おっさんキヴォトスに行く   作:無い頭のおっさん

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本日4話連続更新!4話目


先生と起床と告げ口

【先生の夢・柴関】

 

柴関のカウンターに置かれた一台のテレビから、映像が流れていた

 

私はセイアと共に、その映像を見つめていた

 

映っているのは――アズサ

 

私が撃たれた、あの時から

 

彼女が辿ってきた軌跡

 

サオリと戦い

 

一人で戦い続け

 

そして

 

ヒフミから貰った、大切なぬいぐるみを

 

自ら爆弾として使った

 

その最後、路地裏で膝を抱え

 

ただ一人

 

泣き崩れるアズサの姿を映したところで

 

テレビの映像が止まった

 

「・・・・・・。」

 

セイアが、静かに口を開く

 

「これが、無意味なあがきの終着点。」

 

「私はアズサに警告をしていた。」

 

「何度も。」

 

「何度も何度も。」

 

「このような結末になるだろう、と。」

 

画面の中

 

泣き崩れたアズサは動かない

 

「それでもアズサは、希望を抱いてしまった。」

 

「淡い希望を。」

 

セイアは、どこか諦めたように目を伏せる

 

「だから言っただろう?」

 

「これが物語の結末。」

 

「何もかもが虚しく。」

 

「全てが破局へと至るエンディング。」

 

「ここから先を見たところで、無意味な苦痛が連なっていくだけだ。」

 

「"・・・・・・。"」

 

私は黙ってテレビを見る

 

セイアは続ける

 

「これは、つまるところ。」

 

「各位が追い詰められ。」

 

「結局、誰かが誰かを殺める物語。」

 

「誰かが、人殺しにならざるを得ない話。」

 

「深くて。」

 

「不愉快で。」

 

「忌まわしく。」

 

「眉を顰めたくなるお話だ。」

 

「悲しくて。」

 

「苦しくて。」

 

「憂鬱になるような。」

 

「それでいて。」

 

「ただただ、後味だけが苦いお話。」

 

「・・・・・・そう思わないかい?」

 

セイアは、私へ視線を向ける

 

「しかし紛れもなく、真実の物語でもある。」

 

「これが。」

 

「この物語の正体だ。」

 

「・・・・・・。」

 

しばらくの沈黙

 

やがてセイアは、別の話を始めた

 

「・・・君は以前。」

 

「五つ目の古則に対して、こう言っていたね。」

 

「ただ、楽園があると信じるしかない、と。」

 

「然して、信じた結果がこれだ。」

 

「元より、不可能な事だったのだよ。」

 

「エデン条約。」

 

「お互いに憎しみ合うのは、もうやめようという約束。」

 

「そんな事、出来るはずがないと言うのに・・・。」

 

セイアの視線が、止まったテレビへ向く

 

「その上、条約の名前に、エデンと来た。」

 

「ここで楽園の名前だなんて。」

 

「相変わらず連邦生徒会長の不愉快な冗談は、皮肉にもほどがある。」

 

「下手をすれば、悪意すら感じてしまいそうな程だ。」

 

「このプロセスを経て確認できたものはあるだろう。」

 

「それは不信から降り積もった、ゲヘナとトリニティのお互いへの恨み。」

 

「そして、アリウス達が持つ恨み。」

 

「それらを通じて、この条約は歪な形で完成されてしまった。」

 

「何よりも皮肉な事に。」

 

「何処にも存在しない。」

 

「証明すらできない。」

 

「その楽園の名前を携えて。」

 

「正に楽園から追放された私達に相応しい結末かもしれないね。」

 

私は、しばらく黙っていた

 

そして

 

「"・・・セイア。"」

 

「?」

 

「"この動画の続きはどうしたの?"」

 

「・・・・・・。」

 

セイアは答えない

 

「・・・・・・この先を見る必要があるのかい?」

 

「悲しいエンディングの後。」

 

「そこに続くエピローグを見たところで、悲哀が増すだけだ。」

 

「苦しみが連なるだけ・・・・・・。」

 

私はセイアを見る

 

「"・・・ふぅ。"」

 

「"セイア。君は私を試している。"」

 

「"そうだね?"」

 

「・・・・・・。」

 

セイアの目が僅かに揺れる

 

「”それは、アンラさんからの指示?”」

 

「!!」

 

