。」
シロコも真顔で頷く
「容赦ない。」
先生は苦笑する
「"敵と判断されたら、ここまで徹底するんですね・・・。"」
その横でおっさんだけは腕を組んでいた
「まぁ・・・。」
「最初におっさんが百メートルぐらい投げ飛ばした後やからな。」
「その状態で警備ロボットまで相手したら。」
「こうもなるか。」
「"・・・。"」
先生がじっと見る
「"アンラさん。"」
「なんや。」
「"原因の三割くらいアンラさんでは?"」
「気のせいや。」
即答だった
「"気のせいちゃうと思います。"」
「せやろか。」
「"せやと思います。"」
先生が笑う
ユメも肩を震わせる
「ふふっ・・・。」
「ヘルメット団さん、ちょっと可哀想になってきました。」
「いや。」
おっさんは首を振った
「不法侵入して。」
「勝手に襲ってきたんは向こうや。」
「自業自得やで。」
「"それは・・・。"」
先生も否定できなかった
「"そうですね。"」
その時
警備ロボットに引きずられるように運ばれていたラブが
薄目を開ける
「うぅ・・・また・・・。」
「アイツら・・・いた・・・。」
おっさんと目が合う
「ひっ。」
ラブは即座に目を閉じた
「見間違い。」
「見間違い。」
「私は何も見てない。」
現実逃避だった
「・・・。」
おっさんは何とも言えない顔になる
「なんや。」
「おっさん悪役みたいやないか。」
先生は笑いを堪えきれず
「"ふふっ・・・。"」
「"ちょっとだけ。"」
「"ちょっとだけですよ?"」
「"否定できません。"」
「なんでやねん。」
ジャブジャブヘルメット団を乗せた警備ロボット達が去っていくのを見送り
一同は再び歩き始めた
先ほどまでの騒ぎが嘘のように
リゾートには穏やかな潮風だけが吹いている
「"・・・それにしても。"」
先生が苦笑する
「"今日は色々あったね。"」
「"朝からずっと事件ばかりだったし。"」
「うへぇ~。」
ホシノが肩を竦めた
「おじさんもう一週間分くらい動いた気分だよ~。」
「でも!」
ユメは両手を腰へ当てる
「無事に復旧出来たから結果オーライですね!」
「・・・途中で暴走させた奴が言うか?」
おっさんがぼそりと呟く
「むぅ・・・。」
ユメは口を尖らせる
「もう反省してますー。」
「ホンマかいな。」
苦笑しながら歩いていると
先生が前を向いたまま口を開く
「"そうだ。"」
「"一度、私に割り当てられているコテージへ集まらない?"」
「"今後の予定も決めたいし。"」
「賛成です!」
アヤネが頷く
「復旧作業は終わりましたし。」
「これから何をするか、一度整理しましょう。」
「ん。」
シロコも小さく頷く
「予定決める。」
「よぉし!」
ノノミも笑顔になる
「せっかくのリゾートですし、遊びたいです~。」
「遊ぶ!」
セリカも拳を握った
「今日はもう働かないわよ!」
「"そうですね。"」
先生も微笑む
「それじゃあ、一旦コテージへ行きましょう。」
【先生へ割り当てられたコテージ】
リビングへ全員が集まり
適当な椅子へ腰掛ける
「"さて。"」
先生は皆を見回した
「"改めて、皆お疲れ様。"」
「"リゾートの電力、防衛システム。"」
「"全部正常に戻りました。"」
アヤネも確認する
「はい。」
「復旧作業としては完了です。」
「つまり。」
ホシノが机へ突っ伏したまま片手を上げる
「ここからは遊んでいいって事?」
「"うん。"」
先生は笑って頷いた
「"そうだね。"」
「やったー!」
ユメが立ち上がる
「じゃあせっかくの海だし泳ごう!」
「賛成です!」
ノノミも笑顔になる
「あとビーチバレーもしたいです♪」
「ん。」
シロコが静かに頷く
「泳ぐ。潜る。遊ぶ。」
「やっとリゾートらしくなってきたわね。」
セリカも嬉しそうに笑った
皆が一斉に盛り上がる中
おっさんは腕を組んで笑う
