おっさんキヴォトスに行く   作:無い頭のおっさん

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ばにたすばにたす

さぁ世界(キヴォトス)が牙をむくぞ。

本日4話連続更新!2話目


先生と爆発と凶弾

【トリニティ総合学園・古聖堂】

 

『――――――――――――い』

 

『―――――先生』

 

『先生、目を覚ましてください!』

 

("アロナ・・・?")

 

「"――――っ・・・。"」

 

意識が、ゆっくりと浮上してくる

何かに身体を強く叩きつけられたような感覚

 

耳鳴り

 

焼けるような熱気

 

そして、口の中に広がる土埃の味

 

「"・・・・・・。"」

 

「"・・・ここ、は・・・。"」

 

私はゆっくりと目を開けた

 

視界が滲んでいる

 

何度か瞬きを繰り返し

それでも、最初は何が起きているのか理解できなかった

 

やがて、少しずつ焦点が合っていく

 

「"・・・・・・・・・。"」

 

 

・・・いや

 

壁だったもの

 

その瓦礫に背中から叩きつけられたらしい

 

周囲には大量の石片や木材が散乱している

 

天井の一部も崩れ落ちている

 

ステンドグラスは砕け

 

床には無数の破片が散らばっていた

 

「"・・・・・・。"」

 

私は、ゆっくりと身体を起こす

 

「"痛っ・・・。"」

 

頭が痛い

 

身体も重い

 

『先生、大丈夫ですか!?気を確かに・・・!』

 

「"一体なにが・・・?"」

 

『先生の指示に従って古聖堂の爆発から』

『先生を何とか守ろうとしたのですが・・・』

 

「"あぁ・・・そうだ、"」

「"爆発・・・"」

 

そこでようやく、意識が完全に戻ってくる

 

『ごめんなさい。先生、これ以上は力が・・・

 

「"・・・ありがとうアロナ。あとは何とかするよ・・・"」

 

シッテムの箱の電源が切れるのを確認した後

私は周囲を見回す

 

「"・・・おかしい。"」

 

ミサイルが飛んで来る前にアロナへバリアを展開させた

 

だから、ミサイルそのものの爆発は防げたはずだ

 

それでも

 

「"・・・・・・。"」

 

私は吹き飛ばされ

 

それどころか

 

古聖堂そのものが、これだけの規模で崩壊している

 

「"・・・私が知ってる規模より。"」

「"爆発が・・・大きすぎる。"」

 

ミサイルだけならでこれほどの爆発規模にはならない・・・

 

私は違和感を覚える

 

「"・・・違う。"」

 

ミサイルだけじゃない

 

そう考えた方が自然だ

 

「"この建物・・・。"」

「"古聖堂そのものに、爆薬が仕掛けられてた・・・?"」

 

その瞬間

 

頭の中に

 

最近の出来事が一つ浮かんだ

 

――第二次特別学力試験

 

あの時

 

試験会場を襲った爆発

 

「"・・・大量のダイナマイト・・・"」

 

思わず呟く

 

「"・・・・・・・・・。"」

 

("今回の襲撃はアリウスによるもの・・・")

("なら、前回の爆破もヴェアトリーチェが?")

 

私は瓦礫に手をつきながら、ゆっくりと立ち上がる

 

ただの推測

 

まだ確証はない

 

けれど点と点が

 

嫌なほど綺麗に繋がっていく

 

そんな考えを立ち上がりながら考えていると、

私を呼ぶ声が聞こえた

 

「・・・先生!」

 

「せ、先生・・・けほっ、こほっ・・・ご無事でしたか!」

 

ヒナタだった

 

古聖堂が爆発したタイミングで一番近くに居たため、一緒の所に吹き飛ばされたのだろう

 

「"なんとか・・・ね?"」

 

「お怪我は・・・なさそうですね。」

「あの爆発に巻き込まれて殆ど傷一つ無いだなんて、本当に奇跡のようです・・・」

 

("アロナ・・・想定以上の威力だっただろうに、本当に頑張ってくれたんだね・・・")

 

その時

 

遠くからハスミとツルギがこちらの方に駆けよってくるのが見えた

 

「先生!ご無事でしたか!」

 

「せ、先生・・・!」

 

「正義実現委員会の皆さん・・・!」

 

二人共、爆心地に近かったのか全身ボロボロだった

 

「"ハスミもツルギも怪我が・・・"」

 

「これくらい大したことはありません。」

「ですが、先ほどの爆発で、正義実現委員の殆どは戦闘不能になってしまいました。」

「それに、ナギサさんやサクラコさん・・・それ以外にも多くの方が見当たらなくって・・・」

 

「・・・ゲヘナ側も、殆ど見当たりませんね。これは一体どういう・・・」

 

そんな話をしていると、

白い制服にガスマスクを付けた生徒の一団がこちらにやってくるのが見えた

その戦闘に立つ、黒いマスクと首に黒いチョーカーを付けた・・・

 

ミサキが居た

 

("ミサキ・・・")

 

「作戦地域に到着、正義実現委員会の残党を発見。」

「・・・いや、訂正。残党じゃなく、正義実現委員会の真髄だ。」

「ツルギにハスミか・・・兵力をこっちに回して。これより交戦に入る。」

 

目がどす黒い色で濁り切り、その表情から憎悪を滾らせたミサキがそこには居た

 

(”なんで・・・?なんで、そんな表情・・・”)

 

ミサキの部隊指示を聞き、ハスミが驚く

 