明らかに反応した

 

私は思わず笑う

 

「"ふふ。"」

 

「"セイアはやっぱり、すぐに顔に出るね。"」

 

「・・・・・・。」

 

セイアは困ったように目を細めた

 

「何故、分かったのか聞いてもいいかい?」

 

「"そうだね・・・。"」

 

私は少し考えてから答える

 

「"まぁ、まず、この柴関かな?"」

 

「"それとね、アンラさんは救われない生徒を救う為にキヴォトスに来たって言った。"」

 

「"なら。"」

 

「"私が倒れて動けない時でも。"」

「"どうしてもダメだっていう時は、必ず救いの手を差し伸べるんだよ。"」

「"だから、この映像がここで終わりのはずが無い。"」

 

「"それに。"」

 

私はテレビへ視線を向ける

 

そこには

 

まだ泣き崩れたアズサがいる

 

「"セイアがさっき言ってくれたことに答えると。"」

 

「"七つの古則みたいな言葉遊びは、私、あまり興味が無くてね。"」

 

「"だから。"」

 

「"私は、私に出来る全力で全てを救うよ。"」

 

「・・・・・・。」

 

セイアは何も言わなかった

 

ただ少しだけ

 

優しい顔をした

 

私は立ち上がる

 

「"さて・・・。"」

「"私もやらなきゃいけない事があるから、そろそろ戻らないと。"」

 

「・・・もう行くのかい?」

 

「"うん。"」

 

「"あ。"」

 

私は振り返る

 

「"そうだ、セイア。"」

 

「?」

 

「"ナギサが起きたら。"」

「"セイアはアビドスに居るって伝えておくから。"」

 

「!!!!」

 

セイアの顔が、一瞬で変わった

 

「ま、待つんだ先生!」

 

「"じゃ!"」

「"アンラさんによろしくね!"」

 

「待て!話を―――」

 

私は、その声を背中に聞きながら

 

その場を後にした

 

 

 

 

 

【トリニティ総合学園・救護騎士団病室】

 

目を開く

 

「"・・・・・・。"」

 

見覚えのない天井が、広がっていた

 

「"・・・・・・ここは?"」

 

身体を起こす

 

その瞬間

 

腹部に、ズキズキとした痛みが走った

 

「"っ・・・。"」

 

思わず腹部へ手を当てる

 

("・・・懐かしいね。")

("銃創の手術痕の痛みだ。")

 

ゆっくりとベッドから降りる

 

そして病室から出ようとした、その時

 

「せ、先生!?」

 

「先生!?」

 

聞き慣れた声

 

振り返る

 

そこには

 

セリナとハナエがいた

 

「目が覚めたんですね・・・!!」

 

「まだ、動いちゃダメです!」

 

ハナエが慌てて駆け寄ってくる

 

「先生、何処に行くつもりなんですか・・・!?」

 

「"・・・・・・。"」

 

私は、二人を見る

 

そして

 

「"皆の所。"」

 

そう答えた

 

 

 

 

 

【トリニティ総合学園・特別隔離房】

 

トリニティは既に、各所で混乱が始まっていた

 

その中でも

 

最初に向かったのは

 

ミカの分派による騒乱が起きている場所だった

 

「どけ!」

「これはパテル分派の決定だ!」

「ミカ様には、我々の言う事を聞いていただく!」

 

「・・・・・・。」

 

その中心

 

ミカがいた

 

そして

 

その前に

 

小さな身体が立ちはだかっている

 

コハルだった

 

「い、嫌!!どかない!」

 

「わ、私は馬鹿だから!」

「何がどうなってるのか、全然分からないけど・・・!」

 

「でも!これは違う!!」

 

「こんなの、絶対にダメ!!」

 

コハルの声は震えていた

 

それでも

 

一歩も退かなかった

 

「そこをどけ!」

 

「嫌!!」

 

「なら――」

 

銃口が向けられる

 

コハルの顔が強張る

 

それでも

 

ミカを庇うように両手を広げた

 

「・・・・・・。」

 

その時

 

「"そこにいるのは、補習授業部の。"」

 

全員が振り返った

 

「"私の生徒だよ。"」

 

「・・・・・・。」

 

コハルの目が見開かれる

 

「せ、先生・・・?」

 

「先生!!」

 

その声は

 

今にも泣き出しそうだった

 