「まぁ。遊ぶ為に来たんやし。」
「楽しまな損やな。」
先生も笑った
「"それじゃあ。"」
「"一度それぞれのコテージへ戻って準備しよっか。"」
「"三十分後に浜辺へ集合でどうかな?"」
「ん。」
シロコが頷く
「了解。」
「うへぇ~。」
ホシノが大きく伸びをした
「やっと遊べるねぇ~。」
「待ってました!」
ユメも嬉しそうに笑う
先生は満足そうに頷いた
「"それじゃあ、一旦解散しよっか。"」
皆がそれぞれ自分に割り振られたコテージへ散っていく
おっさんも軽く手を振った
「ほな、おっさんは着替えてくるわ。」
【リゾート施設・コテージ付近の砂浜】
すでに他の皆も集まり始めていた
ノノミ
アヤネ
セリカ
ユメ
ホシノ
シロコ
それぞれ水着姿で談笑している
「先生!」
ユメが手を振る
「こっちですよー!」
先生も笑顔で手を振り返した
「"皆、早いね。"」
「今から遊びですから!」
ユメが胸を張る
「こういう時だけは行動が早いんです!」
「自分で言うんや。」
後ろから声がした
振り返る
そこにはおっさんが立っていた
いつもの砂色のローブは無い
黒髪の短髪
少し窪んだ目元
顎には程よく伸びた無精ひげ
草臥れた雰囲気を纏いながらも、その身体はまるで鋼だった
肩幅は広く
腕は太く
全身に一切無駄の無い筋肉が付いている
一目見ただけで
【この人は戦う人間だ。】
そう理解出来る肉体だった
「・・・・・・。」
先生の視線が止まる
「・・・・・・。」
ノノミも固まる
「・・・・・・。」
アヤネも瞬きを忘れる
「・・・へ?」
セリカだけが思わず素っ頓狂な声を出した
「アンラさん・・・。」
「そんな顔だったの?」
おっさんは頭を掻く
「そんな顔って。」
「おっさん傷付くで?」
「いや・・・。」
アヤネが困ったように笑う
「普段ずっとフードを被ってるから・・・。」
「想像してた顔と全然違って。」
「普通のおっさん・・・?」
「普通のおっさんやで。」
即答だった
「いや、その身体は絶対普通じゃない!」
セリカが思わず突っ込む
「これだけ筋肉付いてて普通は無理だから!」
「そうか?」
「そうなの!」
先生も思わず笑ってしまう
その横では――
ホシノだけが懐かしそうに目を細めていた
「あー・・・久しぶりにちゃんと見たねぇ。」
「こんな顔だった。」
おっさんが笑う
「2年ぶりくらいか?」
「そんなもんかなぁ。」
「相変わらず草臥れてるねぇ。」
「褒め言葉として受け取っとくわ。」
二人のやり取りに、長い付き合いが感じられた
その少し後ろ
ユメは先生を見ていた
先生はまだおっさんを見つめている
「・・・・・・。」
その視線に気付き
ユメはくすっと小さく笑う
(先生、すっごい見惚れてるね。)
本人は気付いていない
先生は我に返ったように咳払いをした
「"・・・こほん。"」
「"それじゃあ!皆揃ったし。"」
「"海へ行こっか!!"」
「「「おーーーっ!」」」
歓声が上がる
皆で浜辺へ向かって歩き始めた
しばらく歩いたところで
セリカがふと足を止める
「・・・あれ?」
「この池、さっきまで無かったわよね?」
砂浜の真ん中
海水が流れ込んで出来た、妙に立派な池が広がっていた
全員が一斉に視線を逸らす
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
先生が咳払いする
「"気のせいだね。"」
「ん。」
シロコも真顔で頷く
「気のせい。」
おっさんだけが遠い目をした
(・・・砂、取り過ぎたな。)
誰もそれ以上触れなかった
そのまま全員、何事も無かったかのように浜辺へ向かって歩き出す
潮風が頬を撫でる
青く広がる海
白い砂浜
先ほどまで警備ロボットと撃ち合っていたとは、
とても思えないほど穏やかな景色だった
「よーし!」
ユメが両手を大きく広げる