「アリウス分校・・・!?ど、どこからこれほどの兵力が・・・!?」

「どうやって、周辺地域は全て警戒態勢だったのに・・・」

 

ハスミのその言葉を聞いて、

ヒナタはミサキたちが何を使ってここまでやってきたのか思い当たった

 

「ま、まさか・・・!!」

「まさか、地下から・・・?」

「古聖堂の地下にある、あの広大なカタコンベから・・・!?」

 

ヒナタが言ったその進入経路から、

爆破の主犯にハスミも気づく

 

「・・・なるほど。つまりこの状況、あなた達アリウスの仕業だと考えて良いでしょうか?」

「・・・許しません。その代償、今ここで・・・っ!!」

 

怒りに身を任せ動き出そうとするハスミに

ツルギが待ったをかける

 

「・・・ハスミ。落ち着け。」

 

「っ!・・・はい、そうですね・・・」

 

「ありがとうございます、ツルギ。」

「今は先生の安全が最優先・・・先生を連れて、ここから離脱します。」

 

「あぁ・・・暴れるのは、私の役目だ。」

「くひひひひひっ・・・さぁ!」

 

「相手してやるぜ!虫けらども!!かかってきなぁぁっ!!!!」

 

「ひゃっははははああぁぁぁーーーっ!!」

 

 

「先生、行きましょう!」

 

「"・・・うん、ありがとう。絶対無事に戻って来てねツルギ。"」

 

そういって、ツルギをその場に残し、

ヒナタとハスミに護衛してもらいながら、瓦礫の山となった古聖堂を進んでいく

 

その途中、

幽霊の様な存在が私達の行く手を遮った

 

「"ミメシス・・・"」

 

目の前に立っているのは

 

人間ではなかった

 

黒い制服

 

シスターのベール

 

そして、その下に装着されたガスマスク

 

身体には、目を疑うほど際どい衣装

 

その姿だけを見れば、まるで何処かの宗教画から抜け出してきた異形の亡霊のようだった

 

けれど、その身体は確かに実体を持っている

 

こちらへ向けられた銃口

 

ゆっくりとこちらへ向かってくる足取り

 

「・・・先生。」

 

ハスミが銃を構えながら、こちらを見る

 

「その・・・【ミメシス】というのは。」

 

「"亡霊みたいなもの。"」

「"過去の残滓・・・というか、実体化した幽霊みたいなものだよ。"」

 

「・・・幽霊?」

 

ヒナタが目の前の存在を見つめる

 

「"うん。"」

 

「"しかも、厄介なのが・・・。"」

 

私は一体のミメシスへ視線を向ける

 

「"倒しても、無限に湧いて出てくる。"」

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

ハスミとヒナタが、同時に沈黙した

 

そして。

 

「・・・それは。」

 

ハスミが静かに銃を構え直す

 

「非常に面倒ですね。」

 

「"うん。ものすごく。"」

 

その瞬間

 

ミメシスの群れが一斉に動き出した

 

「来ます!」

 

ヒナタが叫ぶ

 

銃声が響く

 

白い影が次々とこちらへ迫ってくる

 

「先生は私の後ろへ!」

 

ハスミが前へ出る

 

「ヒナタ、右側を!」

 

「はい!」

 

二人の銃撃がミメシスを薙ぎ払う

 

一体

 

二体

 

十体

 

倒れた身体が、光の粒子のように崩れていく。

 

「よし・・・!」

 

ヒナタが息を吐いた

 

しかし

 

「・・・・・・え?」

 

その直後

 

瓦礫の向こうから

 

また一体

 

そして二体

 

さらにその後ろから、十体

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

さらに増える

 

増える

 

増える

 

「"・・・やっぱり。"」

 

「先生?」

 

「"全然減ってない。"」

 

倒している

 

確実に倒している

 

なのに

 

減らない

 

むしろ

 

増えている

 

「くっ・・・!」

 

ハスミが舌打ちする

 

「これでは・・・きりがありません!」

 

「"分かってる!"」

 

私は周囲を見渡す

 

古聖堂は既に原形を失っている

 

瓦礫

 

 

 

そして

 

その全てを埋め尽くす白いミメシス

 

その姿を見て

 

ヒナタがふと呟いた

 

「・・・この服装。」

 

「え?」

 

「この、シスターのベールと・・・ガスマスク。」

 

「それに、この独特な装束。」

 

「文献で見た事があります。」

 

ヒナタはミメシスを見ながら続ける。

 

「ユスティナ聖徒会。」

 

「かつて存在した、戒律の守護者たち・・・。」

 

「"・・・・・・。"」

 

私は一瞬だけ

 

目の前のミメシスを見た

 

("あのどぎついハイレグ・・・。")

("ヴェアトリーチェの趣味じゃなかったんだ・・・。")

 

ほんの一瞬

 

本当に一瞬だけ

 

そんな感想が頭を過った

 

「"・・・いや。"」

 

今はそんな事を考えている場合じゃない

 

「"とにかく、強行突破するよ!"」

 

「はい!」

 

「分かりました!」

 

私は二人へ指示を飛ばす

 

「"ハスミは左!ヒナタは右!"」

 

「"私は真ん中を進む!"」

 

「了解!」

 

三人が同時に動く

 

銃声

 

爆発

 

閃光

 

ミメシスの群れを押し退けながら、少しずつ前へ進んでいく

 

しかし

 

「・・・まだ来ます!」

 

ヒナタが叫ぶ

 

「"っ・・・!"」

 

まただ

 

また新しいミメシスが現れる

 

まるで地下から無尽蔵に湧き上がってくるように

 