私はコハルへ歩み寄る

 

「"遅くなってごめん。"」

 

「せ、先生・・・先生・・・!」

 

コハルが抱き着いてくる

 

私は、その頭を撫でた

 

「"コハル。"」

 

「"カッコよかったよ。"」

 

「"流石は、正義実現委員会のエリート。"」

 

「~~~~っ!」

 

コハルが私を抱きしめる力を強める

 

「先生ぇぇぇぇぇっ!」

 

「"よしよし。"」

 

その横で

 

ミカが

 

呆然と私を見つめていた

 

「先生・・・。」

 

私はミカを見る

 

「"ミカ。"」

 

「"大丈夫?"」

 

「えっと・・・。」

 

ミカは、少しだけぎこちなく笑う

 

「うん。」

 

「何ていうか・・・久しぶり、だね?」

 

「"そうだね。"」

 

私はミカを見る

 

「"ミカは、どうしてさっき・・・。"」

 

「・・・・・・。」

 

ミカの表情が曇る

 

「あー・・・。」

 

「えー・・・。」

 

「何でだろ。」

 

「絶好のチャンスだし。」

 

「今、立ち上がればって分かってはいるんだけど・・・。」

 

「今でもゲヘナは嫌い。」

 

「なんだけど・・・。」

 

「どうしてだろ・・・。」

 

「私にも、よく分かんないな・・・。」

 

そこまで言ったところで

 

ミカの顔が変わった

 

「あれ。」

 

「ちょ、ちょっと待って・・・。」

 

「私・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

(あれ。)

 

(私・・・。)

 

(私、どうしてセイアちゃんを襲撃してって指示したんだっけ・・・?)

 

思い出す

 

ゲヘナは嫌い

 

でも

 

滅ぼしたいほど憎いわけじゃない

 

セイアちゃんは苦手

 

でも

 

死んでほしかったわけじゃない

 

なのに

 

どうして

 

私は

 

「あ・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

「わ、私は・・・。」

 

ミカの目に涙が浮かぶ

 

「ごめん。セイアちゃん・・・。」

 

「どうして、こうなったのかな・・・。」

 

「ごめん・・・ごめんね・・・。」

 

「こんなにバカで、ごめん・・・。」

 

「"ミカ・・・。"」

 

「先生・・・。」

 

ミカは、涙を拭おうともせず

 

ただ、私を見つめた

 

「私、セイアちゃんに会いたい・・・。」

 

「ナギちゃんにも、もう一度会いたい・・・。」

 

「こんな私じゃ、もうダメかもしれないけど・・・。」

 

私は、静かに頷く

 

「"任せて、ミカ。"」

 

「"それに。"」

「"死にかけた時に、セイアと会ったけど。"」

 

「"元気そうだったよ。"」

「"ラーメンを食べてたね。"」

 

「ラーメン・・・?」

 

「"うん。"」

 

「"潜伏場所をナギサに伝えるって言ったら、慌ててたから。"」

「"きっと、すぐに会えるよ。"」

 

「・・・・・・。」

 

ミカが呆然とする

 

そして

 

「・・・・・・あはは。」

 

「なにそれ・・・。」

 

泣きながら

 

少しだけ笑った

 

「"じゃあ。"」

 

私は立ち上がる

 

「"この状況を収めないとだから。"」

 

「"そろそろ行くね。"」

 

「うん。」

 

ミカは涙を拭いながら

 

「頑張ってね。」

「先生。」

 

「"うん。"」

 

 

 

【トリニティ総合学園・談話室】

 

その後

 

指令室として使われている談話室へ向かった

 

そこには

 

正義実現委員会

 

ティーパーティー

 

シスターフッド

 

そして

 

ハナコとマリー

 

多くの生徒が集まっていた

 

「先生だ・・・。」

 

「意識不明の重体だったはずじゃ・・・。」

 

「起きたんだ・・・。」

 

ざわめきが広がる

 

ハナコとマリーも

 

私を見て目を見開いた

 

「先生・・・。」

 

「先生・・・。」

 

私は二人を見る

 

「"ここにいてくれて。"」

「"待っててくれて、ありがとう。"」

「"ここから先は、私に任せて。"」

 

その言葉と共に

 

指揮を引き継ぐ

 

現在、古聖堂はアリウス生と

そして不安定なミネシスによって占拠されている

 