「いっぱい遊ぶよーーー!!」
「「おーーーっ!!」」
後輩組も元気よく返事をする
その横で
おっさんは周囲を見渡しながら頷いた
「ほな、まずは拠点作るか。」
先生も笑顔で頷く
「"そうですね。"」
「"荷物を置く場所が無いと不便ですし。"」
おっさんは虚空へ右手を差し入れる
ズズッ――
ドサッ
折り畳まれたレジャーシート
ガチャ
大型のビーチパラソル
カラン
固定用の支柱まで次々と取り出される
先生はもう驚かない
「"これ持ちますね。"」
「あぁ、助かるわ。」
二人で場所を決め
砂浜へレジャーシートを広げる
パラソルを立て
支柱をしっかり固定する
ギュッ、ギュッ
砂を踏み固め
風で飛ばないよう丁寧に調整していく
「こんなものでええかな。」
おっさんが軽く揺する
びくともしない
「"大丈夫そうですね。"」
先生も満足そうに頷いた
その様子を見ていたホシノが待ちきれない様子で片手を挙げる
「先生ぇ~。」
「もう行っていい?」
「"うん、大丈夫だよー"」
先生が笑って頷く
「"荷物は見てるから。"」
「"思いっきり遊んできていいよ。」
「やったぁ!」
「海ーーー!!」
ダダダダダッ!!
真っ先に飛び出したのはユメ
続いてノノミ
アヤネ
セリカ
シロコ
そして最後にホシノがゆっくり歩き始め――
「うへぇ、おじさんも負けてられないねぇ。」
そう言って笑いながら海へ入っていった
バシャァァァッ!!
一瞬で水しぶきが舞い上がる
「冷たーい!」
「気持ちいいですー!」
「ん。ちょうどいい。」
「あっ!シロコ先輩、待ってくださいー!」
賑やかな笑い声が浜辺へ響く
おっさんと先生は思わず顔を見合わせた
「元気やなぁ。」
「"ですね。"」
先生も苦笑する
「"見てるだけで元気になります。"」
「ほな。」
「おっさんらも準備続けよか。」
「"はい。"」
おっさんは再び虚空へ手を伸ばす
ゴトン
折り畳み式の大型テーブル
コトッ コトッ コトッ
人数分のアウトドアチェア
ガシャン
さらにもう一つ
頑丈そうな野営用コンロ
「"あ、これ前に使ってた奴ですよね?"」
先生が尋ねる
「せやで、今回は人数多いし。」
「コンロ一個じゃ足りへんやろ。」
「"なるほど。"」
先生は頷くと、テーブルを持ち上げた。
「"じゃあ私、これ運びます。"」
「頼むわ。」
二人で並べ始める
椅子
机
コンロ
風向きを考えながら
皆が座りやすいよう配置していく
すると
おっさんが【あ。】と何か思い出したように虚空へ手を突っ込む
ゴロンッ
大玉スイカ
ゴロンッ
もう一玉
ゴロンッ
さらに
ゴロンッ
合計四玉
先生が思わず笑った
「"そんなにいりますか?"」
「去年な。」
おっさんが苦笑する
「クソほど配った余りや、まだ残っとったわ。」
「在庫処分、在庫処分。」
「"そんな理由でスイカ四玉出す人、初めて見ましたよ。"」
先生は思わず吹き出した
「ええやん、倉庫の底で眠ってるより食うた方が。」
「それはそうですけど。」
二人で笑う
続いて
おっさんは右手を軽く振る
「魔術術式解凍:アバシリ」
ゴゴゴ・・・
空気中の水分が一気に凍り付き
透明な氷の箱が形成される
簡素だが十分な大きさ
即席の文字通りのアイスボックスだった
その中へ
スイカ、ジュース
炭酸飲料、スポーツドリンク
次々と放り込んでいく
最後に
ドスッ
砂浜に一本の木刀が突き刺さった
先生が首を傾げた
「"木刀・・・?"」
「"スイカ割りするんですか?"」
「せやで。」
おっさんが笑う
「あの子らも海来たら一回くらいやりたいやろ。」
「"なるほど。確かにそうですね。"」
先生も納得したように頷いた
「"皆、喜びそうです。"」
「せやろ。」
おっさんは満足そうに笑う
準備を終えた二人は、ようやくレジャーシートへ腰を下ろした
目の前では
バシャァァァッ!!