「先生、このままでは・・・!」

 

「"分かってる!"」

 

少しずつ

 

少しずつ

 

こちらの体力が削られていく

 

その時だった

 

「・・・追いついた。」

 

低い声が響いた

 

「!?」

 

振り返る

 

瓦礫の向こう

 

白い制服を纏った一団が現れる

 

その先頭に立っていたのは

 

「・・・ミサキ。」

 

黒いマスク

 

首元の黒いチョーカー

 

そして、濁り切った瞳

 

先ほどツルギと戦っていたはずのミサキが、別動隊を率いてこちらへ追いついてきていた

 

「聖徒会のミメシスも確認。」

 

ミサキは周囲を見渡す

 

そして

 

「・・・条約に調印が為された。」

「それに、人形との取引も上手く行ったみたいだね。」

「アツコ。」

 

「・・・・・・。」

 

ミサキは再び前を見る

 

「行くよ。」

 

その瞬間

 

さらに大量のミメシスが押し寄せてきた。

 

「・・・!」

 

「・・・きりがありませんね。」

 

ハスミが息を切らしながら呟く

 

ヒナタも周囲を見回す

 

「ま、マズイですね・・・!」

「せめて先生だけでも脱出を・・・!」

 

その瞬間

 

ガガガガガガガガガガガ―――――ッ!!!

 

凄まじい銃撃音が響いた

 

「っ!?」

 

紫色の閃光が一直線に走る

 

――――――――――ッ!!

 

大量のミメシスが

 

一瞬で吹き飛んだ

 

包囲網に大きな穴が開く

 

 

「・・・・・・!?」

 

ミサキが目を見開く

 

そして

 

その先から

 

「こっち!」

 

聞き慣れた声が響いた

 

「"ヒナ・・・!"」

 

瓦礫の向こう

 

そこに立っていたのは

 

ゲヘナ風紀委員会委員長

 

空崎ヒナ

 

しかし

 

その姿は

 

いつもの彼女とは比べ物にならないほど、傷ついていた

 

制服は煤と血で汚れている

 

頭や肩からは血が流れ

 

腕にも傷

 

髪にも乾燥した血がこびりつくている

 

それでも

 

その手には、しっかりと銃が握られていた

 

「先生!」

 

ヒナが叫ぶ

 

「こっち!」

 

「・・・風紀委員長!?」

 

ハスミも驚きの声を上げる。

 

その時

 

ミサキが通信機へ手を伸ばした

 

「ヒヨリ。」

「もしかして。」

「ヒナを止められなかった?」

 

『げほっ・・・けほっ・・・』

『す、すみません・・・ダメでした・・・。』

『聖徒会が顕現するよりも前に、全員なぎ倒されて・・・。』

 

ミサキは小さく息を吐く

 

「・・・そう。」

 

そして

 

ヒナが再び叫ぶ

 

「正義実現委員会!」

「先生をこっちに!」

「今は時間が無い!」

 

ハスミは一瞬だけ黙った

 

先生を見る

 

そして

 

ヒナを見る

 

その瞳に宿る覚悟を理解した

 

「・・・・・・分かりました。」

 

ハスミが銃を構える

 

「先生。」

「私達がここで敵を止めます。」

「あとは、あの風紀委員長がきっと何とかしますから。」

「急いでください!」

 

「"ハスミ達は・・・!?"」

 

私は思わず聞き返す

 

「"二人はどうするの!?"」

 

「・・・私達は。」

 

ハスミが静かに答える。

 

「先生の退路を守ります。」

「不快ではありますが。」

 

一瞬だけ、ヒナを見る

 

「・・・あの風紀委員長は。」

「私達がそうすると信じているのでしょう。」

「確かに今は、それ以外に方法がありません。」

 

「"・・・・・・。"」

 

私は唇を噛む

 

「"・・・絶対、無事に帰って来てね!"」

 

「はい。」

 

私はヒナの元へ走り出す

 

その背中へ

 

ハスミの声が飛ぶ

 

「風紀委員長・・・!」

 

ヒナが振り返る

 

「先生を、よろしくお願いします!」

 

「・・・・・・。」

 

ヒナは一瞬だけ目を細め

 

「・・・任せて。」

 

そう呟いた

 

次の瞬間

 

「行くよ、先生。」

 

ヒナが一歩踏み出す

 

しかし

 

「・・・っ。」

 

身体がふらついた

 

「"ヒナ!?"」

 

私は慌てて肩を支える。

 

「"傷が・・・!"」

 

「これくらい、大したこと無い。」

 

「先生。」

 

ヒナがこちらを見る

 

「私から、離れないで。」

「退路は私がこじ開ける。」

 

「"・・・うん!"」

 

ヒナが銃を構える

 

ガガガガガガガガガガガ――――ッ!!