対するトリニティ側は最初の襲撃によって

 

主力の多くが戦闘不能

 

「・・・・・・。」

 

私は状況を整理する

 

「"分かった。"」

 

「"まず、ハスミとツルギ。"」

「"それからヒナの様子を見てくる。"」

 

そう告げ

 

病室へ向かった

 

 

 

【トリニティ総合学園・救護騎士団病室】

 

「・・・・・・。」

 

ベッドの上

 

ハスミが、ゆっくりと目を開いた

 

「先生・・・。」

「ここは・・・いったい何が・・・。」

 

私は駆け寄る

 

「"ハスミ。"」

「"良かった・・・。"」

 

「・・・はい。」

 

ハスミは、古聖堂での戦闘を思い出す

 

「危うい所でしたが・・・。」

 

「ツルギは?」

 

「他の皆は・・・。」

 

その瞬間

 

隣のベッドが

 

ピクッ

 

「・・・ぎゃああああぁぁぁぁぁっ!?」

 

「"!?"」

 

ツルギが飛び起きた

 

「せ、せせせ先生!?」

「ど、どうしてこちらに・・・!?」

 

「"ツルギ。"」

 

「ご、ご無事だったのですか!?」

 

そこへ

 

「ツルギさん!」

 

ハナエが駆け込んでくる

 

「あ!」

 

「って。」

 

「もう動けるんですか!?」

「流石は正義実現委員会の委員長さんですね!」

 

「そ、それほどでもありません!」

 

「いや褒めてないですよ。」

 

「えっ。」

 

私は思わず苦笑する

 

そして

 

二人へ現在の状況を伝えた

 

「"古聖堂はまだ戦闘中。"」

「"そして、トリニティはかなり混乱してる。"」

「"私はヒナの様子を見てくる。"」

「"二人はここで動けるようになるまで休んでいて。"」

 

「・・・・・・はい。」

 

 

ゲヘナ生をまとめて収容している病室

 

そこには

 

セナがいた

 

私を見るなり

 

「・・・ご無事で何よりです、先生。」

 

ほっとした表情

 

「"セナの初期対応のおかげだよ。"」

 

「いえ。」

 

「大人の治療は初めてでしたが。」

「どうにかなって何よりです。」

 

その時

 

「先生・・・。」

 

チナツが身体を起こす

 

「チナツ、まだ動いてはダメです。」

 

セナが即座に止めた

 

「横になってなさい。」

「先輩命令です。」

 

「私、今は風紀委員会所属ですが・・・。」

 

「今から救急医学部に戻って来ても良いのですよ?」

 

「質の良い死――」

 

「・・・・・・。」

 

「いえ、負傷者たちに好きなだけ触れますし。」

 

「いえ、私は別に・・・。」

 

チナツが視線を逸らす

 

「丁重にお断りしておきますね。」

 

「そうですか。」

 

その隣

 

「先生・・・。」

 

アコも身体を起こそうとする

 

「アコちゃん!」

 

イオリが止めようとする

 

「まだ動いちゃ、ぐっ・・・!」

 

「イオリも動かない。」

 

「はい・・・。」

 

私は三人を見る

 

「"皆。"」

「"怪我はともかく、無事で良かった・・・。"」

 

アコが俯く

 

「委員長が。」

「いなくなってしまい・・・。」

 

「部室にもおらず。」

「連絡もつかなくて・・・。」

 

そして

 

私を見つめる

 

「先生。委員長を・・・。」

 

私は大きく頷く

 

「"うん。"」

 

「"任せて。"」

 

「・・・・・・はい。」

「よろしくお願いします。」

 

 

 

 

【トリニティ総合学園・中庭】

 

 

トリニティの中庭

 

ベンチに

 

一人の少女が座っていた

 

「・・・・・・。」

 

ヒフミ

 

俯いたまま

 

夜の闇を見つめている

 

私は駆け寄る

 

「"ヒフミ。"」

 

「・・・・・・先生。」

 

ヒフミが顔を上げる

 

その顔を見て

 

思い出した

 

夢の中で

 

セイアが見せてくれた映像

 

アズサがヒフミに別れを告げた

 

「先生。」

 

「アズサちゃんが・・・。」

 

「アズサちゃんが、一人で戦っています・・・。」

 

「また、一人で、ずっと・・・。」

 