キャーッ!!
波を掛け合って遊ぶ対策委員会の面々
その楽しそうな姿を眺めながら
先生は穏やかに微笑んだ
「"・・・平和ですね。"」
おっさんも海を見つめる
「あぁ。こういう時間も、悪ない。」
その言葉の少ししてから
浜辺の方から――
「ユメ先輩ー!!」
「本気でいきますよーー!!」
「いつでもいいよホシノちゃん!!」
という元気いっぱいな声が響いてきた
おっさんと先生は顔を見合わせる
「"・・・・・・。"」
「・・・・・・。」
嫌な予感しかしなかった
その直後ホシノが軽くトスしたビーチボールへ飛び込んだ
「おじさんサーブ、いっくよー!」
ふわり、と右腕が振り抜かれる
その瞬間
淡い薄桃色の光がホシノの腕からボールへ流れ込み――
ビーチボール全体が、ホシノのヘイローと同じ色に淡く輝いた
先生が目を瞬かせる
「"・・・え?今、光りませんでした?"」
「光ったな。」
おっさんは嫌そうな顔で頷く
「嫌な予感しかしとらん。」
次の瞬間だった
バゴォォォォンッ!!
「"!!?"」
サーブと同時に空気が爆ぜ、砂浜が抉れ、砂煙が舞い上がる
一直線に飛んだビーチボールは、砲弾のような勢いでユメ達のコートへ突っ込んでいく
「ホシノちゃん甘いよー!」
ユメが楽しそうに笑いながらレシーブの姿勢を取る
ユメの両腕に、今度は鮮やかな赤色の神秘が集まっていく
ドッゴォォォッン!!
その瞬間ユメの腕にホシノが放ったボールが着弾
それと同時に上にまっすぐ打ち上げられる
「ユメ先輩いきますよー☆」
打ち上げられたボールをノノミがトスでつなぐ
瞬間ユメの右腕に赤い色の神秘が集まっていく
赤い光は圧縮されるように濃さを増し
「そーれっ!!」
そんな気の抜けた声共に打ち付けられたボールは真っ赤なな輝きを帯びた
ドゴォォォォォンッ!!
「"うわぁっ!"」
先生が思わず肩を震わせる
着弾した砂浜が
ボンッ!!
と小さく爆ぜ、小さなクレーターが出来上がった
「"・・・。"」
「・・・。」
先生はゆっくりと隣を見る
「"あれ・・・ビーチバレーですよね?"」
「ルール上は、そうやな。」
「"ルール上は・・・。"」
先生の視線の先では
シロコが無表情のままレシーブを決め
「ん。まだいける。」
セリカが必死に叫ぶ
「ちょっ、ちょっと待ってぇぇ! 速すぎるってばー!」
ノノミは笑顔のまま
「わぁ~♪ すごい勢いですねぇ~。」
と言いながら普通に繋ぎ
アヤネは眼鏡を押し上げて冷静に指示を飛ばしている
「ノノミ先輩、左です!」
「はい♪」
ドォン!!
ボン!!
ズガァン!!
ビーチボールが砂浜に落ちる度にあちこちで小爆発が起こる
先生は乾いた笑みを浮かべた
「"・・・なんだか。"」
「"以前、ミカと戦った時を思い出しますね・・・"」
「"ミカも、攻撃するとき・・・ヘイローと同じ色の光を纏っていました。"」
その言葉に、おっさんは【あぁ】と頷いた
「神秘や。」
「神秘は込めれば込めるほど圧縮されて、自分の神秘の色になっていく。」
「圧縮すればするほど色は濃くなる。」
先生は輝くビーチボールを見つめる
「"だからホシノもミカもヘイローと同じ色に・・・"」
「せや。」
おっさんは苦笑する
「まぁ・・・ビーチバレーで殺人サーブ撃つための技術やないんやけどな・・・。」
先生は思わず吹き出した
「"ふふっ。"」
「"でも・・・平和な使い方ではありますよね?"」
「まぁ、ここの面子なら人死にも出んしな。」
おっさんも苦笑する
その直後
ドガァァァァン!!