 

紫色の閃光

 

ミメシスが吹き飛ぶ

 

「行くよ。」

 

私達は走った

 

一体

 

二体

 

十体

 

何度も何度も

 

ミメシスを撃ち抜き

 

薙ぎ払い

 

瓦礫の中を進んでいく

 

けれど

 

「・・・っ。」

 

ヒナの呼吸が荒くなる

 

「"ヒナ・・・?"」

 

「大丈夫。」

 

また撃つ

 

また進む

 

そして

 

「・・・・・・っ。」

 

一歩

 

二歩

 

三歩

 

「・・・ぁ。」

 

ヒナの足が止まった

 

身体から力が抜ける

 

「"ヒナ!"」

 

そのまま

 

ヒナが地面へ倒れ込んだ

 

「"ヒナ!!"」

 

私は慌てて駆け寄る

 

「"しっかりして!"」

 

「・・・・・・。」

 

返事がない

 

その時

 

瓦礫の向こうから

 

足音が聞こえた

 

一つ

 

二つ

 

三つ

 

そして

 

四つ

 

「・・・ゲヘナの風紀委員長。」

 

ミサキだった

 

「ようやく倒れた。」

 

その後ろから

 

「や、やっとですか・・・。」

 

ヒヨリが息を切らしながら姿を現す

 

「痛かったですよねぇ・・・。」

 

「よくあの傷でここまで・・・。」

 

その横には

 

「・・・・・・。」

 

アツコ

 

ガスマスクを被ったまま、無言で立っている。

 

そして最後に

 

「トリニティとゲヘナの主要人物は全部片付いた。」

「残りはもう貴様だけだ。」

 

サオリ

 

「シャーレの先生。」

 

「"・・・・・・。"」

 

私は彼女達を見る

 

サオリも

 

ミサキも

 

ヒヨリも

 

その瞳は

 

濁っていた

 

ただ一人

 

アツコだけが何も語らない

 

("なんで・・・?")

 

("どうして、ここまで・・・。")

 

("私のが知っている皆よりも、遥かに強い憎悪・・・。")

 

胸の奥がざわつく

 

何かがおかしい

 

何かが

 

明確に違う

 

それでも

 

今は

 

「"君たちが・・・アリウススクワッドだよね?"」

 

私がそう言った瞬間

 

三人の瞳に

 

さらに強い憎悪が宿った

 

「・・・ああ。」

 

サオリが答える

 

「そうだ。私達がアリウススクワッド。」

「ようやく会えたな、先生。」

 

そして

 

ほんの一瞬だけ

 

その瞳から憎悪が消えた

 

「アズサが世話になったと聞いた。」

 

その声だけは

 

ほんの少しだけ

 

優しかった

 

しかし

 

次の瞬間には再び濁った瞳へ戻る

 

「・・・あいつには。」

「今から会いに行く予定だ。」

 

「"君達が・・・ETOに調印したんだね?"」

 

「・・・何故それを。」

 

サオリが僅かに目を見開く

 

私は

 

少しだけ笑う

 

「"私も、こういう事にちょっとだけ詳しいんだよ。"」

 

笑顔

 

けれど

 

自分でも分かる

 

少しだけ

 

ぎこちない

 

「・・・そうか。」

 

サオリは否定しなかった

 

「ああ。」

 

「これからは、アリウススクワッドがETOとしての権限を行使する。」

「そして、鎮圧対象を定義しなおす。」

 

サオリの銃口がゆっくりと持ち上がる

 

「ゲヘナそしてトリニティ。」

「この両校こそ、エデン条約に反する紛争要素。」

「排除すべき鎮圧対象だ。」

 

私は黙って聞いている

 

「トリニティとゲヘナを。」

「キヴォトスから消し去る。」

「文字通りにな。」

 

その瞬間

 

サオリの背後から

 

無数の白い影が現れる

 

「・・・この条約の戒律。」

「その守護者たちと共に。」

 

ミメシス

 

ユスティナ聖徒会

 

その数は

 

既に数える事すら馬鹿らしくなるほどだった

 

「貴様らは第一公会議以来。」

「数百年にわたって積み上げられてきた恨み。」

「私達の憎悪を確認することになるだろう。」

 

サオリの声が響く

 

感情の蓋が壊れたかのように

 

怒り

 

憎しみ

 

憤り

 

そして

 

積み重なった怨念

 

それら全てを吐き出すように

 

「"・・・・・・。"」

 

しかし

 

ふと

 

その声が止まった

 

サオリの視線が

 

真っ直ぐこちらを捉える

 

「その前に。」

 

銃口が

 

私へ向けられる

 

「貴様を処理しておくとしようか。」

 

 

 

「ふうん・・・ターゲット発見ね。」

 

その声が

 

瓦礫と煙に満ちた古聖堂の中へ、妙に軽く響いた

 

「・・・・・・?」

 

サオリが眉を動かす

 

次の瞬間

 

ダァァンッ――!!

 

茜色の閃光が走った

 

「ッ!?」

 

サオリの手にあった銃が弾き飛ばされる

 

銃は何度も地面を跳ねながら、瓦礫の向こうへ転がっていった

 

「なっ・・・!?」

 

サオリが反射的に身を引く

 

その向こう

 

崩れ落ちた聖堂の入り口から

 

四人の少女が歩いてくる

 

一人

 

二人

 

三人

 

そして、最後の一人

 

全員が

 

見覚えのある顔だった

 

「便利屋68参上よ!」

 

アルが堂々と胸を張る

 

その腕には

 

赤い文字で

 

【臨時】

 

と大きく記された腕章が巻かれていた

 

「"・・・・・・・・・。"」

 

私は思わず目を見開いた

 

「"アル・・・?"」

 

「ふっ。」

 

アルは振り返る

 

「先生!」

 

「私達が来たからにはもう安心よ!」

「大船に―――」

 

「アルちゃん。」

 

ムツキが横から声を挟む

 

「その決め台詞、敵が復帰する前に言い切った方がいいよ?」

 

「え?」

 

「ほら、もう銃も拾って復帰してる。」

 

「・・・・・・。」

 

アルがゆっくり前を見る

 

サオリ

 

ミサキ

 

ヒヨリ

 

そして

 

アツコ

 