ハナコとコハルも

 

私の後ろで俯く

 

「・・・・・・。」

 

私はあの映像を思い出す

 

一人で戦い

 

一人で傷つき

 

最後には路地裏で膝を抱えて泣いていた少女

 

「"・・・・・・うん。"」

 

ヒフミは続ける

 

「居場所が違うんだって・・・。」

 

「それで私。」

 

「何も言えなくて・・・。」

 

「こんな大変なことになってしまって・・・。」

 

「もう、私みたいな普通の学生に出来る事なんて・・・。」

 

「どうすれば、アズサちゃんを・・・。」

 

「だって、私は・・・。」

 

 

「それでも!」

 

突然

 

コハルが声を上げた

 

「放って置く訳にはいかないでしょ!?」

 

「コハルちゃん・・・。」

 

「立ち位置なんて関係ない!」

 

「わ、私は知ってる・・・!」

 

「一人でいる事とか。」

「置いてかれる事とか。」

「それが、凄く悲しいって!」

 

「だから、アズサを一人にさせられない・・・!」

 

「・・・・・・。」

 

ハナコも静かに頷く

 

「・・・はい。」

「そういうのは寂しいですからね。」

 

私はヒフミを見る

 

「"ここまでずっと。"」

「"ヒフミが引っ張ってきてくれた。"」

 

「"皆の努力はもちろんだけど。"」

「"ヒフミがここまで頑張ってくれたから。"」

 

「・・・・・・。」

 

コハルも続ける

 

「私は頑張った。」

 

「でも、そのおかげで、あんたが沢山の面倒な事とか。」

「部長として色んなことをしてくれたのも。」

「そのおかげで頑張れたのも。」

「ちゃんと知ってる。」

 

「・・・・・・コハルちゃん。」

 

ハナコも

 

「そうですよ。」

「ヒフミちゃんが諦めずにいてくれたから。」

「私も今、こうしてここに居られるんです。」

 

「・・・・・・。」

 

ヒフミの目に

 

少しだけ光が戻る

 

「コハルちゃん。」

 

「ハナコちゃん・・・。」

 

私は

 

「"だから大丈夫。"」

 

「"どうしても分からない時は。"」

 

「"私も居るから。"」

 

ヒフミは

 

ゆっくりと顔を上げた

 

「・・・・・・はい。」

「ありがとうございます。」

 

「私も、ちゃんと学びました。」

 

「諦めません。」

「いつまでも悩みません。」

 

「私は。」

 

「私に出来る事を・・・!」

 

立ち上がる

 

「・・・・・・アズサちゃんを助けに行きます!」

 

「"うん。"」

「"私も、ヒフミを手伝うよ。"」

 

「では。」

 

ハナコが微笑む

 

「皆で行きましょうか。」

 

「う、うん!」

 

コハルも頷く

 

「友達を助けないと・・・!」

 

ヒフミが拳を握る

 

「アズサちゃんに会って。」

 

「今度こそ・・・。」

 

ハナコが静かに続ける

 

「・・・言いたい事は。」

 

「伝えないとですね?」

 

「・・・・・・はい。」

 

ヒフミの瞳に

 

強い・・・強い光が宿る

 

「しっかりと・・・伝えないといけません。」

「同じ世界に居られないだなんて。」

 

「私は・・・。」

 

「ヒフミ・・・?」

 

コハルが少し引いている

 

私は苦笑した。

 

「"友達でも。"」

「"言わないと伝わらないからね。"」

 

「・・・・・・はい!」

 

ヒフミが頷く

 

「今度こそ、はっきり言ってみせます・・・!!」

 

「そうですね。」

 

ハナコも微笑む

 

「私も、ちゃんとすぐ傍に居ます。」

 

「えっと・・・。」

 

コハルが困ったように頭を掻く

 

「と、とにかく行くんでしょ?」

 

「じゃあほら。」

 

「早く!」

 

「"うん。"」

 

私は三人を見る

 

「"ただ。"」

 

「"一人だけ、声をかけたい子がいる。"」

 

「"最初だけ。"」

 

「"私抜きで戦ってもらっていい?"」

 

「分かりました。」

 

三人が頷いた

 

「"じゃあ。"」

 

私は踵を返す

 

「"行ってくる。"」

 

 

 

 

 

【ゲヘナ自治区・住宅街】

 