また一つ
浜辺に新しいクレーターが増えた
「・・・・・・・・・。」
「"・・・・・・・・・。"」
「・・・ホンマ、キヴォトス人って。」
「遊びで爆発起こさんとあかんルールでもあるんか?」
先生はその言葉に苦笑しながら
ヒフミ、アズサ、マシロ、ツルギと海へ行った時も、
終始どこかで爆発が起きていた光景を思い出し
「"・・・否定、できませんね。"」
と、小さく笑った
それから十分ほど
勝負はさらに白熱し――
「もう一本ー!!」
「まだまだ行きますよ、ユメ先輩ー!」
元気なのは
ホシノとユメだけだった
その周囲では
「はぁ・・・。」
「ん、もう無理。」
「腕が・・・。」
「脚が・・・。」
ノノミ
シロコ
セリカ
アヤネ
四人とも砂だらけになりながら、その場へ倒れ込んでいる
先生が苦笑する
「"勝敗より・・・。"」
「"後輩組の体力が先に尽きましたね。"」
「予想通りや。」
おっさんは立ち上がる
「ほれ。」
「休憩や休憩。」
「ジュース冷えとるで。」
その一言に
六人はゆっくりとパラソルの方へ歩き始めた
キンキンに冷えた飲み物を飲み終えた頃には
ようやく後輩組も息を整えられる程度には回復していた
「はぁぁぁ・・・生き返ったぁ・・・」
セリカが空になった缶を両手で持ったまま、その場にぺたんと座り込む
「ユメ先輩もホシノ先輩も・・・加減してよぉ・・・」
「同感です・・・。」
眼鏡を押さえながら肩で息をするアヤネ
ノノミだけはいつものように微笑んでいたが
「えへへ~。」
「私も結構本気になっちゃいました♪」
「ノノミ先輩も十分原因です!!」
セリカの即座のツッコミが飛ぶ
そんな賑やかなやり取りを眺めながら
先生は思わず笑ってしまった
「"皆、本当に楽しそうですね。"」
「青春そのものやな。」
おっさんも穏やかに頷く
そのまま立ち上がると、レジャーシートの横へ置いていた大玉スイカへ近付いた
「ほな、次はこれや。」
そう言って木刀を一本持ち上げる
「ん、スイカ。」
シロコが目を輝かせる
「これって・・・スイカ割りですか?」
アヤネが尋ねると
「せや。」
おっさんは笑って頷いた
「海来たら一回くらいやっとかな損や。」
「去年配ったスイカの在庫処分にもなるしな。」
先生が苦笑する
「ちゃんと美味いから安心せぇ。」
「腐っとる訳ちゃうで。」
そう言うとおっさんはそのまま木刀をセリカへ放り投げた
「ほれ。」
「まずは一本。」
「えっ、私!?」
慌てて受け取るセリカ
続いてもう一本
「シロコ。」
「ノノミ。」
「アヤネ。」
「予備や。」
「ありがとうございます。」
アヤネが受け取り
ノノミは嬉しそうに木刀を構える
「ふふっ♪」
「意外と軽いですね~。」
ホシノはその木刀を肩へ担ぐ
「じゃあ最初は誰からやる~?」
「私!」
セリカが元気よく手を挙げる
「さっきボロボロにされた分、ここで取り返してやるわ!」
その瞬間
ユメが悪い笑顔になった
「そうだ。」
「スイカ割りって、ちゃんと目隠しして回らないとね?」
「え?待って。」
「その笑顔やめ――」
返事を聞く前に
ユメが後ろへ回り込む
「じゃあ行くよー!」
「え、ちょ――」
ぐるん
ぐるん
ぐるんぐるんぐるん!!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ものすごい勢いで回されるセリカ
「もうちょっと!」
「もうちょっと!」
「もう十分ーーーー!!」
ようやく解放された頃には
セリカの足取りは完全に千鳥足だった
「うぇぇぇ・・・。」
「地面が回ってるぅ・・。」
「よーし!」
ホシノがセリカの目隠しを整え、
開始の合図をする
「スタート!」
「右!」
「いや左!」
「そのまま真っ直ぐ!」
「全部違うじゃないのぉぉぉ!!」
好き放題飛び交う指示
ふらふらになったセリカは
全く見当違いの方向へ歩いて行く
先生は笑いを堪えきれない
「"ふふ、皆ちゃんと誘導してあげたらいいのに。"」
「無理やろ。」
おっさんは肩を竦めた
「あの面子に期待したらあかん。」
その予想通り
「そこだよー!」
「もう一歩!」
「今です!!」
「えぇぇぇぇいっ!!」
ぶぉん!!