四人がすでに臨戦態勢でアル達の方を向いていた

 

「・・・・・・。」

 

アルの口元が引きつる

 

「・・・便利屋68。」

「依頼を開始するわよ!」

 

「おー!」

 

カヨコが銃を構える

 

「はいはい。」

 

ムツキも笑う

 

ハルカが無言で銃を構えた

 

「行きます・・・!」

 

四人が一斉に駆け出す

 

同時に

 

サオリが叫んだ

 

「ユスティナ聖徒会!」

「奴らを排除しろ!」

 

無数のミメシスが

 

一斉に動こうとする

 

――しかし

 

「・・・・・・?」

 

動かない

 

一体

 

二体

 

十体

 

数え切れないほどのミメシスが

その場に立ち尽くしている

 

「・・・?」

 

サオリが眉を顰める

 

「どうした。」

「何故動かない。」

 

ミメシスは

 

ただ便利屋68を見つめている

 

銃口を向けることすらない

 

その時

 

「"・・・あ。"」

 

私はアルの腕を見た

 

【臨時・アビドス治安維持第二部隊】

 

その文字

 

「"・・・そういうこと・・・"」

 

思わず呟く

 

ユスティナ聖徒会は条約に基づいて

トリニティとゲヘナを粛正対象としている

 

なら

 

「"アビドス・・・。"」

「"アビドスの治安維持部隊として活動してるから。"」

「"この子達は、粛正対象じゃない・・・。"」

 

そして

 

それだけではない

 

「"だから・・・。"」

 

アルが放った弾丸が

 

ミメシスの身体を貫く

 

一発

 

それだけで

 

白い身体が光の粒子へ変わった

 

「"・・・・・・・・・。"」

 

私は思わず息を呑む

 

さっきまで

 

何度撃っても

 

何度倒しても

 

すぐに湧き出してきたミメシス

 

それが

 

アル達の攻撃では

まるで抵抗することすら出来ずに消えていく

 

「"攻撃も・・・阻害されずに通る。"」

 

「"ミメシスから見れば、敵じゃないから・・・。"」

「"だから、反撃もしない。"」

 

「へぇ・・・。」

 

アルが嬉しそうに笑う

 

「つまり今の私達は相手が攻撃してこないということね!」

 

「アルちゃん。」

 

ムツキが笑う

 

「それって。」

「ものすごく楽しいやつじゃない?」

「そうでしょう!?」

 

「じゃあ。」

「遠慮なく――ぶっ飛ばそっか♡」

 

ダダダダダダダッ!!

 

ムツキのトリックオアトリックの銃声が鳴り響く

 

ミメシスが次々と吹き飛んでいく

 

 

サオリがその光景を静かに見つめていた

 

「・・・なるほど、そういうことか。」

 

そして

 

ゆっくりと銃を構える

 

「なら。」

「私達が直接手を下そう。」

 

「ヒヨリ。」

 

「はい・・・!」

 

「アツコ。」

 

「・・・・・・。」

 

「ミサキ。」

 

「うん。」

 

サオリが一歩踏み出す

 

「便利屋68。」

「直接、排除する。」

 

「上等じゃない!」

 

アルが笑う

 

「それならこっちも――」

 

その瞬間

 

ドンッ!!

 

轟音が響いた

 

「!?」

 

全員が振り返る

 

「セナ!!!」

 

ヒナだった

 

銃を杖に渾身の力を振り絞り立ち上がっていた

 

「セナ!!!」

 

「こっち!!」

 

叫んだ

 

――――

 

その声に

 

遠くから

 

エンジン音が響く

 

「・・・?」

 

低い

 

重い

 

そして

 

猛烈な勢いで近づいてくる

 

「ま、まさか・・・。」

 

ヒヨリが振り返る

 

「何か来ます!」

 

次の瞬間

 

ズガァァァァンッ!!

 

崩壊した古聖堂の壁を

 

救急車が突き破った

 

「うわぁぁぁぁぁ!?」

 

ヒヨリが慌てて飛び退く

 

「きゅ、救急車ぁ!?」

 

救急車はそのまま瓦礫を蹴散らし

 

先生達の目の前で急停止した

 

後部扉が開く

 

「先生!」

 

セナが手を伸ばす

 

「手を!」

 

「"セナ・・・!"」

 

「早く!」

 

私は今にも倒れそうなヒナを見る

 

そして

 

その身体を抱き上げた

 

「"ヒナ、行くよ!"」

 

「・・・うん。」

 

ヒナの身体は驚くほど軽かった

それだけ限界だったのだ

 

私はそのまま救急車へ向かう

 

その瞬間

 

「――待て。」

 

低い声

 

振り返る

 

サオリだった

 

銃を構え、こちらへ向けている

 

「先生。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

銃口が

 

私へ向く

 

「逃がすと思うか。」

 

「・・・!」

 

引き金に指がかかる

 

その瞬間

 

「アルちゃん!」

 

「分かってるわよ!」

 

四人が

 

一斉に先生の前へ飛び込んだ

 

「させないわよ!」

 

アルが叫ぶ

 

ムツキ

 

カヨコ

 

ハルカ

 

四人が私の前に並ぶ

 

完全な壁だった

 

「先生!」

 

「早く!」

 

「乗って!」

 

私はヒナを抱えたまま

 

救急車へ向かう

 

その瞬間

 

――ミシッ

 

「・・・?」

 

嫌な音がした

 

古聖堂の天井

 

長年の風雨と

 

先ほどの爆発によって

 

完全に限界を迎えていた

 

「危ない!」

 

セナが叫ぶ

 

ドォォォォン!!