一人

 

ゲヘナへ向かう

 

向かった先は

 

一軒の家

 

私は、その扉の前に立った

 

そして

 

コンコン

 

ノックする

 

しばらくして

 

扉が開いた

 

「・・・・・・。」

 

ぼさぼさの髪

 

パジャマ姿

 

眠そうな顔

 

「っ、先生・・・。」

 

ヒナだった

 

「無事だった、のね・・・。」

「良かった・・・。」

 

少しだけ

 

泣きそうな顔をする

 

「どうやって、ここを・・・?」

 

「まぁ先生には、今更か・・・。」

 

「"愛の力かな!"」

 

「・・・・・・。」

 

ヒナの目が更に死んだ

 

「・・・・・・そう。」

 

「"うん。"」

 

私は少し笑う

 

そして

 

真剣な顔になった

 

「"ヒナ。"」

 

「・・・・・・。」

 

ヒナは目を伏せる

 

「ごめん、先生。」

「私には、もう無理。」

 

「私はもうダメ・・・。」

「だから・・・。」

「ガッカリさせて、悪いのだけど。」

 

「今は、帰って欲しい。」

 

「私はもう引退したと思ってもらって・・・。」

 

私は

 

静かに首を横に振る

 

「"ヒナ、違うよ。"」

「"私はここに、お礼を言いに来たんだ。"」

 

「・・・・・・え?」

 

「お礼・・・?」

「どうして・・・。」

 

「先生を助けたことについてなら。」

「気にしなくて良い・・・。」

 

「あれは当然、私がやるべきことで。」

「それに、あの時私は・・・。」

 

「"もう頑張りすぎなくても良いって。"」

「"早く言ってあげたかった。"」

 

「・・・・・・。」

 

「"ヒナはずっと頑張ってたから。"」

「"だから、休んでて。"」

「"後は私が何とかする。"」

 

「ま、待って、何とかって・・・。」

 

「でも私は・・・。」

 

「私・・・。」

 

「私は・・・。」

 

ヒナの声が震える

 

「私は。」

 

「あの小鳥遊ホシノみたいには、なれない・・・。」

 

「"・・・・・・ホシノ?"」

 

「私は、あのアビドスの副会長みたいな。」

 

「強い人じゃない・・・。」

 

「アビドスの生徒会長。」

 

「"・・・・・・。"」

 

「・・・・・・その遺体を発見したのは。」

 

「小鳥遊ホシノだった。」

 

「凄く。」

 

「ものすごく大切な人だったはずなのに・・・。」

 

私は心の中で呟く

 

("その人、生きてます・・・。")

 

ヒナは続ける

 

「あれだけの苦しみを味わっておきながら。」

「今もアビドスで戦ってる。」

 

「私にはそんなことできない・・・」

 

("今はホシノがユメに甘えて、うへうへ言ってます・・・。")

 

「私は。」

 

「そこまで強くなれない。」

 

「あの瞬間私は。」

 

「もう・・・。」

 

「"ヒナ。"」

 

「私だって頑張った!!!」

 

突然

 

ヒナの感情が弾けた

 

「いつも頑張って!」

「どうにかしようとして!」

「分かってもらえなくても!」

 

「それでも・・・!」

 

「けど私は。」

 

「大事な所で・・・!」

 

ヒナが

 

私を睨む

 

「先生は、ずるい・・・。」

「私は、あの瞬間もうダメで。」

 

「なのにそんな事を言って・・・。」

 

「・・・私だって。」

 

「小鳥遊ホシノや。」

 

「補習授業部みたいに・・・。」

 

声が震える

 

「先生に・・・構ってほしかった・・・!」

 

「褒められたかった!!!」

 

私は

 

ただ、ヒナを見つめた

 

「"・・・・・・。"」

 

ヒナが

 

「あっ・・・。」

 

口を滑らせた事に気付く

 

「ご、ごめん。」

 

「今のは、その・・・。」

 

「"ヒナ。"」

 

「"本当にごめん!"」

 

「・・・・・・え?」

 

「"ヒナも今度、補習授業しよう!"」

「"それで成績が良かったら、たくさん褒めるから!"」

 

「え。」

 

ヒナの顔が引きつる

 

「いや、私、成績は元々良いし。」

「大体、満点だけど・・・。」

 