セリカの木刀が砂浜へ突き刺さる
ドゴォォン!!
「「"・・・・・・。"」」
砂煙が晴れる
当然ながら
スイカは無傷だった
「うぅぅぅ・・・。」
目隠しを外したセリカが、その場へへたり込む
「全然違う方向じゃないのぉ・・・。」
「惜しかったね♪」
ユメが笑顔で肩を叩く
「全然惜しくない!」
「次!」
ホシノが木刀をひょいと持ち上げた
「アヤネちゃんいこっか~。」
「えっ!?わ、私ですか!?」
「もちろん。」
「順番順番。」
あっという間に目隠しを巻かれ
今度はホシノが後ろへ回る
「それじゃ、おじさん特製回転サービス~。」
「え、ちょっと待っ――」
ぐるん
ぐるん
ぐるぐるぐるぐる!!
「ひゃあああぁぁぁぁ!?」
「はい、どうぞ~。」
木刀を渡されるアヤネ
「えっと・・・。」
「右です!」
「左だよ!」
「そのまま!」
「私も全部違うじゃないですか!」
外野は今回も好き放題だった
「えいっ!」
ぶぉん!!
ドゴン!!
また砂浜に小さなクレーター
「"また爆発しましたねぇ・・・。"」
先生が乾いた笑みを浮かべる
「まぁ・・・もう諦めたわ。」
おっさんは遠くを見る目をして黄昏始めた
その後も
ノノミは――
「えへへ~♪」
と言いながら豪快に空振りし
ズドォン!!
砂浜をもう一つ掘削
シロコは
「今度こそ。」
驚くほど真剣な表情で狙いを定め――
ゴォン!!
見事にスイカの三メートル横を叩いた
「惜しい。」
「全然惜しくないで。」
おっさんが即座に突っ込む
「じゃあ最後は!」
ホシノが木刀を肩へ担ぐ
「おじさんの番!」
「私も負けません!」
ユメも木刀を構える
先生はその光景を見て、小さく笑う
「"さっきまでビーチバレーで本気だったのに・・・。"」
「"本当に皆元気ですね。"」
「若いっちゅうんはそういうもんや。」
おっさんが笑って答える
「体力が底無しや。」
「"羨ましいです。"」
「先生。」
「"はい?"」
「先生二十二やろ。」
「十分あっち側や。」
「"・・・。"」
先生は苦笑いするしかなかった
その頃
「いくよホシノちゃん!」
「いつでもどうぞ~!」
今度はユメとホシノ本人同士が、
どちらが先にスイカを割るかで妙に張り合い始めていた
おっさんはその様子を見て、ぼそりと呟く
「・・・また嫌な予感しかせぇへんな。」
「先生ー!」
ユメが目隠しをしながら木刀を肩に担ぎ笑顔で手を振る
「ちゃんと見ててくださいね!」
「おじさんもも本気でいくからね~。」
ホシノも目隠しをしながら笑みを浮かべ木刀を構える
二人の前には、それぞれ新しいスイカが置かれていた
「「せーのっ!!」」
二人が同時に踏み込む
木刀へ、無意識に神秘が流れ込む
赤い輝き
淡い桃色の輝き
先生の表情が引き攣った
「"あれ・・・神秘・・・"」
「止めてももう遅いで。」
おっさんが遠い目をする
「今さら『込めるな』言うても聞かへん。」
次の瞬間
ブォンッ!!