 

巨大な瓦礫が

 

天井から崩れ落ちる

 

「っ!?」

 

アル達が反射的に瓦礫の雨を避ける

 

その一瞬

 

ほんの一瞬だけ

 

四人の壁に

 

隙間が出来た

 

サオリは

 

それを見逃さなかった

 

「――そこだ。」

 

ダァンッ!!

 

銃声

 

一発

 

ただ一発

 

それだけだった

 

弾丸は落下する瓦礫の隙間を

まるで瓦礫そのものが弾丸を避けているかのように

 

一直線に進んでいく

 

「・・・え?」

 

そして

 

「"――っ。"」

 

左側腹部

 

身体の奥へ

 

熱いものが突き抜けた

 

「"・・・・・・ぁ。"」

 

一瞬

 

何が起きたのか

 

分からなかった

 

次の瞬間

 

「先生!?」

 

セナの叫び

 

身体がぐらりと傾く

 

「"・・・っ。"」

 

服が

 

赤く染まる

 

「先生!!」

 

ヒナが目を見開く

 

「先生・・・!?」

 

アルも

 

ムツキも

 

カヨコも

 

ハルカも

 

全員が撃たれた先生を見た

 

そして

 

空気が変わった

 

「・・・・・・。」

 

アルの表情から

 

感情が消えた

 

「・・・・・・誰。」

 

低い

 

聞いたことのない声だった

 

ムツキも

 

笑っていない

 

「・・・あ。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

カヨコの目から

 

いつもの眠そうな色が消える

 

ハルカは

 

震える手で銃を握り直す

 

「・・・先生を。」

 

「先生を撃った・・・?」

 

四人が

 

ゆっくりと

 

サオリを見る

 

「・・・・・・・・・。」

 

サオリも銃を構える

 

「何だ。貴様らも。」

 

「排除――」

 

「――アルちゃん。」

 

ムツキが

 

小さく呟いた

 

「ええ。」

 

アルが答える

 

「分かってる。」

 

そして

 

アルが一歩

 

前へ出た

 

「・・・便利屋68。」

 

その声は

 

先ほどまでとは違っていた

 

「依頼内容を変更するわ。」

 

「ターゲット。」

 

「アリウススクワッド。」

 

銃口が

 

真っ直ぐサオリへ向く

 

「――全員。」

 

「消すわよ。」

 

「・・・・・・。」

 

サオリの目が細くなる

 

「来い。」

 

次の瞬間

 

四人が

 

一斉に駆け出した

 

銃声

 

爆発

 

怒号

 

瓦礫を揺らすほどの戦闘音が

 

一気に古聖堂へ響き渡る

 

その間に

 

「先生!」

 

セナが私の身体を支える

 

「こちらへ!」

 

「"・・・ヒナ・・・。"」

 

「大丈夫。」

 

ヒナが弱々しく答える

 

「私は・・・まだ・・・。」

 

「喋らないでください!」

 

セナが鋭く言った

 

「先生もです!」

「今は傷を押さえて!」

 

私は

 

必死に

 

救急車へ身体を運ぶ

 

「"・・・・・・っ。"」

 

一歩

 

二歩

 

そして

 

「――っ。」

 

足から力が抜けた

 

そのまま

 

救急車の中へ倒れ込む

 

「先生!」

 

セナが受け止める

 

「しっかりしてください!」

 

「"・・・セナ・・・。"」

 

「はい!」

 

「"ヒナを・・・。"」

 

「分かっています!」

 

「"・・・お願い・・・。"」

 

「絶対に助けます!」

 

セナの声が

 

少しだけ震えていた

 

それでも

 

手は止まらない

 

傷口を確認

 

止血

 

呼吸の確認

 

そして

 

「・・・出します!」

 

運転席へ叫ぶ

 

救急車が

 

再びエンジン音を響かせる

 

その中で

 

私は

 

ぼんやりと天井を見つめた

 

視界が

 

少しずつ

 

暗くなっていく

 

「"・・・アロナ・・・。"」

 

返事はない

 

シッテムの箱も

 

沈黙したままだ

 

「"・・・みんな・・・。"」

 

ヒナ

 

セナ

 

ハスミ

 

ヒナタ

 

ツルギ

 

そして

 

アリウス

 

便利屋68

 

様々な顔が

 

頭の中を流れていく

 

「"・・・アンラさん・・・"」

 

意識が

 

遠くなる

 

「先生!」

 

セナの声

 

必死に呼びかけている

 

「先生、聞こえますか!?」

 

「大丈夫です!」

 

「絶対に・・・!」

「絶対に助けますから!」

 

その声だけが

 

最後まで

 

耳に残っていた

 

そして

 

視界が

 

完全に

 

暗転した

 

 

 

 




今回は本編と関係のある今日のセイアです!
是非ここだけでも読んで行ってください!