「"それとも水着パーティーする!?"」

「"すぐにでも準備するよ!"」

 

「・・・・・・。」

 

ヒナの顔に

 

呆れが浮かぶ

 

そして

 

そこにドン引きが加わった

 

「えっと、それも別に・・・。」

 

「・・・・・・はぁ。」

 

ヒナがため息を吐く

 

そして

 

「ふふっ。」

 

小さく笑った

 

「先生。」

 

「所で。」

 

「私に頼みたい事があるんじゃない?」

 

「"・・・・・・。"」

 

私は少し笑う

 

「"でも、ヒナは引退したって考えると・・・。"」

 

ヒナが唇を尖らせる

 

「・・・・・・それは。」

 

「言ってみただけ。」

 

「少し、先生に甘えてみたかっただけ。」

 

そして

 

一歩

 

前へ出る

 

「行こう。」

 

「先生。」

 

その瞬間

 

そこにいたのは

 

いつもの風紀委員長

 

空崎ヒナだった

 

「"うん。"」

 

私は頷く

 

「"風紀委員会の皆が戦ってる。"」

 

「"ヒナには、そこに行ってあげてほしい。"」

 

「"私は。"」

 

「"一人で戦ってる子がいるから。"」

 

「"その子を助けに行く。"」

 

「・・・・・・分かった。」

 

ヒナが頷く

 

「私も行くね。風紀委員会の皆の所へ。」

 

「"うん。"」

 

「先生も無事で。」

 

「"もちろん。"」

 

「じゃあ。」

 

私は車へ乗り込みエンジンをかける

 

窓越しにヒナを見る

 

「"ヒナ。"」

 

「・・・・・・?」

 

「"ありがとう。"」

 

ヒナは

 

少しだけ笑った

 

「・・・こっちの台詞。」

 

車が走り出す

 

夜のゲヘナを抜け

 

トリニティへ

 

向かう先は

 

古聖堂

 

そこには

 

まだ

 

一人の少女がいる

 

一人で

 

戦っている

 

誰にも頼らず

 

誰にも縋らず

 

ただ

 

自分の居場所を守るために

 

「・・・・・・。」

 

私はハンドルを握る

 

そして

 

アクセルを踏み込んだ

 

「"待ってて。"」

 

「"アズサ。"」

 

「"今度は。"」

 

「"一人にしないから。"」

 

車は

 

夜の街を駆け抜けていく

 

その先にある

 

古聖堂へ向かって

 




うららららら!!!

バリバリに書き続ける!
多分この三章きりの良い所まで書いたら私は一旦死ぬ!!

とりあえず!
とうとう先生が、セイアが祈願屋に身を寄せている事に気づきました!
セイアも、夢の中でしか今はラーメン食べれないからって、先生と夢をリンクさせる度に、
ラーメン食べてるせいで、完全にバレてしまいました!

ちなみに先生から、ナギサにチクると言われたセイアは、
跳び起きて、着の身着のままミネと一緒にトリニティに爆速で向かっている所です。

なんせ、先生から言われたら、その時点で半分詰みになりますから。

どの道、先生はセイアが、トリニティに帰ってきたとしてもセイアの潜伏先とラーメンの件を全部ナギサにチクりますが。

ミカの聴聞会の前に、ティーパーティー主催の聴聞会が開かれそうですね。

そして、
先生が起きてから、アル達便利屋が出て来ないじゃん!ってなってる読者の皆様!
安心してください!
アル達はちょっとマジでキレてるので、
古聖堂近辺で、先生が倒れてから起きた現在も奇襲戦を続けています。
そのおかげで、アリウスは古聖堂内で籠城という手段を取らされている所です。

具体的に言うと、アルが古聖堂を一望出来るポジションから、
茜色の閃光のとっておき(ハードボイルドショット)をアリウス生や、
ミメシスが進軍しようとした瞬間ぶち込みまくってます。
軽く2kmくらい離れた位置からの狙撃をやってるので、流石としか言えないですね。

というか、現地戦力にそれを伝えずに独立部隊としてアル達が動いてるせいで、
現地戦力のトリニティもゲヘナもアル達の事を把握していないです。
ただくっそ遠くから爆発物をアリウスに叩き込んでる友軍らしき存在が居る。
位しか把握してません。
まぁ把握する為に派兵する余裕も現在ありませんしね。



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