ドゴォォォン!!
ズドォォォン!!
二本の木刀が、綺麗に――
スイカを避けた
「「あっ。」」
二人の声が重なる
木刀はそのまま砂浜へ叩き込まれ
着弾と同時に神秘が炸裂し
ボンッ!!
ボゴォォン!!
砂が高々と舞い上がり、浜辺には二つの小さなクレーターが出来上がる
スイカだけが何事も無かったかのように皿の上へ鎮座していた
「・・・・・・。」
「"・・・・・・。"」
先生とおっさんは揃ってその光景を見つめる
先生がぽつりと呟く
「"また爆発しましたね・・・。"」
「しかも外しとる。」
おっさんは額へ手を当てた
「遊びで地形変えるんはやめてくれへんかなぁ・・・。」
「うへぇ~外しちゃったよ~。」
当のホシノは悪びれる様子もない
ユメも照れ笑いしながら頭を掻いた
「ちょっと力入れすぎました!」
「ちょっとやない。」
「というか神秘あっこまで込めとる時点で故意的やろ。」
おっさんの即座のツッコミが飛ぶ
「砂浜にクレーター出来とるやろ。」
「ご、ごめんなさい!」
二人は揃ってぺこりと頭を下げた
しかし反省は三秒も続かなかった
「じゃあもう一回!」
「今度こそ勝負だよ~!」
「「おーーっ!」」
再び元気よく木刀を構える二人
先生は思わず空を仰ぐ
「"元気ですねぇ・・・。"」
おっさんも苦笑しながら肩を竦めた
「まぁ・・・元気なんはええ事やな・・・」
その直後、後輩たちに回転させられた二人が
ドゴォォン!!
また浜辺のどこかを爆破だせていた
スイカ割り大会は結局――
ドゴォン!!
ズドォォン!!
ボゴォォォン!!
爆発音だけを何度も響かせながら終了した
砂浜には、いつの間にか大小様々なクレーター
「"・・・・・・。"」
「・・・・・・。」
先生とおっさんはもう何も言わない
「やったぁ!」
「割れたよー!」
結局最後はシロコが偶然木刀を当て、
砕けたスイカを皆で笑いながら分け合っていた
「甘いですー♪」
「ん、おいしい。」
「疲れた後だから余計美味しいわね・・・。」
「さっきまで暴れとった奴らとは思えへんな。」
おっさんは苦笑しながら残ったスイカを見つめる
「・・・せっかくやし。」
「一つ芸でも見せたるか。」
「"芸?"」
先生が首を傾げる
おっさんはスイカを抱え上げると、
皆の居るパラソルから少し離れた場所へ歩いて行く
皿を一枚置き
その上へ、スイカを静かに乗せた
そして、そこから3・4メートルほど離れる
「何するんですかー?」
ユメが興味津々に身を乗り出す
「まぁ見とき。」
おっさんは砂浜へ刺さっていた木刀を一本引き抜く
木刀を静かに腰へ
まるで刀を納めているかのような自然な構え
潮風だけが流れ、誰も喋らない
「"・・・。"」
先生も思わず息を止めていた
次の瞬間
スッ――
木刀が抜かれる
音すら聞こえない
返し手
さらに
シュッ
シュッ
シュッ
何度か空を払ったように見えた
本当に振ったのかすら分からない
そして、木刀は再び腰へ収まる
「・・・終まいや。」
おっさんが笑う
一瞬の静寂
「・・・?」
「え?」
誰も変化が分からない
先生だけが最初に拍手した
「"綺麗でした。"」
「おぉー!」
ユメも慌てて拍手する
ホシノも小さく笑いながら手を叩く
「流石ですね。」
ノノミ達も続いて拍手を送り――
その瞬間だった
コト・・・
皿の上のスイカがゆっくりとずれた
コト・・・コト・・・
八つの切れ目が現れ
綺麗に本当に寸分違わず
縦八等分になったスイカが花のように開いていく
「・・・・・・え。」
セリカの声が止まる
「うそ・・・。」
アヤネの眼鏡がずり落ちた
「えへ・・・。」
ノノミも笑顔のまま固まっている
シロコだけが静かに呟く
「・・・切れてる。」
「しかも全部同じ厚さ。」
先生も目を丸くした
「"いつ・・・。"」
「"全然見えませんでした・・・。"」
ホシノとユメだけは、その光景を見て顔を見合わせる
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
二人の脳裏に、以前おっさんが笑いながら言った言葉が蘇る
【木刀だったらユメちゃんの盾でも】
【ホシノちゃんが神秘を全力で守りに回しても、問答無用で両断されるで。身体ごとな。】
「・・・あぁ。」
ホシノが小さく苦笑する
「あれ、本当だったんですね・・・。」
ユメも乾いた笑みを浮かべる
「疑ってた訳じゃないけど・・・。」
「改めて見ると怖いね・・・。」
おっさんはそんな反応には気付かないまま、嬉しそうに皿を持ち上げる
「ほれ、綺麗に切れたやろ?」
まるで子供が工作を褒めてほしい時のような、どこか得意げな笑顔だった
「皆の分や、好きなん取って食べ。」
その一言で、止まっていた時間が動き出す
「いただきまーす!」
「わぁ、食べやすいですー!」
「ん!!」
「ありがとうございます。」
次々と皿からスイカを取っていく皆
先生も一切れ受け取り、思わず笑った
「"芸っていうレベルじゃないですよ、これ。"」
おっさんは照れ臭そうに頭を掻く
「ええやん。」
「粉みじんより綺麗に切れた方が食いやすいやろ。」
「"そこじゃないんですけどね。"」
先生の苦笑に、浜辺にはまた穏やかな笑い声が広がり
そしてその頃には、空の青も少しずつ橙色へと染まり始めていった
むかーしに、
セトを駆除する時に使った次元斬の派生系
戦闘でもなんでもないこんなスイカ割りの描写で初出し!
ちなみに効果は次元斬は景色斬りでしたが、
この派生系は座標を指定して斬ります。
それと、作中で出て来た新魔術、アバシリですが。
まぁ名前の通り元ネタは網走刑務所ですね。
この魔術は、対象を完全凍結させ、氷の塊に封入し、封印する封印魔術です。
それの術式をぱぱっと弄って、溶けない氷を、凄く良く溶け、溶けたた瞬間に凍る氷に再定義し
融解熱で、内部を冷やす魔術になってます。
虚空魔術を習得するまではこれがアンラの保管庫代わりになっていた便利魔術の一つですね。
本当に腐って欲しくない物は従来の封印術で封入すれば腐りもしませんし。
さて!
ひっさしぶりにアンラの描写をしました!
前は顔だけカンナに見せた時に描写をしただけでしたが、
今回は全身の大雑把な描写を入れてみました。
因みに言うと、一応アンラも先生みたいにイメージしやすい様に、
GPT君に設定画を出力してもらってるので、設定画はあるので、いつの日か、
キャラ設定集を出す時にでも貼り付けておきたいと思います。
後先生、あんた男から、女になっただけで、欲に忠実な所かわってねーな?!
おっさんの筋肉延々とガン見してるんじゃないよ!()
そして!
アビドス式バレーはどうでしたでしょうか。
あのバレーボールを返球出来るのキヴォトス人は、
現状戦闘力トップテン入りした人しか居ないでしょうね。(トップテンの過半数がアビドス)
それ以外のキヴォトス人?
食らっただけで、サクラコ様みたに吹っ飛ばされますよ・・・
その後のスイカ割り、
スイカ爆散式・・・?どっちやろ。
多分アズサが撃ったスイカより悲惨な事になってると思います。
そして序に言うとアリウスに送り付けた1tほどのスイカのあまりがコレでした。
そう、1tです、このアホのおっさん、1tも送りつけました。
腐らない様に連日スイカ生活漬けにされ、
最後には射撃の的にし始めたアリウス生の去年の夏に敬礼。