~今日のセイア~

【先生の夢・柴関】

気が付くと
私は、見覚えのある場所に立っていた

「"・・・。"」

見覚えがある

というか

「"・・・また?"」

目の前にあるのは

赤い暖簾

湯気

そして

カウンター席

「"柴関・・・?"」

思わず呟く

以前にも

夢の中でセイアと話した時

私は、ここへ来た

そして今回も

「"・・・なんでまた柴関なんだろう。"」

そんな疑問を抱きながら店内を見回す

すると

ずるずる・・・

聞き覚えのある音がした

「"・・・。"」

視線を向ける

カウンターの一番奥

そこに

セイアがいた

何事もなかったかのような顔で

ラーメンを啜っている

「・・・。」

「"・・・・・・。"」

「・・・やぁ、先生。」

「"・・・こんにちは、セイア。"」

「うん。やはりここのラーメンは格別だね。」

「"やはり・・・?"」

「前にも来たじゃないか。」

「"いや、そうだけど・・・。"」

私は改めて店内を見回す

「"なんで柴関なの?"」

「さぁね?」

セイアはラーメンを啜る

ずるずる・・・

「"・・・・・・。"」

「・・・・・・。」

「"・・・セイア。"」

「なんだい?」

「"セイアって、柴関知ってるの?"」

「・・・・・・。」

箸が止まった

ほんの一瞬

本当に一瞬だけ

セイアの動きが止まる

「・・・先生の記憶に残っていたからね。」

「"・・・・・・。"」

「それがどうかしたのかい?」

「"いや・・・。"」

私は少しだけ考える

「"セイアの潜伏先って、もしかして・・・アビドス?"」

「・・・・・・。」

今度は明確に沈黙した

「"・・・・・・"。」

「・・・・・・。」

セイアはゆっくりとラーメンを啜る

ずるずる・・・

「"・・・・・・。"」

「・・・さて。」

露骨に話を逸らした

「先生。」
「君はキヴォトスの外部から来た者であり、大人だ。」

「となれば契約、取引。」
「そういった約束事の持つ重要性について、よく知っていることだろう。」

私は黙ってセイアを見る

「例えば――【悪魔と契約する】という言い回しがあるだろう?」

「昔話においても。」
「【驚異的な存在が、何か不注意な約束をしてしまったが為に敗北する】。」

「あるいは逆に。」
「【そういった約束によって打ち勝つ】という話もいくつもある。」

セイアは一度箸を置いた

「まぁ。そんな契約をした上でも、本物は全部食い破ってくるんだがね。」

「"・・・本物?"」

「ちょっとした冗談さ。」

そう言って

セイアは何事もなかったように、またラーメンを啜る

ずるずる・・・

「話を戻そう。」

「単純な紙切れ。」
「あるいは、口約束に過ぎないとしても。」

「約束というものは。」
「時に何かを強く拘束し、定義付けることもある。」

「契約、戒律、約束」

「こういったものは、昔話と同様に。」
「キヴォトスにおいても重要な概念だ。」

「"・・・・・・。"」

私は黙って聞いている

「例えば。」
「トリニティの経典には、太古の始まりに存在した【神性】。」
「そして、それとの間に締結された十の戒命が書かれている。」

「その他にも。」
「輪達ちは原初において【約束】を破ったから、楽園から追放されたのだ。」
「そのようなことも書き伝えられている。」

「"・・・・・・。"」

そこで

セイアは私を見る

「・・・今更な話かな。」

「何せ実際に君は。」
「そういった概念を利用した誰かを救ったことがあったはずだ。」

「"・・・・・・。"」

私は思い出す

アビドス

黒服

あの時のこと

「思い出して欲しい。」
「ゲマトリアは、アビドスの生徒に何かを強いることは出来なかった。」

「ただ、契約を要求していた。」
「その契約が成立しないとなれば。」
「ゲマトリアは退くしかなかっただろう。」

「"・・・・・・そうだね。"」

「だから。」

セイアがラーメンの器を静かに置く

「この事件もまた。」
「つまりは、そういうことなんだ。」

「エデン条約。」
「これ自体が、学園間で行われる約束事であることは確かだ。」

「しかし、この条約が行われる特別な場所。」
「そして、条約締結のために集まった、代表者たちの資格。」

「こういった要素によって。」
「これは大きな意味を持つ【約束】となった。」

「"・・・。"」

「歪曲されつつも。」
「これは明らかに、公会議の再現。」

「そして。」

セイアの声が少し低くなる

「その約束である【戒律】を守護するユスティナ聖徒会を。」
「特殊な方法で、ミメシスとして顕現させた。」

「つまり、契約を曲解し、歪曲し。」
「自分たちの望む結果を捏造した。」

「・・・そう纏めてもいいだろう。」

私は静かに頷く

「"ヴェアトリーチェがやったことだね。"」

「・・・・・・。」

セイアがこちらを見る。

「やはり知っていたか。」

「"うん。"」

「"私の知識では、アリウスの背後にヴェアトリーチェがいた。"」
「"だから、そこ自体は驚いてないよ。"」

「"ただ・・・。"」

私は少しだけ考える

「"今回の事件は、私が知っている物よりずっと大きい。"」
「"単純に聖徒会をミメシスとして出しただけじゃない。"」
「"条約そのものを利用して、トリニティとゲヘナを『条約違反の鎮圧対象』として定義した。"」

「そう。」

セイアが頷く

「これがゲマトリアの言う。」

「【大人のやり方】。」

「"・・・・・・。"」

「ただ力で押し潰すのではない。」

「既に存在する仕組み。」

「既に存在する約束。」

「既に存在する意味。」

「それらを利用して。」
「自分たちに都合のいい形へと定義し直す。」

「"・・・・・・。"」

私は少しだけ息を吐く。

「"・・・本当に嫌なやり方だね。"」

「そうだね。」

セイアは淡々と答えた

そして

少し間を置いてから

「・・・あぁ、念を押して言っておくが。」
「私は、これらのことを事前に全て知っていたわけではないよ。」

「"・・・・・・。"」

「私はあくまで、君の夢を通じて、観測しただけだ。」

「そう。観測しただけ。」
「後ろから未来を改変し操作していたわけでは、決してない。」

「"・・・・・・・・・。"」

「・・・・・・・・・。」

妙に

念を押している

「"セイア。"」

「なんだい?」

「"なんでそこだけそんなに必死なの?"」

「・・・・・・・・・。」

セイアが黙る

「"いや、さっきから【観測しただけ】って。"」
「"三回くらい言ったよね?"」

「・・・・・・・・・。」

「"・・・・・・。"」

セイアはラーメンを一口啜る

ずるずる・・・

「・・・・・・。」

そして

何食わぬ顔で

「他の話は忘れてもいい。」
「だが、ここだけは絶対に覚えて帰ってくれたまえ。」

「"そこまで!?"」

「非常に重要なことだからね。」

「"・・・・・・・・・。"」

「・・・本当に。」

「"・・・・・・・・・。"」

何か妙な焦りを感じる

("・・・未来を弄ったと思われると、何か困るのかな。")

私は首を傾げる

けれどセイアは何も言わない
ただ、少しだけ視線を逸らした

("・・・ナギサとミカにバレたら、後で色々言われるとか?")

「・・・・・・・・・・・・。」

セイアの頬が

ほんの少しだけ引き攣った

("もしかして・・・図星?")

「さて。」

露骨に話を変えた

「話を戻そう。」

「つまるところ。」
「アリウスの背後にはゲマトリアがいて。」

「アリウスは倒れることも死ぬこともない。」
「強大な軍隊を手に入れた。」

「これが現在の状況にして事実だ。」

「"・・・・・・。"」

私は黙っている

「私たちがかつて追放された楽園。」
「【エデン】その名を冠する条約の下に。」

「"・・・。"」

セイアの声が

静かに響く

「そして、その条約そのものが。」
「今や誰かを救うための約束ではなく。」
「誰かを裁くための戒律として利用されている。」

「"・・・・・・。"」

私はセイアを見つめる

その姿は

以前、夢の中で見た時と同じだった

ラーメンを食べ

穏やかに笑い

何でもないように未来の話をする

けれどその目だけは

どこか遠くを見ている

「・・・先生。」

「"うん。"」

「君はまだ、眠ったままだ。」

「なに。暇だろう?私と一緒にテレビでも見ようじゃないか。」

そういって柴関のカウンターに置いてある古いテレビに目を向ける

「これには、君が眠ってからのある一人の少女が映っている。」

「君も興味があると思うのだがね。」

「"・・・それは誰?"」

「・・・アズサだよ。」

そう言われ、私もカウンター席に座り、
セイアと共にテレビを見る事にした



――――――――――――――――――――






先生凶弾に倒れ臥す!

まぁ原作通りですよ。
そして、今回アンラがあえて原作から逸脱するような、
アル達便利屋に依頼を通したか、
その答え合わせはまた次のお話で!
結構ここの理由はこの作品全体通してのキーの一つなので、
次の話で直接語ってもらった後、私が後書きで解説まで突っ込みたいと思います。

ちなみにアル達が急に古聖堂に現れたのは、
アンラの手引きによるものです。

因みにこれはその依頼を出す時の一幕。

「アルちゃん~ちょっと依頼があるんやけど。」

「あら、アンラさんじゃない。今度は何をするの?治安維持のお手伝い?」

「いんやー、今回はトリニティとゲヘナのトップが居る所に潜入して要人救助。」
「つまり、今あのテレビでやっとる場所に行って先生守って欲しいんよ。」

「え・・・?」

「ちょっと待って、アンラさん。」
「あなたのその依頼・・・前の時もそうだったけど。」
「もしかして、あの時言っていた『例え話の依頼』って・・・全部そういうこと?」

「ハッハッハ、なわけないやん。」
「カヨコちゃん、おっさんは予知能力者じゃないんやで?」
「そんなピンポイントで未来を当てられるわけないやん。」

「・・・」

「そんで、アルちゃんどないする?この依頼受けてくれるかい?」

「・・・ちなみに受けるとして、どうやってあの厳戒態勢の古聖堂の中に入るの?」

「あーそれはおっさんが、現地に繋がる直通の奴を開通させる」

「直通・・・?」

「まぁ、連絡入れるさかい、この事務所に居っといてくれたら入り口が出来るさかい。」
「安心したらええでー」

「・・・そう、ちなみに先生を守るって何から?」

「先生に敵対してる人物達から。」
「まぁ現地着いた瞬間一発で分かるような状況になっとると思うわ。」

「・・・わかったわ。その依頼受けましょう。」

「さよかーありがとうなーアルちゃん。」
「あとすまんな。」




という一幕が便利屋の事務所でありました。
この後、アル達は放送を見続けていると、
古聖堂が大爆発し、その原因がミサイルによる攻撃だという事も分かり。
今か今かと、事務所で待っていると、
アンラから電話があり、事務所と古聖堂を繋ぐ空間の穴が出来て、
唖然としながらも、便利屋の面々はそこに飛び込んみ、
作中のシーンに繋がる形です。


そう言えば、
以前、サオリ達アリウスが、そんなに絶望もしていないし、
衣食に関してはアンラがカバーしているので、精神的余裕がある為、
ヴェアトリーチェからの洗脳はそこまで受けてないと言いましたね。

そうですよ。洗脳教育はそこまで功を成していません。
では、何故サオリ達は、原作よりも遥かに憎悪が強くなっているのか・・・

ずっと、描写してきましたからね。
多分気づいてる人は気づいてるかもしれないです。